(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<モータの全体構造>
本明細書では、中心軸J1方向において、図中の上側を単に「上側」と呼び、図中の下側を単に「下側」と呼ぶ。「上側」および「下側」という表現は、必ずしも重力方向と一致する必要はない。
【0011】
本発明のモータの実施例の一形態について、
図1を用いて説明する。
図1は、本発明のモータの実施例の一形態を示したものであり、軸方向に仮想的に切ったときの模式断面図である。
【0012】
モータ10は、中心軸J1を中心に回転する回転部20と、回転部20を回転自在に支持する軸受部材30と、2つの軸受部材を保持する静止部40と、から構成される。
【0013】
回転部20は、中心軸J1と同軸に配置され、軸方向に沿って延びる略円柱形状のシャフト21と、シャフト21の軸方向上側に固定されるロータホルダ22と、ロータホルダ22に固定されるロータマグネット23と、から構成される。
【0014】
シャフト21の軸方向下側は、複数の溝が形成される歯車部211となっており、当該歯車部211と外部装置とを係合させることにより、モータ10のトルクを外部に出力することができる。
【0015】
ロータホルダ22は、有蓋略円筒状であり、シャフト21に固定されるシャフト固定部221と、シャフト固定部221から径方向外方に広がる略円板状の蓋部222と、蓋部222の径方向外側の縁から軸方向下側に向かって延伸する略円筒状の円筒部233と、を有する。ロータホルダ22は、例えば、薄板状の磁性材料をプレス加工にて打ち抜いて成型される。
【0016】
ロータホルダ22の円筒部233の内周面には、略円筒状のロータマグネット23が固定される。ロータマグネット23には、界磁用の着磁が施されている。また、ロータマグネット23の下面には、位置検出用の着磁が施されている。
【0017】
シャフト21の外周面には、上側軸受31と、下側軸受32とが固定される。上側軸受31および下側軸受32は、軸受部材30を構成する。
【0018】
静止部40は、中心軸J1と同軸の軸心となるよう形成された略円筒形状のブッシュ42と、ブッシュ42の外周面に固定されたステータ41と、ステータ41の軸方向下側に配置され、ブッシュ42に固定された回路基板43と、を備える。
【0019】
図2は、ブッシュ42の平面図である。以下、
図2を参照して、説明する。ブッシュ42は、軸受保持部材を構成しており、その内周面には、上側軸受31および下側軸受32が挿入または挿入と接着の併用により、保持される。ブッシュ42は、アルミ合金、亜鉛合金などの金属材料を、ダイカスト法によって成型することによって形成される。ブッシュ42の外周面は、軸方向上側に位置する第1円筒部421と、第1円筒部421の下側に位置し、第1円筒部421よりも外径が大きい第2円筒部422と、第2円筒部422の下側に配置され、中心軸J1に略垂直な方向に広がるフランジ部423とを有する。
【0020】
第1円筒部421の上側には、ステータ固定部424が、周方向の3箇所に間隔をおいて配置される。
【0021】
第2円筒部422は、周方向の3箇所に間隔をおいて配置されるとともにそれぞれが軸方向下側に向かうにつれ径方向における中心軸J1からの距離が次第に大きくなるガイド部425を有する。また、第2円筒部422の下側には、基板固定部426が、周方向の3箇所に間隔をおいて配置されている。径方向において、中心軸J1から基板固定部426の最外部までの距離は、中心軸J1からガイド部425の最外部までの距離と、等しいまたは小さくなっている。
【0022】
フランジ部423は、中心軸J1に垂直な方向に対して面一である上面を有する。また、フランジ部423は、周方向に間隔をおいて3箇所配置されるとともに、径方向外側に向かって延びる腕部4231を有する。各腕部4231には、軸方向に開孔する固定孔4232が設けられる。固定孔4232内には、ねじ等の固定部材(不図示)が挿入され、装置本体に対してモータ10を固定することができる。フランジ部423は、径方向外側に向かって延びる位置決め部4233を有し、位置決め部4233には、軸方向上側へ向かって突出する位置決め突起4234が配置される。
【0023】
ステータ41は、複数枚の磁性鋼鈑が積層されることにより形成される。ステータ41は、環状のコアバック部4111とコアバック部4111から径方向外側に放射状に伸びる複数のティース部4112とを有するステータコア411、および、各ティース部4112に巻回されるコイル412を、備える。
【0024】
回路基板43は、ガラスエポキシ樹脂からなる。回路基板43の中心には、軸方向に貫通する開口部431が設けられている。開口部431には、ブッシュ42の第2円筒部422が挿通される。また、開口部431の端部には、径方向外側に向かって切りかかれたスリット4311が形成されている。スリット4311内には、位置決め突起4234が挿通される。
【0025】
回路基板43の下面には、U相、V相、W相に対応したランド(不図示)が配置されており、ステータ41のコイル412から引き出された導線(不図示)が、各ランドに半田付けされる。
【0026】
回路基板43の下面には、磁界の変化によって回転部20の回転位置を検出するホール素子(不図示)が配置される。
【0027】
回路基板43の上面には、FGパターンが配置される。FGパターンは、ロータマグネット23と軸方向に対向して配置される。FGパターンは、回転部20の回転に伴うロータマグネット23の磁界の変化により、電圧を誘起してFG信号を発生させる。FG信号を読み取ることで、回転体20の回転位置および速度を検出する。
【0028】
回路基板43には、外部電源等と接続されるフレキシブル・フラット・ケーブル(不図示)が半田付けされるランド部(不図示)が配置される。
【0029】
回路基板43の下面において、開口部431の端部の周囲には、金属層432が形成されている。金属層432は、ブッシュ42を正投影した際におけるフランジ部423の形状とほぼ同形状に形成されている。(
図3参照)。本実施形態において、金属層432は銅箔であり、回路基板に基板パターンを印刷する際に、基板パターンが印刷されるのと同時に形成することができる。したがって、金属層432を形成する際に、追加の加工工程や部品を不要であり、コストや工程時間を削減することが可能となる。
【0030】
<ブッシュと回路基板との固定構造>
回路基板43は、フランジ部423上に載置される。
回路基板43の金属層432と、フランジ部423の上面との間には、接着剤が介在している。その接着剤は、たとえば、金属イオンと接触すると触媒反応を誘発し硬化する接着剤を用いることができる。そのような接着剤の材料としては、例えば、アクリル樹脂嫌気性接着剤などの嫌気性接着剤が用いられる。回路基板43の上面において、開口部431の端部では、基板固定部426が径方向外側に折り曲げられている。その結果、回路基板43は、基板固定部426とフランジ部423に挟持された状態で固定される。この挟持による固定と上述の接着剤による固定とを併用することにより、回路基板43を、ブッシュ42に強固に固定することができる。
【0031】
この点に関して、従来は、回路基板43とブッシュ42とをねじなどの固定部材を用いて固定していた。しかし、固定部材を用いると、部品点数の増加や組立の作業性の悪化を招くという問題があった。他方、挟持のみの固定では、クリープにより固定が緩むことがあるため、信頼性の面で問題があった。また、接着のみの固定では、温度変化の激しい使用環境において接着剤の劣化等が起こり、信頼性の面で問題があった。
【0032】
嫌気性接着剤以外の接着剤を用いることも考えられるが、次の不具合がある。例えば、2液性接着剤であれば、接着剤塗布時に別工程が必要となり、作業性が悪くなる。また、瞬間接着剤であれば、硬化時間が早いため、工程管理が困難である。また、エポキシ系接着剤は、一般に粘度が高いため、作業性が悪い。しかしながら、嫌気性接着剤であれば、上記問題が発生しない。
【0033】
以上より、本実施例においては、挟持と接着を併用して回路基板43とブッシュ42とを固定するので、信頼性を損なうことなく、部品点数を削減することができる。また、回路基板上のパターンを利用するので、追加の加工工程や部品等が不要であり、コストを押さえることができる。
【0034】
<モータの組み立て工程>
次に、本モータの組立工程について説明する。
【0035】
まず、
図2を参照して、説明する。まず、ブッシュ42の接着剤塗布領域427に嫌気性接着剤を塗布する。接着剤塗布領域427は、略環状に設けられる。また、接着剤はディスペンサにて塗布される。
【0036】
次に、回路基板43の開口部431にブッシュ42を挿入する。この際、ブッシュ42の第2円筒部422の外側に配置されたガイド部425により、回路基板43は、中心軸J1と開口部431とが同軸になるようにガイドされる。また、ガイド部425により、基板固定部426上に回路基板43が乗り上げることが防止される。開口部431に挿入されたブッシュ42は、フランジ部423の上面に回路基板43の下面が当接するまで挿入される。この際、開口部431のスリット4311内に、位置決め突起4234が挿入される。これにより、ブッシュ42と回路基板43との周方向の位置が位置決めされる。上述したとおり、回路基板43の下面に形成された金属層432は、ブッシュ42を正投影した際におけるフランジ部423の形状とほぼ同形状に形成されている。そのため、金属層432は、フランジ部423の位置と一致するような状態に位置決めされる。これにより、回路基板43は、ブッシュ42のフランジ部423と、金属層432において当接する。
【0037】
ブッシュ42が開口部431へ挿入されると、金属層432とフランジ部423とが接触した状態となる。ブッシュ42の接着剤塗布領域427に塗布された嫌気性接着剤は、毛細管現象により、金属層432とフランジ部423との間に形成される微細な隙間にいきわたる。ここで、嫌気性接着剤は、外気と遮断されるとともに、金属イオン(すなわち、金属製のブッシュ42および金属層432)と接触することになる。そのため、嫌気性接着剤において、触媒反応が誘発され、その硬化が始まる。この状態において、基板固定部426を、回路基板43の上面と接触させるように、開口部431の端部において径方向外側に折り曲げる。これにより、回路基板43は、基板固定部426およびフランジ部423に挟持された状態で固定される。基板固定部426を折り曲げた後も、嫌気性接着剤の触媒反応は続き、やがては完全に硬化する。
【0038】
次に、ブッシュ42の第1円筒部421の外周面に嫌気性接着剤を塗布する。接着剤は、ディスペンサにて塗布される。
【0039】
そして、ブッシュ42の第1円筒部421を、ステータ41のコアバック4111の内側に挿入する。これにより、第1円筒部421の外周面に塗布された嫌気性接着剤は、第1円筒部421の外周面とコアバック4111の間に行き渡ることになる。第1円筒部421およびコアバック4111は互いに金属であるため、上述と同様に、接着剤の硬化が始まる。コアバック4111の下面は、第2円筒部422の上端面に当接する。この状態において、ステータ固定部424を径方向外側に折り曲げ、コアバック4111の上面と接触させる。これにより、ステータ41は、第2円筒部422の上端面およびステータ固定部424に挟持された状態で固定される。
【0040】
最後に、軸受部材30をブッシュ42の内側に固定し、回転部20を挿入することで、モータが完成する。
【0041】
以上、本発明にかかる一実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限られるものではない。
【0042】
たとえば、金属層432は、開口部431の全周にわたって形成する必要はない。周方向における複数箇所に形成してもよい。この場合においても、形成箇所は、望ましくは等間隔に配置するほうが望ましいが、等間隔でなくてもよい。
【0043】
開口部431に形成されるスリット4311は、一つだけでなく、複数形成してもよい。また、それにあわせて、位置決め突起部4234の数を増やしてもよい。そして、スリット4311の数のほうが多ければ、位置決め突起部4234の数をスリット4311と一致させる必要はない。
【0044】
基板固定部426の数は、3つに限られるものではない。例えば、基板固定部426の数をひとつとして、フランジ状に形成して開口部431の端部を全周覆うようにしてもよい。また、基板固定部の数を2乃至4以上とすることもできる。さらに、複数の基板固定部426の位置は、必ずしも等配でなくてもよい。
【0045】
また、接着剤の塗布についても、金属層432や第1円筒部421、接着剤塗布領域427においては、必ずしも全領域に接着剤を塗布する必要はない。複数箇所に接着剤を塗布してもよいし、塗布箇所が少なくとも接着剤を広げるようにしてもよい。
【0046】
接着剤塗布領域427は、必ずしも略環状でなくともよく、扇状の領域を複数形成してもよい。
【0047】
腕部4231の数は、3つに限られるものではない。
【0048】
回路基板43は、紙フェノール製であってもよい。
【0049】
本発明は、アウターロータ型のモータだけでなく、インナーロータ型のモータについても、適用可能である。この場合、銅箔等の接着剤塗布領域を回路基板の外周面に形成し、当該回路基板をハウジングに収容するようになる。