特許第5963400号(P5963400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963400
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】列車停止位置の検出方法及び検出装置
(51)【国際特許分類】
   B61G 7/14 20060101AFI20160721BHJP
   B61L 25/02 20060101ALI20160721BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   B61G7/14 C
   B61L25/02 G
   G01B11/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-111484(P2011-111484)
(22)【出願日】2011年5月18日
(65)【公開番号】特開2012-240519(P2012-240519A)
(43)【公開日】2012年12月10日
【審査請求日】2013年9月2日
【審判番号】不服2015-7459(P2015-7459/J1)
【審判請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 証
(72)【発明者】
【氏名】岡松 史明
【合議体】
【審判長】 島田 信一
【審判官】 一ノ瀬 覚
【審判官】 尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−264475(JP,A)
【文献】 特開平2−36500(JP,A)
【文献】 実開昭60−42982(JP,U)
【文献】 特開2004−333440(JP,A)
【文献】 特開昭58−24876(JP,A)
【文献】 特開2000−108902(JP,A)
【文献】 特開2010−58546(JP,A)
【文献】 特開2002−122664(JP,A)
【文献】 特開2004−280372(JP,A)
【文献】 特開2009−93428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61G 7/14
B61L 25/02
B61B 1/02
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
停止動作中の列車の前面に対して前方からスポット状の測定光を左右方向に沿ってライン状に走査しつつ照射する距離センサを用いて、当該距離センサから列車の前面までの距離を測定し、
測定された距離に基づいて、列車の停止状態及び停止位置を検出するものであって、
前記距離センサから照射される測定光が波長800nm〜1μmのレーザ光であって、前記距離センサの走査時間が10ミリ秒〜20ミリ秒とされていて、
前記距離センサから列車の前面までの距離を一定の時間ごとに連続して測定し、連続して測定された距離の変化量が所定の閾値以下になった場合に列車が停止したと判断し、列車が停止したと判断された場合には、前記測定された距離を基に列車の停止位置を推定する
ことを特徴とする列車停止位置の検出方法。
【請求項2】
前記測定光を、当該列車の進行方向に対して前方で且つ左右方向斜めから照射することを特徴とする請求項に記載の列車停止位置の検出方法。
【請求項3】
前記測定光を、前記列車の前面に設けられた連結器に対して照射することを特徴とする請求項1又は2に記載の列車停止位置の検出方法。
【請求項4】
停止動作中の列車の前面に対してスポット状の測定光を左右方向に沿ってライン状に走査しつつ照射して、当該距離センサから列車の前面までの距離を測定する距離センサと、請求項1〜のいずれかに記載された列車停止位置の検出方法により、列車の停止状態及び停止位置を検出する検出部と、
を有していることを特徴とする列車停止位置の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道上を走行する列車の列車停止位置を検出する検出方法、及び検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、駅のプラットホームに入線してきた列車は、プラットホーム上に予め設定された目標停止位置に停止し、その後、乗客が乗り降りするために列車の扉の開閉が行われる。
しかしながら、様々な原因により列車が目標停止位置を超えた位置に停止したり(オーバーラン)、目標停止位置に達せずに停止したりする状況が発生する。斯かるオーバーランなどの状況が発生した場合、乗客がスムーズに乗降できないなどの不都合が発生することは言うまでもない。
【0003】
このオーバーランなどの異常停止状況は、可及的速やかに列車の運転士、車掌、駅係員に通達する必要があるが、現状では、正常停止、異常停止を問わず列車の停止位置を認識するのは、駅係員などの目視(人手)に頼らざるを得ないのが現状である。
ところで、近年、新幹線及び在来線や地下鉄などにおいては、乗客のプラットホームからの転落や列車との接触事故の防止などを目的とした安全対策の一つとして、プラットホーム上に可動柵やホームドアが設置されるようになってきている。
【0004】
このような可動柵及びホームドアにおいては、目標停止位置に停止した列車の扉の位置にあわせてドアが設けられているので、列車を確実に目標停止位置に停止させるとともに、ホームドアの開閉にあたっては、列車が目標停止位置又はその前後の許容される範囲内に停止しているのか否かの判断が要求される。斯かる判断も、駅係員などの目視(人手)に頼らざるを得ないのが現状である。
【0005】
そこで、本願出願人らは、特許文献1のような技術を既に開発している。
特許文献1は、移動体の位置を検出するための位置検出装置であって、前記移動体の画像を当該移動体の背景の画像とともに撮像可能なように設置された画像センサと、前記画像センサによって撮像された、前記移動体が写っていない画像であるベース画像と、前記移動体が写った画像である検出用画像とを比較することにより、前記移動体の位置(特に、先頭位置)を検出する位置検出部と、を有してなる位置検出装置を開示する。
【0006】
この技術を用いることで、列車の検知位置を知ることができ、ホームドアの開閉の支援や、オーバーランなどの異常停止状況の自動認識を行うことが可能となる。
また、特許文献2には、特許文献1とは別の方法で列車の停止位置を算出する技術が開示されている。
すなわち、特許文献2には、軌道を複数の区間に区分し、区分された区間のどこに列車が在線するかを検知するシステムが開示されている。このシステムには、走行する列車の列車速度を非接触式で検出する検出手段も設けられており、検出された列車速度から列車が停止しているか否かを判断し、列車が停止していると判断された在線区間に基づいて列車の停止位置も判断できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−298501号公報
【特許文献2】特開2010−52556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された技術を用いることで、列車の列車停止位置をほぼ確実に検出することは可能である。
しかしながら、特許文献1の技術は、カメラを用いた画像処理手法を採用したものであるため、本技術を採用するプラットホームの環境などにより、カメラ設置の困難性や視野確保の困難性が存在する。加えて、列車の進入に伴う振動などでカメラの取り付け角度や取り付け位置が変わってしまい、定期的なキャリブレーションが必要とされるなどのメンテナンス面での煩雑性を有している。
【0009】
一方、特許文献2の技術は、ATOやTASCなどのように列車の運行を統合的に管理したり監視したりするシステムを用いることが前提となっている。ところが、このような大がかりな制御システムは、導入に多大なコストが必要となるため、一部の路線にしか導入されておらず、特許文献2の技術を採用できる路線(駅プラットホーム)は限定的なものとなる。
【0010】
すなわち、ATOやTASCなどを用いて列車を自動で停止させるのであれば、列車の減速パターンが一定となるため、列車速度に基づいて列車の停止位置を比較的正確に判断できる可能性がある。しかし、マニュアルで列車を停止させる場合には、列車の停止位置の特定は非常に困難になる。
例えば、ブレーキを早めにかけて停止位置より相当手前から列車を緩やかに減速させるか、逆にブレーキを遅くして停止位置の寸前で列車を短時間で停止させるかは、運転士の技量、経験、運行状況などに応じて大きく変化する。また、実際に列車を運行させる際には、一旦減速させた列車を停止位置の手前で再加速したりする場合もある。当然、このようにマニュアルで列車を停止させるケースにまで、特許文献2の技術は対応できるものではない。
【0011】
本発明は、上記問題点を鑑みて為されたものであり、どのような路線に対しても低コストで導入が可能なものでありながら列車停止位置を正確に検出することができ、また装置の保守や点検に手間がかからず利便性にも優れる列車停止位置の検出方法、及び検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明は以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明に係る列車停止位置の検出方法は、停止動作中の列車の前面に対してスポット状の測定光を左右方向に沿ってライン状に走査しつつ照射する距離センサを用いて、当該距離センサから列車の前面までの距離を測定し、測定された距離に基づいて、列車の停止状態及び停止位置を検出することを特徴とするものである。
【0013】
なお、好ましくは、前記距離センサから列車の前面までの距離を一定の時間ごとに連続して測定し、連続して測定された距離の変化量が所定の閾値以下になった場合に列車が停止したと判断し、列車が停止したと判断された場合には、前記測定された距離を基に列車の停止位置を推定するのが良い。
また、好ましくは、前記測定光を、当該列車の進行方向に対して前方で且つ左右方向斜めから照射するのが良い。
【0014】
また、好ましくは、前記測定光を、前記列車の前面に設けられた連結器に対して照射するのが良い。
一方、本発明に係る列車停止位置の検出装置は、停止動作中の列車の前面に対してスポット状の測定光を左右方向に沿ってライン状に走査しつつ照射して、当該距離センサから列車の前面までの距離を測定する距離センサと、上述した列車停止位置の検出方法により、列車の停止状態及び停止位置を検出する検出部と、を有していることを特徴とするものである。
なお、本発明にかかる列車停止位置の検出方法の最も好ましい形態は、停止動作中の列車の前面に対して前方からスポット状の測定光を左右方向に沿ってライン状に走査しつつ照射する距離センサを用いて、当該距離センサから列車の前面までの距離を測定し、測定された距離に基づいて、列車の停止状態及び停止位置を検出するものであって、前記距離センサから照射される測定光が波長800nm〜1μmのレーザ光であって、前記距離センサの走査時間が10ミリ秒〜20ミリ秒とされていて、前記距離センサから列車の前面までの距離を一定の時間ごとに連続して測定し、連続して測定された距離の変化量が所定の閾値以下になった場合に列車が停止したと判断し、列車が停止したと判断された場合には、前記測定された距離を基に列車の停止位置を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る列車停止位置の検出方法及び検出装置によれば、どのような路線に対しても低コストで導入が可能なものでありながら列車停止位置を正確に検出することができ、また装置の保守や点検に手間がかからず優れた利便性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の列車停止位置の検出装置を示す斜視図である。
図2】(a)は同検出装置の正面図であり、(b)は同検出装置の平面図である。
図3】(a)は距離センサと列車との位置関係を示す図であり、(b)は検出部での判断手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る列車停止位置Pの検出方法及び検出装置の実施形態を、図を基に説明する。
本発明に係る列車停止位置Pの検出装置1は、新幹線、在来線、新交通システム、地下鉄などの駅のホームに設置されて、このホームに停止する列車Tの列車停止位置Pを検出するものである。
【0018】
なお、ここでいう列車Tには軌道上を走行するさまざまな走行体、例えば電車、モノレール、路面電車などが含まれている。また、以降の説明において、「列車停止位置P」という場合は実際に列車Tが停止した位置を意味し、「停止目標位置PO」という場合は列車Tが停止する目標として駅構内のホームや線路上に予め定められた位置を意味する。また、列車T進行方向を向いての右左方向を、説明の際の右左方向とする。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の検出装置1は、停止動作中の列車Tの前面に対して測定光2を照射して、この列車Tの前面までの距離を測定する距離センサ3と、距離センサ3で測定された距離に基づいて、列車Tの停止状態及び停止位置(列車停止位置P)を検出する検出部4と、を有している。
なお、この「停止動作中」とは、上述した停止目標位置POに停止すべく列車Tが手動または自動で減速されている状態にあることを意味する。
【0020】
距離センサ3は、スポットレーザ光を測定光2とする非接触式の距離計であり、レーザ距離計と呼ばれるものである。この距離センサ3は、列車Tの停止目標としてホーム(プラットホーム)に予め設けられた停止目標位置POを基準として、この停止目標位置POよりも列車T進行方向のさらに前方に配備されている。
距離センサ3には計測レンジ(測定光2の射程)が少なくとも数十m程度のもの(例えば20m程度)が用いられ、停止目標位置POよりも列車Tの進行方向の前方に向かって数m程度(図例では10m)離れた位置に距離センサ3が設置される。距離センサ3の具体的な設置場所としては、ホーム上に設置してもよく、プラットホーム下の空いている空間に設置してもよい。列車Tの進行方向に対して前方で且つ左右方向斜めから照射可能な位置に距離センサ3を設置する。なお、詳しくは後述するが、列車Tの前面に設けられた連結器5を狙って測定光2が照射されるように、距離センサ3を配備することが好ましい。
【0021】
距離センサ3は、列車Tの前面に向けて、列車T前面の左右方向に沿った直線上を往復しつつ走査するように(1次元のラインスキャン状となるように)測定光2を照射している。
距離センサ3は、照射した測定光2の反射光を受光することにより、距離センサ3から列車Tの前面までの距離を測定する。この測定光2は距離センサ3から一定の周期(数10キロヘルツ程度)で照射され、照射のたびに距離の計測が行われる。
【0022】
距離センサ3から照射される測定光2には、拡散が少なく直進性に優れるレーザ光(出力数10mW程度)が用いられる。このようなレーザ光の中でも、測定光2には、運転士の目に入った場合を考えて可視光領域(波長360nm〜800nm)ではなく、近赤外領域(波長800nm〜1μm程度)のレーザ光を用いることが望ましい。このような近赤外領域のレーザは、人の目で光として視認ができない不可視の光線であるため、レーザ光が運転士の運転操作や目視確認を妨げることはない。また、前述のように、特定の角度を連続照射するのではなく、短時間の照射を一定周期で繰り返しながら広い角度をスキャンするため、人の目に入るとしてもごく短時間であり、目に損傷を与えることが無い。
【0023】
この測定光2は、上述した距離センサ3から列車Tの前面に向けて照射されるものであるが、列車Tの前面の中でも特に連結器5を狙って照射されるのがよい。
というのも、連結器5は異なる種類の列車T間でも連結の互換性を保つためほぼ同じ形状、且つ同じ高さ(レール面から約1000mm)に形成されており、またその設置位置も列車T間で同じ設計となっている。それゆえ、測定光2を連結器5を狙って照射すれば、異なる種類の列車T間であっても測定条件を統一化することができる。
【0024】
なお、図1図2(b)に示す如く、測定光2の左右方向の走査幅、言い換えればスキャン角度は大きい方がよく、スキャン角度が90°程度有れば、距離センサの真横まで検出エリアとすることができる故、90°乃至はこれ以上のスキャン角度を持つことが好ましい。このようなスキャン角度とすることで、列車Tがオーバーラン状態となったとしても、列車Tの前面の右端から左端に亘り測定光2を照射でき、確実に「距離センサ3〜列車Tの前面の距離」を計測することができる。
【0025】
それゆえ、測定光2を連結器5を狙って左右水平にスキャンするように照射すれば、同じ路線を走行するどの列車Tに対しても、車種や編成によらずほぼ同じ条件で距離センサから列車Tまでの距離を測定することができ、相互乗り入れなどを行っている路線の駅においても問題なく採用できる。すなわち、距離センサ3が停止目標位置POとほぼ同じ位置にあっても測定光2を連結器5に照射することができ、距離センサ3の設置位置を停止目標位置POに近づけることが可能となる。その結果、ホームの長さに余裕がない駅であっても距離センサ3を余裕を持って設置することが可能となる。
【0026】
一方、距離センサ3に接続された検出部4は、距離センサ3で連続して測定された距離の変化量が所定の閾値以下になった場合に列車Tが停止したと判断する。加えて、列車Tが停止したと判断された場合に測定された距離を基に、列車Tの停止位置を推定する。この検出部4は、具体的にはパソコンやシーケンサなどで構成されている。
次に、検出部4で行われる信号処理、具体的には本発明の列車停止位置Pの検出方法につて説明する。この信号処理は、パソコンやシーケンサ内のプログラムを実行するという形で実現されている。
【0027】
まず、ホームに列車Tが進入してきて徐々に速度を落とし、停止目標位置POに近づいてきた場合を考える。その際、停止目標位置POよりも列車Tの進行方向に10m前方の位置に設けられた距離センサ3から測定光2が発射されていて、列車Tの前面に照射されるようになる。
距離センサ3からの測定光2が、測定角度範囲の左右一方端から他方端へスキャンするのに、通常は10ミリ秒から20ミリ秒程度かかる。すなわち距離センサ3からライン上の測定光2が10ミリ秒から20ミリ秒の間隔で照射されることとなる。
【0028】
図3(b)には、t1〜t6まで測定光2が6回照射され、その結果得られた距離データ(距離センサ3〜列車Tの前面までの距離)の曲線が示されている。
このとき、1回の測定光2の照射につき、距離センサ3では、列車Tの前面までの距離Lと測定光2の照射角度θとが計測される。このようにして得られた測定結果は、角度と距離とで示される極座標でのデータであり、このままでは、列車Tが停止目標位置POに停止したか否かがわかりづらい。そこで、本発明の検出方法では、距離センサ3で測定された測定結果(極座標データ)を直交座標データに変換する。
【0029】
具体的には、図3(a)に示す如く、距離センサ3で測定された距離Lとそのときの照射角度θで示された位置情報を(X、Y)=(Lcosθ、Lsinθ)によりデータ変換する。なお、このX−Y座標は、図3(a)に示すように扇状に走査される測定光2に対して、その走査幅(走査角)の二等分線をY軸とするものであって、X軸とY軸との双方を水平面上に有するものである。
【0030】
このようにして得られた距離データの曲線は、図3(b)のように、X−Y座標系に計測時間(t1〜t6)と共にプロットされる。
このX−Y座標にプロットされた距離データを基に、列車Tの停止、及び停止位置の検出が行われる。
列車Tの停止判断に関しては、図3(b)に示すように、ある時間に測定された距離データをX−Y座標上にプロットし、次の時間にプロットされた距離データ曲線との位置が殆ど変わらない(一定の閾値以下になった)場合に「列車Tが停止した」と判断する。具体的には、各時間での距離データ曲線で、最もY座標値が大きいものを選び出す。これは、列車Tの左端部に対応する。この位置の移動量が最も少なくなった(ある閾値以下になった)場合に、列車Tが停止したとする。図3(b)においては、時間t5〜時間t6にかけて列車Tが停止したと判断できる。
【0031】
なお、ノイズなどのような想定外の理由によって上述した差分が一時的に閾値以下となる状況での誤判定を回避すべく、差分が閾値以下になる状態が複数の測定回数に亘って連続して起こった場合に初めて列車Tが停止したと判断しても良い。
一方、図3(b)において示される距離データ曲線は、列車Tの前面の形状に相似の形となり、例えば、時間t1の曲線に記されたaの部分は列車Tの右端側を示し、bの部分は列車Tの左端側を示している。cで示される部分は列車Tの連結器5の部分を示している。
【0032】
そこで、列車Tが停止したと考えられる時間t6の曲線において、最もYの値が小さい部分(c’)を抽出する。このc’のY座標値を実空間座標系、例えば線路に沿った方向に座標軸を張り、あらかじめ設定された基準停止位置を原点とする座標系の座標値に変換する。この実空間座標系上のc’の座標値yを「列車停止位置P」として認識する。そのときの座標値yが基準停止位置に対する許容範囲(=定位置範囲、例えば基準停止位置±700mmと設定しておく)に入っているか否かで、正しい停止が行われたか否かを判定できる。
【0033】
上述の列車停止位置Pの検出方法では、列車Tが実際に停止する位置より相当手前から列車Tの前面(先頭)の位置を追跡しているので、列車Tが定位置範囲より手前で停止した場合やオーバーランした場合などにも十分に対応できる。
また、スポット状とされた測定光2を走査せずに照射する距離センサ3の場合、測定光2を常に列車Tの同じ位置に照射しなければ、正確な距離を測定できない。つまり、列車Tが移動しても列車Tと距離センサ3との相対的な位置関係が変化しないような取り付け位置、言い換えれば列車Tの前面に対面する場所に距離センサ3を設置しなければならない。当然、そのような場所に対するセンサの設置は駅の建築限界の制約などから不可能である。しかし、本発明のように測定光2をライン状に走査させる方式であれば、設置スペースの制約を受けることがない。
【0034】
さらに、上述の列車停止位置Pの検出方法では、カメラやレンズのキャリブレーションは必要なく、列車Tがいかなる減速パターンを取っても常に正しい停止状態と停止位置を高精度に測定できる。
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0035】
1 検出装置
2 測定光
3 距離センサ
4 検出部
5 連結器
θ 照射角度
P 列車停止位置
O 停止目標位置
T 列車
図1
図2
図3