(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電気抵抗による発熱を利用した接合には、パルスヒート(熱電対帰還制御)方式と呼ばれる加熱方式がある。パルスヒート方式は、ヒータチップ(ヒータツール)と呼ばれる加熱体に固定された熱電対の帰還信号と予め規定された温度との差分をとり、ヒータチップへの通電幅を制御して、ヒータチップの温度が予め規定された温度と一致するように制御する方式である。パルスヒート方式においては、温度・機械的ストレスからくる熱電対の断線などの寿命により、ヒータチップを交換することが必要になる。熱電対の応答にはタイムラグがあるため、熱電対の応答を早めるために熱容量の小さい細い熱電対を使用すると、熱電対の寿命はより短くなる。
【0003】
また、温度を帰還制御するものの他に、通電状態を帰還制御する方式が知られている。これは、通電電流やチップ間電圧をフィードバックし、設定した電流や電力、電圧が被接合物に印加されるように電極チップへの通電量を制御する方式である。
【0004】
パルスヒート方式、通電状態帰還制御方式のいずれにおいても、同一の電極で複数回溶接を行った場合、打点数(溶接回数)の増加に従って蓄熱作用により電極の温度が上昇し、この温度上昇で電極の電気抵抗が増加し、溶接電流が不足気味になるという問題点があった(課題1)。特に電極の主材がタングステンやモリブデンであった場合、これら主材の熱伝導率が低いことから、この問題が顕著に現れる。また、所定の打点数ごとに電極のドレッシング(研磨)を行うと、ドレッシングの度に電極先端の面積が増加し、溶接電流の密度が減少するという問題点があった(課題2)。例えば
図5に示すように電極80は先端部に向かって細くなるテーパ状の断面形状になっているので、先端部を研磨すると、先端部の面積が増加する。さらに、電極先端の面積の増加で、被接合物に対する集中的な荷重が減少するという問題があった(課題3)。
【0005】
従来、課題1を解決する技術として、打点数の増加に応じて溶接電流を増加させる方法が知られている(特許文献1参照)。また、特許文献1では、電極の温度を取得するセンサを設け、電極の温度が過度に上昇した場合に溶接のインターバルを延長する技術が提案されている。さらに、電極の温度が所定値以下であることを溶接動作の起動条件とし、電極の寿命短縮を抑制する技術が提案されている(特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に記載された技術では、課題1に対応することはできるが、課題2,3を解消することはできない。また、特許文献1,2に記載された技術では、電極の温度を取得する熱電対等のセンサが必要であり、熱電対が断線した場合や、電極の温度を取得するセンサが装置にない場合には、対応することができない。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、電極の温度を検出することなく、電極の蓄熱状態や電極の先端部の状態に応じた適切な溶接を実現することができる抵抗溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の抵抗溶接装置は、被接合物と当接する第1の電極と、前記被接合物を間に挟んで前記第1の電極と対向する第2の電極と、前記第1、第2の電極のうち少なくとも一方を加圧し、前記被接合物を前記第1、第2の電極によって挟持させる加圧機構と、前記第1、第2の電極間に電流を供給する溶接電源と、望ましい溶接条件として前記第1、第2の電極への望ましい通電の波形と前記被接合物に印加すべき望ましい圧力とを、前記第1、第2の電極のドレッシング回数毎および打点回数毎に予め記憶する記憶手段と、前記第1、第2の電極への通電の波形を検出する通電波形検出手段と、前記被接合物に印加される圧力を検出する圧力検出手段と、前記第1、第2の電極の現在のドレッシング回数と直近のドレッシングから数えた現在の打点回数とに対応する溶接条件を前記記憶手段から取得して、溶接中に前記通電波形検出手段によって検出される通電波形が前記溶接条件で規定されている通電波形と一致するように前記第1、第2の電極への通電量および通電時間を制御すると共に、溶接中に前記圧力検出手段によって検出される圧力が前記溶接条件で規定されている圧力と一致するように前記加圧機構を制御する制御手段と
、前記溶接条件の設定のための溶接試験中に前記第1、第2の電極の、前記被接合物と当接する先端部の温度を検出する温度検出手段と、前記溶接試験において前記被接合物の望ましい溶接が実施できたときに前記通電波形検出手段によって検出された通電波形と前記圧力検出手段によって検出された圧力とを、前記溶接条件として現在のドレッシング回数と現在の打点回数と対応付けて前記記憶手段に格納するデータ作成手段とを備え
、前記制御手段は、前記溶接試験中に前記温度検出手段によって検出される温度が予め規定された温度と一致するように前記第1、第2の電極への通電量および通電時間を制御することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の抵抗溶接装置の1構成例において、前記記憶手段は、溶接のインターバル延長条件として、インターバルを延長すべきドレッシング回数および打点回数を予め記憶し、前記制御手段は、前記インターバル延長条件が成立する場合、所定の延長時間だけ待機してから溶接を実施することを特徴とするものである。
また、本発明の抵抗溶接装置の1構成例において、前記記憶手段は、ドレッシング実施条件として、前記第1、第2の電極のドレッシングを実施すべきドレッシング回数および打点回数を予め記憶し、前記制御手段は、前記ドレッシング実施条件が成立する場合、前記第1、第2の電極のドレッシングを実施すべきことをユーザに通知することを特徴とするものである。
また、本発明の抵抗溶接装置の1構成例において、前記記憶手段は、電極交換実施条件として、前記第1、第2の電極の交換を実施すべきドレッシング回数および打点回数を予め記憶し、前記制御手段は、前記電極交換実施条件が成立する場合、前記第1、第2の電極の交換を実施すべきことをユーザに通知することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の抵抗溶接装置の1構成例は、さらに、前記溶接試験において前記被接合物の望ましい溶接が実施できなかったときに前記通電波形検出手段によって検出された通電波形と前記圧力検出手段によって検出された圧力とを補完する補完手段を備え、前記データ作成手段は、前記補完手段が補完した通電波形と圧力とを、前記溶接条件として現在のドレッシング回数と現在の打点回数と対応付けて前記記憶手段に格納することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、予め溶接条件を設定しておき、溶接条件に応じて溶接を実施することにより、第1、第2の電極のドレッシング回数および打点回数に応じた適切な溶接、すなわち電極の蓄熱状態やドレッシングによる電極の先端部の状態に応じた適切な溶接を実施することができる。本発明では、溶接の実施時には温度検出は不要なので、熱電対が断線している場合であっても、過去のデータから得られた溶接条件を利用することで、適切な溶接を実施することができる。また、本発明では、熱電対等の温度センサがない抵抗溶接装置であっても、電極と被接合物と電極周りの熱環境とが溶接条件設定時と同等であれば、別の抵抗溶接装置で求めた溶接条件を適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る抵抗溶接装置の構成を示すブロック図である。
本実施の形態の抵抗溶接装置は、スタートスイッチ2と、整流回路3と、コンデンサ4と、インバータ5と、溶接トランス6と、ダイオード7と、溶接ヘッド8と、ホール素子9と、電流検出部10と、電圧検出部11と、電力検出部12と、温度検出部13と、圧力検出部14と、制御部15と、操作部16と、データ作成部17と、電気的に書き換え可能な不揮発性の記憶部18と、表示部19とを有する。
【0015】
スタートスイッチ2と整流回路3とコンデンサ4とインバータ5と溶接トランス6とダイオード7とは、溶接ヘッド8に電流を供給する溶接電源を構成している。また、ホール素子9と電流検出部10と電圧検出部11と電力検出部12とは、溶接ヘッド8への通電波形を検出する通電波形検出手段を構成している。また、データ作成部17は、溶接条件を補完する補完手段を構成している。
【0016】
図2は溶接ヘッド8の拡大断面図である。溶接ヘッド8は電極80a,80bを備えている。電極80a,80bは、Cu合金からなる電極本体81a,81bと、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)のうち少なくとも1つの元素を含む金属または合金からなる先端部82a,82bとから構成される。さらに、溶接ヘッド8は、先端部82a,82bに取り付けられた熱電対83a,83bと、電極80a,80bを上下させて被接合物85を挟み込み加圧する加圧機構84a,84bとを備えている。加圧機構84a,84bには、図示しないロードセルが設けられており、被接合物85に加わる圧力の大きさを電気信号に変換できるようになっている。
【0017】
以下、抵抗溶接装置の動作を説明する。本実施の形態では、複数枚のアルミニウム等の金属箔を積層した積層体を被接合物85として説明するが、これに限定されるものではない。
最初に、溶接ヘッド8の加圧機構84a,84bは、
図2に示すように電極80a,80bによって被接合物85を上下方向(積層体の積層方向に沿った方向)から挟み込み加圧する。なお、
図2の例では、加圧機構84a,84bがそれぞれ電極80a,80bに圧力を加えるようになっているが、電極80a,80bのうちどちらか一方のみに圧力を加えるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0018】
例えばユーザが操作部16を操作して溶接開始を指示すると、操作部16からスタート信号が出力され、スタートスイッチ2がオンになる。スタートスイッチ2がオンになると、整流回路3は、交流200Vの商用3相交流電源1の交流出力を全波整流し、整流回路3の出力端間に並列接続されたコンデンサ4を充電する。この整流回路3は、6個のダイオード30を用いた3相全波混合ブリッジで構成される。
【0019】
インバータ5は、コンデンサ4の充電電圧を交流電圧に変換して、溶接トランス6の1次側に供給する。インバータ5は、4個のNPNトランジスタ50からなるブリッジで構成される。溶接トランス6の2次側出力は、整流器(ダイオード)7で全波整流されて電極80a,80bに導かれる。これにより、電極80a,80b間に大電流を流し、発生するジュール熱で被接合物85の接合面(金属箔同士の接合面)を溶融させて接合する。
【0020】
電流検出部10は、溶接トランス6の2次側に設けられたホール素子9の出力から、溶接トランス6の2次側を流れる電流(つまり、電極80a,80bを流れる溶接電流)を検出する。電圧検出部11は、電極80a,80b間に印加される溶接電圧を検出する。電力検出部12は、電流検出部10が検出した溶接電流の値と電圧検出部11が検出した溶接電圧の値とを積算することにより、電極80a,80bに供給される溶接電力を検出する。温度検出部13は、熱電対83a,83bからの電圧に基づいて先端部82a,82bの温度を検出する。圧力検出部14は、加圧機構84a,84bに設けられたロードセルの出力から、被接合物85に印加される圧力を検出する。
【0021】
記憶部18には、電極80a,80bの現在のドレッシング回数N1(研磨回数)と、直近のドレッシングから数えた現在の打点回数N2(溶接回数)とが記憶されている。また、記憶部18には、望ましい溶接条件として電極80a,80bへの望ましい通電の波形と被接合物85に印加すべき望ましい圧力とが、上記ドレッシング回数毎および上記打点回数毎に予め記憶されている。通電波形としては、溶接電流波形、溶接電圧波形、溶接電力波形がある。
【0022】
また、記憶部18には、溶接のインターバル延長条件として、インターバルを延長すべきドレッシング回数N3および打点回数N4と、延長時間とが予め記憶されている。また、記憶部18には、ドレッシング実施条件として、電極80a,80bのドレッシングを実施すべきドレッシング回数N5および打点回数N6が予め記憶されている。さらに、記憶部18には、電極交換実施条件として、電極80a,80bの交換を実施すべきドレッシング回数N7および打点回数N8が予め記憶されている。
【0023】
図3は溶接時の制御部15の動作を示すフローチャートである。制御部15は、操作部16からスタート信号が出力されると(
図3ステップS1においてYES)、記憶部18から現在のドレッシング回数N1の情報と、直近のドレッシングから数えた現在の打点回数N2の情報とを取得する(ステップS2)。そして、制御部15は、取得した打点回数N2を1増やす(ステップS3)。
【0024】
次に、制御部15は、ドレッシング回数N1および打点回数N2に対応する溶接条件を記憶部18から取得すると共に、インターバル延長条件とドレッシング実施条件と電極交換実施条件を記憶部18から取得する(ステップS4)。
【0025】
制御部15は、インターバル延長条件が成立するかどうかを判定する(ステップS5)。制御部15は、現在のドレッシング回数N1がインターバルを延長すべきドレッシング回数N3と等しく(N1=N3)、かつ現在の打点回数N2がインターバルを延長すべき打点回数N4と等しい(N2=N4)場合、インターバル延長条件が成立したと判定して、溶接のインターバルを延長すべき旨のメッセージを表示部19に表示させて(ステップS6)、インターバル延長条件で規定されている延長時間だけ待機する(ステップS7)。延長時間だけ待機することにより、電極80a,80bの温度を下げることができ、電極80a,80bの電気抵抗の増加を軽減することができる。
【0026】
インターバル延長条件が成立しない場合あるいはインターバル延長条件が成立してから延長時間が経過した場合、制御部15は、ドレッシング実施条件が成立するかどうかを判定する(ステップS8)。制御部15は、現在のドレッシング回数N1がドレッシングを実施すべきドレッシング回数N5と等しく(N1=N5)、かつ現在の打点回数N2がドレッシングを実施すべき打点回数N6と等しい(N2=N6)場合、ドレッシング実施条件が成立したと判定して、電極80a,80bのドレッシングを実施すべき旨のメッセージを表示部19に表示させて(ステップS9)、溶接動作を終了する。
【0027】
ユーザは、表示部19に表示されたメッセージを見て、電極80a,80bの先端部82a,82bのドレッシングを実施する。電極80a,80bの先端部82a,82bのドレッシングが実施された場合、例えばユーザがドレッシングを実施した旨の報告を操作部16に入力すると、操作部16からドレッシング実施情報が出力される。このドレッシング実施情報に応じて、制御部15は、記憶部18に記憶されている現在のドレッシング回数N1を1増やすと共に、記憶部18に記憶されている現在の打点回数N2を0にリセットする。
【0028】
次に、制御部15は、ドレッシング実施条件が成立しない場合、電極交換実施条件が成立するかどうかを確認する(ステップS10)。制御部15は、現在のドレッシング回数N1が電極交換を実施すべきドレッシング回数N7と等しく(N1=N7)、かつ現在の打点回数N2が電極交換を実施すべき打点回数N8と等しい(N2=N8)場合、電極交換実施条件が成立したと判定して、電極80a,80bの交換を実施すべき旨のメッセージを表示部19に表示させて(ステップS11)、溶接動作を終了する。
【0029】
ユーザは、表示部19に表示されたメッセージを見て、電極80a,80bの交換を実施する。電極80a,80bの交換が実施された場合、例えばユーザが電極80a,80bを交換した旨の報告を操作部16に入力すると、操作部16から電極交換実施情報が出力される。この電極交換実施情報に応じて、制御部15は、記憶部18に記憶されている現在のドレッシング回数N1と現在の打点回数N2とを0にリセットする。
【0030】
制御部15は、ドレッシング実施条件と電極交換実施条件のいずれも成立しない場合、ステップS4で取得した溶接条件に従ってインバータ5をPWM方式によって位相制御すると共に、溶接条件に従って加圧機構84a,84bを制御する(ステップS12)。具体的には、制御部15は、電極80a,80bへの通電波形が溶接条件で規定されている通電波形と一致するように、インバータ5のNPNトランジスタ50のオン/オフ制御を行う。同時に、制御部15は、圧力検出部14によって検出される圧力が溶接条件で規定されている圧力と一致するように、加圧機構84a,84bを制御する。
【0031】
溶接条件で規定されている通電波形が溶接電流波形である場合、制御部15は、電流検出部10によって検出される溶接電流波形が溶接条件で規定されている溶接電流波形と一致するように、インバータ5を位相制御する。また、溶接条件で規定されている通電波形が溶接電圧波形である場合、制御部15は、電圧検出部11によって検出される溶接電圧波形が溶接条件で規定されている溶接電圧波形と一致するように、インバータ5を位相制御する。また、溶接条件で規定されている通電波形が溶接電力波形である場合、制御部15は、電力検出部12によって検出される溶接電力波形が溶接条件で規定されている溶接電力波形と一致するように、インバータ5を位相制御する。
【0032】
なお、溶接条件で規定されている通電波形として、溶接電流波形、溶接電圧波形、溶接電力波形の3つが規定されている場合、ユーザが操作部16を操作してモード(電流モード、電圧モード、電力モード)を選択し、ユーザが選択したモードに従って制御部15が制御を行うようにしてもよい。ユーザが電流モードを選択した場合には通電波形として溶接電流波形を用い、ユーザが電圧モードを選択した場合には通電波形として溶接電圧波形を用い、ユーザが電力モードを選択した場合には通電波形として溶接電力波形を用いることになる。
【0033】
溶接終了後、制御部15は、記憶部18に記憶されている打点回数N2を、ステップS3で更新した現在の打点回数N2の値に書き換える(ステップS13)。こうして、溶接時の動作が終了する。
【0034】
次に、溶接前に予め行われる溶接条件設定時の動作について説明する。
図4は溶接条件設定時の抵抗溶接装置の動作を示すフローチャートである。
溶接条件設定のための溶接試験時には、電極80a,80bは新品に交換される。したがって、ドレッシング回数N1と打点回数N2の初期値は共に0である。制御部15は、記憶部18から現在のドレッシング回数N1と現在の打点回数N2とを取得する(
図4ステップS20)。
【0035】
制御部15は、被接合物85の溶接を上記と同様に実施する(ステップS21)。ただし、ここでは、制御部15は、温度検出部13によって検出される先端部82a,82bの温度が予め規定された温度になるように、インバータ5を位相制御して、電極80a,80bへの通電量および通電時間を制御する。
【0036】
制御部15は、溶接中に電流検出部10が検出した溶接電流波形、溶接中に電圧検出部11が検出した溶接電圧波形、溶接中に電力検出部12が検出した溶接電力波形、溶接中に温度検出部13が検出した温度、および溶接中に圧力検出部14が検出した圧力のデータを取得して、これらのデータを記憶部18に保存する(ステップS22)。また、制御部15は、これらのデータを表示部19に表示させる(ステップS23)。溶接終了後、制御部15は、ステップS20で取得した打点回数N2を1増やす(ステップS24)。
【0037】
データ作成部17は、ステップS22で記憶部18に保存された温度のデータを調べて、溶接のインターバルを延長すべきかどうかを判定する(ステップS25)。データ作成部17は、記憶部18に保存された温度の値が予め規定された限界温度よりも高い場合、インターバルを延長すべきと判定して、溶接のインターバル延長条件を設定する(ステップS26)。具体的には、データ作成部17は、現在のドレッシング回数N1をインターバルを延長すべきドレッシング回数N3とし、現在の打点回数N2をインターバルを延長すべき打点回数N4として記憶部18に設定すると共に、所定の延長時間を記憶部18に設定する。なお、インターバルを延長すべきかどうかは、ユーザが表示部19に表示された温度のデータを見て判定したり、被接合物85の溶接の状態を見て判定したりしてもよく、ユーザが溶接のインターバルを延長すべきことをデータ作成部17に指示してもよい。
【0038】
次に、データ作成部17は、ドレッシング実施条件を設定すべきかどうかを判定する(ステップS27)。データ作成部17は、ユーザの指示に応じてドレッシング実施条件を設定する。つまり、ユーザが被接合物85の溶接の状態や電極80a,80bの状態を見て電極80a,80bのドレッシングを実施すべきと判定した場合、データ作成部17は、現在のドレッシング回数N1をドレッシングを実施すべきドレッシング回数N5とし、現在の打点回数N2をドレッシングを実施すべき打点回数N6として記憶部18に設定する(ステップS28)。ドレッシング実施条件の設定に応じて電極80a,80bの先端部82a,82bのドレッシングが実施されると、データ作成部17は、記憶部18に記憶されている現在のドレッシング回数N1を1増やすと共に、記憶部18に記憶されている現在の打点回数N2を0にリセットする。
【0039】
次に、データ作成部17は、電極交換実施条件を設定すべきかどうかを判定する(ステップS29)。データ作成部17は、ユーザの指示に応じて電極交換実施条件を設定する。つまり、ユーザが被接合物85の溶接の状態や電極80a,80bの状態を見て電極80a,80bの交換を実施すべきと判定した場合、データ作成部17は、現在のドレッシング回数N1を電極80a,80bの交換を実施すべきドレッシング回数N7とし、現在の打点回数N2を電極80a,80bの交換を実施すべき打点回数N8として記憶部18に設定する(ステップS30)。電極交換実施条件の設定に応じて電極80a,80bの交換が実施されると、データ作成部17は、記憶部18に記憶されている現在のドレッシング回数N1と現在の打点回数N2とを0にリセットする。
【0040】
次に、データ作成部17は、溶接条件を補完すべきかどうかを判定する(ステップS31)。データ作成部17は、ユーザの指示に応じて溶接条件を補完する。つまり、溶接のインターバルを延長することにより、ステップS22で記憶部18に保存されたデータと溶接条件が変わる場合、あるいはユーザが被接合物85の溶接の状態を見て溶接条件を変更すべきと判定した場合、ユーザは、操作部16を操作して、溶接条件を補完すべきことをデータ作成部17に対して指示する。データ作成部17は、ステップS22で記憶部18に保存されたデータを変更して、溶接条件を補完する(ステップS32)。
【0041】
具体的には、データ作成部17は、操作部16を操作するユーザの指示に応じて、電極80a,80bへの望ましい通電波形(溶接電流波形、溶接電圧波形、溶接電力波形)と被接合物85に印加すべき望ましい圧力とを変更してもよいし、自動的に補完してもよい。そして、データ作成部17は、今回の溶接条件と現在のドレッシング回数N1と現在の打点回数N2とを対応付けて記憶部18に設定する(ステップS33)。溶接条件を補完しない場合は、ステップS22で記憶部18に保存された通電波形(溶接電流波形、溶接電圧波形、溶接電力波形)と圧力とがそのまま今回の溶接条件となる。
【0042】
なお、溶接条件を自動的に補完する場合には、望ましい溶接が実施できた過去の溶接の溶接条件と、望ましい溶接が実施できた次回以降の溶接の溶接条件とを基に、今回の溶接の溶接条件を補完することになる。したがって、溶接条件を自動的に補完する場合には、望ましい溶接が実施できた次回以降の溶接の溶接条件が必要になるので、データ作成部17は、ステップS22で取得した通電波形(溶接電流波形、溶接電圧波形、溶接電力波形)と圧力とを、現在のドレッシング回数N1および現在の打点回数N2と対応付けて記憶部18に格納しておき、次回以降の溶接で望ましい溶接が実施できた溶接条件が取得できた時点で、通電波形と圧力を補完することになる。
【0043】
そして、データ作成部17は、記憶部18に記憶されている打点回数N2を、ステップS24で更新した現在の打点回数N2の値に書き換える(ステップS34)。こうして、現在のドレッシング回数N1および現在の打点回数N2に対応する溶接条件を設定できたことになる。被接合物85を交換しながら、ステップS20〜S34の処理を、例えば数回〜数百回繰り返し実施することにより、様々なドレッシング回数N1および打点回数N2に対応する溶接条件を収集することができる。
【0044】
以上のように、本実施の形態では、予め溶接条件を設定しておき、溶接条件に応じて溶接を実施することにより、ドレッシング回数および打点回数に応じた適切な溶接、すなわち電極80a,80bの蓄熱状態やドレッシングによる電極80a,80bの先端部82a,82bの状態に応じた適切な溶接を実施することができる。本実施の形態では、溶接条件の設定時には温度検出が必要であるが、溶接の実施時には温度検出は不要なので、熱電対等の温度センサがない抵抗溶接装置であっても、電極80a,80bと被接合物85と電極80a,80b周りの熱環境とが溶接条件設定時と同等であれば、別の抵抗溶接装置で求めた溶接条件を適用することができる。
【0045】
なお、ステップS21の溶接では、電極80a,80bの先端部82a,82bの温度を被接合物85の融点よりも高い温度に設定して、被接合物3を溶融させることを想定しているが、制御部15は、温度検出部13によって検出される先端部82a,82bの温度が被接合物85の融点未満の温度になるように、インバータ5を位相制御して、電極80a,80bへの通電量および通電時間を制御してもよい。被接合物85がAlの場合、Alの融点は660℃なので、先端部82a,82bの温度を例えば600℃に設定する。
【0046】
Alからなる被接合物85は、Mo,W,Fe,Ni,Tiのうち少なくとも1つの元素を含む金属または合金からなる先端部82a,82bよりも電気抵抗が低い。したがって、被接合物85の温度は、先端部82a,82bの温度よりも低くなる。このように、先端部82a,82bの温度を被接合物85の融点未満の温度に設定すると、被接合物85を溶融させる抵抗溶接とは異なる原理の接合、具体的には固相拡散接合が行われる。固相拡散接合は、被接合物85の接合面(金属箔同士の接合面)にある酸化被膜や微小な異物を加圧と加熱により破壊しながら、接合面を密着させて、微視的な凹凸の塑性変形と凝着および接合面間の原子の拡散を利用して被接合物85を接合する方法である。すなわち、固相拡散接合は、接合工程中に接合面の清浄化と密着化とを同時に行う。
【0047】
溶接条件設定のための溶接試験で固相拡散接合を行い、溶接条件を収集すれば、この溶接条件を利用して溶接を実施する場合にも固相拡散接合が行われることになる。固相拡散接合では、電極80a,80bの先端部82a,82bの温度が従来の抵抗溶接の場合よりも低い温度に設定されることになるので、抵抗溶接と比較して先端部82a,82bの消耗を抑えることができる。
【0048】
なお、本実施の形態の制御部15とデータ作成部17と記憶部18の一部の機能は、CPU、記憶装置および外部とのインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。