(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記栄養成分よりも比重が小さく周囲の水より比重の大きい成分で形成され、前記栄養成分の表面に浮かべられることで、前記栄養成分の表面を乱したり前記栄養成分を攪拌したりする水流の発生を抑制する水流抑制層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水中設置構造物。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第一の実施形態]
図1は、本発明の水中設置構造物の第一の実施形態にかかり、その構成を説明する分解斜視図である。
水中設置構造物1は、栄養成分を収容して水底に設置される基体11と、この基体11に載置された筒状の遮蔽体14と、この遮蔽体14の内部に収容される生物担持体16とから概略構成される。
【0016】
[基体]
図1に示すように、基体11は、栄養成分を収容する収容部111を備えた箱状の基体本体110と、収容部111の天井部分に設けられ、収容部111に収容した栄養成分が水中に離散しないように抑制する天井部112とを有している。
天井部112には、遮蔽体14が設置される領域(
図1において二点鎖線で示す領域)の内側に、放出部としての放出孔113が一つ又は複数(図示の例では四つ)形成されている。この放出孔113は、収容部111に連通していて、収容部111内の栄養成分を水中に放出することができるようになっている。
なお、栄養成分の補充は放出孔113から行うようにしてもよいが、この実施形態では、天井部112における前記領域の外側の遮蔽体14と干渉しない領域に栄養分を補充するための補充孔114を形成し、蓋115によって開閉できるようにしている。
【0017】
基体11は、コンクリートや石材、木材、樹脂、金属などで形成することができる。基体11を水底に設置する場合には、安定性を高めるために比重の大きいコンクリートや石材で形成するのが好ましい。
もちろん、基体11は金属や樹脂又は木材で形成してもよいが、樹脂又は木材で形成する場合には、基体11が流されないようにアンカーで水底に固定したり、バラストを取り付けるが好ましい。
また、収容部111の内壁には、収容した栄養成分による基体11の腐食や劣化、栄養成分の漏出を防止するために、樹脂コーティング等を施してもよいし、樹脂などで形成された別体の容器を収容部111の内部に嵌め込むようにしてもよい。
【0018】
[遮蔽体]
遮蔽体14は、収容部111から栄養成分が水流によらないで自然に放出されるようにするために、基体11の放出孔113付近での水流の発生を抑制する目的と、放出孔113から放出された栄養成分を一定領域内に滞留させ藻類の発生や魚類の誘因を促進させる目的で基体11に設置される。
遮蔽体14は、上下両端が開口する筒状の遮蔽体本体140と、この遮蔽体本体140の上部開口を閉塞する天板141とを有している。
天板141には、魚等の水棲生物が出入りできるように孔143が形成され、遮蔽体本体140の周囲には、水流が出入りできる孔142が複数形成されている。
【0019】
なお、図示の例では、天板141に対して比較的大きな角形状の孔143が一つ形成されているが、孔143は繁殖させようとする水棲生物が出入りできる大きさ及び形であればよい。
例えば、小さい円形状の孔143を天板141に複数形成してもよく、孔142から水棲生物が出入りできるのであれば、天板141に孔143は特に形成しなくてもよい。
さらに、基体11の放出孔113の周囲に水流を発生させないのであれば、天板141は特に設けなくてもよい。
【0020】
孔142は、主として水棲生物の生息に必要な水流を遮蔽体本体140内に導入する目的で形成される。この目的を達成できるのであれば、孔142の大きさや形状及び遮蔽体本体140における配置位置は問わないが、可能な限り、基体11の放出孔113の周囲に水流を起こさせないものを選択する。
この目的を達成できるのであれば、例えば孔143の形状は、図示の例のように上下方向に形成されたスリット状のものであってもよいし、丸孔状又は角孔状のものであってもよい。さらに、天板141の孔143によってこの目的を達成できるのであれば、孔142は特に設けなくてもよい。
【0021】
[生物担持体]
生物担持体16は、遮蔽体本体140内における栄養成分の滞留を補助するとともに、水棲生物の繁殖と定着を促す目的で設けられる。
この実施形態において生物担持体16は、遮蔽体本体140内に固定される支持部材162と、この支持部材162から吊り下げられるリボン状,ブラシ状又は短冊状の吊下部材161とから構成される。隣り合う吊下部材161どうしが接触しないように、適宜に吊下部材161,161の間に接触防止部材を介在させてもよい。
【0022】
吊下部材161は、藻類や海草類などの水棲生物が発生及び定着しやすい材質のものを選択するのがよく、例えば、繊維や表面に多数の凹凸を形成した樹脂などを挙げることができる。この種の繊維又は樹脂の材料としては、人工魚礁用として一般に利用されているものを用いることができるが、例えば特開平09−118775号公報に記載されているような生物付着性樹脂組成物を用いてもよい。
なお、吊下部材161には、発生させようとする例えば藻類や海草類などの種を予め植え込んでおいてもよい。
【0023】
[栄養成分]
上記構成の本発明の水中設置構造物1に使用される栄養成分としては、液状又は半液状の無機栄養物や有機栄養物を用いることができる。この栄養成分の比重は、周囲の水より若干大きい程度とするのがよく、1.05〜1.3程度であるのが好ましい。比重がこれより小さいと、栄養成分が早期に拡散、放出されてしまい、比重がこれより大きいと、栄養成分が拡散されにくくなって魚集効果を高めることができなくなる。
【0024】
これら無機栄養物や有機栄養物に無機塩や有機塩を添加した無機栄養塩や有用有機物を栄養成分として用いてもよい。
無機塩や有機塩を添加することで、例えばアミノ酸等の有機栄養物の腐敗を遅らせることができる。例えば、アミノ酸に10〜30重量%程度、好ましくは20重量%程度の無機塩又は有用塩を添加することで、栄養成分の腐敗を一年程度遅らせることができる。
【0025】
上記の栄養成分は、比重が水(海水を含む)より大きいため、水中において補充孔114から収容部111内に栄養成分を流し込むことができる。また、水より比重が大きいため、収容部111内では底部に栄養成分が溜まり、かつ、放出孔113の周辺での水流が抑制されているため、栄養成分は表面から徐々に自然作用により放出孔113から遮蔽体本体140の内部に放出されることになる。
さらに、アルギン酸やゲル化剤、寒天などを添加して粘性を増すことで、水流による攪拌の影響をより小さくして、自然拡散による放出孔113からの栄養成分の放出をより容易にすることができる。
【0026】
[作用]
上記構成の本発明の水中設置構造物1の作用を、
図2を参照しながら説明する。
図2は、
図1の水中設置構造物を水底に設置したときの断面図である。
栄養成分Nは、比重が周囲の水より大きいため、水中において補充孔114から収容部111内に投入することもできるし、ホースを補充孔114に接続して船上又は陸上から投入することもできる。
収容部111に収容された栄養成分Nの表面には水が接触しているが、水流は放出孔113の上に載置された遮蔽体14によって遮蔽され、栄養成分Nの表面が乱されたり栄養成分が攪拌されたりすることはない。そのため、栄養成分Nは自然放出作用により徐々に放出孔113から遮蔽体本体140の内部に放出されることになる。遮蔽体本体140の内部に放出された栄養成分Nは、生物担持体16の吊下部材161に付着したり、吊下部材161の間を浮遊したりして、遮蔽体本体140の内部に滞留し、藻類や海草類などの発生と吊下部材161への定着が促進される。これにより、魚類が水中設置構造物1の周囲に集まり、魚巣や魚群が形成される。
収容部111からは、長期に亘って栄養成分Nが放出され続けるので、上記の作用が長期に亘って持続され、水中設置構造物1の周囲や内部に魚巣や魚群が定着する。
【0027】
[第二の実施形態]
次に、本発明の第二の実施形態にかかる水中設置構造物1′について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、本発明の第二の実施形態にかかり、水中設置構造物を水底に設置したときの断面図である。なお、
図3において先の実施形態と同一部位、同一箇所には同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
この第二の実施形態の水中設置構造物1′において第一の実施形態の水中設置構造物1と異なるところは、天井部112の放出孔113に筒状の放出筒117を設けている点及びこの放出筒117の開口部分を包み込むようにカバー118を被せている点である。カバー118と放出筒117の開口部分との間には隙間が形成されていて、この隙間を通して栄養成分Nが遮蔽体本体140の内部へと放出される。
【0028】
このような構成とすることで、水流により影響をより抑制することができ、潮流や水流の速い水中にも本発明の水中設置構造物1′を設置して、藻類や海草類などの繁殖促進や魚巣や魚群が定着を図ることが可能になる。
また、この実施形態では、補充口114に収容部111の底部近くまで伸びる導通管119を設けてあり、新鮮な栄養成分Nが補充口114から収容部111内の古い栄養成分Nの下に投入されるようになっている。このようにすることで、収容部111内に残った古い栄養成分Nの一部が腐敗することによる新鮮な栄養成分Nの腐敗の促進を抑制することができる。
【0029】
[第三の実施形態]
次に、本発明の第三の実施形態にかかる水中設置構造物1″について、
図4を参照しながら説明する。
図4(a)は、本発明の第三の実施形態にかかり、水中設置構造物を水底に設置したときの断面図、(b)は隔壁の平面図である。なお、
図4において
図1の実施形態と同一部位、同一箇所には同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0030】
この第三の実施形態の水中設置構造物1″において第一の実施形態の水中設置構造物1と異なるところは、収容部111内の上下方向に、複数層の隔壁120を設けている点である。この隔壁120は、収容部111内で栄養成分Nの表面が水流の影響によって乱れたり栄養成分が攪拌されたりしないように抑制して、栄養成分Nが可能な限り自然放出によって放出孔113から放出されるようにするために設けられる。
【0031】
隔壁120には、
図4(b)の平面図に示すように、複数の孔120aを形成するか、隔壁120をメッシュ状部材から形成することで栄養成分Nと水との接触面積を一定以上に維持する。
このような構成とすることで、水流により影響をより抑制することができ、潮流や水流の速い水中にも本発明の水中設置構造物1″を設置して、藻類や海草類などの繁殖促進や魚巣や魚群が定着を図ることが可能になる。
【0032】
なお、第二の実施形態の放出筒117及びカバー118を組み合わせることで、より高い水流抑制効果を得ることができる。また、隔壁は
図4に示すような横方向に限らず、縦方向に設けるものとしてもよい。
【0033】
[第四の実施形態]
次に、本発明の第四の実施形態にかかる水中設置構造物2について、
図5を参照しながら説明する。
図5(a)に示すように、この実施形態では、箱状又はフレーム状に形成された基体21の中に、栄養成分Nを収容する有底筒状の収容筒24が収容される。図示の例では、基体21に収容する収容筒24を6本としているが、これ以外の本数であってもよい。
【0034】
栄養成分は、収容筒24の開口24aから放出されるが、放出量を調整するために、開口25aの径を適宜に調整したカバー25を収容筒24の上端に取り付けるようにしてもよい。
この実施形態では、栄養成分の補充は収容筒24の開口24aから行う。
図5では、図示の便宜上、一部を省略して記載しているが、この実施形態において基体21の上部には、開口24aの周囲の水流を抑制するために、ブラシ状の遮蔽体24が開口24aを取り囲むように配置される。そして、遮蔽体24の内側が、放出された栄養成分を滞留する滞留部となることで藻類や海草類などの発生が促進される。
【0035】
なお、この実施形態においても、遮蔽体24の中に生物担持体を設けてもよいが、遮蔽体24を図示するようなブラシ状のものや短冊状のもの又はリボン状のもので形成した場合には、これらの表面を生物担持体として利用してもよい。
また、
図5(b)に示すように、収容筒24に収容する栄養成分Nの表面に、栄養成分Nより比重が小さく、周囲の水より比重の大きい材料を浮かべることで、水流抑制層Naを形成してもよい。この水流抑制層Naは油脂成分等で形成され、栄養成分Nが水流抑制層Naに浸潤又は透過しつつ若しくは水流抑制層Naにできた破れなどの隙間や穴を通して、開口24aから水中に拡散される。このような水流抑制層Naを形成する栄養成分Nの表面の乱れや攪拌を抑制することができる。なお、このような水流抑制手段Naは、攪拌抑制手段としても作用する。
【0036】
[第五の実施形態]
次に、本発明の第五の実施形態にかかる水中設置構造物3について、
図6を参照しながら説明する。
なお、
図6において第一の実施形態と同一部位、同一部材には同一の符号を付し、詳しい説明は省略する。
この実施形態では、天井部112の放出孔113の上に筒状の遮蔽体34を取り付けている。この遮蔽体34には、上底部分や周面部分に栄養成分が放出される開口341を複数形成している。遮蔽体34の周囲にさらに水流を抑制するための別の遮蔽体を設けてもよい。
この実施形態では、遮蔽体34の表面を粗したり、凹凸や溝を形成するなどして、藻類や海草類などの水棲生物が定着しやすいようにしてある。すなわち、この実施形態では、遮蔽体34の表面が生物担持体を構成している。
【0037】
[第六の実施形態]
次に、本発明の第六の実施形態にかかる水中設置構造物4について、
図7を参照しながら説明する。
なお、
図7において第二の実施形態と同一部位、同一部材には同一の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0038】
この実施形態の水中設置構造物4は、第二の実施形態の水中設置構造物1′から遮蔽体14と生物担持体16を取り除き、生物担持体46を天井部112に上面に敷設した構成としてある。
この水中設置構造物4においては、天井部112の周囲に立設された基体11の側壁44が、水流を抑制する遮蔽体として機能する。また、側壁44で囲まれた領域が、膨出筒117から放出された栄養成分を滞留させる滞留部として機能する。
この実施形態の水中設置構造物4は、小型で簡単な構成であるため、水流がほとんど発生しない湾内や養殖池等での利用に適している。
【0039】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の説明に限定されるものではない。
例えば、上記の説明では、主として水底に設置される構造物を例に挙げて説明したが、本発明の水中設置構造物は、アンカーやフロートなどを使って水底と水面の間に浮揚状態で設置することも可能である。
また、水中設置構造物1,1′,1″,2〜4の基本形状として四角形状のもの図示して説明したが、設置される水中の環境に応じて、円形や楕円形、多角形、不定形など、種々の形状とすることが可能である。
【0040】
さらに、生物担持体16は支持部材162から吊り下げられるものに限らず、藻類や海草類等の発生と定着を促すことができるのであれば、棒状又は板状の比較的硬い部材であってもよく、これらを基体11の天井部112や遮蔽体本体140の壁面から立設させてもよい。
また、第一の実施形態〜第六の実施形態で説明した各手段は適宜に組み合わせることができ、例えば、
図5に示した第四の実施形態の遮蔽体24を
図2〜
図4に示した第一〜第三の実施形態の基体11に設けることも可能であり、また、
図5に示した水流抑制層Naを他の実施形態の栄養成分Nに適用することも可能である。さらに、水流抑制層Naと同様に栄養成分Nの表面に浮かんだ状態で水流抑制を行うことができるのであれば、栄養成分Nの表面に板状又はボール状のフロートを浮かべるようにしてもよい。なお、これらの水流抑制手段は、栄養成分の攪拌抑制も行うことから、攪拌抑制手段としても機能する。
【0041】
さらに、
図5(b)の水流抑制層Naは、他の実施形態の基体,収容部及び放出口と組み合わせて他の実施形態とは別に独立して実施することが可能である。
また、
図1,2,3,4,5,6の遮蔽体や、
図3,5,7のカバー又は蓋をさらに他の形態の遮蔽体や蓋,カバーとすることも可能で、メッシュ状、多孔状のもののほか、例えば
図8に示すような井桁を数段に組み上げたものも使用することが可能であるし、この表面を生物担持体として利用することも可能である。