特許第5963436号(P5963436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963436
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/00 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   F04C29/00 B
   F04C29/00 T
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-279088(P2011-279088)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-130088(P2013-130088A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神宮 直樹
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 昌賢
【審査官】 後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−210661(JP,A)
【文献】 特開2008−295211(JP,A)
【文献】 特開2011−205893(JP,A)
【文献】 特開2006−014399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 23/00−29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に、シャフトに固定されたロータと、前記ロータの軸方向両側にエアギャップを介して対向配置された第1のステータおよび第2のステータとを有するアキシャルギャップ型のモータを収容すると共に、前記モータにより前記シャフトを介して駆動される圧縮機構を収容して構成される電動圧縮機において、
前記第1のステータと前記第2のステータとを前記ハウジングに対して軸方向に固定し、
前記圧縮機構を前記第1のステータに対して前記第2のステータとは反対側に配設し、前記ハウジングに前記モータを収容する部分と前記圧縮機構を収容する部分とを仕切る仕切壁を設け、前記シャフトを、前記第1のステータを貫通させると共に前記仕切壁を貫通させて前記圧縮機構へ導き、
前記圧縮機構は、前記シャフトに固定された圧縮機ロータと、前記ハウジングに対して前記シャフトの軸方向で嵌合し、前記仕切壁との間で前記圧縮機ロータを収容して該圧縮機ロータの軸方向位置を規制するシリンダ部材とを有して構成され、
前記ハウジングは、前記シャフトの軸方向で分割される複数のハウジング部材で構成され、前記仕切壁は、前記シリンダ部材が嵌合するハウジング部材に一体形成されていることを特徴とする請求項1記載の電動圧縮機。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記シャフトの軸方向に分割された第1のハウジング部材と第2のハウジング部材とから構成され、
前記第1のステータは前記第1のハウジング部材に収容固定され、前記第2のステータは前記第2のハウジング部材に収容固定され、
前記シリンダ部材は前記第1のハウジング部材に嵌合していることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記圧縮機ロータは、前記シャフトを圧入することで前記シャフトに固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記圧縮機構は、前記仕切壁と前記シリンダ部材との間に画成されるロータ収容空間に収容された前記圧縮機ロータと、この圧縮機ロータに形成されたベーン溝に摺動可能に設けられ、前記ロータ収容空間の内周壁を摺接するベーンとを備えたベーン型であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記第1のハウジング部材と前記第2のハウジング部材は、前記シャフトに固定される前記ロータの端面よりも前記圧縮機構側で接合されることを特徴とする請求項2記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置の冷凍サイクル等に用いられる電動圧縮機に関し、駆動源として、ハウジング内に配されたアキシャルギャップ型のモータを利用する電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動圧縮機として、下記する特許文献1乃至3に示されるものが公知となっている。
このうち、特許文献1に示される電動圧縮機は、密閉容器と、密閉容器内に配置された圧縮機構部と、密閉容器内の低圧側に配置され、回転軸を介して圧縮機構部を駆動するアキシャルギャップ型モータとを備えている。この圧縮機に用いられるアキシャルギャップ型モータは、ステータと、このステータの上側に所定のエアギャップを介して対向配置されたロータとを有して構成され、圧縮機構部は、密閉容器内に取り付けられた本体部と、この本体部に固定された固定スクロールと、この固定スクロールに噛み合う旋回スクロールとを有して構成され、旋回スクロールを回転軸の上端に接続して、この旋回スクロールを回転軸の回転により旋回させるようにしている。
【0003】
また、特許文献2及び3に示される電動圧縮機は、密閉容器内の圧縮機構部の上側にアキシャルギャップ型モータを配置し、このアキシャルギャップ型モータを回転軸に固定された円盤形状のロータと、このロータの軸方向上側にエアギャップを介して対向配置された第1のステータ(上側ステータ)と、軸方向下側にエアギャップを介して対向配置された第2のステータ(下側ステータ)とを有して構成するようにし、圧縮機構部を、シリンダ状の本体部と、この本体部の両側開口端を閉塞する端板とを備え、モータのロータが固定された回転軸を両端板に設けられた軸受に回動自在に支持し、この回転軸に設けられたクランクピンを介してピストンを駆動されることにより、本体部の内側に形成される圧縮室の容積を変化させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−283602号公報
【特許文献2】特開2008−150962号公報
【特許文献3】特開2008−172918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、アキシャルギャップ型モータは、盤状のロータとこれに軸方向で対峙するステータとを備えるので、ラジアルギャップ型モータと比べて、ロータとステータとの対向面積を大きく確保できるため、比較的高トルクのモータを構築するのに適している。
しかし、前述した特許文献1の構成においては、ロータの下側にのみ所定のエアギャップを介してステータが対向配置されているため、要求されるトルクが大きくなれば、ロータやステータの径を大きくする必要がある。このため、限られた設置スペースへの設置が要請される場合においては、圧縮器の径を大きくすることが困難になる場合があり、必要トルクを確保することが難しくなるという不都合がある。
【0006】
この点、特許文献2又は3に示されるように、ロータの軸方向両側にステータを対向配置させたアキシャルギャップ型モータを利用すれば、圧縮器の径を大きくすることなく、高トルクを得ることが可能となる。
【0007】
しかしながら、このようなアキシャルギャップ型モータを電動圧縮機として用いる場合には、同一シャフト上に圧縮機の可動部材が取り付けられることとなるため、シャフトの軸方向位置を正確に規定しないと、ロータとその両側に対向配置されたステータとの間のエアギャップを所定値に維持することができなくなり、モータの効率が低下する不都合がある。
【0008】
このような観点から特許文献2及び3を見ると、シリンダ状の本体部やステータは、密閉容器の内周壁に固定されているが、本体部やステータは、回転軸(シャフト)の軸方向において、どのように位置決めされているのか不明であり、また、本端部やステータのハウジングの内周壁に対する固定位置がずれると、ロータとステータと間のエアギャップを所定値に維持することができなくなる不都合がある。このため、上述した電動圧縮器においては、本体部やステータの取り付け位置を微調整してロータとステータとの間のエアギャップを厳格に管理する必要があった。また、特許文献2及び3の構成にあっては、回転軸の軸方向位置を規制するために、本体部に取り付けられる端板を別途用意する必要があり、構造が複雑化する不都合もある。
【0009】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、ロータの軸方向両側にステータが配されるアキシャルギャップ型モータを備えた電動圧縮機において、ロータの軸方向位置を簡易な構造で規制することで、ロータとその両側に対向配置されたステータとの間のエアギャップを適切に確保することができ、エアギャップの厳格な管理を不要とすることが可能な電動圧縮機を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、本発明に係る電動圧縮機は、ハウジング内に、シャフトに固定されたロータと、前記ロータの軸方向両側にエアギャップを介して対向配置された第1のステータおよび第2のステータとを有するアキシャルギャップ型のモータを収容すると共に、前記モータにより前記シャフトを介して駆動される圧縮機構を収容して構成される電動圧縮機において、前記第1のステータと前記第2のステータとを前記ハウジングに対して軸方向に固定し、前記圧縮機構を前記第1のステータに対して前記第2のステータとは反対側に配設し、前記ハウジングに前記モータを収容する部分と前記圧縮機構を収容する部分とを仕切る仕切壁を設け、前記シャフトを、前記第1のステータを貫通させると共に前記仕切壁を貫通させて前記圧縮機構へ導き、前記圧縮機構は、前記シャフトに固定された圧縮機ロータと、前記ハウジングに対して前記シャフトの軸方向で嵌合し、前記仕切壁との間で前記圧縮機ロータを収容して該圧縮機ロータの軸方向位置を規制するシリンダ部材とを有して構成され、前記ハウジングは、前記シャフトの軸方向で分割される複数のハウジング部材で構成され、前記仕切壁は、前記シリンダ部材が嵌合するハウジング部材に一体形成されることを特徴としている。
【0011】
したがって、このような構成によれば、ロータの軸方向両側に対向配置される第1のステータと第2のステータとをハウジングに対して軸方向に固定し、また、シャフトに固定された圧縮機ロータを、シリンダ部材とこれに軸方向で嵌合するハウジングに一体形成された仕切壁との間に収容して該圧縮機ロータの軸方向位置を規制するようにしたので、第1及び第2のステータのハウジングに対する軸方向位置やシャフト及びこれに固定されるロータのハウジングに対する軸方向位置が一義的に決定されることとなる。このため、ロータやステータの軸方向の位置決めについて、格別な調整、管理を行う必要がなくなり、ロータと各ステータとの間のエアギャップの管理が不要となる。
また、ハウジングに対してシリンダ部材やステータを軸方向に固定することでロータやステータの軸方向の位置決めを行うようにしたので、位置決めをするために格別な部品を必要とせず、簡易な構造で対応することが可能となる。
特に、ハウジングをシャフトの軸方向で分割される複数のハウジング部材で構成し、前記仕切壁を、シリンダ部材が嵌合するハウジング部材に一体形成するようにしたので、ハウジングを複数のハウジング部材で構成する場合でも、ハウジング内部に収容されるロータ等の収容部品の軸方向の位置決めを損なうことがなく、また、収容部品のハウジングに対する固定作業も行い易いものとなる。
【0012】
尚、上述した構成を実現するためのハウジングは、例えば、シャフトの軸方向に分割された第1のハウジング部材と第2のハウジング部材とから構成し、前記第1のステータを第1のハウジング部材に収容固定し、第2のステータを第2のハウジング部材に収容固定し、前記仕切壁を前記第1のハウジング部材に形成すると共に、前記シリンダ部材を前記第1のハウジング部材に嵌合するようにしてもよい。
【0013】
尚、第1のハウジング部材は、第1のステータを収容する部分と圧縮機構を収容する部分とを別々のハウジング部材で構成するようにしてもよい。
【0014】
また、シャフトの軸方向の移動を確実に規制し、ロータのハウジングに対する位置決めを正確に行うために、前記圧縮機ロータは、前記シャフトを圧入することで前記シャフトに固定されることが好ましい。
【0015】
上述した圧縮機ロータを用いた圧縮機構としては、ロータリ型としても、前記仕切壁と前記シリンダ部材との間に画成されるロータ収容空間に収容された前記圧縮機ロータと、この圧縮機ロータに形成されたベーン溝に摺動可能に設けられ、前記ロータ収容空間の内周壁を摺接するベーンとを備えたベーン型としてもよい。
【0016】
尚、前記第1のハウジング部材と前記第2のハウジング部材とは、前記シャフトに固定される前記ロータの端面よりも前記圧縮機構側で接合されることが好ましい。
上述のような電動圧縮機の組み付けにおいて、シャフトに固装された圧縮機ロータにより、ハウジングに対するシャフトの軸方向位置が規定されるので、シリンダ部材とこれが嵌合するハウジング部材とによって圧縮機ロータの軸方向位置を規制した後に、このシャフトにモータのロータを組み付けることが望ましいが、その場合に、第1のハウジング部材と第2のハウジング部材を、シャフトに固定されるロータの端面よりも圧縮機構側で接合させる構成とすることで、ロータとステータとのエアギャップを目視等により確認しやすくなり、また、ロータのシャフトへの組み付け時にロータのエッジがハウジング部材に当たる不都合を避けることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように、本発明の電動圧縮機によれば、ロータの軸方向両側に対向配置される第1のステータと第2のステータとをハウジングに対して軸方向に固定し、
また、ハウジングのモータを収容する部分と圧縮機構を収容する部分との間に仕切壁を設け、シャフトに固定された圧縮機ロータをハウジングに対してシャフトの軸方向で嵌合されたシリンダ部材とハウジングの前記仕切壁との間に収容して該圧縮機ロータの軸方向位置を規制するようにしたので、シャフトの軸方向の移動が規制されて、ロータのハウジングに対する軸方向の位置が一義的に決定されると共に、第1のステータや第2のステータもハウジングに対する軸方向の位置が一義的に決定されるので、ロータとこれに対峙するステータとの間のエアギャップを適切に確保することが可能となる。このため、ロータとステータとの間のエアギャップの厳格な管理が不要となり、また、格別な部品を用いることなく簡易な構造で適切にエアギャップを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明に係る電動圧縮機の全体構成を示す図であり、(a)は、その側断面図であり(b)のA−A線で切断した図を示し、(b)は、(a)の電動圧縮機を左方から見た図である。
図2図2(a)は、図1(a)のロータの部分をシャフトの軸に対して垂直となる面、即ち、B−B線で切断した断面図であり、図2(b)は、図1(a)のステータの部分をシャフトの軸に対して垂直となる面、即ち、C−C線で切断した断面図である。
図3図3は、本発明に係る電動圧縮機のモータ部分の分解斜視図を示す図である。
図4図4は、本発明に係る電動圧縮機の圧縮機構の分解斜視図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る電動圧縮機について、図面を参照しながら説明する。
図1において、電動圧縮機1は、例えば、冷媒を作動流体とする冷凍サイクルに用いられるものであり、アルミ合金で構成されたハウジング2内に、図中左方においてアキシャルギャップ型のモータ3を配設し、また、図中右側において前記モータ3により駆動される圧縮機構4を配設している。尚、図1において、図中左側を電動圧縮機1の前方、図中右側を圧縮機の後方としている。
【0020】
ハウジング2は、この例では、リア側の第1のハウジング部材5とフロント側の第2のハウジング部材6とから構成され、これら2つのハウジング部材5,6がボルト9により軸方向に締結されている。
【0021】
第1のハウジング部材5は、中程に仕切壁5aが形成された筒状形状のもので、仕切壁5aよりもフロント側にフロント端が開口されたモータ収容側筒状部5bが形成され、また、仕切壁5aよりもリア側にリア端が開口された圧縮機構収容側筒状部5cが形成されている。仕切壁5aには、後述するバックヨーク13aの軸方向位置を規定するためのスラスト面5e及び後述するシャフト11を貫通支持するボス部5dが一体形成され、また、圧縮機構収容側筒状部5cには、圧縮機構4で圧縮した冷媒を吐出する吐出口7が形成されている。
【0022】
第2のハウジング部材6は、フロント側が閉塞された有底円筒形状のもので、フロント端を閉塞する底壁6aとこの底壁6aよりリア側へ延設されてリア端が開口されたモータ収容側筒状部6bが形成されている。底壁6aには、バックヨーク14aの軸方向位置を規定するためのスラスト面6d及びモータ3のシャフト11を支持するボス部6cが一体形成され、また、モータ収容側筒状部6bには、圧縮機構4で圧縮する冷媒を吸入する吸入口8が形成されている。
【0023】
前記アキシャルギャップ型のモータ3は、前記第1のハウジング部材5と第2のハウジング部材6とを組み付けた際に、第1のハウジング部材5の仕切壁5aとモータ収容側筒状部5b、及び、第2のハウジング部材6の底壁6aとモータ収容側筒状部6bによって囲まれて構成されるモータ収容空間10に収容され、前記圧縮機構4は、第1のハウジング部材5の圧縮機構収容側筒状部5cに収容されている。モータ収容空間10は、前記吸入口8と連通しており、圧縮機構4へ冷媒を導く低圧経路を構成している。
【0024】
アキシャルギャップ型のモータ3は、図2及び図3にも示されるように、シャフト11に固定された円盤形状のロータ12と、このロータ12のリア側に軸方向にエアギャップを介して対向配置された第1のステータ13と、ロータ12のフロント側に軸方向にエアギャップを介して対向配置された第2のステータ14とを有している。
【0025】
ロータ12は、その両面に円周に沿って扇状の永久磁石15が複数(例えば、8つ)配列されており、中央にシャフト11を挿通させる通孔15aが形成されている。
【0026】
第1のステータ13と第2のステータ14は、同様の構成を有しているもので、中央に孔を有する磁性体からなる円盤状のバックヨーク13a,14aと、このバックヨーク13a,14aからロータ側に向かって軸方向に立設し、周方向に等間隔に配設された複数のティース13b,14bと、この複数のティース13b,14bのそれぞれに差し込めるように、予め巻回して形成された三相の励磁コイル13c,14cとを有して構成され、図示しないインバータから各ハウジング部材に設けられたコネクタ16,17を介して励磁コイル13c,14cに電流が供給されるようになっている。
【0027】
そして、第1のステータ13は、第1のハウジング部材5の仕切壁5aに設けられた位置決めピン18により径方向の位置が決められ、仕切り壁5aに形成されたスラスト面5eにより軸方向の位置が決められる。具体的には、ボルト19によってバックヨーク13aをモータ収容空間10側から(フロント側から)スラスト面5eに固定することで第1のハウジング部材5に収容固定されている。また、第2のステータ14は、第2のハウジング部材6の底壁6aに設けられた位置決めピン40により径方向の位置が決められ、底壁6aに形成されたスラスト面6dにより軸方向の位置が決められる。具体的には、ボルト41によってバックヨーク14aをモータ収容空間10側から(リア側から)スラスト面6dに固定することで第2のハウジング部材6に収容固定されている。
【0028】
モータ3のシャフト11は、リア側が第1のステータ13を貫通すると共に第1のハウジング部材5の仕切壁5aに形成されたボス部5dを貫通して圧縮機構4に延設されているもので、ボス部5dを貫通する部分でプレーンベアリング21を介して回転自在に軸支されている。また、シャフト11のフロント側は、第2のステータ14を貫通して第2のハウジング部材6の底壁6aから立設されたボス部6cにボールベアリング22を介して回転自在に軸支されている。
【0029】
前記ロータ12は、シャフト11の外周面とロータの通孔15aの内周面に形成されたキー溝に係合させたキー23を介してシャフト11の所定の軸方向の位置に固定されており、キー23を介してロータ12の回転がシャフト11に伝達されるようになっている。なお、ロータ12からシャフト11への回転力の伝達は、キーを用いないでシャフト11の外周面とロータの内周面に形成したスプラインまたはネジを係号させて直接伝達するようにしてもよい。
【0030】
圧縮機構4は、図4にも示されるように、仕切壁5aを貫通して圧縮機構収容側筒状部5c内に突出されたシャフト11の所定位置に圧入により固装された圧縮機ロータ25と、第1のハウジング部材5の圧縮機構収容側筒状部5cにシャフト11の軸方向で嵌合してこのハウジング部材5と共に前記圧縮機ロータ25を収容するシリンダ部材26と、圧縮機ロータ25に設けられた複数のベーン溝27に摺動自在に挿入され、シリンダ部材26の内周面(下記するロータ収容部31の内周壁)に摺接して圧縮室30を画成するベーン28とを備えている。
【0031】
シリンダ部材26は、圧縮機構収容側筒状部5cへの挿入先端側となるフロント側に圧縮機ロータ25を収容するロータ収容部31が形成され、第1のハウジング部材5の仕切壁5aに位置決めピン32により位置決めされ、ボルト33をモータ収容空間側(フロント側)から軸方向に仕切壁5aを介して螺合させることで第1のハウジング部材5に対して軸方向に固定されている。前記シャフト11は、圧縮機ロータ25から突出したリア側端がシリンダ部材26の中央に形成された軸受孔34に挿入され、この軸受孔34にプレーンベアリング35を介して回転自在に軸支されている。
【0032】
したがって、圧縮機ロータ25は第1のハウジング部材5の仕切壁5aとシリンダ部材26とによってハウジング2に対する軸方向位置が規定され、これにより、ハウジング2に対するシャフト11の軸方向位置が規定されるようになっており、圧縮機構4が組み付けられた状態においては、シャフト11に固定される前記ロータ12のハウジング2に対する軸方向位置が規定されるようになっている。
【0033】
このような電動圧縮機は、前記モータ収容空間10に吸入口8を介して流入された冷媒がモータ3を冷却しつつ仕切壁5aに形成された図示しない通路を介して圧縮機構4の圧縮室30に導かれ、圧縮機ロータ25の回転により吸入された冷媒を圧縮して図示しない吐出経路を介して吐出口7から吐出されるようになっている。
【0034】
尚、第1のハウジング部材5と第2のハウジング部材6とを突き合わせる接合位置は、ロータ12のリア側端面よりも圧縮機構側へ寄った位置に形成され、ロータ12の第1のステータ13と対峙する面の周縁がロータ12の組付け時に第1のハウジング部材5と干渉することがないようにしている。
【0035】
以上の構成において、上述した電動圧縮機1を組み立てるには、先ず、圧縮機ロータ25にシャフト11を圧入してシャフト11に圧縮機ロータ25を固定し、この圧縮機ロータ25が固定されたシャフト11のリア端をシリンダ部材26の軸受孔34にプレーンベアリング35を介して挿着すると共に圧縮機ロータ25のベーン溝27にベーン28を挿入し、その状態で、シャフト11を第1のハウジング部材5のリア側からプレーンベアリング21を介して仕切壁5aのボス部5dに挿通させ、シリンダ部材26を第1のハウジング部材5の仕切壁5aに位置決めピン32により位置決めしつつ、第1のハウジング部材5に軸方向に嵌合させる。そして、この状態を保持するために、仕切壁5aのフロント側からボルト33を該仕切壁5aを貫通させてシリンダ部材26に螺合させ、第1のハウジング部材5(仕切壁5a)にシリンダ部材26を軸方向に固定する。
【0036】
以上のようにして、第1のハウジング部材5に圧縮機構4を組み付けた後に、第1のステータ13を第1のハウジング部材5のモータ収容側筒状部5b内に挿入し、この第1のステータ13を第1のハウジング部材5(仕切壁5a)に設けた位置決めピン18により径方向の位置を規定しつつ、ボルト19によって仕切壁5aに形成したスラスト面5eに固定することにより軸方向位置を規定する。また、第2のステータ14を第2のハウジング部材6のモータ収容側筒状部6b内に挿入し、この第2のステータ14を第2のハウジング部材6(底壁6a)に設けた位置決めピン40によって径方向の位置を規定しつつ、ボルト41によって底壁6aに形成したスラスト面6dに固定することにより軸方向位置を規定する。
【0037】
その後、ロータ12をシャフト11の所定位置にキー溝にキー23を挿着させることによって位置決め固定し、第2のステータ14が取付けられた第2のハウジング部材6の開口端をロータ12を覆うように第1のハウジング部材5の開口端に近づけ、シャフト11の先端部をボス部6cに取り付けられたボールベアリング22に挿入すると共に、第2のステータ14をロータ12に対して対峙させるよう互いのハウジング部材の開口端を突き合わせる。そして、突き合わせた第1のハウジング部材5と第2のハウジング部材6とをボルト9によって軸方向に固定する。
【0038】
この際、第1のハウジング部材5と第2のハウジング部材6との突き合わせ部分(接合部分)は、第1のステータ13のリア側端面より圧縮機構側へ寄った位置に形成されているので、ロータ12のシャフト11への組み付け時において、第1のステータ13と対峙するロータ12の面の周縁が第1のハウジング部材5と干渉することを回避することが可能となる。
【0039】
以上のようにして組み立てられた電動圧縮機1において、シャフト11に固装された圧縮機ロータ25は、第1のハウジング部材5の仕切壁5aとこの第1のハウジング部材5に軸方向で嵌合するシリンダ部材26とによって、ハウジング2に対する軸方向位置が規定されるため、シャフト11の軸方向の移動は規制され、シャフト11に取り付けられるロータ12は、シャフト11に取り付けた段階でハウジング2に対する軸方向位置が予め決められた所定位置に固定される。また、第1のステータ13と第2のステータ14もそれぞれ第1のハウジング部材5と第2のハウジング部材6に形成したスラスト面5e、6dに対して軸方向に固定されているので、それぞれのステータは、ハウジング2に対する軸方向位置が予め決められた所定位置に固定される。このため、ロータ12やステータ13,14の軸方向の位置決めについて、格別な調整、管理を行う必要がなくなり、ロータ12と第1のステータ13及び第2のステータ14との間のエアギャップは、予め決められた所定値に設定されることとなる。
したがって、ロータ12と各ステータ13、14との間のエアギャップの厳格な管理が不要となり、また、ハウジング2に対してシリンダ部材26やステータ13,14を軸方向に固定することでロータ12やステータ13,14の軸方向位置を規制するようにしているので、位置決めをするために格別な部品を用いる必要がなく、簡易な構造で対応することが可能となる。
【0040】
また、第1のハウジング部材5と第2のハウジング部材6とをボルト9によって軸方向に固定するようにしているので、ハウジング部材が複数の部材(2つの部材)で構成される場合でも、ハウジング内部に収容されるロータ等の収容部品の軸方向の位置決めを損なうことがなく、シャフト11やロータ12のハウジング2に対する軸方向位置を精度よく規定することができ、また、ロータ12等の収容部品のハウジング2に対する固定作業も行い易いものとなる。
【0041】
なお、上述の構成においては、第1のステータ13、第2のステータ14のスラスト面5e、6dへの固定はボルト19、41によって行う例を示したが、スナップリングによりステータの軸方向の位置を固定してもよい。また、それぞれのステータを、それぞれのハウジングのスラスト面5e、6dに接しさせた状態で、ステータとハウジングの間に溶融した樹脂を流し込み、いわゆる樹脂モールドによりステータの軸方向に位置を固定してもよい。
【0042】
また、上述の構成においては、ハウジング2を第1のハウジング部材5と第2のハウジング部材6との2つの部材によって構成した例を示したが、軸方向に分割された3つ以上のハウジング部材によって構成するようにしてもよい。たとえば、第1のハウジング部材5を、第1のステータ13を収容固定する部材と圧縮機構4を収容固定する部材とにさらに分割し、これらを軸方向で組付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 電動圧縮機
2 ハウジング
3 モータ
4 圧縮機構
5 第1のハウジング部材
5a 仕切壁
5e スラスト面
6 第2のハウジング部材
6a 底壁
6d スラスト面
11 シャフト
12 ロータ
13 第1のステータ
14 第2のステータ
25 圧縮機ロータ
26 シリンダ部材
27 ベーン溝
28 ベーン
図1
図2
図3
図4