(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下,本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし,本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり,以下に示す実施形態で用いた例示にのみ限定されるものではない。
【0014】
図1は,本実施形態に係るスイッチ本体1の斜視図であり,
図2は,スイッチ本体1のうち耐熱シートを除去した後の斜視図であり,
図3はスイッチ本体1の分解図である。
【0015】
これらの図で示されるように,スイッチ本体1は,耐熱シートを除去した状態において開口部11を有しており,この開口部11にボタンが嵌め合わされることでスイッチとして完成する。ボタン部が嵌め合わされた状態の斜視図を
図4に示しておく。
【0016】
本実施形態においてボタン部6は,具体的には,作動桿3の開口部32に挿入されるとともに,後述の作動桿3の段差部36に引っ掛けるための突起を有して構成されており,一度挿入するとこの突起が作動桿3の上記段差部36に引っ掛かり一体化される。ボタン部6は,スイッチを使用する者が押すことができる程度に大きなものであれば特に限定されないが,透過性のある樹脂で形成され,その内部にLED等の小型照明装置を設け,スイッチを押すたびに照明がオン又はオフするように設けても良い。
【0017】
図3,
図5に示すように,スイッチ本体1は,突起211と端子212が付された底面21,及び,側壁22を備え開口部23が形成された耐熱樹脂からなるベース部2と,ベース部2に収納されベース部2内において摺動自在な作動桿3と,開口部41を有し,ベース部2と組み合わされ作動桿3の摺動域を制限する耐熱樹脂からなるカバー部4と,カバー部4の開口部41を覆う耐熱シート5と,を有する。
【0018】
本実施形態においてベース部2は,スイッチ本体1の外見を構成するための主要な部材であり,上記のとおり底面21と,この底面21に接続され底面を囲う側面を形成する側壁22を有して構成されており,内部に空間を形成するとともに開口部23が形成されている。なお底面21と側壁22とは一体に形成されていることが強度の観点,製造を容易にする観点から好ましい。
【0019】
また,本実施形態に係るベース部2の底面21には,突起211が配置されている。突起211は,スイッチ本体1をプリント基板に固着する際,位置決めのために用いられるものであり,限定されるわけではないが,少なくとも2以上,好ましくは3以上設けられていることが好ましい。
なお
図5に,ベース部2の底面21の概略を示しておく。
【0020】
また,本実施形態に係るベース部2の底面21には,端子212が設けられている。また端子212は,プリント基板と電気的接続を可能とするために用いられるものであり,導電性の物質,例えば銅等の金属により形成されていることが好ましい。端子212の数は,必要とされる接続点の数に応じて適宜選択可能であり限定されるわけではないが,一般に照光用の電源回路に接続する4端子,及びスイッチの2端子が設けられており,
図5の例では6個の例を示している。
【0021】
また,本実施形態に係るベース部2の側壁22には係止突起221が形成されており,ここにカバー部4のつまみ43を合わせることでカバー部4を固定することができる。
【0022】
また,本実施形態に係るベース部2の側壁22の内側には可動接点24が設けられており,作動桿3は,上側(底面21から開口部23側,以下「上側」という場合において同じ。)から押し込むと,作動棹3の端部が可動接点24の下部の湾曲部241に上方から下方に押し圧することにより,移動し接点部242が,移動しベース部の接点243に押しつけられ接点がオン状態となる。逆に作動棹3が上側に移動した場合には,可動接点24の湾曲部241の弾性力により,接点がオフとなる。なおこの可動片の形の例を例えば
図6に示しておく。
【0023】
また本実施形態に係るベース部2は耐熱樹脂によって構成されている。これは,後述するスイッチの製造工程から明らかであるが,ハンダ付けの工程において高温となった場合でも溶融してしまわないようにするためである。耐熱樹脂としては,限定されるわけではないが,例えば耐熱性ポリアミド樹脂(PA),液晶ポリマー(LCP)等を例示することができ,これ以外の材料であっても用いるハンダの融点よりも高いガラス転移点を有するものであること,更に例えば用いるハンダの融点が概ね250〜260℃の範囲にあると考えると,これ以上の耐熱温度を有するものであれば用いることが出来ることは言うまでもない。
【0024】
なお,ベース部2の底部21の内側に前記端子212に接続しているボタン部導通用接続体25が設けてあり,このボタン部5の下部を挿入する構成となっている。このボタン部5の下部に図示しないが,ボタン部導通用接続体25に対応した数の穴が穿設され,この穴部内にコイルスプリングを介し,ボタン部の照光用LEDに電源の供給を行う。そしてこのコイルスプリングは,ボタン部5及びボタン部5と一体化している作動棹3の,復帰スプリングとして作用させる弾性材としての機能をも有している。
【0025】
本実施形態に係る作動桿3は,上記のとおりベース部2に収納され,ベース部2内に対し摺動自在なものであり,側壁31によって囲まれて構成され,貫通孔32を有する筒状となっている。更に作動桿3の側壁31の周囲にはベース部2に対する摺動方向を規定するとともに摩擦抵抗を低減させるための摩擦低減部材33が配置されている。なお,限定されるわけではないが,本実施形態において摩擦低減部材33は,金属材料によって構成される球であって,側壁31に形成される半円球の凹みに嵌め込まれており,その中で回転自在となっている。なお,この場合,ベース部2の側壁22の内側には上下方向(ベース部2の底面21から開口部23の方向)に断面が半円状となっている溝222が形成されている。
【0026】
また,本実施形態に係る作動桿3の側壁31にはバネ34が設けられており,作動桿3の上下摺動に伴い,クリック音を発生させることができる。なお,バネ34の形状としては,上記の機能を奏する限りにおいて限定されるわけではなく,例えば
図3で示すようなクリックバネであってもよく,C字形状のバネであっても良い。またこの態様に応じて作動桿3の側壁31の形状は適宜変形可能である。
【0027】
また本実施形態に係る作動桿3の側壁31のいずれか一部には,上下方向に溝35が形成されており,ベース部2に作動桿3が収納された場合でも上下方向に溝35を設けておくことができる。
【0028】
また本実施形態に係る作動桿3の側壁31の内側には,段差部36が設けられており,上記のとおりボタン部6に形成されたつまみを引っ掛けることができるようになる。
【0029】
また本実施形態に係る作動桿3の材質としては,限定されるわけではないが,ベース部2及びカバー部4内に収納されているために,ベース部ほど耐熱性は要求されないが,これらと同様に,耐熱樹脂によって構成されることが好ましく,ベース部2と同様の材質,例えば耐熱性ポリアミド樹脂(PA),液晶ポリマー(LCP)等を用いることが出来る。
【0030】
本実施形態に係るカバー部4は,上記のとおりベース部2と組み合わされ作動桿3の摺動域を制限することのできるものである。本実施形態に係るカバー部4は,上記図から明らかなように,開口部41を形成する枠部42と,フック43,柱体44と,を有して構成されている。
【0031】
本実施形態に係るカバー部4の枠部42は,カバー部4の主要な骨格を示す部材であって,ベース部2と組み合わされた場合に上記作動桿3の側壁31上端の少なくとも一部を覆うことができるものである。このようにすることで,作動桿3の摺動域を制限することができる。なお,枠部42には,切り欠き部421が設けてあり,後述の耐熱シート5を剥がすときに剥(は)がしやすくしている。
【0032】
本実施形態に係るカバー部4のフック43は,上記ベース部2の側壁22に形成される係止突起221に対応した係止穴431が形成されており,この係止突起221と係止穴431が組み合わされることにより,ベース部2とカバー部4とを固定することができる。
【0033】
本実施形態に係るカバー部4の柱体44は,上述の作動桿3の側壁31において形成される溝35に挿入されるものであるが,前述のバネ34のクリック動作に使用されることを第一の目的とするとともに,スイッチ本体の組み立ての際,この溝35と柱体44とを組み合わせることで間違った方向にカバー部4を取り付けてしまうことを防止する機能も有する。
【0034】
また本実施形態に係るカバー部4は耐熱樹脂によって構成されている。これは,後述するスイッチの製造工程から明らかであるが,ハンダ付けの工程において高温となった場合でも溶融してしまわないようにしておくことが好ましいためである。耐熱樹脂としては,前述のベース部2と同様の材質の耐熱性ポリアミド樹脂(PA),液晶ポリマー(LCP)等を用いることが出来る。
【0035】
本実施形態に係る耐熱シート5は,カバー部4の開口部41を覆い,ベース部2及びカバー部4内部の空間を密封する為に設けている。この耐熱性シール5の裏面には粘着剤を介しカバー部4の開口部41の上面に貼付し,内部を密封する構成となっている。
密閉する意義は,まず密閉する第1の意義としては,リフロー炉等を通過させる際に,リフロー炉等の内部が,スイッチの接点等に関し,有害な高温ガスがあり,これらからスイッチ内部を保護する必要があるからである。
また,第2に,カバー部4の開口部41の上面に貼付し内部を密封する際に,開口部41の上面を平滑な平面状態とすることで,スイッチ本体1をプリント基板の所定の位置に配置する際に,スイッチ本体1の上面を装着機械のヘッドに吸着させ,ハンドリングを良好とするものである。即(すなわ)ち,スイッチ本体1を吸着保持した後,プリント基板の所定の位置に移動させて配置させる必要から,スイッチ本体1の上面となる耐熱シート5を平滑な平面とする必要があるからである。したがって,この耐熱シート5は,ある程度強度を有する必要があり,例えば例えばポリイミドフィルム(PIF)を用いた場合には,50μm以上の厚みのものを使用することが好ましい。
【0036】
本実施形態において,耐熱シート5は,耐熱性を有するシート状のものであって,樹脂で構成され,耐熱シート5の材質に樹脂を採用する場合,ハンダ付けの工程において高温となった場合でも溶融してしまわないようにしておくことが好ましく,上記ポリイミドフィルム(PIF)等の材料に限定されるわけではない。
【0037】
また本実施形態において,作動桿3の上端は,カバー部4の開口部41の上端即(すなわ)ち枠部42の上端とほぼ同一面,若しくは開口部41の上端即(すなわ)ち枠部42の上端よりも低い状態となっていることが好ましい。ほぼ同一面とすることで,耐熱シート5は,接着面積が大きくなりより安定した密着性を得ることが出来る。
また,開口部41の上端即(すなわ)ち枠部42の上端よりも低い状態の作動桿3とする場合には,耐熱シート5の平面性,及び密封性を維持できるほか,スイッチ本体1をプリント基板上に固着させる工程の際,高温雰囲気と直接触れ合うことが少なくなるため,より低い耐熱温度の樹脂を採用することも可能になるといった効果がある。この場合の一部断面を
図7に示しておく。
【0038】
以上,本実施形態に係るスイッチ本体1は,より容易かつ安定的にプリント基板に固着させることができるものとなる。
【0039】
ここで,本実施形態に係るスイッチ本体1を用いてスイッチを製造する方法について説明する。
図8は,本実施形態に係る製造方法の工程の概略を示す図である。
【0040】
本図で示すように,本製造方法は,(A)プリント基板7上にスイッチ本体1を配置する工程,(B)スイッチ本体1及びプリント基板7周囲の雰囲気の温度を昇温してスイッチ本体1とプリント基板7を固着する工程,(C)スイッチ本体1の耐熱シート5を剥(は)がし,スイッチ本体1の作動桿3にボタン部6を嵌め込む工程,を有する。
【0041】
まず,本製造方法では,(A)プリント基板7上にスイッチ本体1を配置する工程において,用いるスイッチ本体1は,今まで詳細に説明した構成からなるスイッチ本体1である。具体的に説明すると,スイッチ本体1は,突起と端子が付された底面21,及び,側壁22を備え開口部が形成された耐熱樹脂からなるベース部2と,ベース部2に収納されベース部2内において摺動自在な作動桿3と,開口部41を有し,ベース部2と組み合わされ作動桿3の摺動域を制限する耐熱樹脂からなるカバー部4と,カバー部4の開口部41を覆う耐熱シート5と,を有する。
【0042】
また本工程において,用いるプリント基板7は,耐熱性の樹脂によって形成され,この上に金属等の導電性材料が張り巡らされたものであり,更に,スイッチ本体1のベース部2の突起211に対応した孔71及びベース部2の端子212に対応した接続領域72が形成されている。
図9に,本実施形態に係るプリント基板7の概略を示しておく。なお図中の点線で囲まれた領域が一つのスイッチ本体1に対応する領域である。また,スイッチ本体1の端子212に対応する位置の、プリント基板7の接続領域72の間には印刷したハンダペーストをあらかじめ配置しておくことで,後述の工程によってハンダを溶融し,プリンタ基板7とスイッチ本体1とを固着させることができる。
【0043】
また本工程において,上記の記載から明らかなように,スイッチ本体1の突起211をプリント基板の孔71に嵌合させる。スイッチ本体1の突起211と端子212の位置関係は固定されており,プリント基板7の孔71とハンダペーストを印刷した接続領域72も,上記関係に対応して固定されている。このため,スイッチ本体1の突起211をプリント基板の孔71に装着させることで,スイッチ本体1の端子211とプリント基板7の接続領域72とを確実に重なり合わせる配置を行うことが出来る。
なお,上記作業は,一般にロボット等の機械で,スイッチ本体1上面の耐熱シート5の上面に吸着手段で吸着を行い,スイッチ本体1のハンドリングを行い,スイッチ本体の配置作業を自動化で行うことができる。
【0044】
次に,本製造方法では,(B)スイッチ本体及びプリント基板周囲の雰囲気の温度を上昇させてスイッチ本体及びプリント基板を固着する工程を有する。より具体的には,スイッチ本体1及びプリント基板7周囲の雰囲気の温度をハンダの融点以上に上昇させてハンダを溶融し,その後冷却してスイッチ本体,及びプリント基板を固着する。
【0045】
本工程において,スイッチ本体及びプリント基板周囲の雰囲気の温度を上昇させる工程としては,限定されるわけではないが,例えばこのスイッチ本体が配置されたプリント基板をリフロー炉に入れる方法が挙げられる。
なお,一般的なリフロー炉では,加熱〜冷却まで一連の温度管理が行われるため,リフロー炉からこのプリント基板を出すことで,プリント基板にスイッチ本体1をハンダ付けした製品状態にすることができる。
なお,
図10に,プリント基板と,このプリント基板上に配置された複数のスイッチ本体1の例を示しておく。
【0046】
次に,本製造方法では,(C)スイッチ本体の耐熱シートを剥がし,スイッチ本体の作動桿にボタンを嵌め込む工程,を有する。具体的には,耐熱シート5を剥がし,スイッチ本体1の開口部11にボタン部6を挿入し,作動桿3の側壁31の内側に形成された段差部35,ボタン部6に形成されたつまみを引っ掛けることで作動桿3とボタン6を固定する。
【0047】
以上,本実施形態によって,より容易にプリント基板に固着させることのできるスイッチ本体及びスイッチの製造方法を提供することができる。特に,一つのプリント基板上に多数のスイッチを近接して配置するような場合であっても,一度の昇温作業で固着が可能となるため,既に固着したスイッチに隣接して他のスイッチのハンダ付けを行う等,限られた空間でハンダ付けをしていかなくてはならない等の欠点はなく,プリント基板への固着に必要な時間即(すなわ)ちコストを大幅に低減することが可能となる。