特許第5963490号(P5963490)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963490
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】2重同調RF共振器
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/36 20060101AFI20160721BHJP
   G01R 33/34 20060101ALI20160721BHJP
   G01R 33/32 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   G01N24/04 530G
   G01N24/04 520A
   G01N24/04 530A
   G01N24/04 510D
   G01N24/04 510C
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-65118(P2012-65118)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2012-202994(P2012-202994A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2015年2月9日
(31)【優先権主張番号】10 2011 006 157.6
(32)【優先日】2011年3月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591148048
【氏名又は名称】ブルーカー バイオシュピン アー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス フレイタグ
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−242202(JP,A)
【文献】 特開昭60−150738(JP,A)
【文献】 特表平06−500631(JP,A)
【文献】 特表2003−516770(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0256569(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第10109489(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 24/00−24/14
G01R 33/20−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の測定周波数(F)をもつ信号を送受信する鳥かご型共振器を含むNMR装置用のRF共振器であって、
前記RF共振器は、Z軸を有するデカルト座標系のxz平面およびyz平面に関して対称であり、
前記鳥かご型共振器が、前記Z軸を軸に同軸に配置されると共に互いから離隔された少なくとも2つの導電性リング素子(12、33、47)と、前記Z軸に平行に配置された4よりも大きい偶数であるN個の導体棒(11)とを備え、
各リング素子(12、33、47)がN個の全ての導体棒(11)に電気的に接続されるRF共振器において、
第2の測定周波数(F)をもつ信号を送受信するために、少なくとも1対の導電性リングセグメント(32a、32b、40、43)がさらに配置されており、
対をなす前記リングセグメント(32a、32b、40、43)が、前記Z軸に関して互いに離隔されており、
前記1対の導電性リングセグメント(32a、32b、40、43)が、厳密に2つの導体棒(11)間の追加の電気接続を形成し、前記1対の導電性リングセグメント(32a、32b、40、43)が、これらの2つの導体棒(11)とともに電流経路(41、42)を形成し、前記電流経路(41、42)が、少なくとも1点で容量的に遮断されており、
前記リングセグメント(32a、32b、40、43)および前記リングセグメント(32a、32b、40、43)に電気的に接続された前記導体棒(11)が、前記yz平面に関して対称に配置されている
ことを特徴とするRF共振器。
【請求項2】
前記リング素子(33、47)が遮断されており、互いに容量的に接続されていない2つの部分リングを含み、部分リングがそれぞれ、N/2個の導体棒(11)に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のRF共振器。
【請求項3】
少なくとも1つの前記リングセグメント(32a、32b、40、43)が、前記yz平面に関して対称に配置された少なくとも1つの容量性遮断を有することを特徴とする請求項1または2に記載のRF共振器。
【請求項4】
少なくとも一部の前記リングセグメント(32a、32b、40、43)が、前記Z軸に関して、前記リング素子(12、33、47)と同じ軸方向位置に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のRF共振器。
【請求項5】
少なくとも一部の前記リングセグメント(32a、32b、40、43)が、前記Z軸から、前記リング素子(12、33、47)と同じ半径方向距離のところに配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のRF共振器。
【請求項6】
前記リングセグメント(32a、32b、40)の数が前記導体棒(11)の数Nに等しいことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のRF共振器。
【請求項7】
少なくとも1つのリング素子(12、33、47)が、前記yz平面に配置された同調コンデンサ(52)によって容量的に遮断されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のRF共振器。
【請求項8】
前記第2の測定周波数(F)の前記電流経路(42)のリングセグメントが容量的に遮断されていないことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のRF共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の測定周波数をもつ信号を送受信する鳥かご型共振器を含むNMR装置用のRF共振器であって、このRF共振器は、Z軸を有するデカルト座標系のxz平面およびyz平面に関して対称であり、Z軸に関して同軸に配置されると共に互いから離隔された少なくとも2つの導電性リング素子と、Z軸に平行に配置された4よりも大きい偶数であるN個の導体棒とを備え、各リング素子がN個の全ての導体棒に電気的に接続されるRF共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなRF共振器は非特許文献1(参照文献[1])から知られている。
【0003】
鳥かご型共振器は、N個の導体棒と、少なくとも2つのリング素子とを備える。導体棒は、通常はz軸に平行な円筒形の覆いの表面近くにあり、上端および下端を有する、z方向に長い導電性素子であると理解される。
【0004】
リング素子は、N個の導体棒の上端または下端に電気的に(ガルバニックに、または容量的に)接続された、通常は少なくとも断面が円形または楕円形の、リング形または管形の導電性素子であると理解される。
【0005】
鳥かご型共振器はさらに、導体棒またはリング素子あるいはその両方を遮断することがあるコンデンサを有する。1つの導体棒と複数のリング素子の各接続点の間にある少なくとも1つのリング素子上、または、各導体棒と複数のリング素子の2つの接続点間にあるその各導体棒上にいずれかにおいて、少なくとも1つの容量性遮断が生じなければならない。したがって、鳥かご型共振器の導体棒の容量性遮断に関してはN個、1つのリング素子の容量性遮断に関しては少なくともN−2個のコンデンサが必要である。
【0006】
鳥かご型共振器は、NMRにおいて非常に活用できる双極子場を発生させる直交する2つの直線偏波モードを有する。ローパス型の鳥かご型共振器では、これらのモードが最も低い2つのモードである。
【0007】
図1Bは、図1Aに示すような、8つの導体棒を有する対称な鳥かご型共振器のモードスペクトルであって、2つの直線偏波モード14を有するモードスペクトルを示す。鳥かご型共振器が回転対称である場合、これらの2つの直線偏波モード14は縮退し、これらの2つの直線偏波モード14を1つの周波数での直角位相制御に対して同時に使用して、円偏波場を生み出すことができる。図1Bの矢印は、周波数Fで発振する2つの縮退直線偏波モード14を示している。直角位相検出および直角位相励振の利点は、信号対雑音比が直線偏波モードを用いた検出/励振の√2倍あり、特に、この信号対雑音比が損失を生じやすい測定試料であっても達成されることである。さらに、直角位相励振では、同じフリップ角および同じパルス長に対して必要な電力が半分だけですむ。
【0008】
共振器の直角位相制御では通常、結合回路網を用いた互いに直交した2つの配向が好ましく、したがって、これらの2つの配向は、xz平面およびyz平面に沿った互いに直角な2つの鏡面対称を形成する。円偏波を発生させ、これを検出するためには、90°の位相差で直線偏波モードを発生させ、これを検出する。したがって、これらの関連モードは相互に直交する。すなわち、第1の縮退モードの電気対称面が第2の縮退モードの磁気対称面に一致し、第1の縮退モードの磁気対称面が第2の縮退モードの電気対称面に一致する。
【0009】
図1Aは、2つのリング素子12に電気的に接続された8つの導体棒11を有するこのようなローパス型の鳥かご型共振器の個別素子回路図を示す。導体棒は、静電容量C1〜C8を有する16個のコンデンサ13によって容量的に遮断されている。図1Aには、導体棒11間、リング素子12間および導体棒とリング素子の間の誘導結合は示されていない。
【0010】
非特許文献1(参照文献[1])の415ページに開示されているように、NMRのために鳥かご型共振器上で使用することができる2つ以上の周波数を同調させるために、鳥かご型共振器の対称性を(例えば導体棒の幾何学的位置をずらしたり、コンデンサの静電容量を変更したり、これらの2つを組み合わせたりすることによって)壊し、これによって、異なる周波数FおよびFの直交する2つのモードを生じさせることが可能である。この方法では通常、全てのコンデンサが標準値Cを有する代わりに、例えば、それぞれの場合に2つのコンデンサの静電容量値が小さくなり(C=C<C)、別の2つのコンデンサの静電容量値が大きくなる(C=C>C)ような方式で、静電容量を変更する。残りの4つのコンデンサの静電容量値は変更しない(C=C=C=C=C)。この操作は、直線モードの縮退を解消し、一方の直線モードをより高い周波数へ移動させ、もう一方の直線モードをより低い周波数へ移動させる。このような非対称鳥かご型共振器のモードスペクトルを図2Aに示す。この方法は一般に、互いに比較的に近い周波数に関して共振を分離するために使用される。これは例えばHと19Fの場合である。対称性を壊すことによって、残りのモードの縮退が解消され、その結果、鳥かご型共振器は、異なる周波数において合計8つのモードを有することになり、このうち、最も低い2つのモードだけが、NMRにおいて非常に活用できる双極子場を発生させる(直線偏波)。これらのモードは図2Aの矢印で示されている。
【0011】
従来技術において知られている2重同調鳥かご型共振器のこの第1の変形例では、鳥かご型共振器の導体棒およびリング素子が、両方の周波数に対して全く同じである。すなわち、両方の周波数が、同じ導体棒および同じリング素子上で発振する。このようにすると、第2の周波数が存在することによって損なわれる共振器の効率は、両方の測定周波数においてわずかでしかない。場プロファイルはほぼ同一であり、そのため、両方の周波数により厳密に同じ測定体積が「調べられる」。しかしながら、これらの2つのモードは直線偏波でしか生じさせることができない。すなわち直角位相制御はもはや不可能である。
【0012】
この第1の変形例では、モード間の周波数差があまりにも大きい場合に、導体棒の全体にわたって電流が正弦状に均一に分布しないため、両方のモードの場の均質性がひどく損なわれる。ここで、場の均質性は特に、場の半径方向の分布と理解され、場プロファイルは軸方向の分布と理解される。電流が一部の導体棒だけを使用するため、品質、したがって効率もさらに低下する。残りの導体棒は場を「遮り」、追加の損失を生み出し、測定体積内の場を部分的に遮蔽する。周波数が非常に異なる極端なケースでは、両方の共振モードで、8つの導体棒のうちのほとんど2つの導体棒にしか電流が流れない。
【0013】
この場合には、非特許文献1(参照文献[1])の417ページに開示されているように、鳥かご型共振器が、異なる静電容量値、C<<Cである、C=C=C=C=CおよびC=C=C=C=Cを有するコンデンサを含む2つのサブグリッドを備える、2重同調鳥かご型共振器の第2の変形例を構築することが理にかなっている。この鳥かご型共振器では、周波数FおよびFのそれぞれにおいて2つの縮退モードが生じる。合計8つの導体棒を有する鳥かご型共振器においてこれらの2つのモードの場の均質性を使用することができるのは、(導体棒を4つだけ有する共振器に関する)直角位相制御における励振中および受信中だけである。このような鳥かご型共振器のスペクトルを図2Bに示す。2つの縮退直線偏波モードはそれぞれ矢印によって示されている。
【0014】
核磁気共鳴分光法において、特にFHまたは19Fの周波数であり、Fが、低周波数の核、特に31P、13Cまたは15Nの核の周波数である場合に、2つの測定周波数が遠く離れるという状態になる。
【0015】
直線偏波だけを用いた動作では、この既知の第2の変形例でも均質性は極めて低く、導体棒の数を少なくとも2倍にしなければならない。さらに、低い方の周波数が高い方の周波数を部分的に遮蔽し、その結果、対称な共振器に比べて共振器の効率がひどく低下する。この遮蔽効果は、導体棒の数が増えるにつれて増大するが、場の均質性を良好にするには、多数の導体棒の存在が欠かせない。
【0016】
2つのサブグリッドを有する2重同調鳥かご型共振器のこの第2の変形例では、リング素子が両方の測定周波数において使用されるのに対して、導体棒は、一方の測定周波数でしか使用されない。使用されていない導体棒はRF場を「遮り」、正味の電流を共振にほとんど使用しないため、結果として損失が生じる。
【0017】
これらの変形例のより具体的なものの1つは、高い方の周波数で発振しているレッグを帯域阻止フィルタによって低い方の周波数の影響から隔離し、それによって高い方の周波数の効率を、低い方の周波数の効率の損失と引き換えに向上させる鳥かご型共振器によって形成される。
【0018】
例えば特許文献1(参照文献[4])に記載されているように、複数の端部リングを使用する2重同調鳥かご型共振器の第3の変形例が記載されている。ローパス型の鳥かご型共振器とハイパス型鳥かご型共振器の組合せが存在する。しかしながら、これらの第3の全ての変形例では常に、低い方の周波数のリング素子内において、高い方の周波数を、スイッチまたはローパスフィルタによって遮断しなければならない。これらのフィルタまたはスイッチは追加の損失または雑音を生み出し、その結果、効率、特に、高い方の周波数における効率が低下する。多数のリングが存在することにより、もはや、異なる周波数における場プロファイルは通常、同一ではない。しかしながら、実際にはこのことは特に重要であるわけではない。ここで、場プロファイルは、zの関数として表した測定試料内における場の分布であると理解される。
【0019】
複数の端部リングを有する鳥かご型共振器では、2つの共振周波数を2つの縮退モードにそれぞれ同調させることができ、それによって2つの共振周波数を直角位相で使用することができる。このような鳥かご型共振器のスペクトルは、技術的な特定の実施態様に非常に左右され、そのため、ここではこれを説明することはしない。
【0020】
さらに、この第3の変形例によれば、鳥かご型共振器の製造は極めて複雑となる。なぜなら、帯域阻止フィルタを全く同じに同調させなくてはならず、帯域阻止フィルタが、NMRアクティブな場を発生させてはならず(すなわち測定体積内の静磁場Bに垂直な場成分をゼロとする)、帯域阻止フィルタの磁気感受性によって、帯域阻止フィルタが、静磁場Bの均質性を妨げてはならず、同調中(すなわち共振器の共振周波数を、所与の静磁場B中で測定する核のラーモア周波数に調整している最中)に、および共振器が結合されているときに、対称性を壊してはならないからである。これらの数多くの技術的困難性のため、この実施例のコンセプトは、NMRにおいて広く受け入れられてはいない。
【0021】
フィルタが組み込まれたこのような鳥かご型共振器を実現する異なる方法は数多くあるので、非特許文献1(参照文献[1])、特許文献1,2(参考文献[3],[4])を参照されたい。本明細書では、それらの鳥かご型共振器をこれ以上詳細に記述し、説明することはしない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第06100694号明細書
【特許文献2】米国特許第04916418号明細書
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】ミハエラ ルプー、アンドレ ブリゲット、ジョエル ミスペルター著、「NMRプローブヘッド:生物物理学および生医学実験のために(NMR Probeheads:For Biophysical and Biomedical Experiments)」、インペリアルカレッジ(Imperial College)刊、第1版(2006年5月5日)、ISBN:1860946372
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、一方の周波数が第2の周波数よりも明らかに高い、2つの測定周波数で送受信するように最適化された磁気共鳴測定ヘッド用のRF共振器であって、特に、周波数差が7%よりも大きいRF共振器を提供することにある。可能ならば、場の均質性および効率は両方の周波数に関して最大であるべきであり、場プロファイル、特にz方向の長さおよび変化率(z方向に関する、場プロファイルの端における低下)は同一であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的は、請求項1に記載のRF共振器によって発明的に達成される。
【0026】
本発明によれば、第2の測定周波数をもつ信号を送受信するために、鳥かご型共振器の諸素子に加えて、少なくとも1対の導電性リングセグメントが配置される。この対をなすリングセグメントは、Z軸に関して互いに離隔されており、N個の導体棒のうちの正確に2つの導体棒間の追加の電気接続を形成する。この1対の導電性リングセグメントは、これらの2つの導体棒とともに電流経路を形成し、この電流経路は、少なくとも1点で容量的に遮断されている。このリングセグメントおよびこのリングセグメントに電気的に接続された導体棒は、yz平面に関して対称に配置される。
【0027】
本発明の共振器を使用すると、NMRアクティブなそれぞれの共振周波数に対して、非縮退直線偏波モードが1つだけ生成される。本発明のRF共振器の諸要素はxz平面およびyz平面に関して対称に配置されるため、異なる周波数を有する独立した2つのモードを生み出すことが可能である。本発明のRF共振器の対称性が、コンデンサの静電容量値の対称性を必ずしも指しているわけではない。なぜなら、コンデンサの静電容量値を非対称にすることによって、構造上必要なある種の非対称性を、RF場が再び直交するように補正することができるためである。好ましい一実施形態では、静電容量値に関してもコンデンサが対称である。本発明のRF共振器によって生み出される(第2の周波数Fを有する)第2のモードは鳥かご型モードではない。なぜなら、本発明のRF共振器では、第2のモードが、第1のモード(鳥かご型モード)とは違い、導体棒要素(z軸に関して軸方向の要素)を2つだけ含む電流経路上で発振するためである。これらの電流経路上のインダクタンス間の相互インダクタンスの結果、全ての電流経路が同位相で発振している双極子モードが生じる。特に、第2の周波数で動作している共振器の電気対称面(xz平面)に関して鏡面対称に配置されていない導体棒は、リング素子を介した、ガルバニック結合またはコンデンサによる容量結合だけを有し、リングセグメントを介した結合を持たない(寄生容量は考慮しない)。
【0028】
本発明の目的上、リングセグメントは、RF共振器の2つの導体棒だけによって電気的に直接に接続された導電性のリングまたはリングの断片であると理解される。この追加の電気接続は、ガルバニックにまたは容量的に達成することができる。したがって、これらの2つの導体棒間のこの追加の接続は、その1対のリングセグメントのみによって形成される。本発明のリングセグメントは対をなし、対をなすリングセグメントおよびこれらのリングセグメントに接続された2つの導体棒は、第2の周波数を発生させる電流経路を形成する。このRF共振器を第2の周波数で動作させた場合、電流の大部分は、(リングセグメントを含む)これらの電流経路を流れる。また、電流経路が少なくとも1点で容量的に遮断されるように、対をなすリングセグメントのうちの少なくとも一方のリングセグメントが容量的に遮断されているか、またはこれらのリングセグメントを有する2つの導体棒のうちの少なくとも一方の導体棒が容量性遮断を有していなければならない。したがって、本発明のRF共振器のリングセグメント、リング素子および導体棒は、それぞれの電流経路が少なくとも1点で容量的に遮断されている限りにおいて、容量的に全く遮断されていなくてもよく、または容量的に何回遮断されていてもよい。異なる電流経路は互いに誘導的に結合される。リング素子を介したリングセグメントの短絡は回避しなければならない。この短絡の回避は、リング素子の対応する容量性遮断によって達成することができる。
【0029】
リングセグメントまたは導体棒の容量性遮断の静電容量値を選択することによって、所望の第2の周波数を規定することができる。さらに、同じ導体棒に接続されていない、すなわち異なる電流経路に割り当てられた、異なるリングセグメント上のコンデンサの比を選択することによって、これらの異なる導体棒上の電流分布、すなわち生み出される場の均質性を設定することができる。それらの導体棒が容量性遮断を有する場合には、導体棒上の静電容量値の比の選択にもこのことがあてはまる。
【0030】
共振周波数の設定には以下の経験則があてはまる。第2の周波数を第1の周波数よりも低くする場合には、第2の周波数用の電流経路を遮断するコンデンサの静電容量値を、リングセグメントとともに第2の周波数用の電流経路を形成しない、リング素子上または導体棒上にあるコンデンサの静電容量値よりも大きくしなければならない。一方、電流経路を遮断するコンデンサに対して、第2の周波数用の電流経路の部分を形成しないコンデンサの静電容量値よりも小さな静電容量値を選択した場合には、第1の周波数よりも高い第2の周波数が生じる。細かく見れば、電流経路のインダクタンスも考慮に入れなければならないため、この経験則から外れることもある。第2の周波数は通常、第1の周波数よりも低くなるように選択される。こうすることで、これらの2つの周波数の互いに対する影響が最小になるからである。
【0031】
リングセグメントは、第1の周波数で動作している間の電位差ができるだけ小さい導体棒に接続されていることが好ましい。鏡面対称の鳥かご型共振器では、2つのそれぞれの導体棒が同じかまたはほとんど同じ電位を有する。同じ電位の導体棒が1対のリングセグメントによって接続されている場合、第1の周波数におけるリングセグメントおよび追加の容量性遮断の影響は最小となる。なぜなら、第1の周波数で動作している間は、この追加された追加の電流経路に電位差は生じず、したがって、第1の周波数で動作している間は電流が変化しないからである。従来技術を使用する場合とは違い、第2の周波数の電流経路内において第1の周波数を遮断しなくてもよく、帯域阻止フィルタに関連した抵抗損失を防ぐことができる。したがって、本発明の好ましい一実施形態では、第1の周波数で動作している間、第2の周波数の一の電流経路の複数の導体棒が同じ電位を有する。
【0032】
本発明のRF共振器では、第1の周波数が、RF共振器のN個の全ての導体棒上で発振する。このようにすると、第1の周波数に関して最高の効率を達成することができる。第2の周波数用の電流経路が存在することによって生じる追加の損失は、第1の周波数の発生したRF場を遮る可能性があるリングセグメント上の場の変位によるものだけである。このようにすると、第1の周波数で動作している間のこのRF共振器の効率は、第2の周波数用の追加の電流経路を持たないRF共振器に比べてほとんど変化しない。
【0033】
このRF共振器の導体棒は、円筒の側面に配置することが好ましい。座標系のZ軸はこの円筒の軸に等しい。このような配置は、測定する対象物が円筒形である場合に特に有利である。なぜなら、測定する対象物のできるだけ近くにこの通電素子を配置することができ、RF共振器の効率をできる限り高くすることできるからである。
【0034】
本発明の共振器のリングセグメントはyz平面に関して対称に配置される。したがって、第2の測定周波数で動作している間、RF磁場は、yz平面内において接線成分だけを有する。RF共振器が第1の測定周波数で動作している間、RF磁場は、xz平面内において接線成分だけを有し、したがって、第2の測定周波数で動作している間のRF磁場に対して直角である。
【0035】
リング素子は、1つのリング、または互いに容量的に接続されていない2つの部分リングからなる。漂遊容量、すなわち個別コンデンサまたは分布コンデンサ、あるいはこれらに匹敵する素子によって生じたものではない静電容量はここでは無視する。漂遊容量は通常、導体棒およびリングセグメントを容量的に遮断する最も小さな静電容量よりも少なくとも1桁小さい。
【0036】
好ましくは、リング素子は、円形のリング、正多角形のリング、楕円形のリングまたはこれらのリングの断片の形状を有する導体素子であり、任意の断面を有する。Z方向の延長を最小化するためには、正方形、円形またはリング形の断面が好ましい。半径方向の寸法を制限するためには、軸方向に長い長方形または楕円形の断面が好ましい。
【0037】
ここでも、漂遊容量を無視することができる。これは特に、共振器の構造が対称であるため、動作中の電流経路上の電流分布に対して漂遊容量はわずかな影響しか与えないためである。
【0038】
リング素子のリングまたは部分リングはそれぞれ容量的に遮断することができる。「容量性遮断」とは、遮断された素子が、互いに容量的に結合された2つの部分に物理的に分割されていること、すなわちこれらが1つのコンデンサを形成していることを意味する。導体棒およびリングセグメントを容量的に遮断することもできる。リング素子への移行部に直接配置された導体棒の遮断は、導体棒の遮断であるとみなす。容量性遮断は、フィンガコンデンサまたは平板コンデンサなどの個別コンデンサまたは分布容量性素子によって実現することができる。平板コンデンサでは極板が導体棒またはリングの一部を形成する。
【0039】
導体棒、コンデンサおよびリングセグメントの数は、所望の性能、ならびに構造の所望の寸法・複雑さに依存する。一般に以下のことが言える。導体棒の数が多いと均質性が向上する。コンデンサの数が多いと、容量性遮断が巧みに配置されている場合には特に、電場が弱くなり、信号送信中の絶縁耐力が高まる。リングセグメントの数が多いと、すなわち、第2の周波数で機能する誘導結合された電流経路の数が多いと、場の均質性が向上し、通常は、第2の周波数におけるこのモードの効率も向上する。リング素子およびリングセグメントの半径方向の寸法をできるだけ小さくすると、変化率が増大し、したがって場プロファイルが改善される。使用する構成要素が少ないほど、共振器の構造が占有する空間を節約することができ、共振器の構造を単純にすることができる。
【0040】
前述のとおり、リング素子はそれぞれ1つの導電性リングを備えることができる。しかしながら、この場合には、第2の周波数での動作中に、リング素子およびリング素子の容量性遮断に一部の電流が流れる。本発明のRF共振器の好ましい一実施形態では、リング素子が遮断され、互いに容量的に接続されていない2つの部分リングを含み、部分リングがそれぞれ、N/2個の導体棒に電気的に接続される。
【0041】
この非容量性遮断は、第1の周波数の共振モードの磁気対称面、すなわちxz平面上に位置することが好ましい。あるいは、この遮断を、xz平面に最も近い導体棒間の任意の位置に配置することもできる。少なくとも1つのリング素子のこの非容量性遮断を使用して、リング素子を介したリングセグメントの短絡を防ぐことができる。
【0042】
リング素子の対称面(xz平面)に垂直に配置された、リングセグメントのyz平面に関して対称な構成によって、第2の周波数のモードは第1の周波数のモードの影響を受けない。リング素子は部分リングに分割されているため、第2の周波数での動作中にxz平面を横切ってリング素子内を電流が流れることはもはやできない。リング素子の部分リングが、全体として、完全なリングを構成する必要はない。すなわち、部分リングの中心角(その部分リングが囲む円/楕円/多角形の部分の角度)は通常<180°である。
【0043】
これらの2つのモードの共振周波数を独立に設定するためには、残留する結合および取り付けられた素子の数を最小化するため、少なくとも1つのリングセグメントが、容量性遮断を1つだけ有し、その容量性遮断がyz平面上に配置されると有利である。yz平面に関して対称な複数の容量性遮断を配置することもできる。これによって構成要素の数は増すが、電圧は下がり、第2の周波数で動作している間ゼロ電位にある共振器上の潜在的な接続点が得られる。
【0044】
本発明のRF共振器の特殊な実施形態では、少なくとも一部のリングセグメントが、Z軸に関して、リング素子と同軸方向の位置に配置される。リングセグメントの半径方向距離(Z軸からの距離)を、リング素子の半径方向距離とは異なる距離にすることができる(しかし、そのようにする必要はない)。リングセグメントとリング素子が同じ軸方向位置にある場合、2つの共振モードのz方向の場プロファイルは特によく相似する。
【0045】
これの代わりに、またはこれに加えて、少なくとも一部のリングセグメントを、Z軸から、リング素子と同じ半径方向距離のところに配置することもできる。楕円形のリング素子の場合には、「同じ半径方向距離」が、リングセグメントがリング素子と同じ半軸を有することを意味する。遮断されたリング素子の場合には、遮断の結果生じた隙間にリングセグメントを配置し、その結果、リング素子とこの隙間に配置されたリングセグメントとが互いに補完して円/楕円などを形成するようにすることができる。同じ半径方向位置のところに配置すると、共振器の半径方向の寸法をできる限り小さくすることができ、本発明の共振器の周囲に、別の共振器または送受信コイルを同心に取り付けることが容易になる。
【0046】
リングセグメントの数が導体棒の数Nに等しいと特に好ましい。導体棒はそれぞれ、厳密に2つのリング素子を介して別の導体棒に接続される。この場合には、全ての導体棒が両方の周波数に対して使用される。この結果、第2の周波数に関して効率は最高になり、両方の共振モードの動作中に最大数の自由度で場の均質性を設定することができる。
【0047】
有利な一実施形態では、少なくとも1つのリング素子が、yz平面に配置された同調コンデンサによって容量的に遮断される。このコンデンサを使用して第2の共振周波数を変更することができる。この同調コンデンサは、共振器の外部にあるリード線を介して配線することもできる。
【0048】
他の有利な実施形態では、リングセグメントとyz平面との交点に接続点が位置するような態様で、互いに関して鏡面対称に配置された2つのリングセグメントが、同調コンデンサによって互いに接続される。この同調コンデンサを使用して第1の共振周波数を離調させることができる。
【0049】
特に有利な実施形態では、第2の共振周波数の電流経路の1つのリングセグメントが容量的に遮断されない。この第2の共振周波数の電流経路は、2つの関連リングセグメントのうちの一方のリングセグメント上にのみ容量性遮断を有する。これによって「DC電流経路」が形成され、このDC電流経路を介して、任意の数の追加の周波数を、鞍型コイルまたはソレノイドコイルに対する知られている方法を使用して結合することができる。
【0050】
本発明のRF共振器は、NMR分光法とMRイメージング法の両方で使用することができる。
【0051】
他の利点は、本明細書の説明および添付図面から明らかになる。また、以上に記載した特徴および以下に記載する特徴は、単独で使用し、または任意の組合せで一緒に使用することができる。図示し、説明する実施形態を網羅的なリストとすることは意図されておらず、それらの実施形態はむしろ、本発明を説明するための例にすぎない。
【0052】
本発明を図面に示す。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1A】8つの導体棒と、2つの端部リングと、導体棒とリング素子の間の移行部にあるコンデンサとを備える、従来技術に基づくローパス型の鳥かご型共振器の電気回路図である。導体棒のインダクタンスとリングのインダクタンスの間の誘導結合は示されていない。
図1B】広帯域結合回路網による弱いカップリングおよびカップリングアウトを有する、図1Aにおける8つの導体棒を備えた対称な600MHz(H)ローパス型の鳥かご型共振器の伝送スペクトルを示す図である。Fにおける共振は2つの縮退双極子モードからなる。このスペクトルを生み出す際、この共振器の全てのモードが得られるように、弱い誘導結合によって、カップリングインおよびカップリングアウトを実行した。
図2A図1Bの共振器に比べて電気的な対称性が壊されている8つの導体棒を有する従来技術に基づく鳥かご型共振器であり、19FおよびHに対して2重に同調された共振器の伝送スペクトルを示す図である。FおよびFにおける2つのモードは直交双極子モードである。
図2B】それぞれが4つの導体棒を有する2つのサブグリッドを備える鳥かご型共振器であり、13CおよびHに対して2重に同調された共振器の伝送スペクトルを示す図である。FおよびFにおける2つのモードはそれぞれ2つの縮退双極子モードである。
図3A】8つの導体棒、追加の8つのリングセグメントおよび追加の16個のコンデンサを備える本発明のRF共振器を示す図である。2つの端部リングはそれぞれ、それぞれの端部リングに対応するリング素子の2つの部分を除去することによって分断され、開いている。
図3B図3Aの本発明の2重同調RF共振器のHおよび13Cに対する伝送スペクトルを示す図である。FおよびFにおけるモードは2つの直交双極子モードである。
図3C図1B図3Bの伝送スペクトルの比較を示す図である。鳥かご型共振器の最初の3つのモードの周波数は影響を受けない。最も高いモードだけがより高い周波数へ移動する。
図4A】ローパス型の鳥かご型共振器を基にする本発明の2重同調共振器の略展開図である。モードはともに、この図において上方へ延びるz軸に関して対称である。
図4B】第2のモード用のDC電流経路を有する本発明の2重同調共振器の略展開図である。
図4C】バンドバス型の鳥かご型共振器を基にする本発明の2重同調共振器の略展開図である。2つのモードはz軸に関して対称である。
図4D】ハイパス型の鳥かご型共振器を基にする本発明の2重同調共振器の略展開図である。2つのモードはz軸に関して対称である。
図4E】6つの導体棒を有するローパス型の鳥かご型共振器を基にする本発明の2重同調共振器の略展開図である。この場合、Fでの共振は、4つのリングセグメントおよび4つの導体棒によって実現される。
図4F】6つの導体棒を有するローパス型の鳥かご型共振器を基にする本発明の2重同調共振器の略展開図である。この場合、Fでの共振は、2つのリングセグメントおよび2つの導体棒によって実現される。
図5A】ローパス型の鳥かご型共振器を基にする本発明の2重同調共振器の略展開図である。この実施形態では、第1のモードのリング素子が遮断されていない。
図5B】ローパス型の鳥かご型共振器を基にする本発明の2重同調共振器の略展開図である。第2の共振モード用の同調コンデンサが、第1の共振モードのリング素子の容量性遮断である。
図5C】ローパス型の鳥かご型共振器を基にする本発明の2重同調共振器の略展開図である。第1のモードの対称点に第2のモードの調整器が結合されており、この調整器は、対称な実施態様を達成するために2つの結合コンデンサによって実現される。
図5D】DC電流経路が組み込まれたローパス型の鳥かご型共振器を基にする本発明の2重同調共振器の略展開図である。第2のモードのDC電流経路を介して、追加の周波数が、共振回路によって結合される。
図6A】第1の共振周波数を変更するための同調コンデンサが第2の共振モードの対称点に結合された、ローパス型の鳥かご型共振器を基にする本発明の2重同調共振器の略展開図である。
図6B】ローパス型の鳥かご型共振器を基にする本発明の2重同調共振器の略展開図である。第2のモードのリングセグメントの1つの上の対称点に、第1のモードの調整器が結合されている。
図6C】DC電流経路が組み込まれたローパス型の鳥かご型共振器を基にする本発明の2重同調共振器の略展開図である。第1のモードのDC電流経路を介して、追加の周波数が、共振回路を使用して結合される。
図7】ローパス型の鳥かご型共振器を基にする本発明の2重同調共振器の略展開図である。構造の非対称性を補償し、同時に、2つの双極子共振モードの互いに対する直交性を維持し、両方の周波数における場の均質性を最適化するために、異なるコンデンサが異なる静電容量値C1a〜C1pまたはC2a〜C2hを有する。
図8A】第1の共振モードのリング素子と同じ半径方向位置の軸方向に第2の共振モードのリングセグメントが構成された、図4Aにおける本発明の共振器の電流経路の略透視図である。この図にコンデンサは示されていない。
図8B】第1の共振モードのリング素子と同じ軸位置について半径方向に第2の共振モードのリングセグメントが構成された、図4Aにおける本発明の共振器の電流経路の略透視図である。この図にコンデンサは示されていない。
図9Hおよび13Cの周波数に同調させた本発明の共振器の2つのNMRモードのxy平面内の半径2.2mmのところの磁場の振幅を示す図である。場の振幅は、2つの構成AおよびBならびに両方の共振周波数に対して示されており、構成Aと構成Bとでは、図7における共振器のコンデンサの静電容量値C2aからC2fの選択が異なる。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明のRF共振器は、コンデンサが、リング素子を容量的に遮断するのか(ハイパス型)または導体棒を容量的に遮断するのか(ローパス型)、あるいはリング素子と導体棒の両方を容量的に遮断するのか(バンドパス型)によって、ハイパス型、ローパス型およびバンドパス型の共振器として構成することができる。導体棒の数、追加のコンデンサ、対称性、リング素子およびリングセグメントの構成に関して示された全ての変異を、ハイパス型、ローパス型およびバンドパス型の共振器に対して使用することができる。
【0055】
図3Aは、図1Aの鳥かご型共振器をどのように改善すると、本発明の2重同調共振器を製作することができるのかを概略的に示す。さらに、複数の上部のリングセグメント32a、複数の下部のリングセグメント32b、ならびに複数のコンデンサ31を追加することによって、第1の測定周波数に対して使用するモードの縮退を解消することが可能である。上部のリングセグメント32aの1つと下部のリングセグメント32bの1つから、各リングセグメント対が構成される。NMRアクティブな両方の共振モードに関してできるだけ対称な共振器を得るために、これらをxy平面に関して対称に配置するのがよい。それぞれのリングセグメント対は、RF共振器の電流経路の一部を形成し、厳密に2つの導体棒11に導電的に接続される。
【0056】
図3Aに示したRF共振器の実施形態は、yz平面(第1の共振モードFの磁気対称面)に遮断30を有するリング素子33を有する。それぞれのリング素子33は、8つの導体棒11のうちの4つに接続された2つの部分リングを含む。分断されて開いているリング素子33は、3つ以上の導体棒11とガルバニック接続されているため、本発明の目的上、リングセグメントではない(例示のため、図3Aでは、図1Aに比べて除去されたリング素子33の部分が点線で囲まれ、且つハッチングされている)。リングセグメント32a、32bおよび追加のコンデンサ31は、それらが、第1の周波数Fの磁気対称面(yz平面)に関して対称に位置するように配置されていなければならない。リングセグメント32a、32bとリングセグメント12の間にガルバニック接続はない。
【0057】
追加のコンデンサ31およびリングセグメント32a、32bを追加することによって、共振器の少なくとも2つの直交する対称面が得られる。
【0058】
図3Bは、図3Aの本発明の鳥かご型共振器の伝送スペクトルを示す。FおよびFにおける各モードは直交する2つの双極子モードである。追加の素子(リングセグメント32a、32bおよび追加のコンデンサ31)が第1の周波数F(直線鳥かご型モード)の磁気対称面に関して対称に配置されているため、影響を受けないモードがある(図3C参照)。(最も高いモードである、8つの導体棒を有するこのローパス型の鳥かご型上の)8重極モードだけがより高い周波数へ移動する(図3Cの矢印参照)。
【0059】
第1の共振モードに関して、追加のコンデンサ31およびリングセグメント32a、32bは、Fでの動作中に存在する可能性があるリングセグメント32aおよび32bの場の変位効果によってのみ生じる小さな摂動でしかない。この理由から、第1の共振周波数においては、同一の直線偏波鳥かご型共振器に関して品質および効率の損失はほとんど確認されない。
【0060】
第2の共振周波数Fにおいては、Fの直線偏波で動作する鳥かご型共振器と比較することができる。本発明の共振器の効率および品質が、Fのみで発振するような共振器と異なるのは、リングセグメント32aおよび32bに対して必要な通常はいくぶん長い電流経路、および追加のリング素子の存在によって生じる場の変位効果だけである。直径がその長さよりも小さい共振器に関して、この差は特にほとんど意味をなさない。
【0061】
一般的なケースでは、第2のモードは、図3Bに示されているように、<Fである周波数Fに存在することできるだけでなく、>Fである周波数F、すなわち直線鳥かご型モードよりも高いモードでも存在することができる。実際には、目的を達成するのにどちらの変形例を選択した方が良いのかを考えなければならない。ローパス型の鳥かご型共振器では、F<Fを選択した方が有利なことがある。これは、この場合には、本発明の共振器の追加のモードと同じ周波数帯に、鳥かご型共振器の双極子モード以外のモードが含まれないためである。これは、幾何学的欠陥および電気的欠陥の場合のデカップリングをより容易にする。ハイパス型の鳥かご型共振器では、反対の状況の方が有利なことがある。
【0062】
図4A〜F、図5A〜Dおよび図6A〜Cは、本発明の2重同調共振器のさまざまな変形例の展開図を概略的に示す。
【0063】
図4Aに示す実施形態は図3Aと等価である。この実施形態は、両方のモードの対称性が最大となる点が特徴である。しかしながら、Fにおける追加のモードの追加のコンデンサ44はyz平面(=周波数Fの鳥かご型モードの磁気対称面)上に置かれており、図3Aの追加のコンデンサ31のように2重には構成されていない。普通ならば全く同じパラメータを有する同じモードを生み出すため、図3Aに示した実施形態の追加のコンデンサ31は、図4Aの追加のコンデンサ44の2倍の静電容量値を有し、yz平面に関して鏡面対称に配置されている。素子間のガルバニック接続は黒丸で示されている。
【0064】
図4Aに示した実施形態は、2つに分割されたリング素子33と、図4Aの構成では追加のコンデンサ44によって遮断されたリングセグメント40とを有する。それぞれのリングセグメント対は、2つの導体棒11とともに、灰色で示された電流経路41を形成する。
【0065】
点線は、Fにおける鳥かご型モードの電気対称面を表し、この電気対称面はxz平面と一致する。一点鎖線は磁気対称面を表し、この磁気対称面はyz平面と一致する。図4Aに、xy平面と一致する電気対称面は示されていない。
【0066】
における共振モードに関しては、電気対称面がyz平面と一致し、磁気対称面がxz平面と一致し、したがって、これらの電気対称面および磁気対称面は、Fにおける鳥かご型モードの対称性とは直交関係にある。この電気対称面および磁気対称面の直交性から、理想的には、これらの2つのモードをその夫々の結果から電磁的に完全にデカップリングすることができる。すなわち、両方のモードを互いに完全に別々に励振することができ、それらの共振周波数を互いに完全に別々に調整する(同調させる)ことができる。
【0067】
この直交性はさらに、少なくとも2つの点46の間では、一方のモードが動作中に高い電位差を示し、もう一方のモードが電位差を示さないことを意味する。このような複数の点は、この構造が、一方のモードの磁気対称面であると共にもう一方のモードの電気対称面と交差する部分に位置する。これらの点は、かかる接続の影響を他方のモードに及ぼすことなく、一方の共振モードの選択的なカップリングインおよびカップリングアウトに対して使用することができる。
【0068】
一定条件下では、共振器が、xy平面に関して幾何学的および電気的に対称であることが望ましいが、共振器が機能するためにこのことが必須であるわけではない。この追加の対称性によって、動作中の電場および磁場の対称性が増し、したがって、通常は、感度が増し、動作中における測定試料内での損失が減ることによって、本発明の共振器の性能が向上する。誘導結合の場合を除き、xy平面に関する対称性は通常、リード線によって破られる。
【0069】
図4Bでは、第2の周波数Fにおけるxy平面に関する電気的な対称性が壊されている。図4Aに示した実施形態の電流経路41はそれぞれ、2点で容量的に遮断されているが、図4Bに示す実施形態は、追加のコンデンサ45によって1点でのみ容量的に遮断された電流経路42を含み、この電流経路42は灰色で示されたDC電流経路を形成する。この変型例では、追加のコンデンサ45が、図4Aのコンデンサ44よりも小さい静電容量値を有していなければならないため、Fを同調させるのがより容易になる。しかしながら、図4Bに示す実施形態では、このRF共振器内に取り付けるための要件を満たす十分な静電容量値を有するコンデンサを製作することが不可能な場合には、ごく単純に、これらのコンデンサを、延長されたリード線によって、RF共振器の少し外側に取り付けてもよい。これにより、それぞれの電流経路に単一のコンデンサのみが組み込まれるからである。
【0070】
図4Cは、2つに分割された部分リングがコンデンサ48によって容量的に遮断されたリング素子47を有する本発明のRF共振器のバンドバス型の変形例を示す。この変形例では、リングセグメントは、容量的に遮断されておらず、且つ、2つの導体棒11間の直接のガルバニック接続を形成する。第2の共振周波数の電流経路は、このケースでは導体棒11上のコンデンサ13によって、共振に同調される。
【0071】
図4Dは、容量的に遮断されたリング素子47を有する本発明のRF共振器のハイパス型の変形例を示し、Fでの共振用の電流経路に関するこれまでに説明した本発明の全ての変形例と組み合わせることができる。
【0072】
図4Eは、6つの導体棒11と、単一の部分からなるリング素子12と、2点で容量的に遮断されたリングセグメント40とを備える本発明のRF共振器の一実施形態を示す。第2の周波数を発生させるのに、このケースでは、6つの導体棒11のうちの4つの導体棒11だけが使用される。
【0073】
本発明によれば、2つからN個の追加のリングセグメントを挿入することができる。本発明のRF共振器の鳥かご型モードの対称性に対する影響をできるだけ小さくするために、N=4i+2個の導体棒を有し、追加のリングセグメントを2つだけ使用する共振器を使用し、互いの反対側にある2つの導体棒をこれらのリングセグメントに電気的に接続することが得策である。図4Fは、6つの導体棒を有し、中心角が360°のリングセグメント43(閉じたリング)を2つだけ有するこのような実施形態を示す。しかしながら、本発明の目的に照らしてこれらのリングセグメントを定義すると、これらのリングセグメントは、リング素子ではなく、リングセグメントであることが理解される。なぜなら、リングセグメントは、2つの導体棒とだけガルバニック接続を有するのに対して、リングセグメントは、N個の全ての導体棒とのガルバニック接続を有するためである(すなわち、リング素子は、単一の部分からなり、N個の全ての導体棒にガルバニック接続されているか、または、2つの部分からなり、部分リングの形態を有し、それぞれの部分リングがN/2個の導体棒に接続されており、その結果として、この2つの部分からなるリング素子が、全体として、N個の全ての導体棒にガルバニック接続されている)。本発明によれば、図4Fの実施形態を、中心角が180°の2つのリングセグメントを有するように構成することもできる。しかしながら、実際には、このように構成すると、非対称なリングセグメントと対称なリング素子の間の誘導結合のために、本発明のRF共振器の2つの双極子モードをデカップリングすることがより困難になる。
【0074】
生み出される場の均質性およびFにおける効率がより高くなるため、通常は、4つの導体棒11および4つのリングセグメント32を使用する図4Eの変形例の方が、Fにおける第2の共振モードに対して2つのリングセグメント43および2つの導体棒11だけを使用する図4Fの変形例よりも好ましい。
【0075】
したがって、リング素子を切断して開くことによって、存在する可能性がある鳥かご型共振器の回転対称性を壊す必要はない。図5Aは、リング素子12が遮断されていない変形例に含まれる、図4Aとは異なる本発明の2重共振RF共振器の実施例を示す。閉じたリング素子12を使用すると、鳥かご型共振器のコンデンサ13は、リングセグメント40内の追加のコンデンサ44と並列に接続される。しかしながら、リング素子を切断して開いて2つの部分リングにすると、共振周波数の設定およびコンデンサから独立した周波数Fにおける場の均質性の設定によって、構造を単純にすることができる。さらに、それによってFにおける第2のモードの共振周波数を変更することができる同調コンデンサ52をリングに挿入し(図5B)、またはリード線によって部分リングの端に接続することができる。
【0076】
第2の周波数Fは、第1の周波数Fでの共振モードの電気対称面(xz平面)(Fでの動作中のゼロ電位点)上にカップリングインすることができる。この結合は対称に構成されることが好ましく、図5Cに示すように、この結合は、第1のモードの対称点46への結合を提供し、対称にするための2つの結合コンデンサ53によって実現された調整器54によって容量的に達成することができる。対称な制御を達成するため、(同軸変成器、バラン変成器などの)従来技術により知られている全ての接続が使用される。しかしながら、原則として、両方の周波数を誘導的に結合する方が好ましいようである。なぜなら、このようにすることが、RF共振器の対称性に対する影響が最も小さく、RF共振器をどの点においても接地する必要がない、すなわちRF共振器の制御を「浮動」制御とすることができる結合を実現する最も単純な方法であるからである。
【0077】
図5Dは、図4Bの実施形態に似ているが、第3の測定周波数Fを、コイル中のDC電流経路42に結合することができ、サドルコイルまたはソレノイドコイルによってRF場を発生させる従来技術により知られている全ての方法で第3の測定周波数Fを使用することができる、実施形態を示す。発生するRF場の均質性がより良好になるため、4つのDC電流経路42全てに対してこの結合を実現することが基本的には望ましい。
【0078】
簡略化するため、この結合は図示されていない。DC電流経路は1回巻きのコイルのように振る舞い、そのため、1つ、2つまたは3つ以上の共振周波数を同調させるそれぞれの変形例が、従来技術の発明の共振器と併用して使用される。2つの共振周波数に対する同調の一例は帯域阻止フィルタによる構成である。この回路では、リングセグメントのコンデンサ45に並列に接続された共振回路57を使用して、共振器の周波数Fを遮断し、F<Fの場合に第3の周波数を接続することを可能にする。他の実施形態は、この分路構成だけでなく、例えば参照文献[1]の6章において説明されているように、スイッチ、複数の極、結合された共振回路などをも含む。
【0079】
異なるDC電流経路上に異なる周波数を結合することもできる。しかしながら、この場合には一般に、それぞれの場合に、より高い周波数を全て遮断して、より低い周波数の共振サークルによる場の遮蔽を防がなければならないであろう。
【0080】
3つ以上の共振周波数を同調させる他の構成は、例えば本発明の共振器の外側または内側に同心に配置することができる追加のコイルまたは共振器との結合を含む。
【0081】
周波数Fの同調は、図6Aに示すように周波数Fの電気対称面(xz平面)(ゼロ電位点)上で結合された1つ以上のコンデンサによって達成することができる。モードFに対するそれぞれの1つの同調コンデンサ61が、モードFにおけるそれぞれ1つの下部のリングセグメント32b上の対称点63に接続される。対称点63での結合を可能にするため、コンデンサは、RF共振器の低周波数領域において、直列に2重に構成される。2つの電流経路41はそれぞれ、理想的にはxz平面に配置された同調コンデンサ61に接続される。第2の周波数Fでの動作中、同調コンデンサによる接続点の間には電位差がないため、第2の周波数Fとは独立に第1の周波数Fを変更することができる。図6Aは、可変静電容量により2つの同調コンデンサ61が一緒に調整される場合に、同調の間、導体棒上の電流分布に影響を及ぼさない同調を示す。このためには、これらの同調コンデンサ61の静電容量範囲を、共振器で使用される、幾何学的構成および静電容量値に適合させなければならないが、各静電容量範囲は異なってもよい。z方向の対称性に影響が及ぶことをも回避し、xy平面に関して対称な電位分布を得るため、上部のリングセグメント32a上に、可変静電容量の2つの追加のコンデンサを取り付けることもできる。しかしながら、共振周波数の変更は通常、測定する対象物が共振器に導入されたときの共振シフトを補償するためだけに使用され、したがって、共振周波数の変更は共振器の小さな摂動に対応するため、同調コンデンサを2倍にすることは実際には、別の同調範囲が望ましい場合にのみ正当化される。これは例えば、Hから19Fへの鳥かご型モードの共振周波数の調整である。
【0082】
図6Bは、第1の周波数Fの同調を接続することができる同じ対称点63を使用して、信号を結合すること、すなわち周波数Fにおける信号を励振し、測定することもできることを示す。この目的のため、第2のモードのリングセグメントの1つの上の対称点63に、第1のモードの調整器62を結合する。しかしながら、コイルの対称性に対する影響が最も小さく、接地接続または差動制御要素を使用せずにすむため、この測定周波数に対しても誘導結合が最も都合がよいようである。
【0083】
図6Cは、第1の周波数FのDC電流経路上に第3の周波数Fがカップリングインされた、第2の周波数の電流経路に対する図5Dの実施形態と等価のコイルの変形例を示す。ここでも、周波数Fを遮断するために共振回路64が使用され、共振回路64は、2つのリングセグメント間に配置される。図5Dおよび6cに示した例では、最初の2つの周波数FおよびFを発生させるために8つの全ての導体棒が使用され、Fを発生させるのには、4つの導体棒、すなわち共振回路64に接続されたリングセグメントとともに電流経路を形成する導体棒だけが使用される。
【0084】
図5Dに示した実施形態を図6Cに示した実施形態と組み合わせた場合には、4つの周波数に同調させることができるRF共振器が得られる。
【0085】
本発明の2重同調共振器の1つの大きな利点は、対応するコンデンサの静電容量および/または導体棒の位置を適合させることによって、xy平面内の方位角であるφにおける場の均質性、すなわち導体棒上の電流分布を、2つのモードに関して互いに完全に独立に調整することができることである。図7の鳥かご型共振器のコンデンサの静電容量値C1aからC1pは同一とすることができるが、同一である必要はない。対称構成では、静電容量値C1a、C1d、C1e、C1h、C1i、C1l、C1mおよびC1pが通常、概ね同一(xy、xzおよびyz平面に関して対称)であり、C1b、C1c、C1f、C1g、C1j、C1k、C1nおよびC1oについても同じことが言える。xy平面に関して非対称であるような態様で同調を結合する場合、または図6Aおよび6bに示したように結合する場合には、動作の間、電気的な対称性を維持することができるように、静電容量値C1a、C1d、C1eおよびC1hが、C1i、C1l、C1mおよびC1pとはわずかに異なる。しかしながら、一般的なケースとして、例えば接続レッグまたは追加の非対称共振器との結合のために共振器の対称性がもはや維持されない場合、または製造に起因する対称性の偏差を補正する場合には、全てのコンデンサが異なる静電容量を有することもありうる。目的は常に、xy、xzおよびyz平面に関する電場の対称性を保証することである。
【0086】
第2の双極子モードに関しては通常、静電容量値C2a、C2d、C2eおよびC2hが、C2b、C2c、C2eおよびC2fとは異なる。これは、これらのコンデンサを介して関連する導体棒を接続するリングセグメントは、長さが異なることから、異なるインダクタンスを有するためである。このことは、共振器の全体にわたって、電流が、ほぼ正弦状に分布することを意味し、これにより、静電容量値C2a、C2d、C2eおよびC2hを増大させることによって達成することが容易となる。したがって、これらの追加のコンデンサの静電容量は、共振器の全体にわたって、電流が、ほぼ正弦状に分布するように選択される。
【0087】
導体棒の位置を変更することによって、一方のモードの効率および/または均質性を、もう一方のモードの損失と引き換えに最適化することができる。上で説明したように導体棒の位置を変更することにより、静電容量値C1aからC1pおよびC2aからC2hを補正することによって、場の均質性をできる限り適合させることができる。
【0088】
本発明の多重同調RF共振器の特に大きな1つの利点は、静電容量値および/または導体棒の位置を変更することによって、2つのモードのφにおける場の均質性が単独で最適化され、この場の均質性を概ね全く同じに設定することができることであり、これにより、例えば、分極移動実験における磁化移動の効率を増大させる。導体棒の位置は、2つの共振モードの場の均質性(おそらくはさらに図5Dまたは図6Cに従ってカップリングインされた共振)に影響を及ぼすが、静電容量値C1aからC1pおよびC2aからC2hの変更は一方のモードにだけ影響を及ぼす。唯一の例外は、鳥かご型共振器のコンデンサ13が追加のコンデンサ44およびリングセグメント40と並列に接続された、例えば図4E、Fおよび図5A、Bのリング素子が遮断されていない構成、ならびに、第2の周波数を同調させるために導体棒上にコンデンサが位置し、したがって第1の周波数の電流経路にもコンデンサが位置する、図4Cなどの構成である。
【0089】
図9は、回転対称に配置された8つの導体棒を有する、Hおよび13Cの周波数に同調させた本発明の共振器の2つの構成のxy平面内の半径2.2mmのところの磁場の分布の一例を、2つの双極子モードの磁場の振幅について示す図である。構成AとBの違いは、コンデンサの静電容量値C2aからC2fが変更されていることにあり、これによって13Cの周波数における場の均質性を向上させることができる。この図において、Hモードの場の分布に対する影響を確認することはできない。
【0090】
本発明のHF共振器は、φにおける場の均質性に加えて、両方のモードに対するz方向の場プロファイルが概ね一致するような態様で構成することができる。Fにおける第2のモードのリングセグメント32a、32bの位置決めにより、場プロファイルの調整がある程度可能となる。一方で、リングセグメント32a、32bを、Fにおける第1のモードのリング素子33と同じ直径のところに配置することができる。しかしながら、このことは、図8Aに概略的に示されているように、リングセグメント32a、32bの少なくとも一部分を、リング素子33に対してz方向へ移動させなければならないことを意味する。
【0091】
あるいは、同じz位置の異なる直径のところにリングセグメント32a、32bを位置決めすることもできる(図8B)。これらの2つの変形例を組み合わせることも可能である。特に、鳥かご型共振器の分断されて開いているリング素子33の場合には、第2の共振モードの1つのリングセグメントによって形成される隙間を使用すると都合がよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のRF共振器では、少なくとも2つの追加のリングセグメントを取り付けることによって、N個の導体棒を有する鳥かご型共振器に第2の測定周波数Fが追加される。両方の共振経路上に追加の周波数を結合することもできる。本発明の2重または多重同調RF共振器は、例えばサブグリッドを有する公知の共振器において現れる、半径方向の場の均質性が不十分である問題および効率が悪い問題を解決する。本発明のRF共振器の構造は単純であり、両方の周波数FおよびFを直角位相で機能させ、または導体棒の数を相当に増やす(導体棒の数を2倍にする)ような必要性はこのタイプの共振器にはない。導体棒の数をこのように増やすと、少なくともFにおける効率が大幅に低下することになる。鳥かご型モードの縮退を通常は解消する追加の周波数を結合しなければならないため、特にNMRで一般的に使用されている多重共鳴試料ヘッド(3から5個の測定周波数)に対する直角位相制御は大きな問題である。この問題は、多大な手間をかけなければ解消できず、通常は全ての測定周波数において損失が生じる。
【0093】
フィルタおよび2倍の数の端部リングを有する従来技術の鳥かご型幾何形状とは対照的に、本発明の共振器の設計は極めて単純である。両方の周波数を完全に独立に同調させることが可能である。多数の帯域阻止フィルタを同調させる必要はなく、複数の端部リングを有する鳥かご型共振器を同調させ、結合するときの帯域阻止フィルタの非対称性にまつわる問題も生じない。両方のモードにおいて共振器の効率を低下させるであろう帯域阻止フィルタに起因する追加の損失も生じない。したがって、従来技術の公知の多重同調RF共振器に比べて、本発明の共振器は、製造がより容易であり、より良好な機能性を有する。
【0094】
参照文献
[1]ミハエラ ルプー、アンドレ ブリゲット、ジョエル ミスペルター著、「NMRプローブヘッド:生物物理学および生医学実験のために(NMR Probeheads:For Biophysical and Biomedical Experiments)」、インペリアルカレッジ(Imperial College)刊、第1版(2006年5月5日)、ISBN:1860946372
[2]米国特許第04680548号明細書
[3]米国特許第04916418号明細書
[4]米国特許第06100694号明細書
【符号の説明】
【0095】
鳥かご型モードの周波数(第1の周波数)
電流経路の追加のモードの周波数(第2の周波数)
電流経路の追加の共振の周波数(第3の周波数)
〜C コンデンサ13の静電容量
11 導体棒(誘導性)
12 単一の部分からなるリング素子(誘導性)
13 鳥かご型共振器の導体棒を容量的に遮断するコンデンサ
14 周波数Fを有する縮退モード
30 リング素子の遮断
31 追加のコンデンサ(=第2の周波数を発生させる電流経路内のコンデンサ)
32a 上部のリングセグメント
32b 下部のリングセグメント
33 2つに分割されたリング素子
40 リングセグメント
41 第2の周波数を発生させるための、複数の位置で容量的に遮断された電流経路(背景にハッチングが付けられている)
42 第2の周波数を発生させるための、1つの位置で容量的に遮断されたDC電流経路(背景にハッチングが付けられている)
43 360°の中心角を有するリングセグメント
44,45 追加のコンデンサ(=第2の周波数を発生させる電流経路内のコンデンサ)
46 第1のモードの対称点(=リング素子とxz平面との交点)
47 容量的に遮断され、2つに分割されたリング素子
48 鳥かご型共振器のリング素子を容量的に遮断するコンデンサ
52 第2の周波数の同調コンデンサ
53 第2の周波数の調整器を容量的に結合する結合コンデンサ(整合コンデンサ)
54 第2の周波数の調整器
57 第2の周波数Fを遮断する共振回路
61 第1の周波数Fに対する同調コンデンサ
62 第1の周波数Fに対する調整器
63 第2のモードの対称点(=リングセグメントとyz平面との交点)
64 追加の周波数を結合するための回路網(共振回路)
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9