(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非イオン性界面活性剤の存在下、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素を菌から分離して、前記ポリオール脱水素酵素を含む酵素溶液を得る分離工程と、
前記酵素溶液を、ポリアルキレングリコールの存在下、限外ろ過して、前記ポリオール脱水素酵素を含む酵素濃縮液を得る限外ろ過工程と、
前記酵素濃縮液を乾燥して、ポリオール脱水素酵素組成物を得る乾燥工程と、
を含む、ポリオール脱水素酵素組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一態様によれば、非イオン性界面活性剤の存在下、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素を菌から分離して、前記ポリオール脱水素酵素を含む酵素溶液を得る分離工程と、前記酵素溶液を、ポリアルキレングリコールの存在下、限外ろ過して、前記ポリオール脱水素酵素を含む酵素濃縮液を得る限外ろ過工程と、前記酵素濃縮液を乾燥して、ポリオール脱水素酵素組成物を得る乾燥工程と、を含む、ポリオール脱水素酵素組成物の製造方法が提供される。
【0024】
ポリオール脱水素酵素は細胞膜結合型酵素であり、疎水性が高いために水系溶媒では不安定である。このため、水溶液中におけるポリオール脱水素酵素の凝集を防ぎ、ポリオール脱水素酵素の安定性を向上させる目的で、酵素の安定化剤として界面活性剤を使用することが知られていた。従来の酵素組成物においては、界面活性剤、たとえば、ポリオキシエチレン−p−t−オクチルフェノール(オキシエチレン数=9,10)[(polyoxyethylene−p−t−octylphenol;商品名TritonX−100)])(以下、単に「TritonX−100」と称する場合がある。)による酵素の安定化効果が十分に得られるように、ポリオール脱水素酵素組成物中には高濃度の界面活性剤が含まれていた。
【0025】
しかしながら、本発明者らは界面活性剤とポリオール脱水素酵素との安定性との関係を詳細に検討した結果、高濃度の界面活性剤が、ポリオール脱水素酵素の失活を招いていることを見出した。高濃度の界面活性剤による酵素の失活は、化学修飾されていないポリオール脱水素酵素の場合に顕著であった。また、このような界面活性剤によるポリオール脱水素酵素の失活は、界面活性剤およびポリオール脱水素酵素を含む酵素溶液を乾燥し、ポリオール脱水素酵素組成物とした場合にも、経時的な変化として発生していることが分かった。
【0026】
これに対して本発明では、ポリオール脱水素酵素を含む酵素溶液を、ポリアルキレングリコールの存在下、限外ろ過することにより得られる界面活性剤およびポリオール脱水素酵素を含む酵素溶液を乾燥した場合であっても、乾燥後の経時的な酵素活性の低下を有意に抑制・防止し、酵素の保存安定性を向上させることができる。上記利点が達成できるメカニズムは不明であるが、以下のように推察される。なお、本発明は、下記推論によって何ら制限されるものではない。
【0027】
本発明では、ポリオール脱水素酵素を含む酵素溶液の限外ろ過をポリアルキレングリコールの存在下で行うため、濃縮された酵素溶液(以下、「酵素濃縮液」とも称する。)中にはポリアルキレングリコールが残存する。それにより、酵素濃縮液中におけるポリオール脱水素酵素の凝集または析出を防ぎ、また、当該濃縮液を乾燥した場合であっても、酵素活性の経時的な低下を抑制し、保存安定性の向上したポリオール脱水素酵素組成物が得られることを見出したものである。すなわち、本発明は、ポリアルキレングリコールの存在下で限外ろ過を行い、ポリアルキレングリコールが、酵素濃縮液中に存在することで、ポリオール脱水素酵素の凝集または析出を防ぎ、また、当該濃縮液を乾燥した場合であっても、ポリアルキレングリコールが酵素活性の経時安定性を低下させることなく、よって、保存安定性の向上したポリオール脱水素酵素組成物が得られることを初めて見出したことに基づくものである。
【0028】
本発明のポリオール脱水素酵素組成物の製造方法の主要な特徴は、上記のように、ポリオール脱水素酵素を含む酵素溶液を、ポリアルキレングリコールの存在下、限外ろ過することにより濃縮する工程(限外ろ過工程)にある。したがって、それ以外の工程については特に制限はなく、従来公知の工程を適宜適用できる。以下、本発明の分離工程、限外ろ過工程および乾燥工程を含む好ましい実施形態を詳細に説明する。
【0029】
<ポリオール脱水素酵素の分離工程>
〔分離工程〕
本発明のポリオール脱水素酵素組成物の製造方法としては、非イオン性界面活性剤の存在下、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素(以下、「PQQ依存性PDH」とも称する場合がある。)を菌から分離して、酵素溶液を得る分離工程を含む。
【0030】
当該分離工程の好ましい実施形態では、始めに、PQQ依存性PDHを有する細胞(特には、細胞膜)を含む菌から、非イオン性界面活性剤(たとえば、TritonX−100)を含む溶液を用いて、PQQ依存性PDHを可溶化することによって、可溶化したPQQ依存性PDHおよび非イオン性界面活性剤を含む酵素溶液を得る。
【0031】
PQQ依存性PDHは、たとえば、グルコノバクター属、シュードモナス属など、様々な細菌が生成することが知られている。本発明では、これらのPQQ依存性PDHを産生することができる菌(以下、「PQQ依存性PDH産生菌」とも称する)が生成するいずれのPQQ依存性PDHも好適に使用することができる。かかる菌は、いずれの菌も好ましく使用することができるが、これらの中でも特に、グルコノバクター属に由来するPQQ依存性PDHを好適に使用することができる。さらに、入手の容易さから、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)NBRC 3130、3171、3172、3189、3244、3250、3253、3255、3256、3257、3258、3285、3287、3289、3290、3291、3292、3293、3294、3462、3990、12467、14819;グルコノバクター・フラテウリ(Gluconobacter frateurii)NBRC 3251、3254、3260、3264、3265、3268、3270、3271、3272、3273、3274、3286、16669;グルコノバクター・セリナス(Gluconobacter cerinus)NBRC 3262、3263、3266、3267、3269、3275、3276等を使用することができ、ポリオール脱水素酵素の生産量および精製のしやすさの観点で、グルコノバクター・タイランディカス(Gluconobacter thailandicus)NBRC 3291を好ましく使用することができる。
【0032】
また、PQQ依存性PDH産生菌であれば、これらの自然突然変異株または人為突然変異株を使用してもよい。人為突然変異処理方法は、当業者に周知の方法と同様にしてもしくは当業者に周知の方法を適宜修飾してまたはこれらの方法を適宜組合せて適用することができる。このような微生物の代表菌株として、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)が使用され、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)NBRC 3291が好ましく使用される。
【0033】
上記PQQ依存性PDHを産生する細菌からPQQ依存性PDHを得るための具体的な方法は、特に制限されず、たとえば、かかる細菌を栄養培地にて培養し、該培養物からPQQ依存性PDHを抽出して得る方法が挙げられる。以下、具体的に説明する。
【0034】
(抽出方法)
上記PQQ依存性PDHを産生する細菌を培養する培地は、使用菌株が資化しうる炭素源、窒素源、無機物、その他必要な栄養素を適量含むものであれば、合成培地であっても天然培地であってもよい。炭素源としては、たとえば、コーンスティーブリカー、グルコース、グリセロール、ソルビトール、グルコン酸ナトリウムなどが使用される。窒素源としては、たとえば、尿素、ペプトン類(ポリペプトン)、肉エキス、酵母エキスなどの窒素含有天然物や、塩化アンモニウム、クエン酸アンモニウムなどの無機窒素含有物が使用される。無機物としては、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸ナトリウム、塩化カルシウム(2水和物)、硫酸マグネシウム(7水和物)などが使用される。その他、特定のビタミンなどが必要に応じて使用される。上記の炭素源、窒素源、無機物、およびその他の必要な栄養素は、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、かかる培地は、100〜140℃程度で10分〜60分、オートクレーブ処理を行うことが好ましい。
【0035】
培養は、振とう培養(たとえば、120〜160min
−1)あるいは通気撹拌培養で行うことが好ましい。培養温度は20〜50℃、好ましくは22〜40℃、もっとも好ましくは25℃〜35℃である。培養pHは4〜9の範囲、好ましくは5〜8である。pHの調製は、たとえば塩酸などで行えばよい。これら以外の条件下でも、使用する菌株が生育すれば実施される。培養期間は通常0.5〜5日が好ましい。かかる培養は、2度〜5度繰り返して行ってもよい。なお、これらのPQQ依存性PDHは、上記培養によって得られた酵素でも、PQQ依存性PDH遺伝子を大腸菌等に形質導入して得られた組換え酵素であってもよい。
【0036】
次いで、培養により得られた液を遠心分離(500〜20,000×g、5〜30分、0〜10℃)で集菌する。具体的には、集菌されたものを緩衝剤に懸濁して、PQQ依存性PDHを抽出する。抽出方法は一般に使用される抽出方法を用いることができ、たとえば超音波破砕法、フレンチプレス法、有機溶媒法、リゾチーム法等を用いることができる。典型的には、フレンチプレス法、超音波破砕法を用い、菌体を破砕する。続いて、得られた破砕液をさらに遠心分離(500〜20,000rpm、5〜30分、0〜10℃)する。得られた上清を超遠心分離(20,000〜1,000,000×rpm、30〜120分、0〜10℃)をすることによって、膜画分を沈殿物として得ることができる。
【0037】
かかる膜画分の沈殿物から、非イオン性界面活性剤を含む溶液を用いて、PQQ依存性PDHを可溶化する。まず、膜画分の沈殿物を、緩衝剤(たとえば、濃度2〜200mMのトリス塩酸緩衝液 pH7〜9程度)で懸濁する。次に終濃度が0.1〜5g/100mL程度になるように、非イオン性界面活性剤を加えて、非イオン性界面活性剤を含む溶液を調製し、一定条件下(たとえば、0〜10℃で、10分〜48時間)で攪拌を行うことによって、PQQ依存性PDHを可溶化し、可溶化したPQQ依存性PDHおよび非イオン性界面活性剤を含む酵素溶液を得る。当該溶液中では、酵素を非イオン性界面活性剤が内包するミセルのような状態となっていることが好ましい。すなわち、この段階では、酵素を可溶化するために、酵素溶液は、臨界ミセル濃度以上の非イオン性界面活性剤を含んでいる。
【0038】
可溶化したPQQ依存性PDHおよび非イオン性界面活性剤を含む酵素溶液は、超遠心分離を施すことが好ましい。かかる超遠心分離の条件にも特に制限はないが、たとえば、20,000〜1,000,000rpm、30〜120分、0〜10℃で行う。本発明においては、超遠心分離により得られた上清を、非イオン性界面活性剤を含む溶液を用いて、さらに透析を行うのが好ましい。透析は、緩衝剤を含み、再生セルロース、セルロースエステル等の透析膜を用いて、0〜10℃で0.5時間〜3日間行うのが好ましい。なお、本明細書中、「緩衝剤」を「緩衝液」とも称する。
【0039】
上記のようにして、必要に応じて、超遠心分離や透析などが施された酵素および非イオン性界面活性剤を含む溶液を得ることができる。
【0040】
(溶液)
分離工程において用いられる溶液(溶媒)としては、特に制限されないが、酵素の安定性の観点から、緩衝液が好ましい。緩衝液としては、所望のpHを有するものであれば公知の緩衝液が適宜使用でき、特に限定されるものではないが、たとえば、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、クエン酸−リン酸緩衝液、トリスヒドロキシメチルアミノメタン−HCl緩衝液(トリス塩酸緩衝液)、酢酸緩衝液、MOPS(3−モルホリノプロパンスルホン酸)(MOPS−NaOH緩衝液)もしくはHEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)(HEPES−NaOH緩衝液)などのGOOD緩衝液、グリシン−塩酸緩衝液、グリシン−NaOH緩衝液、グリシルグリシン−NaOH緩衝液、グリシルグリシン−KOH緩衝液などのアミノ酸系緩衝液、トリス−ホウ酸緩衝液、ホウ酸−NaOH緩衝液、ホウ酸緩衝液などのホウ酸系緩衝液、またはイミダゾール緩衝液などが用いられる。これらのうち、たとえば、菌から酵素を分離する際(集菌、菌の破砕および酵素の抽出)には、トリス塩酸緩衝液、MOPS−NaOH緩衝液、グリシルグリシン−NaOH緩衝液が好ましく、トリス塩酸緩衝液がより好ましい。また、透析を行う際には、MOPS−NaOH緩衝液、グリシルグリシン−NaOH緩衝液、トリス−ホウ酸緩衝液が好ましく、MOPS−NaOH緩衝液がより好ましい。緩衝液の濃度としては、特に制限されず、0.1〜200mMであるのが好ましく、1〜100mMであるのがより好ましい。なお、本発明において緩衝液の濃度とは、緩衝液中に含まれる緩衝剤の濃度(mM)をいう。また、緩衝液のpHは、酵素の安定pHから極端に外れていなければよく、好ましくはpH4〜11、より好ましくはpH5〜10、さらに好ましくはpH7〜9の範囲である。
【0041】
(非イオン性界面活性剤)
分離工程において用いられる非イオン性界面活性剤としては、PQQ依存性PDHを可溶化し、使用するポリオール脱水素酵素の酵素活性が低下しないものであれば、特に制限されない。非イオン性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系、アルキルグリコシド系、後述の透析工程で好ましく用いられるショ糖脂肪酸エステル系、または後述の限外ろ過工程で用いるポリアルキレングリコール系等を用いることができる。これらのうち、ポリオール脱水素酵素の酵素活性に影響を及ぼさないという観点から、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系またはアルキルグリコシド系であることが好ましい。また、ショ糖脂肪酸エステル系、ポリアルキレングリコール系であれば、後述の操作が簡便になるという点で好ましい。これらの非イオン性界面活性剤は、単独で用いても、混合物の形態で用いてもよい。なお、本明細書中、非イオン性界面活性剤と称する場合は、非イオン性界面活性剤を適宜選択して用いることができる。また、非イオン性界面活性剤を、単に「界面活性剤」と称する場合がある。
【0042】
非イオン性界面活性剤の濃度としては、特に制限されず、溶液中の濃度が、たとえば、0.05〜10g/100mL程度になるように添加されるのが好ましく、より好ましくは0.1〜5g/100mLである。
【0043】
「ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系」
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系非イオン性界面活性剤としては、特に制限はないが、ポリオキシエチレン−p−t−オクチルフェノール(オキシエチレン数=9,10)[(polyoxyethylene−p−t−octylphenol;TritonX−100)]等が挙げられる。
【0044】
「ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系」
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル非イオン性界面活性剤としては、特に制限はないが、たとえば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Polyoxyethylene Sorbitan Monolaurate;Tween 20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパリミテート(Polyoxyethylene Sorbitan Monopalmitate;Tween 40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(Polyoxyethylene Sorbitan Monostearate;Tween 60)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Polyoxyethylene Sorbitan Monooleate;Tween 80)などが好ましい。
【0045】
「アルキルグルコシド系」
アルキルグリコシド系非イオン性界面活性剤としては、特に制限はないが、炭素数7〜12のアルキル基を有するアルキルグリコシド、アルキルチオグリコシドなどが好ましい。かかる炭素数については、より好ましくは7〜10であり、特に好ましくは炭素数8である。糖部分は、グルコース、マルトースが好ましく、より好ましくはグルコースである。より具体的には、n−オクチル−β−D−グルコシド、n−オクチル−β−D−チオグルコシドであると好ましい。
【0046】
「ショ糖脂肪酸エステル系」
本発明ではショ糖脂肪酸エステルを、非イオン性界面活性剤として使用してもよい。ショ糖脂肪酸エステルとしては、特に制限はないが、本発明の保存安定性向上の目的を効果的に達成するとの観点から、HLB値が、好ましくは8〜20であり、より好ましくは9〜19であり、さらに好ましくは10〜18であり、特に好ましくは11〜18である。なお、本明細書においては、HLB値は、グリフィン法によって算出された値を意味する。
【0047】
また、ショ糖脂肪酸エステルにおける脂肪酸の炭素数も特には制限ないが、5〜30であると好ましく、好ましくは7〜25であり、より好ましくは8〜22であり、さらに好ましくは10〜20である。アルキル基の炭素数がいくつであっても、HLB値が8〜20となるように選択することが好ましい。
【0048】
また、かかるショ糖脂肪酸エステルにおける脂肪酸としても特に制限はないが、市販品を購入する場合の入手性を考慮すると、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘニン酸、およびエルカ酸からなる群から選択されると好ましい。この場合も、HLB値が8〜20となるように選択することが好ましい。
【0049】
これらのショ糖脂肪酸エステルは、従来公知の方法を適宜参照し、あるいは組み合わせて合成して準備することができる。また、市販品を購入して準備してもよい。市販品としては、三菱化学フーズ株式会社のサーフホープSE PHARMA(登録商標)のショ糖ラウリン酸エステル(J−1201、J−1205、J−1216)、ショ糖ミリスチン酸エステル(J−1416)、ショ糖パルミチン酸エステル(J−1615、J−1616)、ショ糖ステアリン酸エステル(J−1801、J−1802、J−1803F、J−1805、J−1807、J−1809、J−1811、J−1811F、J−1815、J−1816)、ショ糖オレイン酸エステル(J−1701、J−1715)、ショ糖ベヘニン酸エステル(J−2203、J−2203)、ショ糖エルカ酸エステル(J−2101、J−2102)などが例示できる。
【0050】
なかでも、HLB値が8〜20であり、本発明の保存安定性向上の目的を効果的に達成するとの観点から、ショ糖ラウリン酸エステル(J−1216(HLB値16))、ショ糖ミリスチン酸エステル(J−1416(HLB値16))、ショ糖パルミチン酸エステル(J−1615(HLB値15)、J−1616(HLB値16))、ショ糖ステアリン酸エステル(J−1811(HLB値11)、J−1811F(HLB値11)、J−1815(HLB値15)、J−1816(HLB値16))、ショ糖オレイン酸エステル(J−1715(HLB値15))などが好ましく、特にショ糖ラウリン酸エステル(J−1216(HLB値16))が好ましい。
【0051】
「ポリアルキレングリコール系」
本発明で用いられるポリアルキレングリコールは、下記式(5):
【0053】
式中、RおよびR’は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜18のアルキル基であり、AOは、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドであり、nはアルキレンオキサイドの付加モル数を表し、2〜300の整数を表す、
で表される。アルキル基は、直鎖であっても分岐であってもよく、たとえば、RおよびR’の炭素数1〜18のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−ノニル、n−デシル、ラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリル、オレイル等が挙げられる。また、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、イソプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドは、2種類以上のアルキレンオキサイドを含んでもよい。たとえば、式(5)で表されるポリアルキレングリコールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー)、ポリオキシエチレンングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。nは、アルキレンオキサイドの付加モル数を表し、2〜300の整数であり、好ましくは3〜250の整数、より好ましくは5〜200の整数である。なお、式(5)で表されるポリアルキレングリコールが、2種以上のアルキレンオキサイドで構成される場合、付加モル数nは合計量を意味する。
【0054】
これらのポリアルキレングリコールとしては、従来公知の方法を適宜参照し、あるいは組み合わせて合成して準備することができる。また、市販品を購入して用いてもよい。市販品としては、花王株式会社製のエマルゲンシリーズ(1108、103、104P、105、106、108、109P、120、123P、130P、147、150、2020G−HA、2025G、210P、220、306P、320P、350、404、4085、409PV、420、430、LS−105、LS−110、PP−290)、三洋化成工業株式会社製のニューポールシリーズ(ニューポールPE−34、PE−61、PE−62、PE−64、PE−68、PE−71、PE−74、PE−75、PE−78、PE−108、PE−128)、BASF社製のプルロニックシリーズ(プルロニックF−38、F−38、F−68、F−77、F−87、F−88、F−98、F−108、F−127)等が用いられる。これらのうち、エマルゲンPP−290、ニューポールPE−68、PE−78、プルロニックF−68が好ましい。
【0055】
また、非イオン性界面活性剤に加えて、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、天然型界面活性剤などを適宜選択して使用することもできる。これらのうち、ポリオール脱水素酵素の酵素活性に影響を及ぼさないという観点から、両性界面活性剤が好ましい。
【0056】
両性界面活性剤としては、特に制限されないが、例えば、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸(CHAPS)、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(CHAPSO)、n−アルキル−N−N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホン酸(Zwittergent)などが挙げられる。なお、これらは、単独で用いても、混合物の形態で用いてもよい。
【0057】
上記のうち、PQQ依存性PDHを可溶化する非イオン性界面活性剤としては、工業的な観点からしても酵素の可溶化に適しているという観点から、ポリオキシエチレン−p−t−オクチルフェノール(オキシエチレン数=9,10)(TritonX−100)、ショ糖脂肪酸エステルなどが好適である。特に、ポリオキシエチレン−p−t−オクチルフェノール(オキシエチレン数=9,10)は、細胞膜から抽出されたPQQ依存性PDHを可溶化させ、それを抽出するために、工業的な観点からしても好適である。
【0058】
<ポリオール脱水素酵素の精製工程>
上記のように抽出した、可溶化したPQQ依存性PDHは、精製工程を経ることが好ましい。上記で得られた可溶化したPQQ依存性PDHの精製方法は特に制限されず、たとえば、硫安やぼう硝などの塩析法、塩化マグネシウムや塩化カルシウムを用いる金属凝集法、ストレプトマイシンやポリエチレンイミンを用いる除核酸、またはDEAE(ジエチルアミノエチル)−セファロース、CM(カルボキシメチル)−セファロースなどのイオン交換クロマト法などのクロマトグラフィ、透析等の方法で精製することができる。
【0059】
また、本発明において、非イオン性界面活性剤およびPQQ依存性PDHを含む酵素溶液に、これらを精製する工程の途中で、ショ糖脂肪酸エステルを含有させて、精製工程を行うことが好ましい。ショ糖脂肪酸エステルを、非イオン性界面活性剤およびPQQ依存性PDHを含む酵素溶液に含有させる段階は、たとえば、クロマトグラフィの溶離液、透析の際の透析液、または各工程の希釈液、等として用いて、酵素溶液に含有させることができる。
【0060】
本発明の製造方法において、好ましくは、精製工程では、カラムクロマトグラフィを実施する。すなわち、上記で可溶化したPQQ依存性PDHを含む酵素溶液をカラムにアプライした後、ショ糖脂肪酸エステルを含む溶離液を送液することによって、可溶化時に使用した遊離している非イオン性界面活性剤(たとえば、Triton−X)を除去することが好ましい。また、さらに、カラムクロマトグラフィ後の酵素溶液に、透析を実施することが好ましい。その際、ショ糖脂肪酸エステルまたはポリアルキレングリコールを含む溶液を用いることが好ましく、より好ましくはショ糖脂肪酸エステルを含む溶液である。
【0061】
以下、本発明の製造方法の好ましい実施形態であるクロマトグラフィと透析とについて述べる。
【0062】
〔クロマトグラフィ〕
本発明のポリオール脱水素酵素組成物の製造方法において、分離工程後の酵素溶液にクロマトグラフィを行うことが好ましい。以下、クロマトグラフィ後の酵素溶液を、「第1精製酵素溶液」とも称する。また、以下、クロマトグラフィを行う工程を、「クロマトグラフィ工程」とも称する。
【0063】
本発明で用いられるクロマトグラフィとしては、イオン交換クロマトグラフィ、疎水クロマトグラフィ、ゲルろ過クロマトグラフィ、ヒドロキシアパタイト、アフィニティークロマトグラフィが挙げられる。これらのうち、界面活性剤を効果的に低減しうるという観点から、イオン交換クロマトグラフィが好ましい。また、クロマトグラフィは、High Performance Liquid Chromatography(HPLC)、Fast Protein Liquid Chromatography(FPLC)で行うことが好ましく、Fast Protein Liquid Chromatography(FPLC)で行うことがより好ましい。
【0064】
クロマトグラフィに用いられるカラムとしては、イオン交換クロマトグラフィが好ましく、陰イオン交換クロマトグラフィまたは陽イオン交換クロマトグラフィを界面活性剤の種類に応じて適宜選択することができ、好ましくは陰イオン交換クロマトグラフィである。クロマトグラフィに用いられるカラムにも特に制限はないが、ResourceQ、ResourceS(たとえば、GEヘルスケア製のものが好適である)などが好適である。
【0065】
(溶離液)
クロマトグラフィを行う際に用いる溶離液としては、特に制限されないが、緩衝液を用いることが好ましく、非イオン系界面活性剤を含む緩衝液を用いることがより好ましい。
【0066】
「緩衝液」
クロマトグラフィ工程において用いられる溶液としては、特に制限されないが、pH5.5〜8.5の緩衝液が好ましい。たとえば、上述した分離工程と同様の緩衝液を用いることができるが、トリス塩酸緩衝液、MOPS−NaOH緩衝液、グリシルグリシン−NaOH緩衝液が好ましく、トリス塩酸緩衝液がより好ましい。緩衝液の濃度としては、特に制限されず、クロマトグラフィ工程の前の分離工程にて用いた緩衝液の濃度に合わせて用いるのが好ましい。たとえば、緩衝液の濃度としては、0.1〜200mMであるのが好ましく、1〜100mMであるのがより好ましい。また、緩衝液のpHは、酵素の安定pHから極端に外れていなければよく、好ましくはpH4〜11、より好ましくはpH5〜10、さらに好ましくはpH7〜9の範囲である。
【0067】
また、緩衝液は、他の成分を含んでいてもよく、たとえば、クロマトグラフィ工程において、緩衝液が、塩化合物を含むことが好ましく、塩化合物としては、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウムを含むのがより好ましい。また、塩化合物の濃度としては、0.1〜50mMが好ましく、1〜20mMがより好ましい。
【0068】
「非イオン性界面活性剤」
クロマトグラフィ工程において用いられる非イオン性界面活性剤としては、ポリオール脱水素酵素の酵素活性が低下しないものであれば、特に制限されず、上述の分離工程と同様の非イオン性界面活性剤を用いることができる。それらのうち、クロマトグラフィ工程においては、ポリオキシエチレン系(たとえば、TritonX−100)、ショ糖脂肪酸エステル系、または後述の限外ろ過工程で用いるポリアルキレングリコール系が好ましく、回収率の観点からショ糖脂肪酸エステル系がより好ましく、ショ糖ラウリン酸エステルがさらに好ましい。たとえば、上述の分離工程でTritonX−100を用いて酵素を可溶化した場合、酵素溶液中、ポリオール脱水素酵素は、TritonX−100と会合体を形成していると考えられる。しかしながら、酵素溶液中には、当該会合体を形成していない余剰のTriton−Xも存在しうるが、これらの余剰の界面活性剤が存在することにより、ポリオール脱水素酵素はさらに安定化されていると推測される。そのため、酵素溶液中に、余剰の界面活性剤を存在させておくことが好ましい。本発明では、酵素溶液中の余剰の界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステルであることが好ましく、そのため、クロマトグラフィ工程において、溶離液としてショ糖脂肪酸エステルを含む溶液を用い、酵素溶液の媒質である、Triton−Xを含む溶液を、ショ糖脂肪酸エステルを含む溶液に置換するのが好ましい。この際、会合体を形成している界面活性剤(Triton−X)が、ショ糖脂肪酸エステルに置換されてもいいが、会合体を形成する界面活性剤は特に制限されず、余剰の界面活性剤が、ショ糖脂肪酸に置換されればよい。
【0069】
クロマトグラフィを行う際に用いる溶離液中の非イオン性界面活性剤の濃度としては、特に制限されず、溶液中の濃度が、たとえば、0.01〜10g/100mL程度になるように添加されるのが好ましく、より好ましくは0.02〜5g/100mLである。また、非イオン性界面活性剤は、単独で用いても、混合物の形態で用いてもよい。
【0070】
また、非イオン性界面活性剤に加えて、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、天然型界面活性剤などを適宜選択して使用することもできる。これらのうち、ポリオール脱水素酵素の酵素活性に影響を及ぼさないという観点から、両性界面活性剤が好ましい。
【0071】
(クロマトグラフィの操作方法)
酵素溶液(可溶化膜画分)をカラムにアプライする前に、カラムの平衡化を行っておくことが好ましい。カラムの平衡化を行うための溶液は、緩衝剤(たとえば、濃度1〜100mMのトリス塩酸緩衝液 pH7〜9程度)と、0.05〜10g/100mlのショ糖脂肪酸エステルと、を含む溶液であることが好ましい。かかる溶液には、濃度0.1〜50mMの2価の金属イオン(例えば、硫酸マグネシウム)をさらに添加してもよい。また、本工程で添加せずに、他の工程で必要に応じ添加してもよい。
【0072】
酵素溶液(可溶化膜画分)を上記カラムにアプライし、カラムの平衡化を行った溶液を、カラムの体積の、好ましくは2〜30倍、より好ましくは3〜20倍の量を送液することによって、少なくとも遊離している可溶化する際に用いた非イオン性界面活性剤(たとえば、Triton−X)を除去することができる。このように遊離している非イオン性界面活性剤が除去され、酵素溶液に、ショ糖脂肪酸エステルが存在することによって、安定性が向上した酵素組成物を提供することができることになる。
【0073】
なお、本工程において、酵素溶液(可溶化膜画分)を上記カラムにアプライし、カラムの平衡化を行った溶液を、カラムの体積の、好ましくは2〜30倍、より好ましくは3〜20倍の量を送液後のパス液の280nmにおける、可溶時に使用した非イオン性界面活性剤(たとえば、TritonX−100)の吸光度が0.01以下であることが好ましい。
【0074】
本発明において、好ましい実施形態としては、クロマトグラフィ工程は、酵素溶液をカラムにアプライした後、ショ糖脂肪酸エステルを含む溶離液を送液することによって、可溶化時に使用した遊離している非イオン性界面活性剤を除去する。しかしながら、上記のように抽出したPQQ依存性PDHに、ショ糖脂肪酸エステルを含有させて、後述する限外ろ過による濃縮工程を実施してもよいし、これらの精製する工程の途中で、ショ糖脂肪酸エステルを用いてPQQ依存性PDHを精製し、限外ろ過による濃縮する工程を実施してもよい。
【0075】
なお、分離工程において、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素を可溶化するための界面活性剤として本発明のショ糖脂肪酸エステルを用いた場合は、クロマトグラフィ工程の「ショ糖脂肪酸エステルを含む溶液でクロマトグラフィを送液することによって、遊離している界面活性剤を除去する」との工程は経ずに、ポリオール脱水素酵素組成物を含む溶液を溶出する透析工程に進んでもよい。クロマトグラフィ工程の主たる特徴は、「工業的に可溶化する」ためには好適であるが、「酵素組成物の安定性」ためには必ずしも好ましくないとされる、従来酵素の可溶化のために使用されていた界面活性剤(特に、TritonX−100)の過剰分(つまり、遊離している界面活性剤)を除去することであるが、そもそも、かかる界面活性剤を本工程で使用しない場合は、かような操作は不要である。
【0076】
次に、PQQ依存性PDHを含む酵素溶液をアプライしたカラムから、PQQ依存性PDHを含む酵素溶液を溶出することによって、ポリオール脱水素酵素画分を得る。このように酵素が溶出された溶出液も、臨界ミセル濃度以上の界面活性剤を含んでいる。溶出の方法にも特に制限されないが、グラジエント法、ステップワイズ法などが挙げられる。
【0077】
たとえば、カラムとして陰イオン交換体(ResourceQ)を用い、グラジエント法を採用する場合は、開始緩衝液として、0.01〜10g/100mL、より好ましくは0.02〜5g/100mLのショ糖脂肪酸エステルを含む0.1〜200mM緩衝液(pH4〜11)が使用できる。溶出緩衝液は、開始緩衝液にさらに、塩(NaCl、KCl、MgSO
4、CaCl
2等)を含む。塩の濃度は、用いる塩にもよるが、0.05〜2Mがよい。なお、開始もしくは溶出緩衝液には、必要に応じて0.01〜20mMの2価の金属イオン(MgSO
4、CaCl
2)や還元剤(2−メルカプトエタノールやジチオスレイトール)を加えてもよい。グラジエント溶出は、カラム体積の1〜50倍量で行うことが好ましい。
【0078】
〔透析工程〕
上記のように精製したポリオール脱水素酵素を含む溶液は、溶出の際に使用した塩を含んでいるため、脱塩処理を行ってもよい。脱塩処理の方法としては特に制限はないが、透析、限外ろ過、脱塩カラムを使用する方法などが挙げられる。典型的には、透析を行うことが好ましい。透析は、緩衝剤を含み、再生セルロース、セルロースエステル等の透析膜を用いて、0〜10℃で0.5時間〜3日間行うのが好ましい。たとえば、透析は、上記のように得られた精製したポリオール脱水素酵素を含む酵素溶液を、緩衝液で、一晩透析する。この際、緩衝液は、非イオン性界面活性剤を含むのが好ましい。すなわち、本発明の製造方法は、酵素溶液を、非イオン性界面活性剤の存在下、透析を行い、ポリオール脱水素酵素を含む酵素溶液を得る透析工程をさらに含むのが好ましい。その際、透析後に得られる酵素溶液は、非イオン性界面活性剤も含みうる。
【0079】
(溶液)
透析工程において用いられる溶液(溶媒)としては、特に制限されないが、酵素の安定性の観点から、緩衝液が好ましい。緩衝液としては、所望のpHを有するものであれば公知の緩衝液が適宜使用でき、上述した緩衝液が同様に用いられうる。透析工程においては、好ましくは、トリス塩酸緩衝液、グリシン−塩酸緩衝液、グリシン−NaOH緩衝液、グリシルグリシン−NaOH緩衝液、グリシルグリシン−KOH緩衝液、トリス−ホウ酸緩衝液、ホウ酸−NaOH緩衝液、ホウ酸緩衝液が好ましく、グリシルグリシン−NaOH緩衝液、グリシルグリシン−KOH緩衝液、トリス−ホウ酸緩衝液、ホウ酸−NaOH緩衝液、ホウ酸緩衝液がより好ましく、グリシルグリシン−NaOH緩衝液、トリス−ホウ酸緩衝液、ホウ酸−NaOH緩衝液、ホウ酸緩衝液がさらに好ましく、トリス−ホウ酸緩衝液、ホウ酸−NaOH緩衝液、ホウ酸緩衝液が特に好ましく、トリス−ホウ酸緩衝液がもっとも好ましい。ホウ酸系の緩衝液を用いることで、本発明の酵素組成物の安定性をさらに向上することができる。また、透析工程においてホウ酸系の緩衝液を用いることで、本発明により得られる酵素組成物をバイオセンサに用いた際に、バックグラウンドの上昇が抑制されうる。
【0080】
緩衝液の濃度としては、特に制限されず、0.1〜200mMであるのが好ましく、1〜100mMであるのがより好ましい。また、緩衝液のpHは、酵素の安定pHから極端に外れていなければよく、好ましくはpH4〜11、より好ましくはpH5〜10、さらに好ましくはpH7〜9の範囲である。
【0081】
また、緩衝液には、さらに、塩(NaCl、KCl、MgSO
4、CaCl
2等)を含む。塩の濃度は、用いる塩にもよるが、0.05〜50mMがよい。
【0082】
(非イオン性界面活性剤)
透析工程において用いられる非イオン性界面活性剤としては、PQQ依存性PDHを可溶化し、使用するポリオール脱水素酵素の酵素活性が低下しないものであれば、特に制限されない。非イオン性界面活性剤としては、たとえば、上述した分離工程と同様でよく、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系、アルキルグリコシド系、ショ糖脂肪酸エステル系、または後述の限外ろ過工程で用いるポリアルキレングリコール系等を用いることができる。これらのうち、ショ糖脂肪酸エステル系、ポリアルキレングリコール系が好ましく、ショ糖脂肪酸エステル系がより好ましい。これらの非イオン性界面活性剤は、単独で用いても、混合物の形態で用いてもよい。非イオン性界面活性剤の濃度としては、特に制限されず、溶液中の濃度が、たとえば、0.05〜10g/100mL程度になるように添加されるのが好ましく、より好ましくは0.1〜5g/100mLである。
【0083】
また、たとえば、これらの精製工程によって得られる、ポリオール脱水素酵素を含む酵素溶液中の蛋白濃度は、0.01〜30mg/mLとなっていることが好ましく、より好ましくは0.05〜25mg/mLであり、さらに好ましくは0.1〜20mg/mLである。また、ポリオール脱水素酵素を含む酵素溶液中の酵素の比活性は、0.1〜100U/mgとなっていることが好ましく、より好ましくは0.5〜75U/mgであり、さらに好ましくは1〜50U/mgである。
【0084】
〔限外ろ過工程〕
本発明の製造方法は、分離工程、必要により、精製工程を経て得られたポリオール脱水素酵素を含む酵素溶液を、ポリアルキレングリコールの存在下、限外ろ過して酵素濃縮液を得る限外ろ過工程を含む。
【0085】
限外ろ過工程において、ポリアルキレングリコールを含む緩衝液を用いるのが好ましいが、たとえば、分離工程、精製工程において、非イオン性界面活性剤としてポリアルキレングリコール以外の非イオン性界面活性剤を用いて酵素溶液を得た場合、限外ろ過工程の際に、ポリオール脱水素酵素および非イオン性界面活性剤を含む酵素溶液を希釈するのが好ましい。希釈をする目安としては、酵素溶液中に含まれる、臨界ミセル濃度以上の非イオン性界面活性剤を、当該界面活性剤の臨界ミセル濃度未満になるように希釈するのが好ましい。また、希釈する溶液としては、限外ろ過の際に用いるポリアルキレングリコールを含む緩衝液であるのがより好ましい。
【0086】
上記の分離工程、必要により、精製工程を経て得られたポリオール脱水素酵素を含む酵素溶液には、ポリオール脱水素酵素を溶解させておくために、臨界ミセル濃度以上の非イオン性界面活性剤を含んでいる。そこで、得られたポリオール脱水素酵素を含む酵素溶液を、当該界面活性剤の臨界ミセル濃度未満に希釈することにより、後述する限外ろ過によって、酵素を濃縮するとともに効果的に、分離工程の際、精製工程の際に用いた非イオン性界面活性剤濃度を低減できる。臨界ミセル濃度未満の非イオン性界面活性剤の濃度の下限値は、特に制限はない。なお、本発明においては、後述の限外ろ過工程を、ポリアルキレングリコールの存在下で行うことで、十分保存安定性の優れたポリオール脱水素酵素組成物を得ることができる。そのため、当該希釈する工程は必須ではないが、分離工程、精製工程において用いた非イオン性界面活性剤が、酵素溶液中で遊離して存在しているため、遊離した非イオン性界面活性剤をより効果的に低減するという意味では、酵素溶液を希釈することが好ましい。
【0087】
また、本発明では、分離工程、必要により、精製工程を経て得られた酵素溶液中の非イオン性界面活性剤が除去されても、限外ろ過をポリアルキレングリコールの存在下で行うため、酵素溶液中にポリアルキレングリコールが存在し、濃縮過程中および濃縮後の酵素溶液中の酵素を安定化しうる。
【0088】
臨界ミセル濃度は、本発明においては、界面活性剤のみの水溶液について得られる値を使用する。したがって、臨界ミセル濃度は、用いた界面活性剤の種類によって異なるが、通常、本発明の技術分野においては公知の値である。たとえば、ショ糖脂肪酸エステルを用いた場合、臨界ミセル濃度は、Agric. Biol. Chem., 47(2),319〜326, 1983に記載の方法で測定することができ、ショ糖ラウリン酸エステルは0.4mM(0.021%w/v)であることが知られている。ポリオール脱水素酵素を含む酵素溶液中の臨界ミセル濃度は、上記のように界面活性剤以外にも酵素や緩衝剤などの物質が含まれているため、厳密には界面活性剤のみの水溶液について得られる値とは異なると思われるが、本発明では、最終的に得られる酵素の保存安定性向上という本発明の効果を実現できるという点から、界面活性剤のみの水溶液について知られている臨界ミセル濃度を採用して何ら差し支えない。また、希釈によって臨界ミセル濃度未満となる界面活性剤の濃度の上限値は、特に制限はないが、0.001%w/v(0.001g/100mL)以上が好ましい。
【0089】
酵素溶液中の非イオン性界面活性剤を臨界ミセル濃度未満に希釈する方法は、特に制限はないが、緩衝液を添加し混合する方法が好ましい。この他、限外ろ過法、各種クロマトグラフィ法、界面活性剤を吸着する樹脂等を用いて希釈することもできる。
【0090】
特に、本発明の好ましい実施形態では、クロマトグラフィ工程または透析工程の際に、ショ糖脂肪酸エステルを含む溶液を用いる。その場合、得られる酵素溶液には、非イオン性界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステルが含まれることとなる。本発明の方法では、この非イオン性界面活性剤を限界ろ過によって効果的に取り除くことができるため、最終的に得られるポリオール脱水素酵素組成物の保存安定性が大きく向上する。たとえば、従来使用されていた非イオン性界面活性剤のTritonX−100の場合には、臨界ミセル濃度未満にした溶液から、限外ろ過のみによっては十分に当該界面活性剤を除くことができず、酵素とともに濃縮されて残存していた。また、PQQ依存性PDH組成物を、全血を試料とする測定試薬に用いた場合には、従来は残存する当該界面活性剤によって溶血が起きる場合があったが、本発明の方法によれば、限外ろ過によって、ショ糖脂肪酸エステルをできるだけ除くことにより、溶血を防止することもできる。
【0091】
本発明において、限外ろ過の際にショ糖脂肪酸エステルの濃度が低減される理由は、以下のように考えられる。通常、ポリオール脱水素酵素を含む溶液は、精製を経ることにより、非イオン性界面活性剤を含んだ比較的希薄な水溶液の形態で得られるため、濃縮工程が実施される。このような水溶液を濃縮する方法には数種あるが、本発明では限外ろ過法を実施する。通常は、このような水溶液中には、得られた酵素を可溶化し水溶液中で安定に存在させるため、臨界ミセル濃度以上の非イオン性界面活性剤が含まれている。限外ろ過によってポリオール脱水素酵素の水溶液を濃縮する場合には、ショ糖脂肪酸エステルは、たとえば、従来、非イオン性界面活性剤としてポリオール脱水素酵素の製造に使用されていたTritonX−100と比較すると、ミセルの大きさが小さく、限外ろ過膜をより容易に透過する。したがって本発明では、限外ろ過を繰り返すことで酵素が濃縮されるとともにショ糖脂肪酸エステルが除去され、得られた濃縮物中のショ糖脂肪酸エステルの量は非常に小さくなり得ると考えられる。一方、同様の条件で非イオン性界面活性剤としてTritonX−100を使用した場合には、ミセルが大きいために限外ろ過膜を通過しにくく、最終的な濃縮物中にも当該界面活性剤(TritonX−100)が残ってしまうと考えられる。しかしながら、このようなメカニズムは推測であり、本発明を限定するものではない。
【0092】
そして、本発明では、限外ろ過をポリアルキレングリコールの存在下で行うため、当該工程により得られるポリアルキレングリコールを含む酵素濃縮液は、酵素の凝集や析出を抑制し、その結果、酵素の保存安定性(酵素活性の経時安定性)を向上させうる。さらに、当該ポリアルキレングリコールを含む酵素濃縮液は、その後の乾燥工程を経て、ポリアルキレングリコールを含むポリオール脱水素酵素組成物が得られる。ポリアルキレングリコールは溶血性を示さず、そのため、当該ポリオール脱水素酵素組成物はポリアルキレングリコールを含んでいるが、全血を試料とする測定試薬に用いた場合においても、溶血を生じることがない。また、限外ろ過を複数回行う場合、限外ろ過の度に、酵素溶液にポリアルキレングリコールを含む溶液を添加することを行ってもよい。それにより、限外ろ過を複数回行った場合であっても、ポリアルキレングリコールが限界ろ過により除去され、酵素濃縮液中のポリアルキレングリコール含量が減少することがなく、所定の濃度のポリアルキレングリコールを含む酵素濃縮液が得られる。なお、本発明において、ポリアルキレングリコールは、限外ろ過の際の限外ろ過膜の通過性は特に制限されないが、ポリアルキレングリコールは、限外ろ過膜を一部透過するが、全量は透過しないものと推測される。
【0093】
その上、濃縮することにより、溶液中の酵素濃度が濃くなるため、酵素の失活が抑えられる場合がある。また、濃縮することにより、その後の工程において、液量が減少するため小スケールで処理することができる。また、限外ろ過は、酵素の失活が少なく、且つ簡便であるという利点がある。
【0094】
(緩衝液)
限外ろ過工程において用いられる緩衝液としては、所望のpHを有するものであれば公知の緩衝液が適宜使用でき、上述した緩衝液が同様に用いられうる。限外ろ過工程においては、好ましくは、トリス塩酸緩衝液、グリシン−塩酸緩衝液、グリシン−NaOH緩衝液、グリシルグリシン−NaOH緩衝液、グリシルグリシン−KOH緩衝液、トリス−ホウ酸緩衝液、ホウ酸−NaOH緩衝液、ホウ酸緩衝液が好ましく、グリシルグリシン−NaOH緩衝液、グリシルグリシン−KOH緩衝液、トリス−ホウ酸緩衝液、ホウ酸−NaOH緩衝液、ホウ酸緩衝液がより好ましく、グリシルグリシン−NaOH緩衝液、トリス−ホウ酸緩衝液、ホウ酸−NaOH緩衝液、ホウ酸緩衝液がさらに好ましく、トリス−ホウ酸緩衝液、ホウ酸−NaOH緩衝液、ホウ酸緩衝液が特に好ましく、トリス−ホウ酸緩衝液がもっとも好ましい。ホウ酸系の緩衝液を用いることで、本発明の酵素組成物の安定性をさらに向上することができる。また、限外ろ過工程においてホウ酸系の緩衝液を用いることで、本発明により得られる酵素組成物をバイオセンサに用いた際に、バックグラウンドの上昇が抑制されうる。
【0095】
緩衝液の濃度としては、特に制限されず、0.1〜200mMであるのが好ましく、1〜100mMであるのがより好ましく、2〜50mMであるのがさらに好ましい。また、緩衝液のpHは、酵素の安定pHから極端に外れていなければよく、好ましくはpH4〜11、より好ましくはpH5〜10、さらに好ましくはpH7〜9の範囲である。
【0096】
(ポリアルキレングリコール)
限外ろ過工程において用いられるポリアルキレングリコールとしては、上述の分離工程で使用しうるポリアルキレングリコールが同様に用いられうる。これらのポリアルキレングリコールは、単独で用いても、混合物の形態で用いてもよい。
【0097】
限外ろ過工程で用いられるポリアルキレングリコールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが好ましく、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー)が好ましい。また、その際、アルキレンオキサイドの付加モル数nは、2〜300の整数であり、好ましくは3〜250の整数、より好ましくは5〜200の整数である。
【0098】
市販品のポリアルキレングリコールを用いる場合、上述の分離工程で使用しうるポリアルキレングリコールが同様に用いることができ、たとえば、エマルゲンPP−290、ニューポールPE−68、PE−78、プルロニックF−68を好ましく用いることができる。
【0099】
ポリアルキレングリコールの濃度としては、特に制限されず、溶液中の濃度が、たとえば、0.0001〜1g/100mL程度になるように、酵素溶液または酵素濃縮液に添加されるのが好ましく、より好ましくは0.00025〜0.5g/100mL、さらに好ましくは0.0005〜0.1g/100mL、特に好ましくは0.00075〜0.05g/100mL、もっとも好ましくは0.001〜0.025g/100mLである。
【0100】
(限外ろ過の方法)
本発明の製造方法においては、ポリオール脱水素酵素を含む酵素溶液(好ましくは、上記の希釈した酵素溶液)を、限外ろ過することによって、酵素濃縮液を得る限外ろ過工程を実施する。本実施形態において、限外ろ過は、酵素溶液に、ポリアルキレングリコールを添加し、ポリアルキレングリコールを含む酵素溶液を用いて、限外ろ過を行う。この際、ポリアルキレングリコールは、上記のように希釈する場合は、希釈する際の希釈溶液に混合して、酵素溶液に添加してもよいし、希釈された溶液に、別途、添加してもよい。
【0101】
限外ろ過の方法には特に制限はないが、脱塩したポリオール脱水素酵素溶液をそのまま、あるいは、緩衝剤(たとえば、トリス−ホウ酸緩衝溶液pH7〜9.5程度)を加えた後、従来公知の方法によって行って、濃縮液を得る。限外ろ過の回数にも特に制限はないが、好ましくは1〜15回、より好ましくは2〜10回、さらに好ましくは2〜6回である。なお、かかる工程を経ることによって、本発明のポリオール脱水素酵素組成物のPQQ依存性PDHの総質量を100質量%として(対蛋白量あたり)、ショ糖脂肪酸エステルが、10質量%以下となることが好ましい。10質量%以下であることによって、得られるPQQ依存性PDH組成物の保存安定性を確実に向上することができる。また、ショ糖脂肪酸エステルを含有しない方がよいため、下限は特に制限はされない。また、かかる工程を経ることによって、本発明のポリオール脱水素酵素組成物のPQQ依存性PDHの総質量を100質量%として(対蛋白量あたり)、ポリアルキレングリコールが、0.0001〜50質量%となることが好ましく、より好ましくは0.005〜40質量%、さらに好ましくは0.001〜30質量%である。当該範囲とすることによって、PQQ依存性PDHを保護しつつ、酵素の保存安定性を向上することができる。上記のようにして、本発明の方法によりポリオール脱水素酵素を含む酵素濃縮液が得られる。
【0102】
限外ろ過膜の分画分子量は、酵素のロスがなく、ショ糖脂肪酸エステルが効率よく減量でき、かつポリアルキレングリコールを酵素濃縮液に残存させるとの観点から、好ましくは10,000〜60,000であり、より好ましくは20,000〜55,000であり、さらに好ましくは25,000〜50,000である。10,000未満では濃縮速度が遅すぎる場合があり、60,000より大きいと、PQQ依存性PDHが限外ろ過膜を通過してしまい、酵素の回収率が低下する場合があるためである。
【0103】
また、限外ろ過に用いる膜の材質としては、酵素のロスがなく、かつポリアルキレングリコールを酵素濃縮液に残存させるとの観点から、ポリサルホン、芳香族ポリアミド等が好ましい。
【0104】
また、得られたポリオール脱水素酵素を含む酵素濃縮液には、緩衝剤をさらに添加してもよい。緩衝剤を添加することにより、pHを酵素に好適な範囲に調節することができ、酵素の保存安定性をより向上させることができる。緩衝剤としては、上記した緩衝剤と同様のものが使用できる。上記した中でも、低濃度でPQQ依存性PDHの保存安定性を向上できる点で、グリシルグリシン−NaOH、トリス−ホウ酸が好ましい。グリシルグリシンはアミノ酸系緩衝剤の一種であるが、グリシンなどの他のアミノ酸系緩衝剤やMOPSなどの他のよく知られている緩衝剤を含む酵素組成物に比べて、酵素の残存活性を向上させることができる。トリス−ホウ酸は、酵素組成物をバイオセンサに用いた際に、バッククラウンドの上昇を抑制するため、測定の誤差が減少するため好ましい。
【0105】
添加する緩衝剤の量は、PQQ依存性PDHの保存安定性をより向上できる量であれば特に限定されないが、組成物中のPQQ依存性PDHの総質量を100質量%として、好ましくは2〜250質量%、より好ましくは3〜200質量%である。さらに好ましくは5〜150質量%である。上記の範囲であれば、保存安定性をより向上できる。
【0106】
緩衝剤を添加する方法は特に制限されず、緩衝剤をそのまま添加してもよいが、緩衝剤を予め水に溶解させた緩衝液の形態で添加することが好ましい。緩衝液としても、上記と同様のものが使用できる。なお、添加された緩衝液は後述する乾燥の処理により緩衝液中の水分が除去され、かような場合には緩衝剤として組成物中に存在する。
【0107】
また、得られたポリオール脱水素酵素を含む酵素濃縮液には、酸またはアルカリなどのpH調整剤を含むことができる。これにより、酵素濃縮液のpHを所望の範囲に調整することができる。酵素濃縮液のpHは、酵素の安定pHから極端に外れていなければよく、好ましくは6〜11、より好ましくは6.5〜10.5、もっとも好ましくは7〜10である。かようなpH調整剤としては、塩酸等の酸や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリが挙げられる。pH調整剤の含有量は特に制限されず、所望のpHが実現される量を用いればよい。
【0108】
また、酵素濃縮液は、本発明の目的を損なわない範囲内で、ジチオスレイトール、2−メルカプトエタノール等の還元剤などの付加成分を所望に応じて含有することができる。
【0109】
また、たとえば上記の限外ろ過によって最終的に得られる、ポリオール脱水素酵素を含む酵素濃縮液の蛋白濃度は、0.01〜30mg/mLとなっていることが好ましく、より好ましくは0.05〜25mg/mLであり、さらに好ましくは0.1〜20mg/mLである。また、ポリオール脱水素酵素を含む酵素濃縮液中の酵素の比活性は、0.1〜100U/mgとなっていることが好ましく、より好ましくは0.5〜75U/mgであり、さらに好ましくは1〜50U/mgである。
【0110】
〔乾燥工程〕
上記のように、限外ろ過により濃縮する工程後に得られた液体形態のポリオール脱水素酵素を含む酵素濃縮液を、次いで乾燥し、固形または粉末状のポリオール脱水素酵素組成物が得られる。なお、乾燥することにより得られるポリオール脱水素酵素組成物の形態は特に制限されず、たとえば粉末状、顆粒状、錠剤状などの固体形態であり得る。中でも、本発明の効果が顕著に発揮されることから、粉末の形態であることが好ましい。
【0111】
乾燥方法としては、特に制限されず、減圧または真空乾燥、凍結乾燥、スプレードライ等が挙げられる。これらのうち、凍結乾燥が好ましい。 凍結乾燥を行う際は、非還元糖、BSA(牛血清アルブミン)、卵白アルブミン、セリシンなどのタンパク質を安定化剤として含むのが好ましい。これらの非還元糖やタンパク質は、PQQ依存性PDHの保存安定性(特に、凍結乾燥時の保存安定性)を向上させ、また、ポリオール脱水素酵素組成物の保存安定性を向上しうる。
【0112】
非還元糖とは、本明細書中、遊離性のアルデヒド基やケトン基をもたないために還元性を有しない糖類を意味する。このような還元糖としては、上記したような性質を有するものであればよく、例えば、還元基同士の結合したトレハロース型小糖類、糖類の還元基および非糖類が結合した配糖体、糖類に水素添加して還元した糖アルコールなどがある。より具体的には、スクロース、トレハロース、ラフィノース等のトレハロース型小糖類;アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体等の配糖体;およびアラビトール、キシリトール、ソルビトール等の糖アルコールなどが挙げられる。中でも、トレハロース、ラフィノース、スクロースが好ましく、特にトレハロースおよびラフィノースが好ましい。また、これらのうち、PQQ依存性PDHの基質となる糖アルコールは、好ましくない場合がある。
【0113】
これらの非還元糖およびタンパク質は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0114】
本発明のポリオール脱水素酵素濃縮液に添加される非還元糖およびタンパク質の量は、PQQ依存性PDHの保存安定性を向上できる量であれば特に制限されないが、本発明の酵素組成物中のPQQ依存性PDHの総質量を100質量%として、好ましくは1〜200質量%、より好ましくは5〜100質量%である。1質量%以上であれば、安定化剤としての効果を十分に発揮でき、一方、200質量%以下であれば、添加に見合う安定化剤としての効果の向上が認められる。
【0115】
凍結乾燥の方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。典型的には、−10〜−100℃で濃縮物を凍結し、凍結物を6.12hPa以下の真空状態にし、水分を昇華させる。この工程により、ポリオール脱水素酵素を含む粉末が得られる。当該工程より得られる乾燥されたポリオール脱水素酵素組成物は、乾燥時のPQQ依存性PDHの失活が抑制されるとともに、乾燥後のPQQ依存性PDHの保存安定性が有意に向上する。
【0116】
したがって、本発明の他の一態様では、ポリオール脱水素酵素組成物が提供される。 また、本発明の方法により得られるPQQ依存性PDHは、化学修飾しなくても、保存安定性が有意に向上した酵素となる。そのため、上記の方法で得られる酵素を特に化学修飾せず使用できる。もちろん化学修飾された形態のPQQ依存性PDHとして使用してもよく、その場合には、上記の方法で得られるPQQ依存性PDHを、たとえば、特許文献1に記載されるような方法などを用いて適宜化学修飾すればよい。
【0117】
<ポリオール脱水素酵素組成物を使用した測定試薬およびポリオールの定量方法>
上記のようにして得られた本発明のポリオール脱水素酵素組成物を使用して、ポリオール測定試薬を提供することもできる。また、本発明のポリオール脱水素酵素組成物をポリオールと反応させることを特徴とする、ポリオールの定量方法を提供することもできる。本発明のポリオール脱水素酵素組成物に含まれるPQQ依存性PDHは、ポリオールの定量に優れるため、ポリオール測定試薬として好適に使用することができる。また、PQQ依存性PDHは補欠分子族としてPQQを有するため、あえてPQQを反応系に添加することなく、ポリオールを定量することができる。また、本発明のポリオール脱水素酵素組成物は、溶血性を示さず、たとえば、全血を試料とする場合であっても、正確にポリオール含量を測定することができる。
【0118】
本発明において「ポリオール」とは、2つ以上の水酸基を有するアルコール(糖アルコールを含む)を意味する。本発明の製造方法を適用し得るPQQ依存性PDHは、いずれのポリオールを基質としてもよく、2つ以上の水酸基を有するアルコール(糖アルコールを含む)であれば、特に制限されない。たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ラクチトールなどの二糖由来アルコール、グリセロールなどのトリオール、エリスリトールなどのテトリトール、アラビトール、キシリトール、リビトールなどのペンチトール、マンニトール、ソルビトールなどのヘキシトール、イノシトールなどのシクリトールなどが挙げられる。中でも好ましくは、グリセロール(ピロロキノリンキノン依存性グリセロール脱水素酵素)、アラビトール(ピロロキノリンキノン依存性アラビトール脱水素酵素)、およびマンニトール(ピロロキノリンキノン依存性マンニトール脱水素酵素)を基質とする。
【0119】
ポリオール測定試薬は、ポリオールを定量するための試薬であり、本発明によって得られたポリオール脱水素酵素組成物を使用する。PQQ依存性PDHは、ポリオールと電子受容体とを、対応する脱水素物と還元型電子受容体とに変換することができる。したがって、還元型電子受容体による電流を測定することにより、ポリオールを定量できる。本発明により得られるポリオール脱水素酵素組成物中のPQQ依存性PDHが好適に使用できる電子受容体としては、フェリシアン化カリウム、フェナジニウムメチルサルフェートおよびその誘導体、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCIP)、Wurster’s blue、ニトロテトラゾリウムブルー等が挙げられる。たとえば、特許公報第3041840号、特許公報第3450911号、特許公報第3494398号などに記載されるポリオール測定で使用するポリオール脱水素酵素として、本発明のポリオール脱水素酵素組成物に含まれるPQQ依存性PDHを使用することができる。
【0120】
本発明の定量方法に用いられるポリオールを含む試料としては、食品、血清、血漿または全血などが挙げられる。また、本発明のポリオール脱水素酵素組成物に含まれるPQQ依存性PDHは血清、血漿、または全血などの中性脂肪測定にも使用することができる。すなわち、これらの試料に含まれる中性脂肪は、たとえば、リポプロテインリパーゼにより遊離脂肪酸とグリセロールとに分解されるが、ここで生じたグリセロールを上記のPQQ依存性PDHを用いて定量することができる。精神病治療患者および透析患者においては、中性脂肪測定時に遊離グリセロールが問題になるが、本発明に用いられるPQQ依存性PDHを使用して、グリセロールを予め消去するか、またはその量を測定しておくことにより、真の中性脂肪値を求めることが可能となる。なお、本発明に用いられるPQQ依存性PDHは溶液中に界面活性剤を含んでいてもポリオールを正確に定量することができる。
【実施例】
【0121】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。なお、本発明において、PQQ依存性PDHの酵素活性は、下記方法により測定した。
【0122】
(酵素活性)
50μM DCIP(2,6−ジクロロフェノールインドフェノール)、0.2mM PMS(5−メチルフェナジニウムメチルサルフェート)、および450mMグリセロールを含んだ0.1%Triton(登録商標)X−100を含む10mMリン酸緩衝液(pH 7.0)中に、酵素溶液を加えた。この溶液中の酵素と基質の反応をDCIPの600nmの吸光度変化によって追跡し、その吸光度の減少速度を酵素の反応速度とした。ここで、1分間に1μmolのDCIPが還元される酵素活性を1単位(U)とした。なお、DCIPのpH7.0におけるモル吸光係数は16.3mM
−1とした。
【0123】
[調製例1:ポリオール脱水素酵素を含む可溶化膜画分の調製例]
ソルビトール1.5g/100mL、グルコン酸ナトリウム0.5g/100mL、酵母エキス0.3g/100mL、肉エキス0.3g/100mL、コーンスティープリカー0.3g/100mL、ポリペプトン1g/100mL、尿素0.1g/100mL、KH
2PO
4 0.1g/100mL、MgSO
4・7H
2O 0.02g/100mL、およびCaCl
2・2H
2O 0.1g/100mLからなり、塩酸でpHを5.5に調整した培地100mLを調製し、500mL容の坂口フラスコ3本に、それぞれ、該培地80mLを移し、121℃、20分間オートクレーブ処理した。
【0124】
上記培地に、それぞれ、種菌として、グルコノバクター・タイランディカス(Gluconobacter thailandicus)NBRC 3291を一白金耳植菌し、30℃で24時間、140min
−1で振とう培養し、これを種培養液とした。
【0125】
次に、上記と同じ組成で調製した培地5Lを8L容ジャーファーメンターに移し、121℃で50分間オートクレーブを行い、放冷後、上記で得られた種培養液240mLを移した。これを、400rpm、通気量5L/min、30℃の条件で26時間培養した。
【0126】
所定時間培養した後、この培養液を遠心分離(8,000×g、10分、4℃)して集菌し、10mMのトリス−塩酸緩衝液(pH8)で懸濁後、フレンチプレスにより菌体を破砕した。破砕液を遠心分離(4,000×g、10分、4℃)し、得られた上清を超遠心分離(40,000rpm、90分、4℃)して、膜画分を沈殿物として得た。
【0127】
この膜画分を10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で懸濁し、当該溶液に、Triton(登録商標)X−100の終濃度が0.5g/100mLとなるようにTritonX−100を加え、4℃で2時間撹拌した。超遠心分離(40,000rpm、90分、4℃)し、上清を0.1g/100mL Triton(登録商標)X−100を含む10mM MOPS−NaOH緩衝液(pH7.5)で一晩透析(透析膜の材質 再生セルロース:製品名UC30−32−100、三光純薬社製)し、これを可溶化膜画分とした。
【0128】
[実施例1および2 ポリオール脱水素酵素組成物の調製例]
上記調製例1で得られた可溶化膜画分を、FPLC(Fast Protein Liquid Chromatography;GEヘルスケア製)にて精製した。カラムはResourceQ 6mL(GEヘルスケア製)を使用した。カラムの平衡化は、10mM トリス−HCl pH8 +0.05%ショ糖ラウリン酸エステル(サーフホープJ−1216 三菱化学フーズ(株式会社)) +5mM MgSO
4で行った。ここで、ショ糖ラウリン酸エステルの濃度0.05%は、0.05g/100mLを意味する。
【0129】
可溶化膜画分をアプライ後、非吸着画分(つまり、蛋白と結合していない遊離している可溶化に用いた界面活性剤および非吸着の蛋白)を、カラムの平衡化に用いた溶液にてカラム体積の10倍量で洗浄した。溶出緩衝液(溶離液)には、10mM トリス−HCl pH8+0.05%ショ糖ラウリン酸エステル(サーフホープJ−1216 三菱化学フーズ(株式会社))+5mM MgSO
4+0.4M NaClを用い、カラム体積の10倍量でグラジエント溶出を行った。ポリオール脱水素酵素活性画分は、0.2M NaCl前後で溶出した。可溶化膜画分からの回収率は、85%であった。
【0130】
得られたポリオール脱水素酵素活性画分を10mM トリス−ホウ酸緩衝液(pH7.5)+0.05% ショ糖ラウリン酸エステル(サーフホープJ−1216)+5mM MgSO
4で一晩透析(透析膜の材質 再生セルロース:製品名UC30−32−100、三光純薬社製)することにより、蛋白濃度2mg/mL、比活性30U/mg蛋白の酵素標品を得た。これはPQQ依存性PDH溶液と称する。
【0131】
得られたPQQ依存性PDH溶液(蛋白濃度2mg/mL、比活性30U/mg蛋白)20mLに、0.005% エマルゲン PP−290を含む5mM トリス−ホウ酸緩衝液(pH7.5)を200mL加えた後(当該操作により、ショ糖ラウリン酸エステルが、臨界ミセル濃度未満の0.0045%に希釈される)、限外ろ過(分画分子量:50,000、限外ろ過膜の材質 ポリサルホン:製品名 ウルトラフィルター Q0500、東洋濾紙社製)し、蛋白濃度が5mg/mL以上となるように濃縮した。濃縮後、さらに、200mLの0.005% エマルゲン PP−290を含む5mM トリス−ホウ酸緩衝液(pH7.5)を加え、濃縮するという作業を、下記表に記載の回数繰り返した。最後の回の濃縮においては、濃縮後、ローリー法により蛋白濃度を測定した。測定後、0.005% エマルゲン PP−290を含む5mM トリス−ホウ酸緩衝液(pH7.5)を加えることにより、PQQ依存性PDH溶液中の蛋白濃度を5mg/mL(比活性28U/mg蛋白)に調整した。調整後、−80℃にて凍結させた。凍結後、凍結乾燥を行い、粉末状の酵素組成物を得た。酵素組成物重量あたりの酵素活性は、15U/mg・粉末であった。
【0132】
上記のようにして得られた粉末状の酵素組成物を、37℃で2週間、インキュベートした後の酵素活性を測定した。凍結乾燥直後の酵素組成物の酵素活性を測定し、その凍結乾燥直後の酵素組成物の酵素活性を100%とした場合の、37℃で4週間インキュベートした後の残存活性(単位:%)を算出した。結果を表1に示す。
【0133】
[実施例3および4 ポリオール脱水素酵素組成物の調製例]
上記調製例1と同様にして可溶化膜画分を得た。得られた可溶化膜画分を、FPLC(Fast Protein Liquid Chromatography;GEヘルスケア製)にて精製した。カラムはResourceQ 6mL(GEヘルスケア製)を使用した。カラムの平衡化は、10mM トリス−HCl pH8 +0.05%ショ糖ラウリン酸エステル(サーフホープJ−1216 三菱化学フーズ(株式会社)) +5mM MgSO
4で行った。ここで、ショ糖ラウリン酸エステルの濃度0.05%は、0.05g/100mLを意味する。
【0134】
可溶化膜画分をアプライ後、非吸着画分(つまり、蛋白と結合していない遊離している可溶化に用いた界面活性剤および非吸着の蛋白)を、カラムの平衡化に用いた溶液にてカラム体積の10倍量で洗浄した。溶出緩衝液(溶離液)には、10mM トリス−HCl pH8+0.05%ショ糖ラウリン酸エステル(サーフホープJ−1216 三菱化学フーズ(株式会社))+5mM MgSO
4+0.4M NaClを用い、カラム体積の10倍量でグラジエント溶出を行った。ポリオール脱水素酵素活性画分は、0.2M NaCl前後で溶出した。可溶化膜画分からの回収率は、85%であった。
【0135】
得られたポリオール脱水素酵素活性画分を10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH7.5)+0.05% ショ糖ラウリン酸エステル(サーフホープJ−1216)+5mM MgSO
4で一晩透析(透析膜の材質 再生セルロース:製品名UC30−32−100、三光純薬社製)することにより、蛋白濃度2mg/mL、比活性30U/mg蛋白の酵素標品を得た。これはPQQ依存性PDH溶液と称する。
【0136】
得られたPQQ依存性PDH溶液(蛋白濃度2mg/mL、比活性30U/mg蛋白)20mLに、0.005% エマルゲン PP−290を含む5mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH7.5)を200mL加えた後(当該操作により、ショ糖ラウリン酸エステルが、臨界ミセル濃度未満の0.0045%に希釈される)、限外ろ過(分画分子量:50,000、限外ろ過膜の材質 ポリサルホン:製品名 ウルトラフィルターQ0500、東洋濾紙社製)し、蛋白濃度が5mg/mL以上となるように濃縮した。濃縮後、さらに、200mLの0.005% エマルゲン PP−290を含む5mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH7.5)を加え、濃縮するという作業を、下記表に記載の回数繰り返した。最後の回の濃縮においては、濃縮後、ローリー法により蛋白濃度を測定した。測定後、0.005% エマルゲン PP−290を含む5mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH7.5)を加えることにより、PQQ依存性PDH溶液中の蛋白濃度を5mg/mL(比活性28U/mg蛋白)に調整した。調整後、−80℃にて凍結させた。凍結後、凍結乾燥を行い、粉末状の酵素組成物を得た。酵素組成物重量あたりの酵素活性は、15U/mg・粉末であった。
【0137】
上記のようにして得られた粉末状の酵素組成物を、37℃で2週間、インキュベートした後の酵素活性を測定した。凍結乾燥直後の酵素組成物の酵素活性を測定し、その凍結乾燥直後の酵素組成物の酵素活性を100%とした場合の、37℃で4週間インキュベートした後の残存活性(単位:%)を算出した。結果を表1に示す。
【0138】
(比較例1および2 ポリオール脱水素酵素組成物の調製例)
上記調製例1と同様にして可溶化膜画分を得た。得られた可溶化膜画分を、FPLC(Fast Protein Liquid Chromatography;GEヘルスケア製)にて精製した。カラムはResourceQ 6mL(GEヘルスケア製)を使用した。カラムの平衡化は、10mM トリス−HCl pH8 +0.05%ショ糖ラウリン酸エステル(サーフホープJ−1216 三菱化学フーズ(株式会社)) +5mM MgSO
4で行った。ここで、ショ糖ラウリン酸エステルの濃度0.05%は、0.05g/100mLを意味する。
【0139】
可溶化膜画分をアプライ後、非吸着画分(つまり、蛋白と結合していない遊離している可溶化に用いた界面活性剤および非吸着の蛋白)を、カラムの平衡化に用いた溶液にてカラム体積の10倍量で洗浄した。溶出緩衝液(溶離液)には、10mM トリス−HCl pH8+0.05%ショ糖ラウリン酸エステル(サーフホープJ−1216 三菱化学フーズ(株式会社))+5mM MgSO
4+0.4M NaClを用い、カラム体積の10倍量でグラジエント溶出を行った。ポリオール脱水素酵素活性画分は、0.2M NaCl前後で溶出した。可溶化膜画分からの回収率は、85%であった。
【0140】
得られたポリオール脱水素酵素活性画分を10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH7.5)およびpH8+0.05%ショ糖ラウリン酸エステル(サーフホープJ−1216 三菱化学フーズ(株式会社)で一晩透析することにより、蛋白濃度2mg/mL、比活性30U/mg蛋白の酵素標品を得た。これをPQQ依存性PDH溶液と称する。
【0141】
得られたPQQ依存性PDH溶液(蛋白濃度2mg/mL、比活性30U/mg蛋白)について、このPQQ依存性PDH溶液20mLに10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH7.5)200mLを加え、ショ糖ラウリン酸エステルの臨界ミセル濃度未満となる0.0045%に希釈後、限外ろ過(分画分子量:50,000、限外ろ過膜の材質 ポリサルホン:製品名 ウルトラフィルター Q0500、東洋濾紙社製)し、蛋白濃度が5mg/mL以上となるように濃縮した。濃縮後、さらに、200mLの10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH7.5)を加え、濃縮するという作業を、下記表に記載の回数繰り返した。最後の回の濃縮においては、濃縮後、ローリー法(BIO RAD社製、DC protein assay)により蛋白濃度を測定した。測定後、10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH7.5)を加えることにより、PQQ依存性PDH溶液中の蛋白濃度を5mg/mL(比活性25U/mg蛋白)に調整した。調整後、−80℃にて凍結させた。凍結後、凍結乾燥を行い、粉末状の酵素組成物を得た。酵素組成物重量あたりの酵素活性は、10U/mg・粉末であった。
【0142】
上記のようにして得られた粉末状の酵素組成物を、37℃で2週間、インキュベートした後の酵素活性を測定した。凍結乾燥直後の酵素組成物の酵素活性を測定し、その凍結乾燥直後の酵素組成物の酵素活性を100%とした場合の、37℃で4週間インキュベートした後の残存活性(単位:%)を算出した。結果を表1に示す。
【0143】
【表1】
【0144】
表1より、ポリアルキレングリコールの存在下で限外ろ過を行うことで、得られるポリオール脱水素酵素組成物の残存活性、すなわち保存安定性が優れていることが分かる。