(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸状弾性体の軸線方向の中央に荷重負荷部を備えるとともに両側に支持部を備え、前記荷重負荷部と各々の前記支持部との間に剪断歪みを生じさせる起歪部を備え、各々の前記起歪部に軸直角方向の凹部を対向して凹設することにより、対向する前記凹部の底面の間で且つ前記軸状弾性体の軸線に沿った中心部に薄肉部を構成し、前記凹部の底面の中央に歪みゲージを取り付け、各々の前記歪みゲージがホイートストンブリッジ回路を構成するように接続されたロードセルであって、
前記軸状弾性体は、前記薄肉部が起立した姿勢となるように配置されて、中央の前記荷重負荷部に上方から荷重が負荷され、両側の前記支持部が下方から支持されるときに、両側の前記支持部の間に生じる湾曲部分の両端の下端位置が、前記起歪部の下端位置よりも上方の位置となるようにするために、両側の前記支持部の間に、平面視において軸直角方向に貫通し、かつ各々の前記起歪部に設けられた前記凹部及び前記荷重負荷部の下方を通過して軸線方向に延びるスリットが設けられており、
さらに、前記軸状弾性体は、前記荷重負荷部が断面円形の貫通穴を有する軸受け部の前記貫通穴に挿入されて支持され、かつ、前記スリットを挟んで前記凹部と反対側になる前記スリットより下方の領域の全ての部分がその下方から切削加工されることによって板状部に成形され、この板状部が前記荷重負荷部を支持する前記軸受け部と接触しないよう構成された、ロードセル。
軸状弾性体の軸線方向の中央に支持部を備えるとともに両側に荷重負荷部を備え、前記支持部と各々の前記荷重負荷部との間に剪断歪みを生じさせる起歪部を備え、各々の前記起歪部に軸直角方向の凹部を対向して凹設することにより、対向する前記凹部の底面の間で且つ前記軸状弾性体の軸線に沿った中心部に薄肉部を構成し、前記凹部の底面の中央に歪みゲージを取り付け、各々の前記歪みゲージがホイートストンブリッジ回路を構成するように接続されたロードセルであって、
前記軸状弾性体は、前記薄肉部が起立した姿勢となるように配置されて、両側の前記荷重負荷部に上方から荷重が負荷され、中央の前記支持部が下方から支持されるときに、両側の前記荷重負荷部の間に生じる湾曲部分の両端の上端位置が、前記起歪部の上端位置よりも下方の位置となるようにするために、両側の前記荷重負荷部の間に、平面視において軸直角方向に貫通し、かつ各々の前記起歪部に設けられた前記凹部及び前記支持部の上方を通過して軸線方向に延びるスリットが設けられており、
さらに、前記軸状弾性体は、前記支持部が断面円形の貫通穴を有する軸受け部の前記貫通穴に挿入されて支持され、かつ、前記スリットを挟んで前記凹部と反対側になる前記スリットより上方の領域の全ての部分がその上方から切削加工されることによって板状部に成形され、この板状部が前記支持部を支持する前記軸受け部と接触しないよう構成された、ロードセル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のロードセルは、第1、第2の力印加部1a、1b、1cの各々が軸受け部11,12(
図1参照)に支持されるようにして取り付けられる。例えば、外力が作用する方向を矢印41〜43で示すように、中央の第1の力印加部(荷重負荷部)1aに上方から荷重が負荷され、両側の第2の力印加部(支持部)1b、1cが支持されるように取り付けられた場合、軸状弾性体40の上部には、矢印44,45で示すように圧縮方向の応力が生じ、軸状弾性体40の下部には、矢印46,47で示すように引張り方向の応力が生じる。これにより、軸状弾性体40が湾曲して、例えば両側の第2の力印加部1b、1cの各々の下部を支持する支点の位置が変動し、測定精度に悪影響を与える(測定誤差が生じる)という問題がある。ここで、軸状弾性体40が湾曲するときには、その下端部が例えば二点鎖線L3で示されるように湾曲する。
【0006】
また、従来、上記の軸状弾性体40の湾曲による両側の第2の力印加部1b、1cの支点の位置の変動を少なくするため、第1、第2の力印加部1a、1b、1cの幅を短くしたり、軸受け部11、12と点接触となるように第1、第2の力印加部1a、1b、1cが樽型に成形されることもあった。
【0007】
このような場合にしても、軸状弾性体40が湾曲するときには、その下端部が二点鎖線L3で示すように湾曲し、その湾曲部分の下端の両端の位置P7、P8が第2の力印加部1b、1cの各々の下部を支持する支点位置P1、P2と非常に近いことに変わりはない。そのため、軸状弾性体40の湾曲の影響を受けて両側の第2の力印加部1b、1cの支点の位置が変動しやすく、測定精度の向上をあまり図れていない。
【0008】
また、外力が作用する方向を破線矢印51〜53で示すように、例えば、両側の第2の力印加部1b、1cを荷重が負荷される荷重負荷部とし、中央の第1の力印加部1aを支持部とするようにロードセルが取り付けられた場合も同様の問題がある。
【0009】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、荷重負荷による軸状弾性体の湾曲が両側の支持部あるいは両側の荷重負荷部に与える影響を軽減し、測定精度の向上を図ることができるピン型のロードセルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のある形態(aspect)に係るロードセルは、軸状弾性体の軸線方向の中央に荷重負荷部を備えるとともに両側に支持部を備え、前記荷重負荷部と各々の前記支持部との間に剪断歪みを生じさせる起歪部を備え、各々の前記起歪部に軸直角方向の凹部を対向して凹設することにより、対向する前記凹部の底面の間で且つ前記軸状弾性体の軸線に沿った中心部に薄肉部を構成し、前記凹部の底面の中央に歪みゲージを取り付け、各々の前記歪みゲージがホイートストンブリッジ回路を構成するように接続されたロードセルであって、前記軸状弾性体は、前記薄肉部が起立した姿勢となるように配置されて、中央の前記荷重負荷部に上方から荷重が負荷され、両側の前記支持部が下方から支持されるときに、両側の前記支持部の間に生じる湾曲部分の両端の下端位置が、前記起歪部の下端位置よりも上方の位置となるように構成されている。
【0011】
この構成によれば、軸状弾性体の中央の荷重負荷部に上方から荷重が負荷され、両側の支持部が下方から支持されると、中央の荷重負荷部が下方に沈むように軸状弾性体が湾曲しようとするが、軸状弾性体は両側の支持部の間に生じる湾曲部分の両端の下端位置が、起歪部の下端位置よりも上方の位置となるように構成されているので、軸状弾性体の湾曲が両側の支持部に与える影響を軽減し、両側の支持部の各々の下部を支持する支点の位置の変動を抑え、測定精度の向上を図ることができる。
【0012】
また、前記軸状弾性体を、前記薄肉部が起立した姿勢となるように配置されて、前記荷重負荷部に上方から荷重が負荷されたときに、両側の前記支持部の間に生じる湾曲部分の両端の下端位置が、前記起歪部の下端位置よりも上方の位置となるようにするために、前記軸状弾性体は、前記薄肉部が起立した姿勢となるように配置されて、両側の前記支持部の間に、平面視において軸直角方向に貫通し、かつ前記凹部の下方を通過して軸線方向に延びるスリットが設けられていてもよい。
【0013】
このようなスリットを設けることにより、スリットより外側(下方)部分への応力の伝達を阻止することができるので、軸状弾性体の湾曲が両側の支持部に与える影響を軽減し、両側の支持部の各々の下部を支持する支点の位置の変動を抑え、測定精度の向上を図ることができる。
【0014】
また、本発明の他の形態に係るロードセルは、軸状弾性体の軸線方向の中央に支持部を備えるとともに両側に荷重負荷部を備え、前記支持部と各々の前記荷重負荷部との間に剪断歪みを生じさせる起歪部を備え、各々の前記起歪部に軸直角方向の凹部を対向して凹設することにより、対向する前記凹部の底面の間で且つ前記軸状弾性体の軸線に沿った中心部に薄肉部を構成し、前記凹部の底面の中央に歪みゲージを取り付け、各々の前記歪みゲージがホイートストンブリッジ回路を構成するように接続されたロードセルであって、前記軸状弾性体は、前記薄肉部が起立した姿勢となるように配置されて、両側の前記荷重負荷部に上方から荷重が負荷され、中央の前記支持部が下方から支持されるときに、両側の前記荷重負荷部の間に生じる湾曲部分の両端の上端位置が、前記起歪部の上端位置よりも下方の位置となるように構成されている。
【0015】
この構成によれば、軸状弾性体の両側の荷重負荷部に上方から荷重が負荷され、中央の支持部が下方から支持されると、両側の荷重負荷部が下方に沈むように軸状弾性体が湾曲しようとするが、軸状弾性体は両側の荷重負荷部の間に生じる湾曲部分の両端の上端位置が、起歪部の上端位置よりも下方の位置となるように構成されているので、軸状弾性体の湾曲が両側の荷重負荷部に与える影響を軽減し、両側の荷重負荷部の各々の上部の荷重が負荷される荷重点の位置の変動を抑え、測定精度の向上を図ることができる。
【0016】
また、前記軸状弾性体を、前記薄肉部が起立した姿勢となるように配置されて、両側の前記荷重負荷部に上方から荷重が負荷され、中央の前記支持部が下方から支持されるときに、両側の前記荷重負荷部の間に生じる湾曲部分の両端の上端位置が、前記起歪部の上端位置よりも下方の位置となるようにするために、前記軸状弾性体は、前記薄肉部が起立した姿勢となるように配置されて、両側の前記荷重負荷部の間に、平面視において軸直角方向に貫通し、かつ前記凹部の上方を通過して軸線方向に延びるスリットが設けられていてもよい。
【0017】
このようなスリットを設けることにより、スリットより外側(上方)部分への応力の伝達を阻止することができるので、軸状弾性体の湾曲が両側の荷重負荷部に与える影響を軽減し、両側の荷重負荷部の各々の上部の荷重が負荷される荷重点の位置の変動を抑え、測定精度の向上を図ることができる。
【0018】
また、前記軸状弾性体は、前記スリットを挟んで前記凹部と反対側になる前記スリットより外側の領域の全ての部分が、前記スリットとの境界面を一つの面とする板状に切削加工されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、軸状弾性体の軸線方向の中央に設けられる荷重負荷部あるいは支持部とは反対側のスリットより外側の部分が、切削加工によって板状に成形されているので、中央の荷重負荷部あるいは支持部を支持する支持部材(軸受け部)との干渉(接触)を無くし、測定精度の向上をより図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以上に説明した構成を有し、ピン型のロードセルにおいて、荷重負荷による軸状弾性体の湾曲が両側の支持部あるいは両側の荷重負荷部に与える影響を軽減し、測定精度の向上を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0023】
(実施形態)
図1(a)は、本発明の実施形態における一例のロードセルを正面から視た図であり、
図1(b)は、
図1(a)における同ロードセルのA−A矢視断面図であり、
図1(c)は、
図1(a)における同ロードセルのB−B矢視断面図である。
【0024】
本実施形態のロードセルは、ピン型のロードセルであり、軸状弾性体1に、ホイートストンブリッジ回路を構成する8個の歪みゲージG1〜G4、G10〜G40が接着されている。
【0025】
軸状弾性体1は、円柱状の弾性体を加工して形成されており、軸状弾性体1の軸方向の中央に荷重負荷部(または支持部)となる第1の力印加部1aが設けられ、軸方向の両側に支持部(または荷重負荷部)となる第2の力印加部1b、1cが設けられ、第1の力印加部1aと一方の第2の力印加部1bとの間、及び第1の力印加部1aと他方の第2の力印加部1cとの間に、それぞれ剪断歪みが発生する起歪部1d、1eが設けられている。
【0026】
なお、軸受け部11、12は、ロードセルを取り付けるために用いられる部材の一例であり、軸受け部11の貫通穴11aと両側の2つの軸受け部12の貫通穴12aとは、断面円形で直径が等しいように形成されている。この貫通穴11a、12aの直径は、ロードセルを装着できるように、ロードセルの第1、第2の力印加部1a、1b、1cの外径より若干(例えば10〜20μm程度)大きく形成されている。
【0027】
この例では、第1の力印加部1aが軸受け部11によって支持され、両側の第2の力印加部1b、1cがそれぞれ軸受け部12によって支持されている。この場合、第1の力印加部1aが軸受け部11を介して上方から荷重が負荷される荷重負荷部となり、第2の力印加部1b、1cが軸受け部12によって下方から支持される支持部となるように取り付けられている。以下、この例のように取り付けられた場合について、第1の力印加部1aを荷重負荷部1aと記載し、第2の力印加部1b、1cを支持部1b、1cと記載して説明する。
【0028】
軸状弾性体1の起歪部1d、1eの形成部分は、その直径が円柱状の支持部1b、1cの直径よりも若干小さくなるように成形された後、
図1(c)のように上部部分1p及び下部部分1qと前面部分1r及び背面部分1sとが削り取られて平面状に成形される。さらに、起歪部1d、1eには、それぞれの前面(正面)及び背面の両側に軸直角方向の凹部1hを軸状弾性体1の軸線(中心軸)1xを挟んで対向して凹設することにより、対向する凹部1hの底面1hbの間で且つ軸状弾性体1の軸線1xに沿った中心部に板状(本例では円板状)の薄肉部1iを形成している。
【0029】
そして、各凹部1hの底面1hbのほぼ中央にせん断歪検出用の歪みゲージを2個ずつ接着している。ここでは、起歪部1dの前面側の凹部1hに2個の歪みゲージG1、G2を取り付け、その背面側の凹部1hに2個の歪みゲージG10、G20を取り付け、起歪部1eの前面側の凹部1hに2個の歪みゲージG3、G4を取り付け、その背面側の凹部1hに2個の歪みゲージG30、G40を取り付けている。すなわち、合計8個の歪みゲージを取り付け、これらの歪みゲージを、ホイートストンブリッジ回路を構成するように接続している。
図2に、ホイートストンブリッジ回路の一例を示す。ホイートストンブリッジ回路の出力部に設けられた抵抗Rは、取付角度や固定方法の違いによる歪みゲージの抵抗変化を調整するための可変抵抗である。
図2のホイートストンブリッジ回路の出力信号は、ロードセルの出力信号、すなわち、負荷される荷重の測定値を示す信号である。
【0030】
また、軸状弾性体1の荷重負荷部1aの下部は、
図1(b)のように下部部分1tが削り取られて平面状に成形されている。
【0031】
そして、軸状弾性体1の両側の支持部1b、1cの間の荷重負荷部1a及び起歪部1d、1eの下部には、平面視において軸直角方向(平面視において軸線1xと直角方向であり、矢印13で示す方向)に貫通し、かつ、起歪部1d、1eの各凹部1hの下方を通過して軸線方向に延びるスリットSが、各凹部1hと離れて設けられている。これにより、軸状弾性体1のスリットSの下方は、薄い板状部1j、1kとなっている。荷重負荷部1aの下方の板状部1jの上面と、起歪部1d、1eの凹部1hの下方の板状部1kの上面とは、連続してスリットSの下面を形成している。このようなスリットSを下部に設けるため、断面円形の凹部1hは、その中心が軸状弾性体1の軸線1xより少し上方となるように設けられている。また、ここでは、荷重負荷部1aの下方の板状部1jの両側側面1jsを若干削って平面状となるように成形しており、
図1(b)のように板状部1jの軸線1xと直交する方向の断面が台形状になっている。
【0032】
また、起歪部1d、1eの薄肉部1iには、貫通穴2が設けられて、背面側の凹部1hに取付けられた歪みゲージのリード線が挿通されて前面側へ引き出される。また、軸状弾性体1の内部には軸線1xと平行に連結穴3が設けられ、連結穴3には歪みゲージのリード線が挿通され、軸状弾性体1の一端(右端)から信号出力ケーブル(図示せず)として引き出される。なお、各凹部1hには、蓋6が溶接によって取り付けられている。
【0033】
このロードセルは、軸状弾性体1の軸線方向が水平あるいは略水平方向となり、軸状弾性体1の起歪部1d、1eの薄肉部1iが起立した姿勢で、かつスリットSが凹部1hの下方となるように、軸受け部11、12の貫通穴11a、12aに挿入されて取付けられる。このとき、軸状弾性体1は、軸受け部11、12の貫通穴11a、12aの中心を一致させた状態で挿通している。
【0034】
そして、軸状弾性体1の一方の支持部1bの先端には、抜け止め部1gが突出しており、抜け止め部1gの側面には、平板状の係止片5が係止する凹部4が形成されている。係止片5は、凹部4に係止した状態で、軸受け部12に例えばボルト(図示せず)で固定される。このように、軸状弾性体1を軸受け部11,12に貫通して、係止片5を取り付けることで、軸状弾性体1の回転や位置ずれを防止している。
【0035】
また、軸状弾性体1の他方の支持部1cの先端には、金具取付け部1fが突出しており、金具取付け部1fの先端に、ロードセルの出力信号を出力する信号出力ケーブルが埋設されたケーブル引出金具(図示せず)が取り付けられている。
【0036】
本実施形態では、軸受け部11を介して荷重負荷部1aの上部に荷重(鉛直下向きの荷重)が負荷されると、両側の支持部1b、1cは軸受け部12によって下方から支持され、荷重負荷部1aが下方に沈むように軸状弾性体1が湾曲しようとするが、スリットSを設けていることにより、スリットSより外側(下方)の板状部1j、1kへの応力の伝達を阻止することができるので、軸状弾性体1の湾曲部分の下端の両端の位置P3、P4が、起歪部1d、1eの下端よりも上方の位置となり、両端の位置P3、P4を直線で結んだ部分が例えば二点鎖線L1で示すように湾曲しようとする。このように湾曲部分の下端の両端の位置P3、P4が、両側の支持部1b、1cの各々の下部を支持する支点位置P1、P2から大きく離れた位置となる。そのため、軸状弾性体1の湾曲が両側の支持部1b、1cに与える影響を軽減することができ、両側の支持部1b、1cの各々の下部を支持する支点の位置の変動を抑え、測定精度の向上を図ることができる。また、この場合、スリットSより外側(下方)の板状部1j、1kが梁のような役割をして、両側の支持部1b、1cの支点の位置の変動を抑えるのにより効果的である。
【0037】
また、軸状弾性体1は、スリットSを挟んで凹部1hと反対側になるスリットSより外側(下方)の領域の全ての部分が、スリットSより外側(下方)から切削加工され、かつ、スリットSが形成されることにより、スリットSとの境界面(スリットSと接する面)を一つの面とする薄肉の板状部1j、1kに成形されている。特に、スリットSを挟んで荷重負荷部1aの反対側を薄肉の板状部1jとしていることにより、スリットSより外側部分の板状部1jと軸受け部11との干渉(接触)を無くし、測定精度の向上をより図ることができる。
【0038】
また、本実施形態では、薄肉部1iが鉛直方向と同方向に起立した姿勢となるようにロードセルを取り付けているが、薄肉部1iが鉛直方向から少し(7〜8度程度)傾いた状態となっても、測定精度の向上を図れることを、実験によって確認することができた。
【0039】
なお、従来、例えば、
図5の構成において、第1、第2の力印加部1a、1b、1cと軸受け部11、12とが点接触となるように、第1、第2の力印加部1a、1b、1cが樽型に成形される場合があるが、この場合、使用及び経年による軸受け部11、12等の劣化が著しくなり、その結果、ロードセルを用いた装置の耐用年数が短くなる。一方、本実施形態のロードセルのように、第1の力印加部1aを略円柱状とし、第2の力印加部1b、1cを円柱状として、第1、第2の力印加部1a、1b、1cの外形を、円筒に沿った面すなわち軸受け部11、12の貫通穴11a、12aに沿った面とすることにより、ロードセルを用いた装置の耐用年数の向上を図ることができる。
【0040】
次に、
図3も参照して本実施形態のロードセルの使用例について説明する。
図3(a)は、本実施形態のロードセルが用いられた車両の一例を示す側面図であり、
図3(b)は、ロードセルの取付け部分を示す斜視図である。
【0041】
この車両20は、キャビン21から前後方向に延びる左右2つのシャシフレーム22を備え、各シャシフレーム22上に2つのロードセルLC(本実施形態のロードセル)を介してタンク23が搭載されている。合計4つのロードセルLCの出力信号は、図示しない制御部で加算されて総荷重が求められる。
【0042】
各ロードセルLCは、例えば、
図3(b)に示すように取り付けられている。ここでは、一対の軸受け部12がシャシフレーム22に固定された取付板24に立設され、この一対の軸受け部12によりロードセルLCの支持部1b、1cが支持されている。また、中央の軸受け部11の上端面がタンク23の底壁下面に固定され、タンク23の荷重が軸受け部11を介して荷重負荷部1aに負荷される。
【0043】
なお、上記の使用例のように、ロードセルLCを、スリットSが凹部1hの下方となるように配設して使用する場合には、中央の第1の力印加部1aが荷重負荷部となり、両側の第2の力印加部1b、1cが支持部となるが、これとは上下が逆となるようにロードセルLCを配設して使用することもできる。この場合、スリットSが凹部1hの上方となるようにロードセルLCが配設され、両側の第2の力印加部1b、1cが荷重負荷部となり、中央の第1の力印加部1aが支持部となる。例えば、一対の軸受け部12の上端面がタンク23の底壁下面に固定され、中央の軸受け部11が取付板24に立設されている場合には、ロードセルLCは、
図1の場合とは上下を逆にして、軸受け部11、12に貫通した状態で装着される。
【0044】
この場合、両側の第2の力印加部(荷重負荷部)1b、1cに上方(軸受け部12)から荷重が負荷されると、中央の第1の力印加部(支持部)1aが下方から軸受け部11によって支持され、両側の第2の力印加部1b、1cが下方に沈むように軸状弾性体1が湾曲しようとするが、スリットSを設けていることにより、スリットSより外側(上方)の板状部1j、1kへの応力の伝達を阻止することができるので、
図1の場合と同様、軸状弾性体1の湾曲が両側の第2の力印加部1b、1cに与える影響を軽減し、両側の第2の力印加部1b、1cの上部の荷重が負荷される荷重点の位置の変動を抑え、測定精度の向上を図ることができる。
【0045】
なお、上記と同様にして、本実施形態のロードセルLCを、塵芥を収容する荷箱(タンク23に相当)を搭載する塵芥収集車等の車両にも適用することができる。なお、ロードセルLCの取付け構造は、上記例に限られるものではなく、適宜変更することができる。
【0046】
また、本実施形態のロードセルを、上記のような車両の他、クレーンにも適用してもよい。
【0047】
次に、本実施形態のロードセルの他の例を
図4に示す。
図4は、本実施形態における他の例のロードセルを正面から視た図である。
【0048】
この
図4に示すロードセルは、
図1に示すロードセルのスリットSに代えて、左右に切込み部C1,C2が設けられた構成である。左側の切込み部C1は、左側の起歪部1dにおいて、左側の支持部1bの近傍部分に下から上に向かう所定部分が削りとられて形成されている。右側の切込み部C2は、右側の起歪部1eにおいて、右側の支持部1cの近傍部分に下から上に向かう所定部分が削りとられて形成されている。他の構成は、
図1に示すロードセルと同様であり、説明を省略する。このロードセルも、前述の車両や、クレーンに適用することができる。
【0049】
スリットSに代えて、このような切込み部C1,C2が設けられていても、荷重負荷部1aの上部に荷重が負荷されて軸状弾性体1が湾曲しようとするときに、軸状弾性体1の湾曲部分の下端の両端の位置P5、P6が、起歪部1d、1eの下端よりも上方の位置となり、両端の位置P5、P6を直線で結んだ部分が例えば二点鎖線L2で示すように湾曲しようとする。このように湾曲部分の下端の両端の位置P5、P6が、両側の支持部1b、1cの各々の下部を支持する支点位置P1、P2から大きく離れた位置となる。そのため、軸状弾性体1の湾曲が両側の支持部1b、1cに与える影響を軽減することができ、両側の支持部1b、1cの各々の下部を支持する支点の位置の変動を抑え、測定精度の向上を図ることができる。
【0050】
このロードセルも上下が逆となるように配設して使用することができ、この場合、切込み部C1,C2が上部になるように配設され、両側の第2の力印加部1b、1cが荷重負荷部となり、中央の第1の力印加部1aが支持部となる。
【0051】
以上に説明したように、
図1、
図4に例示される本実施形態のロードセルは、薄肉部1iが起立した姿勢となるように配置されて、中央の荷重負荷部1aに上方から荷重が負荷され、両側の支持部1b、1cが下方から支持されるときに、両側の支持部1b、1cの間に生じる湾曲部分(撓み部分)の両端の下端位置(P3,P4またはP5,P6)が、起歪部1d、1eの下端(最下端)の位置よりも上方の位置となるように構成されている。言い換えれば、両側の支持部1b、1cの間に生じる湾曲(撓み)が、起歪部1d、1eの下端(最下端)及びその近傍部分では生じずに、起歪部1d、1eの下端(最下端)から離れた部分で生じるように構成されている。そのための一例が、軸状弾性体1を加工してスリットSまたは切込み部C1,C2を設けた構成であり、これに限られるものではない。
【0052】
また、
図1、
図4とは上下が逆となるように配設される場合の本実施形態のロードセルは、薄肉部1iが起立した姿勢となるように配置されて、両側の荷重負荷部(1b、1c)に上方から荷重が負荷され、中央の支持部(1a)が下方から支持されるときに、両側の荷重負荷部(1b、1c)の間に生じる湾曲部分(撓み部分)の両端の上端位置が、起歪部1d、1eの上端(最上端)の位置よりも下方の位置となるように構成されている。言い換えれば、両側の荷重負荷部(1b、1c)の間に生じる湾曲(撓み)が、起歪部1d、1eの上端(最上端)及びその近傍部分では生じずに、起歪部1d、1eの上端(最上端)から離れた部分で生じるように構成されている。そのための一例が、軸状弾性体1を加工してスリットSまたは切込み部C1,C2を設けた構成であり、これに限られるものではない。