特許第5963520号(P5963520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5963520長尺物が巻かれた巻回体を収容する容器および巻回体入り容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963520
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】長尺物が巻かれた巻回体を収容する容器および巻回体入り容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/72 20060101AFI20160721BHJP
   B65D 25/52 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   B65D5/72 A
   B65D25/52 E
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-99191(P2012-99191)
(22)【出願日】2012年4月24日
(65)【公開番号】特開2013-227031(P2013-227031A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】関 孝 幸
(72)【発明者】
【氏名】塙 利 晴
(72)【発明者】
【氏名】酒 川 文 子
【審査官】 西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/153012(WO,A1)
【文献】 特開2002−274533(JP,A)
【文献】 特開2006−051959(JP,A)
【文献】 特開平07−291269(JP,A)
【文献】 米国特許第04648536(US,A)
【文献】 特開2007−22550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/72
B65D 25/52
B65D 83/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜状の長尺物が巻かれた巻回体を収容することができる容器において、
底面板、前面板、後面板および一対の側面板を含み、上面が開口された本体部であって、前記巻回体を収容することができる本体部と、
前記本体部の前記後面板の上縁に回動可能に連結され、前記本体部の開口を塞ぐことができる蓋部と、を備え、
前記蓋部は、前記蓋部が前記本体部の前記開口を塞いでいるときに前記本体部の前記前面板と少なくとも部分的に重なる蓋前面板を有し、
前記本体部の前記前面板には、前記巻回体から引き出された前記長尺物を前記蓋前面板との間で挟むことができるよう構成されたフラップが設けられており、
前記フラップは、前記本体部の開口が塞がれているときに前記長尺物の幅の中央に対応する前記蓋前面板の部分を前記本体部の前記前面板に向けて押したときに前記蓋前面板と前記前面板とが接する範囲を中央領域とする場合、前記一対の側面板のうちの一方である第1側面板と前記中央領域との間に設けられた第1フラップと、前記第1側面板に対向する第2側面板と前記中央領域との間に設けられた第2フラップと、を含み、
前記第1フラップおよび前記第2フラップは各々、前記本体部の前記前面板の一部分を切り起こすことにより形成されており、
前記前面板の上縁には、当該上縁を罫線として前記前面板の内面に沿うように折り込まれた補強板が連結されており、
前記補強板の外面には、前記蓋部が前記本体部の前記開口を塞いでいるときに前記第1フラップの内面および前記第2フラップの内面と向かい合う凸領域が形成されている、または、前記第1フラップの内面および前記第2フラップの内面には、前記蓋部が前記本体部の前記開口を塞いでいるときに前記補強板の外面と向かい合う凸領域が形成されており、
前記凸領域は、エンボス加工による複数の凸部を含み、
前記凸部は前記補強板の外面のうち前記第1フラップの隅部および前記第2フラップの隅部に対応する部分に少なくとも形成されている、若しくは、前記第1フラップの内面および前記第2フラップの内面のうち前記第1フラップの隅部および前記第2フラップの隅部に少なくとも形成されている、容器。
【請求項2】
前記本体部の前記補強板には、前記容器内に延びることができる押さえ板が設けられており、
前記押さえ板は、前記第1フラップと少なくとも部分的に重なる第1押さえ板と、前記第2フラップと少なくとも部分的に重なる第2押さえ板と、を有し、
前記第1押さえ板および前記第2押さえ板は各々、前記本体部の前記補強板の一部分を切り起こすことにより形成されている、請求項に記載の容器。
【請求項3】
前記第1押さえ板は、前記第1押さえ板の全体が前記第1フラップと重なるよう構成されており、
前記第2押さえ板は、前記第2押さえ板の全体が前記第2フラップと重なるよう構成されている、請求項に記載の容器。
【請求項4】
前記第1フラップ、前記第2フラップ、前記第1押さえ板および前記第2押さえ板の各々が、前記本体部の前記前面板の上縁を回転軸として回動することができる、請求項またはに記載の容器。
【請求項5】
前記蓋部が前記本体部の前記開口を塞いでいるとき、前記第1フラップの輪郭および前記第2フラップの輪郭は各々、全域にわたって、前記第1フラップおよび前記第2フラップが切り起こされた後の前記前面板に沿って延びている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の容器。
【請求項6】
前記第1フラップの輪郭および前記第2フラップの輪郭は各々、滑らかな曲線状の形状を有している、請求項1乃至のいずれか一項に記載の容器。
【請求項7】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の容器と、
前記容器に収容された巻回体と、を備える巻回体入り容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜状の長尺物が巻かれた巻回体を収容することができる容器、および巻回体入り容器に関し、とりわけ、長尺物を適切に切断することができる容器および巻回体入り容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食材や料理あるいは皿などの食器を料理ごと包むことができる薄膜状の長尺物、例えば食品用ラップフィルムが、広く用いられている。食品用ラップフィルム(以下、単にフィルムとも称する)は、典型的には、ロール状に巻かれた巻回体の状態で、直方体の容器に収容されている。容器は、一般には、底面板、前面板、後面板および一対の側面板を含み、上面が開口された本体部であって、巻回体を収容することができる本体部と、本体部の後面板の上縁に回動可能に連結され、本体部の開口を塞ぐことができる蓋部と、を備えている。また蓋部には、収容されているフィルムを巻回体から必要量だけ引き出した後、フィルムを切断することができる切断刃が取り付けられている。
【0003】
切断刃の構造として、巻回体の軸方向に延びる直線状をなす構造と、巻回体の軸方向における中央が頂点になるV字状をなす構造とが一般に知られている。V字状の切断刃を用いてフィルムを切断する場合、一方の手でフィルムの先端を摘んでフィルムを巻回体から必要量だけ引き出し、他方の手で容器の長手方向中央部を持って蓋部を閉める。このとき、他方の手で蓋部の蓋前面板を容器の本体部側に押し、これによって、フィルムを蓋部の蓋前面板と本体部との間で挟み、この間に、引き出されたフィルムに切断刃を食い込ませるように容器をひねる。このようにして、フィルムを切断することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−274534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
V字状の切断刃を用いてフィルムを切断する場合、容器の長手方向中央部においては、容器を持つ手によってフィルムが押さえられる。しかしながら、容器の長手方向両端部においては、容器の長手方向中央部が押されることに起因して、本体部と蓋部との間に隙間が形成されてしまうことがある。このような隙間が形成されると、容器の長手方向両端部においてフィルムを適切に押さえることができず、この結果、フィルムを切断しようとする力が、フィルムが巻回体から引き出される方向に作用してしまい、このため適切にフィルムを切断することができないことが考えられる。
【0006】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る容器および巻回体入り容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、薄膜状の長尺物が巻かれた巻回体を収容することができる容器において、底面板、前面板、後面板および一対の側面板を含み、上面が開口された本体部であって、前記巻回体を収容することができる本体部と、前記本体部の前記後面板の上縁に回動可能に連結され、前記本体部の開口を塞ぐことができる蓋部と、を備え、前記蓋部は、前記蓋部が前記本体部の前記開口を塞いでいるときに前記本体部の前記前面板と少なくとも部分的に重なる蓋前面板を有し、前記本体部の前記前面板には、前記巻回体から引き出された前記長尺物を前記蓋前面板との間で挟むことができるよう構成されたフラップが設けられており、前記フラップは、前記本体部の開口が塞がれているときに前記長尺物の幅の中央に対応する前記蓋前面板の部分を前記本体部の前記前面板に向けて押したときに前記蓋前面板と前記前面板とが接する範囲を中央領域とする場合、前記一対の側面板のうちの一方である第1側面板と前記中央領域との間に設けられた第1フラップと、前記第1側面板に対向する第2側面板と前記中央領域との間に設けられた第2フラップと、を含み、前記第1フラップおよび前記第2フラップは各々、前記本体部の前記前面板の一部分を切り起こすことにより形成されており、前記前面板の上縁には、当該上縁を罫線として前記前面板の内面に沿うように折り込まれた補強板が連結されており、前記補強板の外面には、前記蓋部が前記本体部の前記開口を塞いでいるときに前記第1フラップの内面および前記第2フラップの内面と向かい合う凸領域が形成されている、または、前記第1フラップの内面および前記第2フラップの内面には、前記蓋部が前記本体部の前記開口を塞いでいるときに前記補強板の外面と向かい合う凸領域が形成されており、前記凸領域は、エンボス加工による複数の凸部を含み、前記凸部は前記補強板の外面のうち前記第1フラップの隅部および前記第2フラップの隅部に対応する部分に少なくとも形成されている、若しくは、前記第1フラップの内面および前記第2フラップの内面のうち前記第1フラップの隅部および前記第2フラップの隅部に少なくとも形成されている、容器である。
【0010】
本発明による容器において、前記本体部の前記補強板には、前記容器内に延びることができる押さえ板が設けられていてもよい。前記押さえ板は、前記第1フラップと少なくとも部分的に重なる第1押さえ板と、前記第2フラップと少なくとも部分的に重なる第2押さえ板と、を有し、前記第1押さえ板および前記第2押さえ板は各々、前記本体部の前記補強板の一部分を切り起こすことにより形成されていてもよい。
【0011】
本発明による容器において、前記第1押さえ板は、前記第1押さえ板の全体が前記第1フラップと重なるよう構成されており、前記第2押さえ板は、前記第2押さえ板の全体が前記第2フラップと重なるよう構成されていてもよい。
【0012】
本発明による容器において、前記第1フラップ、前記第2フラップ、前記第1押さえ板および前記第2押さえ板の各々が、前記本体部の前記前面板の上縁を回転軸として回動することができるようになっていてもよい。
【0013】
本発明による容器において、前記蓋部が前記本体部の前記開口を塞いでいるとき、前記第1フラップの輪郭および前記第2フラップの輪郭は各々、全域にわたって、前記第1フラップおよび前記第2フラップが切り起こされた後の前記前面板に沿って延びていてもよい。
【0014】
本発明による容器において、前記第1フラップの輪郭および前記第2フラップの輪郭は各々、滑らかな曲線状の形状を有していてもよい。
【0015】
本発明は、上記記載の容器と、前記容器に収容された巻回体と、を備える巻回体入り容器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、本体部と蓋部との間でフィルムを適切に押さえることができ、これによって、適切にフィルムを切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A図1Aは、本発明の一実施の形態による、巻回体が収容されている容器を示す斜視図。
図1B図1Bは、図1Aに示す容器の本体部のフラップ近傍を拡大して示す断面図。
図1C図1Cは、図1Aに示す容器の本体部のフラップ近傍を拡大して示す斜視図。
図2図2は、本発明の一実施の形態による容器の正面図。
図3図3は、図2に示す容器からフラップを取り除いた状態を示す図。
図4図4は、容器を作製するための板紙の一例を示す図。
図5図5は、補強板に形成される凸領域の変形例を示す正面図であって、図2と同様に容器からフラップを取り除いた状態を示す正面図である。
図6図6は、前面板に形成される切目線の変形例を示す正面図。
図7図7は、前面板に設けられるフラップの変形例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1A乃至図4を参照して、本発明の実施の形態について説明する。まず図1Aにより、本実施の形態における容器1全体について説明する。なお、各図において互いに同一又は類似の部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0019】
容器
図1Aは、ラップロール(巻回体)入り容器100を示す斜視図である。ラップロール91rは、薄膜状の長尺物、例えばラップフィルム91fが円筒状の巻芯にその軸線91aまわりで巻かれることにより得られるロール状のものである。以下の説明において、ラップロール91rとラップフィルム91fとの外観形状の区別をしない場合は、「ラップ91」と総称する。ラップフィルム91fは、例えば、ポリ塩化ビニリデンを原料として形成された、5〜20μmの厚みを有するフィルムである。容器1は、ラップロール91rを収容することができる本体部10と、本体部10に回動自在に連結された蓋部20と、を備えている。
【0020】
(本体部)
本体部10は、未使用のラップロール91rを収容できる程度の大きさを有する直方体形状の箱であって、その細長い面の1つが開口されて開口面10hとなっている箱である。本体部10の大きさは、収容した未使用のラップロール91rを軸線91a回りに回転させるのを妨げない程度の隙間が形成される一方で、できるだけ小さく形成されている。例えば本体部10は、幅44mm、高さ44mm、長さ310mmの大きさで形成されている。本体部10は、開口面10hとともに直方体の長手方向に延びる側面を構成する前面板12、底面板13、後面板14と、直方体の端面を構成する一対の側面板15と、を有している。底面板13は、開口面10hに対向している。前面板12及び後面板14は、開口面10h及び底面板13に直交している。側面板15は、典型的には正方形に形成されているが、縦横の長さが異なる矩形であってもよい。以下の説明においては、水平な面に底面板13が載置された状態を基準として、底面板13側を下、開口面10h側を上として説明する場合もある。
【0021】
側面板15の上縁の中央部分には、3mm程度上方に延びた小片が外側に折り返されて形成された突起部15pが設けられている。また、前面板12の上縁19には、当該上縁19を罫線(折目線)31rとして前面板12の内面に沿うように折り込まれた補強板31が連結されている(図1B図4参照)。補強板31は、前面板12と略同じ大きさであるが底面板13とは接していない。補強板31の下縁は、補強板31の長手方向に沿って前面板12の内面に接着されている。
【0022】
補強板31には、補強板31の側縁31b近傍において補強板31に形成された折目線17rを介して、固定片17が連結されている。この固定片17は、ラップロール91rに上方から接することによって、ラップロール91rが外に飛び出すことを防止するための部材である。ここで「補強板31の側縁31b近傍」とは、ラップロール91rから引き出されるラップフィルム91fの進路が固定片17によって多大に阻害されることがないよう、折目線17rの位置が決定されることを意味している。
【0023】
(蓋部)
蓋部20は、本体部10の後面板14の上縁18に連結され、本体部10の開口面10hを塞ぐことができる部材である。蓋部20は、蓋上面板21と、蓋前面板22と、切断刃23と、蓋側面板25とを有している。蓋部20は、本体部10の後面板14の上縁18を回転軸として本体部10に対して回動することができるように構成されている。
【0024】
蓋前面板22は、折目線22rを介して蓋上面板21と直交し、蓋部20を閉じたときに底面板13に向かって延びるように設けられている。このため蓋前面板22は、蓋部20が本体部10の開口面10hを塞いでいるときに本体部10の前面板12と少なくとも部分的に重なることができる。蓋前面板22は、ラップロール91rの軸線91aが延びる方向(以下「軸線方向D」という。)の両端における高さ(長方形の前面板12の短辺方向における蓋前面板22の長さ)が、前面板12の短辺方向の長さの約1/2で、軸線方向Dの中央部における高さが、前面板12の短辺方向の長さの約3/4になるよう構成されている。折目線22rに対向する先端部22tは、軸線方向Dにおいて中央部から端部に向かうにつれて、折目線22rと先端部22tとの間の距離が短くなるように構成されている。このため、折目線22rに対向する先端部22tは、V字状の形状を有している。蓋前面板22は、蓋部20が閉じられたときに、前面板12に沿って前面板12の外面に重なり、前面板12の上部を五角形状に覆うこととなる。蓋前面板22は、本体部10に収容されているラップロール91rから引き出されたラップフィルム91fを、その幅全体にわたって、前面板12との間に挟むことができるように構成されている。蓋前面板22の先端部22tには、ラップフィルム91fを切断するための切断刃23が取り付けられている。切断刃23は、刃先が先端部22tから突出するよう、先端部22tに沿ってV字状に設けられている。
【0025】
蓋側面板25は、蓋上面板21及び蓋前面板22の双方に直交するよう設けられている。蓋側面板25は、蓋上面板21の両端にそれぞれ連結されている。また蓋前面板22の両端には接合片22jが連結されており、この接合片22jが蓋側面板25の内面に対して接着剤などによって固定されている。なお接合片22jは、蓋側面板25よりも小さい面積を有するよう構成されており、このため蓋側面板25の内側には、接合片22jの厚みに起因する段部25dが形成されている。段部25dは、蓋部20を閉じたときに、側面板15の上縁に設けられた突起部15pが嵌るよう構成されている。
【0026】
本体部10及び蓋部20は、例えば、約0.45mm〜0.7mm厚のコートボール紙を加工することにより形成されている。このため、容器1は、所定の弾性を有している。なお、本実施の形態では、説明の便宜上、本体部10と蓋部20とを機能の観点から区別している。しかしながら、本体部10及び蓋部20は一般に、はじめに1枚の原紙を切り出して板紙を形成し、次に折り曲げなどによって板紙50を成形することによって作製される。すなわち本体部10及び蓋部20は、一体的に形成されている。
【0027】
(フラップ)
図1Aに示すように、本体部10の前面板12には、ラップロール91rから引き出されたラップフィルム91fを蓋部20の蓋前面板22との間で挟むことができるよう構成されたフラップ12fが設けられている。以下、フラップ12fについて、図1B図3を参照して詳細に説明する。
【0028】
図1Bおよび図1Cは、容器1のフラップ12f近傍を拡大して示す断面図および斜視図である。また図2は、容器1を示す正面図である。フラップ12fは、本実施の形態では、前面板12の上部の中央に位置する中央領域12tを挟むように、前面板12の上縁19に沿って中央領域12tの両側に設けられている。ここで「中央領域12t」とは、蓋部20を閉じた状態で蓋前面板22の図心(先端部22tのV字の頂点付近における蓋前面板22の一部分)を前面板12に向けて押したときに、蓋前面板22が接する前面板12の一部分である。なお容器1は弾性を有するため、蓋前面板22を前面板12に向けて押す力の大きさに応じて、蓋前面板22と前面板12とが接する範囲が変化しうる。従って、中央領域12tを画定するに際しては、未使用のラップロール91rが本体部10に収容された状態で蓋前面板22の図心を前面板12に向けて押したときに、前面板12が本体部10内のラップロール91rに止められて後面板14側に移動しなくなったときの、蓋前面板22が接する前面板12の部分を中央領域12tとする。
【0029】
中央領域12tを挟んで2つ設けられたフラップ12fについて、説明の便宜上、正面視(図2参照)において、中央領域12tの左側のフラップ12fを左フラップ12fA(第1フラップ)と称し、中央領域12tの右側のフラップ12fを右フラップ12fB(第2フラップ)と称する。以下、左フラップ12fA及び右フラップ12fBに共通の構成について説明するときは、単に「フラップ12f」と総称することもある。また、左フラップ12fAに近い側面板15を左側面板15A(第1側面板)と称し、右フラップ12fBに近い側面板15を右側面板15B(第2側面板)と称することもある。側面板15は左側面板15Aおよび右側面板15Bの総称である。
【0030】
本実施の形態において、左フラップ12fAは、前面板12の面内に形成された切目線に沿って前面板12の一部分を切り起こすことによって形成されている。また、左フラップ12fAを切り起こすために前面板12に形成される切目線は、前面板12の上縁19に到達するまで、若しくは上縁19の近傍まで延びている。この場合、左フラップ12fAは、前面板12の上縁19を上縁として回動することができる。
【0031】
図2において、左フラップ12fAの輪郭のうち上縁19よりも下方に位置する輪郭が符号12fAcによって表されている。また図2において、左フラップ12fAが切り起こされた後の前面板12に残っている切目線が符号12cAで表されている。図2に示すように、左フラップ12fAの輪郭12fAcは、全域にわたって、左フラップ12fAが切り起こされた後の前面板12に沿って、すなわち前面板12に残っている切目線12cAに沿って延びている。
【0032】
切目線12cAは、前面板12の一部を切断する線である。切目線12cAは、中央領域12tよりも左側面板15A寄りの中央領域12tに近接した上縁19上の点12cANから、前面板12の面内を通り、左側面板15Aに近い上縁19上の点12cASに至るように、前面板12の面内が切断されることで形成されている。点12cANは、引き出されたラップフィルム91fの切断時に、ラップフィルム91fの切り口が許容できない程度に乱れるようなラップフィルム91fの滑りが生じない程度、中央領域12tの近傍に位置している。図2に示す例において、点12cASは、引き出されたラップフィルム91fの左端よりもやや中央領域12t寄りに位置している。しかしながら、これに限られることはなく、点12cASは、ラップフィルム91fの左端と左側面板15Aとの間に位置していてもよい。「ラップフィルム91fの左端よりもやや中央領域12t寄り」とは、ラップフィルム91fの切断時にラップフィルム91fがたるまずに切断可能な程度にラップフィルム91fを左フラップ12fAと蓋前面板22とで挟むことができるよう点12cASの位置が決定されている状態のことを意味している。
【0033】
左フラップ12fAの左端がラップフィルム91fの左端よりも中央領域12t寄りに形成されていると、軸線方向Dにおける前面板12の側縁まわりでの本体部10の強度の低下を抑制することができる。本実施の形態では、軸線方向Dにおいて、左フラップ12fAの左端が前面板12の左側の側縁よりも15mmだけ中央領域12t寄りに形成されているが、これに限られることはなく、10mmあるいは5mmだけ中央領域12t寄りに形成されていてもよい。左フラップ12fAの突出長さの最大値は、上下方向における前面板12の長さの約1/2に設定されている。左フラップ12fAの下側(先端側)の辺によって構成される左フラップ12fAの輪郭12fAcは、本実施の形態では、軸線方向Dの中央領域12t側から左側面板15A側に向かうときに、一旦上縁19側に少し近づいた後に再び上縁19から離れるような、意匠性に優れた、滑らかな曲線状の形状を有している。換言すると、左フラップ12fAは、その中央部分が両端部分よりも上縁19側に凹んでいる。左フラップ12fAは、蓋部20を閉じたときに蓋前面板22に覆われて外面に表れない程度の大きさに形成されている。
【0034】
一般に、左フラップ12fAの輪郭を構成する切目線12cAの両端12cAN、12cASと前面板12の上縁19との間の距離が短いほど、左フラップ12fAが補強板31から離間する程度、すなわち浮く程度が大きくなる。また、両端12cAN、12cASが上縁19に到達している場合、左フラップ12fAが浮く程度がさらに大きくなる。本実施の形態において、左フラップ12fAの輪郭を構成する切目線12cAの両端12cAN、12cASは、前面板12の上縁19に到達していてもよい。
【0035】
左フラップ12fAの表面には、ラップフィルム91fを係止するためのストッパー12sが形成されていてもよい。ストッパー12sは、例えば左フラップ12fA上に塗布されたUVニスによって形成されている。図1Cに示すように、同様のストッパー12sおよび19sが、左フラップ12fAと左側面板15Aとの間において前面板12上や前面板12の上縁19上に形成されていてもよい。
【0036】
右フラップ12fBは、前面板12を左右に二等分する仮想直線12vを軸として、左フラップ12fAと線対称に形成されている。右フラップ12fBの点12cBN及び点12cBSは、それぞれ左フラップ12fAの点12cAN及び点12cASに相当する。
【0037】
ところで上述のように、フラップ12fの輪郭は各々、フラップ12fが切り起こされた後の前面板12に沿って、すなわち前面板12に残っている切目線12cA,12cBに沿って延びている。この場合、本体部10の開口面10hが蓋部20によって塞がれる際、フラップ12fが前面板12に嵌まり込むという現象が生じ得る。このような現象が生じることを防ぐため、図1Bに示すように、補強板31の外面には、蓋部20が閉じられている際にフラップ12fの内面と向かい合う凸領域32が形成されている。凸領域32は、補強板31の外面から外方に突出した凸部32aであって、フラップ12fの内面に当接することができる凸部32aを含んでいる。これによって、フラップ12fが前面板12に嵌まり込むことを防ぐことができ、このことにより、安定にフラップ12fを機能させることができる。なお「内面」とは、容器1に形成されている、巻回体を収容するための収容空間側を向いている面のことであり、「外面」とは、内面とは反対側の面、すなわち収容空間側を向く面とは反対側の面のことである。補強板31については、使用者によって視認され得る露出面が、収容空間側を向く内面となっており、露出面とは反対側にある、フラップ12fや前面板12と対向する面が、外面となっている。
【0038】
凸領域32の凸部32aを形成する方法は特に限られることはなく、様々な方法が採用され得る。例えば、補強板31の内面に対してエンボス加工を施すことにより、補強板31の外面に凸部32aを形成することができる。この場合、図1Bに示すように、補強板31の内面には凹部が形成されることになる。以下の説明および図において、これら凸部および凹部を同一の符号32aで表すこともある。
【0039】
フラップ12fが前面板12に嵌まり込むことを防ぐことができる限りにおいて、凸領域32の形状や配置が特に限られることはない。図3は、図2に示す容器1から、便宜上、フラップ12fを取り除いた状態を示す図である。図3に示すように、軸線方向Dにおけるフラップ12fのほぼ全域にわたってフラップ12fに断続的に当接することができるよう、複数の凸部32aを含む凸領域32が形成されていてもよい。
【0040】
好ましくは、凸領域32の凸部32aは、図2および図3に示すように、補強板31の外面のうち左フラップ12fAの隅部12fN,12fSおよび右フラップ12fBの隅部12fN,12fSに対応する部分に少なくとも形成されている。これによって、フラップ12fが前面板12に嵌まり込むことを効果的に防ぐことができる。ここで隅部12fN,12fSとは、フラップ12fのうちその輪郭が大きく屈曲している部分のことである。図2に示す例において、隅部12fN,12fSは、フラップ12fのうち上縁19から遠ざかるように延びる部分と上縁19にほぼ沿って延びる部分との間の部分となっている。本実施の形態において、フラップ12fの隅部12fN,12fSは以下のように画定され得る。
【0041】
図2において、上縁19から左フラップ12fAの輪郭12fAcまでの距離が極大になる点であって、中央領域12t寄りの点が符号12cAN’で表されている。はじめに、左フラップ12fAの中央領域12t寄りの端点12cANと極大点12cAN’とを結ぶ直線LN0を生成する。次に、直線LN0に平行な直線であって、左フラップ12fAの輪郭12fAcに接する直線LN1を生成する。図2において、左フラップ12fAの輪郭12fAc上の点のうち直線LN1が接する点が符号Pで示されている。例えば、左フラップ12fAのうち、このようにして生成された接点Pの近傍の部分を、左フラップ12fAの中央領域12t寄りの隅部12fNとして画定することができる。左フラップ12fAの左側面板15A寄りの隅部12fSについても同様に画定される。すなわち、はじめに、左側面板15A寄りの端点12cASと極大点12cAS’とを結ぶ直線LSを生成し、次に、直線LSに平行な直線であって、左フラップ12fAの輪郭12fAcに接点Pで接する直線LSを生成する。そして、接点Pの近傍の部分が隅部12fSとして画定される。右フラップ12fBについても同様にして、中央領域12t寄りの隅部12fNおよび右側面板15B寄りの隅部12fSが画定される。
【0042】
(押さえ板)
ラップロール91rが外に飛び出すことを防止するために、側面板15近傍に設けられている固定片17について説明した。しかしながら、ラップロール91rが外に飛び出すことを防止するための部材が固定片17に限られることはなく、その他の部材が容器1に設けられていてもよい。例えば図1Bおよび図3に示すように、容器1内に延びてラップロール91rに向かって突出する押さえ板33が容器1に設けられていてもよい。
【0043】
押さえ板33は、フラップ12fと同様に、中央領域12tの両側にそれぞれ設けられていてもよい。以下、中央領域12tの左側の押さえ板33を右押さえ板33A(第1押さえ板)と称し、中央領域12tの右側の押さえ板33を左押さえ板33B(第2押さえ板)と称することもある。各押さえ板33A,33Bは、水平方向から見た場合に各フラップ12fA,12fBと少なくとも部分的に重なるよう設けられていてもよい。図2および3においては、水平方向から見た場合に各押さえ板33A,33Bの全体が各フラップ12fA,12fBと重なるよう各押さえ板33A,33Bが構成されている例が示されている。
【0044】
各押さえ板33A,33Bは、図1Bおよび図3に示すように、補強板31の面内に形成された切目線33cに沿って補強板31の一部分を切り起こすことによって形成されている。また、各押さえ板33A,33Bを切り起こすために補強板31に形成される切目線33cは、補強板31の上縁、すなわち前面板12の上縁19に到達するまで、若しくは上縁19の近傍まで延びている。この場合、各押さえ板33A,33Bは、前面板12の上縁19を上縁として回動することができる。
【0045】
容器の製造方法
次に、容器1を製造する方法について説明する。上述のように、容器1は、はじめに1枚の原紙を切り出して板紙を形成し、次に折り曲げなどによって板紙を成形することによって得られる。図4は、容器1を作製するための板紙50の一例を示す平面図である。
【0046】
図4に示す板紙50において、容器1の様々な板や片を構成するための領域が、図1A乃至図3の場合と同一の符号で示されている。また、様々な板や片を折り曲げるために板と板の間または板と片の間に位置する罫線や折目線が、符号12r,13r,15r,15pr,17r,21r,22jr,25r,31r,36r,37rなどで示されている。さらに、様々な部材を切り起こすための切目線が、符号12cA,12cB,33c,17rcなどで示されている。
【0047】
また前面板12には、底面板13に対する前面板12の角度を固定するために側面板15(または後述する接合片37)に接着される接合片36(第1接合片36Aおよび第2接合片36B)が、罫線36rを介して連結されている。同様に、後面板14には、底面板13に対する後面板14の角度を固定するために側面板15(または上述の接合片36)に接着される接合片37(第1接合片37Aおよび第2接合片37B)が、罫線37rを介して連結されている。
【0048】
図4に示す板紙50を作製する方法は特に限られることはなく、様々な方法が用いられ得る。例えば、はじめに、1枚の原紙を切り出して、板紙50の輪郭を整える。次に、または原紙からの切り出しと同時に、各切目線を板紙50に形成する。その後、板紙50に対してエンボス加工などを施すことにより、各罫線や凸領域32(または凹部32a)などを板紙50に形成する。
【0049】
板紙50を成形して容器1を作製する方法は特に限られることはなく、様々な方法が用いられ得る。
【0050】
次に、上述のようにして製造される容器1の作用について説明する。
【0051】
ラップフィルム91fを使用する際は、ラップロール91rからラップフィルム91fを必要な長さ分だけ引き出して切断刃23で切断する。このとき、ラップフィルム91fを必要な長さ分だけ引き出した状態で蓋部20を閉じ、ラップフィルム91fを前面板12と蓋前面板22とで挟み、蓋前面板22の図心を親指で押さえ、切断刃23の中央を引き出されたラップフィルム91fに食い込ませるように巻回体入り容器100を軸線91aまわりにひねると、ラッピングする食器等にラップフィルム91fを付けた状態でも切断しやすく、好適である。
【0052】
ラップフィルム91fは、切断される際、引出方向に張力が掛けられた状態で切断刃23が入れられる。このため、仮にフラップ12fが軸線方向Dにおける前面板12全体の長さの1/3程度で前面板12の中央に設けられている場合、蓋部20を閉じて蓋前面板22の図心を押したときに、フラップ12fよりも外側の部分において前面板12と蓋前面板22との間に隙間ができてしまうことが考えられる。この場合、フラップ12fよりも外側の部分に対応するラップフィルム91fは、引出方向の張力に応じて容器1に対して滑りながら(引き出されながら)切断されることが生じ得る。この結果、ラップフィルム91fの切断線が切断刃23に対応した切り口にならなくなることが生じ得る。あるいは、仮にフラップ12fが軸線方向Dにおける前面板12全体の長さと略同じ長さで連続して形成されている場合であっても、蓋部20を閉じて蓋前面板22の図心を押したときに、フラップ12fの中央部分が押されるのに伴ってフラップ12fの両外側部分も補強板31に近づくように沈み込んでしまい、ひいては外側部分において前面板12と蓋前面板22との間に隙間ができてしまうことが考えられる。この場合、隙間が形成された部分に対応するラップフィルム91fは、引出方向の張力に応じて容器1に対して滑りながら切断されることが生じる。この結果、ラップフィルム91fの切断線が切断刃23に対応した切り口にならなくなることが生じ得る。
【0053】
一方、本実施の形態に係る容器1では、フラップ12fが、左フラップ12fAと右フラップ12fBとに分かれて中央領域12tの両側にそれぞれ独立して設けられている。このため、蓋部20を閉じて蓋前面板22の図心を押したときに、フラップ12fがつられて補強板31に近づくように沈み込むことを抑制することができる。これによって、引き出されたラップフィルム91fをフラップ12fと蓋前面板22とで挟むことができ、ラップフィルム91fの切断時の滑りを抑制することができる。さらに、容器1では、フラップ12fの軸線方向Dの長さ全体にわたってストッパー12sが形成されているので、フラップ12fと蓋前面板22とで挟まれたラップフィルム91fの引出方向への移動(滑り)を止めることができる。このことにより、より適切にラップフィルム91fを切断することができる。
【0054】
なお本実施の形態においては、上述のように、フラップ12fは、その中央部分が両端部分よりも上縁19側に凹んでいる。このため、フラップ12fの輪郭12fAcは、容器1の端部から容器1の中央部分に向かって直線的に延びる切断刃23に対して非平行なものとなっている。このため、フラップが切断刃23と平行に延びている場合に比べて、ラップフィルム91fを必要量だけ引き出した後に蓋部20を閉じる際にラップフィルム91fと蓋部20の蓋前面板22との間に発生する摩擦力を小さくすることができる。このことにより、フラップ12fによってラップフィルム91fを適切に支持することと、蓋部20の閉まり易さとを同時に実現することができる。
【0055】
切断された後にフラップ12fと蓋前面板22との間に挟まれているラップフィルム91fは、ストッパー12sに付着しているため、ラップロール91rへの巻き戻りが防止される。また、次回ラップフィルム91fを使用する際に、蓋部20を開けると、フラップ12fが本体部10の外側に浮いている。このため、フラップ12fに形成されたストッパー12sに付着しているラップフィルム91fの先端もフラップ12fの外側の前面板12から浮いており、摘みやすい。特に本実施の形態の容器1においては、中央領域12tにフラップ12fが形成されていないので、中央領域12tとラップフィルム91fとの間に隙間が形成されており、このため、この隙間に指を入れることで容易にラップフィルム91fを摘むことができる。
【0056】
上述のように、巻回体入り容器100によれば、ラップフィルム91fを切断する際に、フラップ12fと蓋前面板22とでラップフィルム91fを挟むことができる。このため、中央領域12tの外側においてもラップフィルム91fの引出方向への移動(滑り)を止めることができ、これによって、ラップフィルム91fを適切に切断することができる。
【0057】
また本実施の形態によれば、容器1には、ラップロール91rが外に飛び出すことを防止するための押さえ板33が設けられている。押さえ板33は、補強板31の一部分を切り起こすことにより形成されている。また押さえ板33は、フラップ12fと同様に、前面板12の上縁19を回転軸として回動することができる。このため、ラップフィルム91fを切断するために蓋前面板22の図心を押すとき、上縁19を回転軸としてフラップ12fを容器1の内側へ向けて回動させ、同時に上縁19を回転軸として押さえ板33を容器1の内側へ向けて回動させることができる。すなわち、フラップ12fと押さえ板33とが共通の回転軸を有することにより、フラップ12fと押さえ板33とを連動させることができる。これによって、フラップ12fと蓋前面板22との間でラップフィルム91fを挟むことと、押さえ板33をラップロール91rに向けて突出させることとを同時に実現することができる。このことにより、ラップフィルム91fを切断する際にラップロール91rが外に飛び出すことをより確実に防止することができる。なお上述のように、水平方向から見た場合に各押さえ板33A,33Bの全体が各フラップ12fA,12fBと重なるよう各押さえ板33A,33Bを構成することにより、フラップ12fと押さえ板33との連動の程度をより高くすることができる。
【0058】
ところで、上述のようにフラップ12fと押さえ板33とが連動する場合、フラップ12fが補強板31に向かって回動し易くなると考えられる。なぜなら、フラップ12fが補強板31に接近するよう上縁19を回転軸としてフラップ12fを回動させる際に、補強板31からフラップ12fに対して働く弾性的な抵抗力が、押さえ板33が回動することによって緩和されるからである。フラップ12fが補強板31に向かって回動し易いということは、前面板12の切目線12cA,12cBにフラップ12fが接近し易くなっていることを意味している。このような場合であっても、本実施の形態によれば、補強板31の外面には、上述のように、フラップ12fの内面に向かい合う凸領域32が形成されている。このため、凸領域32の凸部32aがフラップ12fの内面に当接することにより、フラップ12fが前面板12に嵌まり込むことを防ぐことができる。このため本実施の形態によれば、フラップ12fによってラップフィルム91fの切断性を向上させることと、押さえ板33によってラップロール91rの飛び出しを防止することとを同時に実現することができる。
【0059】
なお本実施の形態において、補強板31に形成されている凸領域32が、フラップ12fの内面に対向するよう構成された5つの凸部32aを含む例を示した。しかしながら、凸領域32の具体的な形態は特に限られることはない。例えば凸領域32は、4つ以下の凸部32aを含んでいてもよく、若しくは、6つ以上の凸部32aを含んでいてもよい。いずれの場合においても、凸領域32は、好ましくは、フラップ12fの隅部12fN,12fSに対応する部分に形成された凸部32aを含んでいる。これによって、フラップ12fが前面板12に嵌まり込むことを効果的に防ぐことができる。
【0060】
また図5に示すように、凸領域32は、フラップ12fに対応して容器1の長手方向に延びる1つの凸部32aから構成されていてもよい。なお、板紙50上に凸部32aを形成するためのエンボス加工は、一般には、フラップ12fのための切目線12cA,12cBや押さえ板33のための切目線33cなどの切目線を板紙50上に形成した後に実施される。切目線は、例えばミシン目として構成されている。その後、板紙50を罫線や折目線に沿って折り曲げることにより、容器1が作製される。ここで、凸部32a1つ当りの寸法が大きいと、板紙50上に凸部32aを形成するためのエンボス加工を実施する際に、板紙50上に既に形成されている切目線、例えば切目線33cが破断してしまうことが考えられる。エンボス加工の際に切目線が破断してしまうと、切目線に沿って部材が切り起こされてしまい、この結果、その後の折り曲げ工程が阻害されてしまうことが考えられる。従って、エンボス加工の工程やその後の折り曲げ工程を考慮すると、凸部32a1つ当りの寸法が小さいことが好ましい。すなわち、図3に示すように凸領域32が複数の凸部32aを含むことが好ましい。
【0061】
また本実施の形態において、フラップ12fの輪郭12fAc,12fBcが、全域にわたって、フラップ12fが切り起こされた後の前面板12に沿って延びている例を示した。すなわち、フラップ12fの輪郭12fAc,12fBcと、フラップ12fが切り起こされた後の前面板12に残っている切目線12cA,12cBとが一致している例を示した。しかしながら、図6に示すように、フラップ12fの輪郭12fAc,12fBcと、フラップ12fが切り起こされた後の前面板12に残っている切目線12cA,12cBとが一致していなくてもよい。図6に示すような前面板12の切目線12cA,12cBは、フラップ12fに加えて、フラップ12fに隣接したその他の部分を前面板12から切り抜くことによって実現され得る。このようにフラップ12fの輪郭12fAc,12fBcと前面板12の輪郭とを部分的に不一致にすることにより、フラップ12fが前面板12に嵌まり込む可能性を低減することができる。なお、図6に示す形態においては、図2に示す形態に比べて、前面板12の一部分を余分に切り抜くことにより、補強板31がより多く外方に露出されることになる。このため、意匠性を考慮すると、図2に示すようにフラップ12fの輪郭12fAc,12fBcと前面板12の輪郭とが一致していることが好ましい。
【0062】
また本実施の形態において、前面板12の輪郭12fAc,12fBcが滑らかな曲線状の形状を有する例を示した。しかしながら、図7に示すように、前面板12の輪郭12fAc,12fBcは、直線的に延びる部分を有していてもよい。この場合、フラップ12fの隅部12fN,12fSは、フラップ12fのうち曲線的に延びる部分と直線的に延びる部分との間の境界に対応する部分として画定される。
【0063】
また本実施の形態および変形例において、フラップ12fが前面板12に嵌まり込むことを防ぐための凸領域32が、補強板31の外面に形成されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、フラップ12fの内面に、蓋部20が本体部10の開口を塞いでいるときに補強板31の外面と向かい合う凸領域(図示せず)が形成されていてもよい。本実施の形態および変形例の場合と同様に、フラップ12fの内面に形成されている凸領域も、フラップ12fの内面から容器1の内側に向かって突出した凸部を含んでいる。このため、フラップ12fが前面板12に嵌まり込むことを防ぐことができる。好ましくは、フラップ12fの内面に形成されている凸領域は、フラップ12fの内面のうちフラップ12fの隅部12fN,12fSに少なくとも形成されている。これによって、フラップ12fが前面板12に嵌まり込むことを効果的に防ぐことができる。
【0064】
なお上述の形態において、容器1に収容される巻回体が、ラップフィルム91fが巻かれたラップロール91rである例を示した。しかしながら、容器1に収容される巻回体の例がラップロール91rに限られることはない。例えば容器1は、アルミシートやクッキングシートからなる巻回体を収容するために用いられてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 容器
10 本体部
12 前面板
12f フラップ
20 蓋部
31 補強板
32 凸領域
33 押さえ板
100 巻回体入り容器
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7