特許第5963558号(P5963558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5963558事業継続リスク評価システム及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963558
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】事業継続リスク評価システム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20160721BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20160721BHJP
   G06Q 10/06 20120101ALI20160721BHJP
【FI】
   G06Q50/06
   H02J3/00 170
   G06Q10/06 326
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-137109(P2012-137109)
(22)【出願日】2012年6月18日
(65)【公開番号】特開2014-2537(P2014-2537A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503194934
【氏名又は名称】アビームコンサルティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128901
【弁理士】
【氏名又は名称】東 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】大野 晃
(72)【発明者】
【氏名】山本 英夫
(72)【発明者】
【氏名】祖式 洋介
【審査官】 田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−141334(JP,A)
【文献】 特開2005−234745(JP,A)
【文献】 特開2007−206990(JP,A)
【文献】 特開2004−274956(JP,A)
【文献】 特開2010−108306(JP,A)
【文献】 特開2010−020434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統からの電力確保が不十分となる系統電力不足の発生による事業者の事業継続リスクを評価する事業継続リスク評価システムであって、
前記系統電力不足により発生すると予測される操業時間の低下幅に関する操業時間低下幅関連値と、前記系統電力不足により発生すると予測される市場シェアの低下幅に関する市場シェア低下幅関連値との入力を受け付ける定量分析用入力手段と、
前記事業者又は前記事業者のステークホルダの属性で分類された複数の観点項目の夫々について、前記系統電力不足により発生すると予測される影響度に関する影響度関連値の入力を受け付ける定性分析用入力手段と、
前記定量分析用入力手段で受け付けた前記操業時間低下幅関連値と前記市場シェア低下幅関連値とに基づいて、前記系統電力不足により発生すると予測される損失額に関する損失額関連値を算出し出力する定量分析用出力手段と、
前記定性分析用入力手段で受け付けた前記複数の観点項目の夫々の影響度関連値を集計し、当該集計結果を出力する定性分析用出力手段とを備えた事業継続リスク評価システム。
【請求項2】
前記系統電力不足の発生要因としての、前記電力系統からの給電が突発的に途絶する系統電力途絶、前記電力系統からの給電が計画的に停止する計画停電、及び前記電力系統からの給電を要請に伴い減少させる節電要請のうちの少なくとも1つについて、各別に、前記定量分析用入力手段及び前記定量分析用出力手段を備えた請求項1に記載の事業継続リスク評価システム。
【請求項3】
前記操業時間低下幅関連値が、現状の操業規模に加えて、前記系統電力不足の解消後の復旧に必要と予測される時間である復旧必要時間、前記系統電力不足が発生すると予測される回数である系統電力不足発生回数、及び前記系統電力不足により低下すると予測される操業度の低下幅である操業度低下幅を含み、
前記市場シェア低下幅関連値が、現状の市場シェアに加えて、前記系統電力不足により発生すると予測される市場シェアの低下幅である市場シェア低下幅を含む請求項1又は2に記載の事業継続リスク評価システム。
【請求項4】
前記定量分析用出力手段が、自家発電設備の導入前後の夫々における前記損失額関連値を算出し、当該算出した夫々の前記損失額関連値を自家発電設備導入前後において比較可能な状態で出力する請求項1〜3の何れか1項に記載の事業継続リスク評価システム。
【請求項5】
前記定量分析用入力手段が、前記操業時間低下幅関連値と前記市場シェア低下幅関連値に加えて、自家発電設備の導入前後の夫々において前記系統電力不足の対策に必要なコストに関する対策コスト関連値の入力を受け付け、
前記定量分析用出力手段が、前記定量分析用入力手段で受け付けた前記対策コスト関連値の夫々を自家発電設備の導入前後において比較可能な状態で出力する請求項4に記載の事業継続リスク評価システム。
【請求項6】
前記定性分析用入力手段は、前記系統電力不足の発生時を含む所定期間内における複数の評価時点毎に、前記複数の観点項目の夫々について、前記系統電力不足により発生すると予測される影響度に関する影響度関連値の入力を受け付けて、
前記定性分析用出力手段は、前記定性分析用入力手段で受け付けた前記複数の観点項目の夫々の影響度関連値を前記評価時点毎に集計し、当該集計結果を出力する請求項1〜5の何れか1項に記載の事業継続リスク評価システム。
【請求項7】
前記系統電力不足の発生要因としての、前記電力系統からの給電が突発的に途絶する系統電力途絶、前記電力系統からの給電が計画的に停止する計画停電、及び前記電力系統からの給電を要請に伴い減少させる節電要請のうちの少なくとも1つについて、各別に、前記定性分析用入力手段及び前記定性分析用出力手段を備えた請求項6に記載の事業継続リスク評価システム。
【請求項8】
前記定性分析用入力手段が、前記複数の観点項目の夫々についての重要度の入力を受け付け、
前記定性分析用出力手段が、前記複数の観点項目の夫々の影響度関連値を集計するにあたり前記重要度で重み付けを行う請求項1〜7の何れか1項に記載の事業継続リスク評価システム。
【請求項9】
電力系統からの電力確保が不十分となる系統電力不足の発生による事業継続リスクを評価する事業継続リスク評価システムを構成するコンピュータで実行されて、当該コンピュータが請求項1〜8の何れか1項に記載の事業継続リスク評価システムの各手段として機能させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統からの電力確保が不十分となる系統電力不足の発生による事業継続リスクを評価する事業継続リスク評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然災害等により事業の継続に影響を与える問題が生じた場合に、事業を中断しない又は万一事業を中断したとしても迅速に再開することで損害を最小化するための事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定が重要視されており、このような事業継続計画の策定にあたり、事業継続のためのリスク(本願では「事業継続リスク」と呼ぶ。)を正確に評価する必要がある。
【0003】
特に、工場、病院、宿泊・レジャー施設、私立学校等のように、電力系統から確保した電力を利用して何らかの事業を行っている事業所では、自然災害等に起因して、電力系統からの給電が突発的に途絶する系統電力途絶(即ち突発的な停電)が発生して、電力系統からの電力確保が不十分となることが想定される。そして、このような系統電力途絶による事業継続リスクを評価するためのシステムが知られている(特に特許文献1を参照。)。
【0004】
かかる従来の事業継続リスク評価システムは、系統電力途絶に対する対策有りの場合と対策無しの場合との夫々について、系統電力途絶に起因した設備故障による損失額、製品不良による損失額、操業停止による損失額、及び復旧にかかる費用等のように、系統電力途絶により直接的に発生すると予測される損失額を算出し出力するように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−20434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の事業継続リスク評価システムでは、系統電力途絶により直接的に発生すると予測される損失額に関連する事業継続リスクについては考慮されていた。しかしながら、系統電力途絶により間接的に発生すると予測される損失額に関連する事業継続リスクや、上記系統電力途絶以外の電力系統からの電力確保が不十分となる系統電力不足の発生要因については考慮されていなかったため、系統電力不足による事業継続リスクを正確に評価し得るものとは言えなかった。
また、損失額などの定量的なものではなく、事業者やそのステークホルダに対する影響度に関する定性的な事業継続リスクについても評価するものは存在しなかった。
そして、このように系統電力不足による事業継続リスクを正確に評価できない場合には、自家発電設備の導入などのような事業継続リスクの最小化のための対策を実施することによる効果を正確に把握することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、電力系統からの電力確保が不十分となる系統電力不足の発生による事業継続リスクを評価する事業継続リスク評価システムにおいて、事業継続リスクをより数値化して正確に評価し、自家発電設備の導入などのような事業継続リスクの最小化のための対策を実施することによる効果を正確に把握することができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するための本発明に係る事業継続リスク評価システムは、
電力系統からの電力確保が不十分となる系統電力不足の発生による事業者の事業継続リスクを評価する事業継続リスク評価システムであって、
その第1特徴構成は、
前記系統電力不足により発生すると予測される操業時間の低下幅に関する操業時間低下幅関連値と、前記系統電力不足により発生すると予測される市場シェアの低下幅に関する市場シェア低下幅関連値との入力を受け付ける定量分析用入力手段と、
前記事業者又は前記事業者のステークホルダの属性で分類された複数の観点項目の夫々について、前記系統電力不足により発生すると予測される影響度に関する影響度関連値の入力を受け付ける定性分析用入力手段と、
前記定量分析用入力手段で受け付けた前記操業時間低下幅関連値と前記市場シェア低下幅関連値とに基づいて、前記系統電力不足により発生すると予測される損失額に関する損失額関連値を算出し出力する定量分析用出力手段と、
前記定性分析用入力手段で受け付けた前記複数の観点項目の夫々の影響度関連値を集計し、当該集計結果を出力する定性分析用出力手段とを備えた点にある。
【0009】
上記第1特徴構成の事業継続リスク評価システムによれば、上記定量分析用入力手段により、系統電力不足により直接的に発生すると予測される上記操業時間低下幅関連値の入力を受け付けるのに加えて、同系統電力不足により間接的に発生すると予測される上記市場シェア低下幅関連値の入力を受け付けることになる。そして、上記定量分析用出力手段により、操業時間の低下による損失額のように系統電力不足の発生により予測される直接的な損失額を上記操業時間低下幅関連値から算出することに加えて、市場シェア低下による損失額のように系統電力不足の発生により予測される間接的な損失額を上記市場シェア低下幅関連値から算出することができる。よって、利用者に対して、これら直接的な損失額と間接的な損失額とに関する上記損失額関連値を出力することができる。
従って、本発明により、このように出力された上記損失額関連値により系統電力不足による定量的な事業継続リスクを数値化して正確に評価し、自家発電設備の導入などのような事業継続リスクの最小化のための対策を実施することによる定量的な効果を正確に把握することができる事業継続リスク評価システムを実現することができる。
【0010】
本発明に係る事業継続リスク評価システムの第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記系統電力不足の発生要因としての、前記電力系統からの給電が突発的に途絶する系統電力途絶、前記電力系統からの給電が計画的に停止する計画停電、及び前記電力系統からの給電を要請に伴い減少させる節電要請のうちの少なくとも1つについて、各別に、前記定量分析用入力手段及び前記定量分析用出力手段を備えた点にある。
【0011】
上記第2特徴構成の事業継続リスク評価システムによれば、上記系統電力不足の発生要因として、上記系統電力途絶に加えて、それ以外の上記計画停電及び上記節電要請のうちの少なくとも1つについて、上述したような定量分析用入力手段及び定量分析用出力手段を備える。よって、上記系統電力途絶、上記計画停電、及び上記節電要請の夫々のケースにおける定量的な事業継続リスクを必要なケースについて各別に評価することができるので、自家発電設備の導入などのような事業継続リスクの最小化のための対策を実施することによる定量的な効果を、系統電力不足の発生要因のケース毎に正確に把握することができる。
【0012】
本発明に係る事業継続リスク評価システムの第3特徴構成は、上記第1乃至第2特徴構成の何れかに加えて、
前記操業時間低下幅関連値が、現状の操業規模に加えて、前記系統電力不足の解消後の復旧に必要と予測される時間である復旧必要時間、前記系統電力不足が発生すると予測される回数である系統電力不足発生回数、及び前記系統電力不足により低下すると予測される操業度の低下幅である操業度低下幅を含み、
前記市場シェア低下幅関連値が、現状の市場シェアに加えて、前記系統電力不足により発生すると予測される市場シェアの低下幅である市場シェア低下幅を含む点にある。
【0013】
上記第3特徴構成の事業継続リスク評価システムによれば、定量分析用入力手段により入力が受け付けられる操業時間低下幅関連値が、事業継続リスクの評価対象となる特定事業所において取り扱う製品や役務等の事業毎の現状の売上額などの操業規模に加えて、上記復旧必要時間、上記系統電力不足発生回数、及び上記操業度低下幅を含むことになる。よって、定量分析用出力手段によりこれら操業時間低下幅関連値に基づいて、系統電力不足に起因する操業低下や復旧により発生すると予測される逸失利益等の損失額をより正確に求めることができる。
更に、定量分析用入力手段により入力が受け付けられる市場シェア低下幅関連値が、特定事業所における事業毎の現状の市場シェアに加えて、系統電力不足により発生すると予測される市場シェア低下幅を含むことになる。よって、定量分析用出力手段により、これら市場シェア低下幅関連値に基づいて、系統電力不足に起因する市場シェア低下により受けると予測される逸失利益等の損失額をより正確に求めることができる。
結果、定量分析用出力手段により、その正確な損失額に関する損失額関連値を出力する形態で、定量的な事業継続リスクを一層正確に評価することができる。
【0014】
本発明に係る事業継続リスク評価システムの第4特徴構成は、上記第1乃至第3特徴構成の何れかに加えて、
前記定量分析用出力手段が、自家発電設備の導入前後の夫々における前記損失額関連値を算出し、当該算出した夫々の前記損失額関連値を自家発電設備導入前後において比較可能な状態で出力する点にある。
【0015】
上記第4特徴構成の事業継続リスク評価システムによれば、上記定量分析用出力手段が、上記自家発電設備導入前の損失額関連値を算出して出力することで、上述したように自家発電設備の導入前における系統電力不足により発生すると予測される定量的な事業継続リスクを一層正確に把握することができる。合わせて、上記定量分析用出力手段が、上記自家発電設備導入後の損失額関連値を算出して出力することで、自家発電設備導入前の損失額関連値との比較により、自家発電設備の導入による定量的な事業継続リスクの低減幅を同自家発電設備の導入による定量的な効果として一層正確に把握することができる。
【0016】
本発明に係る事業継続リスク評価システムの第5特徴構成は、上記第4特徴構成に加えて、
前記定量分析用入力手段が、前記操業時間低下幅関連値と前記市場シェア低下幅関連値に加えて、自家発電設備の導入前後の夫々において前記系統電力不足の対策に必要なコストに関する対策コスト関連値の入力を受け付け、
前記定量分析用出力手段が、前記定量分析用入力手段で受け付けた前記対策コスト関連値の夫々を自家発電設備の導入前後において比較可能な状態で出力する点にある。
【0017】
上記第5特徴構成の事業継続リスク評価システムによれば、系統電力不足に起因する操業停止、操業度低下、市場シェア低下により発生すると予測される損失額に関する損害関連値だけでなく、自家発電設備の導入前後の夫々において系統電力不足の対策に必要なコストに関する対策コスト関連値の夫々が比較可能な状態で出力されることになる。よって、かかる自家発電設備の導入による定量的な効果として対策コストの低下幅をも正確に把握することができる。
【0018】
本発明に係る事業継続リスク評価システムの第6特徴構成は、上記第1乃至第5特徴構成の何れかに加えて、
前記定性分析用入力手段は、前記系統電力不足の発生時を含む所定期間内における複数の評価時点毎に、前記複数の観点項目の夫々について、前記系統電力不足により発生すると予測される影響度に関する影響度関連値の入力を受け付けて、
前記定性分析用出力手段は、前記定性分析用入力手段で受け付けた前記複数の観点項目の夫々の影響度関連値を前記評価時点毎に集計し、当該集計結果を出力する点にある。
【0019】
上記第6特徴構成の事業継続リスク評価システムによれば、これまで説明してきたように定量的な事業継続リスクを数値化して正確に評価することに加えて、定性的な事業継続リスクをも数値化して正確に評価し、自家発電設備の導入などのような事業継続リスクの最小化のための対策を実施することによる定性的な効果をより正確に把握することができる。
即ち、上記定性分析用入力手段により、例えば事業者又はそのステークホルダの属性等で分類された複数の観点項目の夫々について、予測される上記影響度関連値の入力を受け付けるにあたり、系統電力不足が発生時などの一時点のみならず、その発生時を含む所定期間内における複数の評価時点毎に当該影響度関連値の入力を受け付けることになる。よって、定性分析用出力手段により、それら影響度関連値の夫々を評価時点毎に集計して、系統電力不足の発生前から発生後に至る所定期間に亘っての影響度の推移を観点項目毎に正確に把握することができ、定性的な事業継続リスクを複数の時間及び観点に細分化して正確に把握することができる。
【0020】
本発明に係る事業継続リスク評価システムの第7特徴構成は、上記第6特徴構成に加えて、
前記系統電力不足の発生要因としての、前記電力系統からの給電が突発的に途絶する系統電力途絶、前記電力系統からの給電が計画的に停止する計画停電、及び前記電力系統からの給電を要請に伴い減少させる節電要請のうちの少なくとも1つについて、各別に、前記定性分析用入力手段及び前記定性分析用出力手段を備えた点にある。
【0021】
上記第7特徴構成の事業継続リスク評価システムによれば、上記系統電力不足の発生要因として、上記系統電力途絶に加えて、それ以外の上記計画停電及び上記節電要請のうちの少なくとも1つについて、上述したような定性分析用入力手段及び定性分析用出力手段を備える。よって、上記系統電力途絶、上記計画停電、及び上記節電要請の夫々のケースにおける定性的な事業継続リスクを必要なケースについて各別に評価することができるので、自家発電設備の導入などのような事業継続リスクの最小化のための対策を実施することによる定性的な効果を、系統電力不足の発生要因のケース毎に正確に把握することができる。
【0022】
本発明に係る事業継続リスク評価システムの第8特徴構成は、上記第乃至第7特徴構成の何れかに加えて、
前記定性分析用入力手段が、前記複数の観点項目の夫々についての重要度の入力を受け付け、
前記定性分析用出力手段が、前記複数の観点項目の夫々の影響度関連値を集計するにあたり前記重要度で重み付けを行う点にある。
【0023】
上記第8特徴構成の事業継続リスク評価システムによれば、定性分析用出力手段により、複数の観点項目の夫々の影響度関連値を前記評価時点毎に集計するにあたり、定性分析用入力手段で入力された観点項目の夫々についての重要度で重み付けを行うことから、重要度が高い観点項目での影響度を重視した定性的な事業継続リスクの評価を行うことができる。
【0024】
この目的を達成するための本発明に係るコンピュータプログラムの特徴構成は、
電力系統からの電力確保が不十分となる系統電力不足の発生による事業継続リスクを評価する事業継続リスク評価システムを構成するコンピュータで実行されて、当該コンピュータが上記第1乃至第8特徴構成を有する事業継続リスク評価システムの各手段として機能させる点にある。
【0025】
上記特徴構成のコンピュータプログラムによれば、当該コンピュータプログラムを実行するコンピュータを本発明に係る事業継続リスク評価システムの各手段として機能させることができるので、これまで説明してきた本発明に係る事業継続リスク評価システムと同様の作用効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係る事業継続リスク評価システムの概略構成図
図2】系統電力途絶用の定量分析用入力シートの例を示す図
図3】系統電力途絶用の定量分析用出力シートの例を示す図
図4】計画停電用の定量分析用入力シートの例を示す図
図5】計画停電用の定量分析用出力シートの例を示す図
図6】節電要請用の定量分析用入力シートの例を示す図
図7】節電要請用の定量分析用出力シートの例を示す図
図8】定性分析における評価基準シートの例を示す図
図9】系統電力途絶用の定性分析用入力シートの例を示す図
図10】系統電力途絶用の定性分析用出力シートの例を示す図
図11】計画停電用の定性分析用入力シートの例を示す図
図12】計画停電用の定性分析用出力シートの例を示す図
図13】節電要請用の定性分析用入力シートの例を示す図
図14】節電要請用の定性分析用出力シートの例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る事業継続リスク評価システム(以下「評価システム」と略称する。)及びコンピュータプログラムの実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示す評価システム1は、事業継続リスクの評価対象となる特定事業所において電力系統からの電力確保が不十分となる系統電力不足が発生することを想定した事業継続リスクを評価するシステムとして構成されている。具体的には、その特定事業所においてコージェネレーションシステム、非常用発電機、蓄電池などの自家発電設備の導入前後における事業継続リスクを数値化して正確に評価することで、当該自家発電設備の導入による効果を正確に把握するために利用される。
【0028】
評価システム1は、コンピュータシステムのコンピュータ上で、コンピュータシステムのハードウェア資源を利用しながら所定のコンピュータプログラムを実行することにより実現される。即ち、当該コンピュータは、所定のコンピュータプログラムを実行することで、系統電力不足による損失額など定量的な事業継続リスクを評価するための定量分析用入力手段11及び定量分析用出力手段12、並びに、系統電力不足による事業者又はそのステークホルダに対する影響度など定性的な事業継続リスクを評価するため定性分析用入力手段13及び定性分析用出力手段14として機能することになる。また、この評価システム1を構成するコンピュータは、メモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体からなる記憶手段2や、データの入力を行うキーボード15、データの出力を行うディスプレイ16等を備える。
以下、定量的な事業継続リスクを評価するための定量的評価構成と、定性的な事業継続リスクを評価するための定性的評価構成との夫々について、順に説明する。
【0029】
〔定量的評価構成〕
先ず、系統電力不足による損失額など定量的な事業継続リスクを評価するため構成について説明する。
評価システム1は、電力系統からの電力確保が不十分となる系統電力不足の発生要因としての、電力系統からの給電が突発的に途絶する系統電力途絶、電力系統からの給電が計画的に停止する計画停電、及び電力系統からの給電を要請に伴い減少させる節電要請の夫々の要因について、定量的な事業継続リスクを各別に評価する。そのために、それら系統電力途絶、計画停電、及び節電要請の夫々について各別に定量分析用入力手段11及び定量分析用出力手段12が備えられている。
【0030】
上記定量分析用入力手段11は、図2図4、及び図6に示すようにディスプレイ16に表示される定量分析用入力シート上の各項目に対する入力値をキーボード15から入力させる形態で、系統電力不足により発生すると予測される操業時間の低下幅に関する操業時間低下幅関連値と、系統電力不足により発生すると予測される市場シェアの低下幅に関する市場シェア低下幅関連値との入力を受け付ける。
そして、上記定量分析用出力手段12は、これら定量分析用入力手段11で受け付けた操業時間低下幅関連値と市場シェア低下幅関連値とに基づいて、系統電力不足により発生すると予測される損失額に関する損失額関連値を算出し、このように算出した損失額関連値を、図3図5、及び図7に示すようにディスプレイ16に表示される定量分析用出力シート上に表やグラフなどの状態で表示する形態で出力する。
【0031】
これら定量分析用入力シート及び定量分析用出力シートは、上記系統電力途絶、上記計画停電、及び上記節電要請の夫々の要因について各別に設けられている。具体的には、図2及び図3には「A:系統電力途絶」(図に示すシート右上の表示)の要因に対応する定量分析用入力シート及び定量分析用出力シートが示され、図3及び図4には「B:計画停電」(図に示すシート右上の表示)の要因に対応する定量分析用入力シート及び定量分析用出力シートが示され、図5及び図6には「C:節電要請」(図に示すシート右上の表示)の要因に対応する定量分析用入力シート及び定量分析用出力シートが示されており、夫々の要因に対応する各シートの内容について以下に説明する。
【0032】
(系統電力途絶の場合)
系統電力途絶の要因に対応する定量分析用入力手段11は、図2に示すような定量分析用入力シートをディスプレイ16に表示する形態で、上記操業時間低下幅関連値と上記市場シェア低下幅関連値との入力を受け付け、更に、後述する対策コスト関連値の入力を受け付ける。
具体的に、この定量分析用入力シートでは、上記操業時間低下幅関連値として、特定事業所において取り扱う製品や役務等の事業毎の現状の売上額などの操業規模として昨年度の売上実績に関する「売上額(A2a)(百万円/年)」及び「操業日数(A2b)(日/年)」に加え、系統電力途絶の解消後の復旧に必要と予測される時間に関する「復旧必要時間(A1a)(日)」を入力するための入力値欄が設けられている。
【0033】
また、定量分析用入力シートでは、上記市場シェア低下幅関連値として、特定事業所で実施されている主要事業毎の現状の「市場シェア(A31b)(%)」、「市場シェア(A32b)(%)」、及び「市場シェア(A33b)(%)」を入力するための入力値欄が設けられている。それに加え、系統電力途絶により発生すると予測される市場シェアの低下幅を認識可能なように、主要製品毎の「売上額(A31a)(百万円/年)」、「売上額(A32a)(百万円/年)」、及び「売上額(A33a)(百万円/年)」と、それら事業に対して系統電力途絶のために発生すると予測される「市場シェア低下幅(A1b)(%)」を入力するための入力値欄が設けられている。
【0034】
更に、定量分析用入力シートでは、上記操業時間低下幅関連値と上記市場シェア低下幅関連値に加えて、自家発電設備の導入前後の夫々において系統電力途絶の対策に必要なコストに関する対策コスト関連値をするための入力値欄が設けられている。
この対策コスト関連値としては、主に自家発電設備の導入前において発生するものと、主に自家発電設備の導入後において発生するものとがある。
そして、自家発電設備の導入前において発生する上記対策コスト関連値としては、系統電力途絶の発生後の事業復旧に必要となる追加人件費に関する「追加人件費(A4a)(百万円/年)」を入力するための入力値欄が設けられ、系統電力途絶に起因して発生する「廃棄物や在庫等の処分費(A4b)(百万円/年)」を入力するための入力値欄が設けられて、更には、自家発電設備の導入により不用となる熱源機などの「現在の施設のランニングコスト(A4c)(百万円/年)」を入力するための入力値欄が設けられている。
一方、自家発電設備の導入後において発生する上記対策コスト関連値としては、自家発電設備の減価償却費を認識するための「自家発電設備の導入費用(A5a)(百万円)」及び「自家発電設備の償却年数(A5b)(年)」、自家発電設備のランニングコストである「自家発電設備の維持管理費(A5c)(百万円/年)」を入力するための入力値欄が設けられている。
【0035】
そして、上記のように定量分析用入力手段11により、上記操業時間低下幅関連値と上記市場シェア低下幅関連値と対策コスト関連値との入力を受け付けることで、系統電力途絶の要因に対応する定量分析用出力手段12は、その入力値により系統電力途絶により発生すると予測される損失額に関する損失額関連値を算出し、その結果を、図3に示すような定量分析用出力シートをディスプレイ16に表示する形態で出力する。
更に、定量分析用出力手段12は、自家発電設備の導入前での上記損失額関連値を算出して定量分析用出力シートの「自家発電設備導入前」の欄に表示すると共に、同自家発電設備の導入後での上記損失額関連値を算出して定量分析用出力シートの「自家発電設備導入後」の欄に表示する形態で、当該算出した自家発電設備導入前後の夫々における損害額関連値を比較可能な状態で出力する。
具体的に、この定量分析用出力シートでは、損失額関連値として、系統電力途絶に起因した事業中断による予測損失額に相当する「事業中断による損失」、系統電力途絶に起因した市場シェア低下による予測損失額である「シェア低下による損失」、系統電力途絶の発生後の事業復旧に必要となる追加人件費に相当する「復旧コスト」、系統電力途絶に起因して発生する廃棄物や在庫等の処分費に相当する「廃棄コスト」、自家発電設備の減価償却費に相当する「追加対策コスト」、自家発電設備の導入により不用となる熱源機の維持管理費又は自家発電設備の維持管理費に対応する「継続対策コスト」との夫々の金額について、自家発電設備の導入前後の夫々において比較可能な状態で、表及びグラフにて表示されている。
また、図3の「1.計算の考え方」には、夫々の損失額関連値の算出式が示されているが、算出式の各項の値を定量分析用入力シートの夫々の入力値に付した記号にて表示することで、その詳細な説明は割愛する。
また、かかる定量分析用出力シートは、上記損害額関連値そのもの以外に、それに対する考察などのコメントを追記可能に構成することができる。
【0036】
(計画停電の場合)
計画停電の要因に対応する定量分析用入力手段11は、図4に示すような定量分析用入力シートをディスプレイ16に表示する形態で、上記操業時間低下幅関連値と上記市場シェア低下幅関連値との入力を受け付け、更に、後述する対策コスト関連値の入力を受け付ける。
具体的に、この定量分析用入力シートでは、上記操業時間低下幅関連値として、特定事業所において取り扱う製品や役務等の事業毎の現状の売上額などの操業規模として昨年度の売上実績に関する「売上額(B2a)(百万円/年)」及び「操業日数(B2b)(日)」に加え、計画停電前後の準備及び復旧に必要と予測される時間に関する「復旧必要時間(B1a)(日)」、計画停電により低下すると予測される操業度の低下幅である操業度低下幅に関する「操業度低下幅(B1b)(%)」、及び計画停電が発生すると予測される回数である系統電力不足発生回数に関する「計画停電発生回数(B1c)(回)」、を入力するための入力値欄が設けられている。
【0037】
また、定量分析用入力シートでは、上記市場シェア低下幅関連値として、上述した系統電力途絶の場合と同様に、「市場シェア(B31b)(%)」、「市場シェア(B32b)(%)」、「市場シェア(B33b)(%)」、「売上額(B31a)(百万円/年)」、「売上額(B32a)(百万円/年)」、「売上額(B33a)(百万円/年)」、及び「市場シェア低下幅(B1d)(%)」を入力するための入力値欄が設けられている。
【0038】
更に、定量分析用入力シートでは、上記操業時間低下幅関連値と上記市場シェア低下幅関連値に加えて、自家発電設備の導入前後の夫々において計画停電の対策に必要なコストに関する対策コスト関連値をするための入力値欄が設けられている。
この対策コスト関連値としては、主に自家発電設備の導入前において発生するものと、主に自家発電設備の導入後において発生するものとがある。
そして、自家発電設備の導入前において発生する上記対策コスト関連値としては、計画停電に備えて系統電力のピークを計画停電の対象時間帯以外にシフトさせるために必要となる追加人件費に関する「追加人件費(B4a)(百万円/年)」を入力するための入力値欄が設けられ、計画停電に起因して発生する「廃棄物や在庫等の処分費(B4b)(百万円/年)」を入力するための入力値欄が設けられており、更には、自家発電設備の導入により不用となる熱源機などの「現在の施設のランニングコスト(B4c)(百万円/年)」を入力するための入力値欄が設けられている。
一方、自家発電設備の導入後において発生する上記対策コスト関連値としては、上記系統電力途絶の場合と同様に、「自家発電設備の導入費用(B5a)(百万円)」及び「自家発電設備の償却年数(B5b)(年)」、及び「自家発電設備の維持管理費(B5c)(百万円/年)」を入力するための入力値欄が設けられている。
【0039】
そして、上記のように定量分析用入力手段11により、上記操業時間低下幅関連値と上記市場シェア低下幅関連値と対策コスト関連値との入力を受け付けることで、計画停電の要因に対応する定量分析用出力手段12は、その入力値により計画停電により発生すると予測される損失額に関する損失額関連値を算出し、その結果を、図5に示すような定量分析用出力シートをディスプレイ16に表示する形態で出力する。
更に、定量分析用出力手段12は、自家発電設備の導入前での上記損失額関連値を算出して定量分析用出力シートの「自家発電設備導入前」の欄に表示すると共に、同自家発電設備の導入後での上記損失額関連値を算出して定量分析用出力シートの「自家発電設備導入後」の欄に表示する形態で、当該算出した自家発電設備導入前後の夫々における損害額関連値を比較可能な状態で出力する。
具体的に、この定量分析用出力シートでは、損失額関連値として、計画停電に起因した事業中断による予測損失額に相当する「事業中断による損失」、計画停電に起因した市場シェア低下による予測損失額である「シェア低下による損失」、計画停電に備えて系統電力のピークを計画停電の対象時間帯以外にシフトさせるために必要となる追加人件費に相当する「ピークシフトコスト」、計画停電に起因して発生する廃棄物や在庫等の処分費に相当する「廃棄コスト」、自家発電設備の減価償却費に相当する「追加対策コスト」、自家発電設備の導入により不用となる熱源機の維持管理費又は自家発電設備の維持管理費に対応する「継続対策コスト」との夫々の金額について、自家発電設備の導入前後の夫々において比較可能な状態で、表及びグラフにて表示されている。
また、図5の「1.計算の考え方」には、夫々の損失額関連値の算出式が示されているが、算出式の各項の値を定量分析用入力シートの夫々の入力値に付した記号にて表示することで、その詳細な説明は割愛する。
【0040】
(節電要請の場合)
節電要請の要因に対応する定量分析用入力手段11は、図6に示すような定量分析用入力シートをディスプレイ16に表示する形態で、上記操業時間低下幅関連値と上記市場シェア低下幅関連値との入力を受け付け、更に、後述する対策コスト関連値の入力を受け付ける。
具体的に、この定量分析用入力シートでは、上記操業時間低下幅関連値として、特定事業所において取り扱う製品や役務等の事業毎の現状の売上額などの操業規模として昨年度の売上実績に関する「売上額(C2a)(百万円/年)」及び「操業日数(C2b)(日/年)」に加え、節電要請により低下すると予測される操業度の低下幅である操業度低下幅に関する「操業度低下幅(C1a)(%)」を入力するための入力値欄が設けられている。
【0041】
また、定量分析用入力シートでは、上記市場シェア低下幅関連値として、上述した系統電力途絶の場合と同様に、「市場シェア(C31b)(%)」、「市場シェア(C32b)(%)」、「市場シェア(C33b)(%)」、「売上額(C31a)(百万円/年)」、「売上額(C32a)(百万円/年)」、「売上額(C33a)(百万円/年)」、及び「市場シェア低下幅(C1d)(%)」を入力するための入力値欄が設けられている。
【0042】
更に、定量分析用入力シートでは、上記操業時間低下幅関連値と上記市場シェア低下幅関連値に加えて、自家発電設備の導入前後の夫々において節電要請の対策に必要なコストに関する対策コスト関連値をするための入力値欄が設けられている。
この対策コスト関連値としては、主に自家発電設備の導入前において発生するものと、主に自家発電設備の導入後において発生するものとがある。
そして、自家発電設備の導入前において発生する上記対策コスト関連値としては、節電要請に備えて系統電力のピークを節電要請の対象時間帯以外にシフトさせるために必要となる追加人件費に関する「追加人件費(C4a)(百万円/年)」を入力するための入力値欄が設けられており、更には、自家発電設備の導入により不用となる熱源機などの「現在の施設のランニングコスト(C4b)(百万円/年)」を入力するための入力値欄が設けられている。
一方、自家発電設備の導入後において発生する上記対策コスト関連値としては、上記系統電力途絶の場合と同様に、「自家発電設備の導入費用(C5a)(百万円)」及び「自家発電設備の償却年数(C5b)(年)」、及び「自家発電設備の維持管理費(C5c)(百万円/年)」を入力するための入力値欄が設けられている。
【0043】
そして、上記のように定量分析用入力手段11により、上記操業時間低下幅関連値と上記市場シェア低下幅関連値と対策コスト関連値との入力を受け付けることで、節電要請の要因に対応する定量分析用出力手段12は、その入力値により節電要請により発生すると予測される損失額に関する損失額関連値を算出し、その結果を、図7に示すような定量分析用出力シートをディスプレイ16に表示する形態で出力する。
更に、定量分析用出力手段12は、自家発電設備の導入前での上記損失額関連値を算出して定量分析用出力シートの「自家発電設備導入前」の欄に表示すると共に、同自家発電設備の導入後での上記損失額関連値を算出して定量分析用出力シートの「自家発電設備導入後」の欄に表示する形態で、当該算出した自家発電設備導入前後の夫々における損害額関連値を比較可能な状態で出力する。
具体的に、この定量分析用出力シートでは、損失額関連値として、節電要請に起因した事業抑制による予測損失額に相当する「事業抑制による損失」、節電要請に起因した市場シェア低下による予測損失額である「シェア低下による損失」、節電要請に備えて系統電力のピークを節電要請の対象時間帯以外にシフトさせるために必要となる追加人件費に相当する「ピークシフトコスト」、自家発電設備の減価償却費に相当する「追加対策コスト」、自家発電設備の導入により不用となる熱源機の維持管理費又は自家発電設備の維持管理費に対応する「継続対策コスト」との夫々の金額について、自家発電設備の導入前後の夫々において比較可能な状態で、表及びグラフにて表示されている。
また、図7の「1.計算の考え方」には、夫々の損失額関連値の算出式が示されているが、算出式の各項の値を定量分析用入力シートの夫々の入力値に付した記号にて表示することで、その詳細な説明は割愛する。
【0044】
〔定性的評価構成〕
次に、系統電力不足による事業者又はそのステークホルダに対する影響度など定性的な事業継続リスクを評価するための構成について説明する。
評価システム1は、電力系統からの電力確保が不十分となる系統電力不足の発生要因としての、電力系統からの給電が突発的に途絶する系統電力途絶、電力系統からの給電が計画的に停止する計画停電、及び電力系統からの給電を要請に伴い減少させる節電要請の夫々の要因について、定性的な事業継続リスクを各別に評価する。そのために、それら系統電力途絶、計画停電、及び節電要請の夫々について各別に定性分析用入力手段13及び定性分析用出力手段14が備えられている。
【0045】
更に、この評価システム1は、工場、病院、宿泊・レジャー施設、私立学校等のような特定事業者の属性毎に、上記定性分析用入力手段13及び定性分析用出力手段14を各別に備えて、当該属性毎の定性的な事業継続リスクを評価するように構成されており、本実施形態では、特定事業者が病院に属する場合の定性的評価構成について説明する。
【0046】
上記定性分析用入力手段13は、図9図11、及び図13に示すようにディスプレイ16に表示される定性分析用入力シート上の各項目に対する入力値をキーボード15から入力させる形態で、系統電力不足の発生時を含む所定期間内における複数の評価時点毎に、事業者又はそのステークホルダの属性で分類された複数の観点項目の夫々について、系統電力不足により発生すると予測される影響度に関する影響度関連値の入力を受け付ける。
そして、上記定性分析用出力手段14は、これら定性分析用入力手段13で受け付けた複数の観点項目の夫々の影響度関連値を上記評価時点毎に集計し、当該集計結果を、図10図12、及び図14に示すようにディスプレイ16に表示される定性分析用出力シート上に表やグラフなどの状態で表示する形態で出力する。
【0047】
これら定性分析用入力シート及び定性分析用出力シートは、上記系統電力途絶、上記計画停電、及び上記節電要請の夫々の要因について各別に設けられている。具体的には、図9及び図10には「A:系統電力途絶」(図に示すシート右上の表示)の要因に対応する定性分析用入力シート及び定性分析用出力シートが示され、図11及び図12には「B:計画停電」(図に示すシート右上の表示)の要因に対応する定性分析用入力シート及び定性分析用出力シートが示され、図13及び図14には「C:節電要請」(図に示すシート右上の表示)の要因に対応する定性分析用入力シート及び定性分析用出力シートが示されており、夫々の要因に対応する各シートの内容について以下に説明する。
【0048】
(系統電力途絶の場合)
系統電力途絶の要因に対応する定性分析用入力手段13は、図9に示すような定性分析用入力シートをディスプレイ16に表示する形態で、上記複数の観点項目の夫々の影響度関連値の入力を受け付け、更に、後述する当該複数の観点項目の夫々についての重要度の入力を受け付ける。
具体的に、この定性分析用入力シートでは、事業者またはそのステークホルダの属性等で分類された複数の観点項目として、「顧客(患者)へ及ぼす影響」、「取引先(仕入先)へ及ぼす影響」、「社会へ及ぼす影響」、「投資家・株主へ及ぼす影響」、「職員へ及ぼす影響」、「サプライチェーンから受ける影響」、「企業経営への影響」の観点項目を備えており、更に、「企業経営への影響」の観点項目を、業務・サービスの局面毎に、「手術」、「入院患者の治療」、「外来患者等の受入」に細分化して備えている。
【0049】
更に、定性分析用入力シートでは、系統電力途絶による系統電力不足の発生時を含む所定期間を、系統電力途絶発生時から復旧するまでの1日を含む約6ヶ月の期間として設定しており、その所定期間における複数の評価時点を、系統途絶発生時からの時系列で「1時間」、「3時間」、「6時間」、「1日」、「3日」、「1週間」、「1ヶ月」、「6ヶ月」に設定している。
尚、系統電力途絶による系統電力不足を対象とする場合には、上記系統電力途絶の発生時点を「途絶」として任意に指定することができ、また、上記系統電力途絶の終了時点を「復旧」として任意に指定することができる。
【0050】
即ち、定性分析用入力シートでは、上記複数の観点項目の夫々について、上記複数の評価時点の夫々における影響度関連値を入力するための入力欄(図9において一観点一評価時点に対応する領域の左側の枡部)が設けられており、この入力欄には、影響度について5点満点で採点した得点が影響度関連値として入力される。尚、この影響度の採点については、図8に示すように、別途ディスプレイ16に表示される評価基準シートを参照して行うことができる。かかる評価基準シートでは、例えば、上記複数の観点項目毎に評価基準が設けられており、具体的には、各観点項目毎に、得点を5点、3点、1点、0点とするときの基準について記述されている。尚、図9の評価基準シートでは、一部その記述を省略している。
更に、定性分析用入力シートでは、上記複数の観点項目の夫々については、その項目の重要性に応じて重要度を入力するための入力欄が設けられており、上記入力された影響度関連値に対して上記入力された重要度が乗算されることで重み付けされる。
【0051】
そして、上記のように定性分析用入力手段13により、複数の観点項目の夫々の影響度関連値及び重要度の入力を受け付けることで、系統電力途絶の要因に対応する定性分析用出力手段14は、その受け付けた複数の観点項目の夫々の影響度関連値を上記重要度で重み付けした上で評価時点毎に集計し、その集計結果を、図10に示すような定性分析用出力シートをディスプレイ16に表示する形態で出力する。
更に、定性分析用出力手段14は、自家発電設備の導入前での上記集計結果を定性分析用出力シートの「自家発電設備導入前」の欄に評価時点毎に表示すると共に、同自家発電設備の導入後での上記集計結果を定性分析用出力シートの「自家発電設備導入後」の欄に評価時点毎に表示する形態で、当該算出した自家発電設備導入前後の夫々における定性的な事業継続リスクを比較可能な状態で出力する。
具体的に、この定性分析用出力シートでは、「事業継続への影響度の推移」として、上記複数の観点項目の全ての影響度関連値を評価時点毎に集計した結果を、表及びグラフの形態で表示することで、自家発電設備の導入による影響度の抑制に関する効果について、正確に把握し得るものとなっている。
更に、「企業経営への影響度の推移」として、上記複数の観点項目のうち、「企業経営への影響」の各局面で入力された影響度関連値を評価時点毎に集計した結果を、表及びグラフの形態で表示することで、自家発電設備の導入による復旧時間の短縮に関する効果について、正確に把握し得るものとなっている。
また、かかる定性分析用出力シートは、上記影響度関連値の集計結果以外に、それに対する考察などのコメントを追記可能に構成することができる。
【0052】
(計画停電の場合)
計画停電の要因に対応する定性分析用入力手段13は、図11に示すような定性分析用入力シートをディスプレイ16に表示する形態で、上記系統電力途絶の場合と同様の複数の観点項目の夫々の影響度関連値の入力を受け付け、更に、後述する当該複数の観点項目の夫々についての重要度の入力を受け付ける。
更に、定性分析用入力シートでは、計画停電による系統電力不足の発生時を含む所定期間を、計画停電が開始してから終了するまでの3時間を含む約5日間の期間として設定しており、その所定期間における複数の評価時点を、計画停電発生時を基準にして、「1日前」、「3時間前」、「1時間前」、「1時間後」、「3時間後」、「6時間後」、「1日後」、「3日後」に設定している。
尚、計画停電による系統電力不足を対象とする場合には、上記計画停電の開始時点を「停電開始」として任意に指定することができ、また、上記計画停電の終了時点を「停電終了」として任意に指定することができる。
【0053】
そして、定性分析用入力シートでは、上記系統電力途絶の場合と同様に、上記複数の観点項目の夫々について、上記複数の評価時点の夫々における影響度関連値を入力するための入力欄が設けられており、更に、上記複数の観点項目の夫々について重要度を入力するための入力欄が設けられている。
そして、上記のように定性分析用入力手段13により、複数の観点項目の夫々の影響度関連値及び重要度の入力を受け付けることで、計画停電の要因に対応する定性分析用出力手段14は、上記系統電力途絶の場合と同様に、その受け付けた複数の観点項目の夫々の影響度関連値を上記評価時点毎に集計した集計結果を、図12に示すような定性分析用出力シートをディスプレイ16に表示する形態で出力する。
【0054】
(節電要請の場合)
節電要請の要因に対応する定性分析用入力手段13は、図13に示すような定性分析用入力シートをディスプレイ16に表示する形態で、上記系統電力途絶の場合と同様の複数の観点項目の夫々の影響度関連値の入力を受け付け、更に、後述する当該複数の観点項目の夫々についての重要度の入力を受け付ける。
更に、定性分析用入力シートでは、節電要請による系統電力不足の発生時を含む所定期間を、節電要請を受けて実際に節電を行う7月上旬から9月下旬までの期間を含む期間として設定しており、その所定期間における複数の評価時点を、「6月下旬」、「7月上旬」、「7月下旬」、「8月上旬」、「8月下旬」、「9月上旬」、「9月下旬」、「10月上旬」に設定している。
尚、節電要請による系統電力不足を対象とする場合には、上記節電要請を受けて実際の節電を行う期間の開始時点を「節電開始」として任意に指定することができ、また、同期間の終了時点を「節電終了」として任意に指定することができる。
【0055】
そして、定性分析用入力シートでは、上記系統電力途絶の場合と同様に、上記複数の観点項目の夫々について、上記複数の評価時点の夫々における影響度関連値を入力するための入力欄が設けられており、更に、上記複数の観点項目の夫々について重要度を入力するための入力欄が設けられている。
そして、上記のように定性分析用入力手段13により、複数の観点項目の夫々の影響度関連値及び重要度の入力を受け付けることで、節電要請の要因に対応する定性分析用出力手段14は、上記系統電力途絶の場合と同様に、その受け付けた複数の観点項目の夫々の影響度関連値を上記評価時点毎に集計した集計結果を、図14に示すような定性分析用出力シートをディスプレイ16に表示する形態で出力する。
【0056】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記実施形態では、系統電力不足による損失額など定量的な事業継続リスクを評価するため定量分析用入力手段11及び定量分析用出力手段12に加えて、系統電力不足による事業者又はそのステークホルダに対する影響度など定性的な事業継続リスクを評価するための定性分析用入力手段13及び定性分析用出力手段14を設けたが、本発明において、これら定性分析用入力手段13及び定性分析用出力手段14については省略しても構わない。
【0057】
(2)上記実施形態では、系統電力不足の発生要因としての系統電力途絶、計画停電、及び節電要請の夫々の要因について、事業継続リスクを各別に評価するように構成したが、例えば、老朽化した自家発電設備の故障などの別の系統電力不足の発生要因について評価するように構成しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、電力系統からの電力確保が不十分となる系統電力不足の発生による事業継続リスクを評価する事業継続リスク評価システム及びコンピュータプログラムとして好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 :評価システム
2 :記憶手段
11 :定量分析用入力手段
12 :定量分析用出力手段
13 :定性分析用入力手段
14 :定性分析用出力手段
15 :キーボード
16 :ディスプレイ
図1
図2
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