(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963586
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ビトリファイドボンド砥石
(51)【国際特許分類】
B24D 3/14 20060101AFI20160721BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20160721BHJP
B24D 3/02 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
B24D3/14
B24D3/00 320B
B24D3/02 310B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-157172(P2012-157172)
(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公開番号】特開2014-18880(P2014-18880A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】591043721
【氏名又は名称】豊田バンモップス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】竹原 寛
(72)【発明者】
【氏名】今池 浩史
【審査官】
大山 健
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−228578(JP,A)
【文献】
特開2009−083036(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0033766(US,A1)
【文献】
米国特許第4157897(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00−3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立方晶窒化ホウ素粒またはダイヤモンド粒からなる超砥粒と骨材とが、ビトリファイドボンド中に含有されたビトリファイドボンド砥石において、
前記骨材は、多孔質セラミックスと、該多孔質セラミックスの孔を塞ぐ物質とからなり、
該物質は、前記多孔質セラミックスより脆く、かつ前記ビトリファイドボンドの焼成温度によって消失しない物性を有することを特徴とするビトリファイドボンド砥石。
【請求項2】
請求項1において、前記物質を、前記多孔質セラミックスの孔内に充填することにより、前記多孔質セラミックスの孔を塞ぐようにしたビトリファイドボンド砥石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石中に砥粒よりも強度の低い骨材を混入することにより、研削抵抗を低減できるようにしたビトリファイドボンド砥石に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研削砥石において、研削時の研削抵抗を減少させるために、結合剤中に砥粒よりも強度の低い骨材を混入することにより、砥粒間隔を大きくした(砥粒の集中度を低下させた)ものが知られている。骨材としては、例えば、特許文献1に記載されているように、破砕されやすく、被研削材と擦り合わない多孔質セラミックスが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−83036公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のものにおいては、砥粒と骨材とを結合する結合剤の種類によっては、結合剤の焼成時に、融解した結合剤が多孔質セラミックス孔内に浸入することがある。このものにおいては、多孔質セラミックス孔内に浸入した結合剤が冷却によって硬化するため、研削時に多孔質セラミックスが破砕し難くなって被研削材との擦りが発生し、研削焼けを生じたり、研削抵抗を低減するうえでの妨げとなる問題がある。
【0005】
本発明は、上述した従来の問題を解消するためになされたもので、多孔質セラミックスの孔を、多孔質セラミックスよりも脆く、かつビトリファイドボンドの焼成温度によっても消失しない物質によって塞ぐことにより、多孔質セラミックス孔内へのビトリファイドボンドの浸入を抑制し、しかも、研削時における多孔質セラミックスの破砕を促進できるビトリファイドボンド砥石を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、立方晶窒化ホウ素粒またはダイヤモンド粒からなる超砥粒と骨材とが、ビトリファイドボンド中に含有されたビトリファイドボンド砥石において、前記骨材は、多孔質セラミックスと、該多孔質セラミックスの孔を塞ぐ物質とからなり、該物質は、前記多孔質セラミックスより脆く、かつ前記ビトリファイドボンドの焼成温度によって消失しない物性を有することである。
【0007】
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1において、前記物質を、前記多孔質セラミックスの孔内に充填することにより、前記多孔質セラミックスの孔を塞ぐようにしたことである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、ビトリファイドボンド砥石に骨材を混入したので、超砥粒の砥粒間隔が大きくなって、研削抵抗を低減することができ、砥石寿命を増長することができる。しかも、骨材を、被研削材との接触で破砕されやすい多孔質セラミックスと、多孔質セラミックスの孔を塞ぐ多孔質セラミックスより脆い物質とで構成したので、骨材と被研削材との擦りによる発熱を抑制でき、研削焼けを防止できるとともに、砥石製造時にビトリファイドボンドが融解されても、ビトリファイドボンドが多孔質セラミックスの孔内に浸入することがないので、多孔質セラミックスの孔内に浸入したビトリファイドボンドによって多孔質セラミックスの破砕性が妨げられることがない。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、物質を、多孔質セラミックスの孔内に充填することにより、多孔質セラミックスの孔を塞ぐようにしたので、多孔質セラミックスの孔へのビトリファイドボンドの浸入を容易に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態を示すビトリファイドボンド砥石の全体図である。
【
図2】ビトリファイドボンド砥石の砥石層の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、ビトリファイドボンド砥石の全体図であり、
図2は、ビトリファイドボンド砥石の研削面付近の組織を示す拡大図である。
【0012】
当該ビトリファイドボンド砥石10は、
図1に示すように、円盤状のコア21と、このコア21の外周に接着剤あるいは焼結によって固着したリング状の砥石層22とから構成される。コア21は、鋼、アルミニウムあるいはチタン等の金属材料、FRP(繊維強化プラスチック)材、セラミックス(普通砥石)、で形成される。砥石層22は、リング状に焼成した砥石層22をコア21の外周に固着して形成される。あるいは複数の砥石セグメントをコア21の外周に接着してリング状になるように形成してもよい。
【0013】
コア21の中心には、図略の砥石台の砥石軸の軸端に突出する芯合わせボスに嵌合する中心穴23が貫設され、中心穴23の周囲には砥石軸の軸端に開口する螺子孔に螺合するボルトが挿通するボルト孔24が複数形成されている。これらのボルト孔24にボルトを挿通し、ボルトを螺子孔に螺入することにより、ビトリファイドボンド砥石10が砥石軸に固着される。
【0014】
ビトリファイドボンド砥石10が装着される研削盤には、図略の砥石台とテーブルとが互いに直交する方向に摺動可能に案内されている。砥石台には、ビトリファイドボンド砥石10により研削される被研削材(ワーク)Wの長手方向に平行な軸線回りに砥石軸が回転可能に支持され、砥石台に設置されたモータによって回転駆動されるようになっている。テーブル上には図略の主軸台および心押台が載置され、これら主軸台と心押台との間に被研削材Wがテーブルの移動方向と平行な軸線回りに回転可能に支持されている。
【0015】
砥石層22は、
図2に示すように、例えばCBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒からなる超砥粒12と、超砥粒12よりも強度の弱い骨材14と、これら超砥粒12と骨材14とを結合するビトリファイドボンド16とによって構成されている。骨材14は、多孔質セラミックス14aを母体とし、この多孔質セラミックス14aの孔を塞いで、ビトリファイドボンド16の浸入を防止する物質14bによって構成されている。多孔質セラミックス14aの孔を塞ぐ物質14bとしては、骨組みとしての多孔質セラミックス14aよりも脆く、かつビトリファイドボンド16の焼成温度によっても消失しない物性を有するもの(例えば、ガラス状カーボン)が用いられる。
【0016】
このような骨材14
は、例えば、骨材14の製造時に、多孔質セラミックス14aと上記物質14bとを混在させて、多孔質セラミックス14aを焼成する方法に
よって、多孔質セラミックス14aの孔を塞ぐことができる。
【0017】
ビトリファイドボンド16は、隣接する超砥粒12間、隣接する骨材14間、および隣接する超砥粒12と骨材14間を架橋して結合し、架橋部20間に気孔18を形成している。多孔質セラミックス14aの気孔率は、例えば、10%〜80%である。好ましくは30%〜60%とすることにより、研削時に破砕を効果的に生じさせ、かつ砥石の構成を維持する強度を保持することができる。CBNの超砥粒12の平均粒径は、例えば115μm(#170)であり、多孔質セラミックス14aの平均粒径は、例えば100μm(#200)である。この場合、多孔質セラミックス14aの平均粒径は、超砥粒12の平均粒径の約87%である。このように、超砥粒12の粒径に対し、骨材としての多孔質セラミックス14aの粒径を70%〜150%の範囲とすることにより、骨材として砥石を構成する強度が維持されることが経験的に把握されており、かかる強度が維持できるのは、ビトリファイドボンド16による架橋部(ブリッジ)20を多孔質セラミックス14aが脆弱化させないことによると考えられる。なお、CBN砥粒の代わりにダイヤモンド砥粒を用いることもできる。
【0018】
次に、実施の形態にかかるビトリファイドボンド砥石10の製造方法について説明する。まず、CBN砥粒による砥石層22を製造する。この場合、CBNの超砥粒12と、ガラス状カーボンのような物質(多孔質セラミックス14aよりも脆く、かつビトリファイドボンド16の焼成温度によっても消失しない物性を有する物質)14bを充填した多孔質セラミックス14aと、ビトリファイドボンド16とが、予め設定された混合割合で混練される。
【0019】
例えば、使用される多孔質セラミックス14aの量は、砥石層全体の50容積%以下である。また、混合に際し、CBNの超砥粒12や多孔質セラミックス14aに対するビトリファイドボンド16の容量%が多過ぎると、隣接する多孔質セラミックス14a間、多孔質セラミックス14aと隣接する超砥粒12との間で、結合剤のブリッジ(架橋部20)が形成されにくくなり、また、CBNの超砥粒12に対して多孔質セラミックス14aの容積%が少な過ぎると、超砥粒12の集中度が増加して研削抵抗が大きくなるので、これらを考慮して上記混合割合が定められる。この混合物がリング状の砥石層22に対応する空間を形成する図略の型枠に充填されて加圧成型される。
【0020】
次に、加圧成型されたリング状の砥石層22が型枠から抜き出され、ビトリファイドボンド16の適正な焼成温度(例えば1,000℃前後)で加熱焼成され、リング状の砥石層22が製造される。この際、ビトリファイドボンド16は、加熱焼成時の融解により隣接する超砥粒間等で架橋部(ブリッジ)20および気孔18を形成するが、多孔質セラミックス14aの孔内には、ビトリファイドボンド16の焼成温度では消失しないガラス状カーボン等の物質14bが充填されているため、ビトリファイドボンド16の融解によっても、ビトリファイドボンド16が多孔質セラミックス14aの孔内に浸入することがない。その後、焼成された砥石層22をコア21の外周に接着剤を用いて固着させ、ビトリファイドボンド砥石10が完成する。
【0021】
このようにして製造されたビトリファイドボンド砥石10は、骨材としての多孔質セラミックス14aの粒径が、超砥粒12の粒径と近い大きさであるので、多孔質セラミックス14aはビトリファイドボンド16が形成する網目の核となって、隣接する多孔質セラミックス14a間で、あるいは隣接する超砥粒12と多孔質セラミックス14a間で架橋部20を効果的に形成する。これによって、ビトリファイドボンド砥石10の構造上の強化を図るとともに、超砥粒12の脱落磨耗を防止して、ビトリファイドボンド砥石10の寿命を延ばすことができる。
【0022】
次に、本実施の形態におけるビトリファイドボンド砥石10を使用した研削加工における作動について以下に説明する。まず、砥石台の砥石軸に上記のように製造したビトリファイドボンド砥石10を固着し、砥石軸をモータにより駆動させてビトリファイドボンド砥石10を回転させる。また、図略の主軸台と心押台との間に支持したワークWを主軸台の主軸を回転させることにより軸線回りに回転させる。そして、砥石台をワークWの軸線方向に直角な方向から前進させて研削を行う。
【0023】
ビトリファイドボンド砥石10の砥石層22は、研削前においては、
図2に示すように、骨材14と砥石外周表面(超砥粒12の突き出し位置)とがほぼ同位置にあるが、骨材14は多孔質で脆性の高い多孔質セラミックス14aで構成されているので、研削時のワークWの表面との接触によりに破砕し、
図3に示すように、ワークWに対向して切り刃となっている超砥粒12の前端位置より後退する。なお、多孔質セラミックス14aの孔内には、ガラス状カーボン等の物質14bが充填されているが、当該物質はセラミックス14aより脆いので、研削時における多孔質セラミックス14aの破砕性を悪化することがない。
【0024】
このように、本実施の形態によれば、ビトリファイドボンド砥石10の砥石層22に骨材14を混入したので、超砥粒の砥粒間隔を大きくすることができ、研削抵抗を低減することができる。しかも、骨材14を、被研削材Wとの接触で破砕されやすい多孔質セラミックス14aで構成したので、研削時に多孔質セラミックス14aが被研削材Wに触れると多孔質セラミックス14aが破砕し、切れ刃となっている砥粒の位置よりも後退するので、骨材14と被研削材Wとの擦りによる発熱を抑制でき、研削焼けを防止することができる。また、破砕された多孔質部分が、切り屑を保持して廃棄するチップポケットを形成するとともに、冷却液の循環を促進するので、研削効率を向上させることができる。
【0025】
しかも、骨材14としての多孔質セラミックス14aの孔内には、セラミックス14aより脆い物質14bが充填されているので、砥石製造時に融解したビトリファイドボンド16が、多孔質セラミックス14aの孔内に浸入することがないので、多孔質セラミックス14aの孔内に浸入し、焼成後に硬化するビトリファイドボンド16によって多孔質セラミックス14aの破砕性が妨げられることがない。
【0026】
上記した実施の形態においては、多孔質セラミックス14aの孔内に充填する物質として、ガラス状カーボンを例に説明したが、これに限定されるものではなく、骨組みとしてのセラミックス14aより脆く、かつビトリファイドボンド16の焼成温度によって消失しない物性を有する物質であれば、適宜選択して使用することができる。
【0027】
以上、本発明を実施の形態に即して説明したが、本発明は上記した実施の形態に記載された構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0028】
10…ビトリファイドボンド砥石、12…超砥粒、14…骨材、14a…多孔質セラミックス、14b…物質、16…ビトリファイドボンド、W…被研削材。