【実施例1】
【0012】
本発明の第一の実施形態を、
図1〜
図3を用いて説明する。
図1は、本実施形態における空気調和装置の構成を示すサイクル系統図である。
まず本実施例の構成を示す。本実施例では、2台の室外ユニット20a、20bと2台の室内ユニット21a、21bとを、液管31とガス管32の2本の配管で並列に接続して冷凍サイクルを構成している。各室内ユニット21では、室内熱交換器5a、5bが液管31と、室内減圧手段6a、6bを介して接続されており、室内熱交換器5aの、5bの他端はガス管32に接続されている。
【0013】
室外ユニット20a、20bでは、室外熱交換器2a、2bが室外膨張弁3a、3b(室外減圧手段)を介して液管31と接続されており、他端は四方弁7a、7bへと接続され、四方弁7a、7bの切換により圧縮機1a、1bの吐出側もしくは吸込側へと接続が任意に切り換えられる。この際、圧縮機1a、1bの吐出側もしくは吸込側のうち、室外熱交換器2a、2bとは異なる一方がガス管32へと連通する。また圧縮機1a、1bの吐出側には油分離器8a、8bが、吸込側にはアキュムレ−タ9a、9bが配置されており、油分離器8a、8bで分離した油はキャピラリ配管10a、10bを通ってアキュムレ−タ9a、9bへと流入する構成となっている。
【0014】
冷房運転時には、四方弁7a、7bを
図1に実線で示すように切換える。圧縮機1a、1bから吐出された冷媒およびこれに含まれる油は油分離器8a、8bでガス冷媒と油に分離される。油分離器8a、8bで分離された油はキャピラリ配管10a、10bを通ってアキュムレ−タ9a、9bへと流入する。一方、ガス冷媒は油分離器8a、8bで分離しきれなかった油と共に四方弁7a、7bを介して室外熱交換器2a、2bへと流入する。そして室外ファン4a、4bにより送風される室外空気へ放熱することによって、凝縮・液化し、膨張弁3a、3bを通って液管31へと流出する。
【0015】
2つの室外ユニット20a、20bから流出した液冷媒は液管31で合流し、室内ユニット21a、21bへと流入する。室内ユニットでは膨張弁6a、6bで減圧されて低温・低圧となった状態で室内熱交換器5a、5bへと流入し、室内空気と熱交換することによって、室内空気を冷却する一方、冷媒は蒸発・ガス化する。その後、各室内ユニット21a、21bで蒸発したガス冷媒はガス管32で合流し、油とともに各室外ユニット20a、20bへと分岐される。室外ユニット20a、20bでは、四方弁を通った後、キャピラリ配管10a、10bを通った油と合流してアキュムレ−タ9a、9bへと流入する。アキュムレ−タ9a、9bからは、流量が調整された油とともに冷媒が圧縮機1a、1bへと供給される。
【0016】
暖房運転時には、四方弁7a、7bを
図1に破線で示すように切換える。圧縮機1a、1bから吐出された冷媒およびこれに含まれる油は油分離器8でガス冷媒と油に分離される。油分離器8a、8bで分離された油はキャピラリ配管10a、10bを通ってアキュムレ−タ9a、9bへと流入する。一方、ガス冷媒は油分離器8a、8bで分離しきれなかった油と共に四方弁7を介してガス管32へと流入する。各室外ユニットから流出したガス冷媒はガス管32で合流した後、室内ユニット21へと流入し、室内熱交換器5a、5bで室内空気に放熱して液化した後、膨張弁6a、6bを通って液管31へと流出する。その後分岐して室外ユニット20a、20bに流入すると、膨張弁3a、3bで減圧されて低温・低圧となった状態で室外熱交換器2a、2bに流入し、室外空気と熱交換することによって蒸発・ガス化する。ガス化した冷媒は油と共に四方弁7a、7bを通ってアキュムレ−タ9a、9bを介して圧縮機1a、1bへと戻る。この際冷房時と同様にアキュムレ−タ9a、9bでは流出する油量が調整される。
【0017】
図2は、従来のアキュムレ−タ9の内部構造を示す図である。
図2において、冷媒および油は流入管33からアキュムレ−タ9内部に流入し、油はアキュムレ−タ9の底部に貯留される。アキュムレ−タ9の内部空間はガス冷媒で満たされており、上方に向かって開口した導出管34を通って圧縮機1の吸込口へと流出する。導出管34はU字形状をしており、アキュムレ−タ9の底部に近く、最も低い位置近傍に、内部の油を導出管34内部の冷媒へ混合させるための第一返油穴40が設けられている。油の戻り量は第一返油穴40から流入する流動抵抗と、導出管34の開口端から第一返油穴40までの流動抵抗によって定まるので、圧縮機1へ流れる冷媒流量が少ない時には油戻し量が減少し、冷媒流量が多い時には油戻し量も増大する。この第一返油穴40の径は、圧縮機1に必要な油量割合に応じて、適宜設計されているので、第一返油穴40が液面よりも低い位置にある限り圧縮機1へ油を供給できる。また油の保有量が増加すると第二返油穴42から油をアキュムレ−タ9の外に流出させるので、アキュムレ−タ内に保有する冷媒量が過剰になることを防止することができる。また導出管34の出口近傍には均圧用の穴41が設けられている。これは空調機停止時に導出管34と流入管33内の圧力をバランスさせるための均圧穴である。
【0018】
このアキュムレ−タでは、液面が第一返油穴40と第二返油穴42の間にある場合、油分離器10からアキュムレ−タに戻す油量よりも少ない油量を第一返油穴40から流出させ、液面が第二返油穴42よりも高くなった場合には、油分離器10からアキュムレ−タに戻す油量よりも多くの油量を、第一返油穴40と第二返油穴42を用いて流出させる構造となっている。このような構成とすることにより、液面が第二返油穴42よりも高くなった場合にはアキュムレ−タ9からの流出量を増加させ、アキュムレ−タ9内の保有油量の増加を抑制し、サイクルへ流出させることで他のアキュムレ−タとの均油を実現している。
【0019】
しかしながら、均油のための排出機能が作動するのは、第二返油穴42の場所まで液面が上昇した場合であり、不均一になることをある程度許容した構成となっている。したがって、室外機間の分配が比較的均一な場合であっても、時間の経過とともに一部のアキュムレ−タでは上限値の第二返油穴42まで液面が上昇した状態となり易い。したがって、空気調和装置の信頼性を高める上での課題となっていた。
【0020】
図3に本発明のアキュムレ−タ9の内部構造を示す。
図3は第二返油穴42を複数個の第二返油穴42a、42b、42cに分割した構成となっており、各々の第二返油穴42の径は
図2に示す従来の第二返油穴42の径よりも小さく構成されている。なお、複数の第二返油穴42の断面積の合計は、
図2に示す第二返油穴42の断面積と等しく設定した。ここで最上段にある第二返油穴42cの上端位置は、
図2に示す第二返油穴42の上端位置と同様に、アキュムレ−タ9で保有する油の上限値に対応した高さに設定されている。したがって、複数の第二返油穴42をすべて利用することで、従来と同等の均油機能を確保することができ、アキュムレ−タ9内の保有冷媒量が、従来に対して増加することはない。
【0021】
すなわち、本実施例のアキュムレ−タ9は冷媒及び油を圧縮機1の吸入側に送るための導出管34を備え、該導出管34は、一端がアキュムレ−タ9内の空間に開口し、該開口した一端からアキュムレ−タ9の下部に向かってから、アキュムレ−タ9の下部から上部に向かうように構成されている。そして導出管34の最下部付近に、アキュムレ−タ9の底部に溜まった油を導出管34に戻すための第一返油穴40が形成され、第一返油穴40より上方に、かつ、導出管34の開口した一端より下方に、アキュムレ−タ9の第一返油穴40よりも上部に溜まった油を導出管34に戻すための第二返油穴が形成される。
【0022】
また、全封入油量から前記圧縮機1および前記油分離器8の保有油量を差し引いた残りが、アキュムレ−タ9内に存在するとした場合のアキュムレ−タ9内の基準油量をMs、このときの基準液面高さをLs、アキュムレ−タ9内の液面が第一返油穴40の上端となる最低油量をML、液面が前記第二返油穴42の上端となる最大油量をMh、並列接続する室外ユニット20の台数をN、基準油量から(Ms−ML)/(N−1)だけ油量が増加した際の上限液面高さをLdとした場合に、前記導出管34に、前記基準液面高さLsより上方かつ前記上限液面高さLdより下方となる範囲内に、前記第二返油穴42を複数個、上下方向に異なる位置に形成している。
【0023】
これは油保有量が不均一になった場合に、最も油保有量が少ない室外ユニットでも給油が可能となるための条件である。この考え方の概念図を
図4に示す。ここでは3台のアキュムレ−タ9a、9b、9cがある場合を例に示す。アキュムレ−タ9aの油保有量が最も減少する条件は、他のアキュムレ−タ9b、9cの油保有量がともに上限まで増加した場合であり、この際アキュムレ−タ9b、9cの液面はLsから最大油量Mhの場合に相当する最大液面高さLhまで上昇する。一方、アキュムレ−タ9aでは他のアキュムレ−タ9b、9cの油量増加分と台数を乗じた分だけ油量が減少する。すなわち2×(Mh−Ms)だけ油量が低下するので、これに対応する分だけ液面が低下する。このとき第一返油穴40の上端が液中にあれば圧縮機への給油が可能なので、基準油量Msから最低油量MLまでの差分(Ms−ML)が、この油量低下分よりも大きくなっている必要がある。言い換えると、アキュムレ−タ9aの油量が最低油量まで低下しないように、アキュムレ−タ9b、9cの油量増加分を抑える必要がある。また油量増加分はアキュムレ−タ9の台数、すなわち並列接続する室外ユニット20の台数Nによって変動するので、必要な条件は以下の通りである。
(Mh−Ms) <(Ms−ML)/(N−1) (N=2、3、4…)
言い換えると、最大油量Mhに相当する上限液面高さLhは上不等式が等価となる最大液面高さLdよりも低く設定することで均油の機能を確保することが可能となる。本実施例では、複数個の第二返油穴42を全て、基準液面高さLsよりも高く、かつLdよりも低い位置に配置したので、確実に均油をおこなうことができる。なお、上記条件は空気調和装置の運転開始後、ある程度の時間が経過した後の定常運転時における条件を示すものである。この点は以下においても同様である。
【0024】
さらに、従来はアキュムレ−タ9の油保有量が上限値に達した場合に油を排出する均油機能が作動する構成となっていたが、本実施例では、上限値に対応する位置に配置した第二返油穴42cよりも下方に第二返油穴42a、および42bがあるので、液面が上限値に達する前に徐々に排出量が増加し、均油機能が早期に作動させることができる。言い換えると、上限位置に1つだけの第二返油穴を保有する場合に比べて、保有油量が相対的に不均一になる前に均油機能が働くので、不均一になりにくくなる。すなわち均油機能が改善されることになる。したがって、各アキュムレ−タの保有する冷媒量の低下幅を従来よりも低減できるので、空気調和装置としての信頼性も向上させることができる。
【0025】
ところで、アキュムレ−タ9には、運転条件が変化した場合など、条件によっては液冷媒が流入する。このため条件によっては、第二返油穴42から油だけでなく液冷媒も戻す必要がある。従来の構成では、液冷媒が第二返油穴42から流入すると液冷媒の戻り量が急変し、吐出温度の急変を引き起こし易く、制御安定性上の課題もあった。しかし、本実施例では、複数の第二返油穴42を複数個配置する構成としたので、アキュムレ−タ9内部の液面高さの上昇に伴う圧縮機1への液戻り量の変化が、従来に対して抑制されることになる。したがって、急激な液戻りを抑制できるので圧縮機1の信頼性を高めることができる。またこれにより圧縮機1吐出温度の急激な変化を抑制できるので、制御性も向上させることができるというメリットが得られる。
【0026】
ところで、第二返油穴42からの液戻り量は第二返油穴42から管内に流入する際の流動抵抗と、導出管の流動抵抗によって定まるので、内径比によって液戻り量が変化することになる。
図5に内径比を変えた際の液戻りに対する試験結果を示す。内径比が16%の条件では液戻り量が過剰となり、内径比が11%の条件では液戻り量が少なく、アキュムレ−タ9内に液冷媒が長時間貯留され、内径比としては12〜15%程度とすることが望ましいという知見が得られた。本実施例では、導出管34の内径を19MM、内径が1.4MMの第二返油穴を3個配置した。したがって、第二返油穴42の等価直径は2.4MM、内径比は約13%となっている。このように内径比が12〜15%の間にはいっているので、液戻り量を全体として適正化できると同時に、各々の径を小径化して液戻り量を抑制している。したがって、液面の上昇と共に各第二返油穴42から順次液戻りが生じるので、急激な液戻りの発生を緩和して信頼性および制御安定性を向上できる。
【0027】
なお、本実施例では第二返油穴42を3個並べて配置したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第二返油穴42の個数は任意に変更して良い。また導出管34の同一方向に並べて配置したが、それぞれ異なる方向に向けて配置しても良い。アキュムレ−タ9内で液面が揺れるような状況が発生し得るので、このように方向を変えることで、液面の揺れに伴う液面高さの変化による液戻り量の変動を抑制する効果が得られる。この場合、圧縮機1への液戻りを抑制し、制御安定性をさらに高めることができるという効果が得られる。