(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記乗員支持部材が前記前側挟み部と前記後側挟み部との間に挟み込まれる位置から前記幅方向の内側へ移動するのを規制する移動規制部が、前記前側挟み部及び前記後側挟み部のうち、少なくとも一方に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシートバックフレーム。
前記前側挟み部と前記後側挟み部とが係合し合った状態では、前記前側挟み部に形成された前記移動規制部、及び、前記後側挟み部に形成された前記移動規制部が前記幅方向において隣り合い、かつ、互いに対向する位置に配置されることを特徴とする請求項3に記載のシートバックフレーム。
前記前側挟み部と前記後側挟み部とが係合し合った状態では、前記後側挟み部に形成された前記移動規制部が、前記前側挟み部に形成された前記移動規制部よりも前記幅方向の内側にあることを特徴とする請求項4に記載のシートバックフレーム。
前記前側凸部は、前記幅方向における前記前側フレーム片の端部のうち、前記車両用シートの前後方向において後端側に位置する領域から突出していることを特徴とする請求項6に記載のシートバックフレーム。
前記前側挟み部及び前記後側挟み部の各々には、前記乗員支持部材が前記前側挟み部と前記後側挟み部との間に挟み込まれる位置から前記幅方向の内側へ移動するのを規制する移動規制部が形成されており、
前記前側挟み部と前記後側挟み部とが係合し合った状態では、前記前側挟み部に形成された前記移動規制部は、前記前側凸部の後端から延出して前記後側凸部の前端よりも後方まで延びており、前記後側挟み部に形成された前記移動規制部は、前記後側凸部の前端から延出して前記前側凸部の後端よりも前方まで延びていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載のシートバックフレーム。
前記前側挟み部と前記後側挟み部とが係合し合った状態では、前記前側挟み部に形成された前記移動規制部、及び、前記後側挟み部に形成された前記移動規制部が前記幅方向において隣り合い、かつ、互いに対向する位置に配置され、
前記乗員支持部材は、上下方向に蛇行しながら前記幅方向に沿って延出しており、
前記前側挟み部及び前記後側挟み部の各々に形成された前記移動規制部の上端及び下端は、上下方向において、前記乗員支持部材が蛇行して到達する上端位置と下端位置の間に位置していることを特徴とする請求項9または10に記載のシートバックフレーム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、成形性や軽量性の観点からフレーム本体の材質として樹脂材料が用いられてきている。しかしながら、樹脂材料からなるフレーム本体に対して乗員支持部材取り付け用の部品を設ける際、溶接にて当該部品を取り付けるのは困難である。
一方、フレーム本体の一部を加工して乗員支持部材の取り付け部位をフレーム本体と一体的に形成することが考えられる。ただし、このような構成では、乗員支持部材をフレーム本体に対して適切に取り付けるうえで、フレーム本体のうち、取り付け部位自体の剛性が確保されていなければならない。
【0006】
また、当然ながら、フレーム本体に取り付けられた乗員支持部材が容易にフレーム本体から外れてしまわないように、フレーム本体に対する乗員支持部材の取り付け状態を良好に保持できることが求められている。換言すると、フレーム本体に取り付けられた乗員支持部材がフレーム本体に対して移動してしまうのを効果的に規制し得る構成が望ましい。
【0007】
また、フレーム本体における乗員支持部材の取り付け位置については、車両が後突荷重を受けた際に乗員が後方へ沈み込むのに適した位置となっている必要がある。
また、フレーム本体に乗員支持部材を取り付けるときには、これに伴って車両用シートが大型化してしまうのを抑える必要がある。
また、フレーム本体のうち、乗員支持部材が取り付けられる部位については、剛性を確保しつつ、さらに、乗員支持部材を取り付ける際の取り付け易さを向上させることが求められる。
また、前述したように、フレーム本体に取り付けられた乗員支持部材については、その取り付け状態が良好に保持される必要があるが、より具体的には、乗員支持部材がその取り付け位置にて安定するような構造が求められている。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、樹脂材料からなるフレーム本体において乗員支持部材が取り付けられる部位の剛性を確保することが可能なシートバックフレームを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、フレーム本体に取り付けられた乗員支持部材がフレーム本体に対して移動してしまうのを効果的に規制すること、さらに、乗員支持部材がその取り付け位置にて安定するような構造を実現することである。
また、本発明の他の目的は、フレーム本体における乗員支持部材の取り付け位置を、車両が後突荷重を受けた際に乗員が後方へ沈み込むのに適した位置とすることである。
また、本発明の他の目的は、フレーム本体に乗員支持部材を取り付ける際に車両用シートが大型化してしまうのを抑えることである。
また、本発明の他の目的は、フレーム本体の乗員支持部材が取り付けられる部位について、剛性を確保しつつ、乗員支持部材を取り付ける際の取り付け易さを向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明のシートバックフレームによれば、乗員が着座する車両用シートに備えられるシートバックフレームであって、樹脂材料からなる前側フレーム片及び樹脂材料からなる後側フレーム片を組み合せて形成されるフレーム本体と、前記車両用シートの幅方向における前記フレーム本体の両端部の間に配置され、前記車両用シートに着座した乗員を背側から支持する乗員支持部材と、を備え、前記前側フレーム片に形成された前側挟み部と前記後側フレーム片に形成された後側挟み部とが係合し合うことにより、前記フレーム本体が形成され、前記乗員支持部材は、前記前側挟み部と前記後側挟み部との間に挟み込まれることにより、前記フレーム本体に対して取り付けられることで解決される。
【0010】
上記のシートバックフレームでは、乗員支持部材が、フレーム本体を構成する前側フレーム片と後側フレーム片との間に挟み込まれることでフレーム本体に対して取り付けられる。そして、各フレーム片において乗員支持部材を挟み込む部位は、フレーム片同士を組み合わせる際に係合し合う部分であるため、その剛性については比較的高くなっている。したがって、上記のシートバックフレームであれば、樹脂材料からなるフレーム本体において乗員支持部材が取り付けられる部位の剛性を確保することが可能となる。
【0011】
また、上記のシートバックフレームにおいて、前記乗員支持部材が前記前側挟み部と前記後側挟み部との間に挟み込まれる位置から前記幅方向の内側へ移動するのを規制する移動規制部が、前記前側挟み部及び前記後側挟み部のうち、少なくとも一方に形成されていると、好適である。
以上の構成であれば、前側挟み部と後側挟み部との間に挟み込まれる位置から乗員支持部材が幅方向内側へ移動するのを規制して、フレーム本体における取り付け位置に乗員支持部材を安定的に保持しておくことが可能になる。
【0012】
なお、上記のシートバックフレームにおいて、前記移動規制部は、前記前側挟み部及び前記後側挟み部の各々に形成されていると、より好適である。
以上の構成であれば、乗員支持部材が前側挟み部と後側挟み部との間に挟み込まれる位置から幅方向内側へ移動するのを、より効果的に規制することが可能になる。
【0013】
さらに、上記のシートバックフレームにおいて、前記前側挟み部と前記後側挟み部とが係合し合った状態では、前記前側挟み部に形成された前記移動規制部、及び、前記後側挟み部に形成された前記移動規制部が前記幅方向において隣り合い、かつ、互いに対向する位置に配置されると、より一層好適である。
以上の構成であれば、乗員支持部材が前側挟み部と後側挟み部との間に挟み込まれる位置から幅方向内側へ移動するのを、より一層効果的に規制することが可能になる。
【0014】
また、上記のシートバックフレームにおいて、前記前側挟み部と前記後側挟み部とが係合し合った状態では、前記後側挟み部に形成された前記移動規制部が、前記前側挟み部に形成された前記移動規制部よりも前記幅方向の内側にあると、さらに好適である。
以上の構成であれば、前側挟み部と後側挟み部とが係合し合った状態において、後側挟み部に形成された移動規制部の前端位置が、前側挟み部の前端位置よりも後方に位置するようになる。つまり、後側挟み部に形成された移動規制部の前端と前側挟み部の前端との間に段差が形成されるようになる。これにより、当該段差の分だけ、車両用シートにおいて乗員が沈み込めるスペースが拡張されるので、乗員の沈み込み量がより多く確保されるようになる。
【0015】
また、上記のシートバックフレームにおいて、前記前側挟み部は、前記幅方向における前記前側フレーム片の端部から前記幅方向の内側に突出して形成された前側凸部を有し、前記後側挟み部は、前記幅方向における前記後側フレーム片の端部から前記幅方向の内側に突出して形成された後側凸部を有すると、好適である。
以上の構成であれば、各挟み部の凸部が各フレーム片の幅方向端部から幅方向内側に突出しているので、シートバックフレームの大型化、特に、幅方向外側への広がりを抑制することが可能となる。
【0016】
また、上記のシートバックフレームにおいて、前記前側凸部は、前記幅方向における前記前側フレーム片の端部のうち、前記車両用シートの前後方向において後端側に位置する領域から突出していると、より好適である。
以上の構成であれば、フレーム片の間に乗員支持部材を挟み込む構成において、乗員支持部材が車両用シートの前後方向においてより後方に配置される。かかる乗員支持部材の配置位置は、車両が受けた後突荷重によって乗員が後方へ沈み込むのに適した位置となるので、当該乗員支持部材を備えた車両用シートでは、乗員の沈み込み量が適切に確保されるようになる。
【0017】
また、上記のシートバックフレームにおいて、前記前側凸部及び前記後側凸部の各々は、前記幅方向において最も内側に位置する頂面と、該頂面と隣接する3つの隣接面と、を有し、前記前側凸部及び前記後側凸部のうちの少なくとも一方が有する前記3つの隣接面中、最も上側に位置する上面は、前記頂面に近付くほど下方に位置する傾斜面であると、より一層好適である。
以上の構成であれば、前側凸部及び後側凸部のうちの少なくとも一方の上面が傾斜面になっているので、上面の面積がより大きくなる。この結果、当該上面が視認し易くなるので、前側凸部と後側凸部の間に乗員支持部材を取り付ける際に上面の位置が確認し易くなるなど、作業性が向上することとなる。
【0018】
また、上記のシートバックフレームにおいて、前記前側挟み部及び前記後側挟み部の各々には、前記乗員支持部材が前記前側挟み部と前記後側挟み部との間に挟み込まれる位置から前記幅方向の内側へ移動するのを規制する移動規制部が形成されており、前記前側挟み部と前記後側挟み部とが係合し合った状態では、前記前側挟み部に形成された前記移動規制部は、前記前側凸部の後端から延出して前記後側凸部の前端よりも後方まで延びており、前記後側挟み部に形成された前記移動規制部は、前記後側凸部の前端から延出して前記前側凸部の後端よりも前方まで延びていると、さらに好適である。
以上の構成であれば、前側凸部及び後側凸部の各々に形成された移動規制部が、対をなす凸部の前後方向手前側の端に差し掛かるように延出している。これにより、乗員支持部材は、移動規制部による規制を受けつつ、前側挟み部及び後側挟み部に挟まれる位置に配置される。この結果、乗員支持部材の取り付け状態を安定的に保持することができる。
【0019】
なお、上記のシートバックフレームにおいて、前記前側凸部及び前記後側凸部の各々は、前記幅方向において最も内側に位置する頂面を有し、前記前側挟み部に形成された前記移動規制部の上端及び下端は、上下方向において前記前側凸部の前記頂面の上端及び下端の間に位置し、かつ、前記後側挟み部に形成された前記移動規制部の上端及び下端は、上下方向において前記後側凸部の前記頂面の上端及び下端の間に位置している、より好適である。
以上の構成であれば、移動規制部が上下方向において各凸部の上端と下端の間に収まるので、シートバックフレームの大型化、特に、上下方向への広がりを抑制することが可能になる。
【0020】
さらに、上記のシートバックフレームにおいて、前記前側挟み部と前記後側挟み部とが係合し合った状態では、前記前側挟み部に形成された前記移動規制部、及び、前記後側挟み部に形成された前記移動規制部が前記幅方向において隣り合い、かつ、互いに対向する位置に配置され、前記乗員支持部材は、上下方向に蛇行しながら前記幅方向に沿って延出しており、前記前側挟み部及び前記後側挟み部の各々に形成された前記移動規制部の上端及び下端は、上下方向において、前記乗員支持部材が蛇行して到達する上端位置と下端位置の間に位置していると、さらに好適である。
以上の構成であれば、移動規制部が上下方向において乗員支持部材が存在する範囲内に収まるので、上下方向におけるシートバックフレームの大型化をより効果的に抑制することが可能になる。
【0021】
また、上記のシートバックフレームにおいて、前記前側凸部と前記後側凸部が係合し合った状態では、前記前側凸部と前記後側凸部との間に隙間が形成され、該隙間に前記幅方向における前記乗員支持部材の端部が挿入されることにより、前記乗員支持部材は、前記前側挟み部と前記後側挟み部との間に挟み込まれるようになり、前記隙間に備えられた、前記乗員支持部材の端部が挿入される側の開口は、前記幅方向に沿って長くなるように形成されていると、好適である。
以上の構成であれば、前側凸部と後側凸部との間に形成される隙間の開口が幅方向に沿って長いので、当該隙間に乗員支持部材を挿入し易くなり、乗員支持部材の組み付け性が向上する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、樹脂材料からなるフレーム本体において乗員支持部材が取り付けられる部位の剛性が確保されたシートバックフレームを提供することが可能となる。
本発明の請求項2に記載の発明によれば、前側挟み部と後側挟み部との間に挟み込まれる位置から乗員支持部材が幅方向内側へ移動するのを規制して、フレーム本体における取り付け位置に乗員支持部材を安定的に保持しておくことが可能になる。
本発明の請求項3に記載の発明によれば、前側挟み部と後側挟み部との間に挟み込まれる位置から乗員支持部材が幅方向内側へ移動するのを、より効果的に規制することが可能になる。
本発明の請求項4に記載の発明によれば、前側挟み部と後側挟み部との間に挟み込まれる位置から乗員支持部材が幅方向内側へ移動するのを、より一層効果的に規制することが可能になる。
本発明の請求項5に記載の発明によれば、後側挟み部に形成された移動規制部の前端と前側挟み部の前端との間に段差が形成され、当該段差の分、乗員が沈み込めるスペースが拡張されるため、車両用シートにおいて乗員の沈み込み量がより多く確保される。
本発明の請求項6に記載の発明によれば、シートバックフレームの大型化、特に、幅方向外側への広がりを抑制することが可能となる。
本発明の請求項7に記載の発明によれば、乗員支持部材が車両用シートの前後方向においてより後方に配置されるので、当該乗員支持部材を備えるシートバックフレームを備えた車両用シートでは、乗員の沈み込み量が適切に確保されるようになる。
本発明の請求項8に記載の発明によれば、前側凸部及び後側凸部のうちの少なくとも一方の上面が視認し易くなるので、前側挟み部と後側挟み部との間に乗員支持部材を挟み込む際に上面の位置が確認し易くなるなど、作業性が向上する。
本発明の請求項9に記載の発明によれば、乗員支持部材が移動規制部による規制を受けつつ前側挟み部及び後側挟み部に挟まれる位置に配置されるため、乗員支持部材の取り付け状態を安定的に保持することができる。
本発明の請求項10に記載の発明によれば、移動規制部が上下方向において各凸部の上端と下端の間に収まるので、シートバックフレームの大型化、特に、上下方向への広がりを抑制することが可能になる。
本発明の請求項11に記載の発明によれば、移動規制部が上下方向において乗員支持部材が存在する範囲内に収まるので、上下方向におけるシートバックフレームの大型化をより効果的に抑制することが可能になる。
本発明の請求項12に記載の発明によれば、前側凸部と後側凸部との間に形成される隙間に乗員支持部材の端部を挿入し易くなるので、乗員支持部材の組み付け性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る車両用シートについて、
図1乃至13を参照しながら説明する。
図1は、車両用シートの外観図である。
図2は、車両用シートのシートフレームを示す斜視図である。
図3及び4は、本発明の一実施形態に係るシートバックフレームを示す図であり、
図3が正面図であり、
図4が背面図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る乗員支持部材とその周辺の構造を示す斜視図である。
図6乃至8は、本発明の一実施形態に係る乗員支持部材の取り付け構造を示す図であり、
図6が
図5中の範囲Xについての拡大図であり、
図7が取り付け構造を俯瞰した時の図であり、
図8が前側凸部及び後側凸部についての説明図である。
図9及び10は、本発明の一実施形態に係る前側凸部を示す図であり、
図9が斜視図であり、
図10が側面図である。
図11及び12は、本発明の一実施形態に係る後側凸部を示す図であり、
図11が斜視図であり、
図12が正面図である。
図13は、本発明の一実施形態における前側凸部、後側凸部及び乗員支持部材の位置関係を示す図であり、
図8のA−A断面図である。
【0025】
ここで、以下の説明中、車両用シートの前後方向とは、車両の進行方向に一致する方向のことであり、以下では単に前後方向と呼ぶ。また、車両用シートの幅方向とは、車両の横幅に沿う方向と一致する方向のことであり、以下では単に幅方向と呼ぶ。また、上下方向とは、車両の上下方向のことである。
なお、以下の説明では、特に断る場合を除き、車両内において車両用シートが使用状態、すなわち、乗員が車両用シートに着座している状態にあるときの構成を示し、以下の説明で述べる方向や位置は、上記の状態における方向や位置であることとする。
【0026】
本発明の実施形態(以下、本実施形態)に係る車両用シートSは、車両の乗員が着座するものである。車両用シートSは、
図1に示すように、乗員が凭れ掛かるシートバックS1、乗員の臀部が載置されるシートクッションS2、及び、乗員の頭部を支えるヘッドレストS3を構成要素として備える。シートバックS1及びシートクッションS2は、それぞれ、フレーム1,2に不図示のクッションパッドを配し、不図示の表皮材で被覆されることで構成される。ヘッドレストS3は、不図示の心材に不図示クッションパッドを配し、不図示の表皮材で被覆されることにより構成される。なお、ヘッドレストS3は、シートバックフレーム1に取り付けられたヘッドレストピラーHPによって支持される。
【0027】
本実施形態に係る車両用シートSのフレームは、
図2に示すように、シートバックS1を構成するシートバックフレーム1、シートクッションS2を構成するシートクッションフレーム2を有する。シートクッションフレーム2は、平面視で矩形状の枠体をなすように形成されており、特に本実施形態では、樹脂材料としての炭素繊維強化プラスチック(CFRP)にて一体成形されている。
【0028】
シートバックフレーム1は、
図3及び4に示すように、正面視で矩形状の枠体をなすフレーム本体10と、S字状に蛇行したスプリング(所謂Sバネ)からなる乗員支持部材3とを有する。フレーム本体10は、略台形状に形成された上部フレーム11と、幅方向において互いに離れた状態で一対形成されたサイドフレーム12と、サイドフレーム12の下端部同士を連結する下部フレーム13とを有する。ここで、一対のサイドフレーム12は、幅方向におけるフレーム本体10の両端部に相当する。
【0029】
そして、本実施形態に係るフレーム本体10は、前後2つに分割されたフレーム片14,15を組み合わせることによって構成されている。フレーム本体10を構成する2つのフレーム片14,15は、いずれも、樹脂材料としてのCFRPからなり、金型成形によって一体成形されている。なお、フレーム片14,15の材質についてはCFRPに限定されず、CFRP以外の他の樹脂材料、例えば、炭素繊維なしのプラスチックが用いられることとしてもよい。また、フレーム片14,15の成形方法については、金型内にCFRPを投入して一体成形する場合に限定されず、金型成形以外の方法、例えば、樹脂材料からなるシートをフレーム形状に合わせて積層させることでフレーム片14,15を成形することとしてもよい。
【0030】
また、2つのフレーム片14,15は、いずれも、上部フレーム11に対応する部分、サイドフレーム12に対応する部分、及び、下部フレーム13に対応する部分を有している。ここで、上部フレーム11に対応する部分とは、各フレーム片14,15中、フレーム片14,15同士が組み合わさった際に上部フレーム11を構成する部分のことである。同様に、サイドフレーム12に対応する部分とは、各フレーム片14,15中、フレーム片14,15同士が組み合わさった際にサイドフレーム12を構成する部分のことである。また、下部フレーム13に対応する部分とは、フレーム片14,15同士が組み合わさった際に下部フレーム13を構成する部分のことである。
【0031】
そして、フレーム片14,15同士が組み合わさると、中空状のフレーム本体10が形成され、より具体的に説明すると、例えば、サイドフレーム12の水平面で切断した際の断面については閉断面構造となる。
【0032】
以上のフレーム片14,15については、後に詳しく説明する。なお、以降の説明では、2つのフレーム片14,15のうち、車両用シートSにおいてより前方側に配置されるフレーム片14を前側フレーム片14と呼び、より後方側に配置されるフレーム片15を後側フレーム片15と呼ぶこととする。
【0033】
乗員支持部材3は、上下方向に蛇行しながら幅方向に沿って延出した状態でフレーム本体10に取り付けられる。特に、本実施形態では、フレーム本体10の上部フレーム11、サイドフレーム12及び下部フレーム13によって囲まれた略方形状の穴RH内に乗員支持部材3が配置される。乗員支持部材3は、通常時には車両用シートSに着座した乗員を背側から支持する一方で、車両が後突荷重を受けたときには、乗員が後方に沈み込むように変形する。このように乗員支持部材3が変形することにより、乗員に対する後突荷重の影響が緩和されるようになる。
【0034】
なお、本実施形態では、2つの乗員支持部材3が上下方向において互いに離れた状態で上記の穴RH内に配置されている。ただし、乗員支持部材3は少なくとも1つ以上あればよく、その個数については任意に設定することが可能である。
【0035】
そして、本実施形態では、各サイドフレーム12に形成された取り付け部位に乗員支持部材3の幅方向両端部が取り付けられると、乗員支持部材3が上記の穴RH内に配置されるようになる。より具体的に説明すると、乗員支持部材3は、幅方向に沿って一方のサイドフレーム12から他方のサイドフレーム12に架け渡されている。かかる手順により乗員支持部材3がサイドフレーム12の間に配置される。また、当該配置位置において、乗員支持部材3は、上下方向に蛇行しながら幅方向に沿って延出している。
【0036】
一方、本実施形態では、フレーム本体10のサイドフレーム12の一部には乗員支持部材3の取り付け部位が形成されており、当該取り付け部位は、サイドフレーム12中の他の部位とともにCFRPによって一体的に形成されている。
【0037】
ところで、発明が解決しようとする課題の項で説明したように、CFRPからなるフレーム本体10の一部を加工して乗員支持部材3の取り付け部位を形成する構成では、乗員支持部材3をフレーム本体10に対して適切に取り付けるうえで、フレーム本体10のうち、取り付け部位自体の剛性が確保されている必要がある。
このため、本実施形態では、フレーム本体10の中で比較的剛性が高い部位を乗員支持部材3の取り付け部位として用いており、この結果、フレーム本体10に対する乗員支持部材3の取り付け状態を良好に保持することが可能となる。
なお、本実施形態に係る乗員支持部材3の取り付け構造については、後に詳述する。
【0038】
次に、フレーム本体10、及び、その構成要素であるフレーム片14,15について詳しく説明する。
先ず、前側フレーム片14について説明すると、前側フレーム片14では、上部フレーム11に対応する部分、サイドフレーム12に対応する部分、及び、下部フレーム13に対応する部分の大部分が前方に膨出している。なお、
図2に示すように、本実施形態では、前側フレーム片14のうち、上部フレーム11に対応する部分の一部が、上下方向に沿って延びており、ヘッドレストピラーHPを保持する保持部14hを形成している。
【0039】
さらに、前側フレーム片14のサイドフレーム12に対応する部分には、当該部分の内側表面14bに形成された前側挟み部21が設けられている。この前側挟み部21は、後述する後側挟み部31と協働し、乗員支持部材3の端部を保持する。これにより、乗員支持部材3がフレーム本体10に対して取り付けられるようになる。なお、前側挟み部21が形成された内側表面14bは、幅方向における前側フレーム片14の端部に相当する。
【0040】
前側挟み部21についてより詳しく説明すると、
図9及び10に示すように、前側挟み部21は、内側表面14bから幅方向内側に突出して形成された前側凸部22を備えている。この前側凸部22は、前側フレーム片14中のサイドフレーム12に対応する部分の所定領域を幅方向内側へ略直方形状に隆起させて形成されている。また、前側凸部22は、幅方向において最も内側に位置する頂面24を有している。この頂面24は、幅方向を法線方向とする平坦面となっている。
【0041】
さらに、前側凸部22は、頂面24と隣接する3つの隣接面を有しており、具体的に説明すると、最も上側に位置する上面25、最も前側に位置する前面26、及び、最も下側に位置する下面27を有する。なお、前側凸部22の後端は、開口端となっている。
【0042】
そして、本実施形態では、上面25、前面26及び下面27がいずれも傾斜面となっている。具体的に説明すると、上面25は、頂面24に近付くほど、すなわち幅方向内側に向かうほど下方に位置するように傾斜している。前面26は、頂面24に近付くほど、すなわち幅方向内側に向かうほど後方に位置するように傾斜している。下面27は、頂面24に近付くほど、すなわち幅方向に向かうほど上方に位置するように傾斜している。なお、
図10に示すように、上面25、前面26及び下面27の各々において、頂面24と隣接する側の端部は、アーチ状に湾曲している。
【0043】
また、
図9及び
図10に示すように、前側挟み部21には、前側凸部22の後端に位置する壁面、詳しくは頂面24と隣接する壁面から後方に突出した舌状突起23が形成されている。この舌状突起23は、本実施形態において後述する移動規制部として機能する。
【0044】
そして、本実施形態では、前側挟み部21に形成された移動規制部としての舌状突起23については、その上端及び下端が、上下方向において前側凸部22の頂面24の上端及び下端の間に位置している。より具体的に説明すると、舌状突起23は、前側凸部22の後端壁面のうち、上下方向において略中央に位置する領域から後方へ延出している。
以上のように本実施形態では、前側挟み部21に形成された移動規制部が、上下方向において前側凸部22の上端と下端の間、厳密には頂面24の上端と下端の間に収まるので、シートバックフレーム1の大型化、特に、上下方向への広がりを抑制することが可能になる。
【0045】
なお、
図3に示すように、本実施形態では前側挟み部21が各サイドフレーム12に対応する部分において上下に並んで2個ずつ設けられている。すなわち、本実施形態では、幅方向において互いに対向する一対の前側挟み部21が2組、換言すると計4個の前側挟み部21が前側フレーム片14に設けられている。
さらに、各前側挟み部21が有する前側凸部22は、
図10に示すように、内側表面14bのうち、後端側に位置する領域、より具体的には、前後方向において内側表面14bの中央よりも後方に位置する領域から突出している。
【0046】
次に、後側フレーム片15について説明すると、後側フレーム片15では、上部フレーム11に対応する部分、サイドフレーム12に対応する部分、及び、下部フレーム13に対応する部分の大部分が後側に膨出している。より具体的に説明すると、後側フレーム片15のうち、外縁に沿って形成された外縁壁15aと、内縁に沿って形成された内縁壁15bは、前方に向かって突出している。また、
図3に示すように、後側フレーム片15のうち、上部フレーム11に対応する部分の一部は、上方に向かって延びており、前側フレーム片14の保持部14hと協働してヘッドレストピラーHPを保持する保持部15hを形成している。
【0047】
また、
図3に示すように、後側フレーム片15の外縁は、前側フレーム片14の外縁より一回り大きくなっている一方で、後側フレーム片15の内縁は、前側フレーム片14の内縁よりも一回り小さくなっている。そして、後側フレーム片15には、上述した外縁壁15aと内縁壁15bとの間に窪みが形成されており、当該窪みに、前側フレーム片14の後端部が嵌まり込むようになっている。このように後側フレーム片15に形成された窪み内に前側フレーム片14が嵌まり込み、フレーム片14,15同士が組み合わされることによってフレーム本体10が形成される。なお、組み合わされた後のフレーム片14,15同士は、組み合わせ状態を保持するために接着剤等を用いて互いに接合される。
【0048】
また、後側フレーム片15のサイドフレーム12に対応する部分には、当該部分に位置する内縁壁15bに形成された後側挟み部31が設けられている。この後側挟み部31は、前側フレーム片14の前側挟み部21と係合可能に形成されており、前側挟み部21と協働して乗員支持部材3の端部を保持する。なお、後側挟み部31が形成された内縁壁15bは、幅方向における後側フレーム片15の端部に相当する。
【0049】
後側挟み部31についてより詳しく説明すると、
図11及び
図12に示すように、後側挟み部31は、内縁壁15bを幅方向内側に膨出して形成された後側凸部32を備えている。この後側凸部32は、後側フレーム片15中のサイドフレーム12に対応する部分の所定領域を幅方向内側へ略直方形状に隆起させて形成されている。また、後側凸部32は、幅方向において最も内側に位置する頂面34を有している。この頂面34は、幅方向を法線方向とする平坦面となっている。
【0050】
さらに、後側凸部32は、頂面34と隣接する3つの隣接面を有しており、具体的に説明すると、最も上側に位置する上面35、最も後側に位置する後面36、及び、最も下側に位置する下面37を有する。なお、後側凸部32の前端は、開口端となっている。
【0051】
そして、本実施形態では、上面35、後面36及び下面37がいずれも傾斜面となっている。具体的に説明すると、上面35は、頂面34に近付くほど、すなわち幅方向内側に向かうほど下方に位置するように傾斜している。後面36は、頂面34に近付くほど、すなわち幅方向内側に向かうほど前方に位置するように傾斜している。下面37は、頂面34に近付くほど、すなわち幅方向に向かうほど上方に位置するように傾斜している。なお、
図11及び12に示すように、上面35、後面36及び下面37の各々において、頂面34と隣接する側の端部は、アーチ状に湾曲している。
【0052】
また、
図11及び
図12に示すように、後側挟み部31には、後側凸部32の前端に位置する壁面、詳しくは頂面34と隣接する壁面から前方に突出した舌状突起33が形成されている。この舌状突起33は、本実施形態において後述する移動規制部として機能する。
【0053】
そして、本実施形態では、後側挟み部31に形成された移動規制部としての舌状突起33については、その上端及び下端が、上下方向において後側凸部32の頂面34の上端及び下端の間に位置している。より具体的に説明すると、舌状突起33は、後側凸部32の前端壁面のうち、上下方向において略中央に位置する領域から前方へ延出している。
以上のように本実施形態では、後側挟み部31に形成された舌状突起33が上下方向において後側凸部32の上端と下端の間、厳密には頂面34の上端と下端の間に収まるので、シートバックフレーム1の大型化、特に上下方向への広がりを抑制することが可能になる。
【0054】
なお、
図4に示すように、本実施形態では後側挟み部31が各サイドフレーム12に対応する部分において上下に並んで2個ずつ設けられている。すなわち、本実施形態では、幅方向において互いに対向する一対の後側挟み部31が2組、換言すると計4個の後側挟み部31が後側フレーム片15に設けられている。
さらに、各後側挟み部31が有する後側凸部32は、
図12に示すように、後側フレーム片15中のサイドフレーム12に対応する部分のうち、後端側に位置する領域、より具体的には、前後方向においてサイドフレーム12に対応する部分の中央よりも後方に位置する領域から突出している。
【0055】
そして、フレーム片14,15同士が組み合わさると、各前側挟み部21が、対応する後側挟み部31と係合し合うようになる。換言すると、各前側挟み部21が、対応する後側挟み部31と係合し合うことにより、フレーム本体10が形成される。ここで、前側挟み部21と後側挟み部31とが係合し合うとは、
図5、6及び13に示すように、前側挟み部21と後側挟み部31とが前後方向において隣り合い、幅方向においてオーバラップするように組み合わさることである。
【0056】
以下、前側挟み部21と後側挟み部31との係合状態についてより詳細に説明する。係合状態にある前側挟み部21及び後側挟み部31を正面から見ると、
図3に示すように、後側凸部32を構成する内縁壁15bによって囲まれた空間内、に前側挟み部21が入り込んでいる。また、
図6及び13に示すように、前側挟み部21の舌状突起23と、後側挟み部31の舌状突起33とが幅方向において隣り合い、かつ、互いに対向する位置に配置される。なお、本実施形態では、前側挟み部21と後側挟み部31とが係合している状態において後側挟み部31に形成された舌状突起33が、前側挟み部21に形成された舌状突起23よりも幅方向内側にある。
【0057】
さらに、
図5,6及び13に示すように、前側挟み部21と後側挟み部31とが係合している状態では、各挟み部21,31に形成された舌状突起23,33が、前後方向において、対をなす挟み部21,31の凸部22,32に差し掛かるようになっている。具体的に説明すると、前側挟み部21と後側挟み部31とが係合し合った状態では、前側挟み部21に形成された舌状突起23は、前側凸部22の後端から延出して後側凸部32の前端よりも後方まで延びている。一方、後側挟み部31に形成された舌状突起33は、後側凸部32の前端から延出して前側凸部22の後端よりも前方まで延びている。
【0058】
そして、
図6乃至8に示すように、前側挟み部21と後側挟み部31とが係合し合った状態では、前側凸部22の後端と後側凸部32の前端との間に隙間Dが形成される。この隙間Dに乗員支持部材3の端部が挿入されると、乗員支持部材3が前側挟み部21と後側挟み部31との間に挟み込まれるようになる。このように本実施形態では乗員支持部材3が前側挟み部21と後側挟み部31との間に挟み込まれる結果、乗員支持部材3がフレーム本体10に対して取り付けられるようになる。
【0059】
以上のように、本実施形態に係るシートバックフレーム1では、乗員支持部材3が、前側フレーム片14と後側フレーム片15との間に挟み込まれることによりフレーム本体10に対して取り付けられる。そして、各フレーム片14,15において乗員支持部材3を挟み込む部位は、フレーム片14,15同士を組み合わせる際に係合し合う部分であるため、その剛性については比較的高くなっている。これにより、本実施形態では、CFRPからなるフレーム本体10において、乗員支持部材3の取り付け部位の剛性を確保することが可能となる。
【0060】
なお、本実施形態では、各フレーム片14,15において乗員支持部材3を挟み込む部位、すなわち、前側凸部22及び後側凸部32は、いずれも、各フレーム片14,15の幅方向端部から幅方向内側に突出して形成されている。このような構成を採用することにより、乗員支持部材3を挟み込む部位が各フレーム片14,15の幅方向外側に設けられる構成と比較して、シートバックフレーム1の大型化、特に、幅方向外側への広がりが抑制される。
【0061】
また、本実施形態では、前述したように、各前側挟み部21に備えられた前側凸部22が、前側フレーム片14の幅方向端部のうち、後端側に位置する領域から突出している。同様に、各後側挟み部31に備えられた後側凸部32が、後側フレーム片15の幅方向端部のうち、後端側に位置する領域から突出している。以上のように前側凸部22及び後側凸部32の配置位置が前後方向においてより後方に位置するように設定されているので、前側挟み部21と後側挟み部31とに挟まれる乗員支持部材3についてもより後方に配置されるようになる。一方、乗員支持部材3がより後方に位置しているほど、車両に後突荷重が掛かって車両用シートSに着座する乗員が後方に沈み込む際の沈み込み量をより多く確保することが可能になる。したがって、本実施形態に係る車両用シートSでは、上記の構成を採用することにより、乗員の沈み込み量が適切に確保されるようになる。
【0062】
また、本実施形態では、
図6に示すように、上述した隙間Dが幅方向に沿って長く形成されている。具体的に説明すると、隙間Dに備えられた、乗員支持部材3の端部が挿入される側の開口は、幅方向に長くなるように形成されている。より詳しく説明すると、上記隙間Dの開口は、各挟み部21,31が有する凸部22,32の突出量に相当する長さを有する。このように乗員支持部材3の挿入口が幅方向に沿って長く形成されていることにより、当該隙間Dに乗員支持部材3を挿入し易くなり、その分、乗員支持部材3の組み付け性が向上することになる。
【0063】
また、フレーム片14,15同士を組み合わさるとフレーム本体10が形成され、フレーム本体10のサイドフレーム12のうち、上述の隙間Dと隣接する領域には、
図6及び8に図示された長穴状の隣接穴Drが形成される。この隣接穴Drは、サイドフレーム12の幅方向内側の表面に形成され、上下方向に沿って若干の長さを有している。このように前側凸部22と後側凸部32との間に形成された隙間Dに連続するように隣接穴Drが設けられているので、隙間Dに乗員支持部材3を挿入することがより容易になり、乗員支持部材3の組み付け性がより向上することになる。
【0064】
さらに、本実施形態では、乗員支持部材3がフレーム本体10に対して取り付けられた状態において、隣接穴Drの上端が乗員支持部材3の上端よりも上方に位置するようになる。ここで、乗員支持部材3の上端とは、乗員支持部材3が上下方向に蛇行して到達する上端位置のことである。このように隣接穴Drの上端が乗員支持部材3の上端よりも上方に位置するため、隙間Dに乗員支持部材3を挿入することがより一層容易になり、乗員支持部材3の組み付け性がより一層向上することになる。
【0065】
その上、本実施形態では、前述したように、前側凸部22の上面25及び後側凸部32の上面35が、幅方向内側に向かうほど下方に位置するように傾斜している傾斜面になっている。このように各上面25,35が傾斜していることにより、当該各上面25,35が視認し易くなるので、前側凸部22と後側凸部32との間に乗員支持部材3を挟み込む際に上面25,35の位置が確認し易くなる。分かり易く説明すると、乗員支持部材3の端部を前側凸部22と後側凸部32との間の隙間Dに挿入する際、隙間Dの開口の位置を見つけ易くなる。また、各上面25,35が幅方向内側に向かうほど下方に位置するように傾斜しているので、乗員支持部材3の端部を上記の隙間Dに挿入する際、乗員支持部材3が上面25,35と干渉するのを抑制することが可能になる。このように各上面25,35が傾斜面となっていることで、乗員支持部材3を取り付ける際の作業性が向上する。
【0066】
ところで、乗員支持部材3の端部が前側凸部22と後側凸部32との間の隙間Dに挿入されると、
図7及び13に示すように、隙間D内に挿入された乗員支持部材3の端部と幅方向において隣り合う位置に、各挟み部21,31に形成された舌状突起23,33が配置されるようになる。これにより、乗員支持部材3の端部が幅方向内側に移動しようとしても、当該端部が舌状突起23,33によって係止されるので、同方向への乗員支持部材3の移動が規制されることになる。この結果、乗員支持部材3は、前側挟み部21と後側挟み部31との間に挟み込まれる位置で保持されることになる。
【0067】
以上のように、本実施形態では、各挟み部21,31に形成された舌状突起23,33が、乗員支持部材3が前側挟み部21と後側挟み部31との間に挟み込まれる位置から幅方向内側へ移動するのを規制する移動規制部として機能する。このような移動規制部としての舌状突起23,33が設けられていることで、フレーム本体10における取り付け位置に乗員支持部材3を安定的に保持しておくことが可能になる。
【0068】
特に、本実施形態では、前述したように、前側挟み部21と後側挟み部31とが係合し合うと、各挟み部21,31に形成された舌状突起23,33が幅方向において隣り合い、かつ、互いに対向する位置に配置されるようになる。つまり、本実施形態では、幅方向に重なった状態で2つの舌状突起23,33が配置されている。このように移動規制部としての舌状突起23,33が二重に配置されていることで、乗員支持部材3が前側挟み部21と後側挟み部31との間に挟み込まれる位置から幅方向内側へ移動するのを、より一層効果的に規制することが可能になる。
【0069】
さらに、本実施形態では、前述したように、前側挟み部21と後側挟み部31とが係合している状態において、前側挟み部21に形成された舌状突起23が、前側凸部22の後端から延出して後側凸部32の前端よりも後方まで延びている。また、後側挟み部31に形成された舌状突起33が、後側凸部32の前端から延出して前側凸部22の後端よりも前方まで延びている。このような構成により、乗員支持部材3は、移動規制部としての舌状突起23,33による規制を受けつつ、前側挟み部21及び後側挟み部31に挟まれる位置に配置される。この結果、本実施形態では、フレーム本体10に対する乗員支持部材3の取り付け状態が安定的に保持されることとなる。
【0070】
また、本実施形態では、
図13に示すように、前側挟み部21と後側挟み部31とが係合している状態において、後側挟み部31に形成された舌状突起33が、前側挟み部21に形成された舌状突起23よりも幅方向内側に位置する。このような位置関係を採用することにより、本実施形態では、車両に後突荷重が掛かって車両用シートSに着座する乗員が後方に沈み込む際の沈み込み量をより多く確保することが可能となる。
【0071】
より具体的に説明すると、後側挟み部31に形成された舌状突起33が前側挟み部21に形成された舌状突起23よりも幅方向内側に位置するように挟み部21,31同士を係合させた場合、後側挟み部31に形成された舌状突起33の前端位置は、
図13に示すように、記号lにて示す距離だけ前側挟み部21の前端位置(具体的には、前側挟み部21の前面26)よりも後方に位置するようになる。したがって、前側挟み部21の前端と後側挟み部31に形成された舌状突起33の前端との間に、距離lだけの段差が形成されるようになる。そして、当該段差の分だけ、乗員が後方に沈み込めるスペースが拡張されるようになる。この結果、乗員の沈み込み量をより多く確保することが可能となる。
【0072】
さらに、本実施形態では、乗員支持部材3をフレーム本体10に対して取り付けた状態において、前側挟み部21及び後側挟み部31の各々に形成された舌状突起23,33の上端及び下端は、上下方向で、乗員支持部材3の上端と下端の間に位置している。ここで、乗員支持部材3の上端とは、前述したように、乗員支持部材3が上下に蛇行して到達する上端位置のことであり、同様に、乗員支持部材3の下端とは、乗員支持部材3が蛇行して到達する下端位置のことである。このような位置関係では、移動規制部としての舌状突起23,33が上下方向において乗員支持部材が存在する範囲内に収まるようになる。これにより、本実施形態では、上下方向におけるシートバックフレーム1の大型化をより効果的に抑制することが可能になる。
【0073】
以上までに説明してきた実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、上記の実施形態に係るシートバックフレーム1の各部の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0074】
また、上記の実施形態では、前側挟み部21及び後側挟み部31の各々に移動規制部としての舌状突起23,33が形成されていることとしたが、これに限定されるものではない。前側挟み部21及び後側挟み部31のうち、少なくとも一方に移動規制部が形成されていればよい。すなわち、前側挟み部21のみ、あるいは後側挟み部31のみに移動規制部が形成されることとしてもよい。ただし、乗員支持部材3が前側挟み部21と後側挟み部31との間に挟み込まれる位置から幅方向内側へ移動するのを、より効果的に規制する観点では、前側挟み部21及び後側挟み部31の各々に移動規制部が形成されているのが望ましい。
【0075】
また、上記の実施形態では、前側挟み部21が有する前側凸部22、及び、後側挟み部31が有する後側凸部32の各々が、頂面24,34と、頂面24,34に隣接する3つの隣接面を有していることとした。そして、上記の実施形態では、前側挟み部21及び後側挟み部31の各々が有する隣接面が、いずれも傾斜面であることとした。しかし、これに限定されるものでなく、3つの隣接面のうち、上面25,35のみが傾斜面であることとしてもよい。さらに、前側凸部22及び後側凸部32のうち、少なくとも一方が有する上面25,35が傾斜面となっていればよい。すなわち、前側凸部22の上面25のみ、あるいは後側凸部32の上面35のみが傾斜面となっていることとしてもよい。
【0076】
また、上記の実施形態では、上下方向に蛇行するスプリングからなる乗員支持部材3について説明したが、乗員支持部材3を構成する部材としては、車両用シートSに着座している乗員が後方に沈み込むように変形することが可能な部材であれば他の部材であってもよく、例えば、上下方向に幅を有するプレート状の弾性体が乗員支持部材3を構成することとしてもよい。
【0077】
また、上記の実施形態では、フレーム本体10のうち、乗員支持部材3を挟み込む部位がサイドフレーム12に形成されていることとした。特に、本実施形態では、シートバックフレーム1の大型化を抑制する観点から、サイドフレーム12の幅方向内側に乗員支持部材3を挟み込む部位、すなわち、前側挟み部21及び後側挟み部31を設けることとした。ただし、これに限定されるものではなく、サイドフレーム12の幅方向外側に乗員支持部材3を挟み込む部位が設けられていることとしてもよい。また、フレーム本体10のうち、サイドフレーム12以外の部分、例えば、上部フレーム11や下部フレーム13に乗員支持部材3を挟み込む部位が設けられていることとしてもよい。