(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963615
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】加振機及び該加振機を備えた建設機械
(51)【国際特許分類】
E01C 19/34 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
E01C19/34 A
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-190221(P2012-190221)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2013-53513(P2013-53513A)
(43)【公開日】2013年3月21日
【審査請求日】2015年6月18日
(31)【優先権主張番号】10 2011 112 316.8
(32)【優先日】2011年9月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】592188715
【氏名又は名称】ボーマーク・ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】BOMAG GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】クリスチアン・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・ヴァーグナー
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開平5−195509(JP,A)
【文献】
実公昭37−16251(JP,Y1)
【文献】
特公昭32−876(JP,B1)
【文献】
特表2006−501049(JP,A)
【文献】
仏国特許発明第894514(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/00〜 19/52
E02D 1/00〜 3/115
E01B 27/00〜 27/20
B06B 1/00〜 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に振動タンパに取付けられる、有向加振振動を発生するための加振機で、互いに反対方向に回転可能である少なくとも2本の平行に伸長するアンバランスシャフト(10;20)を備え、前記アンバランスシャフト(10;20)上には、夫々少なくとも1つの固定アンバランスマス(14;24)及び夫々少なくとも1つの可動アンバランスマス(12;22)が配置され、前記アンバランスシャフト(10;20)上の前記可動アンバランスマス(12;22)の角度位置を加振振動の振幅を調整するための調整デバイス(2)によって変化させることができる加振機であって、
前記調整デバイス(2)は、2本の前記アンバランスシャフト(10;20)の前記可動アンバランスマス(12;22)に作用する振幅調整のための中央調整要素(4)を備え、
前記中央調整要素(4)は、加振振動のベクトル調整のために加振機(1)がその周りを回転可能な回転軸(AS)と同軸上に配置されることを特徴とする加振機。
【請求項2】
前記加振機(1)が加振振動のベクトル調整のために前記中央調整要素(4)の主延長軸(ASE)周りを回転して位置決めされ得るように、前記中央調整要素(4)が前記加振機(1)のための回転ベアリング要素として構成されることを特徴とする請求項1に記載の加振機。
【請求項3】
前記中央調整要素(4)がヨーク要素(6)を介して第1及び第2の軸方向調整要素(16;26)と動作的に接続状態にあり、
前記第1及び第2の軸方向調整要素(16;26)は、2本の前記アンバランスシャフト(10;20)と平行に伸長しており、前記中央調整要素(4)の軸方向運動によって前記各アンバランスシャフト(10;20)周りに前記可動アンバランスマス(12,22)が回転運動し、従って振幅調整が行われるように、前記アンバランスシャフト(10;20)の前記可動アンバランスマス(12,22)と螺旋溝駆動係合状態(18;28)にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の加振機。
【請求項4】
前記中央調整要素(4)が少なくとも1つの回転ベアリング要素を備え、前記回転ベアリング要素を介して、前記加振機(1)が機械、特に振動タンパの少なくとも1つの外部固定点上に配置され保持され得ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の加振機。
【請求項5】
前記中央調整要素(4)の前記主延長軸(ASE)が、2本の前記アンバランスシャフト(10;20)の対称軸(AS)と同軸状に延長することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の加振機。
【請求項6】
ベクトル調整のために回転力要素(30)が設けられ、
振幅調整のために軸方向力要素(40)が設けられ、
前記回転力要素(30)及び前記軸方向力要素(40)が両方とも前記中央調整要素(4)と動作的に接続状態にあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の加振機。
【請求項7】
前記回転力要素(30)及び前記軸方向力要素(40)が前記加振機(1)の片側に配置されることを特徴とする請求項6に記載の加振機。
【請求項8】
ベクトル調整の際に振幅調整も行われるように前記回転力要素(30)及び前記軸方向力要素(40)が互いに機能的に結合されることを特徴とする請求項6に記載の加振機。
【請求項9】
加振振動の結果として生じる加振力のベクトル調節が垂直方向から水平方向に実行される際に、結果として生じる加振力が減少するように振幅調整が行われるよう、前記回転力要素(30)及び前記軸方向力要素(40)が互いに対して機能的に結合されることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の加振機。
【請求項10】
前記軸方向力要素(40)が、前記加振機(1)と前記機械、特に振動タンパの外部固定点との間に配置可能な結合要素(42)を備え、
前記加振機(1)上の前記回転力要素(30)によって開始される回転運動が前記調整要素(4)の軸方向運動に変換されるように、前記結合要素(42)が前記中央調整要素(4)と螺旋溝駆動係合状態(41)にあることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項に記載の加振機。
【請求項11】
前記中央調整要素(4)が少なくとも部分的には中空シャフト(38)として構成され、前記中空シャフト(38)が前記ベクトル調整のための回転シャフト又は回転ベアリングシャフトとして構成されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の加振機。
【請求項12】
前記回転力要素(30)が可変長押し上げシリンダ(32)を備え、前記可変長押し上げシリンダ(32)は、長さの変化によって、前記中央調整要素(4)の前記主延長軸(ASE)と同軸上の前記加振機(1)の回転運動を引き起こすように、前記加振機(1)と機械、特に振動タンパの外部固定点上に前記中央調整要素(4)に対して偏心して配置可能であることを特徴とする請求項6乃至11のいずれか一項に記載の加振機。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の加振機を備える機械、特に振動タンパ等の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有向加振振動を発生するための加振機、特に、振動タンパに取付けられる加振機に関する。この加振機は、平行に伸長し互いに反対方向に回転可能な2本のアンバランスシャフトを備え、これら2本のアンバランスシャフト上には、夫々少なくとも1つの固定アンバランスマス及び夫々少なくとも1つの可動アンバランスマスが配置され、アンバランスシャフト上の可動アンバランスマスの角度位置は、加振機の振動の振幅を調整するための調整デバイスによって変化させることができる。
【0002】
更に、本発明は、機械、特に、上記種類の加振機を有する振動タンパ等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0003】
このような加振機は最先端の技術として知られている。このような加振機は、締固めデバイスのタンピング板等の適当な締固め手段によって交互に与えられる荷重衝撃として地面に打ち込まれ得る有向加振振動を生み出すために使用される。
【0004】
このために、加振機は、平行に伸長し互いに反対方向に回転可能な2本のアンバランスシャフトを備え、これらの2本のアンバランスシャフト上には、少なくとも1つの可動アンバランスマスが配置されている。このアンバランスマスによって、シャフトの回転中に特定の加振振幅で加振方向に加振衝撃が引き起こされる。この振幅は、加振動作中に、締固め結果に直結する。
【0005】
上述の加振機においては、振幅の調整によって振動振幅を変化させ、また、ベクトル調整によって前記振幅のベクトルを変化させる必要がある。振幅調整によって、振動振幅が減少し、結果的に、例えば、打ち込まれる荷重衝撃が減少する。一方、ベクトル調整によって、振動振幅の方向が変化し、上記のような加振機を備える振動タンパを、例えば、前後方向に動作させることができる。
【0006】
上述の「2本のシャフトを有する加振機」において振幅調整を行うために、可動アンバランスマスがアンバランスシャフト上に配置されている。可動アンバランスマスは、アンバランスシャフト上の固定アンバランスマスに対して移動可能であり、特に、アンバランスシャフトを軸に回転可能である。このような運動の結果として、結果として生じる加振振幅が増加又は減少するように、結果として生じる合計のアンバランスマスが影響され得る。
【0007】
このような装置は、例えば、DE 102 41 200 A1に示されており、そこでは、互いに対して回転可能であり平行に伸長する2つのアンバランスシャフトも又、有向加振振動を発生するための振動タンパに配置されている。2本のアンバランスシャフト上には可動アンバランスマスが配置され、可動アンバランスマスは、調整デバイスによって、固定アンバランスマスに対する位置を変化させることができる。このようにして加振機の振幅は影響を受けることができる。
【0008】
同様の装置は、DE 100 57 807及びDE 100 38 206にも示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】DE 102 41 200 A1
【特許文献2】DE 100 57 807
【特許文献3】DE 100 38 206
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
最先端の技術から知られる加振機の欠点は、まず、2本のアンバランスシャフト上の可動アンバランスマスを調整するための調整デバイスが複雑な構成であること、そして、効果的なベクトル調整を行えず、そのようなベクトル調整を単純且つ技術的に確実な方法で行える可能性もないことである。
【0011】
従って、本発明は、加振振動の確実な振幅調整とベクトル調整が頑丈且つコスト効率のよい構成とともに保証されるよう、上記種類の有向加振振動を発生するための加振機を更に発展させるという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、特に振動タンパに取付けられる、有向加振振動を発生するための加振機によって達成される。この加振機は、互いに反対方向に回転可能であり平行に伸長する少なくとも2本のアンバランスシャフトを備え、2本のアンバランスシャフト上には、少なくとも1つの固定アンバランスマス及び少なくとも1つの可動アンバランスマスが夫々配置され、アンバランスシャフト上の可動アンバランスマスの位置が、加振振動の振幅調整のための又は加振力を適応させるための調整デバイスによって可変であり、調整デバイスが、前記2本のアンバランスシャフト上の可動アンバランスマスに作用する振幅調整用の中央調整要素を有し、中央調整要素は、加振振動のベクトル調整目的のために加振機が回転可能な回転軸と同軸上に配置される。
【0013】
更に、この目的は、機械、特に上記種類の加振機を有する振動タンパ等の建設機械によって達成される。
【0014】
本発明に関して、固定アンバランスマスという用語は、アンバランスシャフト上に配置又は設置され、且つアンバランスシャフトと動作的接続状態にあり、可動アンバランスマスとともに調整可能ではないあらゆるアンバランスマスとして理解される。
【0015】
従って、本発明は主に、加振振動又は加振力のベクトルと振幅の両方を調整可能な加振機に関する。本発明による加振機の重要な点は、振動振幅が変化するようアンバランスシャフト上の両アンバランスマスの相対位置を変化させるため、両アンバランスマスに同時に作用する中央調整要素を有する加振力の振幅調整のための調整デバイスを配置したことである。好ましくは、調整デバイスは、アンバランスシャフト上に固定して配置された固定アンバランスマスに対して可動アンバランスマスが移動するように可動アンバランスマスに作用する。要するに、変化する又は変化可能な振動振幅が得られる。
【0016】
上述の中央調整要素における更なる利点は、加振機が振動振幅又は加振力のベクトル調整のために中央調整要素周りに回転可能に位置決めされることができるように中央調整要素の構成を準備することである。従って、中央調整要素は、好ましくは、振幅調整のための調整要素としてだけでなく、ベクトル調整のための回転軸又はベアリングとしても作用する。ベクトル調整のために、加振機は、中央調整要素周りに、又は中央調整要素に対して同軸上に配置されたベアリング要素周りに(特に90°)回転可能であり、それによって、振動振幅の方向が変化する。その結果、ベクトル調整を用いることによって、特に、地表面に対して直交する締固め振幅を、地表面に対して水平に作用する締固め振幅に変化させることができる。
【0017】
ベクトル調整の回転軸は、好ましくは、調整要素の主延長軸と同軸上に伸長し、中央調整要素はそれ自体、ベアリング軸として又はベアリング等の案内軸としても構成可能である。調整要素をベクトル調整の回転軸と同軸上に配置した結果、被処理荷重に対して最適化された非常にコンパクトな加振機が得られる。この利点は、回転軸として又はその軸自体のベアリングとして中央調整要素を構成することにより、更に大きくなる。
【0018】
好ましくは、中央調整要素は、ヨーク要素を介して第1及び第2の軸方向調整要素と動作的接続状態にあり、これらの軸方向調整要素は、2本のアンバランスシャフトと平行に伸長し、中央調整要素の軸方向移動によって可動アンバランスマスが各アンバランスシャフト周りに回転して振幅調整が行われるようにアンバランスシャフトの可動アンバランスマスと螺旋溝駆動係合状態にある。特に、ヨーク要素を介して2つの軸方向調整要素と接続状態にある中央調整要素の構成によって、コンパクトで荷重が最適化された加振機の構成が保証される。ヨーク要素は、好ましくは、振幅調整のために軸方向に作用する調整力とベクトル調整における接線方向に作用する回転力の両方をなくすことができるように、配置される。
【0019】
軸方向調整要素は、好ましくは、技術的にコンパクトな構成のためにアンバランスシャフト内を案内され、次に螺旋溝内の駆動ピンと係合し、次に各可動アンバランスマスと直接的に動力接続状態になる。従って、好ましくは、アンバランスシャフトは、少なくとも部分的には中空シャフトとして配置される。その結果、中央調整要素の主延長軸と平行に軸方向調整要素が軸方向移動する間、各可動アンバランスマスに回転力を伝達することができる。可動アンバランスマスは、特にアンバランスシャフトのベアリング要素によって回転可能に保持され、アンバランスシャフトの縦軸の周りに回転可能になる。当然のことながら、その他の任意の種類の調整可能な構成の可動アンバランスマスを備えることもでき、その調整も、両アンバランスシャフトにおいて中央調整要素により開始され得る。それによって、固定的に又はアンバランスシャフト上に配置された固定アンバランスマスと組み合わせて調整可能性が得られ、この調整可能性は、中央調整要素を介して非常に単純な方法で機能させることができる。
【0020】
機械上又は機械内、特に振動タンパ内の加振機の最適なベアリングは、中央調整要素が少なくとも1つの回転ベアリング要素を備える、又はその回転ベアリング要素と動作的接続状態にあり、その回転ベアリング要素によって、加振機を前記機械上の少なくとも1つの外部固定点に配置可能なときに確保される。その結果、加振機は、ベクトル調整のために、前記機械に対して中央調整要素周り又はその主延長軸周りに回転可能である。
【0021】
好ましくは、中央調整要素の主延長軸は、それ故、ベクトル調整の回転軸も又、2本のアンバランスシャフトの対称軸と同軸状に延長する。その結果、軸方向調整のための長手方向変位と、ベクトルを生成するための回転は、張力を最適化する方法で実現可能である。
【0022】
特別な実施形態では、加振機は、ベクトル調整のための回転力要素と振幅調整のための軸方向力要素とを備える。これらの2つの力要素は、好ましくは、ベクトル又は振幅調整を可能にするため、特に、調整要素の軸周りの回転又は調整要素の軸に平行な移動を引き起こすために、中央調整要素と動作的に接続されるように又は接続可能なように配置される。
【0023】
両方の力要素は、能動的、また受動的な力要素であり得る。作動モータ、チェーン駆動、作動シリンダ、特に油圧シリンダ等としての構成を、能動的力要素としての構成にすることができる。一方の力要素を他方の力要素と動作的に接続させる結合要素の構成は、特に、受動力要素とみなすことができ、以下により詳細に記述する。
【0024】
回転力要素及び軸方向力要素は、更に、加振機の片側、特に中央調整要素の片側に配置することができる。これにより、コンパクトでコスト効率のよい構成が可能になる。
【0025】
好ましくは、回転力要素及び軸方向力要素は、ベクトル調整中、特に回転力要素の作動中に、振幅調整が特に同時に行われるよう互いに機能的に結合され、又は、少なくとも、特に回転力要素の作動中か又は軸方向要素の作動中に、互いに結合される。
【0026】
特に、垂直方向から水平方向に合わせる、加振振動の結果生じる分力のベクトル調整の間、結果として生じる分力が減少する又は調整方向とは反対方向に増加するよう振幅調整が行われるように、回転力要素及び軸方向力要素が互いに機能的に結合される。これは、力のベクトルの方向が垂直方向から水平方向に変化する間、振幅調整も同時に行われる、即ち、分力量が変化する、特に減少する、ということを意味する。このような組み合わせは、垂直能動方向の加振振動の分力の場合、前記機械内に過剰な荷重を引き起こすことなく地面の強固な締固めが確実に行われることを考慮している。一方、水平能動方向の加振振動の結果として生じる分力の場合、前記機械内に強い荷重が生じる。ベクトル調整と振幅調整とを組み合わせた結果として、特に能動方向が垂直から水平に変化する間に有効な力も同時に減少する際に、この問題は考慮される。
【0027】
この相互作用は、水平方向から垂直能動方向へ調整が行われる場合に前記分力が増加するよう、逆の方法で実現することもできると理解される。所望の全ての結合がここでは実現可能である。この結合は、軸方向力要素と回転力要素の機械的結合によって非常に単純な方法で実現可能である。
【0028】
既に上述したように、受動力要素は、能動的に作動する又は作動可能な軸方向作用力要素、例えば、油圧シリンダ又は軸方向調整モータに加え、本発明の範囲内では、軸方向力要素として理解することができる。回転力要素にも同じことが言える。このような受動力要素は、適当な結合要素として、少なくとももう一つの能動的に動作する力要素と動作的接続状態にあり、「牽引作用」の際に他方の能動力要素の作動に従う。その結果、軸方向力要素は、各々、例えば受動的軸方向力要素として構成可能であり、例えば結合アーム形での回転力要素と結合可能であり、回転力要素の作用によって受動運動を行ない、この受動運動は、調整手段に軸方向運動として作用する。上記で説明したように、このような実施形態は、逆の方法で、即ち受動的回転力要素と能動的軸方向力要素等によって、実現することもできる。
【0029】
上記軸方向力要素の受動的な実施形態は、例えば結合要素、特に加振機と前記機械特に振動タンパの外部固定点との間に配置可能な結合アームによって特徴付けられ、前記結合要素又は結合アームは中央調整要素と螺旋溝駆動係合状態にあり、加振機上の回転力要素により開始される回転運動が、結合要素を介して調整要素の軸方向運動に変換される。螺旋溝駆動係合は、例えば、中央調整要素の螺旋溝を備え、中央調整要素は、少なくとも部分的には中空シャフトとして構成され、中空シャフト内で結合要素が補完ドライバと係合する。中央調整要素の軸周りに加振機が回転している間、前記係合によって、中央調整要素のその主延長軸方向の軸方向運動、ひいては、振幅調整に必要な中央調整要素及び中央調整要素と結合した2つの軸方向調整要素の軸方向変位が引き起こされる。
【0030】
これに関連して既に述べたように、中央調整要素は、好ましくは、少なくとも部分的には中空シャフトとして構成され、中空シャフトは、ベクトル調整のための回転シャフトとして又は回転ベアリングシャフトとして構成される。少なくとも1つの螺旋溝は、好ましくは、前記中空シャフトの壁部に配置され、この螺旋溝内へ結合要素のドライバが係入する。このような実施形態では、結合要素は、好ましくは、中央調整要素、特にその中空シャフトに同軸上に配置されてその内部を案内される結合ピンからなる。結合ピンから特に半径方向に突出するドライバは、加振機ひいては中空シャフトの回転中、調整要素の軸方向の軸方向力が得られるように、螺旋溝に係入する。このために、本発明によれば、結合要素特に結合ピンは、好ましくは、調整要素の回転に抵抗し、それによって軸方向運動を引き起こすように、前記機械に対して回転不能に固着される。
【0031】
好ましくは、回転力要素は、可変長押し上げシリンダ又は同様の可変長動力手段からなり、可変長押し上げシリンダ又は同様の可変長動力手段は、加振機上、及び機械特に振動タンパの外部固定点上に、中央調整要素の主延長軸に対して偏心して配置可能であって、特に、長さの変化によって、中央調整要素の軸周りの加振機の回転運動を引き起こす。
【0032】
本発明の更なる実施形態は従属クレームに開示される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明は、実施形態を参照して以下に記述され、それらの実施形態は添付の図面において説明され、これら図面が概略的に示すのは以下の通りである。
【
図2】
図1に示す実施形態で加振機ハウジングの部分断面図である。
【
図3】
図1に示す実施形態で加振機ハウジングを完全に取り去った状態である。
【
図4】
図3に示す実施形態の等角投影分解図である。
【
図5】
図4に示す実施形態を他の画角で表す図である。
【
図6】
図1に示す実施形態の等角投影図で振幅及びベクトル調整中を表す図である。
【
図7】
図1に示す実施形態の等角投影図で振幅及びベクトル調整中を表す図である。
【
図8】
図1に示す実施形態の等角投影図で振幅及びベクトル調整中を表す図である。
【
図9】本発明による加振機の第二の実施形態の等角投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下では、同一又は同様に機能するコンポーネントには同一の参照番号を使用し、場合によっては区別するために上付きの指標を備えている。
【0035】
図1は、本発明に係る加振機1の一実施形態の等角投影図を示す。
【0036】
加振機1は、有向加振振動を発生可能にする加振手段7の収容空間を形成するハウジングヘッド5を有する加振機ハウジング3を備える。図示の加振機1は、建設機械、特に振動タンパに取付けることができる。
【0037】
図2は、
図1の実施形態を示し、加振手段7がはっきりと見えるように加振機ハウジング3を部分的に取り去ってある。加振手段7は、2本のアンバランスシャフト10、20に関係し、2本のアンバランスシャフト10、20上には、可動アンバランスマス12、22及び固定アンバランスマス14、24の両方が配置されている。
【0038】
可動アンバランスマス12、22は、固定アンバランスマス14、24に対して、軸方向力要素40を備える調整デバイス2を介して移動可能であり、特に、2本のアンバランスシャフト10、20の回転中に加振振動の振幅が変化するように各アンバランスシャフト10、20周りに回転可能である。
【0039】
更に、加振機1は、回転力要素30を備え、回転力要素30はここでは押し上げシリンダ32として構成され、長さを変えることにより、この場合は中央調整要素4の主延長軸と同軸で延在する軸A
SE周りに加振機1を回転可能にするように、ハウジングヘッド5に偏心して固定されている(
図3参照)。
【0040】
ここで図示する力要素、即ち、回転力要素30及び軸方向力要素40によって、結果的に、軸A
SE周りのベクトル調整(加振機1の回転による)及び振幅調整(可動アンバランスマス12、22の調整による)が可能になる。この動作を開始するために、以下により詳細に記述するが、回転力要素30及び軸方向力要素40は少なくとも1つの固定点8で建設機械に対して固定される(ここでは概略的にのみ示す)。この固定点8は、回転力要素30及び軸方向力要素40によって動作が開始される際、静止状態を維持している。
【0041】
図3は、加振機ハウジング3を完全に取り去って回転力要素30を少しずらすことで、
図2をより明解に示している。
【0042】
図3は、可動アンバランスマス12、22及び固定アンバランスマス14、24を備える2本のアンバランスシャフト10、20を明解に示す。回転させると、これらのアンバランスマスは、有向加振振動を生じる。2本のアンバランスシャフト10、20は、駆動要素、特にモータ(図示せず)と動作的に接続可能な駆動ギアホイール52によって駆動される。2本のアンバランスシャフト10、20は、駆動ギアホイール52を介してアンバランスシャフト10、20を反対方向に回転動作させるように、ギアホイール噛合部54を介して互いに動作的に接続している。
【0043】
上述したように、軸方向力要素40は、可動アンバランスマス12、22を調整するために設けられており、軸方向力要素40は、2本の軸方向調整要素16、26を、2本のアンバランスシャフト10と20の間に伸長する対称軸A
Sに沿って軸方向に運動させる。これらの軸方向調整要素16、26は、軸方向調整要素16、26が軸方向運動する際、固定アンバランスマス14、24に対して可動アンバランスマス12、22が回転動作するように、可動アンバランスマス12、22と螺旋溝駆動係合状態41にある。
【0044】
このために必要な結合は、この実施形態では、駆動ピン21が受動的に係入する各1つの螺旋溝19によるものであり、駆動ピン21の方は、各軸方向調整要素16及び26と受動的に接続されている。軸方向調整要素16、26の軸方向運動中、結果的に、固定アンバランスマス14、24又はアンバランスシャフト10、20に対して可動アンバランスマス12、22が回転する。
【0045】
本発明によれば、軸方向調整要素16、26は、ヨーク要素6を介して上述の中央調整要素4と接続され、前記中央調整要素4によって、2本の軸方向調整要素16、26の同期した軸方向運動が可能になり、それ故可動アンバランスマス12、22の同期した調整が可能になる。これに関係して、2本のアンバランスシャフト10、20上に配置された螺旋溝19は反対方向に配置され、それによって、軸方向調整要素16、26を介して、可動アンバランスマス12、22が反対方向に調整される。
【0046】
本発明によれば、中央調整要素4は、更に、中央調整要素4の軸A
SE周りの加振機1(特に
図1を参照)の回転が可能であるように配置されるため、中央調整要素4によって、振幅調整(可動アンバランスマス12,22の動作による)が可能になるだけでなく、ベクトル調整(軸A
SE周りの加振手段7又は加振機1の回転による)も可能になる。
【0047】
図2に関して既に説明したように、このベクトル調整のために、押し上げシリンダ32を有する回転力要素30が加振機1に配置され、ベクトル調整は、押し上げシリンダ32の延伸又は収縮によって軸A
SE周りに加振機1が回転するように、中央調整要素4の軸A
SEに対して偏心して行われる。このために、押し上げシリンダ32は、加振機1が取付けられる機械の固定点に対して1つの取付け端部9によって固定される。この実施の形態では、軸方向力要素40は、回転力要素30又は押し上げシリンダ32によって開始され得るベクトル調整と直接結合され、軸方向要素は、この場合、受動的な軸方向力要素40として構成され、回転力要素30と直接的に動作的に接続されている。
【0048】
このために、軸方向力要素40は、加振機1と、他の又は同一の外部固定点(図示せず)との間で機械に配置可能な結合要素42を備える。結合要素42は、加振機1上の回転力要素30によって開始される軸A
SE周りの回転運動が軸A
SEと平行な中央調整要素4の軸方向動作に変換するよう、中央調整要素4と螺旋溝駆動係合状態41にある。
【0049】
このために、中央調整要素4は、少なくとも部分的には中空シャフト38として構成され、このシャフトは壁部に螺旋溝50を有し、螺旋溝50にはドライバ48が受動的に係入する。補完的に配置された結合ピン46は、中空シャフト38の内部空間に係入する。ドライバ48は、この結合ピン46上に配置され、螺旋溝50と動作的に接続状態にある。
【0050】
結合アーム44は結合ピン46の自由端47に配置され、結合アーム44はその自由端45によって機械(図示せず)の固定点に固定される。結合要素42又は結合アーム44と固定点との静的な結合の結果、加振機1が中央調整要素4の軸A
SE周りに回転する間、軸A
SEに沿って中央調整要素4が軸方向に変位する。
【0051】
これは、ベクトル調整(軸A
SE周りの回転を引き起こす)の際、振幅調整も同時に行われることを意味する。これによって、結果的に、例えば、
図1乃至
図5で発生する垂直方向の加振振動の場合、最大振動振幅又は最大加振力が働く一方、(例えば、
図8で働く)略水平方向の振動振幅又は加振力の場合、振動振幅自体も同時に減少し、結果、加振機1及び機械にかかる負荷が減少する。
【0052】
図4及び
図5は、
図3に示す実施形態を部分分解図で示し、押し上げシリンダ32の図示は省略している。
図4及び
図5は、中空シャフト38としての中央調整要素4と、中空シャフト内に配置され且つ結合ピン46又はそのドライバ48と動作的係合状態にある螺旋溝50の配置を明瞭に示している。
【0053】
また、
図4及び
図5は、可動アンバランスマス12、22上の螺旋溝19が駆動ピン21と動作的係合状態にある螺旋溝駆動係合部18、28の実施形態を示している。
【0054】
ヨーク要素6に対して軸方向調整要素16、26を回転可能にするため、各収容領域11にはベアリング要素13が設けられ、各収容領域11には、軸方向調整要素16、26が回転可能に保持されているが、軸A
SEに平行な軸方向には固定されている。
【0055】
図6乃至
図8は、振幅とベクトルの複合調整の流れを示す。
【0056】
図6は、実質的に水平面に配置された2本のアンバランスシャフト10、20を示す。可動アンバランスマス12、22は、更に、固定アンバランスマス14、24に対して、最大振動振幅又は最大加振力F
Vが垂直方向に得られるよう配置される。
【0057】
加振機1は、アンバランスシャフト10、20が水平面ではなく垂直面に伸長するよう、回転力要素30又は押し上げシリンダ32を介して軸A
SE周りに回転可能である。これを
図8に示す。
【0058】
このために、押し上げシリンダ32が、ハウジングヘッド5上の偏心ピン34に対する係合を介して軸A
SE周りに加振機1をねじるように作動し、その位置を変化、特に延長させる(
図2を参照)。
【0059】
可動アンバランスマス12、22が固定アンバランスマス14、24に対してねじられる状態で、回転力要素30と軸方向力要素40の間の機能的結合によって、ベクトル調整と同時に振幅調整も行われる。その結果、略水平方向の減少した振動振幅又は加振力F
Hは、この実施形態では、垂直方向に働く加振力F
Vの一部に相当する。
【0060】
要約すれば、
図6乃至
図8は、回転力要素30及び軸方向力要素40の結合によってベクトル調整と振幅調整を同時に行なう方法を明らかにする。押し上げシリンダ32が中央調整要素4周りに加振機1を回転させると、螺旋溝駆動係合状態41によって、結合ピン46上で軸A
SEに沿って中央調整要素4が軸方向に移動し、螺旋溝駆動係合部18又は28によって、可動アンバランスマス12、22が回転する。
【0061】
図9は、本発明による加振機1の第二の実施形態を示すものであり、第二の実施形態は、その基本的な構成に関して、
図1乃至
図8に従う上述の加振機1に対応する。この場合も、2本のアンバランスシャフト10、20は、互いに対して同軸上に、対称軸A
Sに対して対称に配置され、互いに反対方向に回転するように互いに結合される。アンバランスシャフト10、20上に配置された可動アンバランスマス12、22の調整も、再び2つの軸方向調整要素16、26によって行われ、2つの軸方向調整要素16、26は、ヨーク要素6を介して互いに結合され、主に中央調整要素4によって作動される。
【0062】
ここで図示する実施形態では、2つの離間配置された力要素が中央調整要素4上に配置され、これら2つの離間配置された力要素は軸方向力要素40及び回転力要素30であり、これらは振幅調整又はベクトル調整のために別々に作動可能である。従って、軸方向力要素40によって、一体化油圧シリンダ(図示せず)を使用して中央調整要素4のその主延長軸A
SEに沿った軸方向偏位が可能になり、前記主延長軸A
SEは対称軸A
Sと同軸上に延長するものである。
【0063】
一方で、回転力要素30によって、中央調整要素4の回転が可能になり、従って、加振手段7又は加振機1の回転が可能になる。
【0064】
本発明によれば、回転力要素30及び軸方向力要素40は、加振機1の片側に配置される。これによって、非常にコンパクトでコスト効率のよい加振機1が得られる。
【0065】
また、この実施形態においては、適切な制御デバイスによって振幅調整とベクトル調整を結合することができ、前記制御デバイスは、特に、回転力要素30のベクトル調整を作動させると同時に又はそれに従って軸方向力要素40の振幅調整を制御する、又はその逆に軸方向力要素40の振幅調整を作動させると同時に又はそれに従って回転力要素30のベクトル調整を制御するように構成される。
【0066】
本発明は、有向加振振動を発生するための加振機、特に、振動タンパに取付けられる加振機に用いることが可能である。
【0067】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構造に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0068】
1 加振機
2 調整デバイス
4 中央調整要素
6 ヨーク要素
10,20 アンバランスシャフト
12,22 可動アンバランスマス
14,24 固定アンバランスマス
16 第1の軸方向調整要素
18,28 螺旋溝駆動係合状態
26 第2の軸方向調整要素
30 回転力要素
32 可変長押し上げシリンダ
38 中空シャフト
40 軸方向力要素
42 結合要素