特許第5963616号(P5963616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963616
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】デオドラント剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20160721BHJP
   A61K 8/897 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 8/898 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20160721BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   A61K8/891
   A61K8/897
   A61K8/898
   A61K8/31
   A61K8/37
   A61K8/34
   A61K8/26
   A61Q15/00
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-192648(P2012-192648)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-47186(P2014-47186A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年2月2日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】100137419
【弁理士】
【氏名又は名称】桂田 正徳
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 格
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−175948(JP,A)
【文献】 特開2002−348380(JP,A)
【文献】 特開2012−246446(JP,A)
【文献】 特開2013−151660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シリコーン皮膜形成剤、(B)液状油分及び低級アルコールの内の少なくとも1種、並びに(C)デオドラント成分を含有する原液と、(D)噴射剤とからなり、前記(A)成分がトリメチルシロキシケイ酸、フェニル変性トリメチルシロキシケイ酸、フルオロ変性トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン、(アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ)コポリマー、(アクリル酸アルキル/ジアセトンアミド/アモジメチコン)コポリマーAMP、(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー、(アクリレーツ/アクリス酸エチルヘキシル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、及び(アクリレーツ/アクリル酸ベヘニル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマーから選ばれる少なくとも1種を含有する、デオドラント剤。
【請求項2】
前記(A)成分がトリメチルシロキシケイ酸を含有する請求項1に記載のデオドラント剤。
【請求項3】
前記(A)成分の含有量が、デオドラント剤100質量%中、0.01〜5質量%である請求項1又は2に記載のデオドラント剤。
【請求項4】
更に原液中に(E)粉体を含有する請求項1〜3の何れかに記載のデオドラント剤。
【請求項5】
更に原液中に(F)清涼化剤を含有する請求項1〜4の何れかに記載のデオドラント剤。
【請求項6】
前記(A)成分以外の非親水性皮膜形成剤の含有量と(A)成分の含有量との比((A)成分以外の非親水性皮膜形成剤の含有量/(A)成分の含有量)が1以下であり、
親水性皮膜形成剤の含有量と前記(A)成分の含有量との比(親水性皮膜形成剤の含有量/(A)成分の含有量)が1以下である請求項1〜5の何れかに記載のデオドラント剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防臭効果の持続性に優れるデオドラント剤に関する。更に詳しくは、耐汗性に優れ、防臭効果の持続性に優れるデオドラント剤に関する。
【背景技術】
【0002】
デオドラント剤は、体臭を防ぐことを目的とする。
【0003】
体臭は、人体から分泌される汗や皮脂と体表の微生物の働きにより生じることが知られている。
【0004】
したがって、体臭を防ぐための方法としては、例えば、殺菌剤や抗菌剤を用いることによって体表の微生物を抑える方法、金属酸化物などの制汗剤を用いることにより汗の分泌を抑える方法、植物抽出物などの酸化防止剤を用いることによって皮脂の酸化を抑える方法、酸化亜鉛などの塩基性物質を用いることによって体臭の原因となる低級脂肪酸を錯形成させて体臭を抑える方法、香料を用いることにより発生した体臭をマスキングする方法などが知られている(非特許文献1を参照)。
【0005】
しかしながら、体表から分泌される汗を完全に抑えることはできないため、前記方法で体臭を防ぐために用いられる成分は、体表から分泌される汗により容易に流れ落ちてしまう。そのため、防臭効果を長時間にわたり持続させることは困難である。特に、汗の分泌が促される夏場などの高温下では、防臭効果の持続に関して十分に満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「新化粧品学」、南山堂、2001年、p.510−515
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、耐汗性に優れ、防臭効果の持続性に優れるデオドラント剤の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
〔1〕(A)シリコーン皮膜形成剤、(B)液状油分及び低級アルコールの内の少なくとも1種、並びに(C)デオドラント成分を含有する原液と、(D)噴射剤とからなり、前記(A)成分がトリメチルシロキシケイ酸、フェニル変性トリメチルシロキシケイ酸、フルオロ変性トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン、(アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ)コポリマー、(アクリル酸アルキル/ジアセトンアミド/アモジメチコン)コポリマーAMP、(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー、(アクリレーツ/アクリス酸エチルヘキシル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、及び(アクリレーツ/アクリル酸ベヘニル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマーから選ばれる少なくとも1種を含有する、デオドラント剤、
〔2〕前記(A)成分がトリメチルシロキシケイ酸を含有する前記〔1〕に記載のデオドラント剤、
〔3〕前記(A)成分の含有量が、デオドラント剤100質量%中、0.01〜5質量%である前記〔1〕又は〔2〕に記載のデオドラント剤、
〔4〕更に原液中に(E)粉体を含有する前記〔1〕〜〔3〕の何れかに記載のデオドラント剤、
〔5〕更に原液中に(F)清涼化剤を含有する前記〔1〕〜〔4〕の何れかに記載のデオドラント剤、
〔6〕前記(A)成分以外の非親水性皮膜形成剤の含有量と(A)成分の含有量との比((A)成分以外の非親水性皮膜形成剤の含有量/(A)成分の含有量)が1以下であり、親水性皮膜形成剤の含有量と前記(A)成分の含有量との比(親水性皮膜形成剤の含有量/(A)成分の含有量)が1以下である前記〔1〕〜〔5〕の何れかに記載のデオドラント剤、
に関する。

【発明の効果】
【0009】
本発明のデオドラント剤は、製剤の耐汗性に優れるという効果を有し、デオドラント成分が汗により流れ落ちることを低減できるため、防臭効果の持続性に優れるという効果を奏する。加えて、洗浄剤による洗い落ちに優れるという効果を奏する。
【0010】
更に、本発明のデオドラント剤に粉体を含有する場合、粉体が汗により流れ落ちることを低減できるため、肌のさらさら感、並びにソフトフォーカス効果の持続性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のデオドラント剤は、(A)シリコーン皮膜形成剤、(B)液状油分及び低級アルコールの内の少なくとも1種、並びに(C)デオドラント成分を含有する原液と、(D)噴射剤とからなる。
【0012】
以下、本発明のデオドラント剤に含まれる成分について、詳細に説明する。
【0013】
本発明のデオドラント剤の原液には、(A)成分を必須成分として含有する。(A)成分は、シリコーンの架橋体や高分子の官能基にシリコーン骨格を有する高分子化合物のことである。(A)成分は、特に限定されないが、例えば、トリメチルシロキシケイ酸、ポリアルキルシルセスキオキサン、アクリルシリコーン樹脂などを用いることができる。(A)成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
トリメチルシロキシケイ酸は、シリコーン系皮膜形成剤の1種であり、MQレジンとも称される成分である。トリメチルシロキシケイ酸は、種々の皮膜硬度を有するトリメチルシロキシケイ酸を用いることができる。本発明で用いるトリメチルシロキシケイ酸の皮膜硬度は特に限定されず、任意の皮膜硬度を有するトリメチルシロキシケイ酸を1種のみ用いてもよく、皮膜硬度の異なるトリメチルシロキシケイ酸を2種以上併用してもよい。また、トリメチルシロキシケイ酸は、種々の官能基により修飾された変性トリメチルシロキシケイ酸を用いることができる。変性トリメチルシロキシケイ酸は、特に限定されないが、例えば、フェニル変性トリメチルシロキシケイ酸、フルオロ変性トリメチルシロキシケイ酸などを用いることができる。変性トリメチルシロキシケイ酸は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、トリメチルシロキシケイ酸と変性トリメチルシロキシケイ酸とを併用してもよい。
【0015】
トリメチルシロキシケイ酸は、市販品を用いてもよい。本発明においては、他の成分との混合原料の形態の市販品を用いてもよい。具体的なトリメチルシロキシケイ酸の市販品としては、トリメチルシロキシケイ酸の市販品は、例えば、SR1000、SS4230、SS4230(何れも商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、BY11‐018、DC593(何れも商品名、東レ・ダウコーニング社製)、KF‐7312J、KF‐7312K、KF‐7312T、X‐21‐5249、X−21‐5250、KF‐9021、X−21‐5595、X−21‐5616(何れも商品名、信越シリコーン社製)などを用いることができる。具体的な変性トリメチルシロキシケイ酸の市販品は、例えば、SilShine 151、XS66‐B8226、XS‐66‐C1191、XS66‐B8636(何れも商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)などを用いることができる。
【0016】
アクリルシリコーン樹脂は、側鎖がシリコーン修飾されたアクリル樹脂である。アクリルシリコーン樹脂は、特に限定されないが、例えば、アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ)コポリマー、(アクリル酸アルキル/ジアセトンアミド/アモジメチコン)コポリマーAMP、(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマーなどを用いることができる。アクリルシリコーン樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
アクリルシリコーン樹脂は、市販品を用いてもよい。本発明においては、他の成分との混合原料の形態の市販品を用いてもよい。具体的なアクリルシリコーン樹脂の市販品としては、例えば、FA 4001 CM Silicone Acrylate、FA 4002 ID Silicone Acrylate、SETSIL 314(何れも商品名、東レ・ダウコーニング社製)、KP‐541、KP‐543、KP‐545、KP‐549、KP‐550、KP‐575、KP‐561P、KP‐562P(何れも商品名、信越シリコーン社製)などを用いることができる。
【0018】
ポリアルキルシルセスキオキサンは、アルキル変性したシリコーンの分岐架橋体のことである。ポリアルキルシルセスキオキサンは、特に限定されないが、例えば、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサンなどを用いることができる。ポリアルキルシルセスキオキサンは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
ポリアルキルシルセスキオキサンは、市販品を用いてもよい。本発明においては、用いる市販品は、他の成分との混合原料の形態の市販品を用いてもよい。具体的なポリアルキルシルセスキオキサンの市販品としては、例えば、SilForm Flexible resin、SilForm Flexible fluid(何れも商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、670 Fluid(商品名、東レ・ダウコーニング社製)などを用いることができる。
【0020】
(A)成分の含有量は、耐汗性に優れたデオドラント剤を得る観点から、デオドラント剤100質量%中、0.01質量%以上であり、好ましくは0.03質量%以上である。また、洗浄剤による洗い落ちに優れたデオドラント剤を得る観点から、デオドラント剤100質量%中、5質量%以下であり、好ましくは4質量%以下である。これらの観点から、(A)成分の含有量は、デオドラント剤100質量%中、0.01〜5質量%であり、好ましくは0.03〜4質量%である。
【0021】
(A)成分は、任意成分である親水性皮膜形成剤と併用することができる。(A)成分と親水性皮膜形成剤とを併用する場合、防臭効果の持続性に一層優れたデオドラント剤を得る観点から、親水性皮膜形成剤の含有量と(A)成分の含有量との比(親水性皮膜形成剤の含有量/(A)成分の含有量)は、好ましくは1以下であり、より好ましくは0.75以下であり、本発明のデオドラント剤に親水性皮膜形成剤を実質的に含有しないことが更に好ましい。したがって、任意成分である親水性皮膜形成剤の含有量と(A)成分の含有量との比は、好ましくは0〜1であり、より好ましくは0〜0.75であり、本発明のデオドラント剤に親水性皮膜形成剤を実質的に含有しないことが更に好ましい。
【0022】
(A)成分の含有量に対して親水性皮膜形成剤の含有量が多い場合、形成される皮膜が親水性皮膜形成剤の影響を大きく受け、耐汗性が低下し、本発明の効果を奏しないことがある。
【0023】
(A)成分は、任意成分である(A)成分以外の非親水性皮膜形成剤と併用することができる。(A)成分と(A)成分以外の非親水性皮膜形成剤とを併用する場合、洗浄剤による洗い落ちに一層優れたデオドラント剤を得る観点から、(A)成分以外の非親水性皮膜形成剤の含有量と(A)成分の含有量との比((A)成分以外の非親水性皮膜形成剤の含有量/(A)成分の含有量)は、好ましくは1以下であり、より好ましくは0.75以下であり、本発明のデオドラント剤に(A)成分以外の非親水性皮膜形成剤を実質的に含有しないことが更に好ましい。したがって、任意成分である(A)成分以外の非親水性皮膜形成剤の含有量と(A)成分の含有量との比は、好ましくは0〜1であり、より好ましくは0〜0.75であり、本発明のデオドラント剤に(A)成分以外の非親水性皮膜形成剤を実質的に含有しないことが更に好ましい。
【0024】
(A)成分の含有量に対して、(A)成分以外の非親水性皮膜形成剤の含有量が多い場合、形成される皮膜が(A)成分以外の非親水性皮膜形成剤の影響を大きく受け、洗浄剤による洗い落ちが低下し、本発明の効果を奏しないことがある。
【0025】
本発明のデオドラント剤は、(B)成分を必須成分として含有する。液状油分は、25℃において液状の油性成分のことである。また、低級アルコールは、炭素数が1〜4の低級アルコールのことである。(B)成分は、特に限定されないが、例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質イソパラフィン、スクワラン、α−オレフィンオリゴマー、オリーブ油、アーモンド油、ピーナッツ油、アブラヤシ油、ツバキ油、ヒマシ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、オクタン酸イソセチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソノニル、コハク酸ジオクチル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ホホバ油、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、アルキル変性シリコーン、アミノグリコール変性シリコーン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどを用いることができる。(B)成分は、1成分のみを用いてもよく、2成分以上を併用してもよい。
【0026】
(B)成分は、洗浄剤による洗い落ちに一層優れたデオドラント剤を得る観点から、25℃における動粘度が3000mm/s以下である(B)成分を含有することが好ましく、流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、軽質イソパラフィン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、25℃における動粘度が1000mm/s以下のメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、エタノール、イソプロパノールから選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0027】
(B)成分の含有量は特に限定されず、他の成分の配合量に応じて適宜変更することができる。(A)成分の製剤中での溶解性及び安定性に一層優れたデオドラント剤を得る観点、並びに皮膚や衣類上での皮膜の密着性に一層優れ、防臭効果の持続性に一層優れたデオドラント剤を得る観点から、(B)成分の含有量は、デオドラント剤100質量%中、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上である。また、速乾性に優れ、塗布後の肌のべたつき感が一層低減されたデオドラント剤を得る観点、並びに洗浄剤による洗い落ちに一層優れたデオドラント剤を得る観点から、(B)成分の含有量は、デオドラント剤100質量%中、好ましくは65質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下である。これらの観点から、(B)成分の含有量は、デオドラント剤100質量%中、好ましくは0.01〜65質量%であり、より好ましくは0.05〜60質量%である。
【0028】
(A)成分を製剤中に安定に溶解した状態で含有するためには、(B)成分が必須である。しかしながら、(A)成分が形成する皮膜は(B)成分により可塑化や軟化、溶解し易く、使用時に皮膜の形成阻害や脆弱化が生じることがある。一方、(B)成分を含有しない場合、(A)成分が製剤中で析出する危険性が高く、また、使用時に(A)成分により形成される皮膜は、皮膚や衣類に密着せず、固形分として剥がれ落ちてしまう。本発明のデオドラント剤は、(A)〜(B)成分及び(D)成分を含有することにより、製剤中では(A)成分を安定に溶解した状態とし、使用時には(D)成分の気化と供に(B)成分の気化を促し、(A)成分の強固な皮膜を効率良く肌に密着して形成することができる。
【0029】
本発明のデオドラント剤の原液には、(C)デオドラント成分を必須成分として含有する。(C)成分を含有させることにより、防臭効果を付与することができる。具体的な(C)成分としては、例えば、殺菌剤、制汗剤、抗酸化剤、pH調整剤、塩基性物質、防臭効果を有する植物抽出物などを例示することができる。(C)成分は、1成分のみを用いてもよく、2成分以上を併用してもよい。
【0030】
本発明においては、(A)成分により(C)成分が汗により流れ落ちることを防ぐことができるため、防臭効果の持続性に優れたデオドラント剤を得ることができる。
【0031】
(C)成分は、防臭効果の持続性に一層優れたデオドラント剤を得る観点から、殺菌剤および制汗剤の内の少なくとも1種を含むことが好ましく、殺菌剤及び制汗剤の双方を含むことがより好ましい。
【0032】
具体的な殺菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、フェノール、トリクロロカルバニリド、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、サリチル酸、ソルビン酸、塩化リゾチームなどを例示することができる。殺菌剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
殺菌剤は、制菌効果に一層優れたデオドラント剤を得る観点、並びに皮膚刺激性が一層低減されたデオドラント剤を得る観点から、25℃において固体である殺菌剤を含むことが好ましく、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、塩化リゾチームの内の少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0034】
殺菌剤は、市販品を用いてもよい。本発明においては、他の成分との混合原料の形態の市販品を用いてもよい。具体的な殺菌剤の市販品としては、例えば、イソプロピルメチルフェノール:イソプロピルメチルフェノール(商品名、大阪化成社製)、トリクロサン:イルガサン DP 300(商品名、BASF社製)、塩化リゾチーム:塩化リゾチーム(商品名、キューピー社製)などを用いることができる。
【0035】
(C)成分である殺菌剤の含有量は、他の成分の配合量に応じて適宜変更することができる。殺菌剤の含有量は、制菌効果に一層優れたデオドラント剤を得る観点から、デオドラント剤100質量%中、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上である。また、殺菌剤による皮膚刺激性が一層低減されたデオドラント剤を得る観点から、デオドラント剤100質量%中、好ましくは0.3質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。これらの観点から、殺菌剤の含有量は、デオドラント剤100質量%中、好ましくは0.001〜0.3質量%であり、より好ましくは0.01〜0.1質量%である。
【0036】
具体的な制汗剤としては、例えば、クロルヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸亜鉛、パラフェノールスルホン酸亜鉛、ジルコニウム塩、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインアルミニウム塩、タンニン酸などを例示することができる。制汗剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
制汗剤は、制汗効果に優れ、皮膚刺激性が一層低減されたデオドラント剤を得る観点から、25℃において固体である制汗剤を含むことが好ましく、クロルヒドロキシアルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛の内の少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0038】
制汗剤は、市販品を用いてもよい。本発明においては、他の成分との混合原料の形態の市販品を用いてもよい。具体的な制汗剤の市販品としは、例えば、クロルヒドロキシアルミニウム:ALヒドロキシクロライド47(商品名、マツモト交商社製)、マイクロドライ3115(商品名、Summit Research Labs社製)、PAC#1000(商品名、多木化学社製)、硫酸アルミニウムカリウム:カリミョウバン(商品名、大明化学工業社製)、パラフェノールスルホン酸亜鉛:スルホ石炭酸亜鉛(商品名、マツモトファインケミカル社製)などを用いることができる。
【0039】
(C)成分である制汗剤の含有量は、他の成分の配合量に応じて適宜変更することができる。制汗剤の含有量は、制汗効果に一層優れたデオドラント剤を得る観点から、デオドラント剤100質量%中、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上である。また、制汗剤による皮膚刺激性が一層低減されたデオドラント剤を得る観点から、デオドラント剤100質量%中、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下である。これらの観点から、制汗剤の含有量は、デオドラント剤100質量%中、好ましくは0.1〜3質量%であり、より好ましくは0.2〜2質量%である。
【0040】
本発明のデオドラント剤は、(A)成分と(C)成分とを含有することにより、(C)成分を皮膚や衣類に定着させ、防臭効果の持続性を向上することができる。
【0041】
また、(C)成分が固体として皮膚や衣類に付着していると、皮膚から分泌される汗や皮脂により都度徐々に溶解し、防臭効果の持続性を向上することができる。しかしながら、皮膚や衣類に付着した固体は容易に剥がれ落ち、汗により容易に流れ落ちる。また、固体である(C)成分を含有する場合であっても、固体である(C)成分を溶剤に溶解させて製剤中に含有すると、塗布後も皮膚上で溶解したままとなり、防臭効果の持続性を向上することができないことがある。本発明のデオドラント剤は、(A)成分と、25℃において固体である(C)成分と、並びに(D)成分とを含有することにより、(D)成分の気化と供に(C)成分の固化を促し、固体となった(C)成分を(A)成分により皮膚や衣類に定着させることにより、防臭効果の持続性を一層向上することができる。
【0042】
また、本発明のデオドラント剤の原液には、(E)粉体を含有してもよい。(E)成分は、例えば、無機粉体、有機粉体、合成高分子粉体などを用いることができる。無機粉体は、例えば、タルク、カオリン、セリサイト、マイカ、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ゼオライト、アパタイトなどを用いることができる。有機粉体は、例えば、セルロース末、シルク末、トウモロコシデンプンなどを用いることができる。合成高分子粉体は、例えば、ポリエチレン末、ナイロン末、ポリアクリル酸アルキル、架橋ポリスチレン、メチルシロキサン網状重合体、架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体、シリコーンエラストマーなどを用いることができる。また、(E)成分は、疎水化処理または親水化処理などの表面処理を行った改質粉体を用いても良い。改質粉体は、例えば、シリル化シリカ、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウムなどを用いることができる。(E)成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本発明においては、(A)成分により(E)成分が汗により流れ落ちることを低減できるため、肌のさらさら感、並びにソフトフォーカス効果に一層優れるデオドラント剤を得ることができる。
【0044】
(E)成分は、肌のさらさら感に一層優れたデオドラント剤を得る観点、並びにソフトフォーカス効果に一層優れたデオドラント剤を得る観点から、セリサイト、タルク、無水ケイ酸、ポリエチレン末、ポリアクリル酸アルキル、メチルシロキサン網状重合体、網状型シリコーンブロック共重合体、シリコーンエラストマー、シリル化シリカ、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウムの内の少なくとも1種を含むことが好ましく、タルク、無水ケイ酸、シリル化シリカ、メチルシロキサン網状重合体、網状型シリコーンブロック共重合体、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウムの内の少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0045】
(E)成分の含有量は、他の成分の配合量に応じて適宜変更することができる。(E)成分の含有量は、肌のさらさら感に一層優れたデオドラント剤を得る観点、並びにソフトフォーカス効果に一層優れたデオドラント剤を得る観点から、デオドラント剤100質量%中、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。また、(E)成分による肌の白浮きが一層低減されたデオドラント剤を得る観点から、デオドラント剤100質量%中、好ましくは18質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。これらの観点から、(E)成分の含有量は、デオドラント剤100質量%中、好ましくは0.1〜18質量%であり、より好ましくは0.5〜15質量%である。
【0046】
本発明のデオドラント剤には、(F)清涼化剤を用いることができる。(F)成分は、特に限定されないが、例えば、メントール、メンチルグリセリルエーテル、乳酸メンチル、ハッカ油、ペパーミント油、カンファー、イシリンなどを用いることができる。(F)成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
本発明のデオドラント剤に(F)成分を含有した場合、(F)成分を皮膚や衣類に定着させ、清涼感の持続性を向上することができる。
【0048】
また、(F)成分が固体として皮膚や衣類に付着していると、皮膚から分泌される汗や皮脂により都度徐々に溶解し、清涼感の持続性を向上することができる。しかしながら、皮膚や衣類に付着した固体は容易に剥がれ落ち、汗により容易に流れ落ちる。また、固体である(F)成分を溶剤に溶解させて製剤中に含有する場合、塗布後も皮膚上で溶解してしまい、清涼感の持続性を向上させることができないことがある。本発明のデオドラント剤は、(A)成分と、25℃において固体である(F)成分と、(D)噴射剤とを含有することにより、(D)成分の気化と供に(F)成分の固化を促し、固体となった(F)成分を(A)成分により皮膚や衣類に定着させることにより、清涼感の持続性を一層向上することができる。
【0049】
(F)成分は、清涼感の持続性に一層優れたデオドラント剤を得る観点から、25℃において固体である(F)成分を含むことが好ましく、l−メントールを含むことがより好ましい。
【0050】
(F)成分の含有量は特に限定されず、他の成分の配合量に応じて適宜変更することができる。清涼感の持続性に一層優れたデオドラント剤を得る観点から、(F)成分の含有量は、デオドラント剤100質量%中、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上である。また、(F)成分による皮膚への刺激が一層低減されたデオドラント剤を得る観点から、(F)成分の含有量は、デオドラント剤100質量%中、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。これらの観点から、(F)成分の含有量は、デオドラント剤100質量%中、好ましくは0.001〜3質量%であり、より好ましくは0.01〜1質量%である。
【0051】
本発明のデオドラント剤は、任意成分として(G)界面活性剤を用いることができる。G成分としては、例えば、アルキルグリセリルエ−テル、ポリオキシアルキレンアルキルエ−テル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、グリコ−ル脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリルエ−テル脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、シリコ−ン界面活性剤などのノニオン界面活性剤、高級脂肪酸石けん、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アシルN‐メチルタウリン塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、N‐アシルアミノ酸塩などのアニオン界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムなどのカチオン界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤を用いることができる。(G)成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
本発明のデオドラント剤が(G)成分を多量に含有する場合、塗布後、汗により再乳化が起こり、耐汗性が低下し、本発明の効果を奏しないことがある。特に(G)成分がシリコーン界面活性剤を含む場合、(A)成分との親和性に優れ、再乳化が生じ易い。
【0053】
シリコーン界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、ポリエチレングリコールポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルポリエチレングリコールポリジメチルシロキシエチルジメチコンなどのポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリグリセリルジシロキサンジメチコン、ポリグリセリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルポリグリセリルポリジメチルシロキシエチルジメチコンなどのポリグリセリン変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0054】
(G)成分を本発明のデオドラント剤に用いる場合、塗布後の再乳化を抑制し、耐汗性に一層優れたデオドラント剤を得る観点から、(G)成分の含有量は、デオドラント剤100質量%中、好ましくは0.8質量%以下であり、より好ましくは0.4質量%以下であり、本発明のデオドラント剤に(G)成分を実質的に含有しないことが更に好ましい。したがって、任意成分である(G)成分の含有量は、デオドラント剤100質量%中、好ましくは0〜0.8質量%であり、より好ましくは0〜0.4質量%であり、本発明のデオドラント剤に(G)成分を実質的に含有しないことが更に好ましい。
【0055】
本発明のデオドラント剤は、任意成分として(H)固形油分を用いることができる。(H)成分は、25℃においてペースト状又は固形状の炭化水素、油脂、ロウ、脂肪酸エステル、及び脂肪酸のことである。(H)成分としては、例えば、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、シア脂、水添パーム油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ラノリン、セラック、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、(エチルヘキサン酸/ステアリン酸/アジピン酸)グリセリル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などを用いることができる。(H)成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
本発明のデオドラント剤が(H)成分を多量に含有する場合、耐汗性が向上する反面、洗浄剤による洗い落ちが低下し、本発明の効果を奏しないことがある。特に(H)成分が炭化水素、及びロウの内の少なくとも1種を含む場合、洗い落ちの低下が著しく、洗浄剤を用いても洗い落ちないことがある。
【0057】
(H)成分を本発明のデオドラント剤に用いる場合、洗浄剤による洗い落ちに一層優れたデオドラント剤を得る観点から、(H)成分の含有量は、デオドラント剤100質量%中、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、本発明のデオドラント剤に(H)成分を実質的に含有しないことが更に好ましい。したがって、任意成分である(H)成分の含有量は、デオドラント剤100質量%中、好ましくは0〜5質量%であり、好ましくは0〜3質量%であり、本発明のデオドラント剤に(H)成分を実質的に含有しないことが更に好ましい。
【0058】
本発明のデオドラント剤は、任意成分として(I)増粘剤を用いることができる。(I)成分としては、水溶性増粘剤や非水溶性増粘剤を用いることができる。(I)成分は、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、アクリル酸アルキル共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・メタクリル酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル共重合体エマルション、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アミド、高重合ポリエチレングリコール、キサンタンガム、ジェランガム、カラギーナン、グアーガム、寒天、ペクチン、ベントナイト、ラポナイト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、ジメチコンクロスポリマー、アルキルジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ポリエチレングリコール)クロスポリマー、(ポリエチレングリコール/アルキルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ポリグリセリン)クロスポリマー、(アルキルジメチコン/ポリグリセリン)クロスポリマー、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミド、N−2−エチルヘキサノイル−L−グルタミン酸ジブチルアミド、ステアリン酸イヌリン、パルミチン酸デキストリンなどを用いることができる。(I)成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
本発明のデオドラント剤が(I)成分を多量に含有する場合、形成される皮膜が(I)成分の影響を大きく受け、本発明の効果を奏しないことがある。また、(I)成分により増粘し、本発明のデオドラント剤が容器から噴霧又は吐出できないことがある。
【0060】
(I)成分を本発明のデオドラント剤に用いる場合、防臭効果の持続性に一層優れたデオドラント剤を得る観点、又は洗浄剤による洗い落ちに優れるデオドラント剤を得る観点から、(I)成分の含有量と(A)成分の含有量との比((I)成分の含有量/(A)成分の含有量)は、好ましくは1以下であり、より好ましくは0.75以下であり、本発明のデオドラント剤に(I)成分を実質的に含有しないことが更に好ましい。したがって、任意成分である(I)成分の含有量と(A)成分の含有量との比は、好ましくは0〜1であり、より好ましくは0〜0.75であり、本発明のデオドラント剤に(I)成分を実質的に含有しないことが更に好ましい。また、容器からの噴霧又は吐出性に一層優れたデオドラント剤を得る観点から、(I)成分の含有量は、デオドラント剤100質量%中、好ましくは0.8質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、本発明のデオドラント剤に(I)成分を実質的に含有しないことが更に好ましい。したがって、任意成分である(I)成分の含有量は、デオドラント剤100質量%中、好ましくは0〜0.8質量%であり、好ましくは0〜0.5質量%であり、本発明のデオドラント剤に(I)成分を実質的に含有しないことが更に好ましい。
【0061】
本発明のデオドラント剤は、任意成分として(J)多価アルコールを用いることができる。(J)成分としては、例えば、プロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3‐ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ジブリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル、グルコース、フルクトース、ソルビトール、マルチトールなどを用いることができる。(J)成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
本発明のデオドラント剤の原液には、化粧品に通常用いられる成分を目的に応じて適宜配合することができる。用いられる成分は、例えば、水、白濁化剤、抗炎症剤、金属イオン封鎖剤、防腐剤、色素などを例示することができる。
【0063】
本発明のデオドラント剤の原液は、種々の組成物として用いることができる。具体的には、水中油型組成物、油中水型組成物、多相組成物、非水組成物などの組成物として用いることができる。
【0064】
一方、(D)噴射剤は、例えば、液化石油ガス、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ジメチルエーテル、フロロカーボン、窒素、炭酸ガス、亜酸化窒素などを用いることができる。(D)成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
(D)成分の含有量は、所望に応じて適宜変更することができる。(D)成分の含有量は、付着量に一層優れるデオドラント剤を得る観点から、デオドラント剤100質量%中、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。また、液垂れの抑制などの吐出性に一層優れるデオドラント剤を得る観点から、デオドラント剤100質量%中、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下である。これらの観点から、(D)成分の含有量は、デオドラント剤100質量%中、好ましくは50〜99質量%であり、より好ましくは60〜95質量%である。
【0066】
本発明の明細書において、特定の成分を「実質的に含有しない」とは、特定の成分を積極的に本発明のデオドラント剤に含有しないことを意味する。具体的には、特定の成分の含有量が、本発明のデオドラント剤100質量%中、0.001質量%以下、更には0.0001質量%以下であることをいい、全く含有しないことが最も好ましい。
【0067】
本発明のデオドラント剤は、公知の方法で製造することができる。例えば、噴射剤以外の構成成分を混合撹拌して原液を調製し、エアゾール容器に充填し密閉後、噴射剤を充填することにより、本発明のデオドラント剤を得ることができる。
【0068】
本発明のデオドラント剤は、製剤の耐汗性に優れるという効果を有し、上記した(C)成分が汗により流れ落ちることを低減できるため、防臭効果の持続性に優れるという効果を奏する。加えて、耐汗性に優れるにもかかわらず、洗浄剤を用いれば容易に洗い落すことができ、洗浄性に優れるという効果を奏する。更に、本発明のデオドラント剤に(E)成分を含有する場合、(E)成分が汗により流れ落ちることを低減できるため、肌のさらさら感、並びにソフトフォーカス効果の持続性に優れるという効果を奏する。本発明のデオドラント剤は、これらの効果を奏することから、皮膚及び衣類用に好適に用いることができ、デオドラントスプレー、フットスプレー、衣類消臭スプレーとして好適に用いることができる。
【0069】
デオドラント剤は、保湿化粧料とは異なり、洗浄により適宜除去することが望ましい。デオドラント剤が洗浄により洗い落ちない場合、形成された皮膜による皮膚の閉塞や、制汗剤や殺菌剤が皮膚や衣類に残留及び蓄積するので、皮膚刺激などの好ましくない問題が生じることがある。また、形成された洗い落ちない皮膜は皮膚や衣類自体の洗浄を阻害するため、かえって皮膚や衣類の微生物の繁殖を幇助してしまうことがある。本発明のデオドラント剤は、防臭効果の持続性に優れるという効果を奏することに加えて、洗浄剤による洗い落ちに優れるという効果も奏しており、デオドラント剤として非常に好適である。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。尚、配合量は、特記しない限り「質量%」を表す。
【0071】
(試料の調製1)
表1〜2に示す組成に従い各成分を配合して、実施例及び比較例の各デオドラント剤を調製した。得られた各デオドラント剤を用いて、下記の評価項目について、評価を行った。
【0072】
(評価項目2:「防臭効果の持続性」、「肌のさらさら感の持続性」、「ソフトフォーカス効果の持続性」の評価)
被験者10名により、得られた各デオドラント剤について下記試験方法に従い、評価を行った。
【0073】
<試験方法>
被験者の腋下を蒸しタオルにて拭き、次いで得られた各デオドラント剤を腋下に噴霧塗布した。3分後、被験者の腋下の臭いとソフトフォーカス効果について、専門評価パネル5名が初期評価を行った。肌のさらさら感については、被験者自身が初期評価を行った。
初期評価後、水を100mLの飲み、温度:30℃、相対湿度:65%の恒温恒湿室内で踏み台昇降運動(高さ20cm)を30分間行うことにより、発汗を促した。その後、室温(20℃〜25℃)下で6時間過ごした後、被験者の腋下の臭いとソフトフォーカス効果について、専門評価パネル5名が評価を行った。肌のさらさら感については、被験者自身が評価を行った。結果を表1〜2に併記する。
【0074】
「防臭効果の持続性」は、腋下の臭いの強さについて初期との差異が小さい場合を「良好」として評価した。「肌のさらさら感の持続性」は、肌のべたつき感が低く、肌の滑り感がよく、初期との差異が小さい場合を「良好」として評価した。「ソフトフォーカス効果の持続性」は、肌が美しく見え、初期との差異が小さい場合を「良好」として評価した。下記評価基準による点数から算出された平均点から、下記判定基準に従って、判定を行った。
【0075】
<評価基準>
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:不良
1点:非常に不良
【0076】
<判定基準>
○○:平均4.0点以上
○:平均3.0点以上4.0点未満
△:平均2.0点以上3.0点未満
×:平均2.0点未満
【0077】
(評価項目2: 「洗浄剤による洗い落ちの良さ」)
専門評価パネルにより、実施例及び比較例の各デオドラント剤の「洗浄剤による洗い落ちの良さ」について、下記試験方法により評価を行った。
【0078】
<試験方法>
得られたデオドラント剤を軽く振とうした後、専門評価パネルの手の甲に0.5gずつ2回に分けて合計1gを噴霧した。10分後、石けんを用いて洗い流し、「洗浄剤による洗い落ちの良さ」について評価を行った。
【0079】
「洗浄剤による洗い落ちの良さ」は、洗い流した後の肌にごわつきやつっぱり感などの残存感がなく、かつ、肌と水とのなじみに優れるほど高得点として、以下の5段階の評価基準に従って評価した。結果は、専門評価パネルの平均点を算出し、下記判定基準に従って判定を行った。結果を表1〜2に併記する。
【0080】
<評価基準>
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:不良
1点:非常に不良
【0081】
<判定基準>
○○:平均4.0点以上
○ :平均3.0点以上4.0点未満
△ :平均2.0点以上3.0点未満
× :平均2.0点未満
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
本発明のデオドラント剤である実施例1〜8は、防臭効果の持続性、洗浄剤による洗い落ちの良さ、肌のさらさら感の持続性、並びにソフトフォーカス効果の持続性に優れることがわかる。一方、比較例1に記載の(A)成分を含有しないデオドラント剤は、防臭効果の持続性、肌のさらさら感の持続性、並びにソフトフォーカス効果の持続性に優れないことがわかる。