特許第5963619号(P5963619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特許5963619エチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体、その製造方法およびシール材
<>
  • 特許5963619-エチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体、その製造方法およびシール材 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963619
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】エチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体、その製造方法およびシール材
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/06 20060101AFI20160721BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20160721BHJP
   C08K 5/40 20060101ALI20160721BHJP
   C08K 5/405 20060101ALI20160721BHJP
   C08K 5/33 20060101ALI20160721BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20160721BHJP
   B29C 47/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C08J9/06CES
   C08L23/16
   C08K5/40
   C08K5/405
   C08K5/33
   F16J15/10 Y
   B29C47/00
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-195396(P2012-195396)
(22)【出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2014-51560(P2014-51560A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼坂 匠
(72)【発明者】
【氏名】平井 文太
【審査官】 福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 実用新案登録第3051438(JP,Y2)
【文献】 特開2012−017452(JP,A)
【文献】 特開2008−208256(JP,A)
【文献】 特開2007−223333(JP,A)
【文献】 特開2003−012872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 35/00−35/18
B29C 47/00−47/96
B32B 1/00−43/00
C08J 9/00−9/42
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・プロピレン・ジエンゴムおよび架橋剤を含有するゴム組成物を発泡させた発泡体であって
前記架橋剤は、硫黄を含有せず、チウラム化合物およびキノイド化合物を含有し、
前記チウラム化合物の配合割合が、前記エチレン・プロピレン・ジエンゴム100質量部に対して、0.05質量部以上、20質量部未満であり、
前記キノイド化合物の配合割合が、前記エチレン・プロピレン・ジエンゴム100質量部に対して、0.05質量部以上、20質量部以下であり、
前記キノイド化合物の配合割合が、前記チウラム化合物100質量部に対して、1質量部以上、250質量部以下であることを特徴とする、エチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体。
【請求項2】
前記ゴム組成物が、チオウレア系架橋促進剤を含有していることを特徴とする、請求項1に記載のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体。
【請求項3】
前記チオウレア系架橋促進剤の配合割合が、前記エチレン・プロピレン・ジエンゴム100質量部に対して、0.5質量部以上、20質量部以下であることを特徴とする、請求項2に記載のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体。
【請求項4】
前記キノイド化合物が、p,p’−ジベンゾイルキノンオキシムであることを特徴とする、請求項に記載のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体。
【請求項5】
前記p,p’−ジベンゾイルキノンオキシムの配合割合が、前記エチレン・プロピレン・ジエンゴム100質量部に対して、0.05質量部以上、10質量部以下であることを特徴とする、請求項に記載のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体と、
前記エチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体の片面または両面に設けられる粘着層と
を備えることを特徴とする、シール材。
【請求項7】
エチレン・プロピレン・ジエンゴム100質量部と、
硫黄を含有せず、チウラム化合物0.5質量部以上、20質量部未満およびキノイド化合物を含有する架橋剤と、
チオウレア系架橋促進剤0.5質量部以上、20質量部以下と、
発泡剤1質量部以上、30質量部以下と、
発泡助剤とを含有するゴム組成物を混練する混練工程と、
前記ゴム組成物を加熱して発泡させる発泡工程と
を含み、
前記キノイド化合物の配合割合が、前記エチレン・プロピレン・ジエンゴム100質量部に対して、0.05質量部以上、20質量部以下であり、
前記キノイド化合物の配合割合が、前記チウラム化合物100質量部に対して、1質量部以上、250質量部以下であることを特徴とする、エチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体の製造方法。
【請求項8】
さらに、前記ゴム組成物を押出成形する成形工程を含み、
前記発泡工程は、前記成形工程により押出成形された前記ゴム組成物を、架橋発泡させることを特徴とする、請求項に記載のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体の製造方法。
【請求項9】
前記ゴム組成物が、老化防止剤を含有し
前記老化防止剤は、第二級アミン化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体。
【請求項10】
前記ゴム組成物が、老化防止剤を含有し
前記老化防止剤は、第二級アミン化合物であることを特徴とする、請求項6に記載のシール材。
【請求項11】
前記ゴム組成物が、老化防止剤を含有し
前記老化防止剤は、第二級アミン化合物であることを特徴とする、請求項7に記載のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体、その製造方法およびシール材に関する。詳しくは、各種産業製品のシール材として好適に用いられるエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体、そのエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体を備えるシール材、および、エチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種産業製品のシール材として、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(以下、EPDMと省略することがある。)を発泡してなるEPDM発泡体が知られている。
【0003】
例えば、EPDMを発泡剤によって発泡させるとともに、硫黄Sなどの架橋剤(加硫剤)によって架橋することにより得られるEPDM発泡体が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。特許文献1のEPDM発泡体は、低反発であって、シール性が良好である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−182796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、シール材が、車両のエンジンの近傍の部材に設けられる場合があり、その場合に、エンジンから生じる熱がかかる部材を介してシール材に伝導する。その場合に、シール材が長時間高温に加熱され、シール性を含む各種物性が低下し易いという不具合がある。
【0006】
とくに、特許文献1のEPDMは、硫黄Sによって架橋されるため、上記したように、シール材が高温雰囲気に暴露すると、EPDM発泡体中に架橋部位として含まれる直鎖状の硫黄Sが開裂する(切断される)ことによって、各種物性がより一層低下し易いという不具合がある。
【0007】
本発明の目的は、耐熱性に優れるエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体、その製造方法およびシール材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体は、エチレン・プロピレン・ジエンゴムおよび架橋剤を含有するゴム組成物を発泡させることにより得られ、前記架橋剤は、硫黄を含有せず、チウラム化合物を含有し、前記チウラム化合物の配合割合が、前記エチレン・プロピレン・ジエンゴム100質量部に対して、0.05質量部以上、20質量部未満であることを特徴としている。
【0009】
また、本発明のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体では、前記ゴム組成物が、チオウレア系架橋促進剤を含有していることが好適である。
【0010】
また、本発明のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体では、前記チオウレア系架橋促進剤の配合割合が、前記エチレン・プロピレン・ジエンゴム100質量部に対して、0.5質量部以上、20質量部以下であることが好適である。
【0011】
また、本発明のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体では、前記架橋剤が、さらに、キノイド化合物を含有することが好適である。
【0012】
また、本発明のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体では、前記キノイド化合物が、p,p’−ジベンゾイルキノンオキシムであることが好適である。
【0013】
また、本発明のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体では、前記p,p’−ジベンゾイルキノンオキシムの配合割合が、前記エチレン・プロピレン・ジエンゴム100質量部に対して、0.05質量部以上、10質量部以下であることが好適である。
【0014】
また、本発明のシール材は、上記したエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体と、前記エチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体の片面または両面に設けられる粘着層とを備えることを特徴としている。
【0015】
また、エチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体の製造方法は、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100質量部と、硫黄を含有せず、チウラム化合物0.5質量部以上、20質量部未満を含有する架橋剤と、チオウレア系架橋促進剤0.5質量部以上、20質量部以下と、発泡剤1質量部以上、30質量部以下と、発泡助剤とを含有するゴム組成物を混練する混練工程と、前記ゴム組成物を加熱して発泡させる発泡工程とを含むことを特徴としている。
【0016】
また、本発明のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体の製造方法は、さらに、前記ゴム組成物を押出成形する成形工程を含み、前記発泡工程は、前記成形工程により押出成形された前記ゴム組成物を、架橋発泡させることが好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のEPDM発泡体は、EPDMおよび架橋剤を含有するゴム組成物を発泡させることにより得られ、架橋剤は、硫黄を含有せず、特定の配合割合のチウラム化合物を含有するので、耐熱性に優れる。
【0018】
また、本発明のシール材によれば、上記したエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体
を備えるため、エチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体によって部材の隙間を確実に充填することができる。
【0019】
また、本発明のエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体の製造方法によれば、耐熱性に優れ、EPDM発泡体が高温雰囲気に暴露されても、部材を確実にシールできるエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体を、簡易かつ生産効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明のEPDM発泡体の一実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のEPDM発泡体は、EPDMおよび架橋剤を含有するゴム組成物を発泡させることにより得られる。
【0022】
EPDMは、エチレン、プロピレンおよびジエン類の共重合によって得られるゴムであり、エチレンおよびプロピレンに加えて、さらにジエン類を共重合させることにより、不飽和結合を導入して、架橋剤による架橋を可能としている。
【0023】
ジエン類としては、例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。これらジエン類は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0024】
EPDMにおけるジエン類の含有量(ジエン含有量)は、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上、より好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、15質量%以下でもある。
【0025】
ジエン類の含有量が上記下限以上であれば、EPDM発泡体の表面収縮を防止することができる。また、ジエン類の含有量が上記上限以下であれば、EPDM発泡体に割れが生じることを防止することができる。
【0026】
また、EPDMとして、好ましくは、長鎖分岐を有するEPDMが挙げられる。
【0027】
EPDMに長い分岐鎖を導入する方法としては、特に制限されず、公知の方法が採用される。
【0028】
具体的には、EPDMは、例えば、チーグラー・ナッタ触媒あるいはメタロセン触媒などの触媒によって製造され、好ましくは、長い分岐鎖を得る観点から、メタロセン触媒によって製造される。
【0029】
EPDMが長鎖分岐を有していれば、側鎖の絡み合いに起因して、伸長粘度が増大するため、ゴム組成物を良好に発泡させることができ、柔軟性を持たせることができる。
【0030】
架橋剤は、チウラム化合物を必須成分として含有する。
【0031】
チウラム化合物としては、例えば、下記一般式(1)で示されるチウラムスルフィドが挙げられる。
【0032】
一般式(1):
【0033】
【化1】
【0034】
(式中、Rは、同一または相異なっていてもよく、水素原子または1価の炭化水素基を示す。また、nは、1以上、7以下の整数を示す。)
Rで示される1価の炭化水素基としては、例えば、脂肪族基、脂環族基、芳香脂肪族基、芳香族基などの炭化水素基などが挙げられる。
【0035】
脂肪族基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ヘキシル、へプチル、2−エチルヘキシルなどの、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。脂環族基としては、例えば、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの、炭素数4〜20のシクロアルキル基などが挙げられる。芳香脂肪族基としては、例えば、ベンジル、フェニルエチルなどの炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる。芳香族基としては、例えば、フェニル、キシリル、ナフチルなどの炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。
【0036】
4つのRは、好ましくは、すべて同一である。
【0037】
nは、好ましくは、4以下の整数、より好ましくは、3以下の整数であり、最も好ましくは、2である。
【0038】
具体的に、チウラムスルフィドとしては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMT)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TET)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBT)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT−N)などの脂肪族基含有チウラムジスルフィドなどが挙げられる。また、チウラムスルフィドとしては、例えば、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZTD)などの芳香脂肪族基含有チウラムジスルフィドも挙げられる。さらに、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)などの脂肪族基含有チウラムモノスルフィド、例えば、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(TRA)などの脂肪族基含有チウラムテトラスルフィド、例えば、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィドなどの脂肪族基含有チウラムヘキサスルフィドも挙げられる。
【0039】
チウラム化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0040】
チウラム化合物として、好ましくは、チウラムジスルフィド、より好ましくは、芳香脂肪族基含有チウラムジスルフィドが挙げられる。
【0041】
チウラム化合物の配合割合は、EPDM100質量部に対して、0.05質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上、より好ましくは、0.5質量部以上、さらに好ましくは、1.0質量部以上、とりわけ好ましくは、2.0質量部以上であり、また、20質量部未満、好ましくは、15質量部以下、より好ましくは、10質量部以下、さらに好ましくは、5質量部以下である。
【0042】
架橋剤におけるチウラム化合物の配合割合は、例えば、100質量%以下、好ましくは、99質量%以下、より好ましくは、90質量%以下、さらに好ましくは、75質量%以下であり、また、例えば、1質量%以上、好ましくは、25質量%以上、より好ましくは、60質量%以上、さらに好ましくは、75質量%以上でもある。
【0043】
チウラム化合物の配合割合が上記上限を超えると、チウラム化合物の配合割合が過多となり、発泡が不良となる場合がある。
【0044】
一方、チウラム化合物の配合割合が上記下限を下回ると、チウラム化合物の配合割合が過少となり、チウラム化合物による架橋が不十分となる場合がある。
【0045】
また、架橋剤は、キノイド化合物を任意成分として含有することもできる。
【0046】
キノイド化合物は、キノイド構造を有する有機化合物(キノイド系架橋剤)であって、例えば、p−キノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、および、それらの誘導体などが挙げられる。p−キノンジオキシムの誘導体として、具体的には、例えば、p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシムなどが挙げられる。
【0047】
これらキノイド化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0048】
キノイド化合物として、好ましくは、p−キノンジオキシムの誘導体、より好ましくは、p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシムが挙げられる。
【0049】
キノイド化合物が架橋剤に含有されることによって、EPDM発泡体の抗張力を向上させることができる。
【0050】
キノイド化合物の配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、より好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、5質量部以下でもある。とりわけ、キノイド化合物がp,p´−ジベンゾイルキノンジオキシムである場合には、その配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、5質量部以下でもある。
【0051】
また、キノイド化合物の配合割合は、チウラム化合物100質量部に対して、例えば、250質量部以下、好ましくは、100質量部以下、より好ましくは、50質量部以下であり、また、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上でもある。
【0052】
キノイド化合物の配合割合の配合割合が上記範囲内にあれば、EPDM発泡体の抗張力をより一層向上させることができる。
【0053】
また、架橋剤における任意成分に、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジメチルジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、α,α´−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンなどの有機過酸化物を、添加することもできる。有機過酸化物の添加割合は、例えば、上記した必須成分(チウラム化合物)100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは、0.1質量部以下である。
【0054】
そして、架橋剤は、チウラム化合物を必須成分として含有し、必要により、キノイド化合物を任意成分として含有する一方、硫黄(Sを含む)を含有しない。
【0055】
架橋剤が硫黄を含有せず、チウラム化合物を特定割合で含有することによって、硫黄S架橋に代えて、チウラム化合物に起因する硫黄原子Sの架橋をEPDMに付与することができる。
【0056】
EPDM発泡体において、鎖長が比較的長い硫黄(S)の架橋部位(加硫部位、具体的には、−S−など)でなく、チウラム化合物の鎖長が比較的短い硫黄原子(S)に基づく架橋部位(−S−)を形成して、EPDM発泡体が高温雰囲気に暴露したときに、かかる硫黄架橋部位(−S−)の開裂(切断)に基づく物性(後述する圧縮荷重値など)の変化を抑制することができる。
【0057】
また、ゴム組成物は、発泡剤を含有する。
【0058】
発泡剤としては、例えば、有機系発泡剤および無機系発泡剤が挙げられる。
【0059】
有機系発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、バリウムアゾジカルボキシレート、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼンなどのアゾ系発泡剤、例えば、N,N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DTP)、N,N´−ジメチル−N,N´−ジニトロソテレフタルアミド、トリニトロソトリメチルトリアミンなどのN−ニトロソ系発泡剤、例えば、4,4´−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3´−ジスルホニルヒドラジド、2,4−トルエンジスルホニルヒドラジド、p,p−ビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)エーテル、ベンゼン−1,3−ジスルホニルヒドラジド、アリルビス(スルホニルヒドラジド)などのヒドラジド系発泡剤、例えば、p−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4´−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)などのセミカルバジド系発泡剤、例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタンなどのフッ化アルカン系発泡剤、例えば、5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾールなどのトリアゾール系発泡剤、その他公知の有機系発泡剤が挙げられる。なお、有機系発泡剤として、加熱膨張性の物質がマイクロカプセル内に封入された熱膨張性微粒子などを挙げることもでき、そのような熱膨張性微粒子として、例えば、マイクロスフェア(商品名、松本油脂社製)などの市販品を挙げることができる。
【0060】
無機系発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウムなどの炭酸水素塩、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸アンモニウムなどの亜硝酸塩、例えば、水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化ホウ素塩、例えば、アジド類、その他公知の無機系発泡剤が挙げられる。好ましくは、アゾ系発泡剤が挙げられる。これら発泡剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。
【0061】
発泡剤の配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下でもある。
【0062】
また、ゴム組成物は、より好ましくは、チオウレア系架橋促進剤、架橋助剤、発泡助剤を含有する。
【0063】
チオウレア系架橋促進剤としては、例えば、チオウレア、N,N´−ジエチルチオウレア(1,3−ジエチルチオウレア)、N,N´−ジブチルチオウレア(1,3−ジブチルチオウレア)、2−メルカプトイミダゾリン(エチレンチオウレア)、トリメチルチオウレアなどが挙げられる。好ましくは、N,N´−ジエチルチオウレア、N,N´−ジブチルチオウレアが挙げられる。
【0064】
チオウレア系架橋促進剤は、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、N,N´−ジエチルチオウレアまたはN,N´−ジブチルチオウレアの単独使用が挙げられる。
【0065】
チオウレア系架橋促進剤がゴム組成物に含有されることにより、チウラム化合物を含有する架橋剤により架橋を促進させることができる。
【0066】
チオウレア系架橋促進剤の配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上、より好ましくは、0.5質量部以上、さらに好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、4質量部以下でもある。また、チオウレア系架橋促進剤の配合割合は、架橋剤100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上、より好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、60質量部以下である。
【0067】
チオウレア系架橋促進剤の配合割合の上記範囲内にあれば、チウラム化合物を含有する架橋剤による架橋をより一層促進させることができる。
【0068】
架橋助剤としては、例えば、酸化亜鉛などの金属酸化物、例えば、ステアリン酸やそのエステル類などの脂肪酸類、例えば、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸が挙げられる。
【0069】
架橋助剤として、好ましくは、金属酸化物、脂肪酸類が挙げられる。
【0070】
これら架橋助剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、金属酸化物と脂肪酸類との併用が挙げられる。
【0071】
架橋助剤の配合割合(金属酸化物と脂肪酸類とが併用される場合には、それらの総量の割合)は、EPDM100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上、より好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下、より好ましくは、10質量部以下でもある。
【0072】
また、架橋助剤の配合割合は、架橋剤100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、25質量部以上、より好ましくは、50質量部以上であり、また、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下、より好ましくは、250質量部以下、さらに好ましくは、170質量部以下である。
【0073】
また、金属酸化物と脂肪酸類とが併用される場合には、脂肪酸類の配合割合が、金属酸化物100質量部に対して、例えば、10質量部以上、30質量部以上であり、また、例えば、200質量部以下、好ましくは、100質量部以下、より好ましくは、70質量部以下でもある。
【0074】
発泡助剤としては、例えば、尿素系発泡助剤、サリチル酸系発泡助剤、安息香酸系発泡助剤などが挙げられる。好ましくは、尿素系発泡助剤が挙げられる。
【0075】
これら発泡助剤は、単独使用または2種以上併用することもできる。
【0076】
発泡助剤の配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下でもある。また、発泡助剤の配合割合は、発泡剤100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、30質量部以下でもある。
【0077】
また、ゴム組成物は、必要により、充填材、軟化剤、老化防止剤などを適宜含有することもできる。
【0078】
充填材としては、例えば、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウムを含む)、炭酸マグネシウム、ケイ酸およびその塩類、クレー、タルク、雲母粉、ベントナイト、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、アルミニウム粉、カーボンブラックなどの無機系充填材、例えば、コルクなどの有機系充填材、その他公知の充填材が挙げられる。充填材の平均粒子径は、例えば、0.1μm以上、100μm以下である。これら充填材は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。充填材の配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上、さらに好ましくは、50質量部以上であり、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、250質量部以下でもある。
【0079】
軟化剤としては、例えば、石油系オイル類(例えば、パラフィン系オイル(パラフィン系プロセスオイルを含む)、ナフテン系オイル(ナフテン系プロセスオイルを含む)、乾性油類や動植物油類(例えば、アマニ油など)、アロマ系オイルなど)、アスファルト類、低分子量ポリマー類、有機酸エステル類(例えば、フタル酸エステル(例えば、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP))、リン酸エステル、高級脂肪酸エステル、アルキルスルホン酸エステルなど)などが挙げられる。好ましくは、石油系オイル類、より好ましくは、パラフィン系オイルが挙げられる。これら軟化剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。軟化剤の配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、50質量部以下でもある。
【0080】
老化防止剤としては、例えば、4,4´−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N´−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンなどの第二級アミン化合物(芳香族第二級アミン化合物など)が挙げられる。老化防止剤は、単独使用または併用することができる。老化防止剤の配合割合は、例えば、EPDM100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下でもある。
【0081】
さらに、ゴム組成物は、その目的および用途によって、得られるEPDM発泡体の優れた効果に影響を与えない範囲において、例えば、EPDM以外のポリマー、難燃剤、可塑剤、粘着付与剤、酸化防止剤、着色剤、防カビ剤などの公知の添加剤を適宜の割合で含有することができる。
【0082】
一方、ゴム組成物は、好ましくは、チアゾール類、ジチオカルバミン酸類などの架橋遅延剤(加硫遅延剤)を含有しない。
【0083】
そのため、EPDM発泡体は、耐熱性に優れ、高温雰囲気下での暴露による物性の変化を抑制することができる。
【0084】
また、ゴム組成物が上記した架橋遅延剤を含有しなければ、EPDM発泡体の硫黄原子Sの含有割合を低減でき、腐食性の低減を図ることができる。
【0085】
次に、EPDM発泡体の製造方法について説明する。
【0086】
EPDM発泡体を製造するには、まず、上記した各成分を配合して、ニーダー、ミキサーまたはミキシングロールなどを用いて混練することにより、ゴム組成物を混和物として調製する(混練工程)。
【0087】
なお、混練工程では、適宜加熱しながら混練することもできる。また、混練工程では、例えば、架橋剤、架橋助剤、発泡剤および発泡助剤以外の成分を、まず混練して、一次混和物を調製してから、一次混和物に、架橋剤、架橋助剤、発泡剤および発泡助剤を添加して混練して、ゴム組成物(二次混和物)を得ることもできる。
【0088】
そして、得られたゴム組成物(混和物)を、押出成形機を用いてシート状などに押出成形し(成形工程)、押出成形されたゴム組成物を、加熱して発泡させる(発泡工程)。 ゴム組成物は、配合される架橋剤の架橋開始温度や、配合される発泡剤の発泡温度などによって、適宜選択され、例えば、熱風循環式オーブンなどを用いて、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上、また、例えば、200℃以下、好ましくは、160℃以下で、例えば、1分間以上、好ましくは、5分間以上、また、例えば、60間分以下、好ましくは、40分間以下、予熱する。予熱後、例えば、450℃以下、好ましくは、350℃以下、より好ましくは、250℃以下、また、例えば、100℃以上、好ましくは、120℃以上で、例えば、5分間以上、好ましくは、15分間以上、また、例えば、80分間以下、好ましくは、50分間以下、加熱される。
【0089】
このようなEPDM発泡体の製造方法によれば、密着性および段差追従性よく部材の隙間をシールできるEPDM発泡体を、簡易かつ確実に製造することができる。
【0090】
また、得られたゴム組成物を、押出成形機を用いて、加熱しながらシート状に押出成形(成形工程)して(つまり、ゴム組成物シートを作製して)、シート状のゴム組成物(ゴム組成物シート)を連続的に架橋発泡(発泡工程)させることもできる。
【0091】
この方法によれば、EPDM発泡体を生産効率よく製造することができる。
【0092】
これにより、ゴム組成物が発泡しながら架橋されて、EPDM発泡体を得ることができる。
【0093】
このようなEPDM発泡体の製造方法によれば、所望とする形状のEPDM発泡体を、生産効率よく、簡易かつ確実に製造することができる。
【0094】
得られたEPDM発泡体の厚みは、例えば、0.1mm以上、好ましくは、1mm以上であり、また、例えば、50mm以下、好ましくは、45mm以下でもある。
【0095】
EPDM発泡体は、例えば、連続気泡構造(連続気泡率100%)または半連続半独立気泡構造(連続気泡率が、例えば、0%超過し、好ましくは、連続気泡率10%以上であり、また、例えば、100%未満、好ましくは、98%以下)である。好ましくは、半連続半独立気泡構造である。
【0096】
EPDM発泡体が、半連続半独立気泡構造であれば、柔軟性の向上を図ることができ、ひいては、部材の隙間におけるEPDM発泡体の充填性の向上を図ることができる。
【0097】
このようにして得られるEPDM発泡体の体積発泡倍率(発泡前後の密度比)は、例えば、2倍以上、好ましくは、5倍以上であり、また、例えば、30倍以下でもある。
【0098】
EPDM発泡体の80%圧縮荷重値(JIS K 6767(1999)に準ずる。)は、例えば、0.1N/cm以上であり、また、10N/cm以下、好ましくは、5.0N/cm以下、より好ましくは、2.5N/cm以下でもある。
【0099】
EPDM発泡体の80%圧縮荷重値が上記した下限以上であれば、EPDM発泡体の柔軟性を向上させることができ、そのため、部材への密着性、および、段差追従性を向上させることができる。一方、EPDM発泡体の80%圧縮荷重値が上記した上限以下であれば、柔軟性を向上させることが可能で、筐体(部材)の変形を防止することができる。
【0100】
また、EPDM発泡体の見掛け密度(JIS K 6767(1999)に準ずる。)は、例えば、0.50g/cm以下、好ましくは、0.20g/cm以下、より好ましくは、0.10g/cm以下であり、また、例えば、0.01g/cm以上でもある。EPDM発泡体の見掛け密度が上記した範囲であれば、EPDM発泡体を部材の隙間に良好にシールすることができる。
【0101】
また、EPDM発泡体の伸び率(JIS K 6767(1999)に準ずる破断伸び。)は、例えば、10%以上、好ましくは、150%以上であり、また、例えば、1500%以下、好ましくは、1000%以下でもある。
【0102】
また、EPDM発泡体の抗張力(JIS K 6767(1999)に準じた引張り試験における最大荷重)は、例えば、1.0N/cm以上、好ましくは、2.0N/cm以上であり、また、例えば、50N/cm以下、好ましくは、30.0N/cm以下、より好ましくは、10N/cm以下、さらに好ましくは、8N/cm以下、とりわけ好ましくは、6N/cm以下である。
【0103】
そして、このEPDM発泡体は、用途が限定されることなく、例えば、制振、吸音、遮音、防塵、断熱、緩衝、水密などを目的として各種部材の隙間を充填する、例えば、防振材、吸音材、遮音材、防塵材、断熱材、緩衝材、止水材などとして用いることができる。
【0104】
そして、このEPDM発泡体は、EPDMおよび架橋剤を含有するゴム組成物を発泡させることにより得られ、架橋剤は、硫黄を含有せず、特定の配合割合のチウラム化合物を含有するので、耐熱性に優れる。
【0105】
そのため、EPDM発泡体が設けられる部材としては、例えば、鉄、鋼、ステンレス、アルミニウムなどの金属からなり、例えば、車両のエンジンの周囲に配置され、例えば、100℃以上、さらには、110℃以上、さらには、130℃以上であって、例えば、150℃以下の高温雰囲気に暴露される部材などが挙げられる。
【0106】
そして、このようなEPDM発泡体を用いれば、耐熱性に優れ、密着性および段差追従性よく、部材の隙間をシールすることができ、シール材として好適に用いることができる。
【0107】
EPDM発泡体をシール材に用いるには、例えば、EPDM発泡体の表面に、EPDM発泡体を貼付するための粘着層が設けられたシール材を準備する。つまり、EPDM発泡体および粘着層を備えるシール材を準備する。
【0108】
図1は、本発明のEPDM発泡体の一実施形態を示す概略構成図である。
【0109】
このようなシール材1は、図1に示されるように、EPDM発泡体2およびそのEPDM発泡体2に積層される粘着層3(さらに、必要により粘着層3に積層されるセパレータ4(仮想線参照))を備える。
【0110】
粘着層3をEPDM発泡体2に積層するには、特に制限されず、公知の方法を採用してEPDM発泡体2に貼着することができる。例えば、まず、EPDM発泡体2を上記した方法により製造し、EPDM発泡体2からなる発泡体層2を得る。次いで、発泡体層2の表面に、粘着層3を、公知の方法により積層する。これにより、シール材1を粘着シール材として得る。
【0111】
粘着層3は、例えば、粘着剤から公知の方法によって層状に形成される。
【0112】
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などが挙げられる。また、粘着剤としては、その他、ホットメルト型粘着剤なども挙げられる。
【0113】
これら粘着剤は、単独使用または2種類以上を併用することができる。
【0114】
粘着剤として、好ましくは、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤が挙げられる。
【0115】
アクリル系粘着剤は、例えば、(メタ)アクリル系アルキルエステルを主成分とする粘着剤があって、公知の方法により得ることができる。
【0116】
ゴム系粘着剤は、例えば、天然ゴムおよび/または合成ゴム、詳しくは、例えば、ポリイソブチレンゴム、ポリイソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルブチルゴムなどのゴムから、公知の方法により得ることができる。
【0117】
また、粘着剤の形態は、特に制限されず、例えば、エマルジョン系粘着剤、溶剤系粘着剤、オリゴマー系粘着剤、固形粘着剤など、様々な形態を採用することができる。
【0118】
粘着層3の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、10000μm以下、好ましくは、5000μm以下でもある。
【0119】
そして、シール材1を、粘着層3の粘着力により、部材、とりわけ、高温となる部材に貼付することにより、EPDM発泡体2によって、かかる部材の隙間をシールできる。
【0120】
また、このシール材1によれば、上記したEPDM発泡体を備えるため、耐熱性に優れ、EPDM発泡体を部材に確実に密着させることができ、確実に部材の隙間を充填することができる。
【0121】
また、図1の説明では、粘着層3が粘着剤のみからなる、基材レス型の粘着テープまたはシートとして形成したが、粘着層3を、図示しないが、例えば、粘着層3と基材とからなる、基材付型の粘着テープまたはシートとして形成することができる。
【0122】
このような場合には、粘着層3は、例えば、図示しない基材の少なくとも一方面、好ましくは、基材の両面に設けられた、積層粘着テープまたはシート(粘着層3/基材/粘着層3が順次積層された積層体テープまたはシート)として形成される。
【0123】
基材(図示せず)としては、特に制限されないが、例えば、プラスチックフィルムやシートなどのプラスチック系基材、例えば、紙などの紙系基材、例えば、織布、不織布、ネットなどの繊維系基材、例えば金属箔、金属板などの金属系基材、例えば、ゴムシートなどのゴム系基材、例えば、発泡シートなどの発泡性基材、さらには、これらの積層体などが挙げられる。
【0124】
なお、粘着層3を、基材付型の粘着テープまたはシートとして形成する方法としては、特に制限されておらず、公知の方法を採用することができる。
【0125】
さらに、図1の説明では、粘着層3を、EPDM発泡体2の片面(表面)のみに設けているが、例えば、EPDM発泡体2の両面(表面および裏面)に設けることもできる。
【0126】
このような粘着シール材1によれば、粘着層3がEPDM発泡体2の両面に設けられるため、2つの粘着層3によって、EPDM発泡体2を部材により確実に固定することができ、その間隙をより確実にシールすることができる。
【0127】
なお、必要により、粘着層の表面(樹脂層が積層されている裏面に対して反対側の表面)に、実際に使用するまでの間、セパレータ(離型紙)を貼着しておくこともできる。
【実施例】
【0128】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。
【0129】
実施例3、5、8、9および比較例1〜10
(1) EPDM発泡体の製造
表1に示す配合処方に記載の配合量において、EPDM、充填材、軟化剤、難燃剤および老化防止剤を配合し、3L加圧ニーダーにて混練し、一次混和物を得た。
【0130】
別途、架橋剤、架橋助剤、発泡剤、発泡助剤および架橋遅延剤を配合し、それらを一次混和物に配合して、10インチミキシングロールにて混練し、ゴム組成物(二次混和物)を得た(混練工程)。
【0131】
次いで、ゴム組成物を、一軸押出成形機(45mmφ)を用いて、厚み約8mmのシート状に押し出し、ゴム組成物シートを作製した(成形工程)。
【0132】
続いて、ゴム組成物シートを、熱風循環式オーブンにて、140℃で20分間予熱した。その後、熱風循環式オーブンを10分かけて170℃まで昇温し、ゴム組成物シートを、170℃で10分間加熱して発泡させ(発泡工程)、EPDM発泡体を製造した。
【0133】
なお、比較例1、2および5は、発泡が不良であったため、EPDM発泡体を得ることができなかった。
【0134】
【表1】
【0135】
表1中の数値は、各成分における配合部数を示す。
【0136】
なお、表1に示す略号などの詳細を下記する。
EPDM:EPT8030M、長鎖分岐含有、ジエン(5−エチリデン−2−ノルボルネン)含量9.5質量%、触媒:メタロセン触媒、三井化学社製
カーボンブラック:旭#50、平均粒子径80μm、旭カーボン社製
重質炭酸カルシウム:丸尾カルシウム社製
アスファルト:Trumbull Base Asphalt 4402、OwensCorning Sales LLC社製
パラフィン系オイル:ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産社製
酸化亜鉛:酸化亜鉛2種、三井金属鉱業社製
ステアリン酸:粉末ステアリン酸さくら、日油社製
水酸化アルミニウム:ハイジライトH−32、平均粒子径5〜10μm、昭和電工社製
4,4´−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン:ノクラックCD、芳香族第二級アミン系、大内新興化学社製
N,N´−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン:ノクラックwhite、芳香族第二級アミン系、大内新興化学社製
硫黄S8:アルファグランS−50EN、東知社製
テトラベンジルチウラムジスルフィド:ノクセラーTBZTD、チウラム化合物、大内新興化学社製
p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシム:バルノックDGM、キノイド化合物、大内新興化学社製
N,N´−ジエチルチオウレア:ノクセラーEUR、チオウレア系、大内新興化学社製
N,N´−ジブチルチオウレア:ノクセラーBUR、チオウレア系、大内新興化学社製
アゾジカルボンアミド:AC#LQ、永和化成工業社製
尿素系:セルペーストK5、永和化成工業社製
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛:ノクセラーPZ、ジチオカルバミン酸類、大内新興化学社製
ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛:ノクセラーEZ、ジチオカルバミン酸類、大内新興化学社製
2−メルカプトベンゾチアゾール:ノクセラーM、チアゾール類、大内新興化学社製
(2)物性測定
実施例3、5、8、および比較例3、4、6〜10のEPDM発泡体の各物性を、下記に示す方法で測定した。それらの結果を表2に示す。
【0137】
<80%圧縮荷重値>
EPDM発泡体の80%圧縮荷重値をJIS K 6767(1999)に準じて測定した。具体的には、EPDM発泡体のスキン層を除去して、厚み約10mmの試験片を調製した。その後、圧縮試験機を用いて、圧縮速度10mm/分で80%圧縮してから10秒後の80%圧縮荷重値を測定した。
【0138】
<見掛け密度>
EPDM発泡体の見掛け密度をJIS K 6767(1999)に準じて測定した。具体的には、EPDM発泡体のスキン層を除去して、厚み約10mmの試験片を調製した。その後、質量を測定して、単位体積あたりの質量(見掛け密度)を算出した。
【0139】
<伸び率および抗張力>
EPDM発泡体の伸び率および抗張力(破断伸び)をJIS K 6767(1999)に準じて測定した。具体的には、EPDM発泡体のスキン層を除去して、厚み約10mmの試験片を調製した。その後、ダンベル1号を用いて、試験片を打ち抜き、測定用サンプルとした。引張り試験機にて、引張り速度500mm/minの速さで測定用サンプルを引張り、測定用サンプルがダンベル形状平行部で切断したときの伸び率(破断伸び)および荷重(抗張力)を測定した。
【0140】
<耐熱性>
EPDM発泡体を、150℃で10日間加熱し、その加熱前後における80%圧縮荷重値、見掛け密度、伸び率および抗張力の変化率をそれぞれ求めることによって、EPDM発泡体の耐熱性を評価した。
【0141】
なお、80%圧縮荷重値の変化率(%)は、「[(加熱後の80%圧縮荷重値−加熱前の80%圧縮荷重値)/加熱前の80%圧縮荷重値]×100」である。
【0142】
また、見掛け密度の変化率(%)は、[(加熱後の見掛け密度−加熱前の見掛け密度)/加熱前の見掛け密度]×100である。
【0143】
また、伸び率の変化率(%)は、「[(加熱後の伸び率−加熱前の伸び率)/加熱前の伸び率]×100」である。
【0144】
また、抗張力の変化率(%)は、「[(加熱後の抗張力−加熱前の抗張力)/加熱前の抗張力]×100」である。
【0145】
【表2】
【符号の説明】
【0146】
1 シール材
2 EPDM発泡体
3 粘着層
図1