特許第5963627号(P5963627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963627
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】筆記具用水性インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/16 20140101AFI20160721BHJP
   C09D 11/18 20060101ALI20160721BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20160721BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C09D11/16
   C09D11/18
   B43K7/00
   B43K8/02 F
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-209896(P2012-209896)
(22)【出願日】2012年9月24日
(65)【公開番号】特開2014-65759(P2014-65759A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】西島 千裕
(72)【発明者】
【氏名】阿部 伸哉
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−297518(JP,A)
【文献】 特開2004−123904(JP,A)
【文献】 特開2000−026784(JP,A)
【文献】 特開2004−224892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
B43K 1/00− 1/12
B43K 5/00− 8/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩の少なくとも1種と、アミン類と、塩基性染料系色材とを含有することを特徴とする筆記具用水性インク組成物。
【請求項2】
ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩の含有量がインク組成物全量に対して、0.004〜2質量%であることを特徴とする請求項1に記載の筆記具用水性インク組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の筆記具用水性インク組成物を搭載したボールペン。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の筆記具用水性インク組成物を搭載したマーキングペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pHの経時的な低下がない安定性に優れた筆記具用水性インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水性ボールペン用等の筆記具用水性インク組成物は、インク組成物の経時安定性等を維持すべく、金属イオン封鎖剤やpH調整剤としてのアミン類などを含有している。
このような筆記具用水性インク組成物として、1)水溶性有機溶剤及び水溶性染料を含む水性インク組成物に対し、高級脂肪酸アルカリ塩を0.02〜5.0重量%、及び金属イオン封鎖剤を0.1〜1.0重量%含有せしめたことを特徴とするボールペン用に好適な水性インク組成物(例えば、特許文献1参照)、2)少なくとも水、着色剤、中和剤、リン酸エステル界面活性剤、エチレンジアミン四酢酸を添加するとともに、前記リン酸エステル界面活性剤のHLBが13以下であり、前記エチレンジアミン四酢酸の添加量が、インキ組成物全質量に対し、0.1質量%以上、2.0質量%以下、前記リン酸エステル界面活性剤の添加量が、0.1質量%以上、5.0質量%以下であるとともに、前記エチレンジアミン四酢酸と前記リン酸エステル界面活性剤の添加量の比率が、1.0:0.1〜1.0:5.0であるボールペン用に好適な水性インク組成物(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載されるエチレンジアミン四酢酸などの金属イオン封鎖剤(キレート剤)を用いた筆記具用水性インク組成物では、経時的にpHの低下が生じることがある。この原因は定かではないが、インク組成中に、アミン類と金属イオンが存在する場合に、経時的にpHの低下が生じやすい傾向がみられる。
特に、上記筆記具用水性インク組成物において、色材として、塩基性染料や、樹脂粒子を塩基性染料で染色した塩基性染料系色材を用いた場合に、上記経時的なpHの低下が更に生じやすい傾向がみられる。塩基性染料の多くは、塩素イオンとの塩により形成されるものであるため、塩基性染料を溶解若しくは染色させた樹脂粒子を用いるインク中では塩素イオン濃度が高くなる。塩素イオンは、筆記具部材由来からの金属イオンの遊離を促進させる働きがあるため、インク組成中に、アミン類が存在する場合に、上記経時的なpHの低下が更に生じやすくなると推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−234074号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2008−163091号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状に鑑み、これを解消しようとするものであり、
筆記具用水性インク組成物中に、色材として、塩基性染料系色材を用いた場合にも、pHの経時的な低下がない安定性に優れた筆記具用水性インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、少なくとも、アミン類、塩基性染料系色材を含有した筆記具用水性インク組成物に、更に、特定の化合物を含有せしめることにより、上記目的の筆記具用水性インク組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0007】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(4)に存する。
(1) ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩の少なくとも1種と、アミン類と、塩基性染料系色材とを含有することを特徴とする筆記具用水性インク組成物。
(2) ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩の含有量がインク組成物全量に対して、0.004〜2質量%であることを特徴とする上記(1)に記載の筆記具用水性インク組成物。
(3) 上記(1)又は(2)に記載の筆記具用水性インク組成物を搭載したボールペン。
(4) 上記(1)又は(2)に記載の筆記具用水性インク組成物を搭載したマーキングペン。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、pHの経時的な低下がない安定性に優れた筆記具用水性インク組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の筆記具用水性インク組成物は、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩の少なくとも1種と、アミン類と、塩基性染料系色材とを含有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明に用いるジエチレントリアミン五酢酸及びその塩は、キレート剤として用いるものであり、インク組成中に、当該キレート剤とアミン類と金属イオンなどの遊離を促進する塩基性染料系色材が存在する場合であっても、従来の課題であった経時的なpHの低下がなく、インクの安定性を維持させる作用を有するものである。
本発明に用いるジエチレントリアミン五酢酸及びその塩は、下記式(I)に示されるものである。
【化1】
〔上記式(I)中、X〜Xは、水素原子、アルカリ金属原子を表し、これらは同一であっても異なっていても良い。〕
アルカリ金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムなどを表し、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸カリウムなどのジエチレントリアミン五酢酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
好ましくは、インク成分に対する溶解性や汎用性の点から、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウムの使用が望ましい。
【0011】
これらのジエチレントリアミン五酢酸及びその塩の含有量は、インク組成物全量に対して、好ましくは、0.004〜2質量%、更に好ましくは、0.01〜1質量%とすることが望ましい。
このジエチレントリアミン五酢酸及びその塩の含有量が0.004質量%未満であると、金属イオン封鎖能が低く、インクの経時安定性が保てず、一方、2質量%を超えると、インク増粘等の不具合が起きることがある。
【0012】
本発明に用いるアミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、アミノメチルプロパンジオールなどの1種単独又は2種以上を併用することができる。
アミン類はpH調整剤として用いる。通常、水性インク組成物の好適なpHは用途(ボールペン、マーキングペン、サインペン等)や使用するインク添加剤によって異なる。アミン類をpH調整剤として用いるのは、概ね弱酸性〜アルカリ領域(pH6〜pH10程度)の水性インク組成物であり、その含有量は目的とするpH領域やインク添加剤によって異なる。
【0013】
本発明に用いる塩基性染料系色材としては、塩基性染料や、樹脂粒子を塩基性染料で着色した着色樹脂粒子(蛍光顔料)などの少なくとも1種が挙げられる。
本発明において塩基性染料とは、水性媒体中でアミノ基、アミノ基から誘導された形の広義なアミノ基及び複素環窒素などの分子内の窒素原子が、酸性化合物(例えば鉱酸:塩酸、硫酸、酢酸など)によって、4級化することによりカチオン性を示す構造を有する染料をいう。具体的には、ジ及びトリアリールメタン系染料;アジン系(ニグロシンを含む)、オキサジン系、チアジン系等のキノンイミン系染料;キサンテン系染料;トリアゾールアゾ系染料;チアゾールアゾ系染料;ベンゾチアゾールアゾ系染料;アゾ系染料;ポリメチン系、アゾメチン系、アザメチン系等のメチン系染料;アントラキノン系染料;フタロシアニン系染料等が例示できる。
更に、本発明に用いる具体的な黄色塩基性染料の例としては、C.I.ベーシックイエロー(Basic Yellow)−1、−2、−9、−11、−12、−13、−14、−15、−19、−21、−23、−24、−25、−28、−29、−32、−33、−34、−35、−36、−41、−51、−63、−73、−80等のCOLOR INDEXに記載されている染料が挙げられる。また、市販されている黄色塩基性染料としては、Aizen Cathilon Yellow GPLH(保土谷化学社製の商品名)等が挙げられる。
【0014】
橙色塩基性染料の例としては、C.I.ベーシックオレンジ(Basic Orange)−1、−2、−7、−14、−15、−21、−22、−23、−24、−25、−30、−32、−33、−34等のCOLOR INDEXに記載されている染料が挙げられる。
赤色塩基性染料の例としては、C.I.ベーシックレッド(Basic Red)−1、−2、−3、−4、−8、−9、−12、−13、−14、−15、−16、−17、−18、−22、−23、−24、−25、−26、−27、−29、−30、−32、−34、−35、−36、−37、−38、−39、−40、−41、−42、−43、−46、−49、−50、−51、−52、−53等のCOLOR INDEXに記載されている染料が挙げられる。また、市販されている赤色塩基性染料としては、Aizen Cathilon Red BPLH、Aizen Cathilon Red RH(以上、保土谷化学社製の商品名)、Diacryl Supra Brilliant Red 2G、Diacryl Supra Brilliant Red 3B、Diacryl Supra Red NRL(以上、三菱化学社製の商品名)、Sumiacryl Red B(住友化学社製の商品名)等が挙げられる。
【0015】
紫色塩基性染料の例としては、C.I.ベーシックバイオレット(Basic Violet)−1、−2、−3、−4、−5、−6、−7、−8、−10、−11、−12、−13、−14、−15、−16、−18、−21、−23、−24、−25、−26、−27、−28、−29、−33、−39等のCOLOR INDEXに記載されている染料が挙げられる。
青色塩基性染料の例としては、C.I.ベーシックブルー(Basic Blue)−1、−2、−3、−5、−6、−7、−8、−9、−15、−18、−19、−20、−21、−22、−24、−25、−26、−28、−29、−33、−35、−37、−40、−41、−42、−44、−45、−46、−47、−49、−50、−53、−54、−58、−59、−60、−62、−63、−64、−65、−66、−67、−68、−69、−70、−71、−75、−77、−78、−79、−82、−83、−87、−88、等のCOLOR INDEXに記載されている染料が挙げられる。また、市販されている青色塩基性染料としては、Aizen Cathilon Turquoise Blue LH、Aizen Cathilon Brilliant Blue F3RLH(以上、保土谷化学社製の商品名)、Diacryl Supra Brilliant Blue 2B、Diacryl Supra Brilliant Blue RHL、Diacryl Supra Blue BL(以上、三菱化学社製の商品名)、Sumiacryl Navy Blue R(住友化学社製の商品名)等が挙げられる。
【0016】
緑色塩基性染料の例としては、C.I.ベーシックグリーン(Basic Green)−1、−4、−6、−10等のCOLOR INDEXに記載されている染料が挙げられる。また、市販されている緑色塩基性染料としては、Diacryl Supra Brilliant Green 2GL(三菱化学社製の商品名)等が挙げられる。
茶色塩基性染料の例としては、C.I.ベーシックブラウン(Basic Brown)−1、−2、−4、−5、−7、−11、−12、−13、−15のCOLOR INDEXに記載されている染料が挙げられる。また、市販されている茶色塩基性染料としては、Janus Brown R(日本化学社製の商品名)、Aizen Cathilon Brown GH(保土谷化学社製の商品名)等が挙げられる。
黒色塩基性染料の例としては、C.I.ベーシックブラック(Basic Black)−1、−2、−3、−7、−8等のCOLOR INDEXに記載されている染料或いはニグロシン系塩基性染料が挙げられる。
【0017】
また、樹脂粒子を塩基性染料で着色した着色樹脂粒子(蛍光顔料)としては、市販のシンロイヒ社製のSF−3000シリーズ、SF−5000シリーズ、SF−8000シリーズ(シンロイヒ社製の商品名)、日本蛍光社製のNKW−3200Eシリーズ、3900Eシリーズ(日本蛍光社製の商品名)等が挙げられる。
【0018】
これらの塩基性染料系色材の含有量は、インクの描線濃度に応じて適宜増減することが可能であるが、インク組成物全量に対して、0.1〜40質量%程度とすることが好ましい。
【0019】
本発明の筆記具用水性インク組成物において、上記各成分の他、塩基性染料系色材以外の色材、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)、更に、各筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)の用途に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、水溶性有機溶剤、増粘剤、分散剤、潤滑剤、防錆剤、防腐剤もしくは防菌剤などを適宜含有することができる。
【0020】
本発明に用いる色材としては、水に溶解もしくは分散する上記塩基性染料系色材以外の染料、酸化チタン等の従来公知の無機系および有機顔料系、顔料を含有した樹脂粒子顔料、樹脂エマルションを染料で着色した疑似顔料、白色系プラスチック顔料、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした顔料等を本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
染料としては、例えば、エオシン、フオキシン、ウォーターイエロー#6−C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF、ニグロシンNB等の酸性染料;ダイレクトブラック154、ダイレクトスカイブルー5B、バイオレットB00B等の直接染料などが挙げられる。
【0021】
無機系顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。より具体的には、カーボンブラック、チタンブラック、亜鉛華、べんがら、アルミニウム、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、炭酸カルシウム、鉛白、紺白、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉等の無機顔料、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー27、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー34、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット50、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
これらの色材は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの色材の含有量は、上記塩基性染料系色材の含有量の範囲(0.1〜40質量%)でインクの描線濃度に応じて適宜増量することが可能である。
【0022】
用いることができる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3−ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、単独或いは混合して使用することができる。
【0023】
用いることができる増粘剤としては、例えば、合成高分子、セルロースおよび多糖類からなる群から選ばれた少なくとも一種が望ましい。具体的には、アラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ダイユータンガム、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸及びその塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレシオキサイド、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、架橋型アクリル酸重合体及びその塩、非架橋型アクリル酸重合体及びその塩、スチレンアクリル酸共重合体及びその塩などが挙げられる。
【0024】
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステルなどのノニオン系や、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩などのアニオン系、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類など、防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
【0025】
この筆記具用水性インク組成物を製造するには、従来から知られている方法が採用可能であり、例えば、上記ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩の少なくとも1種と、アミン類、塩基性染料系色材の他、上記水性における各成分を所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することによって得られる。更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよい。
【0026】
本発明の筆記具用水性インク組成物は、ボールペンチップ、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップなどのペン先部を備えたボールペン、マーキングペンに搭載して使用に供することができる。
本発明におけるボールペンとしては、上記構成の水性インク組成物をボールペン用インク収容体(リフィール)に収容すると共に、該インク収容体内に収容された水性インク組成物とは相溶性がなく、かつ、該水性インク組成物に対して比重が小さい物質、例えば、ポリブテン、シリコーンオイル、鉱油等がインキ追従体として収容されるものが挙げられる。
なお、ボールペンや、マーキングペンの構造は、特に限定されず、例えば、軸筒自体をインク収容体として該軸筒内に上記構成の水性インク組成物を充填したコレクター構造(インキ保持機構)を備えた直液式のボールペン、マーキングペンであってもよいものである。
【0027】
このように構成される本発明の筆記具用水性インク組成物が、塩基性染料系色材を用いた場合であっても、何故経時的にpHの低下を抑制する機能を発現するのか定かではないが、金属イオンによるアミン類の変質を抑制していると推測される。
アミン類は主にインク組成物のpH調整剤として用いられるので、これが変質するとpHが低下する。インク組成物中に含有される成分、例えば、色材や各種添加剤はその分散性や溶解性がpHに依存している場合が多い。したがって、pHの変動は、インク組成物の安定性を低下させる。
本発明で用いる上記ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩の少なくとも1種は、塩基性染料系色材を用いた場合であっても、pH低下の抑制効果・その持続効果が極めて優れているために多くの含有量が必要でなく、しかも、その効果の発現期間・持続時間も長く、更に水溶性であるために経時的な安定性にも優れたものとなる。
【実施例】
【0028】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0029】
〔実施例1〜5及び比較例1〜3〕
下記表1に示す配合処方にしたがって、常法により各筆記具用水性インク組成物を調製した。得られた各筆記具用水性インク組成物(全量100質量%)について、下記方法により、初期pH、経時後pHを測定した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0030】
(初期pH、経時後pHの測定方法)
初期にpH(25℃)を測定したインクを蓋付きのガラス瓶に充填して、50℃の条件下で1ヶ月間保管してpH(25℃)を測定した。pH測定は、HORIBA pH/ION METER F−23(HORIBA社製)により測定した。
【0031】
【表1】
【0032】
上記表1の結果から明らかなように、本発明となる実施例1〜5は、本発明の範囲外となる比較例1〜3に較べて、経時後であってもpHの低下もなく安定性に優れた筆記具用水性インク組成物となることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0033】
水性のボールペン、マーキングペンなどの筆記具に好適な筆記具用水性インク組成物が得られる。