(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車体の前後にそれぞれ左右一対の車輪を備え、前側および後側いずれか一方の左右一対の車輪が転舵輪で且つ他方の左右一対の車輪のうちの少なくとも一方が駆動輪である走行体と、
前記左右一対の転舵輪の転舵角を変化させる転舵手段と、
前記駆動輪を駆動して前記走行体を走行させる走行駆動手段と、
前記転舵輪の転舵角を検出する転舵角検出手段と、
前記転舵輪の操舵を行うための操舵手段と、
前記走行体の走行操作を行うための走行操作手段と、
前記操舵手段の操舵および前記走行操作手段の走行操作に応じて、前記転舵手段および前記走行駆動手段の作動制御を行う制御手段とを備えた作業車であって、
前記制御手段は、前記転舵角検出手段により検出された前記転舵輪の転舵角が所定転舵角範囲を越えている状態で、前記走行操作手段の操作に基づいて前記駆動輪を制動して前記走行体の走行を停止させるときに、前記操舵手段の操舵に拘らず前記転舵輪の転舵角が中立位置を含む前記所定転舵角範囲内の転舵角となるように前記転舵手段を駆動する構成であることを特徴とする作業車。
前記制御手段は、前記操舵手段の操舵に拘らず前記転舵輪の転舵角が中立位置を含む前記所定転舵角範囲内の転舵角となるように前記転舵手段を駆動するときに、前記走行体の走行速度が大きいほど前記転舵手段の駆動速度を大きく設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の作業車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図9には、紙面下方に向けて走行する従来の一輪駆動の高所作業車500の平面図を示している。この
図9に示すように高所作業車500は、台車本体510と、図示しない走行モータにより駆動される駆動輪520と、図示しない転舵モータにより転舵される左右一対の転舵輪530と、走行モータによる駆動も転舵モータによる転舵もされず自由回転状態となった従動輪540とを備える。この高所作業車500は、走行操作手段の操作に基づいて走行を停止させるとき、駆動輪520を制動して走行を停止させるようになっている。
【0006】
このため、
図9(a)に示すように、駆動輪520が旋回内輪となる向きに転舵輪530が転舵された状態で駆動輪520が制動されると、
図9(b)および
図9(c)に示すように、台車本体510は駆動輪520を中心として慣性力により旋回する(以下、この旋回を「慣性旋回」と称する)。そして、
図9(d)に示すように、駆動輪520の制動が開始された状態(
図9(a))と比較して、台車本体510が90度以上旋回して停止することもあった。これに対して、例えば従動輪540にも制動力を作用させる構成にすれば、走行停止時における台車本体510の慣性旋回を抑えることができるが、一方で台車本体510が大型になったり、部品点数が増えて製造コストが増加するという新たな問題が生じる。このように、コンパクト且つ安価な一輪駆動の構成としつつ、走行停止時における慣性旋回を抑える構成とすることが難しいという課題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、コンパクト且つ安価な一輪駆動の構成としつつ、走行停止時における慣性旋回を抑えることが可能な作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的達成のため、本発明に係る作業車は、車体(例えば、実施形態における台車本体10)の前後にそれぞれ左右一対の車輪を備え、前側および後側いずれか一方の左右一対の車輪が転舵輪で且つ他方の左右一対の車輪のうちの少なくとも一方が駆動輪である走行体(例えば、実施形態における走行台車2)と、前記左右一対の転舵輪の転舵角を変化させる転舵手段(例えば、実施形態における転舵モータ19)と、前記駆動輪を駆動して前記走行体を走行させる走行駆動手段(例えば、実施形態における走行モータ21)と、前記転舵輪の転舵角を検出する転舵角検出手段(例えば、実施形態における転舵角検出器24)と、前記転舵輪の操舵を行うための操舵手段(例えば、実施形態における操舵ダイヤル44)と、前記走行体の走行操作を行うための走行操作手段(例えば、実施形態における走行操作レバー43)と、前記操舵手段の操舵および前記走行操作手段の走行操作に応じて、前記転舵手段および前記走行駆動手段の作動制御を行う制御手段(例えば、実施形態におけるコントローラ15、走行インバータ17)とを備えた作業車(例えば、実施形態における高所作業車1)であって、前記制御手段は、前記転舵角検出手段により検出された前記転舵輪の転舵角が所定転舵角範囲(例えば、実施形態における内側転舵角範囲A)を越えている状態で、前記走行操作手段の操作に基づいて前記駆動輪を制動して前記走行体の走行を停止させるときに、前記操舵手段の操舵に拘らず前記転舵輪の転舵角が中立位置を含む前記所定転舵角範囲内の転舵角となるように前記転舵手段を駆動する構成であることを特徴とする。
【0009】
上述の作業車において、前記他方の左右一対の車輪のうちの一方のみが駆動輪であり、前記制御手段は、前記転舵角検出手段により前記駆動輪が旋回内輪となる向きに前記転舵輪が転舵されることが検出されるとともに前記転舵角検出手段により検出された時の前記転舵輪の転舵角が前記所定転舵角範囲を越えている状態で、前記走行操作手段の操作に基づいて前記駆動輪を制動して前記走行体の走行を停止させるときに、前記操舵手段の操舵に拘らず前記転舵輪の転舵角が中立位置を含む前記所定転舵角範囲内の転舵角となるように前記転舵手段を駆動する構成が好ましい。
【0010】
また、前記所定転舵角範囲は、前記走行体の走行速度が大きいほど小さくなるように設定されることが好ましい。
【0011】
さらに、前記所定転舵角範囲は、前記走行体の傾斜角が大きいほど小さくなるように設定されることも好ましい。
【0012】
上述の作業車において、前記制御手段は、前記操舵手段の操舵に拘らず前記転舵輪の転舵角が中立位置を含む前記所定転舵角範囲内の転舵角となるように前記転舵手段を駆動するときに、前記走行体の走行速度が大きいほど前記転舵手段の駆動速度を大きく設定する構成が好ましい。
【0013】
さらに、前記走行駆動手段は電動モータであり、前記制御手段は、前記電動モータの作動制御を行うことにより前記駆動輪を制動することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る作業車は、転舵輪の転舵角が所定転舵角範囲を越えている状態で駆動輪を制動して停止させるときに、操舵手段の操舵に拘らず転舵輪の転舵角が中立位置を含む所定転舵角範囲内の転舵角となるように転舵手段が駆動される。このように、慣性旋回が発生する虞のある転舵状態で走行を停止させる場合に、転舵輪が自動で所定転舵角範囲内に転舵されるので、駆動輪を制動するときに作用する慣性力(特に、走行体を旋回させる方向に作用する慣性力)を小さくして、走行停止時における慣性旋回を抑えることができる。
【0015】
上述の作業車において、他方の左右一対の車輪のうちの一方のみが駆動輪であり、駆動輪が旋回内輪となる向きに転舵輪が転舵されるときに、操舵手段の操舵に拘らず転舵輪の転舵角が所定転舵角範囲内の転舵角となるように転舵手段が駆動される構成が好ましい。このように構成すれば、走行停止時の慣性旋回が特に発生しやすい一輪駆動の作業車において、慣性旋回を抑えることができる。
【0016】
また、所定転舵角範囲は、走行体の走行速度が大きいほど小さくなるように設定されることが好ましい。走行体の走行速度に応じて慣性旋回が発生する転舵角が変化するため、このように構成すれば、走行体の走行速度に応じた所定転舵角範囲を設定して、慣性旋回を走行速度に対応して適切に防止できる。
【0017】
さらに、所定転舵角範囲は、走行体の傾斜角が大きいほど小さくなるように設定されることも好ましい。例えば走行体の前後左右への傾斜状態に応じて慣性旋回が発生する転舵角が変化する場合があるが、このように構成すれば、走行体の傾斜角に応じた所定転舵角範囲を設定して、慣性旋回を走行体の傾斜角に対応して適切に防止できる。
【0018】
上述の作業車において、操舵手段の操舵に拘らず転舵輪を転舵させて所定転舵角範囲内に位置させるときに、走行体の走行速度が大きいほど転舵手段の駆動速度を大きく設定する構成が好ましい。走行体の走行速度が大きいほど慣性旋回が発生しやすくなるが、このように構成すれば、慣性旋回が発生する前に転舵輪を所定転舵角範囲内に位置させることができ、慣性旋回を確実に防止できる。
【0019】
さらに、制御手段は、走行駆動手段としての電動モータの作動制御を行うことにより、駆動輪を制動することが好ましい。このように構成すれば、例えば機械式のブレーキ等を別途設けることなく駆動輪を制動することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態においては、本発明を、複数のマスト部材を入れ子式に組み合わせて構成された昇降マスト3により作業者搭乗用の作業台4を昇降させる、垂直昇降式の高所作業車1に適用した例について説明する。まず、
図1〜
図3を参照しながら、高所作業車1の概略構成について説明する。なお、以下においては説明の便宜のため、図面に付記する矢印方向を左右、前後および上下と定義して説明を行なう。
【0022】
図1に高所作業車1の側面視を示しており、この
図1に示すように、高所作業車1は、走行可能な走行台車2と、走行台車2から上方に突出する伸縮式の昇降マスト3と、昇降マスト3の上部から後方に突出する作業者搭乗用の作業台4と、高所作業車1の作動を制御する制御ユニット5(
図3参照)とを有して構成される。
【0023】
図2に高所作業車1の平面視(昇降マスト3および作業台4を省略)を示しており、この
図2に示すように、走行台車2は、略直方体の台車本体10と、台車本体10の前部左側に設けられた駆動輪11と、台車本体10の前部右側に設けられた従動輪12と、台車本体10の後部左右に設けられた一対の転舵輪13,13とを有して構成される。一対の転舵輪13は、アッカーマンリンク機構14によって連結されている。台車本体10内に設けられた電動式の転舵モータ19によりアッカーマンリンク機構14を駆動することで、左右一対の転舵輪13が転舵される。このアッカーマンリンク機構14は、転舵角が大きくなるに従って、旋回外側の転舵輪13の転舵角よりも旋回内側の転舵輪13の転舵角の方が大きくなる構成である。
【0024】
本実施形態では、走行台車2が左方に向けて旋回するように転舵輪13を転舵させることを「転舵輪13を左旋回側に転舵させる」と称し、これとは反対に、走行台車2が右方に向けて旋回するように転舵輪13を転舵させることを「転舵輪13を右旋回側に転舵させる」と称する。例えば
図4(a)には、転舵輪13を左旋回側に転舵させた状態を示している。また、走行台車2を直進走行させるときの転舵輪13の転舵位置を「中立位置」と称し、このことは特許請求の範囲においても同様である(
図5に示すθ1)。なお、左右一対の転舵輪13のうち左側の転舵輪13には、この転舵輪13の中立位置からの転舵角を、左旋回側と右旋回側とに区別して検出する転舵角検出器24が設けられている(
図3参照)。
【0025】
駆動輪11は、台車本体10内に設けられた電動式の走行モータ21(走行モータ21の出力軸)の回転駆動力が減速機22で減速されて伝達され、回転駆動される構成になっている。また、走行モータ21には、ソレノイド(図示せず)を内蔵するいわゆる無励磁作動型の電磁ブレーキである駐車ブレーキ23が備えられている。駐車ブレーキ23は、駆動電流が供給されずソレノイドが励磁されないときにはバネ力等によりブレーキが作動して、制動力により走行モータ21の出力軸の回転を防止する。一方、駆動電流の供給を受けてソレノイドが励磁されると、その励磁力により上記バネ等の力に抗してブレーキを解除して走行モータ21の出力軸の回転を許容する。従動輪12は、車軸を介して駆動輪11と連結されることなく、また、走行モータ21による駆動もされず且つ転舵モータ19による転舵もされず自由回転状態となった車輪である。なお、走行モータ21には、走行モータ21の出力軸の回転速度を検出する走行モータ回転検出器26が設けられている(
図3参照)。
【0026】
図1に示すように、昇降マスト3は、走行台車2に立設された第1マスト部材31と、第1マスト部材31の外側に上下に移動可能に配置された第2マスト部材32と、第2マスト部材32の外側に上下に移動可能に配置された第3マスト部材33と、第3マスト部材33の外側に上下に移動可能に配置された第4マスト部材34とを有し、上下に伸縮可能に構成される。
図2に示すように台車本体10内には、昇降マスト3を昇降させる電動式の昇降モータ20が設けられており、この昇降モータ20(昇降モータ20の出力軸)の回転駆動力が減速機(図示せず)で減速され、昇降用駆動軸(図示せず)に伝達される構成になっている。なお、昇降モータ20には、昇降モータ20の出力軸の回転速度を検出する昇降モータ回転検出器25が設けられている(
図3参照)。
【0027】
第1マスト部材31の上部には回転自在な上部スプロケット35が軸支されており、第2マスト部材32の下部に固着された無端状のチェーン36が、この上部スプロケット35と昇降用駆動軸に取り付けられた下部スプロケット(図示せず)とに掛け回されている。第2マスト部材32の上部には回転自在なシーブ37が軸支され、第1マスト部材31の上部に一端が固着されたワイヤ38がシーブ37に掛け回され、このワイヤ38の他端は第3マスト部材33の下部に固着されている。第3マスト部材33の上部には回転自在なシーブ39が軸支され、第2マスト部材32の上部に一端が固着されたワイヤ40がシーブ39に掛け回され、このワイヤ39の他端は第4マスト部材34の下部に固着されている。
【0028】
作業台4は、
図1に示すように、第4マスト部材34の後側壁部に後方に突出して設けられ、作業者が操作する操作装置41を備える。操作装置41は、
図3に示すように、例えば前後に傾動操作可能に設けられて昇降マスト3を昇降させる操作を行う昇降操作レバー42と、例えば前後に傾動操作可能に設けられて走行台車2を走行させる操作を行う走行操作レバー43と、例えば左右に回動操作可能に設けられて転舵輪13を転舵させる操作を行う操舵ダイヤル44とを備えて構成される。
【0029】
図3に高所作業車1の制御系統に関するブロック図を示しており、この
図3に示すように、制御ユニット5は、制御ユニット5の中枢としてのコントローラ15と、直流電力を交流電力に変換可能な昇降インバータ16,走行インバータ17と、複数の電源バッテリが直列に接続された直流電源であるバッテリ18とから構成される。
【0030】
コントローラ15には、昇降操作レバー42、走行操作レバー43および操舵ダイヤル44から出力された操作信号が入力されるとともに、転舵角検出器24で検出された検出信号が入力される。また、コントローラ15には、昇降モータ回転検出器25で検出された検出信号が昇降インバータ16を介して入力されるとともに、走行モータ回転検出器26で検出された検出信号が走行インバータ17を介して入力される。さらに、転舵モータ19を励磁するための交流電力および駐車ブレーキ23を励磁するための駆動電流が、昇降インバータ16または走行インバータ17を介してバッテリ18からコントローラ15に入力される。コントローラ15は、入力された上記操作信号および検出信号に基づいて、バッテリ18からの交流電力を転舵モータ19に供給する制御や、バッテリ18からの駆動電流を駐車ブレーキ23に供給する制御を行う。なお、コントローラ15は、
図3に示すように、メモリ15aおよびタイマ15bを備える(これらの作動は後述)。
【0031】
昇降インバータ16には、昇降操作レバー42の操作に対応した操作信号(目標とする昇降モータ回転速度)がコントローラ15を介して入力されるとともに、昇降モータ回転検出器25からの検出信号(実際の昇降モータ回転速度)が入力される。また、昇降インバータ16には、バッテリ18からの直流電力が入力される。昇降インバータ16は、実際の昇降モータ回転速度が目標とする昇降モータ回転速度となるように、バッテリ18からの直流電力を交流電力に変換して昇降モータ20に供給する制御を行う。
【0032】
走行インバータ17には、走行操作レバー43の操作に対応した操作信号(目標とする走行モータ回転速度)がコントローラ15を介して入力されるとともに、走行モータ回転検出器26からの検出信号(実際の走行モータ回転速度)が入力される。また、走行インバータ17には、バッテリ18からの直流電力が入力される。走行インバータ17は、実際の走行モータ回転速度が目標とする走行モータ回転速度となるように、バッテリ18からの直流電力を交流電力に変換して走行モータ21に供給する制御を行う。
【0033】
このように構成される高所作業車1においては、作業者が作業台4に搭乗して、昇降操作レバー42および走行操作レバー43を前後に傾動操作したり、操舵ダイヤル44を左右に回動操作することにより、走行台車2により高所作業車1を前後に走行させたり、昇降マスト3を昇降作動させて、作業者が搭乗する作業台4を所望の高所に移動させることができる。例えば、走行操作レバー43を中立位置から前後に傾動操作することにより、走行モータ21を正逆回転させて走行台車2を前進走行および後進走行させることができる。また、操舵ダイヤル44を中立位置から左右に回動操作することにより、回動操作量に応じた転舵角で転舵輪13を左旋回側および右旋回側に転舵させることができる。このため、走行操作レバー43の傾動操作および操舵ダイヤル44の回動操作を組み合わせて行い、高所作業車1を所望の場所に移動させることができる。
【0034】
また、例えば昇降操作レバー42が中立位置から前後に傾動操作されると、正逆回転する昇降モータ20によりチェーン36が駆動される。これにより、第1マスト部材31に対して第2マスト部材32、第2マスト部材32に対して第3マスト部材33、および第3マスト部材33に対して第4マスト部材34が、それぞれ引き上げ・引き下げられる。このようにして昇降マスト3全体を伸縮させることができ、作業者は、作業台4とともに所望の高所に上昇移動したり、高所から降下移動したりすることができる。
【0035】
以上ここまでは、高所作業車1の概略構成について説明した。次に、高所作業車1の作動について説明する。
【0036】
高所作業車1を用いて高所作業を行う場合には、まず、作業台4に作業者が搭乗し、操舵ダイヤル44を回動操作しながら走行操作レバー43を前後に傾動操作して、走行台車2を走行させて作業場所の下方に移動させる。次に、昇降操作レバー42を操作して昇降マスト3を上昇させることにより、作業台4を所望高所近傍に位置させ、その状態で高所作業を行う。当該所望高所での作業が終了すると、走行の支障とならない高さ位置に作業台4を降下させ、その状態で走行台車2を走行させて次の作業場所の下方に移動させる。このように、走行台車2の走行作動と昇降マスト3の昇降作動とが繰り返されて、高所作業車1による高所作業が行われる。そこで、以下においては、走行台車2を走行させて作業場所の下方に移動させ、そこに停止させるときの作動(以下、「停止時の作動」と称す)と、一旦停止させた走行台車2を次の作業場所に移動させるために発進させるときの作動(以下、「発進時の作動」と称す)とを説明する。
【0037】
まず、
図7に示すフローチャート50を参照しながら、停止時の作動について説明する。なお、このフローチャート50においては、走行操作レバー43を前方に傾動操作するとともに操舵ダイヤル44を左旋回側に回動操作して、台車本体10を左旋回走行させる状態(
図4(a)参照)において、走行操作レバー43を中立位置に操作して左旋回走行を停止させる場合(
図4(d)参照)の作動を例示して説明する。
【0038】
高所作業車1を左旋回走行させているときに、走行操作レバー43が中立位置に操作されると、走行停止に対応する操作信号(停止信号)が走行操作レバー43からコントローラ15に入力される(ステップS51)。コントローラ15は停止信号を検出すると、走行モータ21の回転速度を零に制御するための指令信号を走行インバータ17に出力する。走行インバータ17は上記指令信号を受けて、走行モータ21の回転速度が零になるように走行モータ21への交流電力の供給制御を行う。つまり、走行モータ21に、慣性力により走行モータ21を回転駆動させる力に抗する回転抵抗力を発生させる。このようにして走行モータ21の作動制御を行うことにより駆動輪11を制動して、高所作業車1の走行を停止させる。ここで、走行モータ21の回転速度を一気に零にすると高所作業車1の姿勢が不安定になるので、コントローラ15は、走行操作レバー43が走行速度を零にするように操作されても、回転速度が徐々に零に近づくように指令信号を出力する。なお、ステップS51において停止信号が検出されない場合には、以下に説明するステップS52〜S57を実行せず、このフローを終了する。
【0039】
ところで、高所作業車1は原則として、操作装置41の操作に応じて各モータ19,20,21の作動制御が行われる。このため、操舵ダイヤル44が回動操作されたままで走行操作レバー43が中立位置に操作されると、転舵輪13が転舵された状態のままで駆動輪11が制動されて停止する。このとき、転舵輪13が左旋回側に転舵されていると、駆動輪11を中心として旋回させる慣性力が転舵輪13の転舵角および走行速度Vに応じて作用し、この慣性力によって高所作業車1が慣性旋回する場合があり得る。そこで、以下に説明するステップS52〜S55において、走行台車2が慣性旋回する虞があるか否かの判断を行う。
【0040】
この判断を行うために、メモリ15aには内側上限転舵角θ2が予め記憶されている。この内側上限転舵角θ2について、
図5および
図6を参照しながら説明する。
図5には台車本体10の左側に設けられた転舵輪13の転舵角範囲を示しており、アッカーマンリンク機構14により転舵させる構成のため、左旋回側にこの転舵輪13を転舵させる場合の最大転舵角θ3と、右旋回側にこの転舵輪13を転舵させる場合の最大転舵角θ4とが異なっている。ここで、転舵角が小さい場合(例えば、中立位置θ1近傍の場合)には、駆動輪11を中心として旋回させる方向に作用する慣性力(以下、「慣性力の旋回方向成分」と称する)が小さいため慣性旋回が発生しにくいが、転舵角および走行速度Vが大きくなるに従って慣性力の旋回方向成分が大きくなり慣性旋回が発生しやすくなる。そこで、コントローラ15のメモリ15aには、左旋回走行時に駆動輪11を制動しても慣性旋回を防止できる転舵角の上限値としての内側上限転舵角θ2が、走行速度Vに対応付けられて記憶されている(
図6(a)参照)。
図6(a)から分かるように、内側上限転舵角θ2は、走行速度Vが大きくなるに従って小さくなるように設定される。
【0041】
図7に戻り、ステップS51において停止信号を検出するとステップS52に進み、コントローラ15は、走行モータ回転検出器26からの検出信号(走行モータ21の回転速度)に基づいて、高所作業車1の走行速度Vを算出する。次にステップS53に進むと、コントローラ15は、ステップS52で算出された走行速度Vに対応する内側上限転舵角θ2をメモリ15aから読み出す。続いてステップS54に進み、転舵角検出器24から入力された検出信号に基づいて転舵輪13の転舵角θを検出する。
【0042】
次にステップS55において、ステップS53で読み出した内側上限転舵角θ2とステップS54で検出した転舵角θとの大小を比較する。転舵角θが、中立位置θ1〜内側上限転舵角θ2の間(内側転舵角範囲A内)であれば、慣性力の旋回方向成分が慣性旋回を発生させるほど大きくないため、その転舵角θのままで駆動輪11を制動しても慣性旋回を防止できる。よって、この場合には、ステップS55からステップS57に進む。一方、転舵角θが、内側上限転舵角θ2を越える場合、すなわち、内側上限転舵角θ2〜最大転舵角θ3の間(外側転舵角範囲B内)である場合、慣性力の旋回方向成分が大きくなるため、その転舵角θのままで駆動輪11を制動すると慣性旋回が発生する可能性がある。よって、この場合には、ステップS55からステップS56に進む。なお、本実施形態に例示する高所作業車1は、前部左側に駆動輪11を設けた構成のため、
図5に示すように、中立位置θ1〜最大転舵角θ4の間(右旋回側)に転舵された状態で走行停止される場合には、制動される駆動輪11が旋回外輪となり慣性旋回は発生しない。
【0043】
ステップS55からステップS56に進むと、コントローラ15は、操舵ダイヤル44からの操作信号(左旋回側に転舵させる操作信号)に拘らず、転舵輪13が中立位置θ1に位置するように転舵モータ19を制御する。この制御により、
図4(b)および
図4(c)に示すように、駆動輪11を制動して減速させる間(高所作業車1が慣性力により走行する間)に、転舵輪13を中立位置θ1に転舵させる。このようにして転舵輪13を中立位置θ1に転舵させると、台車本体10に対して斜め方向に慣性力が作用することを防止でき、慣性旋回を抑えることが可能になる。よって、本発明を適用した高所作業車1は、コンパクト且つ安価な一輪駆動の構成でありながら走行停止時における慣性旋回を抑えて、使い勝手を向上させている。また、このように転舵輪13を中立位置θ1に位置させた状態で駆動輪11を制動すれば、慣性力による走行を効果的に停止させることもできる。そして、ステップS57に進む。
【0044】
ステップS55もしくはステップS56からステップS57に進むと、コントローラ15は、駐車ブレーキ23への駆動電流の供給を停止して駐車ブレーキ23を作動させた後、走行モータ21への交流電力の供給を停止する。ここで、コントローラ15のメモリ15aには、駆動輪11を制動して確実に走行を停止させるために要する時間が作動開始時間として記憶されている。そして、走行操作レバー43の停止信号を検出した後の時間をタイマ15bで計測し、タイマ15bで計測される時間がメモリ15aに設定された作動開始時間に達すると、コントローラ15は駐車ブレーキ23への駆動電流の供給を停止して駐車ブレーキ23を作動させる。駐車ブレーキ23が作動して走行モータ21の出力軸の回転が規制されることにより、高所作業車1は停止状態に維持されて、このフローは終了する。なお、ステップS55からステップS56に進む場合には、ステップS56において転舵輪13を中立位置θ1に転舵させ、その上でステップS57において駐車ブレーキ23を作動させるようになっている。このため、例えば外側転舵角範囲Bに位置したまま駐車ブレーキ23を作動させる構成と比較して、駐車ブレーキ23を作動させるときの逸走を効果的に防止できる。
【0045】
次に、
図8に示すフローチャート60を参照しながら、発進時の作動について説明する。
【0046】
上述したように、走行モータ21に回転抵抗力を発生させることにより駆動輪11を制動して、慣性力による走行を停止させた後、駐車ブレーキ23の作動により停車状態が維持される(ステップS61)。この状態で走行操作レバー43が例えば前方へ傾動操作されると、走行操作レバー43からコントローラ15にこの操作に対応した操作信号(走行信号)が入力され、コントローラ15はこの走行信号を検出する(ステップS62)。続くステップS63において、操舵ダイヤル44から操作信号(操舵信号)がコントローラ15に入力され、コントローラ15はこの操舵信号を検出する。
【0047】
次にステップS64では、上記ステップS63で検出された操舵信号に応じた転舵角となるように転舵輪13を転舵させる。このため、例えば上述したステップS54において、操舵ダイヤル44の回動操作に拘らず中立位置θ1に転舵されて走行停止され且つその回動操作をしたままで発進させるときに、回動操作に応じて転舵輪13を転舵させた状態で発進させることができる。続いてステップS65に進み、コントローラ15は、駐車ブレーキ23に駆動電流を供給して駐車ブレーキ23を解除する。次にステップS66において、走行操作レバー43の傾動操作に応じた交流電力を走行モータ21に供給して、操舵ダイヤル44の回動操作に応じて転舵輪13を転舵させた状態で高所作業車1を発進させ、このフローは終了する。
【0048】
上述の実施形態においては、ステップS54において、転舵輪13が外側転舵角範囲Bに位置する状態で走行停止させるときに、転舵輪13を中立位置θ1に転舵させる例について説明したが、本発明はこの例に限定されるものではない。転舵輪13が外側転舵角範囲Bに位置する状態で走行停止させる場合に、転舵輪13を例えば内側上限転舵角θ2に転舵させたり、中立位置θ1〜内側上限転舵角θ2の間(内側転舵角範囲A内)に転舵させても、慣性旋回を抑えることができる。
【0049】
上述の実施形態においては、
図2に示すように、台車本体10の前部左側に設けられた駆動輪11を駆動および制動させるとともに、前部右側に設けられた車輪を従動輪12とする構成の高所作業車1を例示して、転舵輪13が左旋回側に転舵された状態で走行停止させるときの慣性旋回防止について説明した。ところで、台車本体10の前部右側に設けられた車輪を駆動輪として駆動および制動させるとともに、前部左側に設けられた車輪を従動輪とする構成の高所作業車においては、転舵輪13が右旋回側に転舵された状態で走行停止させるときに慣性旋回が発生し得る。
【0050】
そこで、このような構成の高所作業車においては、
図5に示す右旋回側の転舵角範囲内に、右旋回走行時の慣性旋回を防止できる上限の転舵角としての内側上限転舵角θ5(<内側上限転舵角θ2)を設定する(
図6(a)および
図6(b)参照)。そして、中立位置θ1〜内側上限転舵角θ5の間(内側転舵角範囲C内)の転舵角であれば、その転舵角のままで駆動輪11を制動し、一方、内側上限転舵角θ5〜最大転舵角θ4の間(外側転舵角範囲D内)の転舵角であれば、駆動輪11を制動しながら転舵輪13を中立位置θ1に転舵させる制御を行う。この制御により、台車本体10の前部右側に設けられた車輪を駆動輪とする構成の高所作業車において、走行停止時の慣性旋回を抑えることができる。
【0051】
上述の実施形態においては、
図6(a)に示すように、コントローラ15のメモリ15aに、走行速度Vが大きくなるに従って直線的に小さくなるような内側上限転舵角θ2を記憶する構成例について説明したが、走行速度Vと内側上限転舵角θ2との関係はこれに限定されない。この構成例に代えて、例えば
図6(b)に示すように、走行速度Vが大きくなるに従って段階的に小さくなるような内側上限転舵角θ2を、コントローラ15のメモリ15aに記憶する構成も可能である。
【0052】
上述の実施形態においては、
図2に示すように、駐車ブレーキ23を走行モータ21に連結させて設けて、駆動輪11のみに駐車ブレーキ23を作動させる構成に本発明を適用した例を説明したが、本発明はこの構成に限定して適用されるものではない。例えば、従動輪12の駆動軸(図示せず)の回転を防止および許容する無励磁作動型の駐車ブレーキを追加して設け、駆動輪11を制動して走行を停止させた後、駆動輪11および従動輪12に駐車ブレーキを作動させて停止状態を維持する構成の高所作業車にも、本発明を適用可能である。このように、走行停止時に駆動輪11および従動輪12に駐車ブレーキを作動させる構成にすれば、停止状態を確実に維持して逸走を防止できる。
【0053】
上述の実施形態においては、ステップS55において、走行操作レバー43の停止信号を検出した後の時間をタイマ15bで計測し、この時間がメモリ15aに記憶された作動開始時間に達すると駐車ブレーキ23を作動させる構成を例示して説明したが、駐車ブレーキ23の作動制御はこれに限定されない。ステップS51において説明したように、コントローラ15は、走行操作レバー43の停止信号を検出すると、走行モータ21の回転速度を零に制御するための指令信号を走行インバータ17に出力する。そこで、タイマ15bにおいて、走行インバータ17に上記指令信号を出力した後の時間を計測し、この時間がメモリ15aに記憶された作動開始時間に達すると駐車ブレーキ23を作動させる構成にしても良い。さらには、高所作業車1の走行速度Vを基にして、この走行速度Vが零に達することに基づいて駐車ブレーキ23を作動させる構成にしても良い。
【0054】
上述の実施形態においては、走行モータ21の作動制御を行って駆動輪11を制動する構成について説明したが、この構成に代えて、機械式のブレーキ手段(例えば、ディスクブレーキやドラムブレーキ等)により駆動輪11を制動する構成でも良い。
【0055】
上述の実施形態では、電動式の高所作業車1に本発明を適用した例について説明したが、本発明は電動式の高所作業車に限定して適用されるものではなく、例えば油圧ポンプを駆動して得られた油圧により作動する油圧式の高所作業車にも適用可能である。
【0056】
上述の実施形態においては、慣性旋回が顕著に発生しやすい一輪駆動の高所作業車1に本発明を適用した場合を説明したが、例えば転舵輪以外の2つの車輪を駆動輪とし、この駆動輪を駆動および制動する構成の高所作業車にも本発明を適用可能である。
【0057】
上述の実施形態では、昇降マスト3により作業台4を昇降移動させる構成の高所作業車1に本発明を適用した場合について説明したが、例えばシザースリンク機構により作業台を昇降移動させるタイプの高所作業車や、ブームにより作業台を昇降移動させるタイプの高所作業車にも本発明を適用できる。
【0058】
上述の実施形態においては、第3マスト部材33および第4マスト部材34の昇降を、シーブ37,39に掛け回されたワイヤ38,40により行う構成を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定して適用されるものではない。例えばシーブに代えてスプロケットを設け、このスプロケットにチェーンを掛け回して構成された昇降マストにも、本発明を適用することができる。
【0059】
上述の実施形態においては、走行台車2の前後左右への傾斜状態に応じて慣性旋回が発生する転舵角が変化する場合があるが、次のように構成すれば走行台車2の傾斜角に対応して適切に慣性旋回を防止できる。すなわち、走行速度Vおよび走行台車2の傾斜角に対応付けられた内側上限転舵角θ2を、コントローラ15のメモリ15aに予め記憶する。また、走行台車2の前後左右への傾斜角を検出する傾斜角検出器(図示せず)を追加して設け、この傾斜角検出器で検出された検出結果をコントローラ15に入力するように構成する。そして、
図7に示すステップS53において、検出した走行速度Vおよび走行台車2の傾斜角に対応した内側上限転舵角θ2を、メモリ15aから読み出すようにすれば良い。
【0060】
上述の実施形態において、
図7に示すステップS56で転舵モータ19を駆動して転舵輪13を中立位置θ1に転舵するときに、コントローラ15によって、走行速度Vが大きいほど転舵モータ19の駆動速度が大きく設定される構成も好ましい。走行台車2の走行速度Vが大きいほど慣性旋回が発生しやすくなるが、このように構成すれば、慣性旋回が発生する前に転舵輪13を中立位置θ1に位置させることができ、慣性旋回を確実に防止できる。
【0061】
上述の実施形態において、
図7のステップS57で駐車ブレーキ23を作動させた後も操舵ダイヤル44の回動操作が継続して行われている場合に、この回動操作に応じて転舵輪13を転舵させるように構成しても良い。このようにすれば、慣性旋回が発生し得るタイミング(駆動輪11の制動時)に転舵輪13を中立位置θ1に位置させて慣性旋回を防止しつつ、その後には回動操作に応じて転舵輪13を転舵させて使い勝手の良い高所作業車1を構成できる。
【0062】
図7に示すフローチャート50において、ステップS55で転舵角θが内側上限転舵角θ2を越えると判断したときに、即座にステップS56(転舵輪13を中立位置θ1に転舵する作動)を開始するのではなく、ステップS51で停止信号を検出してから所定転舵開始時間を経過した後にステップS56を開始するように構成しても良い。上記の所定転舵開始時間を例えば走行速度Vが大きいほど長くなるように設定すれば、走行停止直前の十分に減速された状態で転舵輪13を中立位置θ1に転舵することができる。