特許第5963645号(P5963645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ IHI運搬機械株式会社の特許一覧

特許5963645ウインチ装置のアタッチメント及びウインチ装置
<>
  • 特許5963645-ウインチ装置のアタッチメント及びウインチ装置 図000002
  • 特許5963645-ウインチ装置のアタッチメント及びウインチ装置 図000003
  • 特許5963645-ウインチ装置のアタッチメント及びウインチ装置 図000004
  • 特許5963645-ウインチ装置のアタッチメント及びウインチ装置 図000005
  • 特許5963645-ウインチ装置のアタッチメント及びウインチ装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963645
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ウインチ装置のアタッチメント及びウインチ装置
(51)【国際特許分類】
   B66D 1/54 20060101AFI20160721BHJP
   B66D 1/30 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   B66D1/54 A
   B66D1/30 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-242636(P2012-242636)
(22)【出願日】2012年11月2日
(65)【公開番号】特開2014-91603(P2014-91603A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田畑 宏明
(72)【発明者】
【氏名】田中 良典
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−333334(JP,A)
【文献】 実公昭41−013935(JP,Y1)
【文献】 実開昭57−007755(JP,U)
【文献】 実開昭63−026670(JP,U)
【文献】 実開昭57−052707(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00− 5/34
B65H 75/00−75/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端をドラム本体に止め具で固定したロープが該ドラム本体のドラム胴外周に複数層重ねて巻き付けられ、且つ前記止め具に許容値以上の負荷が作用しないよう、前記ロープの一端部がドラム胴に対し一層目の複数周に亘って巻き始められる捨て巻き部を有するウインチ装置のアタッチメントであって、
前記捨て巻き部の外周を覆って二層目以降のロープが該捨て巻き部に重ねて巻き付けられることを防ぐよう前記ドラム本体のドラム胴に着脱自在に取り付けられる環状フレームを備えたことを特徴とするウインチ装置のアタッチメント。
【請求項2】
前記環状フレームを周方向へ複数分割したブロック片によって構成した請求項1記載のウインチ装置のアタッチメント。
【請求項3】
前記ブロック片は、
前記ドラム本体のフランジ部に固定される接合フランジ分割部材と、
該接合フランジ分割部材と同形で且つ前記ドラム本体の軸線方向へ間隔をあけて配設される遮断フランジ分割部材と、
該遮断フランジ分割部材と前記接合フランジ分割部材とをつなぎ且つ前記捨て巻き部の外周を覆うように配設される環帯分割部材と
を有している請求項2記載のウインチ装置のアタッチメント。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載のアタッチメントを前記ドラム本体のドラム胴に着脱自在に取り付けるよう構成したことを特徴とするウインチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインチ装置のアタッチメント及びウインチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ジブクレーン等の各種クレーンには、ドラム本体のドラム胴外周にロープが複数層重ねて巻き付けられる、いわゆる多層巻きと称されるウインチ装置が搭載されている。
【0003】
図3及び図4は従来のウインチ装置におけるドラム本体の一例を示す図であって、該ウインチ装置におけるドラム本体は、円筒状で外周面にロープ溝1aが凹設されたドラム胴1の軸線方向両端に、外周へ張り出すフランジ部2を形成してなる構成を有しており、図示していないモータ等の駆動装置によって前記ウインチ装置を回転させることにより、ロープ3の巻き取りと繰り出しが行われるようになっている。
【0004】
前記クレーンに用いられるロープ3は、新規の取付作業時には、新しいロープ3の一端を、前記ドラム本体のドラム胴1の外周面側から、図4に示される如く、前記フランジ部2に穿設された孔4に通すように引き出して該フランジ部2の外面側に止め具5で固定する。尚、古いロープ3と新しいロープ3の交換時には、前記ドラム胴1から古いロープ3を取り外した後、新しいロープ3の一端を、前記ドラム胴1の外周面側から、図4に示される如く、前記フランジ部2に穿設された孔4に通すように引き出して該フランジ部2の外面側に止め具5で固定する。
【0005】
続いて、前記ドラム胴1を巻取方向へ回転駆動してロープ3を巻き取っていくが、このとき、前記止め具5に許容値以上の負荷が作用しないよう、前記ドラム胴1に対し一層目の複数周(二周〜五周程度)繰り出されない部分を作る必要があり、この部分を一般に「捨て巻き部」と称している。但し、前記捨て巻き部には、多層巻きの場合、二層目のロープ3が巻かれるため、該捨て巻き部のロープ3を押し潰すような力が作用する。
【0006】
このため、前記ドラム胴1に対してロープ3を巻き始める際には、該ロープ3に所定の張力を付与するための装置を用いてロープ3を巻くことになる。
【0007】
前記ロープ3に所定の張力を付与するための装置の一例として、図5(a)及び図5(b)に示すボイスブレーキ6がある。該ボイスブレーキ6は、V字状のロープ挟持溝7aが凹設されたブレーキブロック7を、該ロープ挟持溝7aで前記ロープ3を挟み込むように対向配置してボルト・ナット等の締結部材8により締め付けると共に、クレーンのAフレーム(図示せず)の上部等に一端が固定された支持ロープ9の他端を前記各ブレーキブロック7のブラケット10に接続して該ブレーキブロック7を吊り下げるようにしたものであり、前記ドラム胴1にロープ3を巻き取っていく際には、前記支持ロープ9の途中に設けたロードセル(図示せず)の検出値を確認し、該検出値が設定値となるよう前記締結部材8による締め付けトルクを調整することにより、該ロープ3に所定の張力を付与するようになっている。
【0008】
因みに、前記捨て巻き部以降のドラム胴1に巻き取られる部分のロープ3は、実際のクレーン作業時に負荷が作用した状態で繰り出されたり巻き取られたりすることにより、充分な張力を作用させることが可能となっているが、前記捨て巻き部は、前記ドラム胴1外周面に対するロープ3の摩擦抵抗によって、前記止め具5に許容値以上の負荷を作用させずに、該ロープ3の抜けを防止している部分であり、実際のクレーン作業時にもロープ3が繰り出されない部分となるため、充分な張力を作用させることは困難となっている。
【0009】
尚、前記ドラム胴1に対しロープ3を、該ロープ3に張力を付与しつつ巻き取る装置と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平2−48394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前述の如くドラム本体のドラム胴1外周にロープ3が複数層重ねて巻き付けられるウインチ装置において、前記捨て巻き部の外周を覆って二層目以降のロープ3が該捨て巻き部に重ねて巻き付けられると、該捨て巻き部のロープ3は、それ以降に巻き取られるロープ3より緩い張力でドラム胴1に巻き取られていることから、ロープ3を構成する素線の締りが不充分な状態となっており、前記二層目以降のロープ3によって押し潰される形となるため、前記捨て巻き部のロープ3を構成する素線が切れやすくなり、該ロープ3の寿命が短くなる虞があった。
【0012】
又、前記ドラム胴1に対してロープ3を巻き始める際に、前記ボイスブレーキ6をセットしてロープ3に張力を付与するのでは、作業に手間と時間がかかり、改善が望まれていた。
【0013】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、二層目以降のロープが捨て巻き部に重ねて巻き付けられることを防止し得、ロープの寿命延長を図り得ると共に、ドラム本体のドラム胴に対するロープ巻き付け開始時の張力付与作業を不要とし得、ロープの新規取付及び交換作業の容易化並びに時間短縮を図り得るウインチ装置のアタッチメント及びウインチ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、一端をドラム本体に止め具で固定したロープが該ドラム本体のドラム胴外周に複数層重ねて巻き付けられ、且つ前記止め具に許容値以上の負荷が作用しないよう、前記ロープの一端部がドラム胴に対し一層目の複数周に亘って巻き始められる捨て巻き部を有するウインチ装置のアタッチメントであって、
前記捨て巻き部の外周を覆って二層目以降のロープが該捨て巻き部に重ねて巻き付けられることを防ぐよう前記ドラム本体のドラム胴に着脱自在に取り付けられる環状フレームを備えたことを特徴とするウインチ装置のアタッチメントにかかるものである。
【0015】
前記ウインチ装置のアタッチメントにおいては、前記環状フレームを周方向へ複数分割したブロック片によって構成することができる。
【0016】
又、前記ウインチ装置のアタッチメントにおいて、前記ブロック片は、
前記ドラム本体のフランジ部に固定される接合フランジ分割部材と、
該接合フランジ分割部材と同形で且つ前記ドラム本体の軸線方向へ間隔をあけて配設される遮断フランジ分割部材と、
該遮断フランジ分割部材と前記接合フランジ分割部材とをつなぎ且つ前記捨て巻き部の外周を覆うように配設される環帯分割部材と
を有しているようにすることができる。
【0017】
一方、本発明は、前記アタッチメントを前記ドラム本体のドラム胴に着脱自在に取り付けるよう構成したことを特徴とするウインチ装置にかかるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のウインチ装置のアタッチメント及びウインチ装置によれば、二層目以降のロープが捨て巻き部に重ねて巻き付けられることを防止し得、ロープの寿命延長を図り得ると共に、ドラム本体のドラム胴に対するロープ巻き付け開始時の張力付与作業を不要とし得、ロープの新規取付及び交換作業の容易化並びに時間短縮を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のウインチ装置のアタッチメントの実施例を示す断面図である。
図2】本発明のウインチ装置のアタッチメントの実施例を示す斜視図である。
図3】従来のウインチ装置におけるドラム本体の一例を示す断面図である。
図4】従来のウインチ装置におけるドラム本体の一例のフランジ部に対するロープの止め具を示す概略図である。
図5】ウインチ装置におけるドラム本体のドラム胴に対するロープの巻き始めに使用されるボイスブレーキを示す概略図であって、(a)は側断面図、(b)は(a)のVb−Vb矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1及び図2は本発明のウインチ装置のアタッチメントの実施例であって、図中、図3図5と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図3図5に示す従来のものと同様であるが、本実施例の特徴とするところは、図1及び図2に示す如く、捨て巻き部の外周を覆って二層目以降のロープ3が該捨て巻き部に重ねて巻き付けられることを防ぐようドラム本体のドラム胴1に着脱自在に取り付けられる環状フレーム11を備えた点にある。
【0022】
本実施例の場合、前記環状フレーム11は周方向へ複数分割(図2の例では四分割)したブロック片12によって構成してある。
【0023】
前記ブロック片12は、図2に示す如く、前記ドラム本体のフランジ部2にボルト・ナット等の締結部材13により固定される接合フランジ分割部材12aと、該接合フランジ分割部材12aと同形で且つ前記ドラム本体の軸線方向へ間隔をあけて配設される遮断フランジ分割部材12bと、該遮断フランジ分割部材12bと前記接合フランジ分割部材12aとをつなぎ且つ前記捨て巻き部の外周を覆うように配設される環帯分割部材12cとを有している。
【0024】
又、前記接合フランジ分割部材12aと遮断フランジ分割部材12bと環帯分割部材12cとの間には、矩形板状の補強リブ12dを取り付けてある。
【0025】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0026】
前記ロープ3の新規取付及び交換時には、新しいロープ3の一端を、前記ドラム本体のドラム胴1の外周面側から、図4に示す如く、前記フランジ部2に穿設された孔4に通すように引き出して該フランジ部2の外面側に止め具5で固定した後、前記ドラム胴1を巻取方向へ回転駆動し、前記止め具5に許容値以上の負荷が作用しないよう、前記ロープ3の一端部をドラム胴1に対し一層目の複数周(二周〜五周程度)に亘って巻き始めることにより、捨て巻き部を形成する。
【0027】
前記捨て巻き部を形成し終えたら、一旦、前記ドラム胴1の回転駆動を停止し、図2に示す如く四分割した環状フレーム11のブロック片12を、図1に示す如く、締結部材13により前記ドラム本体のフランジ部2に接合フランジ分割部材12aが固定されるよう、取り付ける。
【0028】
前記ドラム本体のドラム胴1に対する環状フレーム11の取り付けが完了したら、前記ドラム胴1の回転駆動を再開し、該ドラム胴1にロープ3を巻き取っていくと、前記捨て巻き部以降のドラム胴1に巻き取られた部分のロープ3の上にのみ、ロープ3が重ねて巻き付けられるようになる。
【0029】
この結果、前記ドラム本体のドラム胴1外周にロープ3が複数層重ねて巻き付けられるウインチ装置において、前記捨て巻き部の外周を覆って二層目以降のロープ3が該捨て巻き部に重ねて巻き付けられることが前記環状フレーム11によって確実に防止されるため、該捨て巻き部のロープ3が、それ以降に巻き取られるロープ3より緩い張力でドラム胴1に巻き取られてロープ3を構成する素線の締りが不充分な状態となっていても、前記二層目以降のロープ3によって捨て巻き部のロープ3が押し潰されるようなことが避けられ、該捨て巻き部のロープ3を構成する素線が切れにくくなり、該ロープ3の寿命が長くなる。
【0030】
又、前記ドラム胴1に対してロープ3を巻き始める際に、図5に示されるようなボイスブレーキ6をセットしてロープ3に張力を付与しなくて済むため、作業に手間と時間がかからなくなる。
【0031】
尚、前記環状フレーム11を分割する個数については、四分割に限らず、ドラム胴1の大きさに応じて二分割や三分割或いは四分割以上としても良い。
【0032】
又、分割された前記ブロック片12をヒンジにより開閉自在に連結しても良く、このようにヒンジによりブロック片12を開閉自在に連結すれば、ドラム本体のドラム胴1に対する着脱をより行いやすくすることが可能となる。
【0033】
こうして、二層目以降のロープ3が捨て巻き部に重ねて巻き付けられることを防止し得、ロープ3の寿命延長を図り得ると共に、ドラム本体のドラム胴1に対するロープ3の巻き付け開始時の張力付与作業を不要とし得、ロープ3の新規取付及び交換作業の容易化並びに時間短縮を図り得る。
【0034】
尚、本発明のウインチ装置のアタッチメント及びウインチ装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 ドラム胴
2 フランジ部
3 ロープ
4 孔
5 止め具
11 環状フレーム
12 ブロック片
12a 接合フランジ分割部材
12b 遮断フランジ分割部材
12c 環帯分割部材
図1
図2
図3
図4
図5