(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963659
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ボルト・ナットの着脱補助用治具
(51)【国際特許分類】
B25B 13/00 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
B25B13/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-264157(P2012-264157)
(22)【出願日】2012年12月3日
(65)【公開番号】特開2014-108488(P2014-108488A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】500466108
【氏名又は名称】新興プランテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大泉 寛
【審査官】
小川 真
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−120097(JP,A)
【文献】
特開昭63−102758(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3193619(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0327507(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 13/00
B25B 23/02
F16B 2/10
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
ねじ溝を有し、前記本体の内部に設けられる、ボルトを挟持するための一対の挟持部材と、
前記本体の内側面と、前記各挟持部材との間に位置する弾性部材と、
それぞれ一端が本体から突出し、前記挟持部材を押圧するための一対の押圧部材と、
からなり、
前記押圧部材を突出した側から押圧すると該押圧部材が前記挟持部材の両端付近を押しながら該挟持部材が開き、前記押圧部材への押圧を解放すると前記弾性部材が反発して前記挟持部材が閉じることを特徴とするボルト・ナットの着脱補助用治具。
【請求項2】
前記本体及び前記挟持部材に案内部が設けられた請求項1に記載のボルト・ナットの着脱補助用治具。
【請求項3】
傾斜部を設けた本体カバーを前記本体に開閉自在に取り付けるものとした請求項1又は2に記載のボルト・ナットの着脱補助用治具。
【請求項4】
前記本体に、該スパナ保持用治具の落下防止用フックが設けられた請求項1乃至3のいずれか一項に記載のボルト・ナットの着脱補助用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト(おねじ)とナット(めねじ)の着脱にあたり、打撃スパナを使用する際に、打撃スパナを保持したり、ボルト・ナットの共回りを防止するために用いたりするための治具に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント、工場施設等においては、カバー、マンホール、配管等の接合にボルトとナットが用いられる。プラントや工場施設等で用いられるボルトとナットは、接合が緩むと危険が生じ、大事故に繋がることもあるため、両者は強く締め付けて螺合される。そのため、一旦強く螺合すると、部品交換を行うなどに際しこの螺合を緩めようとしても、容易に緩められない場合がある。また、締め付け後、ある程度の期間が経過すると、ボルト、ナットに錆びが生じたりするため、締め付けられたボルトとナットを緩めることが困難となることが少なくない。
【0003】
このように強く締め付けられたボルトとナットは、スパナを単に手で回して緩めることができないため、打撃スパナ、メガネレンチ等(以下、これらを単に「打撃スパナ」という。)を用いて緩めるのが一般的である。打撃スパナは、ナットに嵌合させるように装着し、その状態で固定して使用する。この固定は、通常、作業者の一人が打撃スパナを手で押さえて行う。そして、他の作業者がその状態で打撃スパナをハンマーで叩き、ボルトに締め付けられたナットを緩める。
【0004】
また、螺合しているボルトとナットが僅かに緩んだ状態になると、打撃スパナを用いても、両者が回転するいわゆる共回りが生じ、ボルトとナットの接合を緩めることができなくなることがある。これを防ぐためには、打撃スパナで叩く側のナットと反対側に位置するナット等を打撃スパナを叩く者とは別の者が別の打撃スパナを用いて押さえ、打撃時に生じる回転を抑える必要がある。
【0005】
ところが、このように打撃スパナを用いた作業には打撃スパナを叩く者とは別にこれを押さえる者を必要とすることから、当該作業には最低二人の人員を割かねばならないという問題がある。
【0006】
更に、打撃においては、熟練者といえどもハンマーが打撃スパナに正確に命中するとは限らず、打撃スパナを押さえている者に誤ってハンマーが当たり、怪我を負わせてしまう事故が少なくない。
【0007】
打撃スパナを叩く者が単独で作業できるようにするため、打撃スパナに孔を設け、これに紐(いわゆる打撃スパナ介錯紐)を連結させ、打撃スパナを叩く者自身がこの紐を引っ張りながら打撃スパナを叩くという方法もある。しかし、実際にはこの方法では打撃スパナを思うように保持ないし固定できず、また紐を引きながら作業をしなければならないため、充分な打撃ができず、打撃の正確性も低下する。また、併せて共回りを防ぐ前記作業を打撃作業者自身が行うのは容易ではない。
【0008】
そこで、何らかの器具を利用して打撃スパナを保持することも考えられる。ただこの場合、この器具は、ある程度強い力をもって打撃スパナをかなり強い力で保持、固定できるものでなければならない。すなわち、打撃スパナがハンマーで叩かれても、その衝撃で器具が外れずに打撃スパナを保持できなくてはならない。
【0009】
そのような器具として、ボルトにナットを強く締め付ける際に用いるための打撃スパナと併用するクリップ(特許文献1)が提案されている。これは、一対の挟持部材を、枢軸を境に一端側の操作部を閉じると他端側の挟持部が開くように枢止結合し、この両挟持部材に弾性部材で挟持部が常時閉じる方向の弾性を付勢し、前記両挟持部の対向面にねじ軸へ外嵌する弧状の凹欠部を設け、この凹欠部の内周面にねじ軸の雄ねじに噛み合う雌ねじを形成したものである。これによれば、挟持部が常時閉じる方向の力が強くなるように弾性部材を構成することで、打撃スパナが叩かれた時の衝撃に耐え得るだけの固定を行うこととなる。
【0010】
特許文献1の発明における弾性部材は、両操作部を指先で閉じると、両挟持部が枢軸を支点に拡開するために用いられる([0010][0018]など)。この構造で、挟持部が常時閉じる方向の力を、打撃スパナが叩かれた時の衝撃に耐え得る程度にまで強くすると、両操作部を指先で閉じようとしても、上記力が強いため、挟持部を拡開する(すなわち特許文献1の
図2(c)の状態にする)には両操作部にかなり強い力をかけなければならない。しかも、プラント、工場施設等において使用されるボルトは通常のボルトよりも太く、例えばM30(直径30mm)のボルトを挟持する場合、特許文献1のクリップでは、両挟持部を少なくとも30mmを超えて開かなくてはならないこともあり、それだけの負荷を両操作部に指先でかけなければならない。しかしながら、ナット・ボルトが低い(あるいは高い)位置や狭い箇所など、作業環境によっては強い力をかけるのが困難であることも少なくない。
【0011】
打撃スパナは、あくまでもボルト・ナットの着脱のために一時的に使用するものに過ぎないので、打撃スパナを保持、固定するための器具の着脱は、複雑な操作を行うことなく、しかも容易且つ自在に行える必要がある。すなわち、打撃スパナ保持のための器具には、打撃スパナを強く保持、固定させることと、保持、(・)固定器具の着脱(装着、取外し)を容易・自在に行えることを両立させる必要がある。しかし、これらの相反する条件を両立させるように器具を構成することは困難であり、結局、打撃スパナを用いた作業は二人一組で行われているのが現状である。
【0012】
ところで、打撃スパナ保持のための器具においては、上記のような使用上の問題点のみならず、当該器具の製造上の問題をも考慮する必要がある。
【0013】
例えば特許文献1のクリップの構造によると、一対の挟持部材17を、枢軸18を境として一端側の操作部17aを閉じると他端側の挟持部17bが開くように枢止結合し、この両挟持部材に弾性部材19で挟持部17bが常時閉じる方向の弾性を付勢し、前記両挟持部の対向面にねじ軸へ外嵌する弧状の凹欠部22を設け、この凹欠部22の内周面にねじ軸の雄ねじに噛み合う雌ねじ23を形成する必要がある。更に、両挟持部17bが閉じた状態で厚み方向への位相のずれが生じないようには、両挟持部17bの上面には、前後の位置に打撃スパナ1へ当接する間隔保持用の低い突起24を設け、両挟持部17bの対向面における先端部の一方に突部25と他方にこの突部25の嵌る凹部26を設ける必要がある(特許文献1[0019]参照)。
【0014】
これによると、両挟持部の凹欠部22の内周面にねじ軸の雄ねじに噛み合う雌ねじ23を形成したり、両挟持部17に別途突起24を設けたり、両挟持部17bの対向面に突部25を設けると共にこれに嵌るように凹部26を形成したりしなければならない。更に、そのようにして製造された各部品は、例えば一対の挟持部材17は、枢軸18を境として閉じたときに、各凹欠部22の内周面に設けられた一対の雌ねじ23がずれを生じることなく対応する必要があり、これらの部材と弾性部材19とを精密に組み立てなければならない。
【0015】
すなわち、特許文献1のような構成では、クリップ各部品の製造及び組み立てにかなりの手間と精度を要する。またこれは、クリップに不具合が生じた場合に容易に修理ができないことにもなる。
【0016】
更に、保持、固定用の器具の構造ないし形状は、打撃スパナの打撃の障害とならないものとする必要もある。例えば特許文献1のようなクリップは、長手方向に所定の長さを要するため、打撃スパナを打撃する際の障害となり易く、装着の仕方なども考慮しなければならない。
【0017】
以上は、打撃により強い力を必要とし、作業が難しいことの多い場合(締め付けられたボルトとナットを緩める場合)を元に述べたが、打撃スパナは、ボルトとナットを強く締め付ける場合(特許文献1はこの場合を想定している)に使用されることもある。その場合も、上記と同様の諸問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2010−120097号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は上記の問題点を解決することを課題とする。より具体的には、本発明は、打撃スパナを叩く者が単独で安全且つ容易に作業できるようにするため、充分な強度で打撃スパナを保持できるのみならず、容易かつ自在に着脱(装着、取外し)できる治具を提供することを課題とする。
【0020】
また、本発明は、部品の製造や組み立てが容易であるボルト・ナットの着脱補助用治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、本発明の第1の側面として、本発明は、本体と、ねじ溝を有し、前記本体の内部に設けられる、ボルトを挟持するための一対の挟持部材と、前記本体の内側面と、前記各挟持部材との間に位置する弾性部材と、それぞれ一端が本体から突出し、前記挟持部材を押圧するための一対の押圧部材と、からなり、前記押圧部材を突出した側から押圧すると該押圧部材が前記挟持部材の両端付近を押しながら該挟持部材が開き、前記押圧部材への押圧を解放すると前記弾性部材が反発して前記挟持部材が閉じることを特徴とするボルト・ナットの着脱補助用治具を提供する。
【0022】
本発明の第2の側面として、本発明は、前記本体及び前記挟持部材に案内部が設けられた前記ボルト・ナットの着脱補助用治具を提供する。
【0023】
本発明の第3の側面として、本発明は、窪み部を設けた本体カバーを前記本体に開閉自在に取り付けるものとした前記ボルト・ナットの着脱補助用治具を提供する。
【0024】
本発明の第4の側面として、本発明は、前記本体に、該スパナ保持用治具の落下防止のために用いられる落下防止部材が設けられた前記ボルト・ナットの着脱補助用治具を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、打撃作業において治具により打撃スパナを保持することができるのみならず、当該治具を容易かつ自在に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明にかかるボルト・ナットの着脱補助用治具の一実施例を示す図である。
【
図2】
図4(
図1の治具に本体カバーを取り付けたもの)の治具をもとにして、本発明に係るボルト・ナットの着脱補助用治具の内部構造を示した図である。
【
図3】
図1のボルト・ナットの着脱補助用治具の1対のボタンを押しこんだ時の本体内部の状態を示す図である。
【
図4】
図1のボルト・ナットの着脱補助用治具の本体に本体カバーを設けたものを示す図である。
【
図5】
図4のボルト・ナットの着脱補助用治具の一使用状態を示す図である。
【
図6】本発明にかかるボルト・ナットの着脱補助用治具の他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明のボルト・ナットの着脱補助用治具に係る実施形態を、図面に基づいて具体的に説明する。
【0028】
(実施例1)
図1乃至
図3は、本発明の一実施例として、ボルト・ナットの着脱補助用治具1を示すものである。このボルト・ナットの着脱補助用治具1は、本体2と、一対の挟持部材3a、3bと、2つのバネ5a、5bと、一対のボタン6a、6bとから構成される。
【0029】
本体は、挟持部材3a、3bがボルトを挟み込めるように構成する。この実施例では、本体2の全体形状を円柱状とし、底面にボルトを通す開口部を設けている。本体2の内部に、ボルトを挟み込むための一対の挟持部材3a、3bを設ける。
図1に示されているように、この実施例では、挟持部材3a、3bは半円弧形状としている。挟持部材3a、3bの両端30a、30bは、後述のボタン6a、6bの押圧力を受けやすいように、ボタン6a、6bの先端の角度に対応するように面取りがなされている。なお、挟持部材3a、3bは、ボルトを挟み込む部分がボルトに対応する形状である必要があるが、全体は必ずしも半円弧形状でなくてもよい。
【0030】
本実施例においては、挟持部材3a、3bと本体2の間に、それぞれ弾性部材としてバネ5a、5bを設け、これらのバネ5a、5bの付勢力によって一対の挟持部材3a、3bが閉じ、ボルトを挟み込むものとなるように構成している。
図2に示すように、挟持部材3a、3bに、バネの先を受容するバネ受容凹部11を設けると、バネ5a、5bが外れ難くなり好適である。
図1は、バネ5a、5bが付勢(伸長)して一対の挟持部材3a、3bが閉じた状態を示し、
図3は、後述のボタン6a、6bが押圧力を受け、挟持部材3a、3bを両端から押し込んで開いた状態を示している。
【0031】
図2及び
図4に示すように、挟持部材3a,3bにはボルトのねじ山に対応するねじ溝4が設けられる。特許文献1は操作部17aが一体の挟持部17bの凹欠部22の内周面に雌ねじ23を形成しているが、本発明ではこれと異なり、挟持部材3a,3bは単独の部品である。従って、挟持部材3a、3bは、既存のナットを切断して製造することもできる。これによれば、挟持部材3a、3bは極めて容易に製造できることとなり、また製造コストも抑えることができる。
【0032】
挟持部材3a、3bがボルトを挟み込む際、挟持部材のねじ溝4が、ボルトのねじ山に噛み合うため、打撃スパナが強く固定され保持される。なお、挟持部材3a、3bのねじ溝4がボルトのネジ山の少なくとも2つ以上、できれば3つ以上と噛み合うようにして使用すると好適である。
【0033】
挟持部材3a、3bを開閉するために、押圧部材として、一対のボタン6a、6bを、それぞれ、挟持部材3a、3bの両端を押圧する位置に設ける。本実施例において、ボタン6a、6bは、それぞれ、円柱(
図1で本体2の外側と内側に通じる部分)と三角柱(
図1で本体2の内側に位置する部分)を結合した形状から構成されている(なお、
図2の6bも参照)。三角柱の部分を本体2の内部に位置させ、円柱状の部分の一部を本体2の側面から突出させる。本体2の側面から突出した側からボタン6a、6bに押圧力が加わると、三角柱の部分の鋭角を構成する2つの平面が、挟持部材3a、3bの両端(上記面取り部分)30a、30bを押圧する。そのため、それぞれ、この2つの平面と面取り部分30a、30bとが対応してスムーズに擦動するように構成する。
【0034】
挟持部材3a、3bのそれぞれの両端に押圧力が加えてこれを開くため、ボタン6a、6bに大きな負荷をかけなくても挟持部材3a、3bを開くことが可能となる。
【0035】
ボタン6a、6bの形状は上記に限られず、挟持部材3a、3bの開閉がスムーズに行われるように構成すればよく、例えば、三角柱の部分の鋭角部分を曲面状に構成したり、円柱部を角柱に構成したりしてもよい。
【0036】
挟持部材3a、3bの開閉の動きを安定させるため、本体2及び/又は挟持部材3a、3bに、案内部を設けるのが好適である。この実施例においては、
図2に示すように、本体2の内側底面に段差(凹部)7を設けるとともに、この段差に対応し、これに沿って擦動するように挟持部材3a、3b(本体2の内側底面に接する側。
図2では、挟持部材の一方の3bにより図示。)に段差(凸部)10を設けている。案内部は、上記以外でも、例えば本体2の内側底面の上記段差(凹部)を溝とし、この溝に沿って擦動する突出レールを挟持部材3a、3b(本体2の内側底面に接する側)に設けるようにしてもよい。
【0037】
本実施例において、1対の挟持部材3a、3bと1対のバネ5a、5bは、それぞれ本体2の内部に対称の位置に配置され、1対のボタン6a、6bも対称の位置に配置されている。これは、挟持部材3a、3bが閉じた状態において、対称の位置にあるボタン6a、6bを同時に押すと、ボタン6a、6bの先端付近(本体内側に位置する方の先端付近)が挟持部材3a、3bの両端を押し込み、挟持部材3a、3bがバネ5a、5bを押し込みながら同時に開くようにするためである。
【0038】
本治具を構成する各部品の組み立てには別途器具等を必要とせず、単に上記のように本体2の中にはめ込むようにして配置すればよい。また各部品のサイズを本体2の中に適切にはめ込まれるように設定し、段差(凹部)7、段差(凸部)10、バネ受容部11などを設けるものとすれば、部品の配置が極めて容易となり、治具使用時に各部品が簡単に外れてしまうようなこともないため(後述の本体カバー8を設ければ、その効果を更に得ることができる)、部品を配置する際に格別精度が必要となることもなくなる。そのため、本発明の治具によれば、組み立てが容易となり、そのため当該治具の補修や修理も容易に行うことができる。
【0039】
挟持部材3a、3bは一つの枢軸を中心とするのではなく、いわば上下(ないし左右)から均等にボルトを挟み込む。そのため、挟持部材の開閉が行いやすく、装着しやすいものとなる。
【0040】
ボルト・ナットの着脱補助用治具1を外す際はボタン6a、6bを押し、挟持部材3a、3bを開き、その状態でボルトからボルト・ナットの着脱補助用治具1を外す。
【0041】
なお、図においては、本体2は円柱状で示されているが、本体2の基本的形状は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば箱型(直方体状)とすることもできる。
【0042】
また、上記実施例では弾性部材としてバネ5(弦巻ばね)を用いたが、必ずしもこれに限られず、板バネその他弾性機能を有するものを用いることができる。
【0043】
図4で示すように、ボルト・ナットの着脱補助用治具には、本体内部を保護するための本体カバー8を設けると好適である。
図4に示す通り、本体カバー8には、ボルトを通すための開口部が設けられる。
【0044】
本体カバー8に、傾斜部12を設け、当該治具使用時にこの部分をナットに当てるような構成とすることもできる。このような構成とすれば、例えば打撃スパナをナットに装着した際にナットの高さが打撃スパナの厚みよりも高く、ナットが突出している場合に、傾斜部12にナットが収まることで、スパナ当接部13が打撃スパナを受け止めやすくなり得、治具が打撃スパナを保持しやすくなり得るため好適である。
【0045】
更に、本体カバー8の裏側に厚みや凸部を設けるなどして、本体カバー8が本体に装着されたときに挟持部材3a、3bを押さえるように構成すれば、挟持部材3a、3b等の部品が固定されるため、打撃スパナへの打撃作業によってもより一層各部品が外れ難くなり、更に好適である。
【0046】
本体カバー8は、本体2とは別の部材とし、所望により開閉できる構造にすると、本体内部の点検や修理を容易にでき好適である。この構造としては、例えば本体2の内側上部に円周に沿ったネジ部を設け、本体カバー8にこれと対応し係合(螺合)するようにネジ部を設けることができる。
【0047】
この実施例においては、本体2、挟持部材3a,3b、ボタン6a、6b、本体カバー8をスチール製としたが、材料は適宜選択することができる。
【0048】
本発明のボルト・ナットの着脱補助用治具は、ボルト・ナットのサイズに応じ、異なるサイズとすることができる。ボルト・ナットの着脱補助用治具のサイズは複数あり得るが、大きいものでも一般成人が手で押圧部材を押し込める程度である。
【0049】
上記のボルト・ナットの着脱補助用治具1は以下のように作用する。緩める(又は締め付ける)対象となるナット(ボルトに係合)に打撃スパナをはめ込む。ボルト・ナットの着脱補助用治具1の1対のボタン6を指などで押し込むと(押圧力をかけると)、ボタン6a、6bの先端付近(本体内側に位置する方の先端付近)が挟持部材3a、3bの両端付近を押し込み、挟持部材3a,3bを開く。その状態で本体開口部7からボルトを通し、
図5で示すように打撃スパナを押し付けるようにし、その状態で1対のボタン6a、6bの押し込みを解放する。そうすると、バネ(弾性部材)5a、5bが伸長し、反発力によって1対の挟持部材3a、3bがボルトを挟み込む。その際、挟持部材3a、3bに設けられたねじ溝4が、ボルトのねじ山に係合(螺合)するため、打撃スパナは、ボルト・ナットの着脱補助用治具1により強固に固定、保持される。そしてその状態で、打撃スパナを叩く。打撃作業が終了した後は、1対のボタン6a、6bを押し込み、挟持部材3a、3bを開き、ボルトとの係合を解放してボルト・ナットの着脱補助用治具1をボルトから外す。
【0050】
なお、本治具を共回り防止のために用いる場合、打撃スパナで叩く側と反対側のナットに打撃スパナ取り付けて、本治具を上記と同様にして装着する。
【0051】
本発明にかかる上記ボルト・ナットの着脱補助用治具によれば、打撃スパナを固定、保持できるのみならず、ボタン(押圧部材)をそれほどの力をかけずに押すだけで、保持治具を容易かつ自在に着脱できる。その結果、ボルト・ナットの着脱がやりにくい場所や、打撃スパナを固定、保持しづらい場所での作業であっても、これらを作業員一人で行うことができ、人的効率が高まるとともに、打撃スパナを押さえる作業員に生じていた打撃による怪我の発生を無くすことができる。しかも、本発明にかかる治具は製造・組み立てが容易である。
【0052】
(実施例2)
ボルト・ナットの着脱補助用治具をボルトに着脱する際などに、当該治具が誤って落下することもあり得る。ボルト・ナットの着脱作業は高所で行われることもあるところ、本治具はある程度の重量を有するため、これが落下すると非常に危険である。実施例2は、この落下を防止するため、実施例1のボルト・ナットの着脱補助用治具に、落下防止部材の一例としてリング状のフック9を設けたものである。
【0053】
図6に示すように、このフック9は本体2の外側に(突出して)、リング状に設けられている。例えば、このフックに紐の一端を結び、紐の他の一端を打撃スパナの孔などに結ぶようにして使用する。
【0054】
これによれば、ボルト・ナットの着脱補助用治具が誤って落下するのを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
プラント、工場施設等においては、打撃スパナを用いて強く締め付けられたボルト・ナットを緩めたり、これを強く締め付けたりする作業は必須である。本発明によれば、上記のようなボルト・ナットの着脱作業の際に打撃スパナを押さえる作業員にしばしば生じていた打撃による怪我の発生を業種に関わらず無くすことができる。更に、ボルト・ナットの着脱がやりにくい場所や、打撃スパナを固定、保持しづらい場所での作業であっても、これらを作業員一人で行うことができ、人的効率を高めることができる。本発明にかかる治具は、製造・組み立てが容易である。そのため、本発明の産業上の利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0056】
1 ボルト・ナットの着脱補助用治具
2 本体
3、3a、3b 挟持部材
4 ねじ溝
5a、5b バネ
6、6a、6b ボタン
7 段差(凹部)
8 本体カバー
9 フック
10 段差(凸部)
11 バネ受容凹部
12 傾斜部
13 当て部
30a 挟持部材3aの両端部
30b 挟持部材3bの両端部