(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
イオンビーム発生ユニットおよび高エネルギー多段直線加速部による長い軌道を有する第1セクションと、エネルギーフィルター分析器を含む偏向ユニットによる方向変換のための第2セクションと、ビーム整型装置およびスキャナー装置、静電平行化レンズ装置、最終エネルギーフィルターを含むビーム輸送ライン部による長い軌道を有する第3セクションとにより、高エネルギーイオン注入ビームラインを構成し、前記第1セクションと前記第3セクションとを対向させて配置して、高エネルギー高精度注入を実現する対向する長直線部を有するU字状の装置レイアウトを構成したことを特徴とするイオン注入装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
高いエネルギー(例えば1〜4MeV)を持ったイオンを基板へ注入することが可能な高エネルギーイオン注入装置は、例えば、イオン源、質量分析磁石、高周波直線(リニアック)加速装置、エネルギーフィルターを含むビームトランスポート系、ビームスキャナー、ビーム平行化装置、最終エネルギーフィルター、注入処理室、基板搬送機器等の多数の構成機器からなる。そのため、各構成機器を、それぞれ独立にほぼ直線上に据え付けると、全長が非常に長くなり、各装置の据付けアライメント、稼働後のメンテナンスや修理、調整、に多大な労力を要するものとなる。
【0017】
また、高エネルギーイオン注入装置の各構成機器を、それぞれ独立に架台に搭載して据付け調整すると、主要装置全体では、例えば、幅約7m全長約20mの大きさとなることもある。最近では、CCDやCMOS撮像素子を製造する際に、超高エネルギー(3〜10MeV)を有するイオンを基板の深部に注入する工程が採用されており、このような注入では、超高エネルギーイオン注入装置が使用されている。このような超高エネルギーのビームラインを実現するためには、長い高周波加速部を中心として、多くのビームライン部材を連ねる必要があり、さらに長大な総延長のビームラインとなりうる。この場合、ビームライン両側にメンテナンス用スペースを広く取らざるを得ず、またビームラインの長さがそのまま装置の長さに、ビームライン両側のメンテナンス用スペースがそのまま装置の幅になってしまう。
【0018】
半導体素子製造工程では、数多くの種類の半導体製造装置からなっており、イオン注入装置も他の装置と同様、省スペースと、装置長さの制限が求められる。しかし、装置内部の各機器の大きさだけでなく、それらのメンテナンススペースの確保などで、装置サイズが大きくなり、またビームラインの長さがそのまま装置の長さとなるため、ビームライン方向に長くなる傾向がある。
【0019】
そこで、本実施の形態では、以下に示す構成の高エネルギーイオン注入装置によって、イオン注入装置に対する作業性を確保しつつ設置面積を抑えることができる。
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0021】
(高エネルギーイオン注入装置)
はじめに、本実施の形態に係る高エネルギーイオン注入装置の構成を簡単に説明する。イオンは荷電粒子の種類の一つであり、本明細書の内容は、イオンビームのみならず荷電粒子ビームの装置にも適用できるものである。
【0022】
図1は、本実施の形態に係るイオン注入装置100の概略レイアウトとビームラインを模式的に示したものである。
【0023】
本実施の形態に係るイオン注入装置100は、高エネルギーイオンビームラインを有する高周波直線(線形)加速方式のイオン注入装置であり、イオン源10で発生したイオンを加速し、対向する長直線部を有するU字状のビームラインに沿ってウェハ(基板)200までイオンビームとして輸送し、ウェハ200に注入するイオン注入装置である。U字状のビームラインは、複数のユニットで構成されている。ここで、「対向する長直線部を有するU字状」とは、例えば、イオン注入装置全体の配置が長方形の場合、後述する高エネルギー多段直線加速部の長手方向が長方形配置の長辺となるようなレイアウトと捉えることができる。
【0024】
複数のユニットのそれぞれは、同一の面を基準にほぼ水平に配置されている。また、複数のユニットのほぼ全てのユニットに対する作業を可能とする作業スペースR1が、U字状のビームラインの中央領域に設けられている。更に作業スペースR1と外部との間で作業者の移動を可能とする連通路Pが設けられている。これにより、作業者はU字の中央部に設けられた作業スペースR1の奥まで容易に入ることができ、メンテナンスや調整の作業効率が向上する。
【0025】
イオン注入装置100は、イオンビーム発生ユニット12と、高エネルギー多段直線加速部14と、偏向ユニット16と、ビーム輸送ライン部18と、基板処理供給ユニット20と、を備える。イオンビーム発生ユニット12は、イオン源10と、引き出し電極40と、質量分析装置22と、を有する。イオンビーム発生ユニット12では、イオン源10から引き出し電極を通してビームが引き出されると同時に加速され、引出加速されたビームは質量分析装置22により質量分析される。質量分析装置22は、質量分析磁石22a、質量分析スリット22bを有している。一般に、質量分析スリット22bは、質量分析磁石22aの直後に配置するものであるが、実施例では、その次の構成である高エネルギー多段直線加速部14の入り口部内に配置している。
【0026】
質量分析装置22による質量分析の結果、注入に必要なイオン種だけが選別され、選別されたイオン種のイオンビームは、次の高エネルギー多段直線加速部14に導かれる。高エネルギー多段直線加速部14により、さらに多段加速されたイオンビームは、偏向ユニット16により方向が変化させられる。偏向ユニット16は、エネルギーフィルター分析器24と、軌道調整レンズである軌道調整四重極レンズ26と、エネルギー制限スリット28と、角度偏向磁石30と、を有する。なお、エネルギーフィルター分析器24は、例えば、エネルギーフィルター偏向磁石(E.F.M.)である。
【0027】
ビーム輸送ライン部18は、偏向ユニット16から出たイオンビームを輸送するものであり、収束/発散レンズ群から構成されるビーム整形器32と、ビーム走査器34と、ビーム平行化器36と、最終エネルギーフィルター分析器(AEF)38(最終エネルギー分離スリットを含む)と、を有する。ビーム輸送ライン部18の下流側の終端には、イオンビームによりイオンが注入されるウェハ200が配置される注入処理室である基板処理・基板搬送供給ユニット20が設けられている。
【0028】
このように各ユニットをU字状に配置したイオン注入装置100は、設置面積を抑えつつ良好な作業性が確保されている。また、イオン注入装置100においては、各ユニットや各装置をモジュール構成とすることで、ビームライン基準位置に合わせて着脱、組み付けが可能となっている。
【0029】
次に、イオン注入装置100を構成する各ユニット、各装置について更に詳述する。
【0030】
(イオンビーム発生ユニット)
図2(a)は、イオンビーム発生ユニットの概略構成を示す平面図、
図2(b)は、イオンビーム発生ユニットの概略構成を示す側面図である。
【0031】
図2(a)、
図2(b)に示すように、ビームラインの最上流に配置されているイオン源10の出口側には、イオンチャンバ内で生成されたプラズマからイオンビームを引き出す引き出し電極40が設けられている。引き出し電極40の下流側近傍には、引き出し電極40から引き出されたイオンビーム中に含まれる電子が引き出し電極40に向かって逆流するのを抑制する引き出しサプレッション電極42が設けられている。
【0032】
イオン源10は、イオン源高圧電源46と接続されている。引き出し電極40とターミナル48との間には、引き出し電源50が接続されている。引き出し電極40の下流側には、入射するイオンビームから所定のイオンを分離し、分離したイオンビームを取り出すための質量分析装置22が配置されている。
【0033】
(高エネルギー多段直線加速部)
図3は、高エネルギー多段直線加速部14の概略構成を示す平面図である。高エネルギー多段直線加速部14は、イオンビームの加速または減速を行う複数の線形加速装置、すなわち、一つ以上の高周波共振器14aを備えている。換言すると、高エネルギー多段直線加速部14は、高周波(RF)電場の作用により、イオンを加速あるいは減速することができる。
図3において、高エネルギー多段直線加速部14は、高エネルギーイオン注入用の基本的な複数段の高周波共振器14aを備えた第1直線加速器15aと、さらに、超高エネルギーイオン注入用の追加の複数段の高周波共振器14aを備えた第2直線加速器15bとから構成されている。
【0034】
通常の加速系を備えたイオン注入装置においては、加速に関わる運転パラメータは解析的に容易に決めることができる。例えば、ほとんどのイオン注入装置で用いられている静電場を用いた加速方法では、静電場を作り出す電源の設定電圧V[kV]は、所望のイオンの価数nと所望のエネルギーE[keV]とから、以下の式(1)により簡単に決められる。
V=E/n・・・式(1)
【0035】
複数段の静電場を用いる場合には、その合計の電圧をVにすればよい。一方、高周波(RF)加速を用いたイオン注入装置においては、高周波のパラメータとして電圧の振幅V[kV]、周波数f[Hz]を考慮しなければならない。更に、複数段の高周波加速を行う場合には、お互いの高周波の位相φ[deg]がパラメータとして加わる。加えて、加速の途中や加速後にイオンビームの横方向への広がりを収束・発散効果によって制御するための磁場レンズ(例えば、四極電磁石)や静電場レンズ(例えば、静電四極電極)がある場合には、それらの運転パラメータは、そこを通過する時点でのイオンのエネルギーによって最適値が変わることに加え、加速電界の強度が収束・発散に影響を及ぼすため、高周波のパラメータを決めた後にそれらの値を決めることになる。
【0036】
静電場を用いた加速方法では、静電場を作り出す電源電圧V[kV]と引き出すイオンの電価数nとで一意にイオンビームのエネルギーE[keV]が決まる。この場合、イオンのエネルギーは、
E=n・V・・・式(2)
で表される。
【0037】
したがって、エネルギー分析電磁石の磁場測定そのものには、エネルギーを決める上での直接的な役割はない。
【0038】
しかし、例えば高周波(RF)加速を用いたイオン注入装置においては、加速後のイオンビームのエネルギーがある広がりを持つ。このため、イオンをシリコンウェハ等の基板に注入する前に、電場または磁場によりエネルギーを分析して所望のエネルギーを持つイオンビームのみを選別する必要がある。一般的には、分析には取扱いの容易さから電磁石が用いられるが、この場合イオンビーム側のエネルギーがある幅を持つため、電磁石の磁場からエネルギーを算出しなければならない。
【0039】
イオンのエネルギーE[keV]は、
E=4.824265×10
4×(B
2・ρ
2・n
2)/m・・・式(3)
で表される。ここで、m[amu]はイオンの質量数、nはイオンの電価数、ρ[m]は電磁石内のビーム軌道の曲率半径、B[T]は磁場(磁束密度)である。このうち、mとnは注入条件から既知であり、ρは一定である。したがって、磁場Bの測定がエネルギーEを測定することに直接的につながる。
【0040】
また、近年開発が進んでいる非常に低いエネルギーのイオン注入装置においては、プラズマの電位の影響がイオンのエネルギーに与える影響が無視できなくなってきている。このため、単に引き出し電圧だけでは正確なイオンビームのエネルギーを決めるのが難しくなってきているが、このような場合でも最終的なエネルギー分析電磁石の精密な磁場測定に基づくエネルギーの算出が有効である。
【0041】
(高エネルギー多段直線加速部)
図4は、複数の高周波線形加速器からなる高エネルギー多段直線加速部及び収束発散レンズの制御系の構成を示すブロック図である。
【0042】
高エネルギー多段直線加速部14には一つ以上の高周波共振器14aが含まれている。高エネルギー多段直線加速部14の制御に必要な構成要素としては、オペレータが必要な条件を入力するための入力装置52、入力された条件から各種パラメータを数値計算し、更に各構成要素を制御するための制御演算装置54、高周波の振幅を調整するための振幅制御装置56、高周波の位相を調整するための位相制御装置58、高周波の周波数を制御するための周波数制御装置60、高周波電源62、収束発散レンズ64のための収束発散レンズ電源66、運転パラメータを表示するための表示装置68、決定されたパラメータを記憶しておくための記憶装置70が必要である。また、制御演算装置54には、あらかじめ各種パラメータを数値計算するための数値計算コード(プログラム)が内蔵されている。
【0043】
静電圧でイオンを加速するイオン注入装置では、解析的に容易に加速パラメータを決定できる。そのため、加速条件(イオンの価数)や所望のエネルギー等をオペレータが入力するか、あるいは上位のコンピュータから指示するだけで、必要な加速パラメータ(電圧)はイオン注入装置の制御装置で計算され、自動的に設定される。そして、目的のエネルギーのビームを得るためのパラメータの組合せが見つけられる。すなわち、目的のエネルギーのビームを得るために、オペレータか若しくは上位のコンピュータから、入力装置52に所望のイオンの種類、イオンの価数、イオン源の引き出し電圧、最終的に必要なエネルギー値が入力される。
【0044】
一方、高周波線形加速器では、制御演算装置54では、内蔵している数値計算コードによって、入力された条件を基にイオンビームの加速や減速並びに収束・発散をシミュレーションし、最適な輸送効率が得られるよう高周波パラメータ(振幅、周波数、位相)を算出する。また同時に、効率的にイオンビームを輸送するための収束発散レンズ64のパラメータ(電流、電圧の少なくとも一方)も算出する。計算された各種パラメータは、表示装置68に表示される。高エネルギー多段直線加速部14の能力を超えた加速・減速条件に対しては、解がないことを意味する表示が表示装置68に表示される。
【0045】
振幅パラメータは、制御演算装置54から振幅制御装置56に送られ、振幅制御装置56が、高周波電源62の振幅を調整する。位相パラメータは、位相制御装置58に送られ、位相制御装置58が、高周波電源62の位相を調整する。周波数パラメータは、周波数制御装置60に送られる。周波数制御装置60は、高周波電源62の出力周波数を制御するとともに、高エネルギー多段直線加速部14の高周波共振器14aの共振周波数を制御する。制御演算装置54はまた、算出された収束発散レンズパラメータにより、収束発散レンズ電源66を制御する。
【0046】
複数段の高周波共振器14aには交互に発散レンズまたは収束レンズが備えられているが、第2直線加速器15bの終端の収束レンズ64aの後方には追加の発散レンズ64bが配置され、高エネルギー多段直線加速部14を通過する高エネルギー加速イオンビームの収束量と発散量を調整して、後段の偏向ユニットに最適な二次元ビームプロファイルのイオンビームを入射させるようにしている。
【0047】
高エネルギー多段直線加速部14通過後のイオンビームは、高周波電界の影響でエネルギー分布に広がりができてしまう。そこで、後述の偏向ユニット16により所望のエネルギーのイオンのみが通過できるように分析・制限・分離を行う。なお、符号Lは、イオンビームの中心軌道を示している。
【0048】
(偏向ユニット)
図1に示すように、偏向ユニット16は、エネルギーフィルター偏向磁石(E.F.M.)であるエネルギーフィルター分析器24と、軌道調整四重極レンズ26と、エネルギー制限スリット28と、角度偏向磁石30を含む。本実施の形態に係る偏向ユニット16においては、用いられる複数の電磁石を以下のように構成する。
【0049】
偏向ユニット16は、複数の電磁石装置を、エネルギー分析装置及び横方向のベンディング(ビーム進路変更)装置として用いるとともに、エネルギー制限スリット28をエネルギーフィルター分析器24と角度偏向磁石30との間に配置する。そして、エネルギー制限スリット28より上流の電磁石のうち少なくとも一つをエネルギー分析装置(エネルギーフィルター分析器24)として構成し、エネルギー制限スリットより下流の電磁石のうち少なくとも一つを横方向のベンディング装置(角度偏向磁石30)として用いる。
【0050】
また、エネルギー制限スリット28の上流側であって、エネルギー制限スリット28とエネルギーフィルター分析器24との間に、横収束レンズとして軌道調整四重極レンズ26が配置されている。軌道調整四重極レンズ26は、例えば、四重極レンズ(静電式もしくは磁場式)で構成することができる。また、真空ポンプを安定して運用するために、エネルギーフィルター分析器24や角度偏向磁石30の電磁石の漏れ磁場の影響を受けない位置に真空ポンプを配置することが有効である。例えば、エネルギー制限スリット28の近傍に、アウトガス排出用の真空ポンプを配置してもよい。
【0051】
このように、偏向ユニット16は、複数の磁石を用いることで、イオンビームを180°偏向させることができる。これにより、ビームラインがU字状のイオン注入装置100を簡易な構成で実現できる。
【0052】
また、エネルギー制限スリット28より上流側に設けられている、電磁石を含むエネルギーフィルター分析器24は、上流の高エネルギー多段直線加速部14に対して着脱したり連結したりできるように構成してもよい。また、後述するビーム輸送ライン部18をモジュール型のビームラインユニットで構成した場合、エネルギー制限スリット28より下流側に設けられている、角度偏向磁石30は、下流のビーム輸送ライン部18に対して着脱したり連結したりできるように構成してもよい。
【0053】
後述する
図5(a)に示すように、偏向ユニット16は、高エネルギー多段直線加速部14から出たイオンビームを、エネルギーフィルター分析器24で90°偏向する。高エネルギー多段直線加速部14から出たイオンビームは、エネルギー分布にある幅の広がりを持っているので、エネルギーの幅の広がりに対してエネルギー分析器によりビーム軌道を横分散させて(エネルギーの違いによる)、エネルギー制限スリット28にて横方向で必要なエネルギーのイオンビームのみを通過させて、エネルギー分析を行うよう構成し、角度偏向磁石30によりビーム進路を90°偏向し、後述するビーム輸送ライン部18のビーム整形器32に入射させる。ビーム整形器32は、入射したビームを整形してビーム走査器34に供給する。また、後述する
図5(b)に示すように、軌道調整四重極レンズ26のレンズ作用により、ビームエネルギーの微小分布によるイオンビーム軌道のずれを調整して、ウェハに到達するビームがほぼ一つの軌道になるよう構成している。
【0054】
上述のように、偏向ユニット16は、イオン源で発生したイオンを加速してウェハまで輸送して打ち込むイオン注入装置において、高エネルギー多段直線加速部14とビーム輸送ライン部18との間において、イオンビームの180°の偏向を複数の磁石で行っている。つまり、エネルギーフィルター分析器24の磁石および角度偏向磁石30は、それぞれ偏向角度が90度となるように構成されており、その結果、合計の偏向角度が180度となるように構成されている。なお、一つの磁石で行う偏向量は90°に限られず、以下の組合せでもよい。
(1)偏向量が90°の磁石が1つ+偏向量が45°の磁石が2つ
(2)偏向量が60°の磁石が3つ
(3)偏向量が45°の磁石が4つ
(4)偏向量が30°の磁石が6つ
(5)偏向量が60°の磁石が1つ+偏向量が120°の磁石が1つ
(6)偏向量が30°の磁石が1つ+偏向量が150°の磁石が1つ
【0055】
(ビーム輸送ライン部)
図5(a)、
図5(b)は、EFM/エネルギー分析/BM、ビーム整形器、ビーム走査器(スキャナー)の概略構成を示す平面図である。
図6(a)は、ビーム走査器からビーム平行化器以降のビームラインから基板処理供給ユニットまでの概略構成を示す平面図、
図6(b)は、ビーム走査器からビーム平行化器以降のビームラインから基板処理供給ユニットまでの概略構成を示す側面図である。
【0056】
偏向ユニット16によって必要なイオン種のみが分離され、必要なエネルギー値のイオンのみとなったビームは、ビーム整形器32により所望の断面形状に整形される。
図5、
図6に示すように、ビーム整形器32は、Q(四重極)−レンズ等(静電式もしくは磁場式)の収束/発散レンズ群により構成される。整形された断面形状を持つビームは、ビーム走査器34により
図1(a)の面に平行な方向にスキャンされる。例えば、縦収束(横発散)レンズQF/縦発散(横収束)レンズQD/縦収束(横発散)レンズQFからなるトリプレットQレンズ群として構成される。ビーム整形器32は、必要に応じて、縦収束横発散レンズQF、縦発散横収束レンズQDをそれぞれ単独で、あるいは複数組み合わせて構成することができる。
【0057】
ビーム走査器34は、周期変動する電場により、イオンビームの進行方向と直交する水平方向にイオンビームを周期的に往復走査させる偏向走査装置(ビームスキャナーとも呼ばれる)である。
【0058】
ビーム走査器34が、静電式(電場式)偏向走査装置である場合は、ビーム進行方向に関して、イオンビームの通過域を挟むようにしてギャップを介して対向配置された一対(2枚)の対向走査電極(二極式偏向走査電極)を備え、数Hz〜数kHzの周期変動する三角波に近似の正負の電圧変更制御を行う走査電圧が2枚の対向電極にそれぞれ逆符号の電圧で印加される。この走査電圧は、ギャップ内において、そこを通過するビームを偏向させる電場を生成する。そして、走査電圧を変化させることにより、ギャップを通過するビームが水平方向にスキャンされる。
【0059】
ビーム走査器34の下流側には、イオンビームの通過域に開口を有するサプレッション電極74が2つのグランド電極78a、78bの間に配置されている。上流側には、走査電極の前方にグランド電極76aを配置しているが、必要に応じてサプレッション電極をグランド電極の直後に配置することができる。サプレッション電極は、正電極へ電子の侵入を抑制する。
【0060】
図5に示すように、高エネルギー多段直線加速部14の直線加速部ハウジング内の最前部と、スキャナーハウジング内の最前部のビーム整形器32の直前部とには、それぞれ、イオンビームの総ビーム電流値を計測するためのインジェクタフラグファラデーカップ80a、80bが配置されている。それぞれのインジェクタフラグファラデーカップ80a、80bは、駆動機構によりビームライン上に上下方向(または水平方向)から出し入れ可能に構成され、また、水平方向に長い長方形の枡状形状で開口部をビームライン上流側に向けて構成されており、開口部に入射するイオンビームの総ビーム電流を計測する目的の他、ビームライン下流に到達するイオンビームを必要に応じてビームライン上で完全に遮断するために用いられる。また、インジェクタフラグファラデーカップ80a、80b、ビーム走査器34及びサプレッション電極74、グランド電極76a、78a、78bは、スキャナーハウジング82に収容されている。さらに、インジェクタフラグファラデーカップ80aの直前の高エネルギー多段直線加速部14の入り口部内には、前述の通り、質量分析スリット22bが配置されており、単一の質量分析スリット、あるいは、質量の大きさにより、幅の異なる多数スリットの選択方式、または質量スリット幅を無段階または多段に変更できる方式の構成としている。
【0061】
スキャンハウジング内において、ビーム走査器34の下流側には、ビーム走査空間部が長い区間設けられ、ビーム走査角度が狭い場合でも十分なスキャン幅を得られるように構成されている。ビーム走査空間部の下流であるスキャンハウジングの後方には、偏向されたイオンビームを、ビーム走査偏向前のイオンビームの方向になるように、つまり、ビームラインに平行となるように再偏向するビーム平行化器36が設けられている。
【0062】
ビーム平行化器36には、平行化レンズ84が配置されている。
図6に示すように、平行化レンズ84は、上部ユニットと下部ユニットの上下対の組体で構成され、上部ユニットと下部ユニットの間にイオンビームが通過する空間部が設けられ、上部ユニットと下部ユニットの上下対の組体が、それぞれ、弓形、非円形曲線形、略円弧形状、くの字形等の複数枚の電極で構成されており、上流側から最初の電極(1枚目)と最後の電極(3枚目)は、接地電位に保たれている。中間の電極には、平行化電源(可変式の負電源(n段の時は負正負、負正負正負・・・))90が接続されており、1枚目の電極と2枚目の電極および2枚目の電極と3枚目の電極の間にビームの軌道を変更させる方向の偏向電界(ビーム収束作用を持つ)が発生することで、イオンビームはビームライン軌道方向と平行な方向に段階的に向いていく作用を与えられ、水平方向に偏向されたイオンビームが偏向走査前のイオンビーム進行方向(ビームライン軌道方向)に平行なイオンビームとなる。なお、最初の電極(1枚目)と最後の電極(3枚目)のそれぞれの直前か直後に、電子の流入を防ぐサプレッション電極をそれぞれ別に配置してもよい。なお、上記のような電場による平行化を行う場合、各電極の間では加速または減速が生じており、イオンのエネルギーも変化することになるが、平行化ユニットの入り口と出口の電位は同一であるので、全体としてのエネルギー変化は生じない構成としている。
【0063】
このように、ビーム走査器34によりスキャンされたビームは、平行化レンズ等を含むビーム平行化器36により平行化され、スキャン前のイオンビーム進行方向(ビームライン軌道方向)に平行な偏向角0度の軸に対して平行になる。
【0064】
平行化レンズ84から出たイオンビームは、最終エネルギーフィルター分析器38を構成する角度エネルギーフィルター(AEF)94に送られる。角度エネルギーフィルター94では、ウエハに注入する直前のイオンビームのエネルギーに関する最終的な分析が行われ、必要なエネルギー値のイオン種のみが選択されるとともに、合わせて、中性化した価数のない中性粒子や、イオン価数の異なるイオンの除去が行われる。この電界偏向による角度エネルギーフィルター(AEF:Angular Energy Filter)94は、ビームライン軌道方向の上下方向に対向する一対の平面もしくは曲面からなる板状の偏向電極により構成され、ビームライン軌道方向の上下方向において角度エネルギーフィルター(AEF)94自身の偏向作用により下方に曲がっていくイオンビーム軌道に合わせて屈曲している。
【0065】
図6(a)、
図6(b)に示すように、電界偏向用電極は、一対のAEF電極104から構成され、イオンビームを上下方向より挟み込むように配置されている。一対のAEF電極104のうち、上側のAEF電極104には正電圧を、下側のAEF電極104には負電圧をそれぞれ印加している。電界による偏向時には、一対のAEF電極104間で発生する電界の作用によって、イオンビームを下方に約10〜20度偏向させ、目的エネルギーのイオンビームのみが選択されることとなる。
図6(b)に示されるように、角度エネルギーフィルター94においては選択されたエネルギー値からなるイオンビームのみが設定した軌道角度で下方に偏向される。このようにして選択されたイオン種のみからなるビームが被照射物であるウェハ200に照射される。
【0066】
なお、
図10に示すように、上下方向に対向する一対の板状の偏向電極204は、イオンビーム軌道に合わせて屈曲させるときに、前後にn分割されて、それぞれの上部電極および下部電極が各々同電位に保たれた板状の電極としているものでもよい。また、前後にn分割された板状の偏向電極は、上部電極および下部電極を各々同電位に保つ構成のほか、n分割の上下一対の板状電極として、それぞれ別の電位設定(固定もしくは可変電位)とすることも可能である。
【0067】
また、角度エネルギーフィルター94は、角度エネルギーフィルター94の上流側にグランド電極108、および下流側の2つのグランド電極の間にAEFサプレッション電極110を設けた電極セットを備えている。このAEFサプレッション電極110は、正電極へ電子の侵入を抑制する。
【0068】
角度エネルギーフィルター94の最下流側のグランド電極の左右端に配置されたドーズカップ122により、ドーズ量の目安とする注入注のビーム電流量を測定する。なお、AEFチャンバ102の出口側には、角度エネルギーフィルター94で偏向されずに直進する中性の粒子などを受けるストライカープレート114を設けてもよい。
【0069】
なお、
図6(a)においてウェハ200に隣接して示した矢印はビームがこれらの矢印の方向にスキャンされることを示し、
図6(b)においてウェハ200に隣接して示した矢印はウェハ200がこれらの矢印の方向に往復移動、すなわち機械走査されることを示している。つまり、ビームが、例えば一軸方向に往復スキャンされるものとすると、ウェハ200は、図示しない駆動機構により上記一軸方向に直角な方向に往復移動するように駆動される。
【0070】
ウェハ200を所定の位置に搬送供給し、イオン注入による処理を行う基板処理供給ユニット20は、プロセスチャンバ(注入処理室)116を備えている。プロセスチャンバ116は、AEFチャンバ102と連通している。プロセスチャンバ116内には、エネルギー制限スリット(EDS: Energy Defining Slit)118が配置されている。エネルギー制限スリット118は、所用以外のエネルギー値と価数を持つイオンビームの通過を制限することにより、AEFを通過した所用のエネルギー値と価数を持つイオンビームだけを精密に分離するために、スキャン方向に横長のスリットで構成されている。また、エネルギー制限スリット118は、スリットの分離の間隔を調整するために上下方向から可動式の部材でスリット体を構成しても良い。さらに、可動式の上下の切替えスリット部材のは複数のスリット面を備えて、これらのスリット面を切り替えた後、さらに上下スリットの軸を上下方向に調整させたり、回転させたりすることによって、所望のスリット幅に変更するよう構成しても良い。これら複数のスリット面をイオン種に応じて順次切り替えることにより、クロスコンタミネーションを低減する構成とすることも可能である。
【0071】
プラズマシャワー120は、低エネルギー電子をイオンビームのビーム電流量に応じて軌道上のイオンビームとウェハ200の前面に供給し、イオン注入で生じる正電荷のチャージアップを中和するととともに抑制する。なお、角度エネルギーフィルター94の最下流側のグランド電極の左右端に配置されたドーズカップ122の代わりに、プラズマシャワー120の左右端にドーズ量を測定するドーズカップ(不図示)を配置しても良い。具体的には、電流測定回路に接続されている左右のドーズカップに入ってくるイオンビームが、GND準位からその回路を流れてくる電子により中性化されるので、この電子の流れを測定することによってイオンビームの測定を行うことも可能である。
【0072】
ビームプロファイラ124は、イオン注入位置でのビーム電流の強弱測定を行うためのビームプロファイラカップ(図示省略)を備えている。ビームプロファイラ124は、イオン注入前などに水平方向へ移動させながら、イオン注入位置のイオンビーム密度を、ビームスキャンと同じ方向に測定する。ビームプロファイル測定の結果、イオンビームの予想不均一性(PNU:Predicted Non Uniformity)がプロセスの要求に満たない場合には、ビーム走査器34の印加電圧の制御関数を補正して、プロセス条件を満たすように自動的に調整する。また、ビームプロファイラ124に、バーティカルプロファイルカップ(図示省略)を併設して、ビーム形状・ビームX−Y位置を測定して、注入位置でのビーム形状を確認し、ビーム幅やビーム中心位置の確認を行うよう構成することも可能である。
【0073】
ビームラインの最下流には、スキャン範囲のイオンビームをウエハ領域においてすべて計測できるビーム電流計測機能を有する横長ファラデーカップ126が配置されており、最終セットアップビームを計測するよう構成されている。なお、クロスコンタミネーションを低減するために、横長ファラデーカップ126は、イオン種に応じて三角柱の3面を切り替えることができるトリプルサーフェス構造のファラデーカップの切換式底面とすることも可能である。
【0074】
前述のように、イオン注入装置100は、
図1に示すように、作業スペースR1を囲むように、各ユニットがU字状に配置されている。そのため、作業スペースR1にいる作業者は、最小限の移動により、多くのユニットに対して部品の交換やメンテナンス、調整を行うことができる。以下では、ビーム走査器を例に、ユニット内部へのアクセスを可能とする開閉機構について説明する。
【0075】
図7は、ビーム走査器の一例の主要部を上方から見た横断面図である。
図8は、ビーム走査器の着脱自在構造の一例を示した斜視図である。
図9は、ビーム走査器の一例をイオンビームラインの途中経路に着脱自在に装着した構造を下流側から見た正面断面図である。
【0076】
ビーム走査器134は、
図7、
図8に示すように、一対の偏向電極128、130とこれらの上流側近傍、下流側近傍に組み付けられたグランド電極132、133とが箱体150内に収容、設置されている。箱体150の上流側側面及び下流側側面であって、グランド電極132、133の開口部に対応する箇所には、それぞれ、上流側開口部(図示省略)、グランド電極133の開口部より大きめの開口部152A(
図8参照)が設けられている。
【0077】
偏向電極と電源との接続は、フィードスルー構造にて実現されている。一方、箱体150の上面には偏向電極128、130と電源とを接続するためのターミナル155、156とグランド用のターミナル157が設けられている。また、箱体150には、ビーム軸に平行な2つの側面に、着脱や持ち運びに都合のよい取っ手151が設けられている。なお、
図7に示される排気口170A−3は、ビーム走査器134内の圧力を下げるための真空排気用のであり、図示しない真空排気装置に接続されている。
【0078】
図9に示すように、箱体150は、架台160上に固定設置されたビームガイドボックス170内にスライド自在に設置されている。ビームガイドボックス170は箱体150より十分に大きく、底部には箱体150をスライド可能にするための2本のガイドレールが敷設されている。ガイドレールは、ビーム軸に直交する方向に延びており、その一端側のビームガイドボックス170の側面は扉172により開閉自在にされている。これにより、ビーム走査器134の保守・点検時には、箱体150をビームガイドボックス170から簡単に取り出すことができる。なお、ビームガイドボックス170内に押し込まれた箱体150をロックするために、ガイドレールの他端には係止機構(不図示)が設けられている。ビームガイドボックス170の上流側側面及び下流側側面であって、箱体150の上流側開口部、下流側開口部152Aに対応する箇所にはそれぞれ、開口部170A−1,170A−2が設けられている。
【0079】
開口部170A−2は出射するビームが偏向されるので開口部152Aより大きくする必要がある。ターミナル153〜157にはリード線(図示省略)が接続されているが、箱体150の着脱時には取り外される。
【0080】
これらのスキャナ周辺のユニット部材は、ビームラインのメンテナンス時の作業対象であり、メンテナンス作業は作業スペースR1から容易に実施することが出来る。高エネルギー多段直線加速部14のメンテナンス作業時にも、同様に、作業スペースR1から容易に実施することが出来る。
【0081】
以上、本実施の形態に係るイオン注入装置100は、イオンビーム発生ユニット12にて生成したイオンビームを、高エネルギー多段直線加速部14にて加速するとともに、偏向ユニット16により方向転換し、ビーム輸送ライン部18の終端に設けられている基板処理供給ユニット20にある基板に照射する。
【0082】
また、イオン注入装置100は、複数のユニットとして、高エネルギー多段直線加速部14と、ビーム輸送ライン部18と、を含んでいる。そして、高エネルギー多段直線加速部14およびビーム輸送ライン部18は、
図1に示す作業スペースR1を挟んで対向するように配置されている。これにより、直線として配置することが好ましい高エネルギー多段直線加速部14と、ビーム輸送ライン部18とが別々に配置されるため、イオン注入装置100の全長を抑えることができる。また、高エネルギー多段直線加速部14とビーム輸送ライン部18との間に挟まれた作業スペースR1において、高エネルギー多段直線加速部14やビーム輸送ライン部18の各装置に対する作業が可能となる。
【0083】
また、イオン注入装置100を構成する複数のユニットは、ビームラインの上流側に設けられている、イオンビームを発生させるイオンビーム発生ユニット12と、ビームラインの下流側に設けられている、イオンが注入される基板を供給し処理する基板処理供給ユニット20と、イオンビーム発生ユニット12から基板処理供給ユニット20へ向かうビームラインの途中に設けられている、イオンビームの軌道を偏向する偏向ユニット16とを含んでいる。そして、イオンビーム発生ユニット12および基板処理供給ユニット20をビームライン全体の一方の側に配置し、偏向ユニット16をビームライン全体の他方の側に配置している。これにより、メンテナンスの必要なイオン源10や、基板の供給、取り出しが必要な基板処理供給ユニット20が隣接して配置されるため、作業者の移動が少なくてすむ。
【0084】
また、高エネルギー多段直線加速部14は、イオンの加速を行う複数の一連の線形加速装置を備えており、複数の一連の線形加速装置のそれぞれは、共通の連結部を有していてもよい。これにより、基板へ注入するイオンに必要とされるエネルギーに応じて、線形加速装置の数や種類を容易に変更できる。
【0085】
また、スキャナー装置であるビーム走査器34および平行化レンズ装置であるビーム平行化器36は、隣接するユニットとの連結部として標準化された形状を有していてもよい。これにより、線形加速装置の数や種類を容易に変更できる。そして、ビーム走査器34やビーム平行化器36は、高エネルギー多段直線加速部14が備える線形加速装置の構成および数に応じて選択されていてもよい。
【0086】
また、イオン注入装置100において、各装置のフレームと真空チャンバとを一体化し、装置フレームまたは真空チャンバの基準位置に合わせて組付けを行うことにより、ビームの芯出し(位置調整)が可能となるように構成してもよい。これにより、煩雑な芯出し作業が最小限となり、装置立ち上げ時間が短縮でき、作業間違いによる軸ズレの発生が抑制できる。また、連続する真空チャンバ同士の芯出しを、モジュール単位で実施してもよい。これにより、作業負荷を低減できる。また、モジュール化された装置の大きさを、装置の移動がし易い大きさ以下にしてもよい。これにより、モジュールやイオン注入装置100の移設負荷を低減できる。
【0087】
また、イオン注入装置100は、高エネルギー多段直線加速部14、ビーム輸送ライン部18、排気装置等を含む構成機器を一体の架台に組み込んでもよい。また、イオン注入装置100は、高エネルギー多段直線加速部14や偏向ユニット16、ビーム輸送ライン部18を平面基盤上にほぼ一水平面に含まれるようにしている。これにより、イオン注入装置100を一水平面の平面基盤上に固定された状態で調整しブロック毎にそのまま運搬することも出来るので、輸送中に調整ズレを生ずることが少なく、現地で再調整する手間が大いに省ける。そのため、現場に多数の熟練者を送り込んで長期間滞在させる不経済を避けることができる。
【0088】
また、上記の平面基盤を架台の床でなく中間に形成すると、平面基盤上に、イオンビーム軌道に直接的に関係する上述の機器のみを搭載するようにできる。そして、これらに対する補助的な機器である高周波立体回路等の部材を、全て平面基盤の下に形成される空間中に組み込むことで、空間利用率を向上させ、よりコンパクトなイオン注入装置を実現することも可能になる。
【0089】
したがって、上述のイオン注入装置100は、設置場所に余裕がない場所でも設置でき、製作工場内で組み付け調整したままの状態で需要箇所に輸送して、現地に据え付け、最終調整により使用ができる。また、イオン注入装置100は、標準的な半導体製造工場の半導体製造装置ラインの水準の利用に耐えられる以上の高エネルギーのイオン注入を実現できる。
【0090】
また、イオン注入装置100は、各ユニットや各装置のレイアウトを工夫することで、従来と比較して大いに小型化され、従来の半分程度の設置長さに納めることができる。また、本実施の形態に係るイオン注入装置は、製造工場内で各構成要素を基盤上に組み込み、基盤上で位置調整してイオンビーム軌道を確立したまま輸送車に搭載して現地に輸送し、架台ごと据え付けた上で輸送中に生じたくるいを微調整して除去することにより稼働させることができる。そのため、熟練者でなくとも現場調整が格段に容易かつ確実に実施でき、また立ち上げ期間を短縮できる。
【0091】
また、長いU字状の折り返し型ビームラインのようなレイアウトを取ることによって、最高5〜8MeVの高エネルギーイオンを高精度で注入できるイオン注入装置を実現することができる。また、このイオン注入装置は、中央通路(中央領域)を持つこのレイアウトによって、小さな設置面積で十分なメンテナンスエリアを持つ。また、イオン注入装置の運転時においては、静電パラレルレンズや静電スキャナー、静電AEF等の使用による低消費電力運転によって、消費電力を少なくできる。換言すると、本実施の形態に係るイオン注入装置は、静電偏向式の平行化レンズ装置の使用によるスキャンビームの平行化機構を有することで、低消費電力運転が可能となる。
【0092】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。