特許第5963668号(P5963668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オルガノ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5963668-排水処理方法 図000003
  • 特許5963668-排水処理方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963668
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】排水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20060101AFI20160721BHJP
   C02F 3/30 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C02F3/12 Q
   C02F3/12 B
   C02F3/30 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-285934(P2012-285934)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-124625(P2014-124625A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 吉昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 太一
(72)【発明者】
【氏名】江口 正浩
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−285096(JP,A)
【文献】 特開2008−086862(JP,A)
【文献】 特表2005−538825(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0032815(US,A1)
【文献】 特開2007−136367(JP,A)
【文献】 特開2008−284427(JP,A)
【文献】 特開2011−143365(JP,A)
【文献】 特開昭63−077597(JP,A)
【文献】 米国特許第05525231(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00−3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水を流入させる流入工程、排水中の処理対象物質を微生物汚泥により生物学的に処理する生物処理工程、前記微生物汚泥を沈降させる沈降工程、処理水を排出させる排出工程を繰り返して行う半回分式反応槽を用いた排水処理方法であって、
前記生物処理工程から前記沈降工程の間で、且つ前記半回分式反応槽内に前記微生物汚泥が分散している条件下で、前記微生物汚泥の一部を前記反応槽から引き抜く汚泥引き抜き工程と、
前記排水を連続式反応槽に連続的に流入させながら、排水中の処理対象物質を微生物汚泥により生物学的に処理する連続式生物処理工程と、
前記連続式反応槽から排出される処理水から前記微生物汚泥を固液分離する固液分離工程と、
前記汚泥引き抜き工程で引き抜かれた汚泥を前記連続式反応槽に供給する供給工程と、を備えることを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
前記汚泥引き抜き工程は、前記生物処理工程時間の75%が経過してから前記沈降工程までの間に行われることを特徴とする請求項1記載の排水処理方法。
【請求項3】
前記固液分離工程では、沈殿槽を用いて前記微生物汚泥の固液分離が行われ、
前記供給工程における汚泥の供給量は前記沈殿槽の容積の1/2以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の排水処理方法。
【請求項4】
前記供給工程における汚泥の供給速度は、前記連続式反応槽に流入する排水の流入速度の1/20以上1/2以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の排水処理方法。
【請求項5】
前記供給工程において前記汚泥を前記連続式反応槽に供給している間、前記連続式反応槽への前記排水の流入を停止するか又は排水の流入量を所定量低下させることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水中の処理対象物質を微生物により生物学的に処理する排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生物学的排水処理には、フロックと呼ばれる微生物の集合体を活用した活性汚泥法が用いられてきた。しかし、活性汚泥法では、沈殿池でフロックと処理水を分離する際、フロックの沈降速度が遅いために沈殿池の表面積を非常に大きくしなければならないという問題点を有する場合がある。また、活性汚泥法の処理速度は、槽内の汚泥濃度に依存しており、汚泥濃度を高めることで処理速度を増加させることができるが、汚泥濃度を3000〜5000mg/L以上に増加させようとすると、バルキングなどの固液分離障害が発生し、処理を維持することができなくなる場合がある。したがって、従来の活性汚泥法のBOD処理速度は、0.5〜0.8kg/m/day程度である。
【0003】
嫌気性生物処理では、グラニュールと呼ばれる微生物が緻密に集合し粒状となった集合体を活用することが一般的である。グラニュールは非常に沈降速度が速く、微生物が緻密に集合しているため、処理槽内の汚泥濃度を高くすることができ、排水の高速処理を実現することが可能である。しかし、嫌気性生物処理は、好気性処理(活性汚泥法)に比べて処理対象の排水種が限られていることや、処理水温を30〜35℃に維持する必要がある等の問題点を有する場合がある。また、嫌気性生物処理単独では、処理水の水質が悪く、河川等へ放流する場合には、別途活性汚泥法等の好気性処理を実施することが必要となる場合もある。
【0004】
近年、排水を間欠的に反応槽に流入させる半回分式処理装置を用いて処理を行い、さらに汚泥の沈殿時間を非常に短縮することで、好気性の活性汚泥でもグラニュールを形成できることが明らかとなってきた(例えば、特許文献1〜4参照)。なお、半回分式処理装置では、1つの反応槽で(1)排水の流入、(2)処理対象物質の生物処理、(3)生物汚泥の沈降、(4)処理水の排出といった4つの工程を経ることによって処理が行われる。
【0005】
上記のようにグラニュール化させることで、高速処理を達成できるが、半回分式処理装置を大規模排水処理設備に用いる場合には、巨大な流量調整槽を設置しなければならない場合がある。そこで、排水を連続的に流入させ処理する連続式処理装置に、好気性グラニュールを供給することで、システム全体をグラニュール化する処理方法が提案されている(例えば、特許文献5参照)。この方法を用いることで、沈殿池を小型化でき、且つBOD処理速度を1.5〜3.0kg/m/dayにすることが可能となる。
【0006】
排水の流入工程、処理対象物質の生物処理工程、生物汚泥の沈降工程および処理水の排出工程を連続的に行うことで処理を行う半回分式処理装置(SBR:Sequencing Batch Reactor)の運転において、汚泥の引き抜きは、その後の廃棄や脱水時の取り扱いが容易なように、生物処理反応槽において汚泥を沈降させて、濃縮した後、その濃縮汚泥をポンプ等で引き抜くことにより行われる。
【0007】
近年では汚泥の沈降開始から処理水の排出までの時間を短くすることや、反応槽内の基質濃度変動を適切にコントロールすることで、SBR内の汚泥をグラニュール化できることが報告されている。このようなグラニュール汚泥は沈降性が非常によく、汚泥濃度を高く維持できるため、容積負荷を高くとることが可能であるという特徴も有している。しかしながら、グラニュール汚泥においては沈降時に引き抜き汚泥の濃度が数万mg/L以上に達することもあり、引き抜きポンプ及び配管の閉塞が懸念される。
【0008】
また、生成したグラニュール汚泥を他の処理系列に投入し、グラニュールの特性を生かした処理を行う処理方法も提案されているが、濃縮されたグラニュール汚泥の投入は引き抜きポンプ内でのせん断応力や圧縮によってグラニュール形状が破壊され、もしくは少量高濃度の汚泥を引き抜くため配管中に汚泥の多くが蓄積して活性が低下するなど、望むような効果が出ない場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2004/024638号
【特許文献2】特開2008−212878号公報
【特許文献3】特開2009−18263号公報
【特許文献4】特開2009−18264号公報
【特許文献5】特開2007−136367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、本発明の目的は、半回分式の生物処理反応槽から安定的に汚泥を引き抜くことを可能とする排水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、排水を流入させる流入工程、排水中の処理対象物質を微生物汚泥により生物学的に処理する生物処理工程、前記微生物汚泥を沈降させる沈降工程、処理水を排出させる排出工程を繰り返して行う半回分式反応槽を用いた排水処理方法であって、前記生物処理工程から前記沈降工程の間で、且つ前記半回分式反応槽内に前記微生物汚泥が分散している条件下で、前記微生物汚泥の一部を前記反応槽から引き抜く汚泥引き抜き工程と、前記排水を連続式反応槽に連続的に流入させながら、排水中の処理対象物質を微生物汚泥により生物学的に処理する連続式生物処理工程と、前記連続式反応槽から排出される処理水から前記微生物汚泥を固液分離する固液分離工程と、前記汚泥引き抜き工程で引き抜かれた汚泥を前記連続式反応槽に供給する供給工程と、を備える。
【0012】
また、前記排水処理方法において、前記汚泥引き抜き工程は、前記生物処理工程時間の75%が経過してから前記沈降工程までの間に行われることが好ましい。
【0014】
また、前記排水処理方法において、前記固液分離工程では、沈殿槽を用いて前記微生物汚泥の固液分離が行われ、前記供給工程における汚泥の供給量は前記沈殿槽の容積の1/2以下であることが好ましい。
【0015】
また、前記排水処理方法において、前記供給工程における汚泥の供給速度は、前記連続式反応槽に流入する排水の流入速度の1/20以上1/2以下であることが好ましい。
【0016】
また、前記排水処理方法において、前記供給工程において前記汚泥を前記連続式反応槽に供給している間、前記連続式反応槽への前記排水の流入を停止するか又は排水の流入量を所定量低下させることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半回分式の生物処理反応槽から安定的に汚泥を引き抜くことを可能とする排水処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る排水処理装置の構成の一例を示す概略構成図である。
図2図1に示す排水処理装置を用いた排水処理システムの構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る排水処理装置の構成の一例を示す概略構成図である。図1に示す排水処理装置1は、排水貯留槽10、排水流入ライン12、半回分式生物処理反応槽14、処理水排出ライン16、汚泥排出ライン18、処理水槽20、を備えるものである。半回分式生物処理反応槽14内には、排水を攪拌する攪拌機22を備えている。図1に示す攪拌機22はモータの駆動により、モータに取り付けられたシャフトが回転し、シャフトの回転と共にシャフトの先端に取り付けられた攪拌羽根が回転する構造となっている。なお、攪拌機22は、半回分式生物処理反応槽14内の排水を攪拌できる構造であれば上記に制限されるものではなく、例えば、好気性条件で生物処理を実施する際に用いられる曝気装置等でもよい。曝気装置の曝気により、槽内の排水を攪拌することが可能となる。
【0021】
排水流入ライン12の一端は排水貯留槽10に接続され、他端は半回分式生物処理反応槽14の上部に接続されている。処理水排出ライン16の一端は、半回分式生物処理反応槽14に接続され、他端は処理水槽20に接続されている。汚泥排出ライン18の一端は、処理水排出ライン16に接続され、他端は装置系外の汚泥回収槽や後述する連続式生物処理反応槽に接続される。汚泥排出ライン18の接続点は、処理水排出ライン16に限られず、半回分式生物処理反応槽14から汚泥を引き抜くのに適した場所であれば何れでもよく、例えば、半回分式生物処理反応槽14の底部に接続されてもよい。なお、各ラインには、排水や汚泥等の送液のためのポンプ等が設置されていることが望ましい。
【0022】
本実施形態の半回分式生物処理反応槽14は、(1)排水の流入、(2)排水中の処理対象物質を微生物汚泥により生物学的に処理する生物処理、(3)汚泥の沈降、(4)生物処理により得られる処理水の排出の4つの工程を繰り返し行うものである。また、生物処理から汚泥の沈降の間に汚泥の引き抜きも行う。
【0023】
まず、処理対象物質を含む排水は、半回分式生物処理反応槽14に供給される前に、排水貯留槽10に溜められ、排水の水質安定化を行うことが好ましい。この際、排水中に固形物が含まれている場合には、スクリーン等によって、固形物を取り除いておくことが望ましい。また、排水貯留槽10では排水の均一化を行うため、攪拌装置(機械攪拌、空気攪拌等)を設置することが望ましい。なお、以下では、半回分式生物処理反応槽14を半回分式槽14と呼ぶ場合がある。
【0024】
<排水の流入>
排水貯留槽10内の排水が、排水流入ライン12から半回分式生物処理反応槽14に流入する。ここで、半回分式生物処理反応槽14内にグラニュール汚泥を容易に形成することができる点で、1バッチあたりの排水流入率を適切に制御することが望ましい。例えば、1バッチあたりの排水流入率(半回分式槽14の体積に対する1バッチあたりの排水流入率=(1バッチあたりの排水流入量)/(半回分式槽14有効容積))は排水のBODもしくはTN(全窒素)濃度から計算される。例えば、排水流入率をBOD基準とするか、TN基準とするかはC/N比(排水中の炭素と窒素の比)によって選定することができる。C/N比が1.3以上の場合にはBODを基準として、1.3よりも小さい場合にはTNを基準として排水流入率を決定することが好ましい。また、例えば、排水が半回分式槽14内に流入して希釈された反応液中の濃度が、BOD基準とした場合50mgO/L以上(より望ましくは70mgO/L以上)、TN基準とした場合30mgN/L以上(より望ましくは50mgN/L以上)となるように、排水流入率を設定することが望ましい。
【0025】
<生物処理>
半回分式生物処理反応槽14内には、微生物(汚泥も含む)が滞留しており、半回分式生物処理反応槽14内に流入した排水中の処理対象物質と微生物汚泥とが接触し、処理対象物質が分解され処理される(生物処理)。半回分式生物処理反応槽14内での生物処理反応は、嫌気(無酸素)条件のみ、好気条件のみ、嫌気(無酸素)−好気交互運転のいずれでもよい。しかし、汚泥の増殖速度が高くなる点、グラニュール形成速度が高くなる点からは好気条件を含む条件が好ましく、グラニュールを安定に形成できる点からは、嫌気(無酸素)条件を含む条件が好ましいため、嫌気(無酸素)−好気条件を含むような条件設定が望ましい。処理対象となる物質は、例えば、有機物、アンモニア性窒素、硝酸態窒素等の窒素含有物質等であり、有機物は微生物との接触により、二酸化炭素まで分解され、窒素含有物質等は微生物との接触により、窒素ガスにまで分解される。
【0026】
<汚泥の沈降>
生物処理後、半回分式生物処理反応槽14内の微生物汚泥を沈降させる。沈降時間は、沈降性の悪い汚泥を積極的に排出するとともに、沈降性の優れた汚泥を槽内に維持するため、例えば、槽内の水面から汚泥排出部(本実施形態では、半回分式槽14と処理水排出ライン16との接続点)までの距離と汚泥の沈降速度とから計算され、通常は4分/mから15分/m(より望ましくは5分/mから10分/m)の間で設定される。この沈降時間は、生物処理の際の攪拌(曝気による攪拌等も含む)及び後述する汚泥の引き抜きの際の攪拌を停止してから汚泥を沈降させる時間である。この沈降時間は、生物処理の際の攪拌(曝気による攪拌等も含む)及び後述する汚泥の引き抜きの際の攪拌を停止してから汚泥を沈降させる時間である。
【0027】
<汚泥の引き抜き>
通常の処理においては微生物汚泥の脱水や運搬を容易にするため、上記のように微生物汚泥を沈降させた後、半回分式槽14の底部に堆積した汚泥の引き抜きを実施する。しかし、本実施形態においては、上記生物処理から汚泥の沈降までの間であって、半回分式槽14内に微生物汚泥が分散している条件下で、汚泥の引き抜きを実施する。引き抜かれた汚泥は、処理水排出ライン16を経由して汚泥排出ライン18を通り、系外へ排出される。本明細書において、半回分式槽14内に微生物汚泥が分散している条件とは、引き抜き汚泥の濃度が半回分式槽14内の平均濃度の±30%以内であることを示す。このように、半回分式槽14内に微生物汚泥が分散している条件下で、汚泥の引き抜きを実施することにより、半回分式槽14の底部に堆積した状態で、汚泥の引き抜きを実施した場合と比べて、低濃度の汚泥を引き抜くことになるが、汚泥排出ライン18の閉塞を抑制することが可能となり、安定して汚泥の引き抜きを実施することが可能となる。また、半回分式槽14内に微生物汚泥が分散している条件下で、汚泥の引き抜きを実施することにより、半回分式槽14の底部に堆積した状態で、汚泥の引き抜きを実施した場合と比べて、汚泥排出ライン18に汚泥が残留することが抑制される。汚泥排出ライン18に汚泥が残留すると、汚泥の活性が低下する場合がある。例えば、引き抜いた汚泥を他の処理系列で利用する場合、本実施形態では、汚泥排出ラインに汚泥が残留することはほとんどないため、高い活性を維持したままの汚泥が、他の処理系列に供給される。その結果、他の処理系列では十分な処理効率が得られるという利点がある。
【0028】
<生物処理中での汚泥の引き抜き>
生物処理中に汚泥を引き抜く場合、好気条件で運転をしていれば、曝気により槽内の排水は攪拌されており、また、嫌気条件であっても、攪拌機22により槽内の排水は攪拌されているため、半回分式槽14内に微生物汚泥が分散している条件を満たしている。しかし、排水の流入直後は未処理の処理対象物質が多く残存しているため、汚泥の引き抜きと共に未処理物質も引き抜かれて後段への負荷が増大する場合がある。この点を考慮すると、生物処理工程時間の75%経過以降に汚泥の引き抜きを実施することが望ましい。生物処理工程時間は、汚泥負荷を加味し、処理対象物質の濃度が十分低下するように設定される。
【0029】
また、汚泥中の好気性菌は嫌気条件下では徐々に活性が低下する。引き抜いた汚泥を他の処理系列へ供給して利用する場合、できるだけ活性の高い汚泥を投入することを可能にする点で、汚泥の引き抜きは半回分式槽14内が曝気され(好気条件下)、好気性(溶存酸素濃度として1mgO/L以上)となっている条件下で実施することが望ましい。さらに、汚泥中に硝酸イオンや亜硝酸イオンが含まれると、その結合性酸素により嫌気化を防止する効果があるので、亜硝酸性窒素もしくは硝酸性窒素として5mg/L以上(より望ましくは10mg/L以上)となっている条件下で汚泥の引き抜きを行うことが望ましい。
【0030】
<汚泥の沈降中での汚泥の引き抜き>
汚泥の沈降の間に汚泥の引き抜きを実施してもよい。この場合、半回分式槽14内は、攪拌されていない状態であるが、前述したように、引き抜き汚泥濃度が、半回分式槽14内の平均汚泥濃度の±30%以内でとなるように汚泥を引き抜けばよい。汚泥の引き抜きは、実際に水面の汚泥濃度を測定しながら、実施してもよいし、予め経過時間に対する水面の汚泥濃度変化を求め、その時間に基づいて実施してもよい。また、沈降して濃縮された汚泥を希釈しながら引き抜いてもよい。
【0031】
<処理水の排出>
汚泥の引き抜き、及び汚泥の沈降が終了した後、半回分式槽14内の処理水を処理水排出ライン16から取り出し、処理水槽20に供給する。
【0032】
各処理工程におけるその他の条件について以下に説明する。
【0033】
半回分式生物処理反応槽14の排水流入率は20%以上80%以下とすることが好ましく、30%以上60%以下とすることがより好ましい。処理対象物質である有機物濃度が非常に高い状態(流入工程の直後、飽食状態)と有機物濃度が非常に低い状態(生物処理工程の終盤、飢餓状態)を汚泥が繰り返し経験することによって、汚泥のグラニュール化が進行すると考えられている。従って、グラニュールを形成する観点では水交換率は出来るだけ高くとった方が良いが、その一方で、水交換率を高くすればする程、流入ポンプの容量が大きくなりコスト高となるため、水交換率は20%以上80%以下が好ましい。
【0034】
半回分式生物処理反応槽14内のpHは、一般的な微生物に適する6〜9、特に6.5〜7.5とすることが望ましい。pH値が前記範囲外となる場合は、酸、アルカリを添加してpHコントロールを実施することが好ましい。半回分式生物処理反応槽14内の溶存酸素(DO)を0.5mg/L以上、特に1mg/L以上とすることが望ましい。
【0035】
本実施形態の処理に適用する排水は、例えば、食品加工工場排水、化学工場排水、半導体工場排水、機械工場排水、下水、し尿、河川水等の生物分解性を有する物質(有機物)を含有する排水等である。また、生物難分解性を示す排水を処理する場合には、予め物理化学的処理を施し、生物分解性を有する物質に変換することによって処理が可能となる。食品加工工場排水などに含有されることが多い油脂分に関しては、グラニュールを含む汚泥に付着して悪影響を及ぼす可能性が高いため、半回分式生物処理反応槽14に流入させる前に、予め浮上分離、凝集加圧浮上装置、吸着装置等の既存の手法にて、油脂分をノルマルヘキサン抽出濃度で150mg/L以下程度まで除去しておくことが望ましい。
【0036】
微生物汚泥のグラニュール化には核が必要と考えられている。通常の排水にはこのような核となるような微粒子が含まれているので特に添加する必要はないが、核形成を促進させる点で、Fe2+、Fe3+、Ca2+、Mg2+等の水酸化物が形成されるようなイオンを添加することが望ましい。
【0037】
半回分式槽14は、概ね汚泥濃度が3000〜30000mg/L程度で運転されるが、汚泥の健全性(沈降性、活性等)を維持するためには、汚泥負荷を0.05〜0.60kg/MLSS/dayに保つことが好ましく、0.1〜0.5kg/MLSS/dayに保つことがより好ましいため、所定濃度よりも汚泥濃度が増加した場合には反応槽内より引き抜くことが必要となる。
【0038】
このような半回分式処理装置で処理を行うと、微生物汚泥が自己造粒したいわゆるグラニュール汚泥を形成することが知られている。このグラニュール汚泥は沈降性に非常に優れるため、他の処理系列に投入して利用することができる。以下に具体的に説明する。
【0039】
図2は、図1に示す排水処理装置を用いた排水処理システムの構成の一例を示す模式図である。図2に示す排水処理システム2は、排水貯留槽10、排水流入ライン12、半回分式生物処理反応槽14、処理水排出ライン16、汚泥排出ライン18、処理水槽20、を備える排水処理装置1と、連続式生物処理反応槽24と、沈殿槽26と、排水流入ライン28と、一次処理水排出ライン30と、処理水排出ライン32と、汚泥返送ライン34と、を備える。本明細書において、「連続式」とは、回分式に対する方式であり、半回分式のように、排水の流入、生物処理、汚泥の沈降、処理水の排出を一つの反応槽で行う半回分式処理と区別されるものである。また、本実施形態において、連続式は、連続して反応槽に排水を投入して運転する方式に限定されるものではなく、ダイヤフラムポンプ等の往復運動のような原理を利用したポンプにより、反応槽に排水を供給して運転する方式等であってもよいし、反応槽の前段に原水槽を設置し、その原水槽の水位に応じてポンプの稼動−停止を制御(水位が高い場合にはポンプを稼動、水位が低い場合にはポンプを停止)して、反応槽に排水を供給する模擬連続通水方式等であってもよい。
【0040】
排水流入ライン28の一端が排水貯留槽10に接続され、他端は、連続式生物処理反応槽24に接続され、一次処理水排出ライン30の一端は連続式生物処理反応槽24に接続され、他端は沈殿槽26に接続され、処理水排出ライン32の一端は、沈殿槽26に接続され、他端は、処理水槽20に接続され、汚泥返送ライン34の一端は、沈殿槽26底部に接続され、他端は連続式生物処理反応槽24に接続されている。また、図2に示す排水処理システム2では、汚泥排出ライン18の一端が半回分式生物処理反応槽14に接続され、他端は連続式生物処理反応槽24に接続されている。なお、以下、連続式生物処理反応槽24を連続式槽24と呼ぶ場合がある。
【0041】
以下に、図2に示す排水処理システム2の動作について説明する。
【0042】
排水貯留槽10内の排水の一部は、排水流入ライン12から半回分式槽14に(間欠的に)流入し、残りは、排水流入ライン28から連続式槽24に連続的に流入する。半回分式槽14での動作は前述した通りである。そして、半回分式槽14から引き抜かれた微生物汚泥(グラニュール化した汚泥も含む。以下同じ)は、汚泥排出ライン18から連続式槽24に供給される。なお、微生物汚泥は汚泥返送ライン34からも連続式槽24に供給される。連続式槽24内には、微生物が滞留しており、例えば、好気条件下で(曝気装置等による曝気処理)、且つ供給された微生物汚泥(グラニュール化した汚泥も含む)等が共存した状態で、排水中の有機物が二酸化炭素にまで酸化処理される。本実施形態では、上記のような標準活性汚泥法による生物処理だけでなく、AO(Anaerobic−Anoxic Process)やAO(Anaerobic−Oxic Process)等の栄養塩除去型システム(無酸素処理槽や嫌気処理槽を設置するシステム)、オキシデーションディッチ法、ステップ流入型多段活性汚泥法等のシステムによる生物処理も可能である。したがって、本実施形態の連続式槽24は1槽でもよいし、2槽以上の多段処理としてもよいし、好気槽、嫌気槽及び無酸素槽を組み合わせた複合槽としてもよい。また、ポリウレタン、プラスチック、樹脂等の担体を連続式槽24に充填して、生物処理を行ってもよい。
【0043】
生物処理された一次処理水は、微生物汚泥(グラニュール汚泥も含む)と共に一次処理水排出ライン30を通り、沈殿槽26に流入する。沈殿槽26内では、一次処理水から微生物汚泥(グラニュール汚泥も含む)が沈降分離される。そして、微生物汚泥(グラニュール汚泥も含む)が分離された排水は、処理水として処理水排出ライン32から排出され、処理水槽20に供給される。また、微生物汚泥(グラニュール汚泥も含む)は、前述したように、汚泥返送ライン34から連続式槽24に返送される。
【0044】
前述したように、半回分式槽14から抜き取られる微生物汚泥はグラニュール化した汚泥として得られ易い。そして、グラニュール汚泥を投入した排水処理システムでは、汚泥の沈降性が著しく改善する。処理水から汚泥を分離する固液分離装置が沈殿槽26の場合には、沈殿槽26の線流速は0.6m/hr前後に設定されるが、グラニュールを投入した場合、線流速を1〜5m/hrに設定することが可能である。
【0045】
しかしながら、排水処理システム2の固液分離が沈殿槽26のような重力沈降である場合、半回分式生物処理反応槽14からの急激な汚泥投入は、沈殿槽26における一時的な線流速の増加を引き起こし、汚泥が沈殿槽26から流出する場合がある。通常、沈殿槽26の汚泥界面は水深の1/2以下にあるため、汚泥の流出を防ぐ点で、1回あたりの汚泥供給量を沈殿槽26の容積の1/2以下とすることが好ましい。また、たとえば膜分離のような固液分離を採用した場合においても急激な汚泥投入は水位の上昇を招き、連続式槽24上部からの汚泥流出を引き起こす場合があるため、汚泥の供給量は上記範囲とすることが好ましい。また、固液分離の方式にかかわらず、連続式槽24の処理水量の急激な増加を防ぐ点で、半回分式槽14から連続式槽24への汚泥供給速度を、連続式槽24への原水の流入速度の1/20以上1/2以下とすることが好ましい。また、連続式槽24の処理水量の急激な増加を防ぐ点で、半回分式槽14から汚泥を供給している間、連続式槽24への排水流入速度を所定量低下、もしくは排水の流入を停止させることも好ましい。所定量とは、連続式槽24の処理水量の急激な増加を防ぐ範囲で適宜設定されるものである。
【0046】
半回分式槽14からの汚泥を連続式槽24で効率的に利用するためには、半回分式槽14の容積は、連続式槽24の容積に対して1/100〜1/3の範囲の大きさとすることが好ましく、1/20〜1/5の範囲の大きさとすることがより好ましい。
【0047】
本実施形態において、処理水から微生物汚泥を分離する固液分離装置としては、沈殿槽26に限定されるものではなく、例えば、MBRのような膜分離装置、液体サイクロン、GSS等でもよい。
【0048】
連続式槽24のpHは、一般的な微生物に適する6〜9の範囲とすることが好ましく、6.5〜7.5の範囲とすることがより好ましい。また、連続槽内の溶存酸素(DO)は0.5mg/L以上とすることが好ましく、1mg/L以上とすることがより好ましい。連続式槽24の排水の滞留時間は特に限定しないが、通常は4時間から24時間の間で設定することが好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例)
BOD処理(好気条件での処理)、及び硝化と脱窒の窒素処理(嫌気条件での処理)を行う反応槽を備える排水処理装置において、サイクルタイム(排水の流入から処理水の排出まで)を18時間とし、生物処理工程時間(無酸素時間+好気時間)の75%経過後に曝気により攪拌されている状態で、反応槽内の汚泥の一部を汚泥排出ラインから引き抜いた。汚泥排出ライン内には、残留汚泥がほとんどなく、引き抜いた汚泥に5mgN/LとなるようにNH−Nを添加した上で、酸素消費速度の測定を行った。また、別途引き抜き汚泥のSS濃度および反応槽内のMLSS濃度の測定を実施した。その結果を表1に示す。
【0051】
(比較例)
汚泥の引き抜きにおいて、沈降工程後、攪拌無しの状態で、反応槽の底部に堆積した汚泥の一部を汚泥排出ラインから引き抜いた。汚泥排出ラインには、かなりの汚泥が残留しており、次のサイクルでの汚泥引き抜き時に、汚泥排出ライン内の残留汚泥をサンプリングし、その残留汚泥に5mgN/LとなるようにNH−Nを添加した上で、酸素消費速度の測定を行った。また、実施例と同様に引き抜き汚泥のSS濃度の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1から分かるように、実施例では比較例と比べて3倍の酸素消費速度を示しており、非常に高い汚泥活性を維持していた。実施例では、汚泥が攪拌されている状態で反応槽内から引き抜かれるため、汚泥排出ラインに汚泥が残存することなく排出され、高い活性を維持した汚泥を例えば他の処理系列に供給することが可能となる。一方、比較例では、汚泥排出ラインに汚泥が残存するために、活性が低下した汚泥も他の処理系列に供給されることになる。すなわち、実施例の方が比較例より高い活性を維持した汚泥を利用することができると言える。また、実施例における引き抜き汚泥のSS濃度は反応槽内MLSS濃度とほぼ同等であったが、比較例での引き抜き汚泥濃度は反応槽内MLSS濃度と比較して約7.6倍であった。
【符号の説明】
【0054】
1 排水処理装置、2 排水処理システム、10 排水貯留槽、12,28 排水流入ライン、14 半回分式生物処理反応槽又は半回分式槽、16,32 処理水排出ライン、18 汚泥排出ライン、20 処理水槽、22 攪拌機、24 連続式生物処理反応槽又は連続式槽、26 沈殿槽、30 一次処理水排出ライン、34 汚泥返送ライン。
図1
図2