【実施例】
【0048】
以下に実施例を示すが、本発明はこの実施例だけに限定されるものではない。
【0049】
実施例1
マウスiPS細胞由来軟骨細胞の分化途上での遺伝子導入とウサギ初代培養軟骨細胞への遺伝子導入。Takahashi and Yamanakaの方法(非特許文献Cell. 2006 25;126(4):663-76)に準じて、C57Bl/6マウス線維芽細胞に、Oct-3/4、Sox2、Klf-4、c-Mycを含むレトロウイルスベクターを感染させ、iPS細胞を樹立した。このマウスiPS細胞を、R&D Syste社から購入したBMP2(10 ng/ml)とPepro Tech 社から購入したTGFbeta1(2 ng/ml)、FBS(10%)を含むdMEM培地中で接着性の低い培養ディッシュを用いて5 日培養し、胚様体を形成せしめた。得られた胚様体を、BMP2 ,SIGMA社より購入したインスリン(1μg/mlとナカライテスク社から購入したアスコルビン酸(50μg/ml)の存在下にゼラチンでコートした培養皿上で15 日培養した。この細胞に、タカラバイオ社より購入したRetro Virus Packaging Kit Amphoを用いてEGFP発現ユニットを有するアンフォトロフィックレトロウイルスベクターを、その作成手順に従って作成して細胞に感染させた。pGPベクター、pE-ampho、とpDON-5 GFP Neoの3種類のベクターあるいはリン酸カルシウム法でパッケージング細胞GT3hiに導入し導入後24時間−48時間の培養上清を回収しレトロウイルス原液とした。タカラバイオ社より購入したレトロネクチンで24穴培養プレートを50 μg/mlの濃度でコーティングしてレトロネクチンコートプレートを作成した。作成したプレートに2倍希釈したレトロウイルス原液を添加してウイルス粒子を吸着させたのち細胞を1×10
5個のマウスiPS細胞より分化誘導した軟骨前駆細胞あるいは、白色ウサギの膝関節より得たウサギ軟骨細胞を蒔いた。添加した。その後3 日間、軟骨細胞誘導条件にて培養し、軟骨細胞に分化させた。微分干渉顕微鏡で観察した。
【0050】
実施例2
図2に実施例1の実験結果を示す。マウスiPS細胞由来軟骨細胞と、ウサギ軟骨細胞初代培養のそれぞれについて、異なる2つの視野の、微分干渉顕微鏡(DIC)、および、それぞれの視野の蛍光顕微鏡像(NIBA)を示す。蛍光顕微鏡写真の中の矢印は、EGFP発現細胞を示す。マウスiPS細胞から軟骨細胞に分化させる途上で遺伝子導入を行うと、ウサギの軟骨より得た軟骨細胞に導入する場合と比べて、高い効率で遺伝子を発現させられることが分かる。
【0051】
実施例3
ヒトiPS細胞由来軟骨細胞に、分化途上でレトロウイルスを感染させる場合と、ヒト初 代培養軟骨細胞に感染させた場合の、遺伝子導入・発現効率の比較。
図3Aに実験の概略を示す。ケラチノサイトに、Oct-3/4、Sox2、Klf-4、c-Myc、Lin28を含むプラスミドベクター導入し、iPS細胞を樹立した。このヒトiPS細胞を、FBS(10%)を含むDMEM培地中で接着性の低い培養ディッシュを用いて5 日培養し、胚様体を形成せしめた。得られた胚様体を、BMP2 ,インスリン(1μg/ml)とアスコルビン酸(50μg/ml)の存在下にゼラチンでコートした培養皿上で18 日間培養した。この細胞の一部を培養20日目と23日目にをPBS(−)で2回洗浄したのち3%酢酸溶液で1回洗浄したのちナカライテスク社のPH2.5 アルシアンブルー染色液を加えて1時間、室温で染色した。PBS(-)で3回洗浄したのち顕微鏡で観察した。20日目の細胞において青い染色像が薄く認められた(
図3B)。23日目の細胞においては20日目の細胞に比して強力に染色しており、本系においては20日目から23日目に軟骨への分化誘導が強く起こっていることが確認された。
【0052】
培養15日目の細胞にタカラバイオ社より購入したRetro Virus Packaging Kit Amphoを用いてEGFP発現ユニットあるいは分泌型ルシフェラーゼ発現ユニットを有するアンフォトロフィックレトロウイルスベクターを、その作成手順に従って作成した。pGPベクター、pE-ampho、とpDON-5 GFP NeoあるいはpDON-5 Luc2 Neoの3種類のベクターをリン酸カルシウム法でパッケージング細胞GT3hiに導入し導入後24時間−48時間の培養上清を回収しレトロウイルス原液とした。タカラバイオ社より購入したレトロネクチンを用いて24穴培養プレートを50 μg/mlの濃度でコーティングしてレトロネクチンコートプレートを作成した。作成したプレートにpDON-5 GFP Neoを用いて作成したレトロウイルス原液を2倍希釈し添加して、室温で4時間静置しウイルス粒子を吸着させたのち1×10
5個のヒトiPS細胞より分化誘導した軟骨前駆細胞あるいは、ヒト初代軟骨細胞を蒔いた。その後3 日間、軟骨細胞誘導条件にて培養し、軟骨細胞に分化させ、微分干渉顕微鏡で観察した。
【0053】
実施例4
図3Aに示された実験の結果を
図4に示す。ヒトiPS細胞から分化の途上にGFP遺伝子を導入後軟骨細胞にさらに分化させた細胞(上)と、GFP遺伝子を導入したヒト初代培養軟骨細胞(下)の、微分干渉顕微鏡(左)、および蛍光顕微鏡像(右)である。前者では、効率よくGFPを導入・発現させられるが、後者ではほとんど発現は認められない。したがって、ヒトiPS由来軟骨細胞に、分化途上でレトロウイルスを感染させる場合では、ヒト初代培養軟骨細胞に感染させた場合と比べ、非常に高い遺伝子導入・発現効率が得られることが、GFPの発現で分かる。
【0054】
実施例5
図3Aと同様に、pDON-5 GFP Neoを用いて作成したレトロウイルス原液をもちいてウイルス粒子を吸着させたのち1×10
5個のヒトiPS細胞より分化誘導した軟骨前駆細胞あるいは、ヒト初代軟骨細胞を蒔いた。その後3 日間、軟骨細胞誘導条件にて培養し、その培養上清を回収しクローンテック社製のReady To-Glow Dual Secreted Repoter Assayキットを用いて培養上清中のルシフェラーゼ活性を測定した。結果を
図5に示す。ヒトにおいてもiPS細胞から胚様体を経て軟骨細胞に分化させる途上で遺伝子導入を行うと、高い効率で遺伝子を発現させられることが、ルシフェラーゼの発現で分かる。
【0055】
実施例6
iPS細胞から分化させた軟骨細胞に軟X線を照射し、細胞増殖に対する線量の影響を見る実験の概略を
図6に示す。マウスiPS細胞を、BMP2と TGFβ存在下に5 日培養し、胚様体を形成せしめた。得られた胚様体に、0から40 Gyの種々の線量の軟X線を照射した後、ゼラチンでコートした培養皿上でBMP2 とインスリンの存在下にさらに2日間培養した。これらの細胞に、ナカライテスクのセルカウントリエイジェントを2時間添加後、OD450を測定した(テトラゾリウム塩アッセイ)。照射前のレフェレンスとして、
図3のように軟X線を照射しない胚様体に、ナカライテスクのセルカウントリエイジェントを2時間添加後、OD450を測定した。
【0056】
実施例7
実施例6の結果を
図7に示す。縦軸の値(細胞のヴァイアビリティ(%))は、以下の計算式から得た。
細胞のヴァイアビリティ(%)=(各群の細胞のOD450値)/(照射前のレフェレンスのOD450値)*100
照射線量3から10Gyで軟X線を照射した細胞は、照射しなかった細胞と比較して、ほぼ遜色ない細胞増殖を照射後も示すが、15Gy以上照射した細胞は、増殖がほぼ完全に抑制されることが分かった。
【0057】
実施例8
iPS細胞から分化させた軟骨細胞に導入したプラスミドベクターの発現に対する、軟X線の線量の影響を見る実験の概略を
図8に示す。マウスiPS細胞を、BMP2と TGFβ存在下に5 日培養し、胚様体を形成せしめた。得られた胚様体を、さらに28日間培養後、pMetLuc2-Control vector(分泌型ルシフェラーゼ遺伝子発現ベクター)を、Microporatorを用いて導入した。これらの細胞に、0から80 Gyの種々の線量の軟X線を照射した後、BMP2 とインスリンの存在下にさらに2 日、または6日間培養した。これらの細胞の培養上清を採取し、ルシフェラーゼアッセイに供した。
【0058】
実施例9
実施例8の結果を
図9に示す。縦軸の値(分泌型ルシフェラーゼ産生量(%))は、以下の計算式から得た。
ルシフェラーゼ産生量(%)=(各群の細胞培養上清のRLU値)/(照射しなかった群(0 Gy)の細胞培養上清のRLU値)*100
照射線量に依存して分泌型ルシフェラーゼの産生量が低下することが分かった。40Gyを超える高い線量を照射した場合には、分泌型ルシフェラーゼの産生量は著明に減少することが分かった。
【0059】
実施例10
移植実験の概略を
図10に示す。マウスiPS細胞を、BMP2とTGFbeta1を含みLIFを含まない培地にて、接着性の低い培養ディッシュ上で5日間培養した。その後、BMP2、インスリンとアスコルビン酸を含む培地にて、接着性のある培養ディッシュ上で20日間培養した。この細胞を3群に分け、EGFP、分泌型Luc、IL-12をそれぞれ有するプラスミドベクターを、電気穿孔法にて導入した。コントロールとして、遺伝子を導入せず電気穿孔法のみを施行した細胞を準備した。翌日、それぞれの細胞をトリプシンではがし、軟X線を40 Gy照射した。その後遠心し、上清を棄て、ペレットを注射器で採取し、C57BL/6マウスの皮下に、一匹あたり500万個ずつになるように注射した。翌日と4日後に、マウスの尾静脈から採血し、血清を調整し、ELISA法とLucアッセイに供した。また、IL-12遺伝子を導入した細胞を移植したマウスの一部は、移植後3日目に移植部位を切開し、注入した細胞を含む組織を摘出後、上記と同様に移植後4日目に採血を行った。
【0060】
実施例11
実施例10の実験に用いたプラスミドベクターを
図11に示す。pMaxGFPはAmaxa社、pMetLuc2はClontech社よりそれぞれ購入した。pGEG.mIL-12とpG.mIL-12は、非特許文献(Asada, H., 他、Mol. Ther. 5 (5): 609-616, 2002)に記載した。
【0061】
実施例12
iPS細胞、および実施例10の培養25日目の細胞より総RNAを採取し、Aggrecanに特異的なプライマーとプローブを用いて、real time RT-PCRを行った。その結果を
図12に示す。iPS細胞と比較し、実施例1の培養25日目の細胞ではAggrecanの発現が上昇しており、軟骨様の細胞に分化したことが分かる。
【0062】
実施例13
実施例10で説明した、培養25日目の細胞の、微分干渉顕微鏡像を
図13左に示す。軟骨細胞様の細胞集団が認められる。またこの細胞に、実施例1のようにpmaxGFPを導入後、1日経った細胞の、蛍光顕微鏡像を
図12右に示す。90%以上の細胞に、GFPの緑色蛍光が認められ、導入した遺伝子が強力に発現していることが分かる。
【0063】
実施例14
IL-12遺伝子の生体内発現。実施例7で説明した、移植後1日目と4日目のマウスより採取した血清中のIL-12 p70の値をR&Dシステムサイエンス社より購入したIL-12 p70 ELISA kitを用いて測定した。その結果を
図14左と右に示す。遺伝子導入を行わなかった群と比較し、pGEG.mIL-12、あるいはpG.mIL-12を導入した群では、血清中IL-12 p70の濃度が著明に上昇したこと、pGEG.mIL-12導入群の方がpG.mIL-12導入群よりもより高い血清IL-12 p70濃度であったこと、pGEG.mIL-12導入細胞を移植後3日目に移植組織を摘出した群では、IL-12 p70の血清濃度が低下することが分かった。
【0064】
実施例15
Lucの生体内発現。実施例10で説明した、移植後1日目と4日目のマウスより採取した血清中のLuc活性を、それぞれ
図14左と右に示す。IL-12遺伝子を導入した群と比較し、pMetLuc2を導入した群では、血清中Lucの活性が著明に上昇したことが分かった。
【0065】
実施例16
日油株式会社製のリピジュア
コート プレートを用いてマウスiPS細胞をマウスリコンビナントTGFβ、ヒトリコンビナントBMP2存在下で浮遊培養をおこない胚様体を作成した。その後、ヒトリコンビナントBMP2、アスコルビン酸、インシュリン存在下で接着培養を15日間行い軟骨前駆細胞を作成した。Platinum レトロウイルス発現システムを用いて作成したマウスIL-12あるいはGFP発現レトロウイルスベクターを軟骨前駆細胞に感染させたのち5日間培養を行った。培養5日目に20Gyの軟X線を照射したのちiPS細胞由来軟骨細胞を5x10
6個を移植し、1日目、7日目、14日目、21日目、28日目に血清を採取して、R&D社製マウスIL-12ELISA kitを用いて血清中のIL-12濃度を測定した。結果を
図17に示す。
【0066】
実施例17
日油株式会社製のリピジュア
コート プレート(A-U96)を用いてマウスリコンビナントTGFβ、ヒトリコンビナントBMP2存在下で、1well あたりマウスiPS細胞1000個を塊として浮遊培養をおこない胚様体を作成した。その後、ヒトリコンビナントBMP2、アスコルビン酸、インシュリン存在下で接着培養を15日間行い軟骨前駆細胞を作成した。Platinum レトロウイルス発現システムを用いて作成したマウスIL-12あるいはGFP発現レトロウイルスベクターを軟骨前駆細胞に感染させたのち5日間培養を行った。培養5日目に20Gyの軟X線を照射したのちiPS細胞由来軟骨細胞を5x10
6個を移植した。移植3日目に移植軟骨塊を切除した群と切除していない群を作成した。移植1日後および移植7日目に両群から血清を採取し、R&D社製マウスIL-12ELISA kitを用いて血清中のIL-12濃度を測定した。結果を
図19に示す。
【0067】
実施例18
日油株式会社製のリピジュア
コート プレート(A-U96)を用いてマウスリコンビナントTGFβ、ヒトリコンビナントBMP2存在下で、1well あたりマウスiPS細胞1000個を塊として浮遊培養をおこない胚様体を作成した。その後、0G、3Gy、5Gy、10Gy、15Gy、20Gy、30Gy、40Gyの軟X線を照射したのち96well plateで、その後、ヒトリコンビナントBMP2、アスコルビン酸、インシュリン存在下で接着培養を2日間培養したのち細胞増殖をナカライ社製の細胞数測定試薬セルカウントリージェントを用いて細胞のヴァイアビリティを検証した。結果を
図21に示す。
【0068】
実施例19
日油株式会社製のリピジュア
コート プレート(A-U96)を用いてヒトiPS細胞2000個/wellをマウスリコンビナントTGFβ、ヒトリコンビナントBMP2存在下で浮遊培養をおこない胚様体を作成した。その後、ヒトリコンビナントBMP2、アスコルビン酸、インシュリン存在下で接着培養を15日間行い軟骨前駆細胞を作成した。Platinum レトロウイルス発現システムを用いて作成した分泌型ルシフェラーゼ(MetLuc2)あるいはGFP発現レトロウイルスベクターを軟骨前駆細胞に感染させたのち5日間培養を行った。培養5日目に20Gyの軟X線を照射した群と照射していない群を作成した。ヒトiPS細胞由来軟骨細胞を5x10
6個を免役不全マウス(SCIDマウス)の皮下に移植した。1日目、7日目、14日目、21日目、28日目に血清を採取して、分泌型ルシフェラーゼを測定した。結果を
図23に示す。
【0069】
実施例20
C57BL/6マウスの皮下にマウスメラノーマB16株を5x10
5個を移植した。7日後に腫瘍の形成を確認し、Platinum レトロウイルス発現システムを用いて作成したマウスIL-12遺伝子発現レトロウイルスベクターを感染させたマウスiPS細胞由来軟骨細胞を5x10
6個を移植した。腫瘍移植後2日毎に腫瘍の長径と短径を測定し、その数値より体積を算出した。算出には「体積=(長径×短径
2)/2」という式を用いた。結果を
図25に示す。
【0070】
実施例21
C57BL/6マウスの皮下にマウスメラノーマB16株を5x10
5個を移植した。7日後に腫瘍の形成を確認し、Platinum レトロウイルス発現システムを用いて作成したマウスIL-12遺伝子発現レトロウイルスベクターを感染させたマウスiPS細胞由来軟骨細胞を5x10
5個を移植した。腫瘍移植後の生存率を検討した。結果を
図26に示す。
【0071】
実施例22
C57BL/6マウスの皮下にマウスメラノーマB16株を5x10
5個を移植した。7日後に腫瘍の形成を確認し、Platinum レトロウイルス発現システムを用いて作成したマウスIL-12遺伝子を挿入したレトロウイルスベクターを感染させたマウスiPS細胞由来の軟骨細胞を5x10
6個を移植した。2日後に脾細胞を採取しエフェクター細胞とした。Cr
51で標識したYac1細胞をターゲット細胞として100対1の割合で混合し37℃ 5%CO2の条件で4時間培養した。培養上清を回収しγカウンターでγ線量を測定し、その数値から腫瘍特異的殺細胞効果であるCTL細胞活性を算出した。結果を
図29に示す。
【0072】
実施例23
C57BL/6マウスの皮下にマウスメラノーマB16株を5x10
5個を移植した。7日後に腫瘍の形成を確認し、Platinum レトロウイルス発現システムを用いて作成したマウスIL-12遺伝子を挿入したレトロウイルスベクターを感染させたマウスiPS細胞由来の軟骨細胞を5x10
5個を移植した。16日後に脾細胞を採取し、マイトマイシン処理したB16細胞と2ng/mlのマウス・リコンビナントIL-2存在下で3日間、共培養を行いエフェクター細胞とした。Cr
51で標識したB16細胞をターゲット細胞として100対1の割合で混合し37℃ 5%CO2の条件で4時間培養した。培養上清を回収しγカウンターでγ線量を測定し、その数値から腫瘍非特異的殺細胞効果であるNK細胞活性を算出した。結果を
図32に示す。
【0073】
実施例24
Cell BioLabs社製のパッケージング細胞platGPにヒトSox9遺伝子、マウスKlf4遺伝子、マウスcMyc遺伝子、オワンクラゲ由来のGFP遺伝子をCell BioLabs社製pMXs puro vector組み込んだプラスミドベクターと同じくCell BioLabs社製pCMV.VSVをRosh社製Fugene6を用いて共導入した。導入2日後に培養上清を回収し、終濃度4μg/mlのポリブレンを添加したのちマウス胎仔繊維芽細胞に感染させた。感染9日目にアルシアンブルー染色を行った。結果を
図34に示す。
【0074】
実施例25
platGPにマウスIL-12遺伝子、ホタル由来の分泌型ルシフェラーゼ(MetLuc2)遺伝子、pMXs puro vector組み込んだプラスミドベクターとpCMV.VSVとFugene6を用いて共導入しマウスIL-12、MetLuc2、GFP 遺伝子を組み込んだレトロウイルスベクターを作成した。作成したレトロウイルスベクターを10cm培養皿に前日に5×10
5/Dishの細胞数で蒔き直した分化誘導中の脱分化軟骨細胞に、最初の遺伝子導入後12日目に感染させた。2回目感染の2日後にGFP遺伝子を導入した細胞について蛍光観察とアルシアンブルー染色を行った。結果を
図35に示す。
【0075】
実施例26
2回目感染後13日目の細胞よりトータルRNAをFujiFilm社製のQuickGene RNA培養細胞キットを用いて回収したのちアプライドバイオシステム社製のHigh Capacity RNA to cDNAキットを用いてcDNAを合成した。その後、軟骨細胞特異的マーカー遺伝子であるアグリカンとタイプIIコラーゲン遺伝子をターゲットとするTaqManプローブ・プライマーセットを用いて、リアルタイムRT-PCRを行った。結果を
図37に示す。
【0076】
実施例27
マウスIL-12を組み込んだレトロウイルスベクターを作成した。作成したレトロウイルスベクターを10cm培養皿に前日に5×10
5/Dishの細胞数で蒔き直した分化誘導中の脱分化軟骨細胞に、hSOX9、mKlf4、mMyc遺伝子を組み込んだレトロウイルスベクターを感染後12日目に感染させた。それから5日間、10%ウシ胎仔血清を含むdMEMで培養したのち、24wellプレートに3.3x10
4の1 wellあたり細胞数で蒔いた。培地の交換を1日目、3日目、5日目に行った。細胞に対して20Gyの軟X線を照射した群と照射しない群を作成した。照射後2日目、4日目、6日目に培養上清を回収して、ELISAによるマウスIL-12の測定を行った。結果を
図39に示す。
【0077】
実施例28
分泌型ルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだレトロウイルスベクターを作成した。作成したレトロウイルスベクターを10cm培養皿に前日に5×10
5/Dishの細胞数で蒔き直した分化誘導中の脱分化軟骨細胞に、hSOX9、mKlf4、mMyc遺伝子を組み込んだレトロウイルスベクターを感染後12日目に感染させた。それから5日間、10%ウシ胎仔血清を含むdMEMで培養したのち、24wellプレートに3.3x10
4の1 wellあたり細胞数で蒔いた。培地の交換を1日目、3日目、5日目に行った。細胞に対して20Gyの軟X線を照射した群と照射しない群を作成した。照射後2日目、4日目、6日目に培養上清を回収して、ルシフェラーゼアッセイを行った。結果を
図40に示す。
【0078】
実施例29
分泌型ルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだレトロウイルスベクターを作成した。作成したレトロウイルスベクターを10cm培養皿に前日に5×10
5/Dishの細胞数で蒔き直した分化誘導中の脱分化軟骨細胞に、hSOX9、mKlf4、mMyc遺伝子を組み込んだレトロウイルスベクターを感染後12日目に感染させた。それから5日間、10%ウシ胎仔血清を含むdMEMで培養したのち、2x10
6細胞をC57BL/6マウス皮下に移植して2日後に血清を回収して、ルシフェラーゼアッセイを行った。結果を
図42に示す。
【0079】
実施例30
日油株式会社製のリピジュア
コート プレート(A-U96)を用いてヒトiPS細胞2000個/wellをマウスリコンビナントTGFβ、ヒトリコンビナントBMP2存在下で浮遊培養をおこない胚様体を作成した。その後、ヒトリコンビナントBMP2、アスコルビン酸、インシュリン存在下で接着培養を15日間行い軟骨前駆細胞を作成した。Platinum レトロウイルス発現システムを用いて作成したマウスIL-21発現レトロウイルスベクターを軟骨前駆細胞に感染させたのち培養2日目に20Gyの軟X線を照射した群と照射していない群を作成した。照射後24時間培養し上清を回収した。e-Bioscience社製mIL-21FlowCytemix Simplex Kitを用いて染色したのち、ベクトン・ディッキンソン社製のフローサイトメーターFacsCaliburを用いて上清中のmIL-21のタンパク濃度を測定した。結果を
図44に示す。
【0080】
実施例31
マウスの脾臓細胞を10%ウシ胎仔血清を添加したRPMI1640 培地に縣濁後、Sino Biological Inc.社製 Recombinant Influenza H1N1 HA (A/Puerto Rico/8/1934)を添加して5日間培養した。脾臓細胞から総 RNAを抽出し逆転写反応を行ってcDNAを合成した。免疫グロブリンの重鎖のcDNA配列を、VHプライマー(5’-gaggtgaagctggtggagtc)とJHプライアー(5’-tgcagagacagtgaccagag)を用いてPCRを行って増幅し、また軽鎖のcDNA配列を、Vκプライマー(5’-gacattgtgatgacacagtc)とJκプライアー(5’-tttcagctccagcttggtcc)を用いてPCRを行って増幅した。得られたフラグメントをリンカーでつないでNew England Biolabs社製のベクターに挿入し、大腸菌HB101を形質転換した。得られたコロニーのうち96クローンをピックアップして培養した。16時間培養したのち集菌した。
【0081】
これら96クローンの形質転換株に対して、以下のスクリーニングを行った。
Recombinant Influenza H1N1 HA (A/Puerto Rico/8/1934)を1μg/mlの濃度で96ウェルプレートに4℃ オーバーナイトでコーティングした。PBSで洗浄後、ナカライテスク社製のBrockingOneを100μl/wellを添加して室温で60分間ブロッキングを行った。その後、PBSで洗浄し、そこに各菌の抽出液を添加して37℃60分静置して反応させた。PBSで洗浄後New England Biolabs社製のHRP conjugated anti MBP(×2000)を37℃ 60分静置して反応させた。PBSで洗浄後R&Dシステムサイエンス社製の発色試薬を反応させたのち、H2SO4を添加して反応を停止した。プレートリーダーを用いて吸光度を測定した。
もっとも吸光度の高かった1クローンを、antiHA/PR8として以後の実験に用いた。
【0082】
上記で得られたantiHA/PR8の菌体よりキアゲン社製 エンドフリーMaxi Prepキットを用いてプラスミドを採取した。得られたプラスミドのMaltose結合タンパク質遺伝子の上流にpreprotrypsin (PPT) leader sequence配列を挿入し、大腸菌HB101を形質転換した。培養後、プラスミドを回収し、制限酵素処理で構築を確認した。PPTの上流のセンスプライマーと、抗体遺伝子の下流のアンチセンスプライマーを用い、東洋紡社製の酵素、KODplusNeoを用いて、分泌シグナル・Maltose結合タンパク質遺伝子・抗体遺伝子配列部位をPCRで増幅した。そのPCR産物をレトロウイルスベクタープラスミドpMXspuroに挿入し、antiHA/PR8レトロウイルスベクタープラスミドを構築した。
【0083】
このantiHA/PR8レトロウイルスベクタープラスミドから、以下のようにレトロウイルスを作成した。
【0084】
Cell BioLabs社製のパッケージング細胞platGPに、antiHA/PR8レトロウイルスベクタープラスミドと、pCMV.VSVをRosh社製Fugene6を共導入した。導入2日後に培養上清を回収し、終濃度4μg/mlのポリブレンを添加して、以下の感染実験に用いた。
【0085】
日油株式会社製のリピジュア
コート プレート(A-U96)を用いてヒトiPS細胞2000個/wellをマウスリコンビナントTGFβ、ヒトリコンビナントBMP2存在下で浮遊培養をおこない胚様体を作成した。その後、ヒトリコンビナントBMP2、アスコルビン酸、インシュリン存在下で接着培養を15日間行い軟骨前駆細胞を作成した。
【0086】
上記で得られたantiHA/PR8発現レトロウイルスベクターを軟骨前駆細胞に感染させたのち2日間培養を行った。培養1日目に20Gyの軟X線を照射した群と照射していない群を作成し、その24時間後の培養上清を回収した。
【0087】
培養上清中のantiHA/PR8抗体を、以下の方法で測定した。
【0088】
Recombinant Influenza H1N1 HA(PR8)を1μg/mlの濃度で96well plateに4℃ オーバーナイトでコーティングした。PBSで洗浄後、ナカライテスク社製のBrockingOneを100μl/wellを添加して室温で60分間ブロッキングを行った。その後、PBSで洗浄し、そこに回収した培養上清を添加して37℃ 60分静置して反応させた。PBSで洗浄後New England Biolabs社製のHRP conjugated anti MBP(×2000)を37℃ 60分静置して反応させた。PBSで洗浄後R&Dシステムサイエンス社製の発色試薬を反応させたのち、H2SO4を添加して反応を停止した。プレートリーダーを用いて吸光度を測定して検討した。
結果を
図46に示す。
【0089】
実施例32
日油株式会社製のリピジュア
コート プレートを用いてマウスiPS細胞をLIF非存在下で浮遊培養をおこない胚様体を作成した。その後、レチノイン酸存在下で接着培養を10日間行い筋芽細胞の前駆細胞を誘導した。Platinum レトロウイルス発現システムを用いて作成したGFP発現レトロウイルスベクターを筋芽細胞の前駆細胞に感染させたのち2日間培養し、筋芽細胞を分化誘導した。筋芽細胞におけるGFPの発現を蛍光顕微鏡で確認した。これにより、iPS細胞から分化誘導した軟骨細胞以外の体細胞も本発明で用いられることがわかる。
【0090】
実施例33
日油株式会社製のリピジュア
コート プレート(A-U96)を用いてヒトiPS細胞をLIF非存在下で浮遊培養をおこない胚様体を作成した。その後、レチノイン酸存在下で接着培養を10日間行い筋芽細胞の前駆細胞を誘導した。Platinum レトロウイルス発現システムを用いて作成したGFP発現レトロウイルスベクターを筋芽細胞の前駆細胞に感染させたのち2日間培養し、筋芽細胞を分化誘導した。筋芽細胞におけるGFPの発現を蛍光顕微鏡で確認した。これにより、iPS細胞から分化誘導した軟骨細胞以外の体細胞も本発明で用いられることがわかる。
【0091】
実施例34
日油株式会社製のリピジュア
コート プレート(A-U96)を用いてヒトiPS細胞2000個/wellをマウスリコンビナントTGFβ、ヒトリコンビナントBMP2存在下で浮遊培養をおこない胚様体を作成した。その後、ヒトリコンビナントBMP2、アスコルビン酸、インシュリン存在下で接着培養を15日間行い軟骨前駆細胞を作成した。Platinum レトロウイルス発現システムを用いて作成した分泌型ルシフェラーゼ(MetLuc2)あるいはmIL-12発現レトロウイルスベクターを軟骨前駆細胞に感染させたのち5日間培養を行った。培養5日目に20Gyの軟X線を照射した。ヒトiPS細胞由来軟骨細胞を5x10
6個を免役不全マウス(SCIDマウス)の皮下に移植した。移植後90日目に腫瘍が形成されているか否かを調べた。
結果を
図47に示す。