(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963685
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】タンカーの油槽
(51)【国際特許分類】
B63B 3/34 20060101AFI20160721BHJP
B63B 25/08 20060101ALI20160721BHJP
B63B 59/00 20060101ALI20160721BHJP
B63B 3/20 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
B63B3/34
B63B25/08 Z
B63B59/00 C
B63B3/20
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-568(P2013-568)
(22)【出願日】2013年1月7日
(65)【公開番号】特開2014-131894(P2014-131894A)
(43)【公開日】2014年7月17日
【審査請求日】2015年11月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000232818
【氏名又は名称】日本郵船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100113918
【弁理士】
【氏名又は名称】亀松 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100140121
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 朝幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 謙治
(72)【発明者】
【氏名】金子 道郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 実
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀彦
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−270196(JP,A)
【文献】
特開平08−058676(JP,A)
【文献】
特開2004−314752(JP,A)
【文献】
特開平08−295286(JP,A)
【文献】
特公平03−033062(JP,B2)
【文献】
中国実用新案第201737136(CN,U)
【文献】
中国特許出願公開第102372068(CN,A)
【文献】
実開昭58−079489(JP,U)
【文献】
特開2013−018320(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101774425(CN,A)
【文献】
中国実用新案第201670342(CN,U)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0107232(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 3/00 − 3/70
B63B 25/00 − 25/28
B63B 59/00 − 59/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と側板とによって形成されると共に隔壁によって複数の槽に分割される油タンカーの油槽において、
前記側板の内面及び前記隔壁の表面のうちの少なくとも一つの面に、互いに間隔をあけて鉛直方向に並んで配置され、水平方向に延びる複数の防撓材を具備し、
前記防撓材は、それぞれ平板部と該平板部を貫通するように形成されたドレンホールとを具備し、鉛直方向上部から平面視したときに、各防撓材に設けられたドレンホールが、他の部材と重なるように配置され、前記他の部材が、一つの防撓材のドレンホールの下方に設けられた流体衝突部材であることを特徴とする、油タンカーの油槽。
【請求項2】
前記鉛直方向に並んで配置された防撓材に設けられたドレンホールは鉛直方向に整列して配置され、前記流体衝突部材はこれら鉛直方向に整列したドレンホールに平面視において重なるように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の油タンカーの油槽。
【請求項3】
前記流体衝突部材は、前記底板からの鉛直方向の距離が15m以下の位置に配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の油タンカーの油槽。
【請求項4】
前記流体衝突部材は、前記底板からの鉛直方向の距離が2m以下の位置に配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の油タンカーの油槽。
【請求項5】
前記流体衝突部材は、鉛直方向に複数並んで配置された防撓材のうち最も下方に配置された防撓材よりも下方に配置されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の油タンカーの油槽。
【請求項6】
前記流体衝突部材は、該流体衝突部材に隣り合って配置される前記防撓材と同一の外形を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の油タンカーの油槽。
【請求項7】
底板と側板とによって形成されると共に隔壁によって複数の槽に分割される油タンカーの油槽において、
前記側板の内面及び前記隔壁の表面のうちの少なくとも一つの面に、互いに間隔をあけて鉛直方向に並んで配置され、水平方向に延びる複数の防撓材を具備し、
前記防撓材は、それぞれ平板部と該平板部を貫通するように形成されたドレンホールとを具備し、鉛直方向上部から平面視したときに、各防撓材に設けられたドレンホールが、他の部材と重なるように配置され、
前記他の部材が他の防撓材であり、
前記防撓材は、鉛直方向上部から平面視したときに、各防撓材に設けられたドレンホールが前記他の防撓材の平板部と重なるように配置され、
前記鉛直方向に並んで配置された複数の防撓材のうち前記他の防撓材を除いた複数の防撓材は、ドレンホールが鉛直方向に整列して配置され、前記他の防撓材の平板部は、鉛直方向上部からの平面視において前記鉛直方向に整列したドレンホールに重なるように配置されることを特徴とする、油タンカーの油槽。
【請求項8】
前記他の防撓材は、前記底板からの鉛直方向の距離が15m以下の位置に配置されることを特徴とする、請求項7に記載の油タンカーの油槽。
【請求項9】
前記他の防撓材は、前記底板からの鉛直方向の距離が2m以下の位置に配置されることを特徴とする、請求項7に記載の油タンカーの油槽。
【請求項10】
前記他の防撓材は、前記鉛直方向に並んで配置された複数の防撓材のうち最も下方に配置された防撓材であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の油タンカーの油槽。
【請求項11】
前記互いに間隔を空けて鉛直方向に複数並んで配置された防撓材のうち、底板からの鉛直方向の距離が15m以下の位置に配置された防撓材の少なくとも一つは、鉛直方向に隣り合って配置された防撓材のドレンホールが平面視において互いに重ならないように配置されることを特徴とする、請求項7に記載の油タンカーの油槽。
【請求項12】
前記互いに間隔を空けて鉛直方向に複数並んで配置された防撓材のうち、底板からの鉛直方向の距離が2m以下の位置に配置された防撓材の少なくとも一つは、鉛直方向に隣り合って配置された防撓材のドレンホールが平面視において互いに重ならないように配置されることを特徴とする、請求項7に記載の油タンカーの油槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐食性に優れるタンカーの油槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原油などを輸送するタンカーでは、タンカーの船底外板又は船側外板が破損した際に、タンカーに積載する原油が船外に流出することを防止するために、二重船殻構造が義務付けられている。
【0003】
図1は、二重船殻構造を有するタンカーの構成を概略的に示す縦断面図である。すなわち、
図1は、タンカーの前後方向(長さ方向)に対して垂直な方向にタンカーを切った断面図である。
図1からわかるように、タンカー1の船底は船底外板10及び船底内板11によって構成され、船側は船側外板12及び船側内板13によって構成されている。したがって、タンカー1は、船底外板10及び船側外板12から構成される外板と、船底内板11及び船側内板13から構成される内板とによる二重船殻構造を有している。
【0004】
船側外板12と船側内板13の上端には上甲板14が設けられている。船底外板10と船底内板11との間及び船側外板12と船側内板13との間に形成された空間には、バラストタンク20が形成されている。一方、船底内板11、船側内板13及び上甲板14によって囲まれた空間には、油槽21が形成されている。
【0005】
タンカー1の油槽21には、例えば、タンカー1の前後方向に延びる二つの縦通隔壁30が設けられている。油槽21は、これら縦通隔壁30により一つのセンタータンク31と、二つのウイングタンク32とに分割されている。加えて、油槽21には、縦通隔壁30の表面及び船側内板13の内面からタンカー1の前後方向に対して垂直な方向に突出する隔壁横桁41が設けられている(
図2参照)。
【0006】
加えて、船底内板11及び船側内板13のバラストタンク20側の表面には、タンカー1の前後方向に延びる平板状の複数の防撓材40が所定の間隔で設けられている。また、縦通隔壁30の、例えばセンタータンク31側の表面にも、船側内板13と同様に複数の防撓材40が設けられている。これら防撓材40は、船底内板11及び船側内板13の剛性を高めるための補強材として用いられる。
【0007】
このように構成された二重船殻構造のタンカー1においては、船底外板10と船底内板11との間及び船側外板12と船側内板13との間に形成されるバラストタンク20内に海水が積載される。加えて、船底内板11及び船側内板13により形成される油槽21内に原油が積載される。したがって、船底内板11及び船側内板13を構成する鋼板は、海水及び原油による腐食環境下に曝される。
【0008】
このため、船底内板11及び船側内板13には数mm/年程度の比較的腐食速度の速い局部腐食が発生することが知られている。この腐食への対策として、一般に、船底内板11及び船側内板13には防食塗装が施されている。更に、再塗装等のメンテナンスの頻度を少なくするために、船底内板11及び船側内板13を耐食性の高い特殊鋼板により形成することが行われている(例えば、特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−214236号公報
【特許文献2】特開2004−204344号公報
【特許文献3】特開2005−23421号公報
【特許文献4】特開2007−270196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、
図1に示したように、油槽21内に設けられた縦通隔壁30の表面上には、タンカー1の前後方向に延びる平板上の複数の防撓材40が設けられている。
図2は、このように縦通隔壁30に設けられた防撓材40近傍の構成を概略的に示す斜視断面図である。
図2では、鉛直方向に並んだ互いに平行な4つの防撓材40のみを示しているが、一般的には、縦通隔壁30にはより多くの防撓材40が鉛直方向に並んで互いに平行に配置される。
【0011】
図2からわかるように、防撓材40は縦通隔壁30の表面からほぼ水平方向に延びる。このため、油槽21内に貯留されていた原油等を外部に放出するときであっても、防撓材40上、特に防撓材40と縦通隔壁30との接合部近傍には、原油やスラッジが残ってしまう場合がある。そこで、このような原油等の残留を抑制するために、防撓材40にドレンホール42aを設けると共に、防撓材40をドレンホール42aに向けて僅かに傾斜させることが考えられる。これにより、油槽21内に貯留されていた原油等を外部に放出するときには、防撓材40上の原油等は防撓材40の傾斜に沿ってドレンホール42aに向かって流れると共に、ドレンホール42aから流下することになるため、防撓材40上に原油等が残留してしまうことが抑制される。
【0012】
加えて、防撓材40にドレンホール42aを設ける際には、
図2に示したように、鉛直方向に複数並べて平行に配置された防撓材40についてドレンホール42aを同一の鉛直線上に配置することが考えられる。これにより、上方の防撓材40のドレンホール42aから流下した原油等は、他の防撓材40に衝突することなく下方まで流下することになる。したがって、各防撓材40上に原油等が残留してしまうことをより確実に抑制することができる。
【0013】
ところで、本発明者らは、防食塗装が施された塗装鋼板や、耐食性の高い特殊鋼板(耐食鋼板)を用いて
図2に示したように構成されたタンカーの油槽について、局部腐食の発生状況について鋭意調査を行った。その結果、局部腐食は船底内板の油槽側の面であって油槽内を複数の区画に分割する縦通隔壁の近傍に集中して発生していることを発見した。
【0014】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的はタンカーの油槽内に局所的に生じる腐食を抑制することが可能な油槽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、船底内板の油槽側の面であって油槽内を複数の区画に分割する縦通隔壁の近傍に集中して発生している局部腐食について更に調査を行った。その結果、局部腐食の発生箇所は、縦通隔壁の補強材として設けられた防撓材に形成されたドレンホールの真下となる位置とほぼ一致し、ドレンホールの真下となる位置以外の箇所では局部腐食がほとんど発生していないことを発見した。
【0016】
そして、本発明者らは、ドレンホールから流下する原油が船底内板に直接衝突することが油槽内に発生する局部腐食の原因であることを突き止めた。更に、本発明者らは、油槽内に衝突防止構造を設け、タンカーの油槽における腐食、即ち、ドレンホールからの原油の流下に起因して発生する局部腐食を抑制することに成功した。
【0017】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)底板と側板とによって形成されると共に隔壁によって複数の槽に分割される油タンカーの油槽において、前記側板の内面及び前記隔壁の表面のうちの少なくとも一つの面に、互いに間隔をあけて鉛直方向に並んで配置され、水平方向に延びる複数の防撓材を具備し、前記防撓材は、それぞれ平板部と該平板部を貫通するように形成されたドレンホールとを具備し、鉛直方向上部から平面視したときに、各防撓材に設けられたドレンホールが他の部材と重なるように配置されることを特徴とする、油タンカーの油槽。
【0018】
(2)前記他の部材が、一つの防撓材のドレンホールの下方に設けられた流体衝突部材であることを特徴とする、(1)に記載の油タンカーの油槽。
【0019】
(3)前記鉛直方向に並んで配置された防撓材に設けられたドレンホールは鉛直方向に整列して配置され、前記流体衝突部材はこれら鉛直方向に整列したドレンホールに平面視において重なるように配置されることを特徴とする、(2)に記載の油タンカーの油槽。
【0020】
(4)前記流体衝突部材は、前記底板からの鉛直方向の距離が15m以下の位置に配置されることを特徴とする、(2)又は(3)に記載の油タンカーの油槽。
【0021】
(5)前記流体衝突部材は、前記底板からの鉛直方向の距離が2m以下の位置に配置されることを特徴とする、(2)又は(3)に記載の油タンカーの油槽。
【0022】
(6)前記流体衝突部材は、鉛直方向に複数並んで配置された防撓材のうち最も下方に配置された防撓材よりも下方に配置されることを特徴とする、(2)〜(5)のいずれか1つに記載の油タンカーの油槽。
【0023】
(7)前記流体衝突部材は、該流体衝突部材に隣り合って配置される前記防撓材と同一の外形を有することを特徴とする、(2)〜(6)のいずれか1つに記載の油タンカーの油槽。
【0024】
(8)前記他の部材が他の防撓材であり、前記防撓材は、鉛直方向上部から平面視したときに、各防撓材に設けられたドレンホールが前記他の防撓材の平板部と重なるように配置されることを特徴とする、(1)に記載の油タンカーの油槽。
【0025】
(9)前記鉛直方向に並んで配置された複数の防撓材のうち前記他の防撓材を除いた複数の防撓材は、ドレンホールが鉛直方向に整列して配置され、前記他の防撓材の平板部は、鉛直方向上部からの平面視において前記鉛直方向に整列したドレンホールに重なるように配置されることを特徴とする、(8)に記載の油タンカーの油槽。
【0026】
(10)前記他の防撓材は、前記底板からの鉛直方向の距離が15m以下の位置に配置されることを特徴とする、(8)又は(9)に記載の油タンカーの油槽。
【0027】
(11)前記他の防撓材は、前記底板からの鉛直方向の距離が2m以下の位置に配置されることを特徴とする、(8)又は(9)に記載の油タンカーの油槽。
【0028】
(12)前記残りの一つの防撓材は、前記鉛直方向に並んで配置された複数の防撓材のうち最も下方に配置された防撓材であることを特徴とする、(8)〜(11)のいずれか1つに記載の油タンカーの油槽。
【0029】
(13)前記互いに間隔を空けて鉛直方向に複数並んで配置された防撓材のうち、底板からの鉛直方向の距離が15m以下の位置に配置された防撓材の少なくとも一つは、鉛直方向に隣り合って配置された防撓材のドレンホールが平面視において互いに重ならないように配置されることを特徴とする、(8)に記載の油タンカーの油槽。
【0030】
(14)前記互いに間隔を空けて鉛直方向に複数並んで配置された防撓材のうち、底板からの鉛直方向の距離が2m以下の位置に配置された防撓材の少なくとも一つは、鉛直方向に隣り合って配置された防撓材のドレンホールが平面視において互いに重ならないように配置されることを特徴とする、(8)に記載の油タンカーの油槽。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、タンカーの油槽内に局所的に生じる腐食を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】二重船殻構造を有するタンカーの概略構成を示す縦断面図である。
【
図2】縦通隔壁に設けられた防撓材近傍の構成を概略的に示す斜視断面図である。
【
図3】本発明の第一実施形態における防撓材近傍の構成を概略的に示す斜視断面図である。
【
図4】
図3の線IV−IVから見た断面平面図であり、防撓材近傍の構成を概略的に示す図である。
【
図5】第一実施形態の第一変更例における防撓材近傍の構成を概略的に示す斜視断面図である。
【
図6】船底から連続して存在するドレンホールの高さと局部腐食の発生確率との関係を示す図である。
【
図7】第一実施形態の第二変更例における防撓材近傍の構成を概略的に示す斜視断面図である。
【
図8】第一実施形態の第三変更例における防撓材近傍の構成を概略的に示す斜視断面図である。
【
図9】本発明の第二実施形態における防撓材近傍の構成を概略的に示す斜視断面図である。
【
図10】第二実施形態の変更例における防撓材近傍の構成を概略的に示す斜視断面図である。
【
図11】本発明の第三実施形態における防撓材近傍の構成を概略的に示す斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明に係る油槽を有するタンカー1は、基本的に、
図1に示したタンカーと同様な構成を有する。
【0034】
すなわち、タンカー1は、船底外板10及び船側外板12を有する外板と、船底内板11及び船側内板13を有する内板とを具備する二重船殻構造を有している。船側外板12及び船側内板13の上端には上甲板14が設けられている。外板(船底外板10及び船側外板12)と内板(船底内板11及び船側内板13)との間にはバラストタンク20が形成されている。また、船底内板11、船側内板13及び上甲板14で囲まれた空間には、油槽21が形成されている。なお、
図1に示した例では、タンカー1は二重船殻構造を有している。しかしながら、タンカー1は、油槽21を形成する底板と側板を有していれば、三重船殻構造等、別の構造を有していてもよい。
【0035】
本発明に係る油槽21においても、
図1に示した油槽と同様に、タンカー1の前後方向に延びる、例えば二つの縦通隔壁30が設けられている。油槽21はこの縦通隔壁30によりセンタータンク31とウイングタンク32とに分割されている。
【0036】
また、本発明に係る油槽21においても、
図1に示した油槽と同様に、船底内板11及び船側内板13のバラストタンク20側の表面には、船底内板11及び船側内板13の剛性を高めるための補強材として、平板状の複数の防撓材40が設けられている。防撓材40はタンカー1の前後方向に水平に延びる(なお、現実的には製造誤差等により防撓材40は完全に水平にはならない場合があり、よって現実的には完全な水平に対して±10°又は±5°程度で延びるのもの含む)。船底内板11に設けられた防撓材40は、タンカー1の前後方向にほぼ鉛直に延びると共に、横方向(タンカー1の前後方向に対して垂直な方向)に所定の間隔で配置される。船側内板13に設けられた防撓材40は、タンカー1の前後方向にほぼ水平に延びると共に、上下方向に所定の間隔で配置されている。また、縦通隔壁30の、例えばセンタータンク31側の表面にも、船側内板13と同様に複数の防撓材40が設けられている。
【0037】
なお、
図1に示した例では、防撓材40は、船底内板11及び船側内板13のバラストタンク20側の表面上、及び縦通隔壁30のセンタータンク31側の表面上に設けられている。しかしながら、防撓材40の設けられる箇所はこれらの箇所に限られるものではなく、例えば、船底内板11及び船側内板13の油槽21側の表面上や、縦通隔壁30のウイングタンク32側の表面上に設けられてもよい。
【0038】
図3は縦通隔壁30に設けられた防撓材40近傍の構成を概略的に示す斜視断面図である。
図3に示すように、縦通隔壁30には、タンカー1の前後方向とは垂直な方向にほぼ鉛直に延びる隔壁横桁41が複数設けられている。各防撓材40は、平板部42bと、平板部42bを貫通するように形成されたドレンホール42aとを具備する。各防撓材40の平板部42bはドレンホール42aに向けて僅かに傾斜せしめられる。また、鉛直方向に複数並べて平行に配置された防撓材40についてはそのドレンホール42aが同一の鉛直線上に設けられている。換言すると、鉛直方向に複数並んで平行に配置された防撓材40に設けられたドレンホール42aは、互いに鉛直方向に整列するように、すなわち鉛直方向上部から平面視したときにこれらドレンホール42aの位置が一致するように設けられている。
【0039】
加えて、本発明の第一実施形態の油槽21では、
図3に示したように、鉛直方向に複数並んで配置された防撓材40のうち、最も下方に配置された防撓材40のドレンホール42aの真下となる位置に、平板状の流体衝突部材43が設けられている。本実施形態では、流体衝突部材43は縦通隔壁30に溶接により結合されている。流体衝突部材43は、
図4に示すように、ドレンホール42aの径よりも外形が大きくなるように形成されている。このため、流体衝突部材43は、平面視においてドレンホール42a全体が流体衝突部材43と重なるように、すなわち平面視においてドレンホール42a全体が流体衝突部材43の内部に位置するように配置されている。
【0040】
このように構成された本実施形態の油槽21によれば、例えば油槽21から原油等を放出する場合、ドレンホール42aから流下した原油等は、
図3に矢印で示したように、流体衝突部材43に一旦衝突して流体衝突部材43上で分散する。分散した原油等は流体衝突部材43の側部から流下し、その後、船底内板11に到達する。したがって、上方に設けられた防撓材40のドレンホール42aから原油等が長距離を流下することによって、原油等が高い運動エネルギ(或いは速度)を有したとしても、その原油等は船底内板11には直接衝突せずに、流体衝突部材43に衝突する。このため高い運動エネルギは流体衝突部材43によって吸収され、原油等が船底内板11に到達するときには、その運動エネルギはかなり低いものとされている。この結果、ドレンホール42aからの原油等の流下に起因して発生する船底内板11の局部腐食を抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態では、流体衝突部材43は、その縦通隔壁30側とは反対側の端部が、平面視において防撓材40の端部よりも縦通隔壁30側に位置するように形成されている。このように形成されることで、油槽21への原油等の積み降ろしの際に流体衝突部材43が油槽21内の原油の流れに外乱を与えてしまうことが抑制される。また、上述のタンカー1を構成する部材は、いずれも塗装鋼板や耐食鋼板などの船舶用鋼板が用いられる。
【0042】
なお、流体衝突部材43を用いてドレンホール42aから流下する原油等が船底内板11の上面に直接衝突することを防止するにあたっては、例えば
図3に破線で示すようにドレンホール42aの真下となる位置において、船底内板11上に流体衝突部材43aを犠牲材として直接結合することも考えられる。ただし、現状は船級規則により船底内板11の減肉量が規定値以内に収まっているかを定期的に確認することが義務付けられており、犠牲材としての流体衝突部材43aが板厚測定の際に障害となることがある。そのため現状の船級規則の下では実施を制限されるものの、流体衝突部材43aを犠牲材として船底内板11に直接結合する態様は、本発明の技術的範囲に属するものである。
【0043】
また、ドレンホール42aの真下にあたる位置以外では局部腐食がほとんど認められないという発明者らの調査結果を勘案すると、防撓材40の縦通隔壁30側とは反対側の端部から流下する原油等の流れF(
図2参照)によっては、局部腐食は生じないといえる。したがって、上記実施形態においては、各防撓材40はドレンホール42aに向けて傾斜するようにしているが、必ずしも防撓材40全体がドレンホール42aに向けて傾斜していなくてもよい。例えば、防撓材40は、防撓材40のうちの縦通隔壁30側とは反対側の端部近傍においては、縦通隔壁30側とは反対側の端部に向けて傾斜するように構成されてもよい。
【0044】
次に、
図5及び
図6を参照して、本発明の第一実施形態の第一変更例について説明する。上記第一実施形態では、流体衝突部材43が鉛直方向に複数並んで配置された防撓材40のうち、最も下方に配置された防撓材40のドレンホール42aの下方に配置されていた。これに対して、
図5からわかるように、本変形例では流体衝突部材44は最も下方に配置された防撓材40と下から2番目の防撓材40との間に配置されている。また、流体衝突部材44は、下から2番目の防撓材40(すなわち、流体衝突部材44のすぐ上方に配置された防撓材40)のドレンホール42a全体が平面視において流体衝突部材44と重なるように配置されている。換言すると、流体衝突部材44は、下から2番目の防撓材40のドレンホール42a全体が平面視において流体衝突部材44の内部に位置するように配置されている。
【0045】
なお、
図5に示した例では、流体衝突部材44は、下から2番目の防撓材40のすぐ下方に配置されているが、下から3番目、4番目の防撓材40等、他の防撓材40のすぐ下に配置されてもよい。ただし、流体衝突部材44は、船底内板11からの鉛直方向の距離が15m以下、好ましくは8m以下、より好ましくは2m以下の位置に配置される。
【0046】
図6は、底板から連続して同一鉛直線上に存在するドレンホールの高さと局部腐食の発生確率との関係を示した図である。換言すると、
図6は、底板から連続して同一直線上にドレンホールが位置する防撓材40のうち最も上方に位置する防撓材40の高さと局部腐食の発生確率との関係を表している。図からわかるように、底板から連続して存在するドレンホールの高さが15mよりも高いときには局部腐食の発生確率は100%となっている。これに対して、底板から連続して存在するドレンホールの高さが15m以下になると、局部腐食の発生率は低下する。
【0047】
図6からわかるように、このうち底板から連続して存在するドレンホールの高さが10m程度になると、局部腐食の発生確率は80%程度、8m程度になると50%、7m程度になると40%、5m程度になると25%、4m程度で20%、3m程度で10%となる。そして、ドレンホールの高さが2m以下になると局部腐食の発生確率はほぼ0%となる。したがって、流体衝突部材44を配置する位置を、船底内板11からの鉛直方向の距離が15m以下の位置とすると、流体衝突部材44を設けない場合に比べて局部腐食の発生確率を低減することができる。流体衝突部材44を配置する位置を、船底内板11からの鉛直方向の距離が8m以下の位置とすると、流体衝突部材44を設けない場合に比べて局部腐食の発生確率を半分以下に低減することができる。流体衝突部材44を配置する位置を、船底内板11からの鉛直方向の距離が2m以下の位置とすると局部腐食の発生確率をほぼ0%とすることができる。
【0048】
このように流体衝突部材44を配置する位置を上記第一実施形態に比べて高くすることにより、流体衝突部材44に衝突する原油等の運動エネルギ(速度)を低下させることができる。これにより、流体衝突部材44に局部腐食が生じてしまうのを抑制することができる。
【0049】
次に、
図7を参照して、本発明の第一実施形態の第二変更例について説明する。上記実施形態では、一列に整列された複数のドレンホール42aに対して一つの流体衝突部材のみが配置されている。これに対して、本変形例では、最も下方に配置された防撓材40の下方に設けられた流体衝突部材43に加えて、下から3番目の防撓材40と下から2番目の防撓材40との間にも流体衝突部材45が配置される。
【0050】
このように、一列に整列された複数のドレンホール42aに対して複数の流体衝突部材43、45を設けた場合、各流体衝突部材43、45に衝突する原油等の運動エネルギ(速度)を低下させることができる。加えて、複数の流体衝突部材43、45のうち最も下方に配置された流体衝突部材43を比較的下方に配置することで、船底内板11に衝突する原油等の運動エネルギ(速度)も低下させることができる。これにより、流体衝突部材43、45及び船底内板11のいずれについても局部腐食を低減させることができる。
【0051】
次に、
図8を参照して、本発明の第一実施形態の第三変更例について説明する。上述した実施形態では、平板状の流体衝突部材43を用いて衝突防止構造が形成されていた。しかしながら、流体衝突部材43の形状は平板状に限られるものではない。流体衝突部材は、平面視においてドレンホール42a全体が流体衝突部材43と重なっていれば、如何なる形状であってもよい。本変更例では、一例として、
図8に示すような角錐状の流体衝突部材46が用いられている。
【0052】
次に、
図9を参照して、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態の油槽の構成は基本的に第一実施形態の油槽の構成と同様である。ここで、上記第一実施形態においては、防撓材40はドレンホール42aが同一の鉛直線上に設けられるように構成されていた。このような構成とするのは、上述したように各防撓材40上に原油等が残留するのをより確実に抑制するため、及び、同一形状の防撓材40を複数作成し、その防撓材40を縦通隔壁30に上下方向にわたって溶接結合することで建造コストを抑制するためである。したがって、防撓材40はドレンホール42aが必ずしも同一の鉛直線上に設けられるように構成される必要はない。
【0053】
そこで、第二実施形態では、例えば
図9に示すように、鉛直方向に複数並んで配置された防撓材40のうち最も下方に配置された防撓材40aに設けられたドレンホール42aが、平面視においてその上方に位置する防撓材40のドレンホール42aと互いに重ならないように配置される。換言すると、最も下方に配置された防撓材40aに設けられたドレンホール42aは、平面視においてその上方に位置する防撓材40の平板部42bと重なるように配置される。特に、本実施形態では、最も下方に配置された防撓材40aを除いた防撓材40は、そのドレンホール42aが鉛直方向に互いに整列するように配置されている。したがって、最も下方に配置された防撓材40aのみドレンホール42aが設けられる位置が、他の防撓材40とは異なるものとなっている。加えて、第二実施形態では、第一実施形態のような流体衝突部材は設けられない。
【0054】
このように構成された第二実施形態の油槽21では、最も下方に位置する防撓材40aのドレンホール42aに流れ込む原油等は、これよりも上方に配置された防撓材40のドレンホール42aから流下したのち、一旦防撓材40aの上面に衝突して運動エネルギ(速度)が低下している。このため、最も下方に位置する防撓材40aのドレンホール42aから流下する原油等の運動エネルギ(流下速度)を低下させることができる。したがって、
図9に示すように防撓材40、40aを配置することで、流体衝突部材43を設けずとも、流体衝突部材43を設けた場合と同様の効果を得ることができる。
【0055】
また、
図9に示すように防撓材40、40aを配置すると、流体衝突部材43が不要となる。このため、溶接作業及びそれに伴う高所での作業も不要となり、流体衝突部材43を設ける場合と比較して、建造現場での作業コスト及び安全性が向上する。
【0056】
なお、
図9に示した例では、最も下方に配置された防撓材40aのドレンホール42aの位置が他の防撓材40のドレンホール42aの位置と異なるものとされている。しかしながら、ドレンホール42aの位置を変更する防撓材は必ずしも最も下方に配置された防撓材40aである必要はなく、下から2番目の防撓材や下から3番目の防撓材等、他の防撓材であってもよい。また、鉛直方向に並んで配置された防撓材のうち一つの防撓材のみについてドレンホール42aの位置を変更するだけでなく、複数の防撓材についてドレンホール42aの位置を変更するようにしてもよい。
【0057】
ただし、ドレンホール42aの位置を変更する防撓材は、船底内板11からの鉛直方向の距離が15m以下、好ましくは8m以下、より好ましくは2m以下の位置に配置される。換言すると、互いに間隔を空けて鉛直方向に複数並んで配置された防撓材40のうち、船底内板11からの鉛直方向の距離が、15m以下、好ましくは8m以下、より好ましくは2m以下の位置に配置された防撓材の少なくとも一つは、鉛直方向に隣り合って配置された防撓材40のドレンホール42aが平面視において互いに重ならないように配置される。このようにドレンホール42aの位置を変更する防撓材40の位置を船底内板11に近づけることにより、
図6を用いて説明したように、局部腐食の発生確率を低減することができる。
【0058】
なお、
図9に示したように一部の防撓材40aについてドレンホール42aの位置を変更した場合、その防撓材40aの上面には、その上方に設けられた防撓材40のドレンホール42aから流下する原油等が衝突する。この場合、構造用部材である防撓材40に局部腐食が発生する可能性があり、腐食が生じた場合は防撓材40を交換する必要がある。このため、
図10に示したように、例えば、防撓材40の上面であって、上方に設けられた防撓材40のドレンホール42aの真下となる位置に犠牲材61を設けて防撓材40の腐食を予防してもよい。
【0059】
次に、
図11を参照して、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態の油槽の構成は基本的に第一実施形態の油槽の構成と同様である。だだし、第三実施形態の油槽では、流体衝突部材として、防撓材40と基本的に同一の形状、外形を有すると共にドレンホールの設けられていない部材50が設けられる。
【0060】
図11からわかるように、本実施形態の油槽では、最も下方に位置する防撓材40の下方に流体衝突部材50が設けられている。流体衝突部材50は、防撓材40と同一の外形を有すると共にドレンホールが設けられていない。見方を変えると、流体衝突部材50は、防撓材40のドレンホール42aに対応する位置に、このドレンホール42aを塞ぐ閉止部材が設けられているといえる。流体衝突部材としてこのような部材50を用いた場合であっても、上述した第一実施形態の流体衝突部材43と同様な効果を得ることができる。
【0061】
加えて、流体衝突部材50としては、ドレンホール42aを形成するための孔開け加工をする前の防撓材40を用いることができる。このため、流体衝突部材50用にプレス金型等を別途作成する必要がなくなり、その結果、製造コストを低減することができる。
【0062】
なお、
図11に示した例では、流体衝突部材50は、最も下方に配置された防撓材40の下方に配置されているが、下から2番目、3番目の防撓材40等、他の防撓材40のすぐ下に配置されてもよい。ただし、この場合でも、流体衝突部材50は、船底内板11からの鉛直方向の距離が15m以下、好ましくは8m以下、より好ましくは2m以下の位置に配置される。
【0063】
また、
図11に示した例では、鉛直方向に並んで配置された防撓材40は全て同一の外形を有するように形成されている。しかしながら、防撓材40は必ずしも同一の外形を有するわけではなく、例えば幅(前後方向に対して垂直な方向における長さ)が防撓材40毎に異なる場合もある。このような場合には、流体衝突部材50は鉛直方向にならんで配置された複数の防撓材40のうち少なくともいずれか一つの防撓材40と同一の外形を有する。例えば、流体衝突部材50は、流体衝突部材50に隣り合って配置される防撓材40と同一の外形を有する。
【0064】
なお、上述した第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態をまとめて表すと、本発明では、防撓材は、それぞれ平板部と平板部を貫通するように形成されたドレンホールとを具備し、鉛直方向上部から平面視したときに、各防撓材に設けられたドレンホールが他の部材と重なるように配置されていると言うことができる。
【0065】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、原油やその他の液体を輸送するタンカーの油槽における腐食を抑制する際に有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 タンカー
10 船底外板
11 船底内板
12 船側外板
13 船側内板
14 上甲板
20 バラストタンク
21 油槽
30 縦通隔壁
31 センタータンク
32 ウイングタンク
40 防撓材
41 隔壁横桁
42a ドレンホール
42b 平板部
43、44、45、46、50 流体衝突部材
61 犠牲材
F 流れ