特許第5963701号(P5963701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963701
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】半導体アニール装置及び温度測定方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20160721BHJP
   G01J 5/00 20060101ALI20160721BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20160721BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20160721BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20160721BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   H01L21/268 T
   G01J5/00 101C
   H01L21/265 602C
   H01L29/78 655B
   H01L29/78 655C
   H01L29/78 658A
   H01L29/78 653A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-65398(P2013-65398)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-192277(P2014-192277A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】市川 英志
【審査官】 桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−268120(JP,A)
【文献】 特開2008−116269(JP,A)
【文献】 特開2008−211136(JP,A)
【文献】 特開2010−207874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
H01L 21/265
H01L 21/336
H01L 29/739
H01L 29/78
G01J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニール対象の半導体基板を保持するステージであって、前記半導体基板の、前記ステージを向く表面に、前記半導体基板を透過する波長域の光を熱放射する材料を含む素子構造が形成されている前記半導体基板を保持する前記ステージと、
前記ステージに保持された半導体基板にレーザビームを入射させてアニールを行うレーザ光学系と、
前記ステージに保持された半導体基板によって吸収される波長域に感度を持たず、前記半導体基板を透過する波長域に感度を持ち、前記半導体基板に形成された前記素子構造の前記材料から放射されて前記半導体基板を透過した赤外光を検出することにより温度を測定する放射温度計と
を有する半導体アニール装置。
【請求項2】
前記放射温度計は、
前記半導体基板によって吸収される波長域の光を遮光し、前記半導体基板を透過する波長域の光を透過させる光バンドパスフィルタと、
前記光バンドパスフィルタを透過した赤外光を検出する受光装置と
を含む請求項1に記載の半導体アニール装置。
【請求項3】
半導体基板の第1の表面に、前記半導体基板を透過する波長域の光を熱放射する材料を含む素子構造が形成された前記半導体基板の、前記第1の表面とは反対側の第2の表面にレーザビームを入射させて、前記半導体基板をアニールする工程と、
前記素子構造の前記材料から放射され、前記半導体基板を透過した赤外光を、前記半導体基板によって吸収される波長域に感度を持たず、前記半導体基板を透過する波長域に感度を持つ受光素子を用いて、前記半導体基板の前記第2の表面側から検出することにより、前記素子構造の一部の温度を求める工程と
を有する温度測定方法。
【請求項4】
半導体基板の第1の表面に、前記半導体基板を透過する波長域の光を熱放射する材料を含む素子構造が形成された前記半導体基板の、前記第1の表面とは反対側の第2の表面にレーザビームを入射させて、前記半導体基板をアニールする工程と、
前記素子構造の前記材料から放射され、前記半導体基板を透過した赤外光を、前記半導体基板によって吸収される波長域の光を遮光し、前記半導体基板を透過する波長域の光を透過させる光バンドパスフィルタを介して検出することにより、前記素子構造の一部の温度を求める工程と
を有する温度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の裏側の温度を表側から測定する半導体アニール装置、及び温度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン等の半導体基板に注入した不純物(ドーパント)を活性化する方法として、レーザアニールが適用される場合がある。レーザアニールは、ランプアニールやラピッドサーマルアニール(RTA)に比べて、半導体基板の表面を局所的に加熱することができるため、浅いpn接合の形成に適している。
【0003】
下記の特許文献1に、半導体基板をレーザニールする際に、表面の溶融した部分の温度を測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−116269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体基板のレーザアニール時に、レーザによって照射される面(レーザ照射面)とは反対側の面(裏側の面)に、樹脂製の保護テープが貼り付けられている場合がある。この場合、裏側の面の温度が、保護テープの耐熱温度以上にならない条件でレーザアニールを行わなければならない。レーザアニール時に、半導体基板の裏側の面の温度を測定し、裏側の面の温度が許容上限値以下であることを確認できれば便利である。従来の技術では、半導体基板のレーザ照射面の温度を測定することは可能であるが、裏側の面の温度を測定することはできない。
【0006】
レーザ照射面とは反対側の裏側の面にサーモラベルを貼り付けておくことにより、レーザアニール後に、最高到達温度を知ることが可能である。ところが、この方法では、レーザ照射中の温度を測定することはできない。
【0007】
本発明の目的は、半導体基板にレーザビームを照射している期間に、レーザ照射面とは反対側の裏側の面の温度を測定することが可能な温度測定方法及び半導体アニール装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によると、
アニール対象の半導体基板を保持するステージであって、前記半導体基板の、前記ステージを向く表面に、前記半導体基板を透過する波長域の光を熱放射する材料を含む素子構造が形成されている前記半導体基板を保持する前記ステージと、
前記ステージに保持された半導体基板にレーザビームを入射させてアニールを行うレーザ光学系と、
前記ステージに保持された半導体基板によって吸収される波長域に感度を持たず、前記半導体基板を透過する波長域に感度を持ち、前記半導体基板に形成された前記素子構造の前記材料から放射されて前記半導体基板を透過した赤外光を検出することにより温度を測定する放射温度計と
を有する半導体アニール装置が提供される。
【0009】
本発明の他の観点によると、
半導体基板の第1の表面に、前記半導体基板を透過する波長域の光を熱放射する材料を含む素子構造が形成された前記半導体基板の、前記第1の表面とは反対側の第2の表面にレーザビームを入射させて、前記半導体基板をアニールする工程と、
前記素子構造の前記材料から放射され、前記半導体基板を透過した赤外光を、前記半導体基板によって吸収される波長域に感度を持たず、前記半導体基板を透過する波長域に感度を持つ受光素子を用いて、前記半導体基板の前記第2の表面側から検出することにより、前記素子構造の一部の温度を求める工程と
を有する温度測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
素子構造の少なくとも一部分から放射されて、半導体基板を透過した赤外光を、素子構造が形成されている第1の表面とは反対側の第2の表面から観測するため、レーザ照射中も温度を観測することが可能である。半導体基板によって吸収される波長域に感度を持たない放射温度計を用いることにより、半導体基板自体からの熱放射の影響を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例による半導体アニール装置の概略図である。
図2図2Aは、実施例による半導体アニール装置を用いて製造される絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)の断面図であり、図2Bは、製造途中段階におけるIGBTの断面図である。
図3図3Aは、半導体基板に入射するレーザパルス波形の概略を示すグラフであり、図3Bは、半導体基板の第2の面(レーザ照射面)におけるレーザパルスの入射領域の平面図である。
図4図4Aは、半導体基板の吸収率の波長依存性(光吸収スペクトル)の一例を示すグラフであり、図4Bは、半導体基板及びエミッタ電極からの熱放射の強度の波長依存性(熱放射スペクトル)の一例を示すグラフであり、図4Cは、実施例による半導体アニール装置に用いられている光バンドパスフィルタの透過率の波長依存性(透過スペクトル)を示すグラフであり、図4Dは、図4Bに示した熱放射スペクトルのうち、光バンドパスフィルタを透過して受光装置に入射する光のスペクトルを示すグラフである。
図5図5Aは、評価実験の対象である黒体テープ付きの半導体基板の断面図、及び放射温度計の概略図であり、図5Bは、評価実験の対象であるアルミニウムテープ付きの半導体基板の断面図、及び放射温度計の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、実施例による半導体アニール装置の概略図を示す。実施例1による半導体アニール装置は、レーザ光学系10、ステージ41、及び放射温度計60を含む。レーザ光学系10は、レーザ光源として、半導体レーザ発振器21及び固体レーザ発振器31を含む。半導体レーザ発振器21は、例えば波長808nmの疑似連続発振(QCW)レーザビームを出射する。なお、波長950nm以下のパルスレーザビームを出射する半導体レーザ発振器を用いてもよい。固体レーザ発振器31は、緑色の波長域のパルスレーザビームを出射する。固体レーザ発振器31には、例えばNd:YAGレーザ、Nd:YLFレーザ、Nd:YVOレーザ等が用いられる。緑色の波長域のパルスレーザビームには、第2高調波が用いられる。ステージ41に、アニール対象の半導体基板50が保持される。
【0013】
半導体レーザ発振器21から出射したパルスレーザビームが、アッテネータ22、ビームエキスパンダ23、ホモジナイザ24、ダイクロイックミラー25、及び集光レンズ26を経由して、半導体基板50に入射する。固体レーザ発振器31から出射したパルスレーザビームが、アッテネータ32、ビームエキスパンダ33、ホモジナイザ34、ベンディングミラー35、ダイクロイックミラー25、及び集光レンズ26を経由して、半導体基板50に入射する。
【0014】
ビームエキスパンダ23、33は、入射したパルスレーザビームをコリメートするとともに、ビーム径を拡大する。ホモジナイザ24、34及び集光レンズ26は、半導体基板50の表面におけるビーム断面を長尺形状に整形するとともに、ビーム断面内の光強度分布を均一化する。半導体レーザ発振器21から出射したパルスレーザビームと、固体レーザ発振器31から出射したパルスレーザビームとは、半導体基板50の表面において、ほぼ同一の長尺領域に入射する。
【0015】
半導体基板50の表面に平行な面をXY面とし、半導体基板50の表面の法線方向をZ方向とするXYZ直交座標系を定義する。制御装置20が、半導体レーザ発振器21、固体レーザ発振器31、及びステージ41を制御する。ステージ41は、制御装置20からの制御を受けて、半導体基板50をX方向及びY方向に移動させる。
【0016】
放射温度計60は、光バンドパスフィルタ61、及び受光装置62を含む。光バンドパスフィルタ61は、半導体基板50によって吸収される波長域の光を遮光し、半導体基板50を透過する波長域の光を透過させる。光バンドパスフィルタ61を透過した赤外線が、受光装置62で検出される。受光装置62には、例えば赤外光を検出するサーモグラフィ等が用いられる。
【0017】
図2Aに、実施例による半導体アニール装置を用いて製造される半導体装置の例として、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)の断面図を示す。IGBTは、n型のシリコンからなる半導体基板50の一方の面(以下、「第1の面」という。)50Tにエミッタとゲートとが形成されており、もう一方の面(以下、「第2の面」という。)50Bにコレクタが形成されている。半導体基板50として、通常はシリコン単結晶基板が用いられる。エミッタとゲートが形成された第1の面50Tの素子構造は、一般的なMOSFETの作製工程と同様の工程で作製される。例えば、図2Aに示すように、半導体基板50の第1の面50Tの表層部に、p型のベース領域51、n型のエミッタ領域52、ゲート電極53、ゲート絶縁膜54、エミッタ電極55が配置される。エミッタ電極55には、例えばアルミニウム(Al)が用いられる。ゲート−エミッタ間の電圧で、電流のオンオフ制御を行うことができる。
【0018】
半導体基板50の第2の面50Bの表層部に、p型のコレクタ層57及び低濃度のn型のバッファ層56が形成されている。バッファ層56は、コレクタ層57よりも深い領域に配置される。コレクタ層57及びバッファ層56は、それぞれ不純物として、例えばボロン及びリンをイオン注入し、活性化アニールを行うことにより形成される。この活性化アニールに、図1に示した半導体アニール装置が適用される。コレクタ電極58が、活性化アニールの後に、コレクタ層57の表面に形成される。
【0019】
第2の面50Bからコレクタ層57とバッファ層56との界面までの深さは、例えば約0.3μmである。第2の面からバッファ層56の最も深い位置までの深さは、例えば1μm〜5μmの範囲内である。
【0020】
図2Bに、レーザアニールを行う段階の半導体基板50の断面図を示す。半導体基板50の第1の面50Tに、素子構造を保護するための樹脂製の保護テープ59が張り付けられている。半導体基板50の第2の面50Bの表層部57aに、ボロンがイオン注入されている。表層部57aより深い領域56aに、リンがイオン注入されている。表層部57a内のボロン、及び深い領域56a内のリンは、この段階では活性化していない。表層部57aのボロン濃度は、深い領域56aのリン濃度より高い。表層部57aは、高濃度のボロンが注入されることによりアモルファス化している。レーザアニールを行う時に、半導体基板50の第1の面50Tには、図2Aに示したエミッタ及びゲート等を含む素子構造が形成されている。
【0021】
図3Aに、半導体基板50(図2B)に入射するレーザパルス波形の概略を示す。図3Aでは、パルス波形を長方形で表しているが、実際のパルス波形は、パルスの立ち上がり、減衰、及び立ち下がり等の部分を含む。図3Aに示されたパルス波形の出射タイミングは、制御装置20(図1)が半導体レーザ発振器21及び固体レーザ発振器31を制御することにより決定される。
【0022】
時刻t1に、半導体レーザ発振器21から出射した第1のレーザパルスLP1の、半導体基板50への入射が開始する。時刻t1の後の時刻t2に、固体レーザ発振器31から出射した第2のレーザパルスLP2が半導体基板50に入射する。第1のレーザパルスLP1と第2のレーザパルスLP2とが入射する領域は、ほぼ重なる。第2のレーザパルスLP2のピークパワーは、第1のレーザパルスLP1のピークパワーより高く、第2のレーザパルスLP2のパルス幅PW2は、第1のレーザパルスLP1のパルス幅PW1より短い。時刻t3で、第2のレーザパルスLP2の入射が終了する。その後、時刻t4で、第1のレーザパルスLP1の入射が終了する。
【0023】
第1のレーザパルスLP1のパルス幅PW1は、例えば10μs以上である。第2のレーザパルスLP2のパルス幅PW2は、例えば1μs以下である。一例として、パルス幅PW1が10μs〜30μsの範囲内であり、パルス幅PW2が100ns〜200nsの範囲内である。第2のレーザパルスLP2のパルス幅PW2を、第1のレーザパルスLP1のパルス幅PW1の1/10以下とすることが好ましい。
【0024】
図3Bに、半導体基板50(図2B)の第2の面50Bにおけるレーザパルスの入射領域の平面図を示す。第1のレーザパルスLP1(図3A)及び第2のレーザパルスLP2(図3A)は、半導体基板50の第2の面50B(図2B)において、X方向に長い同一の領域40に入射する。例えば、ビーム入射領域40の好適な長さL及び幅Wtは、それぞれ2mm〜4mm及び200μm〜400μmである。
【0025】
アニール中は、半導体基板50(図2B)をY方向に移動させながら、第1のレーザパルスLP1及び第2のレーザパルスLP2(図3A)を、一定の繰り返し周波数で半導体基板50に入射させる。第1のレーザパルスLP1及び第2のレーザパルスLP2の繰り返し周波数の1周期の間に半導体基板50が移動する距離をWoで表す。時間軸上で隣り合う2つの第1のレーザパルスLP1のビーム入射領域40は、相互に部分的に重なる。両者の重複率Wo/Wtは、例えば50%である。
【0026】
図3Aに示した時刻t1で第1のレーザパルスLP1の入射が開始すると、半導体基板50の第2の面50B(図2B)の表層部57aの温度が上昇し始める。時刻t2の時点で、半導体基板50の第2の面50Bの温度は、アモルファスシリコンの融点(1300K〜1430K)まで達していない。時刻t2で第2のレーザパルスLP2を入射させると、半導体基板50の第2の面50Bの表層部の温度がアモルファスシリコンの融点まで達し、表層部57aが溶融する。溶融した部分は、表層部57aと深い領域56a(図2B)との界面まで達する。
【0027】
第2のレーザパルスLP2の入射が終了すると、半導体基板50の表層部57aの温度が低下し、固化する。このとき、単結晶の深い領域56a(図2B)から結晶がエピタキシャル成長することにより、表層部57aが単結晶になる。同時に、表層部57aに注入されている不純物が活性化する。
【0028】
時刻t3以降も、第1のレーザパルスLP1(図3A)の入射が継続しているため、半導体基板50の第2の面50Bから深い領域56a(図2B)まで加熱され、温度が上昇
する。これにより、深い領域56aに注入されている不純物が活性化する。時刻t4で第1のレーザパルスLP1の入射が終了する時点で、半導体基板50の第2の面50Bの温度は、単結晶シリコンの融点まで到達しない。このため、再結晶化した半導体基板50の第2の面50Bの表層部は再溶融しない。
【0029】
半導体基板50の第2の面50B(図2B)にレーザパルスを入射させてレーザアニールを行う期間中、熱が半導体基板50を厚さ方向に伝わり、第1の面50Tの温度も上昇する。第1の面50Tには、既に素子構造が形成されているため、第1の面50Tの過度の温度上昇を抑制することが好ましい。さらに、第1の面50Tに貼り付けられた保護テープ59(図2B)の耐熱性の観点からも、第1の面50Tの過度の温度上昇を抑制することが好ましい。
【0030】
レーザアニール期間中、放射温度計60が、エミッタ電極55から放射されて半導体基板50を透過した放射光を検出することにより、エミッタ電極55の温度を測定する。
【0031】
図4A図4Dを参照して、放射温度計60による温度測定の原理について説明する。図1に示したように、放射温度計60は、半導体基板50の第2の面50Bから放射される光を検出する。
【0032】
図4Aに、半導体基板50(図2B)の吸収率の波長依存性(光吸収スペクトル)の一例を示す。半導体基板50がシリコンで形成されている場合、波長λ1よりも長波長の赤外域の光は、半導体基板50をほとんど透過する。波長λ1は約950nmである。
【0033】
図4Bは、半導体基板50及びエミッタ電極55(図2B)からの熱放射の強度の波長依存性(熱放射スペクトル)の一例を示す。図4Bに示した細い実線S1はエミッタ電極55からの熱放射スペクトルを示し、破線S2は、半導体基板50からの熱放射スペクトルを示す。太い実線S3は、放射温度計60に入射する光のスペクトルを示す。
【0034】
半導体基板50から放射された光の波長は、主として波長λ1よりも短い波長域に分布し、波長λ1よりも長い波長域、すなわち半導体基板50を透過する波長域においては、ほとんど熱放射が発生しない。また、エミッタ電極55(図2B)から放射された光のうち、波長λ1よりも短い波長域の成分は、半導体基板50で吸収されるため、放射温度計60に入射しない。エミッタ電極55から放射した光のうち半導体基板50を透過した光、及び半導体基板50自体からから放射した光が、放射温度計60に入射する。
【0035】
半導体基板50を第2の面50B(図2B)側から観察して検出される光のスペクトルには、エミッタ電極55からの熱放射スペクトルのみならず、半導体基板50からの熱放射スペクトルが含まれている。このため、半導体基板50を第2の面50B(図2B)側から観測して得られた熱放射スペクトルに基づいて、エミッタ電極55の温度を算出することは困難である。
【0036】
図4Cに、光バンドパスフィルタ61(図1)の透過率の波長依存性(透過スペクトル)を示す。光バンドパスフィルタ61は、波長λ1と波長λ2との間の波長域の光を透過させ、波長λ1よりも短い波長域、及び波長λ2よりも長い波長域の光を遮光する。
【0037】
図4Dに、図4Bに示した熱放射スペクトルのうち、光バンドパスフィルタ61を透過して受光装置62(図1)に入射する光のスペクトルを示す。半導体基板50から放射された光は、光バンドパスフィルタ61で遮光されるため、受光装置62で検出される光のスペクトルS3には、半導体基板50からの熱放射スペクトルS2がほとんど含まれない。このため、半導体基板50からの熱放射の影響を排除し、エミッタ電極55からの熱放
射スペクトルS1(図4B)のうち波長λ1とλ2との間のスペクトルを観測することができる。
【0038】
このため、受光装置62で観測された熱放射スペクトルに基づいて、エミッタ電極55の温度を算出することができる。これにより、半導体基板50の第1の面50T(すなわち、図1に示したステージ41側の面)の温度が求まる。
【0039】
次に、図5A及び図5Bを参照して、放射温度計60(図1)を用いて、エミッタ電極55の温度を測定することが可能であることを示す評価実験について説明する。
【0040】
図5Aに示すように、半導体基板50の一方の面(裏側の面)に、黒体テープ70を貼り付ける。半導体基板50の他方の面(表側の面)に、例えば緑色のレーザビーム75を入射して半導体基板50を加熱する。放射温度計60を用いて、半導体基板50の表側の面から、熱放射による光を観測する。
【0041】
図5Bに示すように、半導体基板50の一方の面(裏側の面)に、黒体テープ70に代えてアルミニウムテープ71を貼り付ける。半導体基板50の他方の面(表側の面)に、図5Aに示したレーザビーム75の照射条件と同一の条件で、レーザビーム75を入射して半導体基板50を加熱する。放射温度計60を用いて、半導体基板50の表側の面から、熱放射による光を観測する。
【0042】
図5A及び図5Bのいずれのレーザ照射時においても、レーザビーム75は半導体基板50で吸収され、半導体基板50の温度が上昇する。半導体基板50から黒体テープ70及びアルミニウムテープ71に熱が伝達されることにより、黒体テープ70及びアルミニウムテープ71の温度が上昇する。半導体基板50と黒体テープ70との界面の熱伝達率と、半導体基板50とアルミニウムテープ71との界面の熱伝達率とは、ほぼ等しいと考えられる。このため、加熱後の黒体テープ70の温度と、加熱後のアルミニウムテープ71の温度とは、ほぼ等しい。
【0043】
黒体テープ70の放射率と、アルミニウムテープ71の放射率とは異なる。放射温度計60によって半導体基板50自体の温度が観測されている場合には、測定結果は、黒体テープ70とアルミニウムテープ71との放射率の違いの影響を受けない。実際に、評価実験を行ったところ、両者の熱放射スペクトルに差が生じた。これは、図5Aに示した黒体テープ70からの熱放射スペクトルと、図5Bに示したアルミニウムテープ71からの熱放射スペクトルとが異なることに起因する。この評価実験から、実施例による放射温度計60は、黒体テープ70及びアルミニウムテープ71の温度を測定していると結論付けることができる。
【0044】
アルミニウムテープ71の実際の温度を、熱電対等の温度センサで測定しておくことにより、放射温度計60で測定された温度を、実際のアルミニウムテープ71の温度に換算することができる。または、図5Aに示した黒体テープ70からの熱放射スペクトルと、図5Bに示したアルミニウムテープ71からの熱放射スペクトルとの相違に基づいて、予め放射温度計60を校正しておくことにより、アルミニウムテープ71の温度を直接求めることができる。
【0045】
上記実施例においては、受光装置62の前方に光バンドパスフィルタ61が配置されているため、放射温度計60は、半導体基板50によって吸収される波長域に感度を持たず、半導体基板50を透過する波長域に感度を持つ。このため、半導体基板50からの熱放射の影響をほとんど受けず、エミッタ電極55から熱放射されて半導体基板50を透過した赤外光を検出することができる。受光装置62自体が、半導体基板50によって吸収さ
れる波長域に感度を持たず、半導体基板50を透過する波長域に感度を持つ場合には、光バンドパスフィルタ61を省略することができる。
【0046】
上記実施例では、アルミニウムからなるエミッタ電極55(図2B)の温度を測定したが、第1の面50Tに形成されている素子構造のうち、半導体基板50とは異なる材料で形成された他の部材の温度を測定することも可能である。また、上記実施例では、シリコンからなる半導体基板50を用いたが、シリコン以外の半導体材料、例えばSiCからなる半導体基板50を用いることも可能である。この場合には、光バンドパスフィルタ61(図1)として、SiCを透過する波長域の光を透過させ、SiCを透過しない波長域の光を遮光するものを用いればよい。
【0047】
放射温度計60(図1)として、サーモグラフィのような2次元センサを用いることにより、半導体基板50の裏側の面の温度分布を測定することが可能である。
【0048】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0049】
10 レーザ光学系
20 制御装置
21 半導体レーザ発振器
22 アッテネータ
23 ビームエキスパンダ
24 ホモジナイザ
25 ダイクロイックミラー
26 集光レンズ
31 固体レーザ発振器
32 アッテネータ
33 ビームエキスパンダ
34 ホモジナイザ
35 ベンディングミラー
40 ビーム入射領域
41 ステージ
50 半導体基板
50T 第1の面
50B 第2の面
51 p型のベース領域
52 p型のエミッタ領域
53 ゲート電極
54 ゲート絶縁膜
55 エミッタ電極
56 バッファ層
56a 深い領域
57 コレクタ層
57a 表層部
58 コレクタ電極
59 保護テープ
60 放射温度計
61 光バンドパスフィルタ
62 受光装置
70 黒体テープ
71 アルミニウムテープ
75 レーザビーム
図1
図2
図3
図4
図5