特許第5963704号(P5963704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963704
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】耐火断熱材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 1/00 20060101AFI20160721BHJP
   F16L 59/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   F27D1/00 N
   F27D1/00 G
   F16L59/00
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-73011(P2013-73011)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196878(P2014-196878A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2014年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】391029509
【氏名又は名称】イソライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100083910
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 正緒
(72)【発明者】
【氏名】角村 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】塩野 浩史
【審査官】 佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−087204(JP,A)
【文献】 特開平01−252561(JP,A)
【文献】 特開昭63−163707(JP,A)
【文献】 特開平05−009083(JP,A)
【文献】 特表2003−521391(JP,A)
【文献】 特開2008−254952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 1/00−1/18
B28B 1/00−1/54
C04B 2/00−32/02
C04B 35/60−35/84
C04B 40/00−41/72
F16L 59/00−59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック繊維と無機バインダーとから成形されてなる耐火断熱材であって、セラミック繊維の平均繊維径が1.5〜5μmであり、セラミック繊維に含まれる非繊維状粒子の合計量が該繊維全体の20重量%以下であり、600℃における熱伝導率が0.060〜0.090W/(m・K)であり該成形後に100〜120℃で乾燥したとき、該乾燥後のかさ密度が250〜400kg/m乾燥後の曲げ強度が0.6MPa以上であり、該セラミック繊維が成形面において2次元にランダムに配向していることを特徴とする耐火断熱材。
【請求項2】
前記セラミック繊維を70〜85重量%、無機バインダーを15〜30重量%含有することを特徴とする、請求項1に記載の耐火断熱材。
【請求項3】
セラミック繊維と無機バインダーと有機高分子凝集剤とから成形されてなる耐火断熱材であって、セラミック繊維の平均繊維径が1.5〜5μmであり、セラミック繊維に含まれる非繊維状粒子の合計量が該繊維全体の20重量%以下であり、600℃における熱伝導率が0.060〜0.090W/(m・K)であり該成形後に100〜120℃で乾燥したとき、該乾燥後のかさ密度が150〜300kg/m乾燥後の曲げ強度が0.8MPa以上であり、該セラミック繊維が成形面において2次元にランダムに配向していることを特徴とする耐火断熱材。
【請求項4】
前記セラミック繊維を85〜99.5重量%、無機バインダーを0.5〜15重量%、有機高分子凝集剤を0.4〜12重量%含有することを特徴とする、請求項3に記載の耐火断熱材。
【請求項5】
前記セラミック繊維が、シリカアルミナ繊維、シリカアルミナジルコニア繊維若しくは生体溶解性繊維であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の耐火断熱材。
【請求項6】
セラミック繊維と無機バインダーとから成形され、該セラミック繊維が成形面において2次元にランダムに配向している耐火断熱材の製造方法であって、平均繊維径1.5〜5μmのセラミック繊維を分級処理して非繊維状粒子の合計を繊維全体の20重量%以下とした後、該セラミック繊維を水に分散させ、無機バインダーを添加混合して、型を用いた吸引により脱水成形することを特徴とする耐火断熱材の製造方法。
【請求項7】
セラミック繊維と無機バインダーと有機高分子凝集剤とから成形され、該セラミック繊維が成形面において2次元にランダムに配向している耐火断熱材の製造方法であって、平均繊維径1.5〜5μmのセラミック繊維を分級処理して非繊維状粒子の合計を繊維全体の20重量%以下とした後、該セラミック繊維を水に分散させ、無機バインダーを添加混合し、更に有機高分子凝集剤を添加して、型を用いた吸引により脱水成形することを特徴とする耐火断熱材の製造方法。
【請求項8】
前記脱水成形で得られた成形体のかさ密度をローラープレスにより調整することを特徴とする、請求項6又は7に記載の耐火断熱材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に熱処理炉の炉内面などに使用される耐火断熱材、特に抄造法による無機繊維質の耐火断熱材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用の熱処理炉など中高温域において使用される耐火断熱材としては、抄造法を用いて湿式成形により製造され、主に無機繊維と無機粉末を無機バインダーで結合して構成された耐火断熱材が一般的に広く使用されている。特に無機繊維と無機バインダーに熱輻射散乱材として無機粉末を加えることによって、断熱性能を向上させた耐火断熱材も知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、シリカアルミナ繊維等の無機繊維を水に分散させたスラリーに、酸化チタン等の無機粒子を加え、更にシリカゾルのような無機バインダーと凝集剤を添加して、脱水成形することにより製造された断熱材が記載されている。特に酸化チタンは熱輻射を散乱させる機能を有するため、断熱材中に含有させることによって輻射熱が散乱され、断熱性能を向上させることができるとされている。しかし、その600℃での熱伝導率は0.09W/(m・K)を超え、満足できる断熱性能ではない。
【0004】
一方、特許文献2には、600℃での熱伝導率が0.09W/(m・K)を下回るマイクロポーラス系断熱材として、Bを含有せず、膨張したバーミキュライト30〜70重量%、無機結合剤15〜40重量%、赤外線不透明剤0〜20重量%、微孔質物質15〜50重量%、ガラス強化繊維の重量に対してアルカリ金属酸化物を最高で2重量%を含有するガラス強化繊維0.5〜8重量%を有する断熱成形体が記載されている。
【0005】
上記マイクロポーラス系断熱材は従来にない優れた断熱性能を有しているが、強度が低い、粉塵が発生しやすい、加工性や施工性に劣るなどの問題点がある。この問題点を補う技術として、例えば特許文献3には、マイクロポーラス系断熱材を無機繊維製の外装で覆う方法が記載されている。しかし、この方法は加工が難しく、また断熱材のコスト増を招く要因にもなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−140311号公報
【特許文献2】特許第3328295号公報
【特許文献3】特開2012−149658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように中高温域において使用される従来の耐火断熱材は主に無機繊維と無機粉末を無機バインダーで結合した構造のものであり、断熱性能向上のために酸化チタン粉末のような熱輻射散乱材を加えることも知られている。しかし、その600℃での熱伝導率は0.09W/(mK)を超えているため、更に大幅な断熱性能の向上が望まれている。
【0008】
また、従来の無機粉末を含む無機繊維質耐火断熱材では、無機粉末や非繊維状粒子(繊維になりきれなかった球状粒子;ショットとも呼ばれる)などに由来する微粒子や微粉が離脱する粉立ち(表面に微粉が付着していたり、付着している微粉が飛散する現象:主に無機粉末に由来)やボロフリ(粒子が表面から脱離する現象:主に非繊維状粒子に由来)の原因となり、熱処理炉内面の炉壁材として使用した場合には被焼成物に付着するという不都合があった。
【0009】
一方、マイクロポーラス系断熱材は、従来にない優れた断熱性能を有しているが、強度が低いうえに、粉立ちが多い、加工性が悪い、施工性に劣るなどの問題点があった。そのため、マイクロポーラス系断熱材は、熱処理炉内面の炉壁材など強度を有する用途に用いることはできなかった。
【0010】
本発明は、上記した従来の無機繊維質耐火断熱材やマイクロポーラス系断熱材の問題点に鑑みてなされたものであり、従来一般的に広く使用されている無機繊維と無機バインダーからなる耐火断熱材や、これに熱輻射を散乱させるため酸化チタンを添加した耐火断熱材に比べて熱伝導率が大幅に低下され、加工性や施工性に優れるうえ、粉立ちやボロフリがなく、高強度であって、マイクロポーラス系断熱材と同等程度の優れた断熱性能を有する耐火断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明が提供する第1の耐火断熱材は、セラミック繊維と無機バインダー(結合材)とから成形されてなる耐火断熱材であって、セラミック繊維の平均繊維径が1.5〜5μmであり、セラミック繊維に含まれる非繊維状粒子の合計量が該繊維全体の20重量%以下であり、600℃における熱伝導率が0.060〜0.090W/(m・K) であり該成形後に100〜120℃で乾燥したとき、該乾燥後のかさ密度が250〜400kg/m乾燥後の曲げ強度が0.6MPa以上であり、該セラミック繊維が成形面において2次元にランダムに配向していることを特徴とする。
【0012】
また、本発明が提供する第2の耐火断熱材は、セラミック繊維と無機バインダー(結合材)と有機高分子凝集剤とから成形されてなる耐火断熱材であって、セラミック繊維の平均繊維径が1.5〜5μmであり、セラミック繊維に含まれる非繊維状粒子の合計量が該繊維全体の20重量%以下であり、600℃における熱伝導率が0.060〜0.090W/(m・K) であり該成形後に100〜120℃で乾燥したとき、該乾燥後のかさ密度が150〜300kg/m乾燥後の曲げ強度が0.8MPa以上であり、該セラミック繊維が成形面において2次元にランダムに配向していることを特徴とする。
【0013】
上記本発明による第1の耐火断熱材は、セラミック繊維を70〜85重量%、無機バインダーを15〜30重量%含有することが好ましい。また、上記本発明による第2の耐火断熱材は、セラミック繊維を85〜99.5重量%、無機バインダーを0.5〜15重量%、有機高分子凝集剤を0.4〜12重量%含有することが好ましい。また、前記セラミック繊維としては、シリカアルミナ繊維、シリカアルミナジルコニア繊維若しくは生体溶解性繊維が好ましい。
【0014】
また、本発明が提供する第1の耐火断熱材の製造方法は、セラミック繊維と無機バインダーとから成形され、該セラミック繊維が成形面において2次元にランダムに配向している耐火断熱材の製造方法であって、平均繊維径1.5〜5μmのセラミック繊維を分級処理して非繊維状粒子の合計を繊維全体の20重量%以下とした後、該セラミック繊維を水に分散させ、無機バインダー(結合材)を添加混合し、型を用いた真空吸引により脱水成形することを特徴とする。
【0015】
また、本発明が提供する第2の耐火断熱材の製造方法は、セラミック繊維と無機バインダーと有機高分子凝集剤とから成形され、該セラミック繊維が成形面において2次元にランダムに配向している耐火断熱材の製造方法であって、平均繊維径1.5〜5μmのセラミック繊維を分級処理して非繊維状粒子の合計を繊維全体の20重量%以下とした後、該セラミック繊維を水に分散させ、無機バインダー(結合材)を添加混合し、更に有機高分子凝集剤を添加して、型を用いた真空吸引により脱水成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来一般的に広く使用されている無機繊維と無機粉末と無機バインダーを主成分とする耐火断熱材や、これに熱輻射散乱材の酸化チタン粉末を添加した耐火断熱材に比べて、高強度で加工性や施工性に優れると共に、熱伝導率が低く、断熱性能が大幅に改善向上された耐火断熱材を提供することができる。しかも、本発明の耐火断熱材は、無機粉末を含まないため、粉立ちやボロフリがなく、耐スポーリング性にも優れている。
【0017】
従って、本発明の耐火断熱材は、極めて低い熱伝導率を有し、加工性や施工性に優れるうえ、粉立ちやボロフリがなく、熱処理炉の炉内面に使用したとき被焼成物の汚染を防ぐことができ、バックライニングの熱負荷を低減することができるため、熱処理炉の炉内面に使用する低熱伝導ボードとして非常に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において、第1の耐火断熱材は平均繊維径が1.5〜5μmのセラミック繊維と無機バインダー(結合材)とからなり、第2の耐火断熱材は平均繊維径が1.5〜5μmのセラミック繊維と、無機バインダー(結合材)と有機高分子凝集剤とからなり、いずれも酸化チタン粉末などの無機粉末粒子を含んでいない。しかも、セラミック繊維中には繊維の製造過程で生成した非繊維状粒子(ショット)が通常50〜60重量%含まれているが、本発明で用いるセラミック繊維は予め非繊維状粒子の合計を20重量%以下に減らしたものである。尚、セラミック繊維の繊維径はSEM(走査電子顕微鏡)を使用して測定し、繊維250〜300本の平均値をもって平均繊維径とした。
【0019】
平均繊維径が1.5〜5μmであり且つ非繊維状粒子の含有量を20重量%以下に減らしたセラミック繊維を使用することにより、耐火断熱材の断熱性能の向上に大きく寄与することができることを確認した。即ち、セラミック繊維中に50〜60重量%含まれる非繊維状粒子の粒径は、その9割以上が45μm以上である。このように粒径の大きな非繊維状粒子が多量に存在すると、断熱材中に大きな気孔が生じやすくなり、気体の対流による伝熱や、気体分子の衝突による伝熱が促進される。その結果、従来の非繊維状粒子を多量に含む断熱材では、熱輻射を散乱させる目的で酸化チタン粉末を含有させたものであっても、満足すべき断熱性能を得ることができなかった。
【0020】
一方、セラミック繊維の平均繊維径は、一般的に上記非繊維状粒子の粒径よりも遥かに小さい。そこで、耐火断熱材中の気孔を小さくして、気体の対流による伝熱や気体分子の衝突による伝熱を抑制するためには、セラミック繊維中に含有される非繊維状粒子の量を減らして、平均繊維径が小さいセラミック繊維の占める割合を増量させることが有効である。
【0021】
上記知見に基づき、本発明者らは、セラミック繊維中に含まれている非繊維状粒子をできる限り取り除き、相対的にセラミック繊維の占める割合を増やすことによって、比表面積が増大し、熱反射効果も大きくなり、熱伝導率が大幅に低下して、断熱材の断熱性能の向上に大きく寄与することを確認した。尚、セラミック繊維の平均繊維径を1.5〜5μmとするのは、5μmを超えると耐火断熱材の熱伝導率が高くなってしまい、逆に1.5μm未満では曲げ強度が低下し、また無機バインダーと共に水に添加して撹拌する際に折れやすいからである。
【0022】
セラミック繊維に含まれる非繊維状粒子の合計量は、使用するセラミック繊維全体の20重量%以下とする。非繊維状粒子の合計量がセラミック繊維全体の20重量%を超えると、耐火断熱材の断熱性能を向上させる効果が不十分となる。セラミック繊維中に含まれている非繊維状粒子は出来る限り取り除くことが望ましいが、処理費用の増大を抑えるため5重量%以上とすることが好ましく、また効果を考慮すると15重量%以下とすることが好ましい。尚、セラミック繊維中の非繊維状粒子(ショット)の含有量は、ISO10635の10(Determination of shot)に準拠して測定することができる。
【0023】
セラミック繊維中に含まれている非繊維状粒子を取り除く方法としては、セラミック繊維を水に分散させて分離する方法が簡便であり好ましい。即ち、セラミック繊維を水に分散させると、セラミック繊維は浮上するが、非繊維状粒子は水中に沈降する。従って、非繊維状粒子が十分に沈降した後、水面近くに浮上しているセラミック繊維を回収することによって、簡単且つ効率的に非繊維状粒子を取り除くことができる。
【0024】
上記セラミック繊維としては、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナジルコニア繊維、アルミナシリカクロミア繊維、シリカアルミナチタニア繊維、生体溶解性繊維などを使用することができ、その中でもシリカアルミナ繊維、シリカアルミナジルコニア繊維又は生体溶解性繊維を好適に用いることができる。例えば、シリカアルミナ繊維、シリカアルミナジルコニア繊維としては、イソライト工業(株)製のイソウール(商品名)などがある。また、生体溶解性繊維としては、イソライト工業(株)製のイソウールBSSR(商品名)やUnifrax Co.,Ltd製のInsulfrax、Isofrax(商品名)などを使用することができる。
【0025】
上記無機バインダー(結合材)としては、シリカゾル、アルミナゾルなど一般的に使用されているものでよい。具体的には、シリカゾルとしては日産化学工業(株)製のコロイダルシリカ、アルミナゾルとしては日産化学工業(株)製のコロイダルアルミナなどを好適に使用することができる。また、上記有機高分子凝集剤としては、澱粉やポリアクリルアミドなど一般的に使用されているものでよい。具体的には、日澱化学工業(株)製の澱粉や、ポリアクリルアミドとしては荒川化学工業(株)製のポリストロン(商品名)などがある。
【0026】
本発明の第1の耐火断熱材においては、セラミック繊維を70〜85重量%、無機バインダーを15〜30重量%含有することが好ましい。また、本発明の第2の耐火断熱材においては、セラミック繊維を85〜99.5重量%、無機バインダーを0.5〜15重量%、有機高分子凝集剤を0.4〜12重量%含有することが好ましい。上記したように本発明の耐火断熱材ではセラミック繊維中の非繊維状粒子の含有量が従来の50〜60重量%から20重量%以下に低下するため、使用されるセラミック繊維(非繊維状粒子を含む)中のセラミック繊維の含有量を従来一般的であった40〜50重量%から80重量%以上にまで増加させることができ、その結果として耐火断熱材の曲げ強度も向上する。
【0027】
ただし、セラミック繊維を70〜85重量%及び無機バインダーを15〜30重量%からなる第1の耐火断熱材においては、無機バインダーの含有量が15重量%未満では十分な強度が得られず、無機バインダーの含有量が30%を超えると十分な断熱性能が得られない。また、セラミック繊維を85〜99.5重量%、無機バインダーを0.5〜15重量%、有機高分子凝集剤を0.4〜12重量%からなる第2の耐火断熱材においては、無機バインダーの含有量が0.5重量%未満では凝集が不十分となり、15重量%を超えると成形時のろ過抵抗が大きくなり成形困難となる。また、有機高分子凝集剤の含有量が0.4重量%未満でも無機バインダ−の場合と同様に凝集が不十分となり、12重量%を超えると成形時のろ過抵抗が大きくなるため好ましくない。
【0028】
上記本発明による第1の耐火断熱材の製造は、上記のごとく予め非繊維状粒子の含有量を20重量%以下とした平均繊維径1.5〜5μmのセラミック繊維を、水に所定量添加し撹拌してセラミック繊維を分散させた後、無機バインダー(結合材)を所定量投入して撹拌混合する。次に、成形用の型を用いて吸引により脱水成形する。得られた成形体は、そのまま耐火断熱材とすることもできるが、更に100℃〜120℃で乾燥することが好ましい。
【0029】
また、上記本発明による第2の耐火断熱材の製造は、上記のごとく予め非繊維状粒子の含有量を20重量%以下とした平均繊維径1.5〜5μmのセラミック繊維を、水に所定量添加し撹拌してセラミック繊維を分散させた後、無機バインダー(結合材)を所定量投入して撹拌混合する。次に、有機高分子凝集剤を添加してフロックを形成させた後、成形用の型を用いて吸引により脱水成形する。得られた成形体は、そのまま耐火断熱材とすることができるが、更に100℃〜120℃で乾燥することが好ましい。
【0030】
本発明による第1及び第2の耐火断熱材では、使用するセラミック繊維に含まれる非繊維状粒子の合計量が繊維全体の20重量%以下に減少されているので、通常の成形用の型を用いた吸引による脱水成形では望ましい密度が得られない場合がある。そのため、上記本発明による第1及び第2の耐火断熱材の製造においては、脱水成形した成形体をローラープレスすることにより、かさ密度を調整することが好ましい。
【0031】
尚、上記成形用の型を用いた吸引による脱水成形によれば、型の内表面と平行な成形面はセラミック繊維が2次元ランダムに配向した面となる。そのため、耐火断熱材を施行する際に、上記成形面が熱の伝播方向に対して垂直になるように耐火断熱材を配置することによって、熱が伝わり難くなり、断熱性をより向上させることができる。
【0032】
このようにして製造される本発明の耐火断熱材は、非繊維状粒子の含有量が20重量%以下のセラミック繊維と無機バインダーとで構成され、無機粉末を含んでいないため、従来に比べて粉立ちやボロフリがなく、加工性や施工性に優れ、耐スポーリング性にも優れているうえ、高強度であって、600℃における熱伝導率が0.060〜0.090W/(m・K)と極めて低く、非常に高い断熱性能を有している。従って、本発明の耐火断熱材は、熱処理炉の炉内面に使用する低熱伝導ボードとして非常に優れている。
【実施例】
【0033】
セラミック繊維としてイソライト工業(株)製のイソウール(商品名)と、無機バインダー(結合材)として日産化学工業(株)製のコロイダルシリカ(SiO濃度:40重量%)、及び有機系高分子凝集剤として日澱化学工業(株)製の澱粉を使用して、以下の実施例1〜3及び比較例1〜2により耐火断熱材を製造した。尚、上記セラミック繊維は、Al:45重量%以上、Al+SiO:98重量%以上の組成を有し、平均繊維径が実施例1〜3では2.3μm及び比較例1〜2では2.5μmである。
【0034】
[実施例1]
まず、上記セラミック繊維を水に投入して分散させ、静置することによってセラミック繊維を浮上させると共に、非繊維状粒子を沈降させた。非繊維状粒子が十分に沈降した後、水面近くに浮上しているセラミック繊維を回収することによって、非繊維状粒子が取り除かれ、非繊維状粒子の含有量が10.7重量%のセラミック繊維を回収した。尚、セラミック繊維中の非繊維状粒子(ショット)の含有量は、ISO10635の10(Determination of shot)に準拠して測定した。
【0035】
次に、上記セラミック繊維(非繊維状粒子の含有量10.7重量%)と無機バインダーを水に添加して数分間撹拌することにより、セラミック繊維95重量%と無機バインダー5重量%を含むスラリーを形成した。このスラリーに有機系高分子凝集剤の水溶液を加えて凝集させ、型を用いて縦900mm×横600mm×厚み25mmの板状に吸引成形した。
【0036】
得られた板状の成形体を120℃で乾燥させ、実施例1の耐火断熱材を製造した。乾燥後の耐火断熱材のかさ密度は180kg/mであった。また、この乾燥後の耐火断熱材について、JIS R2216(耐火物製品の蛍光X線分析方法)により化学成分を分析すると共に、熱伝導率(600℃)、3点曲げ強度、加熱線収縮率(1200℃×24時間)及び灼熱減量を測定し、得られた結果を下記表1に示した。尚、熱伝導率はJIS A1412−1(熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法、第1部:保護熱板法(GHP法))、曲げ強度はJIS R2619(耐火断熱れんがの曲げ強さの試験方法)、加熱線収縮率はJIS R3311(セラミックファイバーブランケット)、灼熱減量はJIS R2522(耐火物用アルミナセメントの化学分析方法)に準拠して測定した。
【0037】
[実施例2]
上記実施例1と同様の方法により非繊維状粒子の含有量を19.3重量%としたセラミック繊維を使用した以外は上記実施例1と同様にして、縦900mm×横600mm×厚み25mmの実施例2の耐火断熱材を製造した。
【0038】
得られた乾燥後の耐火断熱材のかさ密度は190kg/mであった。また、この乾燥後の耐火断熱材について、上記実施例1と同様にして化学成分、熱伝導率(600℃)、3点曲げ強度、加熱線収縮率及び灼熱減量を測定し、得られた結果を下記表1に示した。
【0039】
[実施例3]
上記実施例1と同じセラミック繊維(非繊維状粒子の含有量10.7重量%)と無機バインダーを水に添加して数分間撹拌することにより、セラミック繊維75重量%と無機バインダー25重量%を含むスラリーを形成した。このスラリーを、型を用いて縦900mm×横600mm×厚み25mmの板状に吸引成形した。
【0040】
得られた乾燥後の耐火断熱材のかさ密度は300kg/mであった。また、この乾燥後の耐火断熱材について、上記実施例1と同様にして化学成分、熱伝導率(600℃)、3点曲げ強度、加熱線収縮率及び灼熱減量を測定し、得られた結果を下記表1に示した。
【0041】
[比較例1]
上記実施例1の方法により非繊維状粒子を取り除く処理を行っていないセラミック繊維(非繊維状粒子含有量53重量%)を使用した以外は上記実施例1と同様にして、縦900mm×横600mm×厚み25mmの比較例1の耐火断熱材を製造した。
【0042】
得られた乾燥後の耐火断熱材のかさ密度は270kg/mであった。また、この乾燥後の耐火断熱材について、上記実施例1と同様にして化学成分、熱伝導率(600℃)、3点曲げ強度、加熱線収縮率及び灼熱減量を測定し、得られた結果を下記表1に示した。
【0043】
[比較例2]
上記比較例1と同じく非繊維状粒子を取り除く処理を行っていないセラミック繊維(非繊維状粒子含有量53重量%)を使用した。このセラミック繊維(非繊維状粒子の含有量53重量%)75重量%と、熱輻射散乱材としての酸化チタン粉末20重量%と、無機バインダー5重量%を含むスラリーを形成した。こスラリーに有機系高分子凝集剤の水溶液を加えて凝集させ、型を用いて縦900mm×横600mm×厚み25mmの板状に吸引成形した。
【0044】
得られた乾燥後の耐火断熱材のかさ密度は290g/mであった。また、この乾燥後の耐火断熱材について、上記実施例1と同様にして化学成分、熱伝導率(600℃)、3点曲げ強度、加熱線収縮率及び灼熱減量を測定し、得られた結果を下記表1に示した。
【0045】
【表1】
【0046】
[表1の考察]
上記表1から分るように、非繊維状粒子含有量が20重量%以下のセラミック繊維を使用した実施例1〜3の耐火断熱材における熱伝導率の値は、従来例の非繊維状粒子を取り除いていないセラミック繊維を使用した比較例1の耐火断熱材の50%程度まで低下し、また、更に熱輻射散乱材(酸化チタン)を添加した比較例2の耐火断熱材に対しても20%を超える低下を示した。これらの結果は、非繊維状粒子含有量の減量が耐火断熱材の熱伝導率低下に非常に効果的であることを示している。
【0047】
尚、耐火断熱材の熱伝導率はかさ密度にも依存する。一般的に耐火断熱材では、かさ密度が350〜400kg/m程度までは、かさ密度が高くなると熱伝導率は低下する傾向にある。それらのことを踏まえると、実施例1〜2における耐火断熱材のかさ密度は比較例の耐火断熱材に比べて低いため、比較例と同程度までかさ密度を高くすると更なる熱伝導率の低下が見込まれ、実施例3はこれを証明している。
【0048】
非繊維状粒子含有量が10.7重量%のセラミック繊維を使用した実施例1の耐火断熱材の曲げ強度は、従来例の非繊維状粒子含有量が53重量%のセラミック繊維を使用した比較例1の耐火断熱材の2倍に達し、非繊維状粒子含有量が19.3重量%のセラミック繊維を使用した実施例2の耐火断熱材の曲げ強度は同じく30%程度の向上を示した。このことは、非繊維状粒子含有量の減量により、耐火断熱材中のセラミック繊維含有量が増加したため曲げ強度も向上した結果である。また、輻射散乱材の酸化チタン粉末を添加した比較例2の耐火断熱材の曲げ強度は、従来例である比較例1の耐火断熱材よりも低い値であるが、これは全体に占めるセラミック繊維の割合が低いためである。
【0049】
曲げ強度は、かさ密度が大きくなるにつれて高くなり、また有機高分子凝集剤を添加したり、その量を増加させたりすると高くなる。実施例3のかさ密度が実施例1〜2に比べ大きくても曲げ強度が小さいのは、有機高分子凝集剤を含まないためである。