【文献】
chapter 1 Cell Biology & Imaging, Invitrogen 2004-2005年版カタログ, 2004, pages 1-44&1-49
【文献】
The Journal of Histochemistry and Cytochemistry,1995年,Vol.43,No.9,pp.907-915
【文献】
村上徹、外2名, 新しい蛍光プローブの使い方, 顕微鏡, 2007, 第42巻, 第1号, pages 65-68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非ヒト動物からリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞を採取し、採取したリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞を目的抗原にin vitroで感作させるか、または、非ヒト動物を目的抗原で免疫し、
免疫成立後の非ヒト動物からリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞を採取し、
前記感作させた、または採取したリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞と、(1)標識した目的抗原、および(2)形質細胞および/または形質芽細胞に選択的に結合する標識物質とを混合し、
前記(1)標識した目的抗原および(2)標識物質が結合した細胞を選択することを含む、
目的抗原に特異的に結合する形質細胞および形質芽細胞の少なくとも一方を選択する方法であって、
形質細胞および/または形質芽細胞に選択的に結合する標識物質が、細胞の小胞体に対する染色選択性が、小胞体以外の細胞小器官に対する染色選択性に比べて高い蛍光プローブであって、該蛍光プローブによる染色により、形質細胞及び形質芽細胞と形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞とを識別可能な、形質細胞及び/又は形質芽細胞の同定又は単離に用いるための蛍光プローブであり、(1)両親媒でカチオニックであり、かつ中程度の脂溶性を有する物質、および(2)小胞体局在を示すタンパク質に対して一定以上の親和性を有する物質から成る群から選ばれ、
前記両親媒は、両親媒性インデックス(AI)が、+6>AI>0であり、中程度の脂溶性は、疎水性インデックス(logP)が、+6>logP>0であり、一定以上の親和性は、解離定数が0.1μM〜0.1nMの範囲である方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[目的抗原に特異的に結合する形質細胞、形質芽細胞の選択方法]
本発明の第1の態様は、目的抗原に特異的に結合する形質細胞および形質芽細胞の少なくとも一方を選択する方法である。
【0017】
本発明の第1の態様は、非ヒト動物を対象とする方法(以下NHA法と呼ぶ)とヒトを対象とする方法(以下HU法と呼ぶ)の2つの方法に分けられる。非ヒト動物を対象とするNHA法は、
非ヒト動物からリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞を採取し、採取したリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞を目的抗原にin vitroで感作させるか、または、非ヒト動物を目的抗原で免疫し、
免疫成立後の動物からリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞を採取し、
前記感作させた、または採取したリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞と、(1)標識した目的抗原および(2)形質細胞および/または形質芽細胞に選択的に結合する標識物質とを混合し、
前記(1)標識した目的抗原および(2)標識物質が結合した細胞を選択することを含む。
NHA法により、目的抗原に特異的に結合する非ヒト動物の形質細胞および形質芽細胞の少なくとも一方を選択することができる。
【0018】
ヒトを対象とするHU法は、
ヒトからリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞を採取し、採取したリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞を目的抗原にin vitroで感作させるか、または目的抗原に対する抗体を有するヒトからリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞を採取し、
前記感作させた、または採取したリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞と、(1)標識した目的抗原、および(2)形質細胞および/または形質芽細胞を選択的に結合する標識物質を混合し、
前記(1)標識した目的抗原および(2)標識物質が結合した細胞を選択することを含む。
HU法により、目的抗原に特異的に結合するヒトの形質細胞および形質芽細胞の少なくとも一方を選択することができる。
【0020】
<非ヒト動物の目的抗原での免疫>
非ヒト動物を目的抗原で免疫する。
本発明において「非ヒト動物」とは、ヒト以外の免疫系を有する全ての動物を意味する。そのような動物の例としては、哺乳動物、鳥類などを挙げることができる。哺乳動物の例としては、類人猿、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ロバ、ラクダ、ラマ、アルパカ、トナカイ、スイギュウ、ヤク、モルモット、ウサギ、ミンク、マウス、ラット、スナネズミ、ハムスター、ゴールデンハムスター、アルメニアンハムスター、フェレット、ミニブタ、アライグマ、フクロネズミ、スンクス、カンガルー、イルカなどを挙げることができる。鳥類としては、ニワトリ、ウズラまたはダチョウなどを挙げることができる。
【0021】
本発明において「目的抗原」とは、ウイルス、マイコプラズマ、細菌、カビ等の微生物、貝類等の冠輪動物、昆虫や甲殻類等の脱皮動物、脊椎動物等の新口動物及びこれらの構成物質、蛋白質、糖、脂質、複合糖質、核酸、天然低分子有機化合物、天然高分子有機化合物、人工低分子有機化合物、人工高分子有機化合物、金属錯体などである。但し、目的抗原の種類を限定する意図ではなく、これらはあくまでも例示である。
【0022】
非ヒト動物の免疫に用いる目的抗原は、目的抗原をそのまま用いることもできるが、目的抗原を含む生物等をそのまま、あるいは死滅させた状態あるいはその抽出液として用いることもでき、あるいは、適当な担体結合または混合して用いることもできる。
【0023】
非ヒト動物からリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞を採取し、採取したリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞を目的抗原にin vitroで感作させる。リンパ液等に対するin vitroでの目的抗原による感作は、以下のように実施できる。非ヒト動物より抗原提示細胞である樹状細胞、T細胞、B細胞を採取する。次に試験管中で抗原を樹状細胞に作用させ貪食・消化させ、抗原の提示能力を備えるようになった成熟樹状細胞を作製する。これにT細胞並びにB細胞とインターロイキン2等のサイトカインやpoly(dI-dC)等の免疫刺激剤を加え、抗原に対し応答するB細胞を試験管内で増殖・分化させ、最終的に抗体産生細胞である形質細胞および形質芽細胞を得る。
【0024】
本発明において「非ヒト動物を目的抗原で免疫する」とは、非ヒト動物に目的抗原を接触させて、非ヒト動物において、目的抗原に対する免疫を発現させることを意味する。目的抗原に対する免疫の発現方法は特に制限されるものではないが、例えば、非ヒト動物に目的抗原を投与または移植することで非ヒト動物を免疫することができる。目的抗原の投与方法や移植方法にも特に制限はないが、投与方法としては、例えば、経気投与、経口投与、皮下注射、静脈注射、筋肉注射、あるいは非ヒト動物への遺伝子導入により抗原を動物体内で発現させる方法などを挙げることができる。あるいは、非ヒト動物の皮膚に目的抗原を接触させることでも非ヒト動物を免疫することができる。
【0025】
非ヒト動物の目的抗原での免疫は、目的抗原による免疫が非ヒト動物において成立するまで行う。従って、非ヒト動物は、目的抗原による免疫が成立するまで、目的抗原を接触させる。目的抗原の非ヒト動物への接触の頻度、期間、一回の接触に使用される目的抗原の量は、免疫成立の容易さに応じて適宜決定できる。非ヒト動物において、目的抗原による免疫が成立しているか否かは、常法、例えば、非ヒト動物より血液を採取し血清中に含まれる抗体をELISA法により測定することにより確認することができる。
【0026】
<免疫成立後の動物からのリンパ節等の採取>
免疫成立後の動物からリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞を採取する。本発明の目的は、目的抗原に特異的に結合する非ヒト動物の形質細胞および形質芽細胞の少なくとも一方を選択することであるので、形質細胞および/または形質芽細胞を含む可能性が高い、リンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞を採取する。
【0027】
形質細胞および形質芽細胞は、Bリンパ球が最終分化したもので、抗体産生に特化した細胞である。アフィニティーマチュレーションと呼ばれる抗体遺伝子の体細胞突然変異と抗原による選択が既に行われているため、結合能の高い抗体単離にこれらの細胞は特に有用である。しかし、形質細胞および形質芽細胞はいくつかのサブセットからなる不均一な細胞集団であり、リンパ組織内の存在率は0.1%以下と少ないことから、高純度の単離は難しい。従来の方法では、末梢血やリンパ節より形質細胞および形質芽細胞を同定・単離するには、最低でも3種類以上の細胞表面マーカーに対する抗体を組み合わせた数段階のポジティブ・ネガティブ選別操作が必要であった(Sanderson, R. D., Lalor, P., Bernfield, M. B lymphocytes express and lose syndecan at specific stages of differentiation: Cell Regulation 1: 27-35(1989):非特許文献1(その全記載は、ここに特に開示として援用される))。
【0028】
リンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄は、例えば、以下のように調製することができる。皮下、筋肉又はフットパッドに抗原を注射し約1ヶ月以上経過した非ヒト動物より、腫脹したリンパ液、リンパ組織を外科的に取り出す。リンパ節に付随した組織を実体顕微鏡下で取り除いた後、ピンセットを用いリンパ節の皮膜を破ることでリンパ節内部の細胞をPBS溶液(10mM phosphate buffer、120mM NaCl、2.7mM KCl、pH 7.6)中に分散させる。血球試料は、免疫動物からヘパリン採血によって得られた血液を密度勾配遠心法により分離された単核球を用いる。骨髄は、免疫動物より取り出された大腿骨の両骨末端を切断し、一方の骨末端に挿入した注射針からPBS溶液を骨髄に流入させることで、他方の骨末端から流出させた骨髄細胞を用いる。
【0029】
<細胞の選択>
採取したリンパ節から、目的抗原に特異的に結合する非ヒト動物の形質細胞および形質芽細胞の少なくとも一方を選択する。この選択を行うために、(1)標識した目的抗原、および(2)形質細胞および/または形質芽細胞に選択的に結合する標識物質を用いる。
【0030】
(1)標識した目的抗原
標識した目的抗原とは、非ヒト動物の免疫に用いた目的抗原と同一のエピトープを含む物質である。従って、標識した目的抗原と免疫に用いた目的抗原とは、全く同一の物質であることもできるし、共通するエピトープを含む別の物質であることもできる。
【0031】
目的抗原の標識に用いる物質は特に制限はない。標識した目的抗原が結合した形質細胞および/または形質芽細胞を選択できる標識であればよい。そのような標識としては、例えば、蛍光標識、磁気ビーズ標識などを挙げることができる。蛍光標識の種類には特に制限はない。但し、形質細胞および/または形質芽細胞に選択的に結合する標識物質とは、標識として区別できるものであることが、目的抗原並びに形質細胞および/または形質芽細胞に選択的に結合する標識物質が結合した細胞を、目的抗原のみに結合した細胞、並びに形質細胞および/または形質芽細胞に選択的に結合する標識物質のみに結合した細胞とから区別できるものであればよい。
【0032】
(2)形質細胞および/または形質芽細胞に選択的に結合する標識物質
形質細胞および/または形質芽細胞に選択的に結合する標識物質としては、例えば、以下に説明する蛍光プローブ1を挙げることができる。
【0033】
<蛍光プローブ1>
蛍光プローブ1は、形質細胞並びに形質芽細胞の同定または単離に用いるための蛍光プローブであって、細胞の小胞体に対する親和性が、他の小器官に対する親和性に比べて高い、換言すると、細胞の小胞体を選択的に染色する蛍光プローブである。形質細胞並びに形質芽細胞は、形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞に比べて、小胞体が異常に発達しており、その結果、蛍光プローブ1での染色により得られる蛍光強度は、形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞が蛍光プローブ1で染色された場合の蛍光強度に比べて、形質細胞並びに形質芽細胞と形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞とを識別可能な程度の差を示す。蛍光プローブ1が示す、上記蛍光強度比(形質細胞並びに形質芽細胞の蛍光強度/形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞の蛍光強度)は、例えば、3倍以上である。
【0034】
形質細胞並びに形質芽細胞の小胞体と形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞の小胞体とでは、蛍光プローブ1に対する親和性に大きな違いはないが、小胞体の発達の程度の違いにより上記蛍光強度の相違を生じる。その結果、上記蛍光強度比に基づいて、蛍光プローブ1による染色により、形質細胞並びに形質芽細胞と形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞とを識別することができる。
【0035】
蛍光プローブ1で染色することで、形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞が共存する形質細胞並びに形質芽細胞を、形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞からの蛍光強度と形質細胞並びに形質芽細胞からの蛍光強度の強弱の違いで両者を識別可能である。そのため、蛍光プローブ1で染色することで、形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞が共存する細胞群の中から、形質細胞並びに形質芽細胞を容易に同定でき、かつ同定した形質細胞並びに形質芽細胞を採取することで、形質細胞並びに形質芽細胞を多く含む細胞群を得ることかできる。
【0036】
蛍光プローブ1は、染色された形質細胞並びに形質芽細胞からの蛍光強度が、染色された形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞からの蛍光強度の3倍以上であれば、両者の識別が可能であり、識別を容易にするという観点からは、好ましくは4倍以上、さらに好ましくは5倍以上のものである。但し、この蛍光強度比は、形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞の種類によって小胞体の発達の程度が異なるので、形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞の種類が異なると変化する。前記蛍光強度比が高いほど、形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞を含む細胞群の中から形質細胞並びに形質芽細胞をより効率よく同定できる。形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞としては、例えば、赤血球、血小板、Tリンパ球、Bリンパ球、顆粒球、マクロファージ、好酸球、好塩基球、好酸球、マクロファージ等を挙げることができる。
【0037】
本発明において、蛍光プローブ1を用いた形質細胞並びに形質芽細胞と形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞との判別は以下のように行うことができる。蛍光プローブ1を細胞懸濁液に加え37℃にて30分間染色を行う。染色に適した蛍光プローブ1の濃度は、蛍光プローブ1の種類により異なるが、例えば、100nM〜1μMである。染色後、細胞をPBSにて洗浄する。洗浄した細胞は、例えば、(1)蛍光顕微鏡を用いて細胞における蛍光プローブの局在を観察すること、または(2)細胞から発せられる蛍光の強度に基づいて、形質細胞並びに形質芽細胞であるか、または形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞であるかを判別できる。形質細胞並びに形質芽細胞と形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞との判別方法については、形質細胞並びに形質芽細胞同定・分離方法において詳述する。
【0038】
さらに上記形質細胞並びに形質芽細胞と形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞との判別方法を応用して、形質細胞並びに形質芽細胞の小胞体及び形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞の小胞体に対する染色選択性が未知の物質から蛍光プローブ1として利用可能な物質をスクリーニングすることもできる。細胞の小胞体に対する染色選択性が高い、本発明の蛍光プローブ1として適した蛍光プローブのスクリーニングは、後述する、小胞体に局在するタンパク質の免疫染色(形質細胞並びに形質芽細胞では免疫グロブリン)や、小胞体移行性の組換え蛍光タンパク質を培養細胞で発現させることで、細胞の小胞体を同定する方法を利用した、細胞全体の蛍光強度Aと小胞体からの蛍光強度Bの割合(B/A)を求める方法を利用して行うことができる。
【0039】
蛍光プローブ1として利用可能な物質をスクリーニングする方法においては、形質細胞並びに形質芽細胞のみを用いても、形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞のみを用いても実施できる。但し、形質細胞並びに形質芽細胞は小胞体が発達しており、染色により高い蛍光強度が得られることから、形質細胞並びに形質芽細胞を用いる方が、細胞の小胞体に対する物質の染色選択性の評価はより容易である。しかし、形質細胞並びに形質芽細胞の入手は容易でないことから、形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞を用いて小胞体への染色性(染色力)を評価して、蛍光プローブ1として利用可能な物質をスクリーニングすることもできる。例えば、一般的な培養細胞(例えばHela細胞)を用いた染色実験において、上記細胞全体の蛍光強度Aと小胞体からの蛍光強度Bの割合(B/A)を求めることで、蛍光プローブ1として利用可能な物質をスクリーニングすることができる。但し、細胞として形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞を用いる場合には、閾値とすべきB/Aの値を、細胞における小胞体の発達の程度に応じて、形質細胞並びに形質芽細胞を用いるスクリーニング法で採用する閾値としてのB/Aの値よりは、低い値、例えば、50%程度に適宜設定することが適当である。
【0040】
形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞の例としては、赤血球、血小板、Tリンパ球、Bリンパ球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球等を他の細胞として挙げることができる。さらに、上記方法でのスクリーニングには、形質細胞並びに形質芽細胞の代わりに、ハイブリドーマ細胞、形質細胞並びに形質芽細胞腫瘍細胞、または多発性骨髄腫細胞を用いることもできる。これは、ハイブリドーマ細胞、形質細胞並びに形質芽細胞腫瘍細胞、および多発性骨髄腫細胞も、免疫グロブリンを産生するため小胞体が発達しており、このため染色により高い蛍光強度が得られ、細胞の小胞体に対する物質の染色選択性の評価がより容易であるためである。
【0041】
形質細胞並びに形質芽細胞および形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞の小胞体に対する染色選択性が高い蛍光プローブ1は、物質の例としては、(1)両親媒でカチオニックであり、かつ中程度の脂溶性を有する物質、および(2)小胞体局在を示すタンパク質に対して一定以上の親和性を有する物質を挙げることができる。このような(1)または(2)の性質を有する物質は、形質細胞並びに形質芽細胞の小胞体に対する染色性および形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞の小胞体に対する染色性の両方が、細胞のその他の小器官に対する染色性に比べて高くなる。
【0042】
上記(1)における「両親媒でカチオニックである」とは、具体的には、両親媒性インデックス(AI)が、例えば、+6>AI>0であることを意味する。ただし両親媒性インデックスは分子の脂溶性ドメインの見かけ上のlogP値を算出することで得られた値である。具体的には、Hansch らのフラグメント値に基づき、炭素鎖の長さとその位置関係と陽イオン性の4級アンモニウム基の極性効果を考慮し、Morrallらのモデルに従って算出された値である。[Hansch C, Leo AJ. Exploring QSAR: Fundamentals and Applications in Chemistry and Biology, p.160, American Chemical Society: Washington, DC, 1995.,Morrall SW, Herzog RR, Kloepper-Sams P, Rosen MJ. Octanol/water partitioning of surfactants and its relevance to toxicity and environmental behavior. Proc 4th World Surfactants Congress,vol. 3. AEPSAT: Barcelona, 1996; 220-227.
【0043】
上記(1)における「中程度の脂溶性」とは、疎水性インデックス(logP)が、例えば、+6>logP>0であることを意味する。疎水性インデックスは、Hansch らのフラグメント推算法により算出された分子全体の疎水性値である。具体的には、AIで示された疎水基にこれに付随した構造の影響を加算したものである。
【0044】
上記(2)における「小胞体局在を示すタンパク質に対して一定以上の親和性を有する」とは、具体的には解離定数が0.1μMから0.1nMの親和性を有することを意味する。小胞体局在を示すタンパク質に対して一定以上の親和性を有する物質も、細胞の小胞体を選択的に染色する蛍光プローブである。
【0045】
(1)両親媒でカチオニックであり、かつ中程度の脂溶性を有する物質の例としては、下記A、BまたはCで示される化合物を挙げられる。
【0046】
式Aで示される化合物は、DiOC6(3) (3、3'-dihexyloxacarbocyanine iodide)であり、低濃度ではミトコンドリアに集積するが、高濃度では小胞体に集積する。式Bで示される化合物は、rhodamine B hexyl esterであり、低濃度ではミトコンドリアに集積するが、高濃度では小胞体に集積する。式Cで示される化合物は、 ER-Tracker Blue white DPXであり、主に小胞体に集積し、高濃度ではゴルジ体も染色する。実施例で使用した蛍光プローブである。これらA、BまたはCで示される化合物はいずれも両親媒でカチオニック、中程度の脂溶性を有する(参考文献、Why fluorescent probes for endoplasmic reticulumare selective: an experimental and QSAR-modeling studyを参照)。
【0047】
Aで示される化合物の両親媒性インデックス(AI)および疎水性インデックスは、それぞれ4.5と4.4であり、1価の陽イオンを有する。Bで示される化合物の両親媒性インデックス(AI)および疎水性インデックスは、それぞれ4.8と5.9であり、1価の陽イオンを有する。Cで示される化合物の両親媒性インデックス(AI)および疎水性インデックスは、それぞれ5.1と0.7であり、1価の陽イオンを有する。Cで示される化合物は、実施例で示すように、形質細胞並びに形質芽細胞を染色した場合の蛍光強度が、形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞を染色した場合の蛍光強度の4倍以上である。
【0049】
色素(Dye)1、5、7及び10は、両親媒でカチオニックであり、かつ中程度の脂溶性を有する物質であり、蛍光プローブ1の例である。これらの色素は、米国出願公開US2010/0068752A1(その全記載は、ここに特に開示として援用される)に記載の色素である。これらの色素は、上記米国出願公開の記載に基づいて合成できる他、一部は市販されている。色素(Dye)1の両親媒性インデックス(AI)および疎水性インデックスは、それぞれ4.95と3.77であり、1価の陽イオンを有する。色素(Dye)5の両親媒性インデックス(AI)および疎水性インデックスは、それぞれ5.11と4.32であり、1価の陽イオンを有する。色素(Dye)7の両親媒性インデックス(AI)および疎水性インデックスは、それぞれ4.19と3.29であり、1価の陽イオンを有する。色素(Dye)10の両親媒性インデックス(AI)および疎水性インデックスは、それぞれ4.25と5.71であり、1価の陽イオンを有する。色素(Dye)1、5、7及び10の疎水性インデックスは、CompuDrug社の計算ソフトPallasを用い、2種の独立したlogP算出指標( logP(annlogp) 、logP(atomic6) )に、実測値との一致性を高めるための係数を掛けた数値の和であるlogP(combined) = 0.863 × logP(annlogp) + 0.137 × logP(atomic6)の値として算出した。両親媒性インデックスは、logP(annlogp)の値からリン酸基 (P-0)を除いたものとして算出した。
【0051】
(2)小胞体局在を示すタンパク質に対して一定以上の親和性を有する物質の例としては、例えば、蛍光標識glibenclamide、および蛍光標識Brefeldin Aを挙げることができる。
【0052】
glibenclamideは、下記式で示される化合物であり、商品名:ER-Tracker(登録商標) Green (BODIPY(R) FL glibenclamide、 ER-Tracker(登録商標) Red、(BODIPY(R) TR glibenclamideは、glibenclamideに蛍光色素(BODIPY)を結合させた化合物として市販されている。glibenclamide化合物は、小胞体に多いsulphonylurea receptors of ATP-sensitive K+ channelsに結合し、その作用を阻害することか知られており、糖尿病治療薬として用いられている。glibenclamideのATP-感受性 K+ channelへの解離定数は0.1〜3.6nMである。
【0054】
Brefeldin Aは、下記式で示される化合物であり、商品名:BODIPY-brefeldin AはBrefeldin Aに蛍光色素(BODIPY)が結合された化合物として市販されている。Brefeldin Aは、小胞体からゴルジ体への小胞輸送に働くGTP-exchanging factorであるArf1タンパク質の機能阻害を示す。
【0056】
リンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄に対する蛍光プローブ1の添加量は、検出器の感度、細胞懸濁液の組成、染色時間等を考慮して適宜決定できるが、例えば、ER-Tracker Blue white DPXの場合 100nM〜1μMの範囲であることができる。但し、この範囲に限定される意図ではない。
【0057】
<(1)標識した目的抗原および(2)標識物質が結合した細胞の選択>
(1)標識した目的抗原および(2)標識物質が結合した細胞の選択は、目的抗原の標識および形質細胞および/または形質芽細胞に特異的に結合する標識物質の種類に応じて、適宜選択することができる。目的抗原の標識および形質細胞および/または形質芽細胞に特異的に結合する標識物質のいずれもが蛍光標識(例えば、蛍光色素)の場合には、これら標識が発する蛍光を利用して、(1)標識した目的抗原および(2)標識物質が結合した細胞を選択することができる。(1)標識した目的抗原および(2)標識物質が結合した細胞の選択方法やこの方法に用いる装置には特に制限はない。既存の細胞を個々の細胞レベルで分離する方法も装置をそのまま利用できる。
【0058】
蛍光プローブ1を用いて染色を施したリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄は、蛍光に基づいて形質細胞並びに形質芽細胞(または形質細胞並びに形質芽細胞の可能性が高い細胞)を同定する。形質細胞並びに形質芽細胞を同定する方法には、前述のように、(1)染色を施した細胞における蛍光プローブの局在を蛍光顕微鏡下で観察する方法と、(2) 染色を施した細胞から発せられる蛍光強度に基づく方法がある。
【0059】
(1)蛍光顕微鏡を用いて細胞における蛍光プローブの局在を観察する方法は、細胞に含まれる小胞体の領域が強染色されている(即ち、強い蛍光を発している)が、観察対象である1つの細胞について、強染色されている小胞体の領域の面積的な割合が約65%以上である細胞を形質細胞並びに形質芽細胞と同定できる。また、面積的な割合ではなく、その1つの細胞について、その細胞全体の蛍光強度を100%としたときに、小胞体からの蛍光強度の割合が約65%以上である細胞を形質細胞並びに形質芽細胞と同定することもできる。形質細胞並びに形質芽細胞の場合、一つの細胞全体からの蛍光強度のうち小胞体の占める蛍光強度が約65%であり、他の細胞小器官(ミトコンドリア、ゴルジ体、形質膜等)に35%蛍光色素が移行する。
【0060】
細胞全体の蛍光強度と小胞体からの蛍光強度の割合は、小胞体に局在するタンパク質の免疫染色(形質細胞並びに形質芽細胞では免疫グロブリン)や、小胞体移行性の組換え蛍光タンパク質を培養細胞で発現させることで、細胞の小胞体を同定する方法を利用して、以下のように求めることができる。
【0061】
例えば293細胞を用い組換え蛍光タンパク質(赤)を培養細胞で発現させ、この細胞を蛍光プローブ1(例えばER-Tracker Blue White)で染色する。蛍光顕微鏡の画像解析装置を用い、細胞全体に占める蛍光プローブ1の蛍光強度を計測してAと表示し、及び組換え蛍光タンパク質(赤)で染色されている領域内(小胞体)の蛍光プローブ1の蛍光強度を計測してBと表示する。蛍光強度Bは小胞体に局在する蛍光プローブ1の量に相当する。そのため、1つの細胞全体からの蛍光強度Aに対するその細胞の小胞体からの蛍光強度Bの割合は、B/A x 100(%)として表示できる。実施例における結果では、形質細胞並びに形質芽細胞では、1つの細胞全体に占めるER-tracker Blue/whiteの強度A、及び免疫グロブリン(緑)で染色されている領域内(小胞体)のER-tracker Blue/whiteの蛍光強度Bを計測したところ、B/A x 100の値が65%以上となった。
【0062】
(2)蛍光強度に基づく形質細胞並びに形質芽細胞の同定は、例えば、蛍光スキャナー、蛍光顕微鏡、フローサイトメーター、セルソーター等により実施できる。蛍光プローブ1は、前述のように形質細胞並びに形質芽細胞で得られる蛍光強度が形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞で得られる蛍光強度に比べ、例えば、3倍以上、好ましくは4倍以上、さらに好ましくは5倍以上高い。そのため、蛍光プローブ1に染色された細胞から形質細胞並びに形質芽細胞の候補を、上記蛍光スキャナー等を用いて蛍光強度に基づいて容易に同定できる。
【0063】
形質細胞並びに形質芽細胞の候補として選択する基準としての蛍光強度比(形質細胞並びに形質芽細胞/形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞)を高く設定すればそれだけ、形質細胞並びに形質芽細胞の候補に含まれる真の形質細胞並びに形質芽細胞の比率は高まる。しかし、形質細胞並びに形質芽細胞以外の細胞に比べれば高い蛍光強度を示すが、基準としての蛍光強度比未満の比較的低い蛍光強度しか示さない形質細胞並びに形質芽細胞について、排除される可能性がある。従って、試料とするリンパ液、リンパ組織または血球試料に含まれる形質細胞並びに形質芽細胞の特質、特に小胞体の発達の程度を考慮して、形質細胞並びに形質芽細胞の候補として選択する基準としての蛍光強度比を選択することが好ましい。
【0064】
本発明の方法は、上記方法で同定された形質細胞並びに形質芽細胞の候補をさらに採取(分取)することが好ましい。同定された細胞の採取は、例えば、セルソーターによる分取により行うことができる。蛍光に基づく形質細胞並びに形質芽細胞の同定と蛍光に基づいて形質細胞並びに形質芽細胞(または形質細胞並びに形質芽細胞の可能性が高い)と同定または判断された形質細胞並びに形質芽細胞の候補は、セルソーターにより分取される。
【0065】
細胞の選択は、細胞を複数の細胞の集団として選択し、分離することもできるが、好ましくは、細胞を1つ1つ個別に選択し、分離する。ここで選択される細胞はいずれも目的抗原に対する結合性を有する細胞であるが、各細胞が有する目的抗原に対する抗体は、必ずしも同一ではなく、各抗体の抗原結合部位のアミノ酸配列は異なることが予想される。従って、細胞を1つ1つ個別に選択し、分離し、後述する目的抗原に特異的な抗体または抗体の断片の製造方法に、それぞれの細胞を1つずつ適用することで、同一の目的抗原に対して特異的に結合する、異なるモノクローナル抗体を得ることが可能になる。
【0066】
この方法で選択された細胞は、目的抗原に対して結合性を示すものであり、かつ形質細胞および/形質芽細胞である可能性が高い細胞であり、この方法により、目的抗原に特異的に結合する非ヒト動物の形質細胞および形質芽細胞の少なくとも一方を選択することができる。
【0067】
次に、ヒトを対象とするHU法について説明する。HU法は、ヒトからリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞を採取し、採取したリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞を目的抗原にin vitroで感作させるか、または細胞を選択するための試料として、目的抗原に対する抗体を有するヒトから提供を受けたリンパ液、リンパ組織、血球試料又は骨髄由来の細胞を用いる。採取したリンパ液等の目的抗原によるin vitroでの感作は、前述と同様の方法で行うことができる。即ち、ヒトより抗原提示細胞である樹状細胞、T細胞、B細胞を採取する。次に試験管中で抗原を樹状細胞に作用させ貪食・消化させ、抗原の提示能力を備えるようになった成熟樹状細胞を作製する。これにT細胞並びにB細胞とインターロイキン2等のサイトカインやpoly(dI-dC)等の免疫刺激剤を加え、抗原に対し応答するB細胞を試験管内で増殖・分化させ、最終的に抗体産生細胞である形質細胞および形質芽細胞を得る。
【0068】
抗体を有するヒトから提供を受けたリンパ液等については、より具体的には、目的抗原に対する抗体を有するヒトから提供を受けた血液、または病気の治療等の目的により手術で切除されたリンパ節等を用いる。さらに具体的には、目的抗原に対する抗体を有するヒトから提供を受けた血液または組織から血球またはリンパ球を分離し、これと、(1)標識した目的抗原、および(2)形質細胞および/または形質芽細胞を選択的に結合する標識物質を混合する。免疫に用いる目的抗原、(1)標識した目的抗原および(2)形質細胞および/または形質芽細胞を選択的に結合する標識物質は、NHA法と同様である。さらに、(1)標識した目的抗原および(2)形質細胞および/または形質芽細胞を選択的に結合する標識物質に結合した細胞の選択についても、NHA法と同様である。
【0069】
HU法では、目的抗原に対する抗体を有するヒトから提供を受けた試料を用いるため、目的抗原に特異的に結合するヒトの形質細胞および形質芽細胞の少なくとも一方を選択することができる。
【0070】
[目的抗原に特異的な抗体または抗体の断片の製造方法]
本発明の第2の態様は、目的抗原に特異的な抗体または抗体の断片の製造方法である。
【0071】
この方法は、上記本発明の方法で目的抗原に特異的に結合する形質細胞および形質芽細胞の少なくとも一方の細胞を選択し、
選択した細胞から目的抗原に対する抗体遺伝子を採取し、その塩基配列を同定し、
同定した遺伝子の塩基配列に基づいて前記抗体または抗体の断片を調製する、
ことを含む方法である。この方法により、目的抗原に特異的な抗体または抗体の断片の製造することができる。
【0072】
上記本発明の方法での、目的抗原に特異的に結合する形質細胞および形質芽細胞の少なくとも一方の細胞の選択方法は、上述の通りである。
【0073】
<抗体遺伝子の塩基配列同定>
選択した細胞から目的抗原に対する抗体遺伝子を採取し、その塩基配列を同定する。選択した細胞は、目的抗原に対する結合性を示す細胞であり、かつ形質細胞または形質芽細胞である。本発明では、これら選択した細胞の複数からなる集団で扱って、抗体遺伝子の採取と同定を行うこともできるが、好ましくは、個々の細胞について、それぞれ抗体遺伝子を採取し、その塩基配列を同定する。これにより、同一の目的抗原に対して特異的に結合する、異なるモノクローナル抗体を得ることが可能になる。
【0074】
選択した細胞から目的抗原に対する抗体遺伝子を採取し、その塩基配列を同定する方法は既知の方法を利用できる。
【0075】
目的抗原に対する抗体遺伝子の採取及び採取した抗体遺伝子からcDNAを合成する方法は、例えば、WO2009/091048(US2011/0020879A1(その全記載は、ここに特に開示として援用される)に記載の方法を利用して行うことができる。さらに、合成したcDNAをクローニングする方法は、例えば、WO2009/110606、US2011/0117609A1(その全記載は、ここに特に開示として援用される)に記載の相同組換方法を利用したクローニング方法で行うことができる。さらに、合成したcDNAの塩基配列の同定は、公知のDNAの塩基配列決定方法を用いて実施できる。cDNAの塩基配列を同定することで、目的抗原に対する抗体遺伝子を同定することができる。
【0076】
[方法]
WO2009/091048に記載の方法は、基板の一方の表面に複数の突起状囲いが、整列して設けられており、前記突起状囲いは、少なくとも1つの切欠き部を有し、かつ内部には液滴を保持できる空間を有し、かつ前記基板表面の少なくとも前記液滴を保持する面は、純水に対する接触角が90〜150°の範囲である反応治具を用い、磁気ビーズに固定化した物質を、上記突起状囲いの液滴保持用空間に保持された表面張力低下試薬を含有する溶液の液滴中で、前記基板の突起状囲いを有する表面とは反対側の表面から磁石を用いて、順次移動させることにより、反応及び/または洗浄を行うことを含む、反応方法である。この反応方法において磁気ビーズに固定化した物質として、選択した細胞中のmRNAと結合性を有する、例えば、オリゴdTを用いることで、実施できる。
【0077】
さらに、cDNAの合成方法は、上記反応治具であって、1つの縦列に、少なくとも2つの突起状囲いが設けられた反応治具を用い、前記2つの突起状囲いの液滴保持用空間には、表面張力低下試薬を含有する細胞溶解用溶液、及びcDNA合成用溶液の液滴をこの順にそれぞれ保持し、磁気ビーズに固定化したmRNAを、前記2つの突起状囲いの液滴保持用空間に保持された溶液に、順次、基板の突起状囲いを有する表面とは反対側の表面から磁石を用いて、移動させ、磁気ビーズに固定化したcDNAを得ることができる。
【0078】
上記cDNAの合成方法は、例えば、1つの縦列に、少なくとも4つの突起状囲いが設けられた反応治具を用いることで実施できる。前記4つの突起状囲い(例えば、ハの字型突起)の空間には、細胞溶解用溶液、mRNA洗浄用溶液、cDNA合成用溶液及びcDNA洗浄用溶液の液滴をこの順にそれぞれ保持し、磁気ビーズに固定化したmRNAを、前記4つの突起状囲いの空間に保持された溶液に、順次、基板の突起を設けたとは反対側の表面から磁石を用いて、移動させる。それによって、磁気ビーズに固定化したcDNAを得る。
【0079】
cDNAの合成方法に用いる反応治具のハの字型突起の空間の容量は、例えば、0.5〜100μLの範囲とすることが適当である。
第1のハの字型突起の空間に保持される細胞溶解用溶液は、例えば、100mM Tris HCl (pH7.5), 500mM LiCl, 1% ドデシル硫酸リチウム 5mM dithiothreitolを含む全量3μLの溶液であることができる。
第2のハの字型突起の空間に保持されるmRNA洗浄用溶液は、10mM Tris HCl (pH7.5), 0.15M LiCl, 0.1% ドデシル硫酸リチウムを含む全量3μLの溶液であることができる。
第3のハの字型突起の空間に保持される逆転写反応用洗浄溶液は、50mM Tris HCl (pH8.3), 75mM KCl, 3mM MgCl
2, 0.1% Triton X-100, 0.5mM dNTP, 5mM DTT, 2 unit RNase inhibitorを含む全量3μLの溶液であることができる。
第4のハの字型突起の空間に保持される逆転写反応溶液は、50mM Tris HCl (pH8.3), 75mM KCl, 3mM MgCl
2, 0.1% Triton X-100, 0.5mM dNTP, 5mM DTT, 2 unit RNase inhibitor, 8 unit SuperScript III Reverse transcriptaseを含む全量3μLの溶液であることができる。
但し、これらは例示であって、これらの溶液に限定される意図ではない。
【0080】
磁気ビーズに固定化したmRNAを用意する。mRNAの種類や長さ等には特に制限はない。種々の生物由来のmRNAを用いることができる。磁気ビーズとしては、例えば、粒子系2.8μm, oligo dT25が表面に共有結合されたものを用いることができる。mRNAの磁気ビーズへの固定化は以下のように実施できる。
【0081】
細胞溶解用溶液に磁気ビーズを濃度10mg/mlになるように懸濁し、これに細胞1から100個を加える。上記の操作により、細胞内のmRNAはそのpolyAテールを介して磁気ビーズ上に固定化されたoligo dT25に結合する。
【0082】
基板の突起を設けた表面とは反対側の表面から磁石を用いて、磁気ビーズに固定化したmRNAを、前記4つのハの字型突起の空間に保持された溶液(液滴)に、順次、移動させる。磁石としては、例えば、小型ネオジム磁石を用いることができる。各液滴中では、反応または洗浄に必要な時間、滞留させる。反応または洗浄に必要な時間は、反応条件、洗浄条件によって異なるが、例えば、1秒〜1時間の範囲であることができる。
【0083】
上記反応及び洗浄は、常温(室温)で行うことができるが、必要により、温度調節をすることもできる。さらに、液滴の量が少量である場合、溶液中の溶媒が蒸発することもあるので、反応治具を密閉容器に入れ、容器中の湿度を一定に保つことで、溶媒の蒸発を防ぐことが好ましい。容器中の湿度を一定に保つには、水あるいは適当な水溶液を含む容器を上記密閉容器に共存させることができる。
【0084】
上記4つのハの字型突起の空間に保持された溶液(液滴)に、順次、磁気ビーズに固定化したmRNAを滞留及び通過させることで、磁気ビーズに固定化したcDNAを得ることができる。得られたcDNAは、磁気ビーズから切り取ることなく、後の工程に使用することができる。具体的には、得られたcDNAは、後述のクローニング方法等に供することができる。
【0085】
WO2009/110606に記載の相同組換方法を利用したクローニング方法は、相同組換方法として、増幅用プライマー配列P1およびP2を両末端に有する標的遺伝子(抗体遺伝子)の配列を含むPCR産物と、このPCR産物の増幅用プライマー配列P1およびP2に相同的な塩基配列からなる相同組換領域VP1およびVP2を有し、かつ、P1の内側の一部の配列T1に相同的な塩基配列からなる相同組換領域VT1をVP1の末端側に、および/またはP2の内側の一部の配列T2に相同的な塩基配列からなる相同組換領域VT2をVP2の末端側に有する線状化されたべクターを用い(但し、T1およびT2の少なくとも一方は、標的遺伝子に特有の塩基配列を有する)前記PCR産物を相同組換え反応に付して前記ベクターに挿入して、目的とするPCR産物を特異的にベクターへ挿入した組換DNA分子を得ることを含む方法を用いる方法である。前記増幅用プライマー配列P1およびP2を両末端に有する標的遺伝子(抗体遺伝子)の配列を含むPCR産物は前記で得られたcDNAからWO2009/110606に記載の方法で得ることができる。さらに、上記相同組換方法により、目的とするPCR産物を特異的にベクターに挿入した組換DNA分子を調製し、次いで得られた組換DNA分子を持つ組換え体を増幅することで、目的とする抗体遺伝子のクローニングをすることかできる。
【0086】
また、増幅された組換DNA分子(組み換えベクター)に含まれる標的遺伝子(抗体遺伝子)は、例えば、制限酵素処理によってベクターから切り出され、必要により精製される。標的遺伝子の分離及び精製は、常法により行うことができる。標的遺伝子の分離及び精製としては、例えば、ゲル抽出やカラム精製等を挙げることができる。分離及び精製された標的遺伝子は、例えば、塩基配列の決定、発現ベクターへ組み込み、標的遺伝子の機能解析などに利用することができる。
【0087】
<抗体または抗体の断片の調製>
同定した遺伝子の塩基配列に基づいて、抗体または抗体の断片を調製する。
同定した遺伝子の塩基配列に基づく抗体または抗体の断片の調製は、WO2011/027808に記載のDNA断片の特異的作製方法を用いて作製した抗体遺伝子の断片を用いて行うことができる。
【0088】
WO2011/027808に記載の方法は以下のとおりである。
[1]
標的遺伝子の両方の側に連結用DNA領域を連結させた連結DNA断片を製造する方法であって、(1)〜(4)を含む方法。尚、以下において標的遺伝子は、抗体遺伝子である。
(1)標的遺伝子配列を含む二本鎖遺伝子断片から、中央部に標的遺伝子配列を含み、両末端側にそれぞれ会合可能な領域を有し、前記会合可能な2つの領域は互いに会合しない塩基配列を有し、かつ一方または両方の領域は少なくとも一部の塩基配列が標的遺伝子配列に含まれる固有の塩基配列であり、両方の会合可能な領域の3’端に1ヌクレオチド以上の突出末端を有する3’端突出二本鎖遺伝子断片を準備し、
(2)中央部に連結用DNA領域を含み、両末端側にそれぞれ会合可能な領域を有する連結用二本鎖DNA断片を準備し、
(3-1)前記3’端突出二本鎖遺伝子断片の一方の会合可能な領域は、前記連結用二本鎖DNA断片の一方の末端の会合可能な領域と相同的な塩基配列からなるが、3’突出端が付加された末端側の配列が連結用二本鎖DNA断片の一方の会合可能な領域では連結用DNA領域と結合する側であり、
(3-2)前記3’端突出二本鎖遺伝子断片の一方の会合可能な領域からの突出末端は、DNA合成反応において鎖伸長機能を有さず、
(3-3)前記3’端突出二本鎖遺伝子断片の他方の会合可能な領域は、前記連結用二本鎖DNA断片の他方の末端の会合可能な領域と相同的な塩基配列からなるが、3’突出端が付加された末端側の配列が連結用二本鎖DNA断片の他方の会合可能な領域では連結用DNA領域と結合する側であり、
(3-4)前記3’端突出二本鎖遺伝子断片の他方の会合可能な領域からの突出末端は、DNA合成反応において鎖伸長機能を有さず、
(4)上記3’端突出二本鎖遺伝子断片及び連結用二本鎖DNA断片を用いて、熱変性、再会合及びDNA合成反応を少なくとも2回行うことで、上記連結DNA断片を得ることを含む、
連結DNA断片の製造方法。
【0089】
[1]に記載の製造方法において、具体的には以下を例示できる。
(a)前記一方の会合可能な領域を「領域1」とし、他方の会合可能な領域を「領域2」とすると、前記連結DNA断片は、模式的に領域2-連結用DNA領域-領域1-標的遺伝子-領域2-連結用DNA領域-領域1で示される配列を少なくとも1つ有するDNA断片である。
(b)連結用DNA領域が2つの連結用DNA領域として配列Aおよび配列Bを含み、
前記3’端突出二本鎖遺伝子断片の会合可能な領域は、一方が末端側から配列P1およびT1を有し、他方が末端側から配列P2およびT2を有し、配列T1および配列T2の少なくとも一方は標的遺伝子配列に含まれる固有の塩基配列を有し、
前記連結用二本鎖DNA断片の会合可能な領域は、一方が末端側から配列VP1およびVT1を有し、他方が末端側から配列VP2およびVT2を有し、配列VP1およびVT1は、配列P1およびT1とそれぞれ相同的な塩基配列を有し、配列VP2およびVT2は、配列P2およびT2とそれぞれ相同的な塩基配列を有する。
(c)前記3’端突出二本鎖遺伝子断片は、P1−T1−標的遺伝子−T2−P2で表され、前記連結用二本鎖DNA断片は、VT2−VP2−配列B−配列A−VP1−VT1で表され、前記連結DNA断片は、VT2−VP2(T2−P2)−配列B−配列A−VP1−VT1(P1−T1)−標的遺伝子−VT2−VP2(T2−P2)−配列B−配列A−VP1−VT1(P1−T1)を少なくとも1つ有するDNA断片である、但し、VT2−VP2(T2−P2)は、T2−P2と相同的なVT2−VP2であることを意味し、VP1−VT1(P1−T1)は、T1−P1と相同的なVT1−VP1であることを意味する。
(d)配列P2の3’端にある突出末端のDNA合成反応において鎖伸長機能を有さない配列は前記配列BのVP2と隣接する配列と非相同的な配列であり、配列P1の3’端にある突出末端のDNA合成反応において鎖伸長機能を有さない配列は前記配列AのVP1と隣接すると非相同的な配列である。
(e)前記突出末端は、3’端にダイデオキシヌクレオチドを含む配列である。
【0090】
[2]
[1]に記載の方法で製造した連結DNA断片を鋳型として、連結DNA断片に含まれる少なくとも1つの少なくとも一部の連結用DNA領域と標的遺伝子の配列の全てを増幅するように、連結DNA断片に含まれる異なる連結用DNA領域で機能するフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いてPCRを行い、少なくとも1つの少なくとも一部の連結用DNA領域と標的遺伝子の配列の全てを含むDNA断片を製造することができる。
[1]の(b)に記載の方法で製造した連結DNA断片を鋳型として、配列Aの塩基配列の一部を標的遺伝子に向かうように3’端に含むフォワードプライマー、および配列Bの塩基配列の一部を標的遺伝子に向かうように3’端に含むリバースプライマーを用いてPCRを行い、配列A、標的遺伝子の配列および配列Bが連結されたDNA断片を得ることを含むDNA断片を製造する。
【0091】
[3]
(a)[1](b)(c)及び[2](a)(b)に記載の製造方法においては、標的遺伝子の配列を含む二本鎖DNA断片およびポリデオキシヌクレオチドに、デオキシヌクレオチドターミナルトランスフェラーゼを作用させて、標的遺伝子の配列を含む3’端突出二本鎖遺伝子断片を得ることをさらに含むことができる。(但し、前記標的遺伝子の配列を含む二本鎖DNA断片は、配列P1および配列P2を各末端に有し、前記配列P1の内側の一部に配列T1を有し、前記配列P2の内側の一部に配列T2を有し、かつ前記配列T1およびT2の一方又は両方は、標的遺伝子に固有の塩基配列を有する。)
(b)前記配列T1および配列T2の一方または両方が、標的遺伝子に固有の塩基配列を有するか、または前記配列P1および配列P2の一方または両方が、標的遺伝子に固有の塩基配列を有する。
(c)前記配列P1およびP2は、独立に10塩基以上である
【0092】
[4]
[1]〜[3]においては、前記標的遺伝子が抗体遺伝子であり、前記3’端突出二本鎖遺伝子断片が前記抗体遺伝子に由来する配列を含み、ならびに、前記連結用二本鎖DNA断片または前記配列Aを有する連結用二本鎖DNA断片における前記領域VP1および領域VT1は、抗体遺伝子に由来するまたは由来しない配列を有することができる。
【0093】
[5]
[1]〜[3]においては、前記標的遺伝子が抗体遺伝子であり、前記3’端突出二本鎖遺伝子断片が前記抗体遺伝子に由来する配列を含み、ならびに、前記連結用二本鎖DNA断片または前記配列Bを有する連結用二本鎖DNA断片における前記領域VP2および領域VT2は、抗体遺伝子に由来するまたは由来しない配列であることができる。
【0094】
[6]
[4]または[5]に記載の方法で製造された連結DNA断片を用いて抗体を製造することができる。ここで得られた連結DNA断片を用いて、抗体を製造する方法は、例えば、カチオニックリポソーム法などの方法を用いて実施できる。具体的には、上記連結DNA断片を293T細胞株などの細胞に導入し、次いで、細胞を培養することで抗体遺伝子を発現させて抗体を製造することができる。
【0095】
[抗体遺伝子およびペプチド]
本発明は、上記本発明の方法を用いて新たに得られた、ヒトインスリンに対するモルモット抗体の可変領域および定常領域の遺伝子およびペプチド、さらにはヒトインスリンに対するルモットモノクローナル抗体を包含する。
(1)配列表の配列番号1で示される塩基配列を有するヒトインスリンに対するモルモット抗体のγ鎖定常領域の遺伝子、配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するヒトインスリンに対するモルモット抗体のγ鎖定常領域のペプチドをコードする遺伝子、及び配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するヒトインスリンに対するモルモット抗体のγ鎖定常領域のペプチド。
(2)配列表の配列番号2で示される塩基配列を有するヒトインスリンに対するモルモット抗体のκ鎖定常領域の遺伝子、配列番号5で示されるアミノ酸配列を有するヒトインスリンに対するモルモット抗体のκ鎖定常領域のペプチドをコードする遺伝子、及び配列番号5で示されるアミノ酸配列を有するヒトインスリンに対するモルモット抗体のκ鎖定常領域のペプチド。
(3)配列表の配列番号3で示される塩基配列を有するヒトインスリンに対するモルモット抗体のλ鎖定常領域の遺伝子、配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するヒトインスリンに対するモルモット抗体のλ鎖定常領域のペプチドをコードする遺伝子及び配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するヒトインスリンに対するモルモット抗体のλ鎖定常領域のペプチド。
【0096】
(4)配列表の配列番号7〜18で示される塩基配列を有するヒトインスリンに対するモルモット抗体のγ鎖定可変領域の遺伝子、配列番号19〜30で示されるアミノ酸配列を有するヒトインスリンに対するモルモット抗体のγ鎖可変領域のペプチドをコードする遺伝子及び配列番号19〜30で示される塩基配列を有するヒトインスリンに対するモルモット抗体のγ鎖可変領域のペプチド。
(5)配列表の配列番号31〜42で示される塩基配列を有するヒトインスリンに対するモルモット抗体のκ鎖可変領域の遺伝子、配列番号43〜54で示されるアミノ酸配列を有するヒトインスリンに対するモルモット抗体のκ鎖可変領域のペプチドをコードする遺伝子及び配列番号43〜54で示されるアミノ酸配列を有するヒトインスリンに対するモルモット抗体のκ鎖可変領域のペプチド。
【0097】
(6)可変領域として配列番号19〜30のいずれかで示されるアミノ酸配列を有し、かつ定常領域として配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するγ鎖を有する、ヒトインスリンに対するモルモットモノクローナル抗体。
(7)可変領域として配列番号43〜54のいずれかで示されるアミノ酸配列を有し、かつ定常領域として配列番号5で示されるアミノ酸配列を有するκ鎖を有する、ヒトインスリンに対するモルモットモノクローナル抗体。
【0098】
(8)下記CDR1、CDR2及びCDR3のいずれか1つずつの組合せを含むκ鎖またはγ鎖を含むヒトインスリンに対するモルモットモノクローナル抗体。
【0099】
上記本発明のヒトインスリンに対するモルモット抗体の可変領域および定常領域の遺伝子およびペプチド、さらにはヒトインスリンに対するルモットモノクローナル抗体は、既知のDNAおよびペプチドの調製方法を用いて、後述する実施例の記載を参照することで調製することができる。
【実施例】
【0100】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。但し、これらの実施例は例示を目的とするものであって本発明を限定する意図ではない。
【0101】
実施例1 ラットモノクローナル抗体の作製
[材料と方法]
免疫動物はウイスター系ラット♀6週齢を用いた。抗原はGFP。免疫は、ラット尾根部の両側にGFP 50μgを一ヶ月おきに3回筋肉注射した。免疫成立後、ラットより腸骨リンパ節を採取した。GFPはAlexafluor488にて蛍光標識し、ゲルろ過により精製した。
腸骨リンパ節由来リンパ球をPBS-0.5%牛血清アルブミン溶液に懸濁させた後、GFP (0.5μg/ml)を加え4℃にて30分間撹拌させ、細胞の抗原標識を行った。細胞を遠心分離後DMEM培地に懸濁させ、これにER-Tracker (1μM)を加え5分間室温で放置することで小胞体を染色した。細胞をPBSで洗浄後、抗原特異的形質細胞画分をGFP陽性でER-tracker強陽性細胞として、また抗原非特異的形質細胞画分をGFP陰性でER-tracker強陽性細胞として、セルソーターにて分離した。
【0102】
[結果]
腸骨リンパ節より調製したリンパ球を、抗ラットIgG(緑)およびER-trackerによって染色後、蛍光顕微鏡にて観察した。その結果ER-tracker強陽性の形質細胞表面に弱いながらIgGの発現が認められた(
図1)。
【0103】
次に、この膜型IgGにGFPを作用させることで抗原特異的形質細胞の同定が可能であるかを試みた。腸骨由来ラットリンパ球懸濁液を、Alexafluor488標識GFP及びER-trackerで染色し、これをフローサイトメーターにて解析した。その結果、
図2Aに示すようにGFP陽性の細胞群が存在した。これらGFP陽性の細胞群の多くはGFPの非特異的吸着、低親和性膜型抗体を発現するB細胞に由来するシグナルである。この中から抗原特異的形質細胞を同定するためGFP強陽性でER-tracker強陽性の細胞を抗原特異的形質細胞として、GFP陰性でER-tracker強陽性の細胞を非特異的形質細胞としてセルソーターを用いて分離した(
図2AのHighとLow)。分離された細胞を固定化・細胞膜可溶化処理を行い、抗ラット抗体を用いて染色を行った結果、分収された細胞はその細胞質内に多量の抗体を発現していたことから、形質細胞であることが判明した(
図2B)。
【0104】
cDNA合成
cDNA合成および免疫グロブリン遺伝子増幅は、「反応治具及び反応方法、並びにcDNAの合成方法」(WO2009/091048)に記載の方法に準じて行った(
図3)。
セルソーターにより分離された個々のラットプラズマ細胞をオリゴdT25が結合した磁気ビーズ(ダイナピーズ)3μgの入った細胞溶解液3μL(100mM TrisHCl(pH7.5),500mM LiCl,1%ドデシル硫酸 Li(LiDS),5mM dithiothreitol)に加え、細胞内のmRNAを磁気ビーズに結合させた。 次に磁気ビーズを、3μLのmRNA洗浄用溶A(10mM TrisHCl(pH7.5),0.15M LiCl,0.1% LiDS)、続いて3μLのmRNA洗浄用溶液B(75mM KCl,3mM MgCl2,0.1%TritonX,0.5mM dNTP,5mM DTT,2unit RNase inhibitor)にて1回洗浄した後、cDNA合成を行った。洗浄後の磁気ビーズに、cDNA合成用溶液3μL(50mM Tris HCl(pH8.3),75mM KCl,3mM MgCl2,0.1%TritonX−100,0.5mM dNTP,5mM DTT,2 unit RNase inhibitor,l0unit SuperScriptlll Reversetranscriptase(Invitrogen)を加え、37℃にて1時間反応させた。次に磁気ビーズを3’テーリング洗浄溶液3μL(50mMリン酸カリウム(pH7.0),0.5mM dGTP,0.1%TritonX−100,4mM塩化マグネシウム)にて洗浄し、新たに3’テーリング反応溶液3μL(50mMリン酸カリウム(pH7.0),0.5mM dGTP,0.1%TritonX−100,4mM塩化マグネシウム,terminaldeoxynucleotidyltransferase 10U)を加え、37℃にて30分間反応を行った。
【0105】
ラットγ、κ鎖可変領域遺伝子断片の増幅
磁気ビーズを3μLのTE溶液(10mM TrisHCl(pH7.5),1mM EDTA,0.1%TritonX−100)にて洗浄後、5’−RACE PCR法を用いてヒト免疫グロブリンγ鎖及びκ鎖遺伝子の増幅を行った。1回目のPCR反応は、磁気ビーズに25μLのPCR反応溶液(プライマーを各0.2μM、dNTP 0.2 mM、タカラバイオPrimeSTAR耐熱性DNAポリメラーゼ lU含有)を加え94℃30秒−68℃40秒の反応を35サイクル行った。用いたプライマーは(ア)であり、TdTによりcDNAの3’端に付加されたポリGにアニーリングする。プライマー配列は(イ)であり、ラット免疫グロブリンγ鎖遺伝子の定常領域に由来する。プライマー配列は(ウ)であり、ラット免疫グロブリンκ鎖遺伝子の定常領域に由来する。
【0106】
反応後PCR溶液に水225μLを加え10倍希釈した溶液1μLを鋳型とし、プライマー(エ)とプライマー(オ)を用いて1回目のPCRと同様の条件でラット免疫グロブリンγ鎖遺伝子の可変領域の増幅反応を行った。同様にプライマー(エ)とプライマー(カ)を用いラット免疫グロブリンκ鎖遺伝子の可変領域の増幅反応を行った。
用いたプライマーは、
1回目PCRセンスプライマー
5-GCTAGCGCTACCGGACTCAGATCCCCCCCCCCCCCDN-3 (ア)(配列番号55)
1回目PCRγ鎖増幅用アンチセンスプライマー
5- GCAGGTGACGGTCTGGCTGGRCCAGGTGCTGGA-3 (イ)(配列番号56)
1回目PCRκ鎖増幅用アンチセンスプライマー
5- TCGTTCAGTGCCATCAATCTTCCACTTGAC-3 (ウ)(配列番号57)
2回目PCR増幅用センスプライマー
5-CGCTAGCGCTACCGGACTCAGATCCC-3 (エ)(配列番号58)
2回目PCRγ鎖増幅用アンチセンスプライマー
5- CTGCAGGACAGCTGGGAAGGTGTGCAC-3 (オ)(配列番号59)
2回目PCRκ鎖増幅用アンチセンスプライマー
5- TAACTGTTCCGTGGATGGTGGGAAGAT-3 (カ)(配列番号60)
反応後、PCR溶液各1μLを取り、アガロースゲル電気泳動法にてκ及びγ鎖免疫グロブリン遺伝子断片の発現ユニットへの変換を確認した(
図3上を参照)
【0107】
ラット免疫グロブリン線状化発現ベクターの作製
ラットγ鎖遺伝子、κ鎖遺伝子発現ユニット作製は、「標的遺伝子由来配列を含む連結DNA断片の特異的作製方法」(WO2011/027808)の方法に準じて調製した。
即ち5'-RACE-PCR法により増幅された各PCR産物1μLに、terminaldeoxynucleotidyltransferaseを2 unit加え、37℃にて30分反応させ、その後94℃にて5分間加熱することで酵素反応を停止させた。
【0108】
上記で調製した3’端ポリヌクレオチド付加ラットγ鎖遺伝子溶液に、ラットγ鎖遺伝子連結用二本鎖DNA断片を10ng、プライマー(キ)(ク)を各10pmol、dNTPを10nmolを加え、タカラバイオのPrimeSTAR耐熱性DNAポリメラーゼを用い25μlの反応液にて、94℃を40秒、70℃を4分の反応を5サイクル、引き続き94℃を40秒、60℃を40秒、72℃を4分の反応を30サイクル行うことでラットγ鎖遺伝子発現ユニットを作製した。
同様に、ラットκ鎖遺伝子溶液に、ラットκ鎖遺伝子連結用二本鎖DNA断片を加え反応を行い、ラットκ鎖遺伝子発現ユニットを作製した。
5-AGAGAAACCGTCTATCAGGGCGATGGC-3 (キ)(配列番号61)
5-AGAGACCCTTTGACGTTGGAGTCCACG-3 (ク)(配列番号62)
反応後、PCR溶液各1μLを取り、アガロースゲル電気泳動法にてκ及びγ鎖免疫グロブリン遺伝子断片の発現ユニットへの変換を確認した(
図3下を参照)
遺伝子連結用二本鎖DNA断片
【0109】
ラットγ鎖遺伝子連結用二本鎖DNA断片はラットγ鎖定常領域(1-873)連結配列II(1-54)、ポリA付加シグナル(1045-1051)、CMVプロモーター(1577-2172)、連結配列1(2173-2201)からなる(配列番号63)。
TGGAACTCTGGAGCCCTGTCCAGCGGTGTGCACACCTTCCCAGCTGTCCTGCAGTCTGGGCTCTACACTCTCACCAGCTCAGTGACTGTACCCTCCAGCACCTGGCCCAGCCAGACCGTCACCTGCAACGTAGCCCACCCGGCCAGCAGCACCAAGGTGGACAAGAAAATTGTGCCCAGAAACTGTGGAGGTGATTGCAAGCCTTGTATATGTACAGGCTCAGAAGTATCATCTGTCTTCATCTTCCCCCCAAAGCCCAAAGATGTGCTCACCATCACTCTGACTCCTAAGGTCACGTGTGTTGTGGTAGACATTAGCCAGGACGATCCCGAGGTCCATTTCAGCTGGTTTGTAGATGACGTGGAAGTCCACACAGCTCAGACTCGACCACCAGAGGAGCAGTTCAACAGCACTTTCCGCTCAGTCAGTGAACTCCCCATCCTGCACCAGGACTGGCTCAATGGCAGGACGTTCAGATGCAAGGTCACCAGTGCAGCTTTCCCATCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAACCCGAAGGCAGAACACAAGTTCCGCATGTATACACCATGTCACCTACCAAGGAAGAGATGACCCAGAATGAAGTCAGTATCACCTGCATGGTAAAAGGCTTCTATCCCCCAGACATTTATGTGGAGTGGCAGATGAACGGGCAGCCACAGGAAAACTACAAGAACACTCCACCTACGATGGACACAGATGGGAGTTACTTCCTCTACAGCAAGCTCAATGTGAAGAAGGAAAAATGGCAGCAGGGAAACACGTTCACGTGTTCTGTGCTGCATGAAGGCCTGCACAACCACCATACTGAGAAGAGTCTCTCCCACTCTCCGGGTAAATGACCCGCGGCCGCGACTCTAGATCATAATCAGCCATACCACATTTGTAGAGGTTTTACTTGCTTTAAAAAACCTCCCACACCTCCCCCTGAACCTGAAACATAAAATGAATGCAATTGTTGTTGTTAACTTGTTTATTGCAGCTTATAATGGTTACAAATAAAGCAATAGCATCACAAATTTCACAAATAAAGCATTTTTTTCACTGCATTCTAGTTGTGGTTTGTCCAAACTCATCAATGTATCTTAAGGCGTAAATTGTAAGCGTTAATATTTTGTTAAAATTCGCGTTAAATTTTTGTTAAATCAGCTCATTTTTTAACCAATAGGCCGAAATCGGCAAAATCCCTTATAAATCAAAAGAATAGACCGAGATAGGGTTGAGTGTTGTTCCAGTTTGGAACAAGAGTCCACTATTAAAGAACGTGGACTCCAACGTCAAAGGGCGAAAAACCGTCTATCAGGGCGATGGCCCACTACGTGAACCATCACCCTAATCAAGTTTTTTGGGGTCGAGGTGCCGTAAAGCACTAAATCGGAACCCTAAAGGGAGCCCCCGATTTAGAGCTTGACGGGGAAAGCCGGCGAACGTGGCGAGAAAGGAAGGGAAGAAAGCGAAAGGAGCGGGCGCTAGGGCGCTGGCAAGTGTAGCGGTCACGCTGCGCGTAACCACCACACCCGCCGCGCTTAATGCGCCGCTACAGGGCGCGTCagatctTAGTTATTAATAGTAATCAATTACGGGGTCATTAGTTCATAGCCCATATATGGAGTTCCGCGTTACATAACTTACGGTAAATGGCCCGCCTGGCTGACCGCCCAACGACCCCCGCCCATTGACGTCAATAATGACGTATGTTCCCATAGTAACGCCAATAGGGACTTTCCATTGACGTCAATGGGTGGAGTATTTACGGTAAACTGCCCACTTGGCAGTACATCAAGTGTATCATATGCCAAGTACGCCCCCTATTGACGTCAATGACGGTAAATGGCCCGCCTGGCATTATGCCCAGTACATGACCTTATGGGACTTTCCTACTTGGCAGTACATCTACGTATTAGTCATCGCTATTACCATGGTGATGCGGTTTTGGCAGTACATCAATGGGCGTGGATAGCGGTTTGACTCACGGGGATTTCCAAGTCTCCACCCCATTGACGTCAATGGGAGTTTGTTTTGGCACCAAAATCAACGGGACTTTCCAAAATGTCGTAACAACTCCGCCCCATTGACGCAAATGGGCGGTAGGCGTGTACGGTGGGAGGTCTATATAAGCAGAGCTGGTTTAGTGAACCGTCAGATCCGCTAGCGCTACCGGACTCAGATCCCCCCCCCCCCC
【0110】
遺伝子連結用二本鎖DNA断片
ラットκ鎖遺伝子連結用二本鎖DNA断片はラットκ鎖定常領域(1-325)、連結配列II(1-53)、ポリA付加シグナル(507-513)、CMVプロモーター(1038-1633)、連結配列1(1634-1662)からなる(配列番号64)。
GGGCTGATGCTGCACCAACTGTATCTATCTTCCCACCATCCACGGAACAGTTAGCAACTGGAGGTGCCTCAGTCGTGTGCCTCATGAACAACTTCTATCCCAGAGACATCAGTGTCAAGTGGAAGATTGATGGCACTGAACGACGAGATGGTGTCCTGGACAGTGTTACTGATCAGGACAGCAAAGACAGCACGTACAGCATGAGCAGCACCCTCTCGTTGACCAAGGCTGACTATGAAAGTCATAACCTCTATACCTGTGAGGTTGTTCATAAGACATCATCCTCACCCGTCGTCAAGAGCTTCAACAGGAATGAGTGTTAGACGCGGCCGCGACTCTAGATCATAATCAGCCATACCACATTTGTAGAGGTTTTACTTGCTTTAAAAAACCTCCCACACCTCCCCCTGAACCTGAAACATAAAATGAATGCAATTGTTGTTGTTAACTTGTTTATTGCAGCTTATAATGGTTACAAATAAAGCAATAGCATCACAAATTTCACAAATAAAGCATTTTTTTCACTGCATTCTAGTTGTGGTTTGTCCAAACTCATCAATGTATCTTAAGGCGTAAATTGTAAGCGTTAATATTTTGTTAAAATTCGCGTTAAATTTTTGTTAAATCAGCTCATTTTTTAACCAATAGGCCGAAATCGGCAAAATCCCTTATAAATCAAAAGAATAGACCGAGATAGGGTTGAGTGTTGTTCCAGTTTGGAACAAGAGTCCACTATTAAAGAACGTGGACTCCAACGTCAAAGGGCGAAAAACCGTCTATCAGGGCGATGGCCCACTACGTGAACCATCACCCTAATCAAGTTTTTTGGGGTCGAGGTGCCGTAAAGCACTAAATCGGAACCCTAAAGGGAGCCCCCGATTTAGAGCTTGACGGGGAAAGCCGGCGAACGTGGCGAGAAAGGAAGGGAAGAAAGCGAAAGGAGCGGGCGCTAGGGCGCTGGCAAGTGTAGCGGTCACGCTGCGCGTAACCACCACACCCGCCGCGCTTAATGCGCCGCTACAGGGCGCGTCagatctTAGTTATTAATAGTAATCAATTACGGGGTCATTAGTTCATAGCCCATATATGGAGTTCCGCGTTACATAACTTACGGTAAATGGCCCGCCTGGCTGACCGCCCAACGACCCCCGCCCATTGACGTCAATAATGACGTATGTTCCCATAGTAACGCCAATAGGGACTTTCCATTGACGTCAATGGGTGGAGTATTTACGGTAAACTGCCCACTTGGCAGTACATCAAGTGTATCATATGCCAAGTACGCCCCCTATTGACGTCAATGACGGTAAATGGCCCGCCTGGCATTATGCCCAGTACATGACCTTATGGGACTTTCCTACTTGGCAGTACATCTACGTATTAGTCATCGCTATTACCATGGTGATGCGGTTTTGGCAGTACATCAATGGGCGTGGATAGCGGTTTGACTCACGGGGATTTCCAAGTCTCCACCCCATTGACGTCAATGGGAGTTTGTTTTGGCACCAAAATCAACGGGACTTTCCAAAATGTCGTAACAACTCCGCCCCATTGACGCAAATGGGCGGTAGGCGTGTACGGTGGGAGGTCTATATAAGCAGAGCTGGTTTAGTGAACCGTCAGATCCGCTAGCGCTACCGGACTCAGATCCCCCCCCCCCCC
【0111】
上記の実験で増幅された全長のラットγ鎖、κ鎖遺伝子発現ユニットを293FT細胞に遺伝子導入し2日間培養を行うことで、細胞培養液中組換えラット抗体を分泌させた。抗原特異的形質細胞及び非特異的形質細胞より得られた組換えラットモノクローナル抗体の抗原結合能についてELISA法を用いて調べた(
図4)ところ、抗原特異的形質細胞から得られた組換えラットモノクローナル抗体は、12クローン中9クローンがGFPに対し強い結合力を示した。これに対し全形質細胞画分から得られた組換えラットモノクローナル抗体は12クローン中1クローンのみがGFPに対する強い結合を示した。以上の結果から、標識抗原とER-trackerをリンパ球懸濁液に作用させるだけの操作により、抗原特異的な形質細胞を同定し、これから抗原特異的なラットモノクローナル抗体を高効率で作製することが可能であることが明らかとなった。
【0112】
実施例2 抗ヒトインスリンモルモットモノクローナル抗体の作製
インスリンは、肝臓、筋肉や脂肪組織の細胞表面に存在するインスリン受容体と結合し、ブドウ糖の細胞内への取り込みを制御することで体内のエネルギー代謝を調節する役割を担う重要なホルモンである。血中インスリン濃度の測定は糖尿病、肥満等の病態を把握する上でも極めて重要な意味を持っている。哺乳動物のインスリンの構造は、モルモットを除いては高いホモロジーを有しているため、マウスを用いたモノクローナル抗体の作製は困難である。このため、ヒトインスリンの血中濃度測定にはモルモット血清から得られたポリクローナル抗体が用いられてきた。しかしポリクローナル抗体は免疫動物個体間のロット差が大きく、一定の品質を維持することが困難であり、抗ヒトインスリンモルモットモノクローナル抗体の開発が望まれていた。そこで本発明を用い、抗ヒトインスリンモルモットモノクローナル抗体の作製を行った。
【0113】
[材料と方法]
免疫動物はモルモット♀6週齢を用いた。抗原はヒトインスリン。免疫は、モルモット尾部の両側にヒトインスリン50μgを一ヶ月おきに4回筋肉注射した。免疫成立後、モルモットより腸骨リンパ節を採取した。インスリンはAlexafluor594にて蛍光標識し、ゲルろ過により精製した。
【0114】
[結果]
腸骨リンパ節よりリンパ球をPBS-0.5%牛血清アルブミン溶液に懸濁させた後、蛍光色素標識抗モルモット抗体を加え4℃にて30分間撹拌させた。細胞を遠心分離後DMAM培地に懸濁させ、これにER-Tracker (1μM)を加え5分間室温で放置することで小胞体を染色し蛍光顕微鏡にて観察した。その結果ER-tracker強陽性の形質細胞表面にIgGの発現が認められた(
図5)。
【0115】
次に、この膜型IgGに蛍光標識抗原を作用させることで抗原特異的な形質細胞の同定が可能であるかを試みた。腸骨モルモットリンパ球懸濁液を、Alexafluor594標識インスリン及びER-trackerで染色し、これをフローサイトメーターにて解析した。その結果、
図6に示すように標識インスリン陽性でER-tracker強陽の細胞群が存在した(
図6のR1)。これを抗原特異的形質細胞画分とした。
【0116】
cDNA合成
cDNA合成および免疫グロブリン遺伝子増幅は、「反応治具及び反応方法、並びにcDNAの合成方法」(WO2009/091048)に記載の方法に準じて行った。
セルソーターにより分離された個々のモルモットプラズマ細胞をオリゴdT25が結合した磁気ビーズ(ダイナピーズ)3μgの入った細胞溶解液3μL(100mM TrisHCl(pH7.5),500mM LiCl,1%ドデシル硫酸 Li(LiDS),5mM dithiothreitol)に加え、細胞内のmRNAを磁気ビーズに結合させた。 次に磁気ビーズを、3μLのmRNA洗浄用溶A(10mM TrisHCl(pH7.5),0.15M LiCl,0.1% LiDS)、続いて3μLのmRNA洗浄用溶液B(75mM KCl,3mM MgCl
2,0.1%TritonX,0.5mM dNTP,5mM DTT,2unit RNase inhibitor)にて1回洗浄した後、cDNA合成を行った。洗浄後の磁気ビーズに、cDNA合成用溶液3μL(50mM Tris HCl(pH8.3),75mM KCl,3mM MgCl
2,0.1%TritonX−100,0.5mM dNTP,5mM DTT,2 unit RNase inhibitor,l0unit SuperScriptlll Reversetranscriptase(Invitrogen)を加え、37℃にて1時間反応させた。次に磁気ビーズを3’テーリング洗浄溶液3μL(50mMリン酸カリウム(pH7.0),0.5mM dGTP,0.1%TritonX−100,4mM塩化マグネシウム)にて洗浄し、新たに3’テーリング反応溶液3μL(50mMリン酸カリウム(pH7.0),0.5mM dGTP,0.1%TritonX−100, 4mM塩化マグネシウム,terminaldeoxynucleotidyltransferase 10U)を加え、37℃にて30分間反応を行った。
【0117】
モルモットγ、κ、λ鎖可変領域遺伝子断片の増幅
磁気ビーズを3μLのTE溶液(10mM TrisHCl(pH7.5),1mM EDTA,0.1%TritonX−100)にて洗浄後、5’−RACE PCR法を用いてヒト免疫グロブリンγ鎖及びκ鎖遺伝子の増幅を行った。1回目のPCR反応は、磁気ビーズに25μLのPCR反応溶液(プライマーを各0.2μM、dNTP 0.2 mM、タカラバイオPrimeSTAR耐熱性DNAポリメラーゼ lU含有)を加え94℃30秒−68℃40秒の反応を35サイクル行った。用いたプライマーは(ア)であり、TdTによりcDNAの3’端に付加されたポリGにアニーリングする。プライマー配列は(ケ)であり、モルモット免疫グロブリンγ鎖遺伝子の定常領域に由来する。プライマー配列は(コ)であり、モルモット免疫グロブリンκ鎖遺伝子の定常領域に由来する。プライマー配列は(サ)であり、モルモット免疫グロブリンλ鎖遺伝子の定常領域に由来する。
【0118】
反応後PCR溶液に水225μLを加え10倍希釈した溶液1μLを鋳型とし、プライマー(エ)とプライマー(シ)を用いて1回目のPCRと同様の条件でラット免疫グロブリンγ鎖遺伝子の可変領域の増幅反応を行った。同様にプライマー(エ)とプライマー(ス)を用いラット免疫グロブリンκ鎖遺伝子の可変領域の増幅反応を行った。同様にプライマー(エ)とプライマー(セ)を用いラット免疫グロブリンλ鎖遺伝子の可変領域の増幅反応を行った(
図7)。
用いたプライマーは、
1回目PCRγ鎖増幅用アンチセンスプライマー
5-GGTGCTGCTGGCCGGGTGGGCTACATTGCA-3 (ケ)(配列番号65)
1回目PCRκ鎖増幅用アンチセンスプライマー
5-CAGAGCCATCCACCTTCCACTTGACGG-3(コ)(配列番号66)
1回目PCRλ鎖増幅用アンチセンスプライマー
5-CTGCTGGCCATGTATTTGTTGTCGCTCTG-3(サ)(配列番号67)
2回目PCR増幅用センスプライマー
5-CTGAAGGACGGCCGGGAAGGTGTGCAC-3(シ)(配列番号68)
2回目PCRκ鎖増幅用アンチセンスプライマー
5-GGAAGAGGGAGATAGTTGGCTTCTGCACACTC-3(ス)(配列番号69)
2回目PCRλ鎖増幅用アンチセンスプライマー
5-AGAAGGAATTCAGGAGACACACCACTGT-3(セ)(配列番号70)
【0119】
モルモットの抗体遺伝子の構造は未だ明らかにされていないため、モルモット脾臓細胞から調製したcDNAを用い、モルモットγ鎖遺伝子定常領域、κ鎖遺伝子定常領域およびλ鎖遺伝子定常領域をクローン化し、これらの塩基配列を決定した。具体的には、モルモット脾臓細胞を、オリゴdT25が結合した磁気ビーズ(ダイナピーズ)3μgの入った細胞溶解液3μL(100mM TrisHCl(pH7.5),500mM LiCl,1%ドデシル硫酸 Li(LiDS),5mM dithiothreitol)に加え、細胞内のmRNAを磁気ビーズに結合させた。 次に磁気ビーズを、3μLのmRNA洗浄用溶A(10mM TrisHCl(pH7.5),0.15M LiCl,0.1% LiDS)、続いて3μLのmRNA洗浄用溶液B(75mM KCl,3mM MgCl
2,0.1%TritonX,0.5mM dNTP,5mM DTT,2unit RNase inhibitor)にて1回洗浄した後、cDNA合成を行った。洗浄後の磁気ビーズに、cDNA合成用溶液3μL(50mM Tris HCl(pH8.3),75mM KCl,3mM MgCl
2,0.1%TritonX−100,0.5mM dNTP,5mM DTT,2 unit RNase inhibitor,l0unit SuperScriptlll Reversetranscriptase(Invitrogen)を加え、37℃にて1時間反応させた。
上記で調製されたcDNAを鋳型として用い、プライマー(ソ)と(タ)でγ鎖定常領域を、プライマー(チ)と(ツ)でκ鎖定常領域を、プライマー(テ)と(ト)でλ鎖定常領域を増幅した。増幅されたDNA断片をpBlucscript SKベクターのXhoI/NotIサイトに挿入した後、塩基配列を決定した。
(ソ)5-AGAGACTCGAGTGCCTGGTCAAGGGCTACTTCCCTGA-3(配列番号71)
(タ)5-GAGAGAGCGGCCGCTCATTTACCCGGAGACCGGGAGAT-3(配列番号72)
(チ)5-AGAGACTCGAGGGGACCAAGCTGGAAATCAAACGGA-3(配列番号73)
(ツ)5-GAGAGAGCGGCCGCCTAGCACTCGCTCCTGTTGATGGTCT-3(配列番号74)
(テ)5-AGAGACTCGAGGAGGAGCTCCAGGACAACAAGGC-3(配列番号75)
(ト)5-GAGAGAGCGGCCGCTAAGAACACTCTGACGGGGCCAC-3(配列番号76)
【0120】
γ鎖定常領域配列(配列番号1)
TGCCTGGTCAAGGGCTACTTCCCTGAGCCGGTGACTGTGAAATGGAACTCAGGGGCCCTGACCAGTGGAGTGCACACCTTCCCGGCCGTCCTTCAGTCAGGCCTGTACTCACTCACCAGCATGGTAACTGTGCCCTCCAGCCAGAAGAAGGCCACCTGCAATGTAGCCCACCCGGCCAGCAGCACCAAGGTGGACAAGACTGTTGAGCCTATTCGAACTCCTCAACCCAACCCGTGTACATGTCCCAAGTGCCCACCTCCTGAAAACCTGGGTGGACCATCTGTCTTCATCTTTCCCCCGAAGCCCAAGGACACGCTCATGATCTCCCTGACCCCTAGGGTCACATGTGTGGTGGTAGATGTGAGCCAAGATGAGCCTGAAGTCCAGTTCACATGGTTCGTGGACAACAAACCGGTCGGCAATGCTGAGACAAAGCCCCGAGTGGAGCAATACAACACGACATTCCGCGTGGAAAGTGTCCTCCCCATCCAGCACCAGGACTGGCTGAGGGGCAAGGAATTCAAGTGCAAGGTCTACAACAAAGCCCTGCCAGCCCCCATAGAGAAGACCATCTCCAAAACCAAAGGGGCTCCCCGCATGCCAGATGTGTACACCCTTCCCCCGTCCCGAGACGAGCTATCCAAGAGCAAAGTCAGTGTGACCTGCCTGATCATCAACTTCTTTCCTGCCGACATCCACGTGGAGTGGGCCAGCAATAGGGTTCCAGTGAGTGAGAAGGAATACAAGAACACCCCACCCATTGAGGACGCTGACGGGTCCTACTTCCTCTACAGCAAGCTCACTGTGGATAAGAGCGCGTGGGATCAGGGAACCGTCTACACCTGCTCCGTGATGCATGAAGCCCTGCACAATCATGTCACTCAGAAGGCCATCTCCCGGTCTCCGGGTAA
【0121】
γ鎖定常領域アミノ酸配列(配列番号4)
CLVKGYFPEPVTVKWNSGALTSGVHTFPAVLQSGLYSLTSMVTVPSSQKKATCNVAHPASSTKVDKTVEPIRTPQPNPCTCPKCPPPENLGGPSVFIFPPKPKDTLMISLTPRVTCVVVDVSQDEPEVQFTWFVDNKPVGNAETKPRVEQYNTTFRVESVLPIQHQDWLRGKEFKCKVYNKALPAPIEKTISKTKGAPRMPDVYTLPPSRDELSKSKVSVTCLIINFFPADIHVEWASNRVPVSEKEYKNTPPIEDADGSYFLYSKLTVDKSAWDQGTVYTCSVMHEALHNHVTQKAISRSPG
【0122】
κ鎖定常領域配列(配列番号2)
GGGACCAAGCTGGAAATCAAACGGAGTGTGCAGAAGCCAACTATCTCCCTCTTCCCTCCATCATCTGAGGAGGTGACAGCTGGAAGTGCCTCAGTTGTGTGCTTCATTAATAGCTTCTATCCAAGAGACATCACCGTCAAGTGGAAGGTGGATGGCTCTGAACGCTCACAAGGCATCCTGAACAGTTACACAGATCAGGACAGCAAGGACAACACCTACAGCCTCAGTAGCACCCTGGCGCTGACGGCTTCAGAGTACAATCAGCATGAGAGGTACACCTGCGAGGTCTCCCACGCTGGCCTGACCTCACCCGCTGCCAAGACCATCAACAGGAGCGAGTGCTAG
【0123】
κ鎖定常領域アミノ酸配列(配列番号5)
GTKLEIKRSVQKPTISLFPPSSEEVTAGSASVVCFINSFYPRDITVKWKVDGSERSQGILNSYTDQDSKDNTYSLSSTLALTASEYNQHERYTCEVSHAGLTSPAAKTINRSEC
【0124】
λ鎖定常領域配列(配列番号3)
GAGGAGCTCCAGGACAACAAGGCCACAGTGGTGTGTCTCCTGAATTCCTTCTACCCCGGCTCTGTGAATGTCAGCTGGAAGGCAGATGGCACCACCATCAACCAGGGCGTGCAGACCACACAGCCTGCCAAACAGAGCGACAACAAATACATGGCCAGCAGCTACCTGACACTGACTCCCGACCAGTGGAGGTCTCACCAGAGAATCAGCTGCCAGGTCAAACACGAGGCAGGCAATGTGGAGAAGAGTTTGGCCCCGTCAGAGTGTTCTTAA
【0125】
λ鎖定常領域アミノ酸配列(配列番号6)
EELQDNKATVVCLLNSFYPGSVNVSWKADGTTINQGVQTTQPAKQSDNKYMASSYLTLTPDQWRSHQRISCQVKHEAGNVEKSLAPSECS
【0126】
モルモットγ鎖遺伝子、κ鎖遺伝子、λ鎖遺伝子発現ユニット作製は、「標的遺伝子由来配列を含む連結DNA断片の特異的作製方法」(WO2011/027808)に記載の方法に準じて調製した。
即ち、5'-RACE-PCR法により増幅された各PCR産物1μLに、terminaldeoxynucleotidyltransferaseを2 unit加え、37℃にて30分反応させ、その後94℃にて5分間加熱することで酵素反応を停止させた。
【0127】
上記で調製した3’端ポリヌクレオチド付加モルモットγ鎖遺伝子溶液に、モルモットγ鎖遺伝子連結用二本鎖DNA断片を10ng、プライマーを10pmol、dNTPを10nmolを加え、タカラバイオのPrimeSTAR耐熱性DNAポリメラーゼを用い25μLの反応液にて、94℃を40秒、70℃を4分の反応を5サイクル、引き続き94℃を40秒、60℃を40秒、72℃を4分の反応を30サイクル行うことで、モルモットγ鎖遺伝子発現ユニットを作製した。
【0128】
同様に、モルモットκ鎖遺伝子溶液に、モルモットκ鎖遺伝子連結用二本鎖DNA断片を加え反応を行い、モルモットκ鎖遺伝子発現ユニットを作製した。同様に、モルモットλ鎖遺伝子溶液に、モルモットλ鎖遺伝子連結用二本鎖DNA断片を加え反応を行い、モルモットλ鎖遺伝子発現ユニットを作製した。
【0129】
発現得ニット増幅に用いたプライマーは、(キ)(ク)。
反応後、PCR溶液各1μLを取り、アガロースゲル電気泳動法にてκ及びγ鎖免疫グロブリン遺伝子断片の発現ユニットへの変換を確認した(
図8を参照)。
【0130】
モルモットγ鎖遺伝子連結用二本鎖DNA断片はモルモットγ鎖定常領域(1-911),連結配列II(1-96)、ポリA付加シグナル(912-1118)、CMVプロモーター(1628-2093)、連結配列1(2094-2123)からなる(配列番号77)。
TGCCTGGTCAAGGGCTACTTCCCTGAGCCGGTGACTGTGAAATGGAACTCAGGGGCCCTGACCAGTGGAGTGCACACCTTCCCGGCCGTCCTTCAGTCAGGCCTGTACTCACTCACCAGCATGGTAACTGTGCCCTCCAGCCAGAAGAAGGCCACCTGCAATGTAGCCCACCCGGCCAGCAGCACCAAGGTGGACAAGACTGTTGAGCCTATTCGAACTCCTCAACCCAACCCGTGTACATGTCCCAAGTGCCCACCTCCTGAAAACCTGGGTGGACCATCTGTCTTCATCTTTCCCCCGAAGCCCAAGGACACGCTCATGATCTCCCTGACCCCTAGGGTCACATGTGTGGTGGTAGATGTGAGCCAAGATGAGCCTGAAGTCCAGTTCACATGGTTCGTGGACAACAAACCGGTCGGCAATGCTGAGACAAAGCCCCGAGTGGAGCAATACAACACGACATTCCGCGTGGAAAGTGTCCTCCCCATCCAGCACCAGGACTGGCTGAGGGGCAAGGAATTCAAGTGCAAGGTCTACAACAAAGCCCTGCCAGCCCCCATAGAGAAGACCATCTCCAAAACCAAAGGGGCTCCCCGCATGCCAGATGTGTACACCCTTCCCCCGTCCCGAGACGAGCTATCCAAGAGCAAAGTCAGTGTGACCTGCCTGATCATCAACTTCTTTCCTGCCGACATCCACGTGGAGTGGGCCAGCAATAGGGTTCCAGTGAGTGAGAAGGAATACAAGAACACCCCACCCATTGAGGACGCTGACGGGTCCTACTTCCTCTACAGCAAGCTCACTGTGGATAAGAGCGCGTGGGATCAGGGAACCGTCTACACCTGCTCCGTGATGCATGAAGCCCTGCACAATCATGTCACTCAGAAGGCCATCTCCCGGTCTCCGGGTAAATGAGCGGCCGCGACTCTAGATCATAATCAGCCATACCACATTTGTAGAGGTTTTACTTGCTTTAAAAAACCTCCCACACCTCCCCCTGAACCTGAAACATAAAATGAATGCAATTGTTGTTGTTAACTTGTTTATTGCAGCTTATAATGGTTACAAATAAAGCAATAGCATCACAAATTTCACAAATAAAGCATTTTTTTCACTGCATTCTAGTTGTGGTTTGTCCAAACTCATCAATGTATCTTAAGGCGTAAATTGTAAGCGTTAATATTTTGTTAAAATTCGCGTTAAATTTTTGTTAAATCAGCTCATTTTTTAACCAATAGGCCGAAATCGGCAAAATCCCTTATAAATCAAAAGAATAGACCGAGATAGGGTTGAGTGTTGTTCCAGTTTGGAACAAGAGTCCACTATTAAAGAACGTGGACTCCAACGTCAAAGGGCGAAAAACCGTCTATCAGGGCGATGGCCCACTACGTGAACCATCACCCTAATCAAGTTTTTTGGGGTCGAGGTGCCGTAAAGCACTAAATCGGAACCCTAAAGGGAGCCCCCGATTTAGAGCTTGACGGGGAAAGCCGGCGAATAGTTATTAATAGTAATCAATTACGGGGTCATTAGTTCATAGCCCATATATGGAGTTCCGCGTTACATAACTTACGGTAAATGGCCCGCCTGGCTGACCGCCCAACGACCCCCGCCCATTGACGTCAATAATGACGTATGTTCCCATAGTAACGCCAATAGGGACTTTCCATTGACGTCAATGGGTGGAGTATTTACGGTAAACTGCCCACTTGGCAGTACATCAAGTGTATCATATGCCAAGTACGCCCCCTATTGACGTCAATGACGGTAAATGGCCCGCCTGGCATTATGCCCAGTACATGACCTTATGGGACTTTCCTACTTGGCAGTACATCTACGTATTAGTCATCGCTATTACCATGGTGATGCGGTTTTGGCAGTACATCAATGGGCGTGGATAGCGGTTTGACTCACGGGGATTTCCAAGTCTCCACCCCATTGACGTCAATGGGAGTTTGTTTTGGCACCAAAATCAACGGGACTTTCCAAAATGTCGTAACAACTCCGCCCCATTGACGCAAATGGGCGGTAGGCGTGTACGGTGGGAGGTCTATATAAGCAGAGCTGGTTTAGTGAACCGTCAGATCCGCTAGCGCTACCGGACTCAGATCCCCCCCCCCCCC
【0131】
モルモットκ鎖遺伝子連結用二本鎖DNA断片はモルモットκ鎖定常領域(1-345),
連結配列II(1-55)、ポリA付加シグナル(346-548)、CMVプロモーター(1058-1652)、連結配列1(1653-1682)からなる(配列番号78)。
GGGACCAAGCTGGAAATCAAACGGAGTGTGCAGAAGCCAACTATCTCCCTCTTCCCTCCATCATCTGAGGAGGTGACAGCTGGAAGTGCCTCAGTTGTGTGCTTCATTAATAGCTTCTATCCAAGAGACATCACCGTCAAGTGGAAGGTGGATGGCTCTGAACGCTCACAAGGCATCCTGAACAGTTACACAGATCAGGACAGCAAGGACAACACCTACAGCCTCAGTAGCACCCTGGCGCTGACGGCTTCAGAGTACAATCAGCATGAGAGGTACACCTGCGAGGTCTCCCACGCTGGCCTGACCTCACCCGCTGCCAAGACCATCAACAGGAGCGAGTGCTAGGCGGCCGCGACTCTAGATCATAATCAGCCATACCACATTTGTAGAGGTTTTACTTGCTTTAAAAAACCTCCCACACCTCCCCCTGAACCTGAAACATAAAATGAATGCAATTGTTGTTGTTAACTTGTTTATTGCAGCTTATAATGGTTACAAATAAAGCAATAGCATCACAAATTTCACAAATAAAGCATTTTTTTCACTGCATTCTAGTTGTGGTTTGTCCAAACTCATCAATGTATCTTAAGGCGTAAATTGTAAGCGTTAATATTTTGTTAAAATTCGCGTTAAATTTTTGTTAAATCAGCTCATTTTTTAACCAATAGGCCGAAATCGGCAAAATCCCTTATAAATCAAAAGAATAGACCGAGATAGGGTTGAGTGTTGTTCCAGTTTGGAACAAGAGTCCACTATTAAAGAACGTGGACTCCAACGTCAAAGGGCGAAAAACCGTCTATCAGGGCGATGGCCCACTACGTGAACCATCACCCTAATCAAGTTTTTTGGGGTCGAGGTGCCGTAAAGCACTAAATCGGAACCCTAAAGGGAGCCCCCGATTTAGAGCTTGACGGGGAAAGCCGGCGAACGTGGCGAGAAAGGAAGGGAAGAAAGCGAAAGGAGCGGGCGCTAGGGCGCTGGCAAGTGTAGCGGTCACGCTGCGCGTAACCACCACACCCGCCGCGCTTAATGCGCCGCTACAGGGCGCGTCagatctTAGTTATTAATAGTAATCAATTACGGGGTCATTAGTTCATAGCCCATATATGGAGTTCCGCGTTACATAACTTACGGTAAATGGCCCGCCTGGCTGACCGCCCAACGACCCCCGCCCATTGACGTCAATAATGACGTATGTTCCCATAGTAACGCCAATAGGGACTTTCCATTGACGTCAATGGGTGGAGTATTTACGGTAAACTGCCCACTTGGCAGTACATCAAGTGTATCATATGCCAAGTACGCCCCCTATTGACGTCAATGACGGTAAATGGCCCGCCTGGCATTATGCCCAGTACATGACCTTATGGGACTTTCCTACTTGGCAGTACATCTACGTATTAGTCATCGCTATTACCATGGTGATGCGGTTTTGGCAGTACATCAATGGGCGTGGATAGCGGTTTGACTCACGGGGATTTCCAAGTCTCCACCCCATTGACGTCAATGGGAGTTTGTTTTGGCACCAAAATCAACGGGACTTTCCAAAATGTCGTAACAACTCCGCCCCATTGACGCAAATGGGCGGTAGGCGTGTACGGTGGGAGGTCTATATAAGCAGAGCTGGTTTAGTGAACCGTCAGATCCGCTAGCGCTACCGGACTCAGATCCCCCCCCCCCCC
【0132】
モルモットλ鎖遺伝子連結用二本鎖DNA断片(配列)はモルモットλ鎖定常領域(1-272),連結配列II(1-52)、ポリA付加シグナル(53-410)、CMVプロモーター(985-1579)、連結配列1(1580-1609)からなる(配列番号79)。
GAGGAGCTCCAGGACAACAAGGCCACAGTGGTGTGTCTCCTGAATTCCTTCTACCCCGGCTCTGTGAATGTCAGCTGGAAGGCAGATGGCACCACCATCAACCAGGGCGTGCAGACCACACAGCCTGCCAAACAGAGCGACAACAAATACATGGCCAGCAGCTACCTGACACTGACTCCCGACCAGTGGAGGTCTCACCAGAGAATCAGCTGCCAGGTCAAACACGAGGCAGGCAATGTGGAGAAGAGTTTGGCCCCGTCAGAGTGTTCTTAGCGGCCGCGACTCTAGATCATAATCAGCCATACCACATTTGTAGAGGTTTTACTTGCTTTAAAAAACCTCCCACACCTCCCCCTGAACCTGAAACATAAAATGAATGCAATTGTTGTTGTTAACTTGTTTATTGCAGCTTATAATGGTTACAAATAAAGCAATAGCATCACAAATTTCACAAATAAAGCATTTTTTTCACTGCATTCTAGTTGTGGTTTGTCCAAACTCATCAATGTATCTTAAGGCGTAAATTGTAAGCGTTAATATTTTGTTAAAATTCGCGTTAAATTTTTGTTAAATCAGCTCATTTTTTAACCAATAGGCCGAAATCGGCAAAATCCCTTATAAATCAAAAGAATAGACCGAGATAGGGTTGAGTGTTGTTCCAGTTTGGAACAAGAGTCCACTATTAAAGAACGTGGACTCCAACGTCAAAGGGCGAAAAACCGTCTATCAGGGCGATGGCCCACTACGTGAACCATCACCCTAATCAAGTTTTTTGGGGTCGAGGTGCCGTAAAGCACTAAATCGGAACCCTAAAGGGAGCCCCCGATTTAGAGCTTGACGGGGAAAGCCGGCGAACGTGGCGAGAAAGGAAGGGAAGAAAGCGAAAGGAGCGGGCGCTAGGGCGCTGGCAAGTGTAGCGGTCACGCTGCGCGTAACCACCACACCCGCCGCGCTTAATGCGCCGCTACAGGGCGCGTCagatctTAGTTATTAATAGTAATCAATTACGGGGTCATTAGTTCATAGCCCATATATGGAGTTCCGCGTTACATAACTTACGGTAAATGGCCCGCCTGGCTGACCGCCCAACGACCCCCGCCCATTGACGTCAATAATGACGTATGTTCCCATAGTAACGCCAATAGGGACTTTCCATTGACGTCAATGGGTGGAGTATTTACGGTAAACTGCCCACTTGGCAGTACATCAAGTGTATCATATGCCAAGTACGCCCCCTATTGACGTCAATGACGGTAAATGGCCCGCCTGGCATTATGCCCAGTACATGACCTTATGGGACTTTCCTACTTGGCAGTACATCTACGTATTAGTCATCGCTATTACCATGGTGATGCGGTTTTGGCAGTACATCAATGGGCGTGGATAGCGGTTTGACTCACGGGGATTTCCAAGTCTCCACCCCATTGACGTCAATGGGAGTTTGTTTTGGCACCAAAATCAACGGGACTTTCCAAAATGTCGTAACAACTCCGCCCCATTGACGCAAATGGGCGGTAGGCGTGTACGGTGGGAGGTCTATATAAGCAGAGCTGGTTTAGTGAACCGTCAGATCCGCTAGCGCTACCGGACTCAGATCCCCCCCCCCCCC
【0133】
上記の実験で増幅された全長のモルモットγ鎖、κ鎖、λ鎖遺伝子発現ユニットを293FT細胞に遺伝子導入し2日間培養を行うことで、細胞培養液中に組換えモルモット抗体を分泌させた。抗原特異的形質細胞および非特異的形質細胞から得られた組換えモルモットモノクローナル抗体のヒトインスリン結合能をELISA法にて調べた(
図9)。その結果、抗原特異的形質細胞から得られたモノクローナル抗体241種類のうち146クローンにおいて陰性コントロールの10倍のインスルリン結合能が、77クローンが陰性コントロールの50倍の強い結合力を示した。以上の結果から、モルモットにおいても、標識抗原とER-trackerをリンパ球懸濁液に作用させるだけの操作により、抗原特異的な形質細胞を同定し、これから抗原特異的なモノクローナル抗体を作製することが可能であることが明らかとなった。
【0134】
得られた241種類の組換え抗体の中からヒトインスリンに対し特に結合能の高いクローン12種類を選別し、その塩基配列を決定した。このようにして得られたヒトインスリンに対するモルモット抗体のγ鎖定可変領域の遺伝子配列を配列表の配列番号7〜18に示す。また、ヒトインスリンに対するモルモット抗体のγ鎖可変領域のペプチドのアミノ酸配列は、配列番号19〜30に示す。さらに、ヒトインスリンに対するモルモット抗体のκ鎖可変領域の遺伝子配列を配列表の配列番号31〜42に示す。ヒトインスリンに対するモルモット抗体のκ鎖可変領域のペプチドのアミノ酸配列は、配列番号43〜54に示す。
【0135】
さらに上記ヒトインスリンに対するモルモット抗体のκ鎖およびγ鎖定可変領域のFR1,CDR1,FR2,CDR2,FR3,CDR3,FR4は、それぞれヒト免疫グロブリン可変領域との相同性を用いて決定した。得られたモルモットのモノクローナル抗体12類のκ鎖及びγ鎖のFR1〜4及びCDR1〜3のアミノ酸配列を以下の表に示す。
【0136】
【表1】
【0137】
実施例3 抗卵白アルブミンウサギモノクローナル抗体の作製
ウサギは他の動物では得られない高親和性の抗体を作製することが知られている。そこで本発明を用い、ウサギモノクローナル抗体の作製を行った。
【0138】
[材料と方法]
免疫動物はウサギ♀6週齢を用いた。抗原は卵白アルブミン。免疫は、ウサギ尾部の両側に卵白アルブミン300μgを一ヶ月おきに4回筋肉注射した。免疫成立後、腸骨リンパ節を採取した。卵白アルブミンはAlexafluor488にて蛍光標識し、ゲルろ過により精製した。
【0139】
[結果]
腸骨リンパ節よりリンパ球をPBS-0.5%牛血清アルブミン溶液に懸濁させた後、Alexafluor488蛍光標識卵白アルブミンを加え4℃にて30分間撹拌させた。細胞を遠心分離後PBSに再懸濁させ、これにER-Tracker (1μM)を加え5分間室温で放置することで小胞体を染色しフローサイトメーターにて解析した。その結果、卵白アルブミン陽性でER-tracker強陽の細胞群が存在した(
図10)。これを抗原特異的形質細胞画分とした。
【0140】
cDNA合成
cDNA合成および免疫グロブリン遺伝子増幅は、「反応治具及び反応方法、並びにcDNAの合成方法」(WO2009/091048)に記載の方法に準じて行った。セルソーターにより分離された個々のウサギプラズマ細胞をオリゴdT25が結合した磁気ビーズ(ダイナピーズ)3μgの入った細胞溶解液3μL(100mM TrisHCl(pH7.5),500mM LiCl,1%ドデシル硫酸 Li(LiDS),5mM dithiothreitol)に加え、細胞内のmRNAを磁気ビーズに結合させた。 次に磁気ビーズを、3μLのmRNA洗浄用溶A(10mM TrisHCl(pH7.5),0.15M LiCl,0.1% LiDS)、続いて3μLのmRNA洗浄用溶液B(75mM KCl,3mM MgCl2,0.1%TritonX,0.5mM dNTP,5mM DTT,2unit RNase inhibitor)にて1回洗浄した後、cDNA合成を行った。洗浄後の磁気ビーズに、cDNA合成用溶液3μL(50mM Tris HCl(pH8.3),75mM KCl,3mM MgCl2,0.1%TritonX−100,0.5mM dNTP,5mM DTT,2 unit RNase inhibitor,l0unit SuperScriptlll Reversetranscriptase(Invitrogen)を加え、37℃にて1時間反応させた。次に磁気ビーズを3'テーリング洗浄溶液3μL(50mMリン酸カリウム(pH7.0),0.5mM dGTP,0.1%TritonX−100,4mM塩化マグネシウム)にて洗浄し、新たに3'テーリング反応溶液3μL(50mMリン酸カリウム(pH7.0),0.5mM dGTP,0.1%TritonX−100, 4mM塩化マグネシウム,terminaldeoxynucleotidyltransferase 10U)を加え、37℃にて30分間反応を行った。
【0141】
ウサギγ、κ鎖可変領域遺伝子断片の増幅
磁気ビーズを3μLのTE溶液(10mM TrisHCl(pH7.5),1mM EDTA,0.1%TritonX−100)にて洗浄後、5'−RACE PCR法を用いてヒト免疫グロブリンγ鎖及びκ鎖遺伝子の増幅を行った。1回目のPCR反応は、磁気ビーズに25μLのPCR反応溶液(プライマーを各0.2μM、dNTP 0.2 mM、タカラバイオPrimeSTAR耐熱性DNAポリメラーゼ lU含有)を加え94℃30秒−68℃40秒の反応を35サイクル行った。用いたプライマーは(ア)であり、TdTによりcDNAの3'端に付加されたポリGにアニーリングする。プライマー配列は(ナ))であり、ウサギ免疫グロブリンγ鎖遺伝子の定常領域に由来する。プライマー
配列は(ニ)であり、ウサギ免疫グロブリンκ鎖遺伝子の定常領域に由来する。
【0142】
反応後PCR溶液に水225μLを加え10倍希釈した溶液1μLを鋳型とし、プライマー(エ)とプライマー(ヌ)を用いて1回目のPCRと同様の条件でウサギ免疫グロブリンγ鎖遺伝子の可変領域の増幅反応を行った。同様にプライマー(エ)とプライマー(ネ)を用いウサギ免疫グロブリンκ鎖遺伝子の可変領域の増幅反応を行った。(
図11)。
用いたプライマーは、
1回目PCRγ鎖増幅用アンチセンスプライマー
5-GCTGGCTGCTTGAGGTCACGCTCACCAC-3 (ナ)(配列番号80)
1回目PCRκ鎖増幅用アンチセンスプライマー
5- CAGTTGTTTGGGTGGTGCCATCCAC-3 (ニ)(配列番号81)
2回目PCRγ鎖増幅用アンチセンスプライマー
5- CTGCCGGACGGACGGGAAGGTGCGTAC-3 (ヌ)(配列番号82)
2回目PCRκ鎖増幅用アンチセンスプライマー
5- ACACACGATGGTGACTGTTCCAGTTG-3 (ネ)(配列番号83)
【0143】
ウサギ免疫グロブリン線状化発現ベクターの作製
ウサギγ鎖遺伝子、κ鎖遺伝子発現ユニット作製は、「標的遺伝子由来配列を含む連結DNA断片の特異的作製方法」(WO2011/027808)の方法に準じて調製した。即ち5'-RACE-PCR法により増幅された各PCR産物1μLに、terminaldeoxynucleotidyltransferaseを2 unit加え、37℃にて30分反応させ、その後94℃にて5分間加熱することで酵素反応を停止させた。
【0144】
上記で調製した3'端ポリヌクレオチド付加ウサギγ鎖遺伝子溶液に、ウサギγ鎖遺伝子連結用二本鎖DNA断片を10ng、プライマー(キ)(ク)を各10pmol、dNTPを10nmolを加え、タカラバイオのPrimeSTAR耐熱性DNAポリメラーゼを用い25μLの反応液にて、94℃を40秒、70℃を4分の反応を5サイクル、引き続き94℃を40秒、60℃を40秒、72℃を4分の反応を30サイクル行うことでウサギγ鎖遺伝子発現ユニットを作製した。
同様に、ウサギκ鎖遺伝子溶液に、ウサギκ鎖遺伝子連結用二本鎖DNA断片を加え反応を行い、ウサギκ鎖遺伝子発現ユニットを作製した。
【0145】
発現ユニット増幅に用いたプライマーは、(キ)(ク)。
反応後、PCR溶液各1μLを取り、アガロースゲル電気泳動法にてκ及びγ鎖免疫グロブリン遺伝子断片の発現ユニットへの変換を確認した(
図12)。
遺伝子連結用二本鎖DNA断片
【0146】
ウサギγ鎖遺伝子連結用二本鎖DNA断片はウサギγ鎖定常領域(1-893)連結配列II(1-93)、ポリA付加シグナル(1065-1071)、CMVプロモーター(1606-2195)、連結配列1(2196-2230)からなる(配列番号84)。
CTGGTCAAAGGCTACCTCCCGGAGCCAGTGACCGTGACCTGGAACTCGGGCACCCTCACCAATGGGGTACGCACCTTCCCGTCCGTCCGGCAGTCCTCAGGCCTCTACTCGCTGAGCAGCGTGGTGAGCGTGACCTCAAGCAGCCAGCCCGTCACCTGCAACGTGGCCCACCCAGCCACCAACACCAAAGTGGACAAGACCGTTGCGCCCTCGACATGCAGCAAGCCCACGTGCCCACCCCCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCTGTCTTCATCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCACGCACCCCCGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCAGGATGACCCCGAGGTGCAGTTCACATGGTACATAAACAACGAGCAGGTGCGCACCGCCCGGCCGCCGCTACGGGAGCAGCAGTTCAACAGCACGATCCGCGTGGTCAGCACCCTCCCCATCGCGCACCAGGACTGGCTGAGGGGCAAGGAGTTCAAGTGCAAAGTCCACAACAAGGCACTCCCGGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAGAGGGCAGCCCCTGGAGCCGAAGGTCTACACCATGGGCCCTCCCCGGGAGGAGCTGAGCAGCAGGTCGGTCAGCCTGACCTGCATGATCAACGGCTTCTACCCTTCCGACATCTCGGTGGAGTGGGAGAAGAACGGGAAGGCAGAGGACAACTACAAGACCACGCCGGCCGTGCTGGACAGCGACGGCTCCTACTTCCTCTACAGCAAGCTCTCAGTGCCCACGAGTGAGTGGCAGCGGGGCGACGTCTTCACCTGCTCCGTGATGCACGAGGCCTTGCACAACCACTACACGCAGAAGTCCATCTCCCGCTCTCCGGGTAAATGAGCGCGGCCGCGACTCTAGATCATAATCAGCCATACCACATTTGTAGAGGTTTTACTTGCTTTAAAAAACCTCCCACACCTCCCCCTGAACCTGAAACATAAAATGAATGCAATTGTTGTTGTTAACTTGTTTATTGCAGCTTATAATGGTTACAAATAAAGCAATAGCATCACAAATTTCACAAATAAAGCATTTTTTTCACTGCATTCTAGTTGTGGTTTGTCCAAACTCATCAATGTATCTTAAGGCGTAAATTGTAAGCGTTAATATTTTGTTAAAATTCGCGTTAAATTTTTGTTAAATCAGCTCATTTTTTAACCAATAGGCCGAAATCGGCAAAATCCCTTATAAATCAAAAGAATAGACCGAGATAGGGTTGAGTGTTGTTCCAGTTTGGAACAAGAGTCCACTATTAAAGAACGTGGACTCCAACGTCAAAGGGCGAAAAACCGTCTATCAGGGCGATGGCCCACTACGTGAACCATCACCCTAATCAAGTTTTTTGGGGTCGAGGTGCCGTAAAGCACTAAATCGGAACCCTAAAGGGAGCCCCCGATTTAGAGCTTGACGGGGAAAGCCGGCGAACGTGGCGAGAAAGGAAGGGAAGAAAGCGAAAGGAGCGGGCGCTAGGGCGCTGGCAAGTGTAGCGGTCACGCTGCGCGTAACCACCACACCCGCCGCGCTTAATGCGCCGCTACAGGGCGCGTCagatctTAGTTATTAATAGTAATCAATTACGGGGTCATTAGTTCATAGCCCATATATGGAGTTCCGCGTTACATAACTTACGGTAAATGGCCCGCCTGGCTGACCGCCCAACGACCCCCGCCCATTGACGTCAATAATGACGTATGTTCCCATAGTAACGCCAATAGGGACTTTCCATTGACGTCAATGGGTGGAGTATTTACGGTAAACTGCCCACTTGGCAGTACATCAAGTGTATCATATGCCAAGTACGCCCCCTATTGACGTCAATGACGGTAAATGGCCCGCCTGGCATTATGCCCAGTACATGACCTTATGGGACTTTCCTACTTGGCAGTACATCTACGTATTAGTCATCGCTATTACCATGGTGATGCGGTTTTGGCAGTACATCAATGGGCGTGGATAGCGGTTTGACTCACGGGGATTTCCAAGTCTCCACCCCATTGACGTCAATGGGAGTTTGTTTTGGCACCAAAATCAACGGGACTTTCCAAAATGTCGTAACAACTCCGCCCCATTGACGCAAATGGGCGGTAGGCGTGTACGGTGGGAGGTCTATATAAGCAGAGCTGGTTTAGTGAACCGTCAGATCCGCTAGCGCTACCGGACTCAGATCCCCCCCCCCCCC
【0147】
遺伝子連結用二本鎖DNA断片
ウサギκ鎖遺伝子連結用二本鎖DNA断片はウサギκ鎖定常領域(1-312)、連結配列II (1-95)、ポリA付加シグナル(507-513)、CMVプロモーター(1050-1633)、連結配列1(1640-1675)からなる(配列番号85)。
ATCCAGTTGCACCTACTGTCCTCATCTTCCCACCAGCTGCTGATCAGGTGGCAACTGGAACAGTCACCATCGTGTGTGTGGCGAATAAATACTTTCCCGATGTCACCGTCACCTGGGAGGTGGATGGCACCACCCAAACAACTGGCATCGAGAACAGTAAAACACCGCAGAATTCTGCAGATTGTACCTACAACCTCAGCAGCACTCTGACACTGACCAGCACACAGTACAACAGCCACAAAGAGTACACCTGCAAGGTGACCCAGGGCACGACCTCAGTCGTCCAGAGCTTCAACAGGGGTGACTGCTAGAGCGGCCGCGACTCTAGATCATAATCAGCCATACCACATTTGTAGAGGTTTTACTTGCTTTAAAAAACCTCCCACACCTCCCCCTGAACCTGAAACATAAAATGAATGCAATTGTTGTTGTTAACTTGTTTATTGCAGCTTATAATGGTTACAAATAAAGCAATAGCATCACAAATTTCACAAATAAAGCATTTTTTTCACTGCATTCTAGTTGTGGTTTGTCCAAACTCATCAATGTATCTTAAGGCGTAAATTGTAAGCGTTAATATTTTGTTAAAATTCGCGTTAAATTTTTGTTAAATCAGCTCATTTTTTAACCAATAGGCCGAAATCGGCAAAATCCCTTATAAATCAAAAGAATAGACCGAGATAGGGTTGAGTGTTGTTCCAGTTTGGAACAAGAGTCCACTATTAAAGAACGTGGACTCCAACGTCAAAGGGCGAAAAACCGTCTATCAGGGCGATGGCCCACTACGTGAACCATCACCCTAATCAAGTTTTTTGGGGTCGAGGTGCCGTAAAGCACTAAATCGGAACCCTAAAGGGAGCCCCCGATTTAGAGCTTGACGGGGAAAGCCGGCGAACGTGGCGAGAAAGGAAGGGAAGAAAGCGAAAGGAGCGGGCGCTAGGGCGCTGGCAAGTGTAGCGGTCACGCTGCGCGTAACCACCACACCCGCCGCGCTTAATGCGCCGCTACAGGGCGCGTCagatctTAGTTATTAATAGTAATCAATTACGGGGTCATTAGTTCATAGCCCATATATGGAGTTCCGCGTTACATAACTTACGGTAAATGGCCCGCCTGGCTGACCGCCCAACGACCCCCGCCCATTGACGTCAATAATGACGTATGTTCCCATAGTAACGCCAATAGGGACTTTCCATTGACGTCAATGGGTGGAGTATTTACGGTAAACTGCCCACTTGGCAGTACATCAAGTGTATCATATGCCAAGTACGCCCCCTATTGACGTCAATGACGGTAAATGGCCCGCCTGGCATTATGCCCAGTACATGACCTTATGGGACTTTCCTACTTGGCAGTACATCTACGTATTAGTCATCGCTATTACCATGGTGATGCGGTTTTGGCAGTACATCAATGGGCGTGGATAGCGGTTTGACTCACGGGGATTTCCAAGTCTCCACCCCATTGACGTCAATGGGAGTTTGTTTTGGCACCAAAATCAACGGGACTTTCCAAAATGTCGTAACAACTCCGCCCCATTGACGCAAATGGGCGGTAGGCGTGTACGGTGGGAGGTCTATATAAGCAGAGCTGGTTTAGTGAACCGTCAGATCCGCTAGCGCTACCGGACTCAGATCCCCCCCCCCCCC
【0148】
上記の実験で増幅された全長のウサギγ鎖、κ鎖遺伝子発現ユニットを293FT細胞に遺伝子導入し2日間培養を行うことで、細胞培養液中組換えウサギ抗体を分泌させた。抗原特異的形質細胞及び非特異的形質細胞より得られた組換えウサギモノクローナル抗体の抗原結合能についてELISA法を用いて調べた(
図13)ところ、抗原特異的形質細胞から得られた組換えウサギモノクローナル抗体は、卵白アルブミンに対し強い結合力を示した。以上の結果から、標識抗原とER-trackerをリンパ球懸濁液に作用させるだけの操作により、抗原特異的な形質細胞を同定し、これから抗原特異的なウサギモノクローナル抗体を高効率で作製することが可能であることが明らかとなった。