(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜12のいずれか1項記載のトリアジンポリマーを含み、且つ発泡微小孔質ポリテトラフルオロエチレンの層によって補強されている複合膜からなる、請求項14記載の膜。
【発明を実施するための形態】
【0028】
IV. 発明の詳細な説明
上記したように、本発明のトリアジンポリマーは、スルホン化形態において、燃料電池内の電解質(または、等価用語の膜)として特に有用であり、各々か下記の式(I)に相応する少なくとも1個の成分を含む複数の繰返し基本構造単位を含むという本質的特徴を有する:
【化2】
(式中、
符号X
1およびX
2は、同一または異なるものであって、S、SOまたはSO
2を示し;
符号Ar
1およびAr
2は、同一または異なるものであって、置換または非置換のフェニレン基を示し;
符号Ar
3は、置換または非置換のフェニル基を示し;
符号Tzは、1,3,5‐トリアジン核を示す)。
【0029】
用語“ポリマー”は、ここでは、上記の式(I)を有する基本構造単位を含む任意のホモポリマーまたはコポリマー(特に、ブロックコポリマー)を意味するものと理解すべきである。
1,3,5‐トリアジン(“sトリアジン”としても知られている)は下記の式を有することを思い起すべきである:
【化3】
【0030】
従って、トリフェニル‐1,3,5‐トリアジンは、上記の式(I)において、下記によって示される:
【化4】
【0031】
換言すれば、上記基本構造単位の一般式(I)の中心成分は、そのように、下記の拡大式を有する(符号Rは、この場合、水素または水素に対しての置換基を示す):
【化5】
【0032】
換言すれば、X
1およびX
2が同一である好ましい例においては、上記基本構造単位の一般式(I)の中心成分は、添付図面1A、1Bおよび1Cにそれぞれ示している3つの式I‐1、I‐2およびI‐3の1つに相応する。
【0033】
第1の好ましい実施態様によれば、一般式(I)を有する上記基本構造単位の上記成分は、下記の特定の式(I‐A)に相応する:
【化6】
(式中、符号Ar
4およびAr
5は、同一または異なるものであって、置換または非置換のフェニル基を示す(上記符号Ar
1およびAr
2と同様に)。
【0034】
換言すれば、上記基本構造単位の一般式(I)の中心成分は、下記の拡大式を有する:
【化7】
【0035】
従って、X
1およびX
2が同一である好ましい例においては、上記基本構造単位の一般式(I‐A)の中心成分は、添付図面2A、2Bおよび2Cにそれぞれ示している3つの式I‐A‐1、I‐A‐2およびI‐A‐3の1つに相応する。
【0036】
もう1つの好ましい実施態様によれば、式(I)の上記基本構造単位の一般式(I)の上記中心成分は、下記の特定の式(I‐B)に相応する:
【化8】
(式中、符号Y
1およびY
2は、同一または異なるものであって、過フッ素化炭化水素結合を示す)。
【0037】
換言すれば、上記基本構造単位の一般式(I‐B)の中心成分は、下記の拡大式を有する:
【化9】
【0038】
好ましい例としては、上記の過フッ素化炭化水素結合は、式(CF
2)
mのペルフルオロアルキレンであり、式中、mは、1〜20、より好ましくは2〜20、特に2〜8の範囲にある。
換言すれば、この好ましい例においては、また、一方でX
1およびX
2が同一であり、他方でY
1およびY
2が同一であるより好ましい例においては、上記基本構造単位の式(I‐B)の中心成分は、添付図面3A、3Bおよび3Cにそれぞれ示している3つの式I‐B‐1、I‐B‐2およびI‐B‐3の1つに相応する。
【0039】
もう1つの好ましい例としては、上記過フッ素化炭化水素結合は、下記の式に包括すべきペルフルオロシクロブチレンである:
【化10】
【0040】
換言すれば、この好ましい例においては、また、一方でX
1およびX
2が同一であり、他方でY
1およびY
2が同一であるより好ましい例においては、上記基本構造単位の式(I‐B)の成分は、添付図面4A、4Bおよび4Cにそれぞれ示している3つの式I‐B‐4、I‐B‐5およびI‐B‐6の1つに相応する。
【0041】
上述したように、上記のフェニルまたはフェニレン基Ar
1、Ar
2、Ar
3、Ar
4およびAr
5は、置換されていてもまたは置換されてなくてもよい。これらのフェニルまたはフェニレン基が置換されている場合、本発明は、特に、式(I)の基本構造単位(即ち、トリアジン核)当り1個のみのフェニルまたはフェニレン基が置換されている場合、さらにまた、トリアジン核当り数個のフェニルまたはフェニレン基が置換されている場合に該当し、1個のみまたは数個の同一または異なる置換基は、同じフェニルまたはフェニレン基上に或いは複数の同じフェニルまたはフェニレン基上に存在することが可能である。
【0042】
特に、上記芳香核の可能性ある置換基(即ち、より正確には、これらのフェニルまたはフェニレン基の水素原子に対する可能性ある置換基)の例としては、下記の置換基を挙げることができる:
・- F、- Cl、- Br、- CN、- CF
3、- NO
2、- N(CH
3)
2;
・- COOH、- COOM、- PO
3H、- PO
3M、-SO
3H、- SO
3M (符号Mは、アルカリ金属カチオン、好ましくはNa
+またはK
+を示す);
・ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、ペルフルオロアルキル、スルホアルキル、スルホアリール、アリール、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシルまたはアリールオキシル基。
これらの可能性ある置換基は、好ましくは、置換基 - F、- CN、- CF
3、- PO
3H、- PO
3M、- SO
3Hおよび- SO
3M並びにこれら置換基の混合物からなる群から選ばれる。
【0043】
もう1つの好ましい実施態様によれば、本発明のトリアジンポリマーは、少なくとも式(I)の上記中心成分を含む上記基本構造単位以外に、下記の式(II‐A)、(II‐B)および(II‐C)から選ばれる式(II)のさらなる構造単位を含む:
(II-A) - Ar
6 - X
3 - Ar
7 -
(II-B) - Ar
8 - X
4 - (CF
2)
m - X
5 - Ar
9 -
(II-C) - Ar
10 - CO - Ar
11 - (CF
2)
m - Ar
12 - CO - Ar
13 -
(式中、符号Ar
6、Ar
7、Ar
8、Ar
9、Ar
10、Ar
11、Ar
12およびAr
13は、同一または異なるものであって、置換または非置換のフェニレン基を示し(上記の符号Ar
1、Ar
2、Ar
4およびAr
5と同様に);
符号X
3、X
4およびX
5は、同一または異なるものであって、S、SOまたはSO
2を示し(上記の符号X
1およびX
2と同様に);そして、
mは、1〜20、より好ましくは2〜20、特に、2〜8の範囲にある)。
【0044】
従って、フェニレン基Ar
6およびAr
7が同一であるかどうかを問わず、式(II‐A)の上記さらなる構造単位は、そのように、拡大式として、添付図面5A、5Bおよび5Cにそれぞれ示す3つの式II‐A‐1、II‐A‐2およびII‐A‐3を有する。
X
4およびX
5が同一である場合(Ar
8およびAr
9が同一であるかどうかを問わない)の他の好ましい例においては、式(II‐B)の上記さらなる構造単位は、そのように、拡大式として、添付図面6A、6Bおよび6Cにそれぞれ示す3つの式II‐B‐1、II‐B‐2およびII‐B‐3を有する。
【0045】
図7A、7Bおよび7Cは、上記で示したような式(I‐1)の成分を含む基本構造単位とそれぞれ上記の式(II‐A‐1)、(II‐A‐2)および(II‐A‐3)のさらなる構造単位との双方を含む、それぞれの式(III‐1)、(III‐2)および(III‐3)を有する本発明に従うトリアジンポリマー配列の例を示す。
図8A、8Bおよび8Cは、上記したようなそれぞれ式(I‐1)、(I‐2)および(I‐3)の成分を含む基本構造単位と上記の式(II‐B‐3)のさらなる構造単位との双方を含む、それぞれ式(IV‐1)、(IV‐2)および(IV‐3)を有する本発明に従うトリアジンポリマー配列の他の例を示す。
【0046】
Ar
1、Ar
2、Ar
3、Ar
4およびAr
5基について上記で示したように、フェニレン基Ar
6、Ar
7、Ar
8、Ar
9、Ar
10、Ar
11、Ar
12およびAr
13は、置換されていてもまたは置換されてなくてもよい。これらのフェニレン基が置換されている場合、本発明は、特に、式(II)のさらなる構造単位当り1個のみのフェニレン基が置換されている場合、さらにまた、式(II)のさらなる構造単位当り数個のフェニレン基が置換されている場合に該当し、1個のみまたは数個の同一または異なる置換基は、同じフェニレン基上に存在することが可能である。
【0047】
特に、上記フェニレン基の可能性ある置換基(即ち、より正確には、これらのフェニレン基の水素原子に対する可能性ある置換基)の例としては、下記の置換基を挙げることができる:
・- F、- Cl、- Br、- CN、- CF
3、- NO
2、- N(CH
3)
2;
・- COOH、- COOM、- PO
3H、- PO
3M、-SO
3H、- SO
3M (符号Mは、アルカリ金属カチオン、好ましくはNa
+またはK
+を示す);
・ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、ペルフルオロアルキル、スルホアルキル、スルホアリール、アリール、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシルまたはアリールオキシル基。
これらの可能性ある置換基は、好ましくは、置換基 - F、- CN、- CF
3、- PO
3H、- PO
3M、- SO
3Hおよび- SO
3M並びにこれら置換基の混合物からなる群から選ばれる。
【0048】
本発明のトリアジンポリマーの式(I)の成分を含む各種基本構造単位と、必要に応じての式(II)の上記さらなる構造単位とは、任意の適切な化学結合によって互いに結合させ得る。
【0049】
好ましくは、上記基本構造単位と必要に応じての上記さらなる構造単位との少なくとも1部を、エーテル(-O-)結合、チオエーテル(-S-)結合、スルホキシド(-SO-)結合、スルホン(-SO
2-)結合およびそのような結合の混合物からなる群から選ばれるブリッジによって、特に上記ポリマーの加水分解による分解のリスクに対するそのような結合の高化学安定性のために互いに結合させる。
さらに好ましくは、上記基本構造単位の全てと、必要に応じての上記さらなる構造単位の全てとを、エーテル(-O-)結合、チオエーテル(-S-)結合、スルホキシド(-SO-)結合、スルホン(-SO
2-)結合およびそのような結合の混合物からなる群から選ばれるブリッジによって互いに結合させる。
【0050】
エーテル(-O-)結合によって互いに結合させた式(I)の成分を含む基本構造単位と必要に応じての式(II)のさらなる構造単位とを含む本発明に従うトリアジンポリマーの特に好ましい例は、
図9〜14、16および17に示しており、これらの例は、後で詳細に説明する。チオエーテル(-S-)またはスルホン(-SO
2-)結合によって互いに結合させた式(I)の成分を含む基本構造単位を含む本発明に従うトリアジンポリマーの他の特に好ましい例は、
図15に示しており、これらの例は、後で詳細に説明する。
【0051】
本発明のもう1つの特に好ましい実施態様によれば、本発明のトリアジンポリマーは、好ましくは上記膜の水中での溶解性を低下させることのできる立体的に封鎖性の疎水性タイプの“保護”基によってブロックされたブロックト鎖終端または末端を含む。
【0052】
さらに好ましくは、上記鎖末端は、芳香族タイプの保護基によってブロックされている。特に、そのような芳香族保護基の例としては、置換フェニル、置換ベンゾフェノン、置換ジフェニルスルホン、置換フェニルペルフルオロアルキルスルホンおよびそのような基の混合物からなる群から選ばれる基が挙げられる;これらの基は、さらに好ましくは、一置換されている。
【0053】
本発明のトリアジンポリマーの鎖末端の全部または1部上に存在し得るそのような一置換芳香族保護基の例は、例えば、下記の式で示される基である(mは、好ましくは、1〜20の範囲にある整数である):
【化11】
【0054】
ブロックト鎖末端を含む本発明に従うトリアジンポリマーは、例えば、
図24および25において示している(符号Bは、これらの図面に関しては、ベンゾフェノン基を示している);これらのポリマーは、後で詳細に説明する。
【0055】
事柄を簡素化するために、下記のダイアグラム表示において符号的に“P”で示す、そのブロックされた好ましい形の本発明に従うトリアジンポリマーは、その分子鎖の少なくとも1つの末端において、またはより好ましくは各末端において、保護基を含む;下記で“B”で示す保護基は、好ましくは、ポリマーPに、エーテル(-O-)、チオエーテル(-S-)、スルホキシド(-SO-)またはスルホン(-SO
2-)ブリッジによって結合させる;そのようなブリッジは、例えば、一方の、出発初期トリアジンポリマー(従って、この段階では、ブロックされていない形)の鎖末端に存在するヒドロキシルまたはチオール(−OHまたは−SH)末端基と、他方の、上記初期トリアジンポリマーの鎖末端と反応させることを意図する上記の立体的に封鎖性の疎水性芳香族分子との反応によって得られる:
B - O - P - O - B
B - S - P - S - B
B - SO - P - SO - B
B - SO
2 - P - SO
2 - B
【0056】
本発明のトリアジンポリマーは、特に、このポリマーがスルホン化形態にあるときに、特にPEM燃料電池内の電解質として使用することができる。
用語“スルホン化ポリマー”は、定義によれば、また、周知のとおり、1個以上のスルホン(-SO
3H)もしくはスルホネート(-SO
3M)基またはそのような基の混合物を担持するポリマーを意味するものと理解されたい;Mは、好ましくはリチウム(Li)、セシウム(Cs)、ナトリウム(Na)およびカリウム(K)から、より好ましくはナトリウム(Na)およびカリウム(K)から選ばれるアルカリ金属のカチオンである。この場合、より簡明に言えば、周知の通り、PEM電池において、上記ポリマーの陽子伝導特性をもたらすのがスルホン基である。
【0057】
添付図面9〜17は、本発明に従うトリアジンポリマーの幾つかの好ましい例、さらにまた、これらのポリマーの種々の実施可能な合成スキームを示している。
図9のトリアジンポリマー(以下、“ポリマー1”と称する)は、エーテル(-O-)ブリッジにより互いに結合させた式(I‐A‐3)の成分を含む基本構造単位と式(II‐B‐3)のさらなる構造単位の双方を含むという特徴を有する。ポリマー1は、この場合、スルホン化形態で存在し、スルホネート-SO
3M基(Mは、好ましくは、Na
+またはK
+である)は、式(II‐B‐3)の上記さらなる構造単位によってもたらされていることに注目し得る。このポリマー1は、塩基と有機溶媒の存在下での
図9に示すモノマーA1とB1 (ジスルホン化B1)との重縮合によって、後で詳細に説明する手順に従って調製し得る。
【0058】
図10のトリアジンポリマー(以下、“ポリマー2”と称する)は、上記のポリマー1と同様、エーテルブリッジにより互いに結合させた式(I‐A‐3)の成分を含む基本構造単位と式(II‐B‐3)のさらなる構造単位とを含む。ポリマー2は、スルホン化形態にあり、スルホネート-SO
3M基(Mは、好ましくは、Na
+またはK
+である)は、この場合、式(I‐A‐3)の成分を含む上記基本構造単位によってもたらされていることに注目し得る。このポリマー2は、適切な塩基と適切な有機溶媒の存在下での、ポリマー1においての上記のように、
図10に示すモノマーA2 (スルホン化)とB2との重縮合によって調製し得る。
【0059】
上記の各ポリマーの例におけるように、
図11のトリアジンポリマー(以下、“ポリマー3”と称する)は、エーテルブリッジにより互いに結合させた式(I‐A‐3)の成分を含む基本構造単位と式(II‐B‐3)のさらなる構造単位の双方を含む。ポリマー3は、この場合、スルホン化形態で提供され、スルホネート基(-SO
3M;Mは、好ましくは、Na
+またはK
+である)は、式(I‐A‐3)の成分を含む上記基本構造単位と式(II‐B‐3)の上記さらなる構造単位の双方によってもたらされる。このポリマー3は、ポリマー1および2において上記したような、適切な塩基と適切な有機溶媒の存在下での
図11に示すA3 (スルホン化、モノマーA2と同一)およびB3 (ジスルホン化、モノマーB1と同一)で表す両モノマーの重縮合によって調製し得る。
【0060】
図12のトリアジンポリマー(以下、“ポリマー4A”および“ポリマー4B”で示す)は、エーテルブリッジによって全てを互いに結合させた式(I‐A‐1)または(I‐A‐3)の成分を含む基本構造単位のそれぞれと式(II‐A‐3)のさらなる構造単位の双方を含み、スルホネート基(-SO
3M;Mは、好ましくは、Na
+またはK
+である)は、例えば、式(II‐A‐3)の上記さらなる構造単位の1部が担持している。
【0061】
これらのポリマー4Aおよび4Bは、
図12においてA4、B4およびC4 (ジスルホン化モノマーC4)で表している3種のモノマーの、ポリマー1、2または3において上記したような、適切な塩基と適切な有機溶媒の存在下での重縮合によって調製し得る。その後、そのようにして得られた第1ポリマー(ポリマー4A)を、過酸化水素(過酸化水素水溶液)で酸化して最終ポリマー(ポリマー4B)を得る。モノマーA4およびC4は、既知であって、商業的に入手可能であり、モノマーB‐4は、後で詳細に説明する手順に従って調製する。
【0062】
図13のトリアジンポリマー(“ポリマー5”で示す)は、エーテルブリッジによって互いに結合させた式(I‐A‐3)の成分を含む基本構造単位のみを含み、スルホネート基(-SO
3M;Mは、好ましくは、Na
+またはK
+である)は、例えば、式(I‐A‐3)の成分を含むこれら基本構造単位の1部のみが担持している。このポリマー5は、
図13にA5 (モノスルホン化、モノマーA2と同一)およびB5 (モノマーB1と同一)で示す2種のトリアジンモノマーの、適切な塩基と適切な有機溶媒の存在下での重縮合によって調製し得る。
【0063】
図14は、この場合も、
図14に示しているように、C5およびE5 (モノスルホン化モノマーE5)で示す2種のトリアジンモノマーと芳香族ジチオールモノマー(モノマーD5)との重縮合による、ポリマー5の実施可能な合成方法のもう1つの例を示している。第1工程において得られたポリマー(ポリマー5A)は、チオエーテルブリッジによって互いに結合させた結合させた式(I‐A‐1)の成分を含む基本構造単位のみを含む。その後、ポリマー5Aを、過酸化水素で酸化して最終ポリマー(ポリマー5B、上記ポリマー5と同一)を得る。
【0064】
一方、
図15のトリアジンポリマー(“ポリマー6B”)は、スルホン(-SO
2-)ブリッジによって互いに結合させた式(I‐A‐3)の成分を含む基本構造単位のみを含み、スルホネート基(SO
3M;Mは、好ましくは、Na
+またはK
+である)は、例えば、式(I‐A‐3)の成分を含む上記基本構造単位の1部のみが担持している。このポリマー6Bは、
図15に示しているような、A6 (上記モノマーC5と同一)およびC6 (ジスルホン化モノマーC6、上記モノマーE5と同一)で示す2種のトリアジンモノマーと芳香族ジチオールモノマー(モノマーB6、モノマーD5と同一)との、適切な塩基と適切な有機溶媒の存在下での重縮合によって調製し得る。第1工程において得られるポリマー(ポリマー6A)は、チオエーテルブリッジによって互いに結合させた式(I‐A‐1)の成分を含む基本構造単位のみを含む。その後、ポリマー6Aを過酸化水素で酸化して、この場合スルホンブリッジによって互いに結合させた式(I‐A‐3)の成分を含む基本構造単位のみを含む。
【0065】
図16のトリアジンポリマー(以下、“ポリマー7”で示す)は、エーテルブリッジにより互いに結合させた式(I‐A‐1)の成分を含む基本構造単位と式(II‐B‐3)のさらなる構造単位の双方を含む。ポリマー7は、この場合、スルホン化形態で提供され、スルホネート基(SO
3M;Mは、好ましくは、Na
+またはK
+である)は、上記さらなる構造単位(II‐B‐3)によってもたらされる。このポリマー7は、上記で示しているように、
図16に示しているようなモノマーA7とB7 (ジスルホン化B7、上記モノマーB1と同一)との、後で詳細に説明する手順に従う、適切な塩基と適切な有機溶媒の存在下での重縮合によって調製し得る。
【0066】
図17のトリアジンポリマー(以下、“ポリマー8”で示す)は、エーテルブリッジにより互いに結合させた式(I‐A‐1)の成分を含む基本構造単位と式(II‐C)のさらなる構造単位の双方を含む。ポリマー8は、この場合、スルホン化形態で提供され、スルホネート基(SO
3M;Mは、好ましくは、Na
+またはK
+である)は、モノマーB8によってもたらされる。このポリマー8は、上記で示しているように、
図17に示しているようなモノマーA8 (上記モノマーA7と同一)とB8 (ジスルホン化)との、後で詳細に説明する手順に従う、適切な塩基と適切な有機溶媒の存在下での重縮合によって調製し得る。
【0067】
好ましい実施態様によれば、符号X
1、X
2、X
3、X
4およびX
5は、全て、SO
2基を示す。もう1つの好ましい実施態様によれば、本発明のトリアジンポリマーは、下記によって担持されている1個以上のスルホン基またはスルホネート基を含む:
・上記ポリマーの少なくとも1個の上記基本構造単位中または上記ポリマーの少なくとも1個の上記さらなる構造単位中の、少なくとも1個の上記フェニル基またはフェニレン基、或いは、必要に応じての、上記フェニル基またはフェニレン基の少なくとも1個の置換基;または、
上記ポリマーの少なくとも1個の上記基本構造単位中または上記ポリマーの少なくとも1個の上記さらなる構造単位中の、少なくとも1個のその過フッ化炭化水素結合、或いは、必要に応じての、上記過フッ化炭化水素結合の少なくとも1個の置換基。
【0068】
V. 本発明の実施例
以下の試験により、先ずは最初に、モノマーA1、B1 (B7とも称する)、A7 (B4とも称する)およびB8の合成を、そして、その後、ポリマー1、ポリマー7およびポリマー8の合成を詳細に説明する。
その後、ポリマー1およびポリマー8を、特性決定し、PEMタイプの燃料電池内の陽子伝導性膜として試験する。
本発明説明においては、他で明確に断らない限り、全ての百分率(%)は、質量パーセントである。
【0069】
V‐1. モノマーA1の合成
モノマーA1は、2,4‐[4(4‐ヒドロキシフェニルスルホニル)フェニル]‐6‐フェニル‐1,3,5‐トリアジンであり、その式は、下記のとおりである(
図9において、既に再現している):
【化12】
このモノマーA1 (即ち、
図18における化合物3)は、
図18に図式的に示す手順に従い、3つの連続する工程において、以下で詳述するようにして調製した。
【0070】
V‐1‐A) 工程1
第1工程においては、化合物1、即ち、2,4‐ビス(p‐フルオロフェニル)‐6‐フェニル‐1,3,5‐トリアジンを、以下の、
図18Aにおいて図式的に示している手順に従って調製する。
この手順は、難しくはあるが、Spencer R.DおよびBeggs B.Hによる刊行物 “Determination of Four Closely Related Triaryl‐s‐Triazines by Infrared Spectroscopy", Anal. Chem., 1963, 31(11), 1633‐1636に記載されているような塩素化トリフェニルトリアジンの合成方法から起案している。
【0071】
磁力撹拌棒、還流コンデンサーおよび温度計を備えた500mLの三口丸底フラスコを、高温エアガンを使用して乾燥させる(上記装置は真空下に置く)。67.8gのp‐フルオロベンゾニトリル(0.56モル) (Fluorochem社、99%)、36.0gの塩化アンモニウム(0.68モル)、34.0gの塩化アルミニウム(0.26モル)および32.0gの塩化ベンゾイル(0.22モル)を、窒素下の上記丸底フラスコに入れる。上記丸底フラスコを、158℃に加熱した油浴内に浸し、150℃(反応丸底フラスコ内の温度)にて、反応混合物上でのゆるやかな窒素流下に1夜放置する。
【0072】
反応生成物を、周囲温度(約23℃)に冷却し、300gの氷と60gのHClを添加することによって加水分解する。固形物を濾別し、その後、水中に分散させ、中性pHが得られるまで洗浄する。白色固形物を、還流下に加熱した500mlのメタノール中で30分間撹拌し、次いで、混合物を周囲温度に冷却する。最後に、生成物を濾別し、真空下に60℃で乾燥させる。
【0073】
そのようにして、26.6g (収率 35%)の化合物1を得る;この化合物は、254.5℃の融点(DSCに従う)を示す。
NMR分析は、下記の結果を示す。
1H NMR、500MHz (CD
2Cl
2):7.30〜7.34 (m、4H)、7.62〜7.65 (m、2H)、7.68〜7.70 (m、1H)、8.79〜8.80 (d、2H)、8.82〜8.85 (m、4H)。
【0074】
V‐1‐B) 工程2
第2工程においては、化合物2 (化合物B4としても知られている、例えば、
図12参照)、即ち、2,4‐[4‐ヒドロキシフェニルスルファニル)フェニル‐6‐フェニル‐1,3,5‐トリアジンを、以下の、
図18Bにおいて図式的に示している手順に従って調製する。
【0075】
4‐ヒドロキシルチオフェノール、即ち、4‐HTP (99%、Acros社)を、窒素下に、固体形で保存する。化合物1とK
2CO
3を、別々に、真空下に150℃で1夜乾燥させる。磁力撹拌棒を、2Lの丸底フラスコ(還流コンデンサー、温度計および窒素入口/出口を備えた)に入れる。装置を、真空下に置き乾燥させる。二方バルブを使用して、真空を窒素で置換え、反応物の添加中は、不活性ガスで連続して掃気する。
【0076】
化合物1 (9.13g、即ち、26.44ミリモル)と粉末無水K
2CO
3 (9.69g、即ち、4‐HTPに対して1.2当量)を、まだ高温である間(乾燥終了時)に、窒素で掃気した装置に加える。この後、750mlの無水DMSOを添加する。得られた懸濁液を、引続き、溶液内への窒素流によって少なくとも15分間掃気する。
【0077】
液体形の必要量の4‐HTP (7.45gまたは58.42ミリモル、即ち、2.2当量)を、10mlのプラスチックシリンジを使用して移し取り、シリンジ内で直接秤量し、反応混合物中に注入する。全ての反応物を添加した時点で、窒素を溶液上に連続して送気する。混合物を、連続撹拌しながら、100℃で1夜(20時間)加熱し、その後、周囲温度に冷却する。
【0078】
生成物は、1工程では精製できない:約250mlのアリコート画分の反応混合物を取出し、2.6リットルの酢酸エチル/水(質量比 1/1)を収容する分別漏斗(3リットル)中に注入する。生成物の残余は、窒素の連続流下に保つ。分別漏斗内に入れた混合物を振盪し(オレンジ色からレモンイエローに変色する)、所望生成物を、酢酸エチレン相中に抽出する(DMSO/H
2O相は、痕跡量の所望生成物しか含まない)。有機相を100mlのNaHCO
3溶液で洗浄し、この工程の後、100mlのH
2Oで洗浄する;その後、有機相を無水MgSO
4で乾燥させる。このプロセスを、他の2つの残りの250mlアリコートの反応混合物において2回繰返す。
【0079】
酢酸エチル相を、回転蒸発器を使用して蒸発させる;蜂蜜様の、粘稠な僅かにオレンジ色の液が残存する(少量のDMSOを含む)。残留DMSOは、減圧下に100℃で除去する。少量のアセトン(10ml)を、次いで、40mlのジエチルエーテルを添加する。固形物は、直ぐにクリームホワイト状になり、セラミックフィルター上で濾別する。残留チオールは、反応生成物から、カラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン/CH
2Cl
2/酢酸エチル/メタノール(質量比 4/2/1/1)を移動相として使用することによって除去する。
【0080】
13.1g (即ち、約89%の収率)の化合物2を、そのようにして得る。
NMR分析は、下記の結果を示す。
1H NMR (500 MHz) d
6‐DMSO:6.93〜6.95 (d、4H)、7.17〜7.19 (d、4H)、7.42〜7.44 (d、4H)、7.58〜7.60 (m、2H)、7.65〜7.68 (m、1H)、8.49〜8.50 (d、4H)、8.61〜8.63 (d、2H)、10.04 (s、2H)。
生成物の分子量は、“MALDI”(マトリクス支援レーザー脱離イオン化(Matrix-assisted Laser Desorption/Ionization))質量分析(ポジティブモード;ジトラノールマトリックス)によって測定したとき、558.1に等しい(算出理論値は557.7に等しい)。
【0081】
V‐1‐C) 工程3
最後に、第3の最終工程においては、化合物3 (モノマーA1)を、以下の、
図18Cにおいて図式的に示している手順に従って調製する。
【0082】
250mLの三口丸底フラスコに、磁力撹拌棒、温度計、還流コンデンサーおよび反応物添加用の開口を装着する。懸濁液を、6.69gの化合物2 (12ミリモル)を150mlの氷酢酸に添加することによって調製する。反応物を添加した時点で、懸濁液を70℃に加熱する。反応物は、溶解して僅かに透明な黄色を呈する。その後、18.0gの50%過酸化水素(264ミリモル)を、反応物中に滴下により導入する(発熱は観察されない)。溶液を還流(100℃)下に1時間加熱する(僅かに黄色に変色)。CH
2Cl
2/酢酸エチル/メタノール(質量比 3/1/1)中での薄層クロマトグラフィー(シリカプレート)は、反応中の反応物の消費量をモニターすることを可能にする(上記トリアジンの325nmでの青色蛍光は、酸化につれて消失する)。
【0083】
その後、50mlの酢酸を、減圧(送水ポンプによって発生させた真空)下での蒸留によって除去する。蒸留後、冷却中に、白色結晶が、溶液から、温度が80℃よりも低く下がると直ぐに沈降し始める。溶液を、生成物が酢酸から結晶化するように、周囲温度で1夜放置する。その後、酢酸を濾過によって除去し、最終白色生成物を300mlの蒸留水で洗浄した。その後、約18gのそのようにして得られた湿潤生成物を丸底フラスコに移し、75mlの蒸留水を添加し、混ぜ合せた混合物を約15分間撹拌する。引続き、生成物を濾別し、中性pH値まで洗浄する。まだ湿っている生成物を、真空下に60℃で2時間、次いで、真空下に100℃で1夜(約12時間)乾燥させる。
【0084】
精製は、CH
2Cl
2/酢酸エチル/メタノール(3/1/1)を移動相として使用するカラムクロマトグラフィーによって実施する。
吸熱ピークは、約294℃に位置する(1回目のDSC操作)。モノマーは2回目のDSC操作中に直ちに重合することが記録される;そのようにして調製したポリマーのガラス転移温度(Tg)は、約145℃にある。
【0085】
そのようにして、5.35g (約80%の収率)の化合物3即ちモノマーA1を得る。
NMR分析は、下記の結果を示す:
1H NMR (360 MHz) d
6‐DMSO:6.99〜7.01 (d、4H)、7.62〜7.67 (m、2H)、7.72 (t、1H)、7.87〜7.90 (d、4H)、8.13〜8.16 (d、4H)、8.66〜8.68 (d、2H)、8.80〜8.83 (d、4H)、10.77 (s、2H)。
そのようにして得られたモノマーA1の、d
6‐DMSO中に溶解した
1H NMRスペクトル(360 MHz)は、
図19に再現している。
【0086】
最後に、生成物の分子量は、“ESI”(エレクトロスプレーイオン化)質量分析(ネガティブモード;水/アセトン 1/1混合物)によって測定したとき、620.7に等しい(算出理論値は621.7に等しい)。
【0087】
V‐2. モノマーB1の合成
モノマーB1は、ジスルホン化3,3’‐ビス(4‐フルオロフェニルスルホニル)ペルフルオロブタンであり、その式(既に
図9において再現している)は、下記のとおりである:
【化13】
このモノマーB1 (即ち、
図20における化合物6)は、
図20において図式的に示している手順に従い、3つの連続する工程において、下記で詳述するようにして調製した。
【0088】
V‐2‐A) 工程1
第1工程においては、化合物4、即ち、1,4‐ビス(4‐フルオロフェニルチオ)ペルフルオロブタンを、以下の、
図20Aにおいて図式的に示している手順に従って調製する。
この手順は、難しくはあるが、Feiring A.E.、Wonchoba E.R.およびArthur R.Dによる刊行物 "Fluorinated Poly(Ether Sulfone)s", J. Polym. Sci., Part A: Pol. Chem., 1990, 38, 2809‐2818に記載されているようなフッ素化ポリエーテルスルホンの合成方法から起案している。
【0089】
200mlの無水メタノール中のナトリウムメトキシド(13.64g) (Fluka社、97%)と4‐フルオロチオフェノール(31.70g) (Fluorochem社、99%) の混合物を、還流下に60分間加熱する。メタノールを留別した後、白色固形物を、装置内で、窒素下に周囲温度に保つ。
【0090】
51.0gの1,4‐ジヨードペルフルオロブタン(0.110モル) (Apollo Scientific社、98%)を、窒素下に、170mlの無水DMF中の37.0gの4‐フルオロフェニルチオール酸ナトリウム塩(244.83ミリモル)の溶液に添加し、0℃に冷却する;発熱が生じ、温度は40℃に達する。得られた溶液を40℃に保ち、撹拌する(約12時間)。溶液を、その後、60℃で1時間加熱する。溶液を、周囲温度に戻した時点で、60mlの水で希釈し、その後、真空ポンプを使用して濃縮して100mlの溶媒を除去する。残存溶液を水で希釈し、下の相を分離し、水洗する。生成物を真空下に120℃で蒸留する。不純物を除去した後、無色液体、即ち、37.9g (75.6%)を回収する。残った痕跡量の不純物(チオール)を、移動相としてヘキサンを使用するカラムクロマトグラフィーによって除去して、周囲温度において固形で透明なワックスに似た生成物を得る。生成物の融点は、約50℃に等しい(DSCによって測定)。
【0091】
下記の式の化合物4を、そのようにして得る:
【化14】
NMR分析は、下記の結果を示す:
1H NMR、500MHz (CDCl
3):7.09〜7.12 (m、4H)、7.62〜7.65 (m、4H)。
【0092】
V‐2‐B) 工程2
その後、第2工程において、化合物5、即ち、1,4‐ビス(4‐フルオロフェニルスルホニル)ペルフルオロブタンを、下記の、
図20Bにおいて図式的に示している手順に従って調製する。
【0093】
還流コンデンサー、磁力撹拌棒および窒素入口を備えた1リットルの二口丸底フラスコに、31.80g (80.0ミリモル)の化合物4、350mlの氷酢酸および65.4g (即ち、413ミリモル)のKMnO
4 (5.9当量)を装入する。周囲温度で10分間撹拌した後、溶液を0℃と5℃の間の温度に冷却し、次いで、35mlの濃硫酸を、氷浴による冷却中(0℃と5℃の間の温度、5時間)に、滴下により添加する。反応混合物を周囲温度で1夜撹拌し、その後、3.5リットルの蒸留水に注入する。生成物を7リットルのクロロホルムで抽出する。加水分解MnO
2を、毎回、濾紙プラス繊維フィルターで濾過する。溶媒(クロロホルム/酢酸)を、回転蒸発器を使用して50℃で除去する。その後、生成物を1リットルのクロロホルムに溶解する。その後、有機相を、200mlの飽和NaHCO
3溶液で、次いで、200mlの蒸留水で連続洗浄し、最後に、MgSO
4で乾燥させる。溶媒を回転蒸発器上で除去し、その後、生成物を、ヘキサン/酢酸エチル/メタノール(15/3/2)混合物を溶離剤として使用するカラムクロマトグラフィーによって精製して化合物5を得る。白色結晶形の生成物を、真空下に60℃で1夜乾燥させる。その後、生成物をアセトンから再結晶して透明結晶を得る。DSC分析により、約127℃の融点が明らかになる。
【0094】
そのようにして、32.6g (収率 90%)の下記の式を有する化合物5を得る:
【化15】
NMR分析は、下記の結果を示す:
1H NMR、500 MHz (CDCl
3):7.36〜7.39 (m、4H)、8.07〜8.10 (m、4H)。
【0095】
V‐2‐C) 工程3
最後に、第3の最終工程においては、化合物6即ちモノマーB1 (ジスルホン化3,3’‐ビス(4‐フルオロフェニルスルホニル)ペルフルオロブタン)を、以下の、
図20Cにおいて図式的に示している手順に従って調製する。
【0096】
化合物5 (5.0g、即ち、9.65ミリモル)を、高温エアガンで乾燥させ、次いで、窒素下に置いた四口丸底フラスコ(ガラス被覆磁力撹拌棒)内に入れる。その後、濃硫酸(23.6g)を、事前乾燥目盛り付きガラスシリンダーを使用して添加する。上記化合物の多くは、周囲温度の硫酸には溶解しない(溶液は、僅かに紫色になる)。最後に、20.06gの発煙硫酸(65% SO
3を含むMerck社製品)を、事前乾燥目盛り付き滴下漏斗を使用して添加する。ガス出口バブラーを濃硫酸で充たし、ガス状生成物を、空トラップに、次いで、10% NaOHを充たしたトラップに送気する。反応媒体を120℃に加熱し(128℃の油浴温度)、穏やかな窒素流が溶液上を移動する。反応を、120℃で1夜(約12時間)続行する。
【0097】
スルホン化が終了した時点で、反応混合物を90℃に冷却し、まだ熱いままで、250gの氷に注ぎ込む。混ぜ合せた混合物を撹拌する;氷が全て溶けた時点で、15のNaClを添加し、ジスルホン化モノマーを沈降させる。その後、沈降物を濾別し、次いで、真空下に80℃で乾燥させる。乾燥生成物を、その後、250mlの蒸留水と混合して、90℃まで加熱する。全ての生成物が溶解した時点で、pHを、7.0に、1% NaOH (水溶液)を添加することによって調整する。溶液を周囲温度に冷却する;生成物の多くは、その時点で沈降する。白色生成物を、濾過することによって、水性相から分離する。水性相中に残存している生成物は、15gのNaClを添加することによって沈降させる。生成物を濾別し、真空下に150℃で1夜乾燥させる。他の精製は必要ではない。
【0098】
そのようにして、5.92g (収率 85%)の、下記の式を有するモノマーB1を得る:
【化16】
【0099】
d
6‐DMSOに溶解したそのようにして得られたモノマーB1の
1H NMRスペクトル(500 MHz)は、
図21に再現している。
NMR分析は、下記の結果を示す:
1H NMR、500 MHz (d
6‐DMSO):7.67〜7.70 (m、2H)、8.20〜8.23 (m、2H)、8.29〜8.31 (m、2H)。
【0100】
生成物は、ジクロロメタン/酢酸エチル/メタノール(7:7:6)混合物を使用するシリカプレート上での薄層クロマトグラフィー(“TLC”)分析によれば、純粋で出現している。
最後に、生成物の分子量は、“ESI”(エレクトロスプレーイオン化)質量分析(ネガティブモード(M
−‐Na
+);水/アセトン 1/1混合物)によって測定したとき、698.8に等しい(算出理論値は699.5に等しい)。
【0101】
V‐3. モノマーB8の合成
モノマーB8は、ジスルホン化1,4‐ビス(4‐フルオロベンゾフェノン)ペルフルオロブタンであり、その式は、下記のとおりである:
【化17】
このモノマーB8 (即ち、化合物9)は、
図22において図式的に示している手順に従い、3つの連続する工程において、下記で詳述するようにして調製した。
【0102】
V‐3‐A) 工程1
第1工程においては、化合物7、即ち、4‐ヨード‐4’‐フルオロベンゾフェノンを、
図22Aに従って調製する。
4‐ヨードベンジルクロリド(30g、即ち、112.6ミリモル)、塩化アルミニウム(15.0g、即ち、112.7ミリモル)およびフルオロベンゼン(21.7g、即ち、225.8ミリモル)を、事前乾燥させた250mLの丸底フラスコに加える。混合物を、ゆるやかな窒素流下に、周囲温度で1夜撹拌する。翌日、固形物が出現しており、撹拌はもはや不可能である。その後、さらなる20mlのフルオロベンゼンを添加し、反応物を40℃(丸底フラスコ内の温度)で3時間混合する。装置を真空(送水ポンプ)下に40℃に置き、過剰のフルオロベンゼンを留別する(30分間)。
【0103】
200gの氷を丸底反応フラスコに直接加え、その後、60mlの37% HClを直ぐに添加する。そのようにして得られた固形生成物を、セラミック乳鉢内で細分して粉末とし、次いで、水中で白色粉末が得られるまで撹拌し、最後に、HCl溶液から濾過(濾紙)により分離し、中性pHが得られるまで洗浄する。固形物を、送水ポンプを使用して、周囲温度(23℃)で乾燥させ、その後、200mlのエタノールと混合し、最後に、60℃(丸底フラスコ内の温度)で、全てが溶解するまで加熱する。最後に、化合物を、エタノールを周囲温度に冷却することによって沈降させる。
【0104】
最終生成物(約30g)を、ヘキサン/酢酸エチル混合物(質量比 16/4)を移動相として使用するシリカ(300g)クロマトグラフィーによって精製する。生成物を、移動相から、回転蒸発器上で分離し、80℃で1夜乾燥させる(真空下に)。最終のクリーム色生成物(25g)は、NMR分析およびヘキサン/酢酸エチル(16/4比)混合物中でのTLCクロマトグラフィーにより純粋であり、約137℃の融点(DSCにより測定)を有することが判明している。
【0105】
そのようにして、下記の式を有する化合物7を得る:
【化18】
NMR分析は、下記の結果を示す:
1H NMR、500 MHz (CD
2Cl
2):7.17〜7.20 (m、2H)、7.48〜7.50 (m, 2H)、7.80〜7.82 (m、2H)、7.87〜7.89 (m、2H)。
【0106】
V‐3‐B) 工程2
その後、第2工程において、化合物8、即ち、1,4‐ビス(4‐フルオロベンゾフェノン)ペルフルオロブタンを、以下の、
図22Bにおいて図式的に示している手順に従って調製する。
17.0gの4‐ヨード‐4’‐フルオロベンゾフェノン(即ち、52.13ミリモル)、2.0gの2,2’‐ビピリジル(即ち、12.83ミリモル)を、その後、11.83gの1,4‐ジヨードペルフルオロブタン(即ち、26.06ミリモル)および150mlの無水DMSOを、事前乾燥させた500mlの四口丸底フラスコ内に導入する。その後、6.60gの銅粉末を添加し、溶液を、窒素流下に、連続撹拌しながら、65℃(油浴を74℃に調節する)で5時間加熱する。
【0107】
反応混合物を周囲温度に冷却し、次いで、500mlの冷水中に注ぎ込む;生成物が沈降し、その後、生成物を濾別し、1リットルのジクロロメタンによって溶解させる。その後、有機相を、無水Na
2SO
4で乾燥させる。最終生成物を、ジクロロメタン/シクロヘキサン(1/1)混合物中でのシリカ(300g)クロマトグラフィーによって精製する。
【0108】
そのようにして、下記の式を有する白色粉末形の化合物8を得る:
【化19】
【0109】
NMR分析は、下記の結果を示す:
1H NMR、500MHz (CD
2Cl
2):7.19〜7.23 (m、2H)、7.73〜7.75 (d、4H)、7.83〜7.87 (m、8H)。
19F NMR、471.3MHz (CDCl
3):105.04 (m、2F)、111.44〜111.50 (d、4F)、121.49〜121.55 (m、4F)。
生成物の融点(DSCにより測定)は、約222℃に等しい。
【0110】
V‐3‐C) 工程3
最後に、第3の最終工程においては、化合物9、即ち、ジスルホン化1,4‐ビス(4‐フルオロベンゾフェノン)ペルフルオロブタンを、以下の、
図22Cにおいて図式的に示している手順に従って調製する。
化合物8 (2.5g、即ち、4.18ミリモル)を、高温エアガンを使用して前以って乾燥させ、窒素流下に置いた50mlの四口丸底フラスコ内に入れる。6gの硫酸(2回蒸留、Sigma‐Aldrich社)と10gの発煙硫酸(65%、Merck社)を、直接固形物に添加する。反応媒体は、直ちに暗色化する。存在するガス状生成物を、空のガラストラップに、その後、30% NaOHを充たしたトラップに送気する。反応媒体を、約130℃(油浴内は約138℃)に、溶液上を移動する緩やかな窒素流下に4時間加熱する。
【0111】
スルホン化が終了した時点で、反応混合物を周囲温度に冷却し、その後、反応混合物を63gの氷に注ぎ込み、撹拌する。氷が全て溶けた時点で、6.25gのNaClを添加する。溶液を100℃に加熱し、その後、周囲温度に冷却してスルホン化モノマーが沈降するようにする。その後、沈降物を、再び、15mlの水に溶解し、再度100℃に加熱して液体形に戻す。全ての生成物が溶解した時点で、pHを、7.0に、1% NaOH (水溶液)を滴下して添加することによって調整する。溶液を周囲温度に冷却する。そのようにして得られたクリームホワイト色の固形物を、濾過することによって、水性相から分離する。生成物を150℃で1夜乾燥させる(真空下に)。
【0112】
そのようにして、下記の式を有する化合物9 (モノマーB8)を得る:
【化20】
【0113】
NMR分析は、下記の結果を示す:
1H NMR、500MHz (d
6‐DMSO):7.35〜7.39 (m、2H)、7.80〜7.83 (m、2H)、7.87〜7.93 (m、8H)、8.09〜8.10 (d、1H)、8.11〜8.12 (d、1H)。
d
6‐DMSO中に溶解した、そのようにして得られたモノマーB8のの
1H NMRスペクトル (500MHz)は、
図23に再現している。
最後に、生成物の分子量は、“ESI”(エレクトロスプレーイオン化)質量分析(ネガティブモード;水/アセトン1/1混合物)によって測定したとき、778.9に等しい(算出理論値は779.6に等しい)。
【0114】
V‐4. ポリマー1の合成
この実施例は、詳細な形で、上記で説明したモノマーA1とB1からの、スルホン化形態で、ベンゾフェノン基によってブロックされた、
図24に示しているようなポリマー1の合成を説明する。
【0115】
モノマーA1を、真空下に60℃で1夜乾燥させる。モノマーB1とNa
2CO
3を、別々に、真空下に150℃で1夜乾燥させる。その後、上記3つの化合物を混合し、真空下に160℃で1時間乾燥させる。モノマーA1とB1の共重合は、100mlの三口丸底フラスコ内で生じる。この丸底フラスコは、窒素入口、温度計、磁力撹拌子、および還流コンデンサーが登載しているディーン・スタークセパレータを備えている。装置のガラス部分は、高温エアガンを使用して真空下に乾燥させて、上記丸底反応フラスコ内は少なくとも100℃の温度に達するようにする。
【0116】
丸底反応フラスコに、モノマーA1 (1.89g、即ち、3.04ミリモルまたは1当量)、モノマーB1 (2.20g、即ち、3.04ミリモルまたは1当量)、無水炭酸ナトリウム(0.97g、9.13ミリモルまたは3当量)、無水N,N‐ジメチルアセトアミド(20ml)およびトルエン(4.0ml、共沸剤)を装入する。丸底反応フラスコを、100℃の油浴内で1時間加熱する(共沸蒸留)。その後、トルエン循環用のバルブを閉じて、トルエンを100℃で留別する。その後、油浴の温度を約148℃に上げ、残留トルエンをさらに60分間の蒸留により除去して、全てのトルエンを反応物から除去し且つ温度が丸底フラスコ内で140℃に上るようにする。トルエンをディーン・スタークセパレータから空にし、油浴の温度を約159℃に上げ、この値に1夜維持する。約20時間後、油浴の温度を約168℃(丸底フラスコ内は約152℃)に上げて、重合を4時間続行する。反応温度を、丸底フラスコを油浴から取出すことによって、丸底フラスコ内で約130℃に下げる。5mlの無水N,N‐ジメチルアセトアミド中に溶解した8mgの4‐フルオロベンゾフェノンを、シリンジを使用して、反応に添加する。丸底フラスコを油浴内に戻し入れ、反応を、約152℃(油浴内168℃)で、さらに4時間続行する。反応混合物を周囲温度に冷却し、その後、ポリマーを500mlの2‐プロパノール(またはイソプロパノール)中に注ぎ込む。繊維状沈降物を濾過により回収し、イソプロパノールと水により、中性pHがえられるまで洗浄する(残留塩の洗出し)。その後、生成物を、真空下に60℃で1夜乾燥させる。精製を、N,N‐ジメチルアセトアミド中に溶解し、連続撹拌しながらジエチルエーテル中に滴下により注入するポリマーの沈降によって実施する。
【0117】
そのようにして得られた、スルホン化形態で且つベンゾフェノンブロックされた形態のポリマー1の式は、d
6‐DMSO中に溶解したその
1H NMRスペクトル(500MHz)と一緒に、
図24に示している。
【0118】
V‐5. ポリマー7の合成
この実施例は、詳細な形で、ポリマー7の、
図16において既に示している方法に従う、上記で説明した化合物2と化合物6からの合成を説明する;このポリマー7は、この場合、
図25に示しているように、一方ではスルホン化形態で、また、他方ではベンゾフェノン基によるブロックされた形態で得られる。
【0119】
A7またはB4 (化合物2)で示すモノマーを、真空下に80℃で1夜乾燥させる。B7またはB1 (化合物6)で示すモノマーとNa
2CO
3を、別々に、150℃で乾燥させ、混合し、その後、混ぜ合せた混合物を真空下に160℃で1時間乾燥させる。モノマーA7とB7の共重合は、100mlの三口丸底フラスコ内で実施する。この丸底フラスコは、窒素入口、温度計、磁力撹拌子、および還流コンデンサーが登載しているディーン・スタークセパレータを備えている。装置のガラス部分は、真空下に乾燥させる。
【0120】
50モル%ジスルホン化においては、丸底フラスコに、モノマーA7 (1.695g、即ち、3.04ミリモルまたは1当量)、モノマーB7 (2.196g、即ち、3.04ミリモルまたは1当量)、無水炭酸ナトリウム(0.968g、9.13ミリモル、3当量)、無水N,N‐ジメチルアセトアミド(20ml)およびトルエン(4.0ml、共沸剤)を装入する。丸底反応フラスコを、100℃の油浴内で2時間加熱する(共沸蒸留)。その後、トルエン循環用のバルブを閉じて、トルエンを100℃で留別する。その後、油浴の温度を約148℃に上げ、残留トルエンをさらに1時間の蒸留により除去して、全てのトルエンを反応から除去し且つ温度が丸底フラスコ内で140℃に達するようにする。トルエンをディーン・スタークセパレータから空にし、油浴の温度を159℃に上げ、その後、この値に1夜維持する。
【0121】
約20時間後、丸底フラスコを油浴から取出し、丸底反応フラスコ内で約130℃に冷却する。8mgの4‐フルオロベンゾフェノンを5mlの無水N,N‐ジメチルアセトアミドに溶解し、溶液を、シリンジを使用して反応に添加する。丸底フラスコを油浴内に戻し入れ、反応を、約145℃(油浴内158℃)で、さらに4時間続行する。反応混合物を周囲温度に冷却する;その後、得られた生成物を、200mlのイソプロパノール中に注ぎ込む。繊維状沈降物を濾過により回収する。
【0122】
その後、ポリマーを、真空下に80℃で1夜乾燥させる。炭酸ナトリウムを、ポリマーから、ポリマーを50mlの蒸留水に磁力撹拌棒により撹拌しながら30分間浸漬することによって抽出する。溶液のpHを、10% HCl (水溶液)を滴下して添加することによって調整して7に下げる。その後、ポリマーを、真空下に80℃で乾燥させる(約12時間)。
そのようにして得られた、スルホン化形態で且つベンゾフェノンブロックされた形態のポリマー7の式は、d
6‐DMSO中に溶解したその
1H NMRスペクトル(500MHz)と一緒に、
図25に示している。
【0123】
V‐6. ポリマー8の合成
この実施例は、詳細な形で、ポリマー8の、
図17において既に示している方法に従う、上記で説明したモノマーA8 (または化合物2)とモノマーB8 (化合物9)からの合成を説明する;このポリマー8は、この場合、一方ではスルホン化形態で、また、他方ではベンゾフェノン基によってブロックされた形態で得られる。
【0124】
モノマーB8とNa
2CO
3を、先ずは最初に、別々に、150℃で1夜乾燥させ(真空下に)、その後、これらを、160℃で1時間一緒に混合する。また、モノマーA8は、それ自体、80℃で1夜乾燥させる(真空下に)。
重合は、100mlの三口丸底フラスコ内で実施する。この丸底フラスコは、窒素入口、温度計、撹拌子、および還流コンデンサーが登載しているディーン・スタークセパレータを備えている。装置のガラス部分(還流コンデンサーおよびディーン・スタークセパレータのような)は、高温エアガンを使用して真空下に乾燥させる。丸底反応フラスコに、モノマーA8 (0.848g、即ち、1.52ミリモル)、モノマーB8 (1.22g、即ち、1.52ミリモル)、無水炭酸ナトリウム(0.48g、即ち、4.57ミリモル;3倍過剰)、乾燥N,N‐ジメチルアセトアミド(20ml)およびトルエン(4.0ml、共沸剤)を装入する。丸底反応フラスコを100℃の油浴内で加熱する。その後、油浴の温度を約148℃に上げ、残留トルエンを留別する(丸底反応フラスコ内は140℃)。
【0125】
ディーン・スタークセパレータのトラップを空にし(トルエン排出)、油浴の温度を約159℃に上げ(丸底フラスコ内は約150℃)、その後、この温度に約20時間維持する。
【0126】
その後、反応温度を、内部で100℃に下げ(丸底フラスコを油浴から引上げる)、その後、5mlのDMAに溶解した4mgの4‐フルオロベンゾフェノンを、シリンジを使用して反応に添加する。その後、保護化反応を、約145℃(内部温度)に再調整した油浴内で4時間続行する。反応混合物を周囲温度に冷却し、その後、ポリマーを、300mlのイソプロパノール中に注ぎ込む。繊維状沈降物を濾過により回収し、80℃のオーブン内で1夜乾燥させる(真空下に)。炭酸ナトリウムを、ポリマーから、30mlの水中で洗浄することによって除去し、10% HClを滴下して添加することによって酸性化してpH7に下げる。その後、そのようにして得られた最終ポリマーを真空下に100℃で乾燥させる。
【0127】
NMR分析は、下記の結果を示す:
1H NMR (500MHz)、d
6‐DMSO中:7.08〜7.09 (d、2H)、7.17〜7.19 (d、4H)、7.39〜7.40 (d、4H)、7.62〜7.64 (m、6H)、7.80〜7.82 (d、2H)、7.79〜7.85 (m、8H)、8.27〜8.28 (s、2H)、8.65〜8.66 (d、4H)、8.69〜8.70 (d, 2H)。
【0128】
V‐7. PEM膜の作成
この試験においては、ポリマー1、ポリマー2およびポリマー8の膜を、以下で説明する“溶媒流涎(solvent casting)”法に従って作成する。
【0129】
8mlのN,N‐ジメチルアセトアミド中に前以って溶解したポリマー(625mg)を、約0.45μmの孔サイズを有するPTFE (ポリテトラフルオロエチレン)マイクロフィルター(“Millipore”)によって濾過する。そのようにして濾過したポリマー溶液を、その後、2枚の重ね合せガラスシートからなり、その上部シートが1mmに等しい深さを有する凹部(寸法 9cm×9cm)を含むモールド内に流し込む;その後、溶液を、50℃で24時間、次いで、60℃で2時間加熱する。その後、痕跡量の有機溶媒は、そのようにして形成した膜から、膜を蒸留水の浴に約12時間浸漬することによって除去する。
【0130】
真空下60℃で2時間の最終乾燥後に、約50μmに等しい厚さを有する強力で透明な膜がそのようにして得られ、この膜は、即特性決定可能である。
【0131】
V‐8. PEM膜の特性決定
V‐8‐A) 陽子伝導度
膜の酸性化(注:H
+によるM
+カチオンの交換)においては、ポリマー1、2および8を、最初に、それぞれ3.8M (ポリマー1に対し)および1.9M (ポリマー2および8に対し)のH
2SO
4 (水溶液) 200mlに2時間浸漬する。2回蒸留した酸H
2SO
4 (Sigma Aldrich社)を、痕跡量の金属を回避するために使用する。その後、蒸留水を、数段階(合計約12時間)において、添加して7に等しいpHを達成する;膜は、その後、蒸留水中で、1夜(約12時間)保存する。
【0132】
S/cm (センチメートル当りのジーメンス)で表す膜の陽子伝導度は、以下に示すようにして判定する。
2cmの直径を有するディスク形(厚さ50μm)の膜を、中空ポンチを使用して切取る。膜の陽子伝導度は、複素インピーダンスの実数部(オーム抵抗)と虚数部(キャパシタンス)を、100kHzと10Hzの間にある周波数範囲(100mV ACの振幅を有する)内で測定することによって判定する。測定は、インピーダンス/ACポテンショスタット(Zahner社、ドイツ国)によって実施する。ナイキストグラフを、膜と同じ円形状を有する2枚の白金電極間に挟んだ1枚、2枚、3枚および6枚までの膜の連続積重ね(完全加湿)の測定値によって描く。
【0133】
測定毎に、ナイキストグラフの実軸を干渉する値、即ち、ゼロでのインピーダンスの虚数成分の値が得られる。一般に、これらの位置は、アフィン直線上に並んでおり、その傾斜は、膜の抵抗値を直接決定する。原点におけるその横座標は、膜と白金電極間の接触抵抗を決定する。後者の値と厚さ認識が、知られている通り、膜の抵抗値を算出することを可能にする;この値の逆は、伝導度である。
【0134】
そのように試験して、ポリマー1、ポリマー2およびポリマー8から得られる膜は、同じ厚さを有し且つ同じ条件下で厳格に試験した市販膜(“Nafion(登録商標)112”)において測定した伝導度値(約70mS/cm)と同程度の、実際にはその値よりも良好でさえある、25℃(100%湿度)におけるそれぞえ89mS/cm、73mS/cmおよび35mS/cmに等しい注目すべき陽子伝導度値を示している。
【0135】
V‐8‐B) 水分吸収能力および寸法安定性
膜を酸性化した時点で、膜を真空下に100℃で2時間乾燥させる。膜質量を、膜が大気水分を捕捉する前に直ちに測定する。その後、膜サンプルを、周囲温度の蒸留水に、飽和するまで浸漬する(水分によるさらなる質量獲得は観察されていない)。
%で表す水分吸収能力は、湿潤膜の質量と乾燥膜の質量の差として算出する。また、寸法安定性は、これも%で表し、乾燥膜の主寸法対完全加湿膜の主寸法の比である。
【0136】
ポリマー1、ポリマー2およびポリマー8の膜は、市販膜(“Nafion(登録商標)112”)における約23%の値との比較において、それぞれその質量の27%、17%および20%に等しい水分吸収能力を有することに注目されたい。これらの膜の寸法安定性は、上記対照市販膜における7%の値との比較において、それぞれ、20%、5%および1%に等しい。
換言すれば、本発明に従う膜は、予期に反して、PEM燃料電池において操作中の膜の耐久性および化学安定性について判定する限られた要因である低下した水分吸収能力のみならず顕著な寸法安定性も示していることが判明している。
【0137】
V‐8‐C) 表面形態
水平および横膜断面を創出し(約70nmの厚さを有する各サンプル)、その後、液体エポキシ樹脂中でコーティングする。樹脂を、その後、硬化剤および促進剤の存在下に60℃で48時間重合させる。
膜サンプルを酢酸ウラニル(UO
2+ (CH
3COO
-)
2)水溶液、次いで、クエン酸鉛水溶液中で含浸処理した後、膜の形態を、透過型電子顕微鏡(Philips TEM CM100;倍率 245 000)を使用して観察する。
【0138】
本発明に従う膜(ポリマー1)の、それぞれ水平断面(図
26A)および横断面(図
26B)について記録した電子顕微鏡写真を、
図26において再現している。
0.5nmの標準偏差でもっての2.4nmに等しい平均孔サイズは、当業者にとって特に顕著で予想外の結果を構成する;従って、既知の市販膜と比較して、本発明は、一方では極めて実質的に低減された孔サイズと他方では特に狭い孔サイズ分布とを有する大いに改良された表面形態を得ることを可能にしている;そのような特徴は、膜の電気的性能の全体にとって、気体に対する膜の不透過特性にとって、さらに、膜の最終的耐久性にとって決定的である。
【0139】
V‐8‐D) PEM燃料電池内での性能
膜性能を、温度、圧力、流量およびガス湿度を調整することのできる燃料電池用試験台上で試験する。使用するガスは、65℃の温度の純水素および純酸素である。
これらの試験において使用する燃料電池は、2枚の“GDE”(ガス拡散電極)層間に配置した試験すべきポリマー膜、2枚のグラファイト双極性プレート、および約0.4mg/cm
2の白金含有量を有する2つの標準電極(Johnson Matthey社からの“ELE 0107”)を含む単一電池である。
【0140】
試験すべき膜を、先ずは最初に、2枚の不織布(滅菌室級、“Sontara Micropure 100”;供給元 DuPont社)間で乾燥させる。その後、膜を、60℃の2枚のガラスプレート間で3時間プレスする。MEAアッセンブリを、膜の各側面上に配置したPt/C触媒層を高温プレス(115℃、125MPa)することによって取得する。この段階において、MEAアッセンブリを、2枚の双極性プレート間で組立てて、水素と酸素を供給したときに即操作可能である燃料電池の単一電池を形成することができる。
【0141】
試験の必要条件として、燃料電池を、定常状態(0.7V)或いは停止・開始または“OCV”(開回路電圧)状態に供して、知られている通り、膜を最も侵襲的操作条件(例えば、過酸化物、フリーラジカル等)に供し、そして、それから、その全体的耐化学性を推定する。
図27は、一方のポリマー1からなる膜(曲線C
A)における、また、他方の市販膜(“Nafion(登録商標) 112”ポリマー、曲線C
B)における、“分極”曲線、即ち、燃料電池が発生する電流密度の関数として記録している上記単一電池の電圧を再現している。
【0142】
下記の注釈は、これら2つの曲線を読取ることに帰する:
・先ずは第一に、高電圧およびゼロ電流(開電気回路)においては、分極電圧は、2つの膜において等価であり、このことは、当業者に対し、ガス(O
2およびH
2)に対する等価の透過性を実証していることが注目される;
・次に、2つの曲線の実質的に同一の傾斜が、これらの曲線の中央の線部分(典型的には、200mA/cm
2と1200mA/cm
2の間)において観察され、このことは、本発明の特定の膜において電極(アノードおよびカソード)の特段の最適化さえもしないで、2つの膜の同等の電気性能を立証している;
・最後に、高電流および低電圧(典型的には1200mA/cm
2よりも高い)においては、2つの膜の挙動は同様なままであることが観察されており、このことは、高電流における膜の極めて良好な陽子伝導度を確証している。
【0143】
図28は、この場合は、ePTFE (有孔度80%、供給元Donaldson社)の層(厚さ10μm)で補強して本発明に従う複合膜を形成しているポリマー1からなる膜について記録した結果(曲線C
A)を、上記と同じ市販膜(補強していない) (曲線C
B)と比較して再現している。この
図28の2つの曲線を検討するに、同じ優れた結果が、本発明の補強ポリマーに関しても観察されている。
【0144】
結論として、本発明は、予期に反して、Nafion(登録商標)タイプ市販膜(一方では極めて長い間開発されてきている)の特性に対して、優れてないにしても少なくとも等価である化学および寸法安定性並びにイオン伝導特性を示すPEM膜を製造することを可能にしている。
【0145】
本発明のポリマーは、比較的安価なモノマーから得られ、さらに、本発明のポリマーは、簡単で経済的で且つ環境に優しい合成方法に従って製造することができる。最後に、本発明のポリマーは、従来技術のトリアジンポリマーと比較して、顕著な化学安定性および顕著な酸化に対する耐性を有する。