【実施例】
【0166】
本発明の具体化を例示するが、その可能なバリエーションの全てを完全に定義するものではない、以下の実施例において本発明についてさらに詳述する。
【0167】
一般方法
実施例で使用される標準組換えDNAおよび分子クローニング技術は当該技術分野で周知であり、1)Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1989)(Maniatis);2)T.J.Silhavy,M.L.Bennan,and L.W.Enquist,Experiments with Gene Fusions;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1984);および3)Ausubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,published by Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscience(1987)に記載される。
【0168】
微生物培養の維持および成長に適した材料と方法は、当該技術分野で周知である。以下の実施例で使用するのに適した技術は、Manual of Methods for General Bacteriology(P.Gerhardt,R.G.E.Murray,R.N.Costilow,E.W.Nester,W.A.Wood,N.R.Krieg and G.B.Phillips,Eds),American Society for Microbiology:Washington,D.C.(1994));またはThomas D.Brock in Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology,2nd ed.,Sinauer Associates:Sunderland,MA(1989)に記載される。微生物細胞の成長および維持のために使用される全ての試薬および材料は、特に断りのない限りAldrich Chemicals(Milwaukee,WI)、DIFCO Laboratories(Detroit,MI)、GIBCO/BRL(Gaithersburg,MD)、New England Biolabs(Ipswich,MA)、またはSigma Chemical Company(St.Louis,MO)から得られた。大腸菌(E.coli)株は、典型的に、ルリア・ベルターニ[「LB」]プレート上で、37℃で培養された。
【0169】
一般的分子クローニングは、標準法(Sambrook et al.、前出)に従って実施された。配列編集は、Sequencher(Gene Codes Corp.,Ann Arbor,MI)内で実施された。全ての配列は、両方向の少なくとも2回のカバレッジに相当する。遺伝子配列の比較は、DNASTARソフトウェア(DNASTAR Inc.,Madison,WI)または社内(E.I.du Pontde Nemours & Co.,Inc.,Wilmington,DE)で作成された類似ソフトウェアを使用して達成された。
【0170】
略称の意味は、次の通り。「sec」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「d」は日を意味し、「μl」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「μM」はマイクロモルを意味し、「mM」はミリモルを意味し、「M」はモルを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μmole」マイクロモルを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「U」は単位を意味し、「bp」は塩基対を意味し、「kB」はキロベースを意味する。
【0171】
発現カセット命名法:発現カセットの構造は簡易表記体系「X::Y::Z」で表され、Xはプロモーター断片を記載し、Yは遺伝子断片を記載し、Zはターミネーター断片を記載し、それらは全て互いに作動的に連結する。
【0172】
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の形質転換および培養:ATCC登録番号#20362、#76982、および#90812のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株は、American Type Culture Collection(Rockville,MD)から購入された。Y.リポリティカ(Y.lipolytica)株は、典型的に下に示すレシピに従った、いくつかの培地中で28〜30℃で培養した。寒天プレートは、標準手順に従って、各液体培地に20g/Lの寒天を添加して、必要に応じて調製した。
【0173】
YPD寒天培地(1Lあたり):10gの酵母抽出物[Difco]、20gのBactoペプトン[Difco]、および20gのグルコース。
【0174】
基礎最少培地(「MM」)(1Lあたり):20gのグルコース、1.7gのアミノ酸非含有酵母窒素ベース、1.0gのプロリン、およびpH6.1(調節の必要なし)。
【0175】
最少培地+5−フルオロオロト酸(「MM+5−FOA」)(1Lあたり):20gのグルコース、6.7gの酵母窒素ベース、75mgのウラシル、75mgのウリジン、および100mg/L〜1000mg/Lの様々な濃度範囲に対するFOA活性試験に基づく適量のFOA(Zymo Research Corp.,Orange,CA)(供給元から受領された各バッチには変動があるため)。
【0176】
高グルコース培地(「HGM」)(1リットルあたり):80グルコース、2.58gのKH
2PO
4、および5.36gのK
2HPO
4、pH7.5(調節不要)。
【0177】
発酵培地[「FM」](1リットルあたり):6.70g/Lの酵母窒素原礎培地、6.00gのKH
2PO
4、2.00gのK
2HPO
4、1.50gのMgSO
4*7H
2O、20gのグルコース、および5.00gの酵母抽出物(BBL)。
【0178】
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)の形質転換は、参照によって本明細書に援用する、米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書に記載されるように実施した。
【0179】
実施例1
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中での発現のためにコドン最適化された、(ミドリムシ(Euglena gracilis)に由来する)合成Δ9エロンガーゼ遺伝子[「EgD9eS」]を含んでなる、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)発現ベクターpZuFmEgD9ESの構築
キメラFBAINm::EgD9eS::Pex20遺伝子を含んでなり、EgD9eSがヤロウィア属(Yarrowia)中での発現のためにコドン最適化された、ミドリムシ(E.gracilis)に由来する合成Δ9エロンガーゼである、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)ベクターpZuFmEgD9ES(
図2;配列番号25)の構築は、参照によって本明細書に援用する、米国特許第7,645,604号明細書の実施例8に記載される。EgD9eS(配列番号9)のヌクレオチド配列は、翻訳開始部位の修正に加えて、777bpコード領域の内117bp(15.1%)が修飾され、106コドン(40.9%)が最適化されているので、野性型ミドリムシ(E.gracilis)Δ9エロンガーゼ(「EgD9e」;配列番号7)のヌクレオチド配列と異なる(それにもかかわらずコドン最適化遺伝子[すなわち配列番号10]によってコードされるタンパク質配列は、野生型タンパク質配列[すなわち配列番号8]と同一である)。
【0180】
実施例2
Δ9エロンガーゼ変換効率が増大した変異Δ9エロンガーゼを含んでなるヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)形質転換体を分析するための一般的な方法
本実施例は、非変異EgD9eS遺伝子(配列番号9(「対照」または「野生型」のいずれかと称される)と、誤りがちなポリメラーゼ連鎖反応[「ePCR」]ライブラリー(実施例3)、部位飽和ライブラリー(実施例5)、SlonoMax(登録商標)ライブラリー(実施例7)、またはコンビナトリアルライブラリー(実施例9)(後述)中で作成された、様々な変異EgD9eS遺伝子とのいずれかを発現する、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株(野生型ヤロウィア属(Yarrowia)ATCC#20362株のUra3遺伝子の自律突然変異からのFOA耐性変異体[単離は国際公開第2008/073367号パンフレットの実施例7に記載される])のpZUFmEgD9ES形質転換体生物内の脂質プロファイルを分析する、一般的手段を記載する。
【0181】
変異体ライブラリーの大腸菌(Escherichia coli)およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)への形質転換
電気穿孔によって、各変異体ライブラリーからのDNAを大腸菌(E.coli)Top 10エレクトロコンピテント細胞(カタログ番号C404052;Invitrogen,Carlsbad,CA)に形質転換した。形質転換細胞を100mg/Lのアンピシリン添加ルリア・ベルターニ[「LB」]寒天プレート上に伸ばして塗り、37℃のインキュベーター内で一晩培養した。製造業者のプロトコルに従って、QIAprep(登録商標)Spin Miniprepキット(QiagenInc.,Valencia,CA)を使用して、形質転換大腸菌(E.coli)細胞からプラスミドDNAを抽出した。
【0182】
次に一般方法に記載されるようにして、DNA分子をY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株に形質転換し、形質転換体をMMプレート上で選択した。30℃で2日間の培養後、MMプレート上で選択された形質転換体を拾って、新鮮なMMプレート上に再度画線塗抹した。
【0183】
迅速スクリーニングプレートアッセイ
各変異体ライブラリーの予備機能解析のために、迅速スクリーニング「プレートアッセイ」を使用した。このプレートアッセイのためには、上の再画線塗抹MMプレートからの形質転換体ヤロウィア属(Yarrowia)細胞を培地プレートから直接分析した。水酸化トリメチルスルホニウム[「TMSH」]を使用して、脂肪酸メチルエステル[「FAME」]を調製した。
【0184】
TMSHは、メタノール中における酸化銀との反応による水酸化物溶液への転換後に、ヨウ化トリメチルスルホニウム[「TMSI」]から調製された。具体的には、4.4gのTMSIを100mLのMeOHに混合し、50℃の水浴中で1時間インキュベートして;次に5gのAg
2Oを溶液に添加し、室温で4時間撹拌した。最終溶液を使用前に濾過した。TMSHは、O−アシル脂質(すなわちTAG)の塩基触媒エステル交換と、遊離脂肪酸のエステル化を引き起こす(A.H.El−Hamdy & W.W.Christie,J.of Chromatography,630:438−441(1993))。
【0185】
1μlループを使用して、再画線塗抹MMプレートから細胞を直接採取して、0.35mLインサート付きガスクロマトグラム[「GC」]バイアル内の50μlのTMSHに懸濁した。次にヘプタン(150μl)をバイアルインサートに添加し、バイアルに蓋をして、次に室温で撹拌しながら20分間インキュベートした。引き続いてFAMEのGC分析のために、Omegawax 320溶融シリカキャピラリーカラム(Supelco Inc.,Bellefonte,PA)を装着したHewlett Packard 7890 GCに、ヘプタン層からの1μlを注入した。滞留時間を市販の標準物質(標準#461,Nu−Chek Prep,Inc.,Elysian,MN)からのメチルエステルと比較した。
【0186】
EgD9eS変異体を含んでなる細胞から得られたFAMEプロファイルを非変異EgD9eS対照と比較した。この一次スクリーニングの結果は、二次確認アッセイを実施する変異体の選択の基礎としての役割を果たした。確認アッセイのための変異体を選択するのに使用された基準は、脂質プロフィールに基づき、特に対応するFAMEのGCピーク面積から、全ての総合ピークの合計に対するパーセントとして計算されるEDAの濃度[「EDA%TFA」]、および/またはLAからEDAへの変換効率に基づいた。各形質転換体のLAからEDAへの変換効率[「%変換」]は、次式に従って計算された。([生成物]/[基質+生成物])
*100。式中、生成物はEDA%TFAであり、基質はTFAの面積パーセントとしてのLA濃度[「LA%TFA」]であった。
【0187】
「確認」アッセイ
迅速スクリーニング「プレートアッセイ」により、対照と比較してΔ9伸長活性の改善が実証された変異体を引き続く確認アッセイのために選択した。
【0188】
変異体で形質転換されたヤロウィア属(Yarrowia)を最初に新鮮再画線塗抹MMプレートから培養し、次に30℃で3mLの液体MMを含んでなる三連の培養物に各変異体を個々に接種して、250rpm/分で2日間振盪した。細胞を遠心分離によって収集して脂質を抽出し、ナトリウムメトキシドでの脂質抽出物のエステル交換によってFAMEを調製し(Roughan,G.,and Nishida I.,Arch.Biochem.Biophys.,276(1):38−46(1990))、引き続いてプレートアッセイ(前出)で記載されたようにして、GCによって分析した。
【0189】
Δ9伸長活性の改善の確認に続いて、製造会社が推奨する通りに、Zymoprep(商標)Yeast Plasmid Miniprep IIキット(カタログ番号D2004;Zymo Research,Orange,CA)を使用して、各変異pZUFmEgD9ESプラスミドをそれからそれが発現された形質転換Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株から回収した。
【0190】
レスキューされたプラスミドの配列を標準DNA配列決定方法を使用して、特性解析した。手短に述べると、DNA配列は、ダイターミネーター技術(米国特許第5,366,860号明細書;欧州特許第272,007号明細書)を使用し、ベクターおよび挿入特異的プライマーの組み合わせを使用して、ABI自動配列決定装置によって生成された。遺伝子配列の比較は、当該技術分野で周知の標準ツールを使用して達成した。
【0191】
実施例3
2つのEgD9eS誤りがちなPCRライブラリーの構築
本実施例は、2つのΔ9エロンガーゼ誤りがちなポリメラーゼ連鎖反応[「ePCR」]ライブラリーの合成を記載する。2つのePCRライブラリーは二段法で作成され、それは最初に、テンプレート内にランダム変異を含んでなる一連のメガプライマーの生成を要し、これらのメガプライマーを使用したpZuFmEgD9ES中の点変異の作成が、それに続いた。コンストラクトpZuFmEgD9ES(配列番号25)(実施例1)を第1のePCRライブラリーのためのDNAテンプレートとして使用した。第2のePCRライブラリーは、第1のePCRライブラリーからのヒットをDNAテンプレートとして使用した。
【0192】
ランダム変異誘発キットを使用したメガプライマーの作成
GeneMorph IIランダム変異誘発キット(カタログ番号200550;Stratagene,La Jolla,CA)を使用して、標的タンパク質中にランダムアミノ酸置換を作成した。それは、GおよびCとの対比でAおよびTにおいて同等の変異率がある、偏りのより少ない変異スペクトルを生じる、2種の異なるポリメラーゼの組み合わせを含んでなる、新しい誤りがちなPCR酵素混合組成を使用して、誤りがちなPCR中に、標的遺伝子に変異を導入することで機能する。生成物の高収率のために最適化された緩衝液条件の単一セットを使用して、1kBあたりの変異1〜16個の変異率が達成され得ると宣伝されている。所望の変異率は、単に、反応中の最初のテンプレートDNA量および/または実施される増幅サイクル数を変えることで制御し得る。
【0193】
製造会社が推奨するプロトコルを使用して、上のキットを利用し、EgD9eS「メガプライマー」を作成した。これらのメガプライマーは約930bpの長さであり、EgD9eS(配列番号9)をコードする777bpを含んでなる。反応混合物は、1μlの第1のePCRライブラリーあたり16ngのDNAテンプレート、または1μlの第2のライブラリーあたり2.0ngのDNAテンプレートのいずれかを含有する。それはまた、反応緩衝液、dNTP(0.8mM)、プライマーpZUFm_6980_012208f(配列番号26)(2μM)、プライマーpZUFm_210_012208r(配列番号27)(2μM)、およびMutazyme(登録商標)II DNAポリメラーゼ(0.25U/μl)も含んでなる。PCR反応は、Mastercycler勾配装置(Brinkmann Instruments,Inc.,Westbury,NY)内の薄壁200μl管内で実施した。以下の条件を使用して、PCR増幅を実施した。95℃で2分間、それに続く95℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、および72℃で90秒間の伸長を30サイクル。72℃で4分間の最終伸長サイクルを実施し、4℃での反応終結がそれに続いた。
【0194】
製造会社が推奨する通り、DNA Clean & Concentrator(商標)−5キット(カタログ番号D4003;Zymo Research,Orange,CA)を使用して、PCR産物を精製した。精製二本鎖PCR産物をそれぞれEgD9eS内に様々な変異を含有する「メガプライマー」として利用した。
【0195】
EgD9eSのPCR変異遺伝子を作成する標準クローニング法
第1のePCRライブラリーのために、「メガプライマー」をNcoIおよびNotI制限酵素で消化した。次に室温で5時間の連結反応によって、T4DNAリガーゼ(Promega,Madison,WI)を使用して、ゲル精製NcoI/NotI遺伝子断片をゲル精製NcoI/NotI pZUFmEgD9ESベクター(配列番号25)に直接ライゲートした。
【0196】
EgD9eSのePCR変異遺伝子を作成する部位特異的変異誘発
第2のePCRライブラリーを作成するために、pZuFmEgD9ES(
図2;配列番号25)に、「メガプライマー」内のEgD9eS変異体を導入するようにデザインされた反応中で、上述の「メガプライマー」を利用し、それによって非変異EgD9eS遺伝子を様々な変異EgD9eS遺伝子で置換した。これは、QuikChange(登録商標)II XL部位特異的変異誘発キット(カタログ番号200524;Stratagene,La Jolla,CA)を使用して達成された。
【0197】
双方のプラスミド鎖の変異原性プライマー誘導複製のための高忠実度PfuUltra
DNAポリメラーゼを使用して、QuikChange(登録商標)II部位特異的変異誘発キットを使用して、二本鎖ベクター中の対象のインサート内において、点変異を生成し、アミノ酸を置換し、単一/複数の隣接するアミノ酸を消去または挿入した。キットは、特化ベクター、ユニークな制限酵素認識部位、または複数形質転換を必要とせず、実質的にあらゆる二本鎖プラスミド中における部位特異的変異を可能にする。基本的手順は、2つの合成オリゴヌクレオチドプライマーを利用し、それらはどちらも所望の変異を含有してベクターの逆ストランドに相補的であり、温度サイクル中にプライマーの転置なしに、高忠実度DNAポリメラーゼによって伸長される。オリゴヌクレオチドプライマーの伸長からは、互い違いに位置するニックを含有する変異プラスミドが生じ、次にそれをDpn Iエンドヌクレアーゼで処理する。この制限酵素はメチル化および半メチル化DNAに対して特異的であり、それによって親DNAテンプレートの消化と、変異含有合成DNAの選択を可能にする。次に所望の変異を含有する、ニックのあるベクターDNAを大腸菌(Escherichia coli)宿主に形質転換して増殖させる。
【0198】
しかし本手順では、従来の合成オリゴヌクレオチドプライマーの代わりに、様々な変異EgD9eS遺伝子を含んでなる二本鎖メガプライマーが使用される。具体的には、キットが提供する5.0μlの10×反応緩衝液、1.0μlの50ng/μl pZUFmEgD9ESテンプレート(配列番号25)、42μlのメガプライマー、キットが提供する1.0μlの40mM dNTPミックス、およびキットが提供する1.0μlのPfu−Ultra DNAポリメラーゼを含んでなる、50μlの反応を調製した。この反応混合物を薄壁200μl容量PCR管に入れ、以下の条件を使用してPCR増幅を実施した。95℃で30秒間、それに続く95℃で30秒間の変性、55℃で1分間のアニーリング、および68℃で6分間の伸長を25サイクル。68℃で8分間の最終伸長サイクルを実施し、4℃での反応終結がそれに続いた。
【0199】
完了した部位特異的変異誘発反応混合物に、キットが提供するDpnI制限酵素(1.0μl)を直接添加して、酵素消化を37℃で1時間実施してDNAテンプレートを除去した。DNA浄化キット(Zymo Research)を使用して消化生成物を精製して溶出し、pZUFmEgD9ESベクター主鎖内に含有される様々な変異EgD9eS遺伝子を含んでなる、10μlの精製DNAを得た。
【0200】
実施例4
Δ9エロンガーゼ変換効率が改善されたePCREgD9eSライブラリー変異体の同定
本実施例は、1)野生型タンパク質EgD9eS(配列番号10)と比較して、LAからEDAへのΔ9エロンガーゼ変換効率が改善されたEgD9eS ePCRライブラリー変異体の同定;および2)これらのEgD9eS ePCRライブラリー変異体の配列分析を記載する。
【0201】
EgD9eS ePCR変異体の同定
実施例2に記載されるようにして、実施例3で調製されたePCR遺伝子ライブラリー変異体を大腸菌(E.coli)Top 10エレクトロコンピテント細胞に形質転換して、精製し、引き続いてY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株に形質転換した。実施例2の迅速スクリーニング「プレートアッセイ」を使用して、1,724個のヤロウィア属(Yarrowia)形質転換体の脂肪酸プロファイルをスクリーニングした。これらの変異体のほとんどは、対照と比較して低下した活性を呈示した。しかし5つの形質転換体は、実施例2の確認アッセイに基づいて、対照と比較して改善されたΔ9伸長活性を呈示することが確認された。
【0202】
2つの独立した確認アッセイからのデータを表5および表6に提示し、個々のpZuFmEgD9ES対照形質転換体のFAMEプロファイルをePCR変異体と比較する。より具体的には、各株について、(実施例2に記載されるようにして判定される)対応するFAMEのGCピーク面積から全ての総合ピークの合計と比較したパーセントとして計算される各脂肪酸濃度[「%TFA」]、およびLAからEDAへの%変換を下の表5および表6に示し、平均値は灰色で強調され「平均」として示される。脂肪酸は、16:0(パルミチン酸)、16:1(パルミトレイン酸)、18:0(ステアリン酸)、18:1(オレイン酸)、LA、およびEDAとして同定される。EgD9eS対照と比較した各変異体の性能比較は、各変異体がその中で分析される特定の確認アッセイ内のみで実施すべきである(すなわちアッセイ#1とアッセイ#2の間では比較を実施し得ない)。
【0203】
【表9】
【0204】
【表10】
【0205】
上に示す確認アッセイ#1中のデータを要約すると、非変異コドン最適化EgD9eS遺伝子を含んでなるpZuFmEgD9ESで形質転換されたY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株のクローンは、平均で3.1 EDA%TFAを産生し、これらの5つのクローン中のLAからEDAへの平均変換効率[「%変換」]は、約15.5%と判定された。対照的に、変異株1.2ep−8のLAからEDAへの平均%変換は17.8%(または対照との比較で115%)であり;変異株1.9ep−63の平均%変換は16.3%(または対照との比較で105%)であり;変異株1.4ep−161の平均%変換は16.4%(または対照との比較で106%)であった。
【0206】
確認アッセイ#2では、pZuFmEgD9ESで形質転換されたY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株のクローンは、2.9 EDA%TFAを産生し、これらの4株中のLAからEDAへの%変換は約16.9%と判定された。変異株2.1ep−94のLAからEDAへの平均%変換は19.8%(または対照との比較で117%)であり;変異株2.1ep−95の平均%変換は18.8%(または対照との比較で111%)であった。
【0207】
したがってこれらの実験は、EgD9eS ePCR変異体1.2ep−8、1.9ep−63、1.4ep−161、2.1ep−94、および2.1ep−95によって呈示された、Δ9エロンガーゼ変換効率の改善を確認した。
【0208】
EgD9eS ePCR変異体の配列
変異体1.2ep−8、1.9ep−63、1.4ep−161、2.1ep−94、および2.1ep−95からレスキューされたプラスミドをDNA配列決定によって特性解析し、解析は、表7に示されるように、変異EgD9eS遺伝子内の様々なヌクレオチド置換、および発現されるアミノ酸の置換を明らかにした。各変異EgD9eS遺伝子に、そして変異EgD9eS遺伝子を含んでなる各変異pZuFmEgD9ESプラスミドに、アミノ酸置換を示唆する名称を与えた。列挙される各置換(すなわちL35G)について、最初の文字は非変異EgD9eS(すなわち配列番号10)中のアミノ酸に対応し、2番目の文字は変異体中の同じ位置に見られるアミノ酸に対応し、すなわちL35Gは、EgD9eS中の位置35のLeuからEgD9eS変異体中のGlyへの変化を示す)。
【0209】
【表11】
【0210】
したがって、例えば変異体1.2ep−8からレスキューされたプラスミドは、2つのヌクレオチド置換(すなわちC103TおよびA654G)を含んでなる。これらの2つのヌクレオチド置換は、1つの発現されるアミノ酸置換(すなわちL35F)、および1つのサイレントアミノ酸変異(すなわちG218G)に相当する(GGAおよびGGGはどちらもGlyをコードするため、A654Gヌクレオチド置換の結果として、このアミノ酸は変異タンパク質中で無変化である)。アミノ酸変化L35FをもたらすC103TおよびA654G変異を含んでなるプラスミドがpZuFmEgD9ES−L35F(配列番号30)と命名された一方、その中の変異Δ9エロンガーゼのヌクレオチド配列は「EgD9eS−L35F」(配列番号28)と命名され、配列番号29に記載のタンパク質配列を有する。
【0211】
実施例5
2部位飽和EgD9eS遺伝子ライブラリーの構築
本実施例は、EgD9eS(配列番号10)内のアミノ酸位置35および107の標的化によって作成された、部位飽和[「SS」]ライブラリーの合成を記載する。位置35を標的にする理論的根拠が実施例4の結果に基づいたのに対し、位置107を標的にする理論的根拠は後述される。SSライブラリーは二段法で作成され、それは最初に、テンプレート内に標的化変異を含んでなるメガプライマーの生成を要し、これらのメガプライマーを使用したpZuFmEgD9ES中の点変異の作成が、それに続いた。
【0212】
EgD9eSの位置107を標的にする理論的根拠
最初に、配列比較のClustal W法を使用して、下の表8に記載される17個の脂肪酸エロンガーゼのアミノ酸配列を比較した。
【0213】
【表12】
【0214】
デフォルトパラメータ(すなわちprotein weight matrix=Gonnet 250、gapo pening penalty=10、gap extension penalty=0.2および全長配列比較アルゴリズム)で、Clustal Wパッケージ(バージョン1.83)を使用して、Thompson et al.(Nucleic Acids Res.22:4673−4680(1994))によって記載されるClustal W配列比較法を実施した。配列比較結果を(
図3A、3B、3C、3D、3E、3F、3G、および3Hを含んでなる)
図3に示す。「Trace_1」、「Trace_2」、「Trace_3」、および「Trace_4」は、下で定義される機能性I群、II群、III群、およびIV群の各列のコンセンサスを表し、すなわちTrace 1は、Ci_elo、Om_elo、Mp_elo1、Pp_elo1、Mp_d5e、およびOt_elo1を含んでなるI群中のタンパク質配列のコンセンサスを表す。各列のコンセンサスは、以下のように定義される。具体的には、列が完全に保存されている場合、コンセンサスは、大文字で示される保存アミノ酸として表される。物理化学的特性の観点から列が保存されている場合、コンセンサスは小文字で表され、「k」はアミノ酸DおよびE(負の電荷)を表し、「q」はアミノ酸H、K、およびR(正の電荷)を表し、「p」はアミノ酸NおよびQ(極性)を表し、「a」はアミノ酸I、L、およびV(脂肪族)を表し、「d」はアミノ酸F、W、およびY(芳香族)を表し、「h」はアミノ酸AおよびG(小型)を表し、「s」はアミノ酸D、E、N、Q、H、K、R、S、およびT(親水性)を表し、「f」はアミノ酸I、L、V、F、W、Y、C、およびM(疎水性)を表す。列が保存されていない場合、コンセンサスは大文字「X」で表される。
【0215】
近隣結合系統樹をClustal W配列比較から作成した。系統樹トポロジーに基づいて、異なる基質特異性の官能基に相当する仮定された4群に、17個の配列を分割した。I群は、Ci_elo、Om_elo、Mp_elo1、Pp_elo1、Mp_d5e、およびOt_elo1を含んでなり;II群は、Pav_elo2、Ps_elo2、およびOt_elo2を含んでなり;III群は、Ea_d9e、Eg_d9e、E398_d9e、およびIg_d9eを含んでなり;IV群は、Tp_elo2、Tp_elo1、Ma_d6e、およびTh_elo2を含んでなる。
【0216】
図3の配列比較および近隣結合系統樹の分類を考慮して、以下の結論が導かれた。第1にいくつかの位置は、I、II、III、およびIV群内で、17配列の全てにわたり完璧に保存されている。これらの位置は、エロンガーゼの触媒活性に恐らく必須であると見なされ、したがって変異標的から排除された。いくつかの位置は、I、II、III、およびIV群内の配列のいくつかのみで保存された(すなわち完璧に保存されなかった)。これらの位置は、I、II、III、およびIV群の官能基内のエロンガーゼによって呈示される基質特異性に恐らく重要であると見なされた。いくつかの位置は、III群(4つの既知のΔ9エロンガーゼを全て含んでなる)内で比較的保存されが、バリエーションもまた呈示された;EgD9eの番号付けを基準とするアミノ酸位置22、47、54、101、107、111、115、161、182、192、および242を参照されたい。これらの位置は、Δ9エロンガーゼの活性に恐らく重要であると見なされ、Ea_d9e(配列番号12)、Eg_d9e(配列番号8)、E398_d9e(配列番号4)、およびIg_d9e(配列番号2)の基質特異性の相違を調節すると仮定された。
【0217】
TMHMMプログラム(「Prediction of transmembrane
helices in proteins」;TMHMM Server v.2.0,Center for Biological Sequence Analysis,BioCentrum−DTU,Technical University of Denmark,DK−2800 Lyngby,Denmark)を使用して、EgD9eS内の膜貫通ドメイン[「TM」]の分析を実施した。予測は、NおよびC末端の双方が細胞質側に位置する、6個の膜貫通らせん(アミノ酸残基32〜51、66〜88、114〜136、156〜175、188〜206、221〜243に相当する)を示唆した。TMHMMプログラムを使用して、Ot_elo2、Ig_elo1、Pav_elo2、およびTp_elo2を同様に分析すると、膜貫通らせん数は4〜8個で変動した。したがって、これらの変動する予測を統合するために、以下のいくつかの機能性情報を使用した。
【0218】
1.高度に保存されたヒスチジンに富むモチーフ[Q/H]xxHH(「His−box」)は、Ig_d9e(配列番号2)の最適酵素活性に必須であることが示されているが、基質特異性の直接原因ではない(Qi et al.,FEBS Letters,547:137−139(2003))。したがって、これはHis−box(EgD9eS中のアミノ酸残基134〜138に相当する)が活性部位に関与することを強力に示唆し;基質が活性部位にアクセスし得るように、それは折り畳みタンパク質の細胞質側またはその近くに位置しなくてはならない。
【0219】
2.荷電残基があるいくつかの高度に保存された位置が、EgD9eSのC末端に存在する。それらは恐らく活性と関係があり、したがってC末端は折り畳みタンパク質の細胞質側に位置する。
【0220】
His−boxは膜の外面に位置し得ないので、アミノ酸残基114〜136間、およびアミノ酸残基156〜175間の膜貫通らせんを予測するTMHMM結果とは対照的に、上の考察は、残基114〜136間の配列領域が膜を貫通しないことを示唆する。C末端が細胞質側に位置する場合、156〜175間の予測されたTMドメインもまた膜を貫通しない。エロンガーゼの基質は高度に疎水性であるので、それは恐らく脂質二重層中に分配される。(His−boxをはじめとする)活性部位は、膜表面またはその非常に近くにあってもよい。
【0221】
したがって本明細書では、これらの2つの疎水性領域(すなわちアミノ酸残基114〜136およびアミノ酸残基156〜175に相当する)は、内膜小葉中またはその近くに位置して、活性部位が膜に近いことを確実にすることが予測された。EgD9eSについて予測された、最終膜トポロジーモデルを
図4Aに示す。具体的には、各垂直円柱が膜貫通断片を示す一方、各水平円柱は内膜小葉の中または近くに位置する疎水性ストレッチを示す。His−box(すなわちアミノ酸残基134〜138に相当する)内の保存されたグルタミン[Q]およびヒスチジン[H]は、小さな丸で示される。最後に、「中」が細胞質空間に対応するのに対し、「外」は細胞膜周辺腔に相当する。
【0222】
保存パターン解析が、III群Δ9脂肪酸エロンガーゼ内に、酵素活性に影響を及ぼすと予測された11個の異なるアミノ酸残基(すなわちEa_d9e[配列番号12]、Eg_d9e[配列番号8]、E398_d9e[配列番号4]、およびIg_d9e[配列番号2])を同定したのに対し、予測されたトポロジーモデルからの結果は、候補残基をさらに限定した。具体的には、酵素活性にとって重要な位置は、活性部位がある細胞質側またはその近くになくてはならないと、理由付けられた。アミノ酸残基47、54、および192は、この基準を満たさず、したがってそれらはΔ9エロンガーゼの活性を調節する上で重要であり得ないと推測された。
【0223】
上の理論的根拠に基づいて、EgD9eSの9エロンガーゼ活性に恐らく顕著に影響を及ぼす候補残基は、配列番号10の完全長タンパク質内の258残基から、位置22、101、107、111、115、161、182、および242に相当する、わずか8残基に減少した。これらの8つの位置は、EgD9eSの基質変換率を改善するための部位特異的変異誘発の標的として推奨された。下の実験データは、位置107を標的とした。
【0224】
部位飽和ライブラリー構築のためのメガプライマーの作成
オリゴヌクレオチドEgD9E_102_053008f(配列番号56)およびEgD9E_760_053008r(配列番号57)をデザインして、それぞれEgD9eS(配列番号10)のアミノ酸残基35および107を標的とした。これらのオリゴヌクレオチドの商業的合成に続いて、それらをPCR反応で利用して、SSライブラリー構築で使用するための適切なメガプライマーを作成した。具体的には、Pfu−Ultraポリメラーゼ(Stratagene)と共に提供される5.0μlの10×反応緩衝液、1.0μlの50ng/μl EgD9eS(配列番号10)、1.0μlの10pmol/μlプライマーEgD9E_102_053008f(配列番号56)、1.0μlの10pmol/μlプライマーEgD9E_760_053008r(配列番号57)、1.0μlの40mM dNTPミックス(Promega,Madison,WI)、1.0μlの高忠実度Pfu−Ultra DNAポリメラーゼ(Stratagene)、および40μlの水を含有する、50μlの反応混合物を調製した。Mastercycler勾配装置(Brinkmann Instruments,Inc.Westbury,NY)内でのPCR反応のために、混合物を薄壁200μl管に入れた。以下の条件を使用して、PCR増幅を実施した。95℃で30秒間、それに続く95℃で30秒間の変性、54℃で1分間のアニーリング、および72℃で2分間の伸長を30サイクル。72℃で4分間の最終伸長サイクルを実施し、4℃での反応終結がそれに続いた。
【0225】
製造会社が推奨する通り、DNA Clean & Concentrator(商標)−5キット(カタログ番号D4003;Zymo Research,Orange,CA)を使用して、PCR産物を精製した。精製二本鎖PCR産物は、それぞれEgD9eS内に様々な変異を含有する「メガプライマー」として利用した。
【0226】
EgD9eSの部位飽和変異遺伝子を作成する部位特異的変異誘発
次に、pZuFmEgD9ES(
図2;配列番号25)に、「メガプライマー」内のEgD9eS変異体を導入するようにデザインされた反応中で、上述の「メガプライマー」を利用し、それによって非変異EgD9eS遺伝子を様々な変異EgD9eS遺伝子で置換した。これは、実施例3に記載されるように、QuikChange(登録商標)II XL部位特異的変異誘発キット(カタログ番号200524;Stratagene,La Jolla,CA)を使用して達成された。具体的には、部位特異的変異誘発反応組成物および増幅条件は、実施例3に記載されるのと同一であり、DpnI制限酵素およびDNA浄化方法についても同様であった。
【0227】
実施例6
Δ9エロンガーゼ変換効率が改善されたEgD9eS部位飽和ライブラリー変異体の同定
本実施例は、1)野生型タンパク質EgD9eS(配列番号10)と比較して、LAからEDAへのΔ9エロンガーゼ変換効率が改善されたEgD9eS変異体の同定;および2)これらのEgD9eS変異体の配列分析を記載する。
【0228】
EgD9eS部位飽和変異体の同定
実施例2に記載されるようにして、実施例5で調製されたSSライブラリー変異体を大腸菌(E.coli)Top 10エレクトロコンピテント細胞に形質転換して精製し、引き続いてY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株に形質転換した。実施例2の迅速スクリーニング「プレートアッセイ」を使用して、SSライブラリーからのコンストラクトによる510個のヤロウィア属(Yarrowia)形質転換体の脂肪酸プロファイルを分析した。3つの形質転換体が、実施例2の確認アッセイに基づいて、対照と比較して改善されたΔ9伸長活性を呈示することが確認された。
【0229】
確認アッセイからのデータを表9に提示し、個々のpZuFmEgD9ES対照形質転換体のFAMEプロファイルをSSライブラリー変異体と比較する。より具体的には、各株について、(実施例2に記載されるようにして判定される)TFAの面積パーセントとしての各脂肪酸濃度[「%TFA」]、およびLAからEDAへの%変換を下の表9に示し、平均値は灰色で強調され「平均」として示される。脂肪酸は、実施例4の略称に基づいて同定される。
【0230】
【表13】
【0231】
確認アッセイでは、非変異コドン最適化EgD9eS遺伝子を含んでなるpZuFmEgD9ESで形質転換されたY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株のクローンは、平均で3.5 EDA%TFAを産生し、これらの4株中のLAからEDAへの平均変換効率[「%変換」]は、約18.7%と判定された。比較すると、変異株2.4sd2−24のLAからEDAへの平均%は27.2%(または対照との比較で145%)であり;変異株2.4sd2−52の平均%変換は26.6%(または対照との比較で142%)であり;変異株2.4sd2−53の平均%変換は24.6%(または対照との比較で132%)であった。したがってこのアッセイは、部位飽和変異体2.4sd2−24、2.4sd2−52、および22.4sd2−53によって呈示された、Δ9エロンガーゼ変換効率の改善を確認した。
【0232】
EgD9eS部位飽和変異体の配列
変異体2.4sd−24、2.4sd−52、および2.4sd−53からレスキューされたプラスミドをDNA配列決定によって特性解析し、解析は、表10に示されるように、変異EgD9eS遺伝子内の様々なヌクレオチド置換、および発現されるアミノ酸の置換を明らかにした。各変異EgD9eS遺伝子に、そして変異EgD9eS遺伝子を含んでなる各変異pZuFmEgD9ESプラスミドに、アミノ酸置換を示唆する名称を与えた。
【0233】
【表14】
【0234】
当業者には明白であるように、出願人らは、遺伝コードの縮重に基づいて、多様なヌクレオチド配列が、例えばEgD9eS−L35Gに記載のタンパク質をコードし得ることを認識する。したがって、例えばアミノ酸残基位置35で配列番号59で記載される変異タンパク質中でコードされるGlyは、GGG(配列番号58に記載のΔ9エロンガーゼ読み取り枠[「ORF」])、GGA(配列番号95に記載のΔ9エロンガーゼORF)、GGC(配列番号96に記載のΔ9エロンガーゼORF)、およびGGT(配列番号97に記載のΔ9エロンガーゼORF)によってコードされ得る。コードされたタンパク質中にサイレント変異をもたらす多様なその他のヌクレオチド置換もまた検討され、したがってEgD9eS−L35G(配列番号59)をコードする本明細書で提供されるヌクレオチド配列は、本開示を制限するものと解釈すべきでない。本発明の変異タンパク質をコードして、Δ9エロンガーゼ活性を有する、本明細書に記載されるヌクレオチド配列のいずれかの中における同様のバリエーションが検討された。
【0235】
実施例7
EgD9eS−L35GSlonoMax(登録商標)ライブラリーの作成
本実施例は、親酵素と比べてLAからEDAへの変換効率の42〜45%の改善を実証する、EgD9eS−L35G変異体(配列番号59;実施例6)内の50個の異なったアミノ酸位置を標的にすることで作成された、SlonoMax(登録商標)ライブラリーの合成を記載する。したがって本実施例は、L35変異を含んでなるEgD9eS変異体中にスタックし得る、追加的な有益な変異を同定することを求めた。
【0236】
下でさらに詳細に記載する自動ロボットプラットフォームであるSlonomics(登録商標)は、SlonoMax(登録商標)ライブラリーを作成し、配列位置あたりの変異体数およびそれらの比率を非常に正確に制御し得る。したがって自動工程は、部位飽和ライブラリー(実施例5)作成時に考察された限定的残基とは対照的に、Δ9エロンガーゼ活性に対するそれらの影響を判定するために、実験的に検査し得る候補残基数を大幅に増大させ得る利点を提供する。
【0237】
機能部位評価のためにEgD9eS内の50個の異なった残基を標的にする理論的根拠
Δ9エロンガーゼ酵素は、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)[「IgD9e」](配列番号2;国際公開第2002/077213号パンフレット、国際公開第2005/083093号パンフレット、国際公開第2005/012316号パンフレット、および国際公開第2004/057001号パンフレット;GenBank受入番号AAL37626)、ユートレプチエラ属(Eutreptiella)CCMP389種[「E389D9e」](配列番号4;米国特許第7,645,604号明細書)、ミドリムシ(Euglena gracilis)[「EgD9e」](配列番号8;米国特許第7,645,604号明細書)、およびE.アナベナ(E.anabaena)[「EaD9e」](配列番号12;米国特許第7,794,701号明細書)から同定され、機能解析されている。これらの各エロンガーゼは、LAをEDAに変換できることが示されている。(デフォルトパラメータ(すなわちprotein weight matrix=Gonnet 250、gap opening penalty=10、gap extension penalty=0.2、および全長配列比較)を使用したClustal W(バージョン1.83)分析に基づいて、EgD9e、EaD9e、およびE389D9eが、互いに60%を超える配列類似性を共有するのに対し、IgD9Eは、EgD9e、EaD9e、およびE389D9eのいずれか1つと約35%のみの配列類似性を共有する。
【0238】
Δ9エロンガーゼ変換効率が改善されている変異体(例えばD98G[実施例4]およびL35G[実施例6])をもたらす位置は、中程度の配列保存性を有することが観察された。Vector NTI(登録商標)のAlignXプログラム(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)のデフォルトパラメータを使用して、IgD9e、EgD9e、EaD9e、およびE389D9eのアミノ酸配列アラインメントを作成して、その他の中程度に保存された残基を同定した。これらの中程度に保存された残基は、非変異EgD9eS対照と比較して改善された活性を有する、変異酵素の第2世代を潜在的にもたらすアミノ酸置換の標的の有望な候補かもしれないという仮説が立てられた。
【0239】
これらの4つの相同的な酵素配列の比較で、258個のアミノ酸位置の内58個は4つのエロンガーゼ酵素の全てで保存されていると判定され;したがってこれらの残基は、検討から除外された。さらに92個の位置は、EgD9e、EaD9e、およびE389D9eの間で保存されていると判定され;これらの位置もまた、検討から除外された。最後に、相同体間でランダムなアミノ酸変化を有する位置は、常態ではタンパク質機能に重要な役割を果たさないため、4つのエロンガーゼ酵素の全てで4つの異なるアミノ酸残基を有すると判定された追加的な22個の位置が、機能評価のための標的化位置としての検討から除外された。
【0240】
配列番号8内の残る86個の位置(すなわち位置1、3、4、5、9、12、21、22、27、28、29、32、35、37、41、42、45、47、48、51、52、53、54、57、58、60、62、63、66、67、70、71、73、74、80、83、84、85、89、94、98、101、104、105、107、108、111、115、127、131、132、143、149、152、153、155、156、161、168、169、179、181、182、192、196、204、207、209、210、211、216、218、222、223、225、229、236、239、242、244、245、247、250、254、257、および258)が、機能部位評価のための潜在的な標的と見なされた。EgD9e(配列番号8)、EaD9e(配列番号12)、およびE389E9e(配列番号4)中のこれらの各位置でコードされるアミノ酸残基の比較を下の表11に示す。
【0241】
【表15】
【0242】
上の表11で同定された86個の位置の内、
図4Aの膜トポロジーモデルに基づいて、細胞膜周辺腔への最大近接を有する部位が、検討から除外された(すなわち位置45、47、48、51、52、53、54、57、58、60、62、63、66、67、70
、71、73、74、204、207、209、210、211、216、218、222、223、225、および229)。灰色の太字で強調表示された部位(すなわちEgD9eSの位置3、5、9、12、21、22、27、28、32、37、41、42、80、84、85、94、98、101、104、105、107、108、111、115、127、131、132、143、149、152、153、156、161、168、169、179、181、182、192、196、236、239、242、244、245、247、250、254、257、および258)をさらなる実験的評価のために選択した。
【0243】
EgD9eS−L35GのSlonoMax(登録商標)変異遺伝子を作成するSlonomics(登録商標)
Slonomics(登録商標)(米国特許第7,695,906号明細書)は、コンビナトリアルライブラリーを「コドン1つずつ」合成する普遍的構成単位として二本鎖DNAの三つ組みを使用する(Sloning Bio Technology,Puchheim,Germany)。ライブラリー生成のために、複数コドンをあらゆる所望の配列位置に並行して導入し得る。機能的バイアスの不在と、20個までのコドンを選択して、あらゆる比率で正確に制御送達する能力は、所望の変異体の完全なセットを含有する、ひときわ高品質のライブラリーをもたらす。
【0244】
SlonoMax(登録商標)遺伝子ライブラリー(全部で50個)は、このようにしてSloning Bio Technologyによって作成され、各遺伝子ライブラリーは、pZuFmEgD9ES−L35G(配列番号60)をテンプレートとして使用して、標的位置(すなわちEgD9eSの位置3、5、9、12、21、22、27、28、32、37、41、42、80、84、85、94、98、101、104、105、107、108、111、115、127、131、132、143、149、152、153、156、161、168、169、179、181、182、192、196、236、239、242、244、245、247、250、254、257または258)に、少なくとも16個の独立したユニークな配列変異を有する。
【0245】
実施例2に記載されるように、全てのEgD9eS−L35G変異体は、pZuFmEgD9ES−L35Gによって提供されるベクター主鎖にクローンし、引き続いてY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株に形質転換して培養した。形質転換細胞(凍結グリセロール貯蔵品として提供される)およびDNAは、Sloning Bio Technologyから得られた。形質転換細胞とDNAのごく一部を配列決定して確認した。
【0246】
実施例8
Δ9エロンガーゼ変換効率が改善されたEgD9eS−L35G SlonoMax(登録商標)ライブラリー変異体の同定
本実施例は、実施例6(配列番号59)で同定された変種タンパク質EgD9eS−L35Gと比較して、LAからEDAへのΔ9エロンガーゼ変換効率が改善されたEgD9eS−L35G SlonoMax(登録商標)変異体の同定を記載する。
【0247】
実施例2の「確認アッセイ」手順を使用し、新鮮な再画線塗抹MMプレート上の細胞培養を使用して、3mLの液体MMを含んでなる三連培養物を個々に接種して、SlonoMax(登録商標)ライブラリーからのコンストラクトによる807個のヤロウィア属(Yarrowia)形質転換体の脂肪酸プロファイルをスクリーニングした。807個の変異体に加えて、pZuFmEgD9ES−L35G(配列番号60)を含んでなるヤロウィア属(Yarrowia)Y2224株形質転換体を実験対照として三連で接種した。
【0248】
確認アッセイ中の選択された変異体からのデータを表12に提示し、3つの代表的EgD9eS−L35G対照のFAMEプロファイルをSlonoMax(登録商標)ライブラリー変異体を比較して、LAからEDAへの平均%変換の増大を実証する。より具体的には、各株について、(実施例2に記載されるようにして判定される)TFAの面積パーセント[「%TFA」]としての各脂肪酸濃度の平均(「平均」で示される)、およびLAからEDAへの平均%変換を下の表12に示す。脂肪酸は、実施例4の略称に基づいて同定される。各株の説明は、それぞれ変異EgD9eS遺伝子中に存在する特定のアミノ酸置換を示唆する。したがってEgD9eS−L35G/S9A株は、配列番号10に記載のEgD9eSの配列と比べてL35G変異およびS9A変異を有する変異EgD9eS遺伝子を含んでなる、変異pZuFmEgD9ESプラスミドを含んでなる。
【0249】
【表16】
【0250】
表12に提示される、複製EgD9eS−L35G対照の脂肪酸プロファイルおよびLAからEDAへの%変換が、先に提示されたEgD9eS−L35Gプロファイルとはいくぶん異なることは注目に値する。本実験セットでは、EgD9eS−L35G対照は、以前の分析と比較して「伸び悩んだ」(すなわちLAからEDAへの平均%変換が上で約18.1%と判定されたのに対し、LAからEDAへの%変換は、実施例6の表9では約26.6%および27.2%と判定された)。しかしEgD9eS−L35Gによる形質転換体は、4.3 EDA%TFA(平均、前出)を産生し、これはEgD9eSによる形質転換体中の生成を顕著に上回った(すなわち3.1 EDA%TFA[実施例4、表5]、2.9 EDA%TFA[実施例4、表6]、および3.5 EDA%TFA[実施例6、表9])。この理由から、表12で提示されるEgD9eS部位評価ライブラリーからの変異体比較のための基準として、本実験のEgD9eS−L35G性能に加えて、EgD9eS−L35Gの機能解析を反復した以前の実験からの性能(データ示さず)を使用した。
【0251】
表12に提示される26個の選択されたエロンガーゼ変種の内、11個は表12の対照データと比較して、同等のまたは改善されたΔ9エロンガーゼ変換活性を実証すると同定された(太字で強調表示される)。これらの変異体は、EgD9eS−L35G/S9D(141%)、EgD9eS−L35G/A21V(118%)、EgD9eS−L35G/V32F(104%)、EgD9eS−L35G/Y84C(144%)、EgD9eS−L35G/L108G(104%)、EgD9eS−L35G/W132T(100%)、EgD9eS−L35G/M143N(96%)、EgD9eS−L35G/L161T(131%)、EgD9eS−L35G/I179R(141%)、EgD9eS−L35G/C236N(102%)、およびEgD9eS−L35G/Q244N(134%)を含み、EgD9eSと比較したΔ9エロンガーゼ変換活性を括弧内に示す。したがってLAからEDAへの変換効率の44%までの改善が、実証された。
【0252】
実施例9
EgD9eS−L35G/S9D/A21V/V32F/Y84C/L108G/W132T/M143N/L161T/I179R/C236N/Q244Nコンビナトリアルライブラリーの作成
本実施例は、L35G変異を含んでなるEgD9eS変異体中に、上の実施例8で同定された有益な変異(すなわちS9D、A21V、V32F、Y84C、L108G、W132T、M143N、L161T、I179R、C236N、およびQ244N)の様々な組み合わせを共に「スタック」する、変異EgD9eSコンビナトリアルライブラリーの合成を記載する。
【0253】
コンビナトリアルライブラリー構築のための合成プライマーの作成
11対のプライマーは、配列番号64〜85に記載されるように商業的に合成された(下の表13参照)。各プライマー対は、EgD9eS−L35G遺伝子に、S9D、A21V、V32F、Y84C、L108G、W132T、M143N、L161T、I179R、C236N、およびQ244Nの変異の1つを導入するようにデザインされた。
【0254】
T4ポリヌクレオチドキナーゼ[「PNK」](カタログ番号70031Z;USB Corp.)を使用して、プライマーを37℃で60分間リン酸化し、次に65℃で20分間不活性化した。各20μlのリン酸化反応混合物は、2.0μlの10×T4 PNK緩衝液、15.0μlのプライマーDNA(約7μM)、0.6μlの100mM ATP、0.4μlのT4 PNK、および2.0μlの水を含有した。
【0255】
EgD9eS−L35Gのコンビナトリアル変異体遺伝子を作成するための複数変異部位変異誘発
Change−IT(商標)複数変異部位特異的変異誘発キット(カタログ番号78480、USB Corporation,Cleveland,OH)を使用して、各反応(最終反応を除く)が、プライマーセット「A」の順方向プライマーおよび逆方向プライマー、そしてプライマーセット「B」の順方向プライマーおよび逆方向プライマーの封入に基づいて、2つの新しい変異を導入する、一連の6つの反応中で、EgD9eS−L35GにS9D、A21V、V32F、Y84C、L108G、W132T、M143N、L161T、I179R、C236N、およびQ244N変異を導入した(表13)。一連の反応の最初のテンプレートがEgD9eS−L35Gであった一方、Change−IT(商標)反応1の生成物がChange−IT(商標)反応2のテンプレートの役割果たし、それが順次続いた。
【0256】
【表17】
【0257】
より具体的には、それぞれ2.5μlの10×Change−IT(商標)緩衝液、2.5μlのリン酸化順方向プライマー、2.5μlのリン酸化逆方向プライマー、1.0μlのテンプレート(50ng/μl)、15.5μlのヌクレアーゼ非含有水、および1.0μlのChange−IT(商標)FideliTaq酵素を含んでなる、2つの25μlのPCR反応混合物を調製した。第1の反応がプライマーセット「A」からのプライマーを利用した一方、第2の反応はプライマーセット「B」からのプライマーを利用した。以下の条件を使用して、PCR増幅を実施した。95℃で2分間、それに続く95℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、および68℃で25分間の伸長/ライゲーションを30サイクル。68℃で30分間の最終伸長/ライゲーションサイクルを実施し、4℃での反応終結がそれに続いた。
【0258】
増幅に続いて、DpnI酵素の添加によってテンプレートを除去し、消化を37℃で3時間実施した。PCR DNAを使用して、電気穿孔によって大腸菌(E.coli)Top 10エレクトロコンピテント細胞(カタログ番号C404052、Invitrogen,Carlsbad,CA)を形質転換した。形質転換細胞を100mg/Lアンピシリン添加LB寒天プレート上に伸ばして塗り、37℃のインキュベーター内で一晩培養した。製造業者のプロトコルに従って、QIAprep(登録商標)Spin Miniprepキット(QiagenInc.,Valencia,CA)を使用して、形質転換大腸菌(E.coli)細胞からプラスミドDNAを抽出した。次に精製DNAを次のChange−IT(商標)反応でテンプレートとして使用した。11個の変異の残りを最初のEgD9eS−L35Gテンプレートに導入する6つめの反応に続いて、上述したように形質転換体大腸菌(E.coli)細胞からDNAを精製した。次にDNAをY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株(前出、実施例2)に形質転換した。
【0259】
実施例10
Δ9エロンガーゼ変換効率が改善されたEgD9eS−L35G/S9D/A21V/V32F/Y84C/L108G/W132T/M143N/L161T/I179R/C236N/Q244Nコンビナトリアルライブラリー変異体の同定
本実施例は、1)野生型タンパク質EgD9eS(配列番号10)と比較して、LAからEDAへのΔ9エロンガーゼ変換効率が改善されたEgD9eS−L35G/S9D/A21V/V32F/Y84C/L108G/W132T/M143N/L161T/I179R/C236N/Q244Nコンビナトリアルライブラリー変異体の同定;2)これらのEgD9eS変異体の配列分析;および3)Δ9エロンガーゼ変換効率の改善を確認するための配列決定EgD9PeS変異体の再現を記載する。
【0260】
実施例2の迅速スクリーニング「プレートアッセイ」を使用して、コンビナトリアルライブラリー(実施例9)からのコンストラクトによる2,388個のヤロウィア属(Yarrowia)形質転換体の脂肪酸プロファイルをスクリーニングした。これらの変異体のほとんどは、野性型対照EgD9eS(配列番号10)と比較してLAからEDAへの変換の低下を呈示した。しかし5つの形質転換体は、実施例2の確認アッセイに基づいて、対照と比較して改善されたΔ9伸長活性を呈示することが確認された。
【0261】
コロニーPCRを使用して、変異EgD9eS遺伝子のDNA配列を判定した。手短に述べると、無菌ピペットチップを使用して、新鮮画線塗抹プレートから少量の酵母細胞を採取し、細胞を20μlの分子等級水に懸濁した。細胞懸濁液(2μl)を製造会社(Takara Biotechnology Co.,LTD.)の推奨事項に従って調製したTaKaRa Ex Taq PCRミックスに移した。コロニーPCRのために使用されたプライマーは、順方向プライマーFBAIN−F(配列番号98)および逆方向プライマーY1026(配列番号99)であった。サーマルサイクラープログラムは、94℃で5分間の最初のテンプレート変性と、それに続く40サイクルの94℃で30秒間の変性、56℃で30秒間のアニーリング、および72℃で3分間の伸長を含んだ。72℃で6分間の最終伸長を実施した。
【0262】
PCR産物をプライマーFBAIN−F(配列番号98)およびY1026(配列番号99)によって配列決定した。DNA配列データの解析は、変異EgD9eS遺伝子内のヌクレオチド置換と発現されたアミノ酸置換を明らかにした。表14に示すように、変異EgD9eS遺伝子に、そして変異EgD9eS遺伝子を含んでなる変異pZuFmEgD9ESプラスミドに、アミノ酸置換を示唆する名称を与えた。
【0263】
【表18】
【0264】
表14のアミノ酸置換に基づいて、部位特異的変異誘発のための新しいプライマーをデザインした。次にpZuFmEgD9ES(
図2;配列番号25)に、「メガプライマー」内のEgD9eS変異体を導入するようにデザインされた反応中でこれらのプライマーを利用し、それによって非変異EgD9eS遺伝子を表14に列挙される様々な変異EgD9eS遺伝子で置換した。
【0265】
これは、実施例3に記載されるように、QuikChange(登録商標)II XL部位特異的変異誘発キット(カタログ番号200524;Stratagene,La Jolla,CA)を使用して達成された。実施例2に記載されるように、これらの変異遺伝子を大腸菌(E.coli)Top 10エレクトロコンピテント細胞に形質転換して、精製し、配列決定し、引き続いてY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株に形質転換した。このようにして、表14に示される変異EgD9eS遺伝子をプラスミド上に再現し、Y2224株に再導入して戻し、EgD9eSコンビナトリアル変異体によって呈示されるΔ9エロンガーゼ変換効率の改善が、同定されたアミノ酸置換の結果であると考えられることを確認した。
【0266】
これらの確認アッセイからのデータを表15に提示し、個々のpZuFmEgD9ES対照形質転換体のFAMEプロファイルをコンビナトリアルライブラリーの変異体と比較する。保守的比較のために、各株について示されるデータは、各株についてLAからEDAへの%変換が最も高い3分離株のFAMEプロファイルを表す。より具体的には、各株について、(実施例2に記載されるようにして判定される)TFAの面積パーセントとしての各脂肪酸濃度[「%TFA」]、およびLAからEDAへの%変換を下に示し、平均値は灰色で強調され「平均」として示される。脂肪酸は、実施例4の略称に基づいて同定される。
【0267】
【表19】
【0268】
配列番号10のコドン最適化EgD9eS遺伝子(非変異体)を含んでなる、pZuFmEgD9ESで形質転換されたY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株のクローンは、平均で2.5 EDA%TFAを産生し、これらの3つのクローンのLAからEDAへの平均変換効率[「%変換」]は約16.1%と判定された。対照的に、変異株EgD9EN−427のLAからEDAへの平均%変換は17.8%(または対照との比較で110%)であった。同様に、変異株EgD9EN−1043のLAからEDAへの平均%変換は17.5%(または対照との比較で108%)であった。変異株EgD9EN−1534のLAからEDAへの平均%は16.8%(または対照との比較で104%)であり;変異株EgD9EN−1635の平均%変換は18.0%(または対照との比較で111%)であり;変異株EgD9EN−1734の平均%変換は20.0(または対照との比較で123%)であった。
【0269】
したがってこれらの実験は、それによってEgD9eSコンビナトリアルライブラリー変異体EgD9EN−427、EgD9EN−1043、EgD9EN−1534、EgD9EN−1635、およびEgD9EN−1734によって呈示されたΔ9エロンガーゼ変換効率の改善を確認し、改善は4〜23%の範囲に及んだ。
【0270】
実施例11
総脂肪酸の約58.7%のEPAを産生するヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株の作成
本実施例は、Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路の発現を介して、38.3%の総脂質含量[「TFA%DCW」]で、総脂質に対して約58.7%のEPAを産生できる、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC#20362に由来する、Z1978株の構築を記載する。この株は、L35G変異(すなわちEgD9eS−L35G[配列番号58および59])を含んでなる、実施例5および6のΔ9エロンガーゼ部位飽和変異体を含む。
【0271】
Z1978株(
図6)の開発には、Y2224、Y4001、Y4001U、Y4036、Y4036U、L135、L135U9、Y8002、Y8006U6、Y8069、Y8069U、Y8154、Y8154U、Y8269、Y8269U、Y8412U6、Y8647、Y8467U、Y9028、Y9028U、Y9502、およびY9502U株の構築が必要であった。
【0272】
株構築中のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の脂肪酸分析
脂肪酸[「FA」]分析のために、Bligh,E.G.& Dyer,W.J.(Can.J.Biochem.Physiol.,37:911−917(1959))に記載されるようにして、細胞を遠心分離によって収集し脂質を抽出した。ナトリウムメトキシドによる脂質抽出物のエステル交換によって脂肪酸メチルエステル[「FAME」]を調製し(Roughan,G.and Nishida I.,Arch Biochem Biophys.,276(1):38−46(1990))、引き続いて30m×0.25mm(i.d.)HP−INNOWAX(Hewlett−Packard)カラムを装着した、Hewlett−Packard 6890 GCで分析した。オーブン温度は、170℃(25分間の保持時間)から3.5℃/分で185℃にした。
【0273】
直接塩基エステル交換のために、ヤロウィア(Yarrowia)細胞(0.5mLの培養物)を収集して蒸留水で1回洗浄し、Speed−Vac内で5〜10分間真空乾燥させた。ナトリウムメトキシド(100μlの1%)および既知量のC15:0トリアシルグリセロール(C15:0 TAG;カタログ番号T−145、Nu−Check Prep,Elysian,MN)をサンプルに添加し、次にサンプルをボルテックスして30℃で50分間振盪した。3滴の1M NaClおよび400μLのヘキサンを添加した後、サンプルをボルテックスして遠沈した。上層を取り出して、GCによって分析した。
【0274】
代わりとして、発酵またはフラスコサンプルのいずれかからのブロスサンプルをルーチン分析するために、Lipid Analysis,William W.Christie,2003に記載される塩基触媒エステル交換法の変法を使用した。具体的には、ブロスサンプルを室温水中で迅速に解凍し、次に0.22μmのCorning(登録商標)Costar(登録商標)Spin−X(登録商標)遠心管フィルター(カタログ番号8161)と共に、風袋を測定した2mL微量遠心管内に量り入れた(0.1mg)。あらかじめ測定したDCWに応じて、サンプル(75〜800μl)を使用した。エッペンドルフ5430遠心分離機を使用して、サンプルを14,000rpmで5〜7分間、またはブロスを除去するのに必要な時間遠心分離した。フィルターを取り出して液体を排出し、約500μlの脱イオン水をフィルターに添加してサンプルを洗浄した。遠心分離して水を除去した後、フィルターを再度取り出して、液体を排出してフィルターを再度挿入した。遠心管を遠心分離機に今度は蓋を開けたまま、約3〜5分間再度挿入して乾燥させた。次にフィルターに遠心管の半ばまで切り込みを入れて、新鮮な2mL丸底エッペンドルフ管(カタログ番号2236335−2)に挿入した。
【0275】
切断されたフィルター容器の縁のみに接触し、サンプルまたはフィルター材料に接触しない適切な道具によって、フィルターを遠心管の底に押しつけた。既知量のトルエン中のC15:0 TAG(前出)、および500μlの新鮮に調整されたメタノール溶液中の1%ナトリウムメトキシドを添加した。サンプルペレットを適切な道具によってしっかりと砕き、遠心管を閉じて50℃ヒートブロックに30分間入れた(VWR カタログ番号12621−088)。次に遠心管を少なくとも5分間放冷した。次に400μlのヘキサンおよび500μlの1M NaCl水溶液を添加して、遠心管を2×6秒間ボルテックスして1分間遠心分離した。およそ150μlの上(有機)層をインサート付きGCバイアルに入れ、GCによって分析した。
【0276】
GC分析を通じて記録されたFAMEピークは、既知の脂肪酸との比較でそれらの滞留時間によって同定され、FAMEピーク面積を既知量の内部基準(C15:0 TAG)と比較することで定量化された。したがってあらゆる脂肪酸FAME[「μg FAME」]の近似量(μg)は、式、(特定脂肪酸のFAMEピーク面積/標準FAMEピーク面積)
*(標準C15:0 TAGのμg)に従って計算され、1μgのC15:0 TAGは0.9503μgの脂肪酸に等しいので、あらゆる脂肪酸の量(μg)[「μgFA」]は、式、(特定脂肪酸のFAMEピーク面積/標準FAMEピーク面積)
*(標準C15:0 TAGのμg)
*0.9503に従って計算される。換算係数0.9503は大部分の脂肪酸について測定された値の近似であり、それは0.95〜0.96の範囲にわたることに留意されたい。
【0277】
TFAの重量%として個々の各脂肪酸量を要約する脂質プロフィールは、個々のFAMEピーク面積を全てのFAMEピーク面積の和で除して100を乗じて判定される。
【0278】
フラスコアッセイによる株構築中のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の総脂質含量および組成の分析
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)の特定株の総脂質含量および組成の詳細な分析のために、フラスコアッセイを次のように行った。具体的には、1ループ量の新鮮な画線塗抹細胞を3mLのFM培地に接種して、250rpmおよび30℃で培一晩養した。OD
600nmを測定し、最終OD
600nmが0.3になるように、125mLフラスコ内の25mLFM培地に細胞のアリコートを添加した。250rpmおよび30℃の振盪インキュベーターに2日間入れた後に、6mLの培養物を遠心分離によって収集し、125mLフラスコ内の25mLのHGMに再懸濁した。250rpmおよび30℃の振盪インキュベーターに5日間入れた後に、脂肪酸分析(前出)のために1mLのアリコートを使用し、乾燥細胞重量[「DCW」]測定のために10mLを乾燥させた。
【0279】
DCW測定のために、Beckman GS−6R遠心分離機内のBeckman GH−3.8回転子内において、4000rpmで5分間の遠心分離によって10mLの培養物を収集した。ペレットを25mLの水に再懸濁して、上のように再収集した。洗浄ペレットを20mLの水に再懸濁し、あらかじめ秤量したアルミニウムパンに移した。細胞懸濁液を80℃の真空オーブン内で一晩乾燥させた。細胞重量を測定した。
【0280】
細胞の総脂質含量[「TFA%DCW」]を計算し、各脂肪酸濃度をTFA[「%TFA」]の重量%として、EPA含量を乾燥細胞重量のパーセント[「EPA%DCW」]として表にするデータと併せて考察した。フラスコアッセイからのデータを細胞の全乾燥細胞重量[「DCW」]、細胞の総脂質含量[「TFA%DCW」]、TFAの重量%としての各脂肪酸濃度[「%TFA」]、および乾燥細胞重量のパーセントとしてのEPA含量[「EPA%DCW」]を要約する表として提示する。より具体的には、脂肪酸は、16:0(パルミチン酸)、16:1(パルミトレイン酸)、18:0(ステアリン酸)、18:1(オレイン酸)、18:2(LA)、ALA、EDA、DGLA、ARA、ETrA、ETA、EPA、その他として同定される。
【0281】
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502株の遺伝子型
Y9502株の作成は、米国特許出願公開第2010−0317072−A1号明細書に記載される。ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に由来するY9502株は、Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路の発現を通じて、総脂質に対して約57.0%のEPAを産生できた(
図6)。
【0282】
野生型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362と比較したY9502株の最終遺伝子型は、次の通りであった。Ura+,Pex3−,unknown1−,unknown2−,unknown3−,unknown4−,unknown5−,unknown6−,unknown7−,unknown8−,unknown9−,unknown10−,YAT1::ME3S::Pex16,GPD::ME3S::Pex20,YAT1::ME3S::Lip1,FBAINm::EgD9eS::Lip2,EXP1::EgD9eS::Lip1,GPAT::EgD9e::Lip2,YAT1::EgD9eS::Lip2,FBAINm::EgD8M::Pex20,EXP1::EgD8M::Pex16,FBAIN::EgD8M::Lip1,GPD::EaD8S::Pex16(2copies),YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1,YAT1::EgD9eS/EgD8M::Aco,FBAINm::EaD9eS/EaD8S::Lip2,GPD::FmD12::Pex20,YAT1::FmD12::Oct,EXP1::FmD12S::Aco,GPDIN::FmD12::Pex16,EXP1::EgD5M::Pex16,FBAIN::EgD5SM::Pex20,GPDIN::EgD5SM::Aco,GPM::EgD5SM::Oct,EXP1::EgD5SM::Lip1,YAT1::EaD5SM::Oct,FBAINm::PaD17::Aco,EXP1::PaD17::Pex16,YAT1::PaD17S::Lip1,YAT1::YlCPT1::Aco,YAT1::MCS::Lip1,FBA::MCS::Lip1,YAT1::MaLPAAT1S::Pex16.略称は、次のとおり:FmD12は、フザリウム・モニリフォルメ(Fusarium moniliforme)Δ12デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,504,259号明細書]であり;FmD12Sは、F.モニリフォルメ(F.moniliforme)[米国特許第7,504,259号明細書]に由来するコドン最適化Δ12デサチュラーゼ遺伝子であり;ME3Sは、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)[米国特許第7,470,532号明細書]に由来するコドン最適化C
16/18エロンガーゼ遺伝子であり;EgD9eは、ミドリムシ(Euglena gracilis)Δ9エロンガーゼ遺伝子[米国特許第7,645,604号明細書]であり;EgD9eSは、ミドリムシ(E.gracilis)[米国特許第7,645,604号明細書]に由来するコドン最適化Δ9エロンガーゼ遺伝子であり;EgD8Mは、ミドリムシ(E.gracilis)[米国特許第7,256,033号明細書]に由来する合成変異Δ8デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,709,239号明細書]であり;EaD8Sは、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)[米国特許第7,790,156号明細書]に由来するコドン最適化Δ8デサチュラーゼ遺伝子であり;E389D9eS/EgD8Mは、ユートレプチエラ属(Eutreptiella)CCMP389種Δ9エロンガーゼ(米国特許第7,645,604号明細書)に由来するコドン最適化Δ9エロンガーゼ遺伝子(「E389D9eS」)と、Δ8デサチュラーゼ「EgD8M」(前出)[米国特許出願公開第2008−0254191−A1号明細書]とを連結させて作成されたDGLAシンターゼであり;EgD9eS/EgD8Mは、Δ9エロンガーゼ「EgD9eS」(前出)とΔ8デサチュラーゼ「EgD8M」(前出)[米国特許出願公開第2008−0254191−A1号明細書]とを連結させて作成されたDGLAシンターゼであり;EaD9eS/EgD8Mは、E.アナベナ(E.anabaena)Δ9エロンガーゼ[米国特許第7,794,701号明細書]に由来するコドン最適化Δ9エロンガーゼ遺伝子(「EaD9eS」)と、Δ8デサチュラーゼ「EgD8M」(前出)[米国特許出願公開第2008−0254191−A1号明細書]とを連結させて作成されたDGLAシンターゼであり;EgD5MおよびEgD5SMは、ミドリムシ(E.gracilis)[米国特許第7,678,560号明細書]に由来する合成変異Δ5デサチュラーゼ遺伝子[米国特許出願公開第2010−0075386−A1号明細書]であり;EaD5SMは、E.アナベナ(E.anabaena)[米国特許第7,943,365号明細書]に由来する合成変異Δ5デサチュラーゼ遺伝子[米国特許出願公開第2010−0075386−A1号明細書]であり;PaD17は、ピシウム・アファニデルマタム(Pythium aphanidermatum)Δ17デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,556,949号明細書]であり;PaD17Sは、P.アファニデルマタム(P.aphanidermatum)[米国特許第7,556,949号明細書]に由来するコドン最適化Δ17デサチュラーゼ遺伝子であり;YlCPT1は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ジアシルグリセロールコリンホスホトランスフェラーゼ遺伝子[米国特許第7,932,077号明細書]であり;MCSは、リゾビウム・レグミノサーラム(Rhizobium leguminosarum)次亜種ビシアエ(viciae)3841[米国特許出願公開第2010−0159558−A1号明細書]に由来するコドン最適化マロニルCoAシンセターゼ遺伝子であり、MaLPAAT1Sは、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)[米国特許第7,879,591号明細書]に由来するコドン最適化リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素遺伝子である。
【0283】
Y9502株の総脂質含量および組成の詳細な分析のために、細胞を二段階で合計7日間培養するフラスコアッセイを実施した。分析に基づいて、Y9502株は、3.8g/L DCW、37.1 TFA%DCW、21.3 EPA%DCWを産生し、脂質プロフィールは、16:0(パルミチン酸)−2.5、16:1(パルミトレイン酸)−0.5、18:0(ステアリン酸)−2.9、18:1(オレイン酸)−5.0、18:2(LA)−12.7、ALA−0.9、EDA−3.5、DGLA−3.3、ARA−0.8、ETrA−0.7、ETA−2.4、EPA−57.0、その他−7.5であり、各脂肪酸濃度はTFAの重量%[「%TFA」]である。
【0284】
Y9502U(Ura3−)株の作成
Y9502株中でUra3遺伝子を中断するために、SalI/PacI消化されたコンストラクトpZKUM(
図7A;配列番号89;参照によって本明細書に援用する、米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の表15に記載される)を使用して、一般方法に従って、Ura3変異遺伝子をY9502株のUra3遺伝子に組み込んだ。合計27個の形質転換体(第1群から選択された8個の形質転換体、第2群から選択された8個の形質転換体、および第3群から選択された11個の形質転換体を含んでなる)を最少培地+5−フルオロオロト酸[「MM+5−FOA」]選択プレート上で培養して、30℃に2〜5日間保った。さらなる実験は、形質転換体の第3群のみが、真のUra−表現型を有すると判定した。
【0285】
Ura−細胞をMM+5−FOAプレートから掻き取って、一般方法に従って脂肪酸分析を行った。このようにして、GC分析は、第3群のMM+5−FOAプレート上で培養されたpZKUM−形質転換体#1、#3、#6、#7、#8、#10、および#11中に、それぞれTFAの28.5%、28.5%、27.4%、28.6%、29.2%、30.3%、および29.6%のEPAがあったことを示した。これらの7株をそれぞれ、Y9502U12株、Y9502U14株、Y9502U17株、Y9502U18株、Y9502U19株、Y9502U21株、およびY9502U22株と命名した(集合的にY9502U)。
【0286】
Z1978の株作成
次に、コンストラクトpZKL3−9DP9N(
図7B;配列番号90)が作成されて、1つのΔ9デサチュラーゼ遺伝子、1つのコリンリン酸シチジリルトランスフェラーゼ遺伝子、および1つのΔ9エロンガーゼ変異遺伝子をY9502U株のヤロウィア(Yarrowia)YALI0F32131p遺伝子座(GenBank受入番号XM_506121)に組み込んだ。pZKL3−9DP9Nプラスミドは、以下の構成要素を含有した。
【0287】
【表20】
【0288】
pZKL3−9DP9NプラスミドをAscI/SphIで消化し、次にY9502U17株の形質転換のために使用した。形質転換細胞を最少培地[「MM」]プレート上に播種して、30℃に3〜4日間保った。単一コロニーをMMプレート上に再度画線塗抹して、次に30℃の液体MMに接種し、250rpm/分で2日間振盪した。細胞を遠心分離によって収集して高グルコース培地[「HGM」]に再懸濁し、次に250rpm/分で5日間振盪した。細胞に、前出の脂肪酸分析を行った。
【0289】
GC分析は、pZKL3−9DP9NがあるY9502U17の選択された96株の大部分が、TFAの50〜56%のEPAを産生したことを示した。TFAの約59.0%、56.6%、58.9%、56.5%、および57.6%のEPAを産生した5株(すなわち、#31、#32、#35、#70、および#80)をそれぞれ株Z1977、Z1978、Z1979、Z1980、およびZ1981と命名した。
【0290】
野生型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362と比較したこれらのpZKL3−9DP9N形質転換株の最終遺伝子型は、次の通りであった。Ura+,Pex3−,unknown1−,unknown2−,unknown3−,unknown4−,unknown5−,unknown6−,unknown7−,unknown8−,unknown9−,unknown10−,unknown11−,YAT1::ME3S::Pex16,GPD::ME3S::Pex20,YAT1::ME3S::Lip1,FBAINm::EgD9eS::Lip2,EXP1::EgD9eS::Lip1,GPAT::EgD9e::Lip2,YAT1::EgD9eS::Lip2,YAT1::EgD9eS−L35G::Pex20,FBAINm::EgD8M::Pex20,EXP1::EgD8M::Pex16,FBAIN::EgD8M::Lip1,GPD::EaD8S::Pex16(2copies),YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1,YAT1::EgD9eS/EgD8M::Aco,FBAINm::EaD9eS/EaD8S::Lip2,GPDIN::YlD9::Lip1,GPD::FmD12::Pex20,YAT1::FmD12::Oct,EXP1::FmD12S::Aco,GPDIN::FmD12::Pex16,EXP1::EgD5M::Pex16,FBAIN::EgD5SM::Pex20,GPDIN::EgD5SM::Aco,GPM::EgD5SM::Oct,EXP1::EgD5SM::Lip1,YAT1::EaD5SM::Oct,FBAINm::PaD17::Aco,EXP1::PaD17::Pex16,YAT1::PaD17S::Lip1,YAT1::YlCPT1::Aco,YAT1::MCS::Lip1,FBA::MCS::Lip1,YAT1::MaLPAAT1S::Pex16,EXP1::YlPCT::Pex16.Z1977、Z1978、Z1979、Z1980、およびZ1981株中のYALI0F32131p遺伝子座(GenBank受入番号XM_50612)のノックアウトは、pZKL3−9DP9Nでの形質転換によって生じたEPA株のいずれでも確認されなかった。Z1977、Z1978、Z1979、Z1980、およびZ1981株のYPDプレートからの細胞を培養し、総脂質含量と組成についてフラスコアッセイにより分析した。下の表17は、これらの各株の総脂質含量および組成を要約する。具体的には、表は、全DCW、TFA%DCW、TFAの重量%としての各脂肪酸濃度[「%TFA」]、およびEPA%DCWを要約する。
【0291】
【表21】
【0292】
Z1978株に、引き続いて部分的ゲノム配列決定を行った。この研究は、米国仮特許出願第61/428,277号明細書(E.I.duPont de Nemours & Co.,Inc.、代理人整理番号CL5267USPRV、2010年12月30日出願)に記載されるように、ヤロウィア(Yarrowia)ゲノムに組み込まれた6つのΔ5デサチュラーゼ遺伝子(すなわちキメラ遺伝子EXP1::EgD5M::Pex16、FBAIN::EgD5SM::Pex20、GPDIN::EgD5SM::Aco、GPM::EgD5SM::Oct、EXP1::EgD5SM::Lip1、YAT1::EaD5SM::Oct)の代わりに、遺伝子操作株は、実際には4つのΔ5デサチュラーゼ遺伝子(すなわちEXP1::EgD5M::Pex16、FBAIN::EgD5SM::Pex20、EXP1::EgD5SM::Lip1、およびYAT1::EaD5SM::Oct)のみを保有したと判定した。
【0293】
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowialipolytica)Y9502株およびZ1978株の比較
Z1978株中で発現される異種遺伝子は、1つのΔ9デサチュラーゼ遺伝子、1つのコリンリン酸シチジリルトランスフェラーゼ遺伝子、および1つのΔ9エロンガーゼ変異体の追加的な発現だけが、Y9502株中で発現されるものと異なる(すなわち配列番号58および59に記載のEgD9eS−L35G)。LAおよびALAからEPAへの全Δ9エロンガーゼ変換効率[「%変換」]は、表18でY9502株およびZ1978株について、次式に従って計算された。([生成物]/[基質+生成物])
*100。式中、生成物はEDA%TFA、ETrA%TFA、DGLA%TFA、ETA%TFA、ARA%TFA、およびEPA%TFAの合計であり、基質はLA%TFA、ALA%TFA、EDA%TFA、ETrA%TFA、DGLA%TFA、ETA%TFA、ARA%TFA、およびEPA%TFAの合計であった。
【0294】
【表22】
【0295】
上で示されるように、全Δ9エロンガーゼ変換効率がY9502株で83.3%と判定された一方、Z1978株では効率が改善された(すなわち85.3%)。このΔ9エロンガーゼ活性の改善に基づいて、EgD9eS−L35Gは、PUFAの生合成のための機能的Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路で使用される有用な変異遺伝子と見なされる。
本実施例で実証されるように、本明細書の発明の変異Δ9エロンガーゼのいずれも、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の好ましい株の発現のために、適切なベクターに同様に導入し得る。
【0296】
以上、本発明を要約すると下記のとおりである。
1.(a)Δ9エロンガーゼ活性を有する変異ポリペプチドをコードし、
i)L35F変異;
ii)L35M変異;
iii)L35G変異;
iv)L35G変異と、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、Q107E、L108G、G127L、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、Q244N、A254W、およびA254Yからなる群から選択される、少なくとも1つのその他の変異;
v)L35G、A21V、L108G、およびI179R変異;
vi)L35G、W132T、およびI179変異;
vii)L35G、S9D、Y84C、およびI179R変異;
viii)L35G、Y84C、I179R、およびQ244N変異;
ix)L35G、A21V、W132T、I179R、およびQ244N変異;
x)K58RおよびI257T変異;
xi)D98G変異;
xii)L130MおよびV243A変異;および
i)K58R、L35F、L35G、L35M、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、D98G、Q107E、L108G、G127L、L130M、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、V243A、Q244N、A254W、A254Y、およびI257Tからなる群から選択される、少なくとも2つの変異を含んでなる任意の組み合わせ
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸変異によって配列番号10と異なる、配列番号22に記載のアミノ酸配列を有するヌクレオチド配列;
(b)(a)部分のヌクレオチド配列と同数のヌクレオチドからなり100%相補的である、(a)部分のヌクレオチド配列の相補体
を含んでなる、単離ポリヌクレオチド。
2.ヌクレオチド配列が、配列番号28、配列番号31、配列番号34、配列番号37、配列番号40、配列番号58、配列番号61、配列番号86、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号100、配列番号103、配列番号106、および配列番号109からなる群から選択される、上記1に記載の単離ポリヌクレオチド。
3.上記1に記載の単離ポリヌクレオチドによってコードされる、Δ9エロンガーゼ活性を有する変異ポリペプチド。
4.タンパク質配列が、配列番号29、配列番号32、配列番号35、配列番号38、配列番号41、配列番号59、配列番号62、配列番号87、配列番号101、配列番号104、配列番号107、および配列番号110からなる群から選択される、上記3に記載の変異ポリペプチド。
5.Δ9エロンガーゼ活性が、配列番号10に記載のポリペプチドのΔ9エロンガーゼ活性と少なくとも機能的にほぼ同等である、上記3または4に記載の変異ポリペプチド。
6.リノール酸からエイコサジエン酸への%基質変換が、配列番号10に記載のポリペプチドのリノール酸からエイコサジエン酸への%基質変換と比べて、少なくとも110%である、上記5に記載の変異ポリペプチド。
7.リノール酸からエイコサジエン酸への%基質変換が、配列番号10に記載のポリペプチドのリノール酸からエイコサジエン酸への%基質変換と比べて、少なくとも120%である、上記6に記載の変異ポリペプチド。
8.少なくとも1つの調節制御配列に作動可能に連結された、上記1に記載の単離ポリヌクレオチドを含んでなる組換えコンストラクト。
9.上記1に記載の単離ポリヌクレオチドを含んでなる、形質転換細胞。
10.前記細胞が、植物、細菌、酵母、藻類、ユーグレナ属、ストラメノパイル、卵菌綱、および真菌からなる群から選択される、上記9に記載の形質転換細胞。
11.細胞がその乾燥細胞質量の少なくとも約25%を油として産生する油性酵母である、上記10に記載の形質転換細胞。
12.油性酵母が、少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結された単離ポリヌクレオチドを含んでなる、少なくとも1つの組換えDNAコンストラクトをさらに含んでなり、組換えDNAコンストラクトが、Δ4デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ8デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、Δ9デサチュラーゼ、Δ12デサチュラーゼ、Δ15デサチュラーゼ、Δ17デサチュラーゼ、C
14/16エロンガーゼ、C
16/18エロンガーゼ、C
18/20エロンガーゼ、およびC
20/22エロンガーゼからなる群から選択されるポリペプチドをコードする、上記11に記載の形質転換細胞。
13.油性酵母によって産生される油が、アラキドン酸、エイコサジエン酸、エイコサペンタエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサトリエン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸からなる群から選択される長鎖多価不飽和脂肪酸を含んでなる、上記12に記載の形質転換細胞。
14.油性酵母が、ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロ
ドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、およびリポマイセス(Lipomyces)からなる群から選択される、上記10または11に記載の形質転換細胞。
15.細胞がヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)である、上記14に記載の形質転換細胞。
16.a)i)少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結され、Δ9エロンガーゼ活性を有する変異ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含んでなり、
(a)L35F変異;
(b)L35M変異;
(c)L35G変異;
(d)L35G変異と、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、Q107E、L108G、G127L、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、Q244N、A254W、およびA254Yからなる群から選択される、少なくとも1つのその他の変異;
(e)L35G、A21V、L108G、およびI179R変異;
(f)L35G、W132T、およびI179変異;
(g)L35G、S9D、Y84C、およびI179R変異;
(h)L35G、Y84C、I179R、およびQ244N変異;
(i)L35G、A21V、W132T、I179R、およびQ244N変異;
(j)K58RおよびI257T変異;
(k)D98G変異;
(l)L130MおよびV243A変異;および
(m)K58R、L35F、L35G、L35M、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、D98G、Q107E、L108G、G127L、L130M、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、V243A、Q244N、A254W、A254Y、およびI257Tからなる群から選択される少なくとも2つの変異を含んでなる任意の組み合わせ
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸変異によって、配列番号10と異なる、配列番号22に記載のアミノ酸配列を有する組換えコンストラクト;および
ii)リノール酸およびα−リノレン酸からなる群から選択される基質脂肪酸源
を含んでなる、油性酵母を備えるステップと;
b)Δ9エロンガーゼ活性を有する変異ポリペプチドをコードする組換えコンストラクトが発現され、基質脂肪酸が生産物脂肪酸に変換される条件下で、ステップ(a)の酵母を培養するステップで、ここでリノール酸がエイコサジエン酸に変換され、α−リノレン酸がエイコサトリエン酸に変換される、該ステップと;
c)任意選択的に、ステップ(b)の生産物脂肪酸を回収するステップと
を含んでなる多価不飽和脂肪酸を生産する方法。
17.上記9に記載の油性酵母から得られる微生物油。
18.乾燥細胞質量の質量%として測定して少なくとも22.5質量%のエイコサペンタエン酸を含んでなる油を産生し、配列番号59に記載のアミノ酸配列を含んでなる少なくとも1つの変異Δ9エロンガーゼポリペプチドを含んでなる、組換え微生物宿主細胞。