特許第5963749号(P5963749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5963749変異Δ9エロンガーゼおよび多価不飽和脂肪酸の製造におけるそれらの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963749
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】変異Δ9エロンガーゼおよび多価不飽和脂肪酸の製造におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160721BHJP
   C12N 9/00 20060101ALI20160721BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20160721BHJP
   C12P 7/64 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N9/00
   C12N1/19
   C12P7/64
【請求項の数】6
【全頁数】88
(21)【出願番号】特願2013-526175(P2013-526175)
(86)(22)【出願日】2011年8月26日
(65)【公表番号】特表2013-541328(P2013-541328A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】US2011049361
(87)【国際公開番号】WO2012027676
(87)【国際公開日】20120301
【審査請求日】2014年8月13日
(31)【優先権主張番号】61/377,248
(32)【優先日】2010年8月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ダブリュー・ボスティック
(72)【発明者】
【氏名】ホンシーアン・ヘ
(72)【発明者】
【氏名】ヨウゲン・リー
(72)【発明者】
【氏名】クゥン・ジィウ
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−517019(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/046231(WO,A1)
【文献】 FEBS Lett., 2003, Vol. 547, pp. 137-139
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
C12N 1/19
C12N 9/00
C12P 7/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Δ9エロンガーゼ活性を有する変異ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、単離ポリヌクレオチドであって
ここで、当該変異ポリペプチドが、(i)配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であり、かつ、(ii)35位にグリシン、フェニルアラニン及びメチオニンからなる群から選択されるアミノ酸を含む、アミノ酸配列を含む、
単離ポリヌクレオチド。
【請求項2】
変異ポリペプチドが配列番号29、配列番号59、配列番号62、配列番号87、配列番号101、配列番号104、配列番号107及び配列番号110からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項3】
少なくとも1つの調節制御配列に作動可能に連結された、請求項1に記載の単離ポリヌクレオチドを含んでなる組換えコンストラクト。
【請求項4】
請求項に記載の組換えコンストラクトを含んでなる、形質転換細胞。
【請求項5】
a)i)請求項3に記載の組換えコンストラクト;および
ii)リノール酸およびα−リノレン酸からなる群から選択される基質脂肪酸源
を含んでなる、油性酵母を備えるステップと;
b)Δ9エロンガーゼ活性を有する変異ポリペプチドが発現され、基質脂肪酸が生産物脂肪酸に変換される条件下で、ステップ(a)の酵母を培養するステップで、ここでリノール酸がエイコサジエン酸に変換され、α−リノレン酸がエイコサトリエン酸に変換される、該ステップと;
c)任意選択的に、ステップ(b)の生産物脂肪酸を回収するステップと
を含んでなる多価不飽和脂肪酸を生産する方法。
【請求項6】
乾燥細胞質量の質量%として測定して少なくとも22.5質量%のエイコサペンタエン酸を含んでなる油を産生し、配列番号59に記載のアミノ酸配列を含んでなる少なくとも1つの変異Δ9エロンガーゼポリペプチドを含んでなる、組換えヤロウィア・リポリティカ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その内容全体を参照によって本明細書に援用する、2010年8月26日に出願された米国仮特許出願第61/377,248号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本発明は生物工学の分野にある。より具体的には、本発明は、変異Δ9脂肪酸エロンガーゼをコードするポリヌクレオチド配列の作成、および長鎖多価不飽和脂肪酸[「PUFA」]製造におけるこれらのエロンガーゼの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
多価不飽和脂肪酸[「PUFA」]の商業的な生産手段として、植物、藻類、真菌、ストラメノパイル、および酵母をはじめとする多様な異なる宿主が調査されている。遺伝子操作は、いくつかの宿主の自然の能力を実質的に変化させて(天然ではリノール酸[「LA」;18:2 ω−6]およびα−リノレン酸[「ALA」;18:3 ω−3]脂肪酸産生に限定されるものでさえ)、様々な長鎖ω−3/ω−6 PUFAの高レベル生成をもたらし得ることを実証している。これが自然の能力または組み換え技術の結果であるのかどうかに関わらず、アラキドン酸[「ARA」、20:4 ω−6]、エイコサペンタエン酸[「EPA」、20:5 ω−3]、ドコサペンタエン酸[「DPA」、22:5 ω−3]、およびドコサヘキサエン酸[「DHA」、22:6 ω−3]の生成には、全てΔ9エロンガーゼ遺伝子の発現が必要であることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特性決定されたΔ9エロンガーゼは、LAをエイコサジエン酸[「EDA」;20:2
ω−6]に、そしてALAをエイコサトリエン酸[「ETrA」;20:3 ω−3]に変換する能力を有する。しかしほんの数種のΔ9エロンガーゼのみが、同定されている。これらとしては、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)からのΔ9エロンガーゼ[「IgD9e」](配列番号1および2;国際公開第2002/077213号パンフレット、国際公開第2005/083093号パンフレット、国際公開第2005/012316号パンフレット、および国際公開第2004/057001号パンフレット;GenBank受入番号AAL37626)、ユートレプチエラ属(Eutreptiella)CCMP389種からのΔ9エロンガーゼ[「E389D9e」](配列番号3および4;米国特許第7,645,604号明細書)、ミドリムシ(Euglena gracilis)からのΔ9エロンガーゼ[「EgD9e」](配列番号7および8;米国特許第7,645,604号明細書)、およびユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)からのΔ9エロンガーゼ[「EaD9e」](配列番号11および12;米国特許第7,794,701号明細書)が挙げられる。米国特許第7,645,604号明細書は、EgD9e、E389D9e、およびIgD9eエロンガーゼの間で保存された7つのモチーフを同定したが、IgD9eについては、Δ9エロンガーゼの機能性にとって重要なアミノ酸残基を同定する試みで1つの研究のみが実施されている(Qi,B.,et al.,FEBS Lett.,547:137−139(2003))。Δ9エロンガーゼからは、タンパク質の遺伝的進化の指針となる結晶構造は得られず、Δ9エロンガーゼの配列、構造、および機能間の関係性についてもほとんど知られていない。この知識の欠如にもかかわらず、PUFAを作ることができる産生宿主細胞中において、高い酵素活性で効率的に発現されるΔ9エロンガーゼ遺伝子に対する必要性がなおもある。
【0005】
商業的に有用な宿主細胞中のPUFA生合成経路への組み込みに適した、高活性を有する新しいΔ9エロンガーゼ変異体が発見された。驚くべきことにそして意外にも、特定の点突然変異は、その酵素活性が、LAからEDAへの変換に基づいて、野生型酵素の96%〜145%であるΔ9エロンガーゼ変異体をもたらしたことが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の実施形態では、本発明は、
(a)Δ9エロンガーゼ活性を有する変異ポリペプチドをコードして、
i)L35F変異;
ii)L35M変異;
iii)L35G変異;
iv)L35G変異と、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、Q107E、L108G、G127L、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、Q244N、A254W、およびA254Yからなる群から選択される、少なくとも1つのその他の変異;
v)L35G、W132T、およびI179R変異;
vi)L35G、S9D、Y84C、およびI179R変異;
vii)L35G、A21V、L108G、およびI179R変異;
viii)L35G、Y84C、I179R、およびQ244N変異;
ix)L35G、A21V、W132T、I179R、およびQ244N変異;
x)K58RおよびI257T変異;
xi)D98G変異;
xii)L130MおよびV243A変異;および
xiii)K58R、L35F、L35G、L35M、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、D98G、Q107E、L108G、G127L、L130M、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、V243A、Q244N、A254W、A254Y、およびI257Tからなる群から選択される、少なくとも2つの変異を含んでなるあらゆる組み合わせ
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸変異によって配列番号10と異なる、配列番号22に記載のアミノ酸配列を有するヌクレオチド配列;
(b)同数のヌクレオチドからなり100%相補的である、パート(a)のヌクレオチド配列の補体
を含んでなる、単離ポリヌクレオチドに関する。
【0007】
単離ポリヌクレオチドは、配列番号28、配列番号31、配列番号34、配列番号37、配列番号40、配列番号58、配列番号61、配列番号86、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号100、配列番号103、配列番号106、および配列番号109からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有してもよい。
【0008】
第2の実施形態では、本発明は、請求項1に記載される単離ポリヌクレオチドによってコードされる、Δ9エロンガーゼ活性を有する変異ポリペプチドに関する。変異ポリペプチドは、配列番号29、配列番号32、配列番号35、配列番号38、配列番号41、配列番号59、配列番号62、配列番号87、配列番号101、配列番号104、配列番号107、および配列番号110からなる群から選択されるタンパク質配列を有してもよい。
【0009】
第3の実施形態では、変異ポリペプチドは、配列番号10に記載のポリペプチドのΔ9エロンガーゼ活性と、少なくともほぼ機能的に同等のΔ9エロンガーゼ活性を有する。好
ましくは、変異ポリペプチドのリノール酸からエイコサジエン酸への%基質変換は、配列番号10に記載のポリペプチドのリノール酸からエイコサジエン酸への%基質変換と比べて少なくとも110%であり(すなわち活性の少なくとも10%の改善に相当する)、より好ましくは、変異ポリペプチドのリノール酸からエイコサジエン酸への%基質変換は、少なくとも120%である(すなわち活性の少なくとも20%の改善に相当する)。第4の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの制御配列と作動可能に結合する請求項1に記載の単離ポリヌクレオチドを含んでなる、組換えコンストラクトに関する。
【0010】
第5の実施形態では、本発明は、本発明の単離ポリヌクレオチドを含んでなる形質転換細胞に関する。形質転換細胞は、好ましくは、植物、細菌、酵母、藻類、ユーグレナ属、ストラメノパイル、卵菌綱、および真菌からなる群から選択されてもよい。
【0011】
第6の実施形態では、本発明は
(a)本発明の単離ポリヌクレオチドを含んでなる、少なくとも1つの組換えDNAコンストラクト;および
(b)少なくとも1つの制御配列と作動可能に結合する単離ポリヌクレオチドを含んでなり、Δ4デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ8デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、Δ9デサチュラーゼ、Δ12デサチュラーゼ、Δ15デサチュラーゼ、Δ17デサチュラーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/20エロンガーゼ、およびC20/22エロンガーゼからなる群から選択されるポリペプチドをコードする、少なくとも1つの組換えDNAコンストラクト
を含んでなる、その乾燥細胞重量の少なくとも約25%を油として産生する、形質転換油性酵母に関し、形質転換油性酵母は、アラキドン酸、エイコサジエン酸、エイコサペンタエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサトリエン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸からなる群から選択される、長鎖多価不飽和脂肪酸を産生してもよい。
【0012】
より具体的には、本発明の遺伝子導入油性酵母は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)である。
【0013】
第7の実施形態では、本発明は、
a)i)少なくとも1つの制御配列と作動可能に結合して、Δ9エロンガーゼ活性を有する変異ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含んでなり、
(a)L35F変異;
(b)L35M変異;
(c)L35G変異;
(d)L35G変異と、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、Q107E、L108G、G127L、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、Q244N、A254W、およびA254Yからなる群から選択される、少なくとも1つのその他の変異;
(e)L35G、W132T、およびI179R変異;
(f)L35G、S9D、Y84C、およびI179R変異;
(g)L35G、A21V、L108G、およびI179R変異;
(h)L35G、Y84C、I179R、およびQ244N変異;
(i)L35G、A21V、W132T、I179R、およびQ244N変異;
(j)K58RおよびI257T変異;
(k)D98G変異;
(l)L130MおよびV243A変異;および
(m)K58R、L35F、L35G、L35M、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、D98G、Q107E、L108G、G127L、L130M、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、V243A、Q244N、A254W、A254Y、およびI257Tからなる群から選択される、少なくとも2つの変異を含んでなるあらゆる組み合わせ
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸変異によって配列番号10と異なる、配列番号22に記載のアミノ酸配列を有する組換えコンストラクト;および
ii)リノール酸およびα−リノレン酸からなる群から選択される基質脂肪酸源
を含んでなる、油性酵母を提供するステップと;
b)Δ9エロンガーゼ活性を有する変異ポリペプチドをコードする組換えコンストラクトが発現されて、基質脂肪酸が生成物脂肪酸に変換される条件下で、ステップ(a)の酵母を培養し、リノール酸がエイコサジエン酸に変換され、α−リノレン酸がエイコサトリエン酸に変換されるステップと;
c)ステップ(b)の生成物脂肪酸を任意選択的に回収するステップと
を含んでなる、多価不飽和脂肪酸を製造する方法に関する。
【0014】
第8の実施形態では、本発明は、本発明の油性酵母から得られる微生物油に関する。
【0015】
第9の実施形態では、本発明は、乾燥細胞重量の重量%としての測定で、少なくとも22.5重量%のエイコサペンタエン酸を含んでなる、油を産生する組換え微生物宿主細胞に関し、前記組換え微生物宿主細胞は、少なくとも1つの本発明の変異Δ9エロンガーゼポリペプチドを含んでなる。
【0016】
生物学的寄託
以下の生物学的材料が、American Type Culture Collection(ATCC),10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110−2209に寄託され、以下の名称、受入番号、および寄託日を有する。
【0017】
【表1】
【0018】
上に列挙した生物学的材料は、「特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約」の条項に従って寄託された。列挙された寄託は、指定の国際寄託機関で少なくとも30年間維持され、それを開示する特許の付与に際して公的に入手可能となる。寄託株の利用可能性は、政府の行動によって付与された特許権を失墜させて主題発明を実施する認可とはみなされない。
【0019】
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502は、米国特許出願公開第2010−0317072−A1号明細書に記載される手順に従って、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y8412から誘導された。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】Vector NTI(登録商標)のAlignXプログラム(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)を使用した、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)[「IgD9e」](配列番号2)、ユートレプチエラ属(Eutreptiella)CCMP389種[「E389D9e」](配列番号4)、ミドリムシ(Euglena gracilis)[「EgD9e」](配列番号8)、およびユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)[「EaD9e」](配列番号12)のΔ9エロンガーゼの配列比較である。
図2】pZUFmEgD9ESのプラスミドマップである。
図3A】配列比較のClustal W法を使用した、カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)(配列番号43)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)(配列番号44)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)(配列番号45)、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)(配列番号46)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)(配列番号47)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)(配列番号48)、パブロバ属(Pavlova)CCMP459種(配列番号49)、パブロバ・サリナ(Pavlova salina)(配列番号50)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)(配列番号51)、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)(配列番号12)、ミドリムシ(Euglena gracilis)(配列番号8)、ユートレプチエラ属(Eutreptiella)CCMP389種(配列番号4)、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)(配列番号2)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)(配列番号52)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)(配列番号53)、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)(配列番号54)、およびスラウストキトリウム属(Thraustochytrium)FJN−10種(配列番号55)からの17種の脂肪酸エロンガーゼの配列比較である。
図3B】配列比較のClustal W法を使用した、カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)(配列番号43)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)(配列番号44)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)(配列番号45)、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)(配列番号46)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)(配列番号47)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)(配列番号48)、パブロバ属(Pavlova)CCMP459種(配列番号49)、パブロバ・サリナ(Pavlova salina)(配列番号50)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)(配列番号51)、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)(配列番号12)、ミドリムシ(Euglena gracilis)(配列番号8)、ユートレプチエラ属(Eutreptiella)CCMP389種(配列番号4)、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)(配列番号2)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)(配列番号52)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)(配列番号53)、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)(配列番号54)、およびスラウストキトリウム属(Thraustochytrium)FJN−10種(配列番号55)からの17種の脂肪酸エロンガーゼの配列比較である。
図3C】配列比較のClustal W法を使用した、カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)(配列番号43)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)(配列番号44)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)(配列番号45)、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)(配列番号46)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)(配列番号47)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)(配列番号48)、パブロバ属(Pavlova)CCMP459種(配列番号49)、パブロバ・サリナ(Pavlova salina)(配列番号50)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)(配列番号51)、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)(配列番号12)、ミドリムシ(Euglena gracilis)(配列番号8)、ユートレプチエラ属(Eutreptiella)CCMP389種(配列番号4)、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)(配列番号2)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)(配列番号52)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)(配列番号53)、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)(配列番号54)、およびスラウストキトリウム属(Thraustochytrium)FJN−10種(配列番号55)からの17種の脂肪酸エロンガーゼの配列比較である。
図3D】配列比較のClustal W法を使用した、カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)(配列番号43)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)(配列番号44)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)(配列番号45)、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)(配列番号46)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)(配列番号47)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)(配列番号48)、パブロバ属(Pavlova)CCMP459種(配列番号49)、パブロバ・サリナ(Pavlova salina)(配列番号50)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)(配列番号51)、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)(配列番号12)、ミドリムシ(Euglena gracilis)(配列番号8)、ユートレプチエラ属(Eutreptiella)CCMP389種(配列番号4)、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)(配列番号2)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)(配列番号52)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)(配列番号53)、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)(配列番号54)、およびスラウストキトリウム属(Thraustochytrium)FJN−10種(配列番号55)からの17種の脂肪酸エロンガーゼの配列比較である。
図3E】配列比較のClustal W法を使用した、カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)(配列番号43)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)(配列番号44)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)(配列番号45)、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)(配列番号46)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)(配列番号47)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)(配列番号48)、パブロバ属(Pavlova)CCMP459種(配列番号49)、パブロバ・サリナ(Pavlova salina)(配列番号50)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)(配列番号51)、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)(配列番号12)、ミドリムシ(Euglena gracilis)(配列番号8)、ユートレプチエラ属(Eutreptiella)CCMP389種(配列番号4)、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)(配列番号2)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)(配列番号52)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)(配列番号53)、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)(配列番号54)、およびスラウストキトリウム属(Thraustochytrium)FJN−10種(配列番号55)からの17種の脂肪酸エロンガーゼの配列比較である。
図3F】配列比較のClustal W法を使用した、カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)(配列番号43)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)(配列番号44)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)(配列番号45)、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)(配列番号46)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)(配列番号47)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)(配列番号48)、パブロバ属(Pavlova)CCMP459種(配列番号49)、パブロバ・サリナ(Pavlova salina)(配列番号50)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)(配列番号51)、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)(配列番号12)、ミドリムシ(Euglena gracilis)(配列番号8)、ユートレプチエラ属(Eutreptiella)CCMP389種(配列番号4)、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)(配列番号2)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)(配列番号52)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)(配列番号53)、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)(配列番号54)、およびスラウストキトリウム属(Thraustochytrium)FJN−10種(配列番号55)からの17種の脂肪酸エロンガーゼの配列比較である。
図3G】配列比較のClustal W法を使用した、カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)(配列番号43)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)(配列番号44)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)(配列番号45)、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)(配列番号46)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)(配列番号47)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)(配列番号48)、パブロバ属(Pavlova)CCMP459種(配列番号49)、パブロバ・サリナ(Pavlova salina)(配列番号50)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)(配列番号51)、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)(配列番号12)、ミドリムシ(Euglena gracilis)(配列番号8)、ユートレプチエラ属(Eutreptiella)CCMP389種(配列番号4)、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)(配列番号2)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)(配列番号52)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)(配列番号53)、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)(配列番号54)、およびスラウストキトリウム属(Thraustochytrium)FJN−10種(配列番号55)からの17種の脂肪酸エロンガーゼの配列比較である。
図3H】配列比較のClustal W法を使用した、カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)(配列番号43)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)(配列番号44)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)(配列番号45)、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)(配列番号46)、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)(配列番号47)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)(配列番号48)、パブロバ属(Pavlova)CCMP459種(配列番号49)、パブロバ・サリナ(Pavlova salina)(配列番号50)、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)(配列番号51)、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)(配列番号12)、ミドリムシ(Euglena gracilis)(配列番号8)、ユートレプチエラ属(Eutreptiella)CCMP389種(配列番号4)、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)(配列番号2)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)(配列番号52)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)(配列番号53)、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)(配列番号54)、およびスラウストキトリウム属(Thraustochytrium)FJN−10種(配列番号55)からの17種の脂肪酸エロンガーゼの配列比較である。
図4A】EgD9eSの膜トポロジーモデルを示す;各垂直円柱が膜貫通断片を示す一方、各水平円柱は内膜小葉の中または近くに位置する疎水性ストレッチを示す。
図4B】任意選択的に、L35F変異;L35M変異;L35G変異;L35G変異と、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、Q107E、L108G、G127L、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、Q244N、A254W、およびA254Yからなる群から選択される、少なくとも1つのその他の変異;L35G、A21V、L108G、およびI179R変異;L35G、W132T、およびI179R変異;L35G、S9D、Y84C、およびI179R変異;L35G、Y84C、I179R、およびQ244N変異;L35G、A21V、W132T、I179R、およびQ244N変異;K58RおよびI257T変異;D98G変異;L130MおよびV243A変異;およびK58R、L35F、L35G、L35M、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、D98G、Q107E、L108G、G127L、L130M、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、V243A、Q244N、A254W、A254Y、およびI257Tからなる群から選択される、少なくとも2つの変異を含んでなるあらゆる組み合わせを含んでなる、ミドリムシ(Euglena gracilis)に由来する合成変異Δ9エロンガーゼ、すなわち「EgD9eS−変異体コンセンサス」;配列番号22)の描写を示す。
図5A】ω−3およびω−6脂肪酸生合成経路を図示しており、併せて見るべきである。
図5B】ω−3およびω−6脂肪酸生合成経路を図示しており、併せて見るべきである。
図6】総脂質画分中で58.7%を上回るEPAを産生する、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株の開発を図示する。
図7】(A)pZKUMおよび(B)pZKL3−9DP9Nのプラスミドマップを提供する。
【0021】
本発明は、本明細書の一部を構成する、以下の詳細な説明、および添付の配列説明からより完全に理解され得る。
【0022】
以下の配列は、参照によって本明細書に援用する、37C.F.R.1.§821〜1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列開示を含む特許出願の要件−配列規則」)を満たし、世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(1998)およびEPOおよびPCTの配列表要件(規則5.2および49.5(aの2)、および実施細則第208号および附属書C)に一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データのために使用される記号および型式は、37C.F.R.§1.822で述べられる規則に従う。
【0023】
配列番号1〜111は、表1で同定される遺伝子またはタンパク質(またはその一部)、プライマーまたはプラスミドをコードするORFである。
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】
【表5】
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書において引用される、全ての特許、特許出願、および刊行物は、その内容全体を参照によって援用する。
【0029】
本開示では、いくつかの用語および略称が使用される。アミノ酸は、参照によって本明細書に援用する、Nucleic Acids Research,13:3021−3030(1985)およびBiochemical Journal,219(2):345−373(1984)に記載される、IUPAC−IYUB基準に準拠したアミノ酸のための一文字コードまたは三文字コードによって同定される。
【0030】
以下の定義が提供される。
【0031】
「読み取り枠」は、「ORF」と略記される。
【0032】
「ポリメラーゼ連鎖反応」は、「PCR」と略記される。
【0033】
「American Type Culture Collection」は、「ATCC」と略記される。
【0034】
「多価不飽和脂肪酸」は、「PUFA」と略記される。
【0035】
「トリアシルグリセロール」は、「TAG」と略記される。
【0036】
「総脂肪酸」は、「TFA」と略記される。
【0037】
「脂肪酸メチルエステル」は、「FAME」と略記される。
【0038】
本明細書の用法では、「発明」または「本発明」という用語は、特許請求の範囲および明細書に記載される、本発明の全ての態様および実施形態を指すことが意図され、いかなる特定の実施形態または態様にも限定されないものと解釈される。
【0039】
「脂肪酸」という用語は、約C12〜C22の様々な鎖長の長鎖脂肪酸(アルカン酸)を指すが、鎖長のより長い酸およびより短い酸の双方も知られている。優勢な鎖長は、C16〜C22の間である。脂肪酸の構造は「X:Y」の簡易表記体系によって表され、式中、Xは特定の脂肪酸中の炭素[「C」]原子の総数であり、Yは二重結合数である。「飽和脂肪酸」対「不飽和脂肪酸」、「一不飽和脂肪酸」対「多価不飽和脂肪酸」[「PUFA」]、および「ω6脂肪酸」[「ω−6」または「n−6」]対「ω3脂肪酸」[「ω−3」または「n−3」]の間の区別の追加的詳細は、参照によって本明細書に援用する米国特許第7,238,482号明細書中に提供される。
【0040】
本明細書でPUFAを記述するのに使用される命名法を表2に示す。「略記法」と題された欄ではω−基準系を使用して、炭素数、二重結合数、そしてこの目的で1番目であるω炭素から数えたω炭素に最も近い二重結合の位置を示す。表の残りは、ω−3およびω−6脂肪酸とそれらの前駆体の一般名、明細書全体を通じて使用される略称、および各化合物の化学名を要約する。
【0041】
【表6】
【0042】
表2に列挙するω−3/ω−6 PUFAは、本明細書に記載される方法を使用して微生物および植物宿主の油画分中に蓄積する可能性が最も高いが、この一覧は限定的または完全なものとみなすべきではない。
【0043】
「油」という用語は25℃で液体の脂質物質を指し;油は疎水性であるが、有機溶媒に可溶性である。油性生物では、油が総脂質の大部分を構成する。「油」は主にトリアシルグリセロール[「TAG」]からなるが、その他の中性脂質、リン脂質、および遊離脂肪酸もまた含有してよい。油中の脂肪酸組成と総脂質の脂肪酸組成は、一般に類似しており;したがって総脂質中のPUFA濃度の増大または減少は、油中のPUFA濃度の増大または減少に対応し、逆もまた然りである。
【0044】
「中性脂肪」とは、脂肪体の細胞中に貯蔵脂肪として一般に見られる脂質を指し、細胞のpHでは脂質は荷電基を有さないため、このように称される。一般にそれらは完全に非極性で、水に対する親和性がない。中性脂質とは、一般に脂肪酸によるグリセロールのモノ−、ジ−、および/またはトリエステルを指し、それぞれモノアシルグリセロール[「MAG」]、ジアシルグリセロール[「DAG」]またはトリアシルグリセロールとも称され、または集合的にアシルグリセロールと称される。アシルグリセロールから遊離脂肪酸を放出する為には、加水分解反応が起きなくてはならない。
【0045】
「トリアシルグリセロール」[「TAG」]という用語は、グリセロール分子にエステル化された3つの脂肪酸アシル残基から構成される中性脂質を指す。TAGは、長鎖PUFAおよび飽和脂肪酸、ならびに鎖長のより短い飽和および不飽和脂肪酸を含有し得る。
【0046】
「総脂肪酸」[「TFA」]という用語は、本明細書では、例えば生物由来資源または油であってもよい特定サンプル中で、(当該技術分野で知られているような)塩基エステル交換法によって脂肪酸メチルエステル[「FAME」]に誘導体化し得る、細胞性脂肪酸の総和を指す。したがって総脂肪酸は、中性脂質画分(DAG、MAG、およびTAGをはじめとする)からの脂肪酸、および極性脂質画分(ホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミン画分をはじめとする)からの脂肪酸を含むが、遊離脂肪酸は含まない。
【0047】
細胞の「総脂質含量」という用語は、乾燥細胞重量[「DCW」]の%としてのTFA測定値であるが、総脂質含量は、DCWの%としてのFAME測定値[「FAME%DCW」]として近似し得る。したがって総脂質含量[「TFA%DCW」]は、例えば100ミリグラムのDCWあたりの総脂肪酸のミリグラムと同等である。
【0048】
総脂質中の脂肪酸濃度は、本明細書では、例えば100ミリグラムのTFAあたりの特定の脂肪酸のミリグラムのように、TFAの重量%[「%TFA」]として表される。本開示中では、特に断りのない限り、総脂質に対する特定脂肪酸のパーセントへの言及は、%TFAとしての脂肪酸濃度に等しい(例えば総脂質の%EPAは、EPA%TFAに等しい)。
【0049】
場合によっては、細胞中の所与の脂肪酸含量をその乾燥細胞重量の重量%(「%DCW」)として表すことが有用である。したがって、例えばEPA%DCWは、次式に従って求められる。(EPA%TFA)(TFA%DCW)]/100。しかし乾燥細胞重量の重量%(「%DCW」)としての細胞中の所与の脂肪酸含量は、以下のように近似し得る。(EPA%TFA)(FAME%DCW)]/100。
【0050】
「脂質プロフィール」および「脂質組成」という用語は同義であり、総脂質中または油中などの特定の脂質画分に含有される個々の脂肪酸の量を指し、この量はTFAの重量%として表される。混合物中に存在する個々の脂肪酸の総和は、100になるべきである。
【0051】
「PUFA生合成経路」という用語は、オレイン酸をLA、EDA、GLA、DGLA、ARA、DTA、およびDPAn−6などのω−6脂肪酸に、およびALA、STA、ETrA、ETA、EPA、DPA、およびDHAなどのω−3脂肪酸に変換する代謝過程を指す。この過程は、文献で十分に記載されている。(例えば米国特許第7,932,077号明細書を参照されたい。)簡単に述べるとこの過程は、小胞体膜内に存在する「PUFA生合成経路酵素」と称される一連の特有な延長酵素および不飽和化酵素による、炭素原子の付加を通じた炭素鎖の延長と、二重結合の付加を通じた分子の不飽和化とを伴う。より具体的には「PUFA生合成経路酵素」とは、PUFAの生合成と関連付けられている以下の酵素のいずれか(および前記酵素をコードする遺伝子)を指す。Δ4デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、Δ12デサチュラーゼ、Δ15デサチュラーゼ、Δ17デサチュラーゼ、Δ9デサチュラーゼ、Δ8デサチュラーゼ、Δ9エロンガーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/20エロンガーゼおよび/またはC20/22エロンガーゼ。
【0052】
「Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路」という用語は、少なくとも1つのΔ9エロンガーゼと少なくとも1つのΔ8デサチュラーゼを最低限含んで、それによってEDAおよび/またはETrAを中間体脂肪酸として、LAおよびALAから、それぞれDGLAおよび/またはETAの生合成が可能になるPUFA生合成経路を指す。その他のデサチュラーゼおよびエロンガーゼの発現により、ARA、DTA、DPAn−6、EPA、DPA、およびDHAもまた合成されてもよい。
【0053】
「デサチュラーゼ」という用語は、不飽和化させ得る、すなわち1つまたは複数の脂肪酸に二重結合を導入して対象の脂肪酸または前駆体を生成し得るポリペプチドを指す。特定脂肪酸に言及するための明細書全体を通じたω基準系の使用にもかかわらず、Δシステムを使用して、基質のカルボキシル末端から数えることで、デサチュラーゼ活性を示すことがより都合良い。本明細書において特に興味深いのは、Δ8デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ17デサチュラーゼ、Δ12デサチュラーゼ、Δ4デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、Δ15デサチュラーゼ、およびΔ9デサチュラーゼである。
【0054】
「エロンガーゼ」という用語は、基質脂肪酸炭素鎖を伸長して、エロンガーゼが作用する脂肪酸基質よりも炭素2個分だけ長い酸を生成し得るポリペプチドを指す。この伸長過程は、米国特許第7,659,120号明細書に記載されるように、脂肪酸シンターゼと共同して多段階機序で起きる。エロンガーゼ系によって触媒される反応の例は、LAからEDA、ALAからETrA、GLAからDGLA、STAからETA、ARAからDTA、およびEPAからDPAへの変換である。一般に、エロンガーゼの基質選択性はやや広範であるが、鎖長と、不飽和の程度およびタイプとの双方によって区別される。例えば、C14/16エロンガーゼはC14基質(例えばミリスチン酸)を利用し、C16/18エロンガーゼはC16基質(例えばパルミチン酸)を利用し、C18/20エロンガーゼはC18基質(例えばGLA、STA、LA、およびALA)を利用し、C20/22エロンガーゼ[Δ5エロンガーゼまたはC20エロンガーゼとも称される]はC20基質(例えばARA、EPA)を利用する。本明細書の目的では、2つの異なるタイプのC18/20エロンガーゼを定義し得る。Δ6エロンガーゼは、それぞれGLAおよびSTAからDGLAおよびETAへの変換を触媒するのに対し、Δ9エロンガーゼは、それぞれLAおよびALAからEDAおよびETrAへの転換を触媒し得る。
【0055】
「EgD9e」という用語は、本明細書で配列番号7によってコードされる、ミドリムシ(Euglena gracilis)から単離されたΔ9エロンガーゼ(配列番号8)を指す。同様に「EgD9eS」という用語は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中での発現のためにコドン最適化された、ミドリムシ(E.gracilis)に由来する合成Δ9エロンガーゼ(すなわち配列番号9および10)を指す。EgD9eおよびEgD9eSに関するさらなる詳細は、米国特許第7,645,604号明細書に記載される。
【0056】
本明細書の目的では、「EaD9e」という用語は、本明細書において配列番号11によってコードされる、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)から単離されたΔ9エロンガーゼ(配列番号12)を指す。同様に「EaD9eS」という用語は、Y.リポリティカ(Y,lipolytica)中での発現のためにコドン最適化された、E.アナベナ(E.anabaena)に由来する合成Δ9デサチュラーゼ(すなわち配列番号13および14)を指す。EaD9eおよびEaD9eSに関するさらなる詳細は、米国特許第7,794,701号明細書に記載される。
【0057】
「E389D9e」という用語は、本明細書で配列番号3によってコードされる、ユートレプチエラ属(Eutreptiella)CCMP389種から単離されたΔ9エロンガーゼ(配列番号4)を指す。同様に「E389S9eS」という用語は、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)中での発現のためにコドン最適化された、ユートレプチエラ属(Eutreptiella)CCMP389種に由来する合成Δ9デサチュラーゼ(すなわち配列番号5および6)を指す。E389D9eおよびE389D9eSに関するさらなる詳細は、米国特許第7,645,604号明細書に記載される。
【0058】
「IgD9e」という用語は、本明細書において配列番号1によってコードされる、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)から単離されたΔ9エロンガーゼ(配列番号2;NCBI受入番号AAL37626(GI 17226123))を指す。
【0059】
「保存ドメイン」または「モチーフ」という用語は、進化的に関連したタンパク質の整合配列に沿った特定位置で保存される、一連のアミノ酸を意味する。その他の位置のアミノ酸が相同タンパク質間で変化し得るのに対し、特定位置で高度に保存されたアミノ酸は、これらのアミノ酸が、タンパク質の構造、安定性、または活性にとって重要なこともあることを示唆する。それらはタンパク質相同体ファミリーの整合配列中のそれらの高度な保存によって同定されるので、それらは新しく判定された配列があるタンパク質が、以前同定されたタンパク質ファミリーに属するかどうかを判定する識別子または「シグネチャー」として使用し得る。
【0060】
Δ9エロンガーゼモチーフは、米国特許第7,645,604号明細書に記載され、Y−N−X−(LまたはF)−X−X−S−F(配列番号15);F−Y−X−S−K−X−(EまたはD)−−X−D−(TまたはS)−X(配列番号16);L−(QまたはH)−X−−H−H−X−G−A(配列番号17);M−Y−X−Y−Y−X−(KまたはRまたはN)−(配列番号18);K−X−L−(IまたはLまたはM)−T−X−Q(配列番号19);W−X−−N−−X−Y(配列番号20);およびY−X−−X−−X−L−F(配列番号21)を含み;Xは任意のアミノ酸であり得て、下線付きアミノ酸はΔ9エロンガーゼに特有であってもよい。Vector NTI(登録商標)のAlignXプログラム(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)のデフォルトパラメータを使用した、IgD9e(配列番号2)、EgD9e(配列番号8)、E389D9e(配列番号4)、およびEaD9e(配列番号12)のアミノ酸配列の多重アラインメントを図1に示す。全ての整合配列中で保存される、米国特許第7,645,604号明細書のΔ9エロンガーゼモチーフは、共通配列内の下線付き太字として図に示される。
【0061】
「変異EgD9eS」という用語は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中での発現のためにコドン最適化された、ミドリムシ(Euglena gracilis)に由来する合成Δ9エロンガーゼ(すなわちEgD9eS[配列番号9および10])と比較して、少なくとも1つのヌクレオチドまたはアミノ酸変異を有する本発明のΔ9エロンガーゼを指す。「変異」としては、あらゆる欠失、挿入、および点変異(またはそれらの組み合わせ)が挙げられるが、好ましい実施形態では、変異EgD9eSは配列番号22(図4B)で記載され、配列番号22は、a)L35F変異;b)L35M変異;c)L35G変異;d)L35G変異と、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、Q107E、L108G、G127L、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、Q244N、A254W、およびA254Yからなる群から選択される、少なくとも1つのその他の変異;e)L35G、A21V、L108G、およびI179R変異;f)L35G、W132T、およびI179R変異;g)L35G、S9D、Y84C、およびI179R変異;h)L35G、Y84C、I179R、およびQ244N変異;i)L35G、A21V、W132T、I179R、およびQ244N変異;j)K58RおよびI257T変異;k)D98G変異;l)L130MおよびV243A変異;およびm)K58R、L35F、L35G、L35M、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、D98G、Q107E、L108G、G127L、L130M、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、V243A、Q244N、A254W、A254Y、およびI257Tからなる群から選択される、少なくとも2つの変異を含んでなるあらゆる組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸変異によって、配列番号10と異なる。列挙された各置換では、最初の文字はEgD9eS(配列番号10)中のアミノ酸に対応し、2番目の文字は変異体(配列番号22)中の同じ位置に見られるアミノ酸に対応し、すなわちL35Fは、EgD9eS中の位置35のLeu[L]から、EgD9eS変異体中のPhe[F]への変化を示す。この命名法は、本明細書に記載されるΔ9エロンガーゼタンパク質内の変異に言及するために明細書全体を通じて使用され;同様の表記法が、ヌクレオチド配列内の置換を記述するのに使用される(すなわちC62Tは、EgD9eS(配列番号9)中の位置62のシトシン[C]から、EgD9eS変異体中のチミン[T]への変化を示す)。
【0062】
異なるポリペプチド配列にも関わらず、変異EgD9eS配列の酵素活性(そして任意選択的に特異的選択性)がEgD9eSに匹敵する場合、変異EgD9eSは、EgD9eSと「少なくともほぼ機能的に同等である」。したがって機能的に同等である変異EgD9eS配列は、各酵素の「変換効率」を比較した際に、EgD9eSに比べて実質的に低下していないΔ9エロンガーゼ活性を有する(すなわち変異EgD9eSは、EgD9eSの酵素活性の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約85%、最も好ましくは少なくとも約95%を有する)。より望ましい実施形態では、変異EgD9eSは、EgD9eSと比べて増大した酵素活性(そして任意選択的に特異的選択性)を有する(すなわちEgD9eSの酵素活性の少なくとも約101〜150%、より好ましくは少なくとも約151〜200%、最も好ましくは少なくとも約201〜250%)。好ましい範囲は上述の通りであるが、EgD9eSと比較した有用な変換効率の例としては、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、101%、102%、103%、104%、105%、106%、107%、108%、109%、110%、111%、112%、113%、114%、115%、116%、117%、118%、119%、120%、121%、122%、123%、124%、125%、126%、127%、128%、129%、130%、131%、132%、133%、134%、135%、136%、137%、138%、139%、140%、141%、142%、143%、144%、145%、146%、147%、148%、149%、150%など、および250%以下などの50%から少なくとも250%のあらゆる整数百分率が挙げられる。
【0063】
「変換効率」および「%基質変換」と言う用語は、それによって特定の酵素(例えばΔ9エロンガーゼ)が基質を生成物に変換し得る効率を指す。変換効率は、次式に従って判定される。([生成物]/[基質+生成物])100。式中、「生成物」は、即時生成物と、経路中のそれから誘導される全ての生成物とを含む。したがって「LAからEDAへの変換効率」とは、それによって基質LAが生成物EDAに変換される変換効率を指す。
【0064】
一般に「油性」という用語は、それらのエネルギー源を油の形態で貯蔵する傾向がある生物を指す(Weete,In:Fungal Lipid Biochemistry,2nd Ed.,Plenum,1980)。この過程において、油性微生物の細胞油含量は概してS字形曲線に従い、脂質濃度は対数後期または初期定常期にそれが最大に達するまで増大し、次に静止後期および死滅期において徐々に低下する(Yongmanitchai and Ward,Appl.Environ.Microbiol.,57:419−25(1991))。本出願の目的では、そして微生物に関して使用される場合、「油性」という用語は、それらのDCWの少なくとも約25%を油として蓄積し得る微生物を指す。
【0065】
「油性酵母」という用語は、油を産生し得る、すなわち油がそれらのDCWの約25%を超えて蓄積し得る、酵母に分類される油性微生物を指す。油性酵母の例としては、ヤロウィア(Yarrowia)属、カンジダ(Candida)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、およびリポマイセス(Lipomyces)属が挙げられるが、これに限定されるものではない。酵母がDCWの約25%を超えて油を蓄積する能力は、組換え遺伝子操作の試みを通じた、または生物の天然能力を通じたものであってもよい。
【0066】
「保存的アミノ酸置換」という用語は、タンパク質の化学的または機能的性質を変化させることなく、特定のタンパク質中のアミノ酸残基を別のアミノ酸で置換することを指す。例えば特定の部位において、化学的に等価なアミノ酸の生成をもたらす(しかしコードされた折り畳みタンパク質の構造および機能特性に影響しない)遺伝子の変更が一般的であることは、当該技術分野で良く知られている。本明細書の目的で、「保存的アミノ酸置換」は、次の5群の1つの中における交換と定義される。
1.小型脂肪族非極性またはわずかに極性の残基:Ala[A]、Ser[S]、Thr[T](Pro[P]、Gly[G]);
2.負に帯電した極性残基およびそれらのアミド:Asp[D]、Asn[N]、Glu[E]、Gln[Q];
3.正に帯電した極性残基:His[H]、Arg[R]、Lys[K];
4.大型脂肪族非極性残基:Met[M]、Leu[L]、Ile[I]、Val[V](Cys[C])、および
5.大型芳香族残基:Phe[F]、Tyr[Y]、Trp[W]。
したがってわずかに疎水性のアミノ酸であるAlaは、別のより疎水性の低い残基(例えばGly)によって置換されてもよい。同様に1つの負に帯電した残基による別の残基(例えばAspによるGlu)の置換、または1つの正に帯電した残基による別の残基(例えばLysによるArg)の置換をもたらす変化は、機能的に同等の生成物を生じることが予期され得る。したがって保存的アミノ酸置換は、一般に、1)置換領域内のポリペプチド主鎖構造、2)標的部位の分子の電荷または疎水性、または3)大半の側鎖を保持する。さらに多くの場合、タンパク質分子のN末端とC末端部分の改変は、タンパク質活性を変更することが予期されない。
【0067】
「非保存的アミノ酸置換」という用語は、タンパク質特性に最大変化を生じることが一般に予期されるアミノ酸置換を指す。したがって例えば非保存的アミノ酸置換は、次の1つである。1)親水性残基が疎水性残基を置換し、またはそれによって置換される(例えばSerまたはThrがLeu、Ile、Valを置換し、またはそれによって置換される)、2)CysまたはProがあらゆるその他の残基を置換し、またはそれによって置換される、3)電気陽性側鎖を有する残基が電気陰性残基を置換し、またはそれによって置換される(例えばLys、ArgまたはHisがAspまたはGluを置換し、またはそれによって置換される)、または4)かさ高い側鎖を有する残基が側鎖を有さないものを置換し、またはそれによって置換される(例えばPheがGlyを置換し、またはそれによって置換される)。時として5群中の2群間の非保存的アミノ酸置換は、コードされるタンパク質の活性に影響しない。
【0068】
「サイレント変異」という用語は、コードされたポリペプチドにアミノ酸の変化をもたらさない、DNA配列の変異を指す。これらの変異は、2種以上のコドンが1つのアミノ酸を指定することもある、遺伝コード縮重の結果として起きることが多い。例えば、TCT、TCA、TCG、およびTCCは全て、アミノ酸Serをコードし;したがってDNA配列中のTCTからTCAへの変異は、合成タンパク質中のアミノ酸(すなわちSer)に変更がないことから、遺伝子(またはそのmRNA)の配列決定によってのみ検出される。
【0069】
「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、「核酸配列」、「核酸断片」、および「単離核酸断片」という用語は、本明細書において同義的に使用される。これらの用語は、ヌクレオチド配列などを包含する。ポリヌクレオチドは、合成、非天然または改変ヌクレオチド塩基を任意選択的に含有する、一本鎖または二本鎖のRNAまたはDNAのポリマーであってもよい。DNAポリマーの形態のポリヌクレオチドは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、またはそれらの混合物の1つ以上のセグメントを含んでなってもよい。ヌクレオチド(通常それらの5’一リン酸の形態で見られる)は、次のような一文字名によって言及される。「A」はアデニル酸またはデオキシアデニル酸(それぞれRNAまたはDNA)、「C」はシチジル酸またはデオキシシチジル酸、「G」はグアニル酸またはデオキシグアニル酸、「U」はウリジル酸、「T」はデオキシチミジル酸、「R」はプリン(AまたはG)、「Y」はピリミジン(CまたはT)、「K」はGまたはT、「H」はAまたはCまたはT、「I」はイノシン、および「N」は任意のヌクレオチドである。
【0070】
アミノ酸またはヌクレオチド配列の「かなりの部分」とは、当業者による配列の手動評価、またはBLAST(Basic Local Alignment Search Tool;Altschul,S.F.,et al.,J.Mol.Biol.,215:403−410(1993))などのアルゴリズムを使用したコンピュータ自動化配列比較および同定のいずれかによって、そのポリペプチドまたは遺伝子を推定的に同定するのに十分な、ポリペプチドのアミノ酸配列または遺伝子のヌクレオチド配列を含んでなる部分である。一般に、ポリペプチドまたは核酸配列が、既知のタンパク質または遺伝子と相同的であると推定的に同定するために、10個以上の隣接するアミノ酸または30個以上のヌクレオチドの配列が必要である。さらにヌクレオチド配列に関して、配列依存性の遺伝子同定法(例えばサザンハイブリダイゼーション)および単離法(例えば細菌コロニーまたはバクテリオファージプラークの原位置ハイブリダイゼーション)中で、20〜30個の隣接ヌクレオチドを含んでなる遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブを使用してもよい。これに加えて、プライマーを含んでなる特定の核酸断片を得るために、12〜15個の塩基の短鎖オリゴヌクレオチドをPCRの増幅プライマーとして使用してもよい。したがってヌクレオチド配列の「かなりの部分」は、配列を構成する核酸断片を明確に同定および/または分離するのに十分な配列を含んでなる。本明細書の開示は、特定のエロンガーゼをコードする、完全長アミノ酸およびヌクレオチド配列を教示する。当業者は、本明細書で報告される配列の便益を有して、当業者に知られている目的のために、開示される配列の全てまたはかなりの部分を使用できる。したがって添付の配列一覧に報告される完全な配列、ならびに上で定義されるこれらの配列のかなりの部分は、本開示に包含される。
【0071】
「相補的」という用語は、互いにハイブリダイズできるヌクレオチド塩基間の関係性を記述するために使用される。例えばDNAに関して、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。したがって添付の配列一覧に報告される完全な配列に相補的な単離された核酸断片、ならびに実質的に同様の核酸配列は本開示に包含される。
【0072】
「相同性」、「相同的」、「実質的に同様」、および「実質的に相当する」という用語は、本明細書において同義的に使用される。それらは、類似しているが同一でない配列を有する、核酸断片またはポリペプチドを指す。これらの用語は、時に、最初の未修飾断片と比較して、得られた核酸断片の機能特性を実質的に変化させない、(例えば1つまたは複数のヌクレオチドの欠失または挿入を介した)核酸断片の修飾もまた指す。したがって当業者は、本発明が特定の例示的な配列以上のものを包含することを理解するであろう。
【0073】
核酸またはポリペプチド配列の文脈において「配列同一性」または「同一性」は、特定の比較ウィンドウ間で最大一致のために整列させると同じになる、2つの配列中の核酸塩基またはアミノ酸残基を指す。
【0074】
したがって「配列同一性百分率」または「%同一性」は、比較ウィンドウ間で最適に整列させた2つの配列を比較して判定される値を指し、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、2配列の最適配列比較のために、(付加または欠失を含まない)基準配列との比較で、付加または欠失(すなわちギャップ)を含んでなってもよい。百分率は、双方の配列内で同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が存在する位置数を判定して、一致する位置数を得て、一致する位置数を比較ウィンドウ内の総位置数で除して、結果に100を乗じて同一性百分率を得て、計算される。
【0075】
「%同一性」および「%類似性」を判定する方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラムで体系化されている。「%同一性」および「%類似性」は、1)Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,Ed.)Oxford University:NY(1988);2)Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,Ed.)Academic:NY(1993);3)Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,Eds.)Humania:NJ(1994);4)Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,Ed.)Academic(1987);および5)Sequence Analysis Primer(Gribskov,M.and Devereux,J.,Eds.)Stockton:NY(1991)に記載されるものをはじめとするが、これに限定されるものではない公知の方法によって容易に計算され得る。
【0076】
配列アラインメントおよび%同一性または類似性の計算は、LASERGENEバイオインフォマティクス演算スイートのMegAlign(商標)プログラム(DNASTAR Inc.,Madison,WI)をはじめとするが、これに限定されるものではない、相同的な配列を検出するようにデザインされた多様な比較法を使用して判定されてもよい。配列の多重アラインメントは、「アラインメントのClustal V法」および「アラインメントのClustal W法」をはじめとする、アルゴリズムのいくつかの変種を包含する「アラインメントのClustal法」を使用して実施される(Higgins and Sharp,CABIOS,5:151−153(1989);Higgins,D.G.et al.,Comput.Appl.Biosci.,8:189−191(1992)により記載され、MegAlign(商標)(バージョン8.0.2)プログラム(LASERGENEバイオインフォマティクス演算スイート(DNASTAR Inc.))にある)。いずれかのClustalプログラムを使用した配列のアラインメント後、プログラムの「配列距離」表を見ることで「%同一性」を得ることが可能である。
【0077】
アラインメントのClustal V法を使用した多重アラインメントでは、デフォルト値は、GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=10に相当する。Clustal V法を使用したタンパク質配列のペアワイズ配列比較および%同一性計算のデフォルトパラメーターは、KTUPLE=1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5、およびDIAGONALS SAVED=5である。核酸ではこれらのパラメーターは、KTUPLE=2、GAP PENALTY=5、WINDOW=4、およびDIAGONALS SAVED=4である。
【0078】
アラインメントのClustal W法を使用した多重アラインメントのデフォルトパラメーターは、GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=0.2、Delay Divergent Seqs(%)=30、DNA Transition Weight=0.5、Protein Weight Matrix=Gonnet Series、DNA Weight Matrix=IUBに相当する。
【0079】
「配列比較のBLASTN法」が、デフォルトパラメーターを使用してヌクレオチド配列を比較する、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)が提供するアルゴリズムである一方、「BLASTPアラインメント法」は、デフォルトパラメーターを使用してタンパク質配列を比較する、NCBIによって提供されるアルゴリズムである。
【0080】
その他の種から同一または同様の機能または活性を有するポリペプチドを同定する上で、多くのレベルの配列同一性が有用であることを当業者は良く理解している。適切な核酸断片、すなわち本明細書の開示に従った単離されたポリヌクレオチドが、本明細書で報告されるアミノ酸配列と少なくとも約70〜85%同一のポリペプチドをコードする一方、より好ましい核酸断片は少なくとも約85〜95%同一のアミノ酸配列をコードする。好ましい範囲は上述のようであるが、%同一性の有用な例としては、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%などの70%〜100%のあらゆる整数百分率が挙げられる。またこの単離されたヌクレオチド断片のあらゆる全長または部分的補体も興味深い。
【0081】
適切な核酸断片は上の相同性を有するだけでなく、典型的に少なくとも50個のアミノ酸、好ましくは少なくとも100個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも150個のアミノ酸、なおもより好ましくは少なくとも200個のアミノ酸、最も好ましくは少なくとも250個のアミノ酸を有するポリペプチドをコードする。
【0082】
「コドン縮重」とは、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列に影響を及ぼさないヌクレオチド配列のバリエーションを可能にする、遺伝子コードの性質を指す。したがって本明細書に記載されるのは、EgD9eS−L35F(配列番号29)、EgD9eS−K58R/I257T(配列番号32)、EgD9eS−L130M/V243A(配列番号35)、EgD9eS−D98G(配列番号38)、EgD9eS−L130M/V243A(配列番号41)、EgD9eS−L35G(配列番号59)、EgD9eS−L35M/Q107E(配列番号62)、EgD9eS−A21V/L35G/L108G/I179R(配列番号87)、EgD9eS−L35G/W132T/I179R(配列番号101)、EgD9eS−L35G/S9D/Y84C/I179R(配列番号104)、EgD9eS−L35G/Y84C/I179R/Q244N(配列番号107)、EgD9eS−L35G/A21V/W132T/I179R/Q244N(配列番号110)、およびEgD9eS−変異体コンセンサス(配列番号22)に記載の当該Δ9エロンガーゼポリペプチドをコードする、アミノ酸配列の全部またはかなりの部分をコードするあらゆる核酸断片である。当業者は、所定のアミノ酸を特定するヌクレオチドコドン使用における、特定の宿主細胞によって示される「コドンバイアス」について良く知っている。したがって宿主細胞中の改善された発現のために遺伝子を合成する場合、そのコドン使用頻度が、宿主細胞の好むコドン使用頻度に近くなるように遺伝子をデザインすることが望ましい。
【0083】
「合成遺伝子」は、当業者に知られている手順を使用して、化学的に合成されたオリゴヌクレオチド構成単位から組み立て得る。これらのオリゴヌクレオチド構成単位はアニールされ、次にライゲートされて遺伝子セグメントを形成し、それは次に酵素的にアセンブリーされて遺伝子全体が構築される。したがって遺伝子は、宿主細胞のコドンバイアスを反映するヌクレオチド配列の最適化に基づいて、最適遺伝子発現のために調整し得る。当業者は、宿主によって好まれるにコドンに向けて、コドン使用頻度を偏らせた場合の成功裏の遺伝子発現の可能性を認識する。好ましいコドンの判定は、配列情報が利用できる宿主細胞に由来する遺伝子の調査に基づき得る。例えばヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)のコドン使用頻度プロフィールは、米国特許第7,125,672号明細書に提供される。
【0084】
「遺伝子」とは、特異的タンパク質を発現する核酸断片を指し、それはコード領域のみを指してもよく、またはコード領域の上流および/または下流の調節配列(例えばコード領域の転写開始部位である上流の5’非翻訳領域、3’非コード領域)を含んでもよい。「天然遺伝子」とは、それ自体の制御配列と共に天然に見られる遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」とは、自然界では一緒に見られない調節およびコード配列を含んでなる、天然遺伝子でないあらゆる遺伝子を指す。したがって、キメラ遺伝子は、異なる起源に由来する調節配列およびコード配列、または同じ起源に由来するが、天然に見られるのとは異なる様式で配列された調節配列およびコード配列を含んでなってもよい。「内在性遺伝子」とは、生物のゲノム中のその自然な位置にある天然遺伝子を指す。「外来性」遺伝子とは、遺伝子移入によって宿主生物に導入された遺伝子を指す。外来性遺伝子は、非天然生物中に挿入された天然遺伝子、天然宿主内の新たな位置に導入された天然遺伝子、またはキメラ遺伝子を構成し得る。「導入遺伝子」は、形質転換手順によってゲノムに導入された遺伝子である。「コドン最適化遺伝子」は、宿主細胞の好むコドン使用頻度を模倣するように、そのコドン使用頻度がデザインされている遺伝子である。
【0085】
「コード配列」とは、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。「調節配列」は、コード配列の転写開始部位上流に位置するヌクレオチド配列、5’非翻訳領域および3’非コード領域を指し、それらは関連するコード配列の転写、RNAプロセシングまたは安定性、または翻訳に影響を及ぼすこともある。調節配列としては、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、5’非翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、作動体結合部位、およびステムループ構造が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0086】
「プロモーター」という用語は、コード配列または機能性RNAの発現を制御できるDNA配列を指す。一般にプロモーター配列は、コード配列の5’上流に位置する。プロモーターはその全体が天然遺伝子に由来してもよく、または自然界に見られる異なるプロモーターに由来する異なる要素から構成されてもよく、または合成DNAセグメントを含んでなってさえよい。当業者は、異なる組織または細胞タイプにおいて、または異なる細胞増殖および/または発達段階において、または異なる環境条件に答えて、異なるプロモーターが遺伝子の発現を指示してもよいことを理解する。発達のほぼ全ての段階で遺伝子の発現を引き起こすプロモーターは、一般に「構成的プロモーター」と称される。ほとんどの場合、制御配列の正確な境界は(特にそれらの5’末端で)完全に定義されていないので、いくらかの変動があるDNA断片が、同一プロモーター活性を有してもよいことがさらに認識される。
【0087】
「3’非コード配列」、「転写ターミネーター」、「ターミネーター」、および「終結配列」という用語は、コード配列の3’下流に位置するDNA配列を指す。これは、ポリアデニル化認識配列と、mRNAプロセッシングまたは遺伝子発現に影響を及ぼすことができる調節シグナルをコードするその他の配列とを含む。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸トラクトの付加に影響を及ぼすことで特徴付けられる。3’領域は、関連するコード配列の転写、RNAプロセシングまたは安定性、または翻訳に影響し得る。
【0088】
「RNA転写物」とは、RNAポリメラーゼが触媒する、DNA配列転写から得られる生成物を指す。RNA転写物がDNA配列の完璧な相補コピーである場合、それは一次転写産物と称される。RNA転写物は、それが一次転写産物の転写後プロセッシングに由来するRNA配列である場合に、成熟RNAと称される。「メッセンジャーRNA」または「mRNA」とは、イントロンがなく、細胞によってタンパク質に翻訳されるRNAを指す。「cDNA」とは、mRNAテンプレートに相補的であり、逆転写酵素を使用してそれから合成されるDNAを指す。cDNAは一本鎖であり得て、またはDNAポリメラーゼIのクレノウ(Klenow)断片を使用して、二本鎖形態に変換され得る。「センス」RNAとは、mRNAを含んで、細胞内または生体外でタンパク質に翻訳され得るRNA転写物を指す。「アンチセンスRNA」とは、標的一次転写産物またはmRNAの全部または一部に相補的で、標的遺伝子の発現をブロックするRNA転写物を指す(米国特許第5,107,065号明細書)。
【0089】
「作動的に結合する」という用語は、一方の機能が他方の機能によって影響される、単一核酸断片上の核酸配列のつながりを指す。例えばプロモーターは、コード配列の発現に影響できる場合、そのコード配列と作動的に結合し、すなわちコード配列はプロモーターの転写調節下にある。コード配列は、センスまたはアンチセンス方向で制御配列に作動的に結合し得る。
【0090】
「組み換え」という用語は、例えば化学合成による、または遺伝子操作技術を通じた核酸の単離セグメントの操作による、2つのさもなければ分離した配列セグメントの人為的組み合わせを指す。
【0091】
「発現」という用語は、本明細書での用法では、センス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定した蓄積を指す。発現はまた、mRNAの(前駆型または成熟型いずれかの)タンパク質への翻訳も含む。
【0092】
「形質転換」とは、遺伝的に安定した遺伝形質をもたらす、宿主生物または宿主生物中への核酸分子の転移を指す。核酸分子は、例えば自律的に複製するプラスミドであってもよく、またはそれは宿主生物のゲノムに組み込まれてもよい。形質転換核酸断片を含有する宿主生物は、「組換え」または「リコンビナント」または「形質転換」または「形質転換体」生物と称される。
【0093】
「プラスミド」および「ベクター」という用語は、細胞の中央代謝の一部ではない遺伝子を保有することが多く、通常は環状二本鎖DNA断片の形態である染色体外要素を指す。このような要素は、あらゆる起源に由来する、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAの直線または環状であってもよい、自己複製配列、ゲノム組み込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列を有してもよく、その中ではいくつかのヌクレオチド配列が結合しまたは組み換えされて、細胞に発現カセットを導入できるユニークな構造になる。
【0094】
「発現カセット」という用語は、外来遺伝子を含有し、異種宿主中でその遺伝子の発現ができるようにする要素を外来遺伝子に加えて有する、DNA断片を指す。一般に発現カセットは、選択された遺伝子のコード配列と、選択された遺伝子産物の発現に必要である、コード配列に先行する(5’非コード配列)および後続の(3’非コード配列)制御配列とを含んでなる。したがって発現カセットは、典型的に、1)プロモーター配列;2)コード配列(すなわちORF);および3)真核生物中では通常、ポリアデニル化部位を含有するターミネーターから構成される。発現カセットは通常はベクター内に含めて、クローニングおよび形質転換を容易にする。各宿主に対する妥当な制御配列を使用しさえすれば、異なる発現カセットを細菌、酵母、植物、および哺乳類細胞をはじめとする異なる生物に形質転換できる。
【0095】
「組換えコンストラクト」、「発現コンストラクト」、「キメラコンストラクト」、「コンストラクト」、および「組換えDNAコンストラクト」という用語は、本明細書において同義的に使用される。組換えコンストラクトは、例えば自然界では一緒に見られない調節およびコード配列などの核酸断片の人工的組み合わせを含んでなる。例えば、組換えDNAは、異なる起源に由来する調節配列およびコード配列、または同じ起源に由来するが、天然に見られるのとは異なる様式で配列された調節配列およびコード配列を含んでなってもよい。このようなコンストラクトは、単独で使用されてもよく、またはベクターと併せて使用されてもよい。ベクターが使用される場合、当業者に良く知られているように、ベクターの選択は、宿主細胞を形質転換するのに使用される方法に左右される。例えばプラスミドベクターを使用し得る。当業者は、本明細書に記載される単離核酸断片のいずれかを含んでなる宿主細胞を成功裏に形質転換し、選択して増殖するために、ベクター上に存在しなくてはならない遺伝要素を十分承知している。当業者はまた、異なる独立した形質転換事象が、異なるレベルとパターンの発現をもたらすことを認識し(Jones et al.,EMBO J.,4:2411−2418(1985);De Almeida et al.,Mol.Gen.Genetics,218:78−86(1989))、したがって所望の発現レベルとパターンを呈する株または系統を得るために、複数事象をスクリーニングしなくてはならないこともまた認識する。このようなスクリーニングは、特にDNAのサザン分析、mRNA発現のノーザン分析、タンパク質発現のウエスタン分析および/またはElisa分析、特定生成物の形成、表現型分析、またはPUFA生成物のGC分析によって達成されてもよい。
【0096】
「宿主細胞」および「宿主生物」という用語は、本明細書において同義的に使用され、外来性または異種遺伝子を受け入れることができ、これらの遺伝子を発現できる微生物または植物(すなわち油料種子植物)などのあらゆる生物を指す。「組換え宿主細胞」とは、組換え遺伝子操作されている宿主細胞を指す。
【0097】
「配列分析ソフトウェア」という用語は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の分析に有用なあらゆるコンピュータアルゴリズム、またはソフトウェアプログラムを指す。「配列分析ソフトウェア」は市販されることもあり、または独立して開発されることもある。典型的な配列分析ソフトウェアとしては、1)プログラムのGCGスイート(Wisconsin Package Version 9.0,Genetics Computer Group(GCG),Madison,WI);2)BLASTP,BLASTN,BLASTX(Altschul et al.,J.Mol.Biol.,215:403−410(1990));3)DNASTAR(DNASTAR,Inc.Madison,WI);4)Sequencher(Gene Codes Corporation,Ann Arbor,MI);および5)Smith−Watermanアルゴリズムを組み込んだFASTAプログラム(W.R.Pearson,Comput.Methods Genome Res.,[Proc.Int.Symp.](1994),Meeting Date 1992,111−20.Editor(s):Suhai,Sandor.Plenum:New York,NY)が挙げられるが、これに限定されるものではない。特に断りのない限り、本説明中で分析のために配列分析ソフトウェアが使用される場合はいつでも、分析結果は、言及されるプログラムの「デフォルト値」に基づく。本明細書での用法では「デフォルト値」とは、ソフトウェアを初期化した際に、初めからロードされる値またはパラメーターのあらゆる組を意味する。
【0098】
本明細書で使用される標準組換えDNAおよび分子クローニング技術は、当該技術分野で周知であり、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.MolecularCloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1989);Silhavy,T.J.,Bennan,M.L.and Enquist,L.W.,Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1984);およびAusubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscience,Hoboken,NJ(1987)による出版によって、より詳しく記載される。
【0099】
健康に良いPUFA製造のため生化学的経路を操作するために使用してもよい、新しい変異Δ9エロンガーゼ酵素および同酵素をコードする遺伝子が、本明細書で開示される。
【0100】
図5Aおよび5Bは組み合わさって、特定ω−3/ω−6脂肪酸を生成するための複数の代わりの経路を記載する。全ての経路は、オレイン酸がΔ12デサチュラーによって、第1のω−6脂肪酸であるリノール酸[「LA」]に最初に変換されることを要する。次に「Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路」および基質としてLAを使用して、長鎖ω−6脂肪酸が次のように形成される。1)LAがΔ9エロンガーゼによってエイコサジエン酸[「EDA」]に変換され;2)EDAがΔ8デサチュラーゼによってジホモ−γ−リノレン酸[「DGLA」]に変換され;3)DGLAがΔ5デサチュラーゼによってアラキドン酸[「ARA」]に変換され;4)ARAがC20/22エロンガーゼによってドコサテトラエン酸[「DTA」]に変換され;5)DTAがΔ4デサチュラーゼによってドコサペンタエン酸[「DPAn−6」]に変換される。
【0101】
「Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路」はまた、基質としてα−リノレン酸[「ALA」]を使用して、長鎖ω−3脂肪酸を次のように生成し得る。1)LAがΔ15デサチュラーゼによって第1のω−3脂肪酸ALAに変換され;2)ALAがΔ9エロンガーゼによってエイコサトリエン酸[「ETrA」]に変換され;3)ETrAがΔ8デサチュラーゼによってエイコサテトラエン酸[「ETA」]に変換され;4)ETAがΔ5デサチュラーゼによってエイコサペンタエン酸[「EPA」]に変換され;5)EPAがC20/22エロンガーゼによってドコサペンタエン酸[「DPA」]に変換され;6)DPAがΔ4デサチュラーゼによってドコサヘキサエン酸[「DHA」]に変換される。任意選択的に、ω−6脂肪酸がω−3脂肪酸に変換されてもよい。例えばETAおよびEPAはΔ17デサチュラーゼ活性によって、それぞれDGLAおよびARAから生成される。
【0102】
ω−3/ω−6脂肪酸生合成の代わりの経路は、Δ6デサチュラーゼおよびC18/20エロンガーゼを利用し、すなわち「Δ6デサチュラーゼ/Δ6エロンガーゼ経路」である。より具体的には、Δ6デサチュラーゼによって、LAおよびALAがそれぞれGLAおよびステアリドン酸[「STA」]に変換されてもよく、次にC18/20エロンガーゼが、GLAをDGLAにおよび/またはSTAをETAに変換する。引き続いて上述のように、下流PUFAが形成される。
【0103】
生物がω−3/ω−6脂肪酸を生成する能力を可能にし、または強化するために、特定の宿主生物中に導入される必要がある特定の機能性は、宿主細胞(およびその天然PUFAプロフィールおよび/またはデサチュラーゼ/エロンガーゼプロフィール)、基質可用性、および所望の最終産物に左右されることが考察される。これらの考察、ならびにデサチュラーゼおよびエロンガーゼ酵素(例えばΔ6デサチュラーゼ、C18/20エロンガーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ17デサチュラーゼ、Δ15デサチュラーゼ、Δ9デサチ
ュラーゼ、Δ12デサチュラーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、Δ9エロンガーゼ、Δ8デサチュラーゼ、Δ4デサチュラーゼ、およびC20/22エロンガーゼ)をコードする特定遺伝子の同定と選択に影響を及ぼす要素の論考は、米国特許第7,238,482号明細書および米国特許第7,932,077号明細書にある。
【0104】
しかし本明細書の発明に特に関連性がある一態様は、特定の宿主生物中で発現される、特定の各デサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼの変換効率である。より具体的には、各酵素が基質を生成物に変換する際に100%の効率で機能することは稀なので、宿主細胞中で生成する未精製油の最終脂質プロフィールは、典型的に所望のω−3/ω−6脂肪酸、ならびに様々な上流の中間PUFAからなる様々なPUFAの混合物である。したがって所望の脂肪酸の生合成を最適化する際に、各酵素の変換効率が考察されることが多い。
【0105】
生物中で、(飽和および不飽和脂肪酸および短鎖および長鎖脂肪酸をはじめとする)脂肪酸が合成されると、それらはTAGに組み込まれてもよい。TAGは、脂肪酸の主要貯蔵単位である。
【0106】
所有者が共通の米国特許出願公開第2007−0118929−A1号明細書および米国特許第7,645,604号明細書の双方が、LAをEDAに伸長できるミドリムシ(Euglena gracilis)Δ9エロンガーゼ(「EgD9e」;本明細書の配列番号7および8)を開示する。さらにヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中での発現のためにコドン最適化された、ミドリムシ(E.gracilis)に由来する合成Δ9エロンガーゼも米国特許第7,645,604号明細書で開示されている(「EgD9eS」;本明細書の配列番号9および10)。具体的には、翻訳開始部位の修正に加えて、777bpのコード領域の内117bp(15.1%)が修飾されて106個のコドンが最適化される(それにもかかわらずコドン最適化遺伝子[すなわち配列番号10]によってコードされるタンパク質配列は、野生型タンパク質配列[すなわち配列番号8]と同一である)。EgD9eSは、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)中で発現した際に、LAからEDAへの伸長において、野生型EgD9eよりも約16.2%さらに効率的であると判定された。
【0107】
配列を合成し配列を共にまとめる方法は、文献で確立されている。そして多数の技術が一般に用いられて、天然遺伝子の変異が得られる(このような変異としては、欠失、挿入、および点変異、またはそれらの組み合わせが挙げられる)。本研究は、油性酵母ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中で酵素が発現した際に、そのLAからEDAへの変換効率を増大させる、EgD9eS内の適切な変異を同定する目的で行われた。変換効率の増大は、PUFA生合成の全体的な速度と量を増大させる手段として望ましい。多様な変異が本明細書に記載され;上に記載される野生型(すなわち配列番号8)および合成コドン最適化(配列番号10)Δ9エロンガーゼに由来する、このような全ての変異タンパク質およびそれらをコードするヌクレオチド配列は、本発明の範囲内である。
【0108】
Δ9エロンガーゼは、いくつかの保存された配列(図1;すなわち配列番号15〜21)を含有するが、これらのモチーフの1つの一部のみが、最適酵素機能におけるその役割を判定するために、以前研究されている。具体的には、Qi,B.,et al.(FEBSLett.,547:137−139(2003))は、Δ9エロンガーゼ活性があると同定された最初のPUFA特異的エロンガーゼである、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)Δ9エロンガーゼ[「IgD9e」]の変種ヒスチジンボックス[「His−box」]を調べた。IgD9eは、Δ6エロンガーゼ中に存在する高度に保存されたHis−Xaa−Xaa−His−His[「HxxHH」;配列番号24]モチーフの代わりに、Gln−Xaa−Xaa−His−His[「QxxHH」;配列番号23]モチーフを有する唯一の既知のPUFA特異的エロンガーゼ(当時)であったので、一連の変異が実施されて、Glnが、His、AlaまたはPhe残基に置き換えられ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)中で発現した際の活性について、変異タンパク質がアッセイされた。Qi et al.は、全ての置換がΔ9エロンガーゼ活性の低下をもたらすと判定し、したがって「ヒスチジンボックス中のグルタミン残基は、最適の酵素触媒作用に必須のようである」と結論付けた。
【0109】
上の唯一の研究と、Δ9エロンガーゼからのいかなる結晶構造も欠如していることに基づき、Δ9エロンガーゼ内の適切な変異を同定する合理的な標的化アプローチは理想的でなかった。キメラFBAINm::EgD9eS::Pex20遺伝子を含んでなるプラスミドコンストラクト内に含有されるEgD9eS(配列番号9)をテンプレートとして使用して、誤りがちなPCR[「ePCR」]によって、Δ9エロンガーゼをコードする変異体配列のライブラリーを合成的に設計した。次にePCRライブラリーをヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に形質転換して、GC分析およびEDA生成に基づいて、Δ9エロンガーゼ活性の改善についてスクリーニングした。
【0110】
完全に非機能的な変異Δ9エロンガーゼ(すなわち検出可能なΔ9エロンガーゼ活性を有さない)、または非変異野生型酵素EgD9eSと比較して実質的に低下したΔ9エロンガーゼ活性を有する変異Δ9エロンガーゼをもたらす、多数のクローンが同定された。しかし驚くことに、LAからEDAへの変換効率[([EDA]/[LA+EDA])100として計算される]の改善をもたらす、様々な変異が同定された。具体的には、4つの異なる変異Δ9エロンガーゼ遺伝子を含んでなる(すなわちEgD9eS[配列番号10]のタンパク質配列と比べて、それぞれK58R/I257T変異、L35F変異、D98G変異、およびL130M/V243A変異を含んでなる)、5つの形質転換株が同定され、Δ9エロンガーゼ変換活性は105%〜117%の範囲であり(表3、後述)、5〜17%の改善に相当した。したがってこの研究は、EgD9eSのΔ9エロンガーゼ活性が、タンパク質工学によって実際に改善され得ることを実証した。
【0111】
次に、上のEgD9eS ePCRライブラリーから得られる最初のデータを利用して、部位飽和ライブラリー作成の標的とするのに適する、EgD9eS内の2つの異なるアミノ酸残基(すなわち残基35および107)を合理的に同定した。この場合もやはり、得られた変異EgD9eSタンパク質のΔ9エロンガーゼ活性に対する各変異の効果をスクリーニングし、このようにしてLAからEDAへの変換効率の改善をもたらす2つの追加的な変異を同定できるようにした。具体的には、変異Δ9エロンガーゼ内にL35G変異またはL35M/Q107E変異のいずれかを含んでなる形質転換株が同定され、Δ9エロンガーゼ変換活性は、EgD9eS(表3、後述)と比較して142%〜145%または132%のいずれかであり、32〜45%の改善に相当した。
【0112】
L35G変異の同定に続いて、SlonoMax(登録商標)技術および標的としてEgD9eS−L35G遺伝子を使用して、50個の異なるアミノ酸残基を標的にする引き続くライブラリーを作成した。それぞれL35G変異と組み合わさった25個の異なる変異が同定され、親エロンガーゼ、すなわちEgD9eS−L35G(表3、後述)と比べて、96%〜141%のΔ9エロンガーゼ変換活性をもたらし−4%〜41%の改善に相当した。
【0113】
最後に、最近の研究は、SlonoMax(登録商標)ライブラリー内で同定された複数の有益な変異を組み合わせ(または「スタック」し)、それによって合成コドン最適化EgD9eS配列内の適切な個々のアミノ酸変異を「スタック」することを試みている。このようにして、例えば配列番号10[EgD9eS]と比較して、A21V、L35G、W132T、I179R、およびQ244N変異を含んでなる変異Δ9エロンガーゼは、EgD9eS(表3、後述)と比較して、123%のΔ9エロンガーゼ変換活性をもたらすことが実証されており、23%の改善に相当する。
【0114】
【表7】
【0115】
本発明の有用な変異Δ9エロンガーゼが、上述の37個の変異の組み合わせに限定されないことは、当業者によって理解されるであろう。それよりむしろ、上の保存的および非保存的アミノ酸置換(すなわち変異)の多くは、互いにあらゆる組み合わせで使用されることが検討される。そして本明細書に記載されるEgD9eおよび/またはEgD9eSに由来する、このような全ての変異タンパク質およびそれらをコードするヌクレオチド配列は、本発明の範囲内である。
【0116】
例えば本研究で適用される実験戦略は、概して、EgD9eS−L35G中に「スタック」されて、合成コドン最適化EgD9eSまたはEgD9eS−L35Gと比べて、Δ9エロンガーゼ変換効率にさらなる利点を与え得る、追加的な保存的および非保存的アミノ酸置換を同定することに基づいている。EgD9eSと比較して、2つの変異を含んでなる多様な変異Δ9エロンガーゼが同定されたが、EgD9eSと比較してそれぞれ3〜5個の変異を有する5つの変異体のみが、コンビナトリアルライブラリーから特性解析されている。EgD9eSまたはEgD9eS−L35Gのいずれかと比較して、少なくともほぼ機能的に同等の活性または改善されたΔ9エロンガーゼ変換効率を有し、EgD9eSと比較して2、3、4、5、6個以上の変異を有する、様々なその他の変異体を同定し得ることが予測される。
【0117】
代案としては、当業者は、例えばEgD9eS−D98Gを(すなわちEgD9eS−L35Gの代わりに)テンプレートとして容易に使用して、K58R、L35F、L35G、L35M、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、Q107E、L108G、G127L、L130M、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、V243A、Q244N、A254W、A254Y、およびI257Tからなる群から選択されるいずれの変異が有利に「スタック」され得て、それによってEgD9eSと比較して、2、3、4、5、6個以上の変異がある最終変異Δ9エロンガーゼをもたらすかを判定し得る。
【0118】
したがって、一実施形態では本発明は、
a)Δ9エロンガーゼ活性を有する変異ポリペプチドをコードして、
i)L35F変異;
ii)L35M変異;
iii)L35G変異;
iv)L35G変異と、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、Q107E、L108G、G127L、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、Q244N、A254W、およびA254Yからなる群から選択される、少なくとも1つのその他の変異;
v)L35G、A21V、L108G、およびI179R変異;
vi)L35G、W132T、およびI179変異;
vii)L35G、S9D、Y84C、およびI179R変異;
viii)L35G、Y84C、I179R、およびQ244N変異;
ix)L35G、A21V、W132T、I179R、およびQ244N変異;
x)K58RおよびI257T変異;
xi)D98G変異;
xii)L130MおよびV243A変異;および
xiii)K58R、L35F、L35G、L35M、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、D98G、Q107E、L108G、G127L、L130M、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、V243A、Q244N、A254W、A254Y、およびI257Tからなる群から選択される少なくとも2つの変異を含んでなるあらゆる組み合わせ
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸変異によって配列番号10と異なる、配列番号22に記載のアミノ酸配列を有するヌクレオチド配列;および
b)同数のヌクレオチドからなり100%相補的である、パート(a)のヌクレオチド配列の補体
を含んでなる、図4Bに表される単離ポリヌクレオチドに関する。
【0119】
いくつかの実施形態では、本明細書の発明の変異ポリペプチドは、配列番号29、配列番号32、配列番号35、配列番号38、配列番号41、配列番号59、配列番号62、配列番号87、配列番号101、配列番号104、配列番号107、および配列番号110からなる群から選択されるタンパク質配列を有してもよいが、これらの例は本明細書の発明を限定しない。
【0120】
本発明の変異ポリペプチドを生成するのに使用される手順、または本発明の変異ポリペプチドを同定するのに使用される手順のどちらも、本明細書を限定すると見なされない。
【0121】
例えば生体外変異誘発と選択または誤りがちなPCR(Leung et al.,Techniques,1:11−15(1989);Zhou et al.,Nucleic Acids Res.,19:6052−6052(1991);Spee et al.,Nucleic Acids Res.,21:777−778(1993);Melnikov et al.,Nucleic Acids Res.,27(4):1056−1062(February 15,1999))を天然Δ9エロンガーゼ遺伝子の変異を得る手段として用い得て、変異としては、欠失、挿入、および点変異、またはそれらの組み合わせが挙げられる。誤りがちなPCRの主な利点は、この方法によって導入される全ての変異が所望のエロンガーゼ遺伝子内にあり、PCR条件を変更することであらゆる変更を容易に制御してもよいことである。代案としては、Stratagene(La Jolla,CA)からの大腸菌(E.coli)XL1−Red株およびEpicurian coli XL1−Red mutator株などの市販材料を使用した生体内変異誘発を用いてもよい(Greener and Callahan,Strategies,7:32−34(1994)もまた参照されたい)。この株は主要DNA修復経路の内3つ(mutS、mutD、およびmutT)が欠損しており、野生型より5000倍高い変異率がもたらされる。生体内変異誘発は(誤りがちなPCRと同様に)ライゲーション効率に依存しない;しかし変異はベクターのあらゆる領域で起きてもよく、変異率は一般にはるかにより低い。
【0122】
「遺伝子シャフリング」法(米国特許第5,605,793号明細書;米国特許第5,811,238号明細書、米国特許第5,830,721号明細書、および米国特許第5,837,458号明細書)を使用して、Δ9エロンガーゼ活性が改変または強化された変異Δ9エロンガーゼを構築してもよいこともまた考察される。遺伝子シャフリング法は、その容易な実施、および高い変異誘発率のために特に魅力的である。遺伝子シャフリングのプロセスは、対象の遺伝子との類似性(または相違性)があるDNA領域の追加的集団存在下で、対象の遺伝子を制限酵素で切断して特定サイズ断片にすることを伴う。この断片のプールを変性させ、再アニールして変異遺伝子を作り出す。次に変異遺伝子を活性変化についてスクリーニングする。これらの方法のいずれかを使用して、活性が改善されたΔ9エロンガーゼ変異酵素を作成してもよい。
【0123】
代わりに、当業者は、Δ9エロンガーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を選択するための追加的なスクリーニングを予見し得る。例えばエロンガーゼ活性は、酵素含有調製品を適切な形態の基質脂肪酸と共にインキュベートし、この基質の予測された脂肪酸生成物への変換について分析するアッセイによって実証されてもよい。代案としては、エロンガーゼタンパク質をコードすることが提案されるDNA配列を適切なベクターコンストラクトに組み込んで、それによって、常態では特定の脂肪酸基質を伸長する能力を有さないタイプの細胞中で、発現させてもよい。次に、エロンガーゼをコードするDNA配列を含有するベクターで形質転換された細胞に、そして(例えば空ベクターのみで形質転換された)適切な対照細胞に、適切な形態の基質脂肪酸を提供することにより、DNA配列によってコードされるエロンガーゼの活性を実証し得る。このような実験において、エロンガーゼをコードするDNA配列を含有する細胞中の予測された脂肪酸生成物の検出、および対照細胞中の非検出は、エロンガーゼ活性を確立する。
【0124】
当業者は、有用な変異Δ9エロンガーゼが上述の変異に限定されるものではないことを理解するであろう。それよりむしろ、結果は、多様な代わりのΔ9エロンガーゼを親(すなわち異なる属、種などからの)として使用して、同様の実験を実施し、それによってΔ9エロンガーゼ活性の増大を有する様々な変異Δ9エロンガーゼを操作し得ることを示唆する。好ましくは変異誘発されるΔ9エロンガーゼは、米国特許第7,645,604号明細書で述べられる、配列番号15、16、17、18、19、20、および21に記載の7つのΔ9エロンガーゼモチーフの少なくとも1つを含んでなる。適切な親Δ9エロンガーゼは、EgD9eSと少なくとも約35%〜50%同一である見込みが高く、少なくとも約50%〜65%同一の配列が特に適切であり、少なくとも約65%〜80%同一の配列が最も望ましい。好ましい範囲は上述のようであるが、パーセント配列同一性の有用な例としては、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%などの35%〜100%のあらゆる整数百分率が挙げられる。Δ9エロンガーゼ活性の増大を有する突然変異酵素は、ω−3/ω−6脂肪酸の生成増大を可能にする上で、有用たり得ることが理解されるであろう。
【0125】
例えばミドリムシ(E.gracilis)で観察されたのと同様に、遺伝子が変異耐容性である可能性が高いことから、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)のΔ9エロンガーゼ(すなわちIgD9e[配列番号2];EgD9eSと約35%の配列同一性)、ユートレプチエラ属(Eutreptiella)CCMP389種(すなわちE389D9e[配列番号4];EgD9eSと約60%の配列同一性)、およびユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)(すなわちEaD9e[配列番号12];EgD9eSと約60%の配列同一性)のΔ9エロンガーゼ活性を容易に改善し得る。例えば、これらの親分子のいずれかの誤りがちなPCRライブラリー作成によって、変異誘発を開始することが望ましいこともあるが、EgD9eS中のこれらの部位と相同性を共有するアミノ酸残基の変異に基づいて、改善された変異体が同定され得ることもまた合理的に予測し得る。Vector NTI(登録商標)AlignX program(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)のデフォルトパラメータを使用して作成された、IgD9e、E389D9e、EgD9e、およびEaD9eの配列比較を図1に示す。共通配列内の下線を引いた太字は、Δ9エロンガーゼ活性の徴候であることもあるモチーフ配列と比較して、以前考察されている。(配列番号10に記載のEgD9eSの配列と同一である)配列番号8のEgD9e配列内の太字の残基は、本出願で変異されて、Δ9エロンガーゼ活性が改善された変異エロンガーゼをもたらす残基を示す。これらの変異の位置はまた、配列比較の各横列上の星印で強調表示されている。この配列比較の分析に基づいて、当業者は、表4で後述される残基のいずれかの修正もまた、それぞれEaD9e、E389D9e、およびIgD9eに、Δ9エロンガーゼ活性の改善をもたらしてもよいという仮説を立てる。したがって、例えば配列番号4[E389D9e]のアミノ酸残基13(すなわちAla[A])が配列番号10[EgD9eS]のアミノ酸残基9(すなわちSer[S])と整列し;したがってSerがAla、Asp、Gly、Ile、LysまたはGlnで置換されたEgD9eSにおいて観察されたのと同様に、E389D9e中のAlaの置換が、Δ9活性の増大を有する変異E389D9eエロンガーゼをもたらしてもよいことが予測される。各アミノ酸残基における最も望ましい置換の同定は、実験的に判定し得る。
【0126】
【表8】
【0127】
適切なプロモーター制御下にある、EgD9eSと比較してΔ9エロンガーゼ活性が増大している、本明細書に記載される変異Δ9エロンガーゼをコードするキメラ遺伝子の導入は、形質転換宿主生物中で、それぞれEDAおよび/またはETrA産生の増大をもたらすことが予測される。したがってPUFAを直接生産する方法が本明細書に記載され、前記方法は、脂肪酸基質(すなわちLAおよび/またはALA)が所望の脂肪酸生成物(すなわちそれぞれEDAおよび/またはETrA)に変換されるように、基質を本明細書に記載される変異エロンガーゼ酵素(例えば配列番号22])に曝露するステップを含んでなる。
【0128】
より具体的には、本明細書に記載されるのは、
a)i)少なくとも1つの制御配列と作動可能に結合して、Δ9エロンガーゼ活性を有す
る変異ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含んでなり、
(a)L35F変異;
(b)L35M変異;
(c)L35G変異;
(d)L35G変異と、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、Q107E、L108G、G127L、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、Q244N、A254W、およびA254Yからなる群から選択される、少なくとも1つのその他の変異;
(e)L35G、A21V、L108G、およびI179R変異;
(f)L35G、W132T、およびI179変異;
(g)L35G、S9D、Y84C、およびI179R変異;
(h)L35G、Y84C、I179R、およびQ244N変異;
(i)L35G、A21V、W132T、I179R、およびQ244N変異;
(j)K58RおよびI257T変異;
(k)D98G変異;
(l)L130MおよびV243A変異;および
(m)K58R、L35F、L35G、L35M、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、D98G、Q107E、L108G、G127L、L130M、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、V243A、Q244N、A254W、A254Y、およびI257Tからなる群から選択される少なくとも2つの変異を含んでなるあらゆる組み合わせ
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸変異によって、配列番号10[EgD9eS]と異なる、配列番号22に記載のアミノ酸配列を有する組換えコンストラクト、および
ii)リノール酸およびα−リノレン酸からなる群から選択される基質脂肪酸源
を含んでなる、油性酵母を提供するステップと;
b)Δ9エロンガーゼ活性を有する変異ポリペプチドをコードする組換えコンストラクトが発現されて、基質脂肪酸が生成物脂肪酸に変換される条件下で、ステップ(a)の酵母を培養し、リノール酸がエイコサジエン酸に変換され、α−リノレン酸がエイコサトリエン酸に変換されるステップと;
c)ステップ(b)の生成物脂肪酸を任意選択的に回収するステップと
を含んでなる多価不飽和脂肪酸を製造する方法である。
【0129】
代案としては、本明細書に記載される各変異Δ9エロンガーゼ遺伝子およびその対応する酵素生成物を使用して、様々なω−6およびω−3PUFAの生成を増大させてもよい(図5Aおよび図5B;米国特許第7,238,482号明細書および米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書参照)。ω−3/ω−6 PUFAの生成増大は、中間段階または経路中間体の手段を通じて、脂肪酸基質が所望の脂肪酸産物に変換されて起きる。したがってPUFA生合成経路の酵素(例えば、Δ6デサチュラーゼ、C18/20エロンガーゼ、Δ17デサチュラーゼ、Δ8デサチュラーゼ、Δ15デサチュラーゼ、Δ9デサチュラーゼ、Δ12デサチュラーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、Δ9エロンガーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ4デサチュラーゼ、C20/22エロンガーゼ)をコードする追加的な遺伝子と併せて、本明細書に記載される変異Δ9エロンガーゼ発現させ、長鎖ω−3/ω−6脂肪酸(例えばDGLA、ETA、ARA、EPA、DTA、DPAn−6、DPAおよび/またはDHAなど)のより高レベルの生成をもたらしてもよいことが検討される。
【0130】
好ましくは本明細書に記載されるΔ9エロンガーゼは、少なくとも1つのΔ8デサチュラーゼと併せて発現される。しかし特定の発現カセット内に含まれる特定の遺伝子は、宿主細胞(そしてそのPUFAプロフィールおよび/またはデサチュラーゼ/エロンガーゼプロフィール)、基質可用性、および所望の最終産物に左右される。
【0131】
ω−3/ω−6 PUFAの生成を増大させるための変異Δ9エロンガーゼの使用は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株が構築されて、38.3%の総脂質含量[「TFA%DCW」]で、総脂質と比較して約58.7%のEPAを産生する、本明細書の実施例11で実証されている。この具体例では、変異Δ9エロンガーゼは、Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路中のΔ9エロンガーゼ活性を増大させるように機能したことが推測される。
【0132】
したがって本明細書の発明の一態様は、DCWの重量%としての測定で、少なくとも22.5重量%のEPAを含んでなる、油を産生する組換え微生物宿主細胞に関し、前記組換え微生物宿主細胞は、少なくとも1つの本発明の変異Δ9エロンガーゼポリペプチドを含んでなる。
【0133】
本明細書に記載される変異Δ9エロンガーゼ遺伝子および遺伝子産物は、多様な異種宿主細胞中、特に植物、細菌、酵母、藻類、ユーグレナ属、ストラメノパイル、卵菌綱、および真菌からなる群から選択される細胞中で生成されてもよい。一般に当業者は、本発明の変異Δ9エロンガーゼが、変異体がそれに由来する野生型EgD9eまたはコドン最適化EgD9eSΔ9エロンガーゼを発現できるあらゆる宿主細胞中における、またはΔ9エロンガーゼの相同体が発現されている宿主中における発現に適すると想定してもよい。
【0134】
米国特許第号7,645,604明細書は、EgD9eおよびEgD9eSの発現のための植物発現系、カセット、ベクター、およびその形質転換方法を記載し、その中の考察の内容全体を参照によって本明細書に援用する。その中で変異Δ9エロンガーゼを発現させてもよい特に好ましい植物としては、油料種子植物(例えば大豆、アブラナ属(Brassica)種、ヒマワリ、トウモロコシ、綿、亜麻、および紅花)が挙げられる。
【0135】
同様に、米国特許第7,645,604号明細書はまた、EgD9eおよびEgD9eSの発現のための微生物発現系、カセット、ベクター、およびその形質転換方法も記載する。その中の論考は、以下と合わせて考察すべきである。特に、本明細書に記載される変異Δ9エロンガーゼ遺伝子および遺伝子産物はまた、異種微生物宿主細胞中、特に油性酵母(例えばヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)細胞中で生成されてもよい。組換え微生物宿主中における発現は、様々なPUFA経路中間体を生成する上で、または今まで宿主を使用して可能でなかった新しい生成物を合成するため宿主に既存のPUFA経路を調節する上で、役立つかもしれない。
【0136】
外来性遺伝子の高レベルの発現を誘導する調節配列を含有する、微生物発現系および発現ベクターは、当業者に良く知られている。これらのいずれかを使用して、当該配列の遺伝子産物のいずれかを生成するためのキメラ遺伝子を構築し得る。次に形質転換を介して、これらのキメラ遺伝子を適切な微生物に導入し、コードされたタンパク質の高レベル発現を提供し得る。
【0137】
適切な微生物または植物宿主細胞の形質転換に有用なベクター(例えばコンストラクト、プラスミド)およびDNA発現カセットは、当該技術分野で周知である。コンストラクト中に存在する配列の特定の選択は、所望の発現産物(前出)、宿主細胞の性質、および形質転換細胞と非形質転換細胞とを分離する提案される手段に左右される。しかし典型的に、ベクターは、少なくとも1つの発現カセット、選択可能なマーカー、および自律複製または染色体への組み込みを可能にする配列を含有する。適切な発現カセットは、典型的に、プロモーター、選択された遺伝子のコード配列、およびターミネーターを含んでなる。双方の制御領域が、形質転換宿主細胞からの遺伝子に由来することが最も望ましい。
【0138】
所望の微生物宿主細胞または植物細胞中において、当該Δ9エロンガーゼORFの発現を駆動するのに有用なプロモーターは多数あり、当業者に知られている。選択された宿主細胞中においてこれらの遺伝子の発現を誘導できる、実質的にあらゆるプロモーター(すなわち天然、合成、またはキメラ)が、適切である。宿主細胞中の発現は、誘導的または構成的様式で達成できる。誘導性発現が、対象の遺伝子と作動可能に結合する調節可能プロモーターの活性を誘導することで達成され得る一方、構成的発現は、対象の遺伝子と作動可能に結合する構成的プロモーターの使用によって達成され得る。
【0139】
一例として、米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)で使用されるプロモーターを記載する。構成的または誘導性転写が所望されるのか、対象のORFの発現におけるプロモーターの効率、構築の容易さなどに応じて、いくつかのプロモーターのいずれか1つを使用し得る。
【0140】
翻訳開始コドン「ATG」周囲のヌクレオチド配列は、酵母細胞中の発現に影響を及ぼすことが分かっている。所望のポリペプチドが酵母中で不十分に発現される場合、効率的な酵母翻訳開始配列を含めるように外来性遺伝子のコード領域を修飾して、最適な遺伝子発現を得ることができる。酵母中における発現では、これは非効率的に発現される遺伝子を部位特異的変異誘発することで、またはそれを内在性酵母プロモーター、好ましくは高度に発現されるプロモーターにインフレームで融合させることで、成し得る。代案としては、異種遺伝子の最適発現のために、宿主のコンセンサス翻訳開始配列をそれに含め得る。
【0141】
ターミネーターは、それからプロモーターが得られる遺伝子の3’領域、または異なる遺伝子に由来し得る。多数のターミネーターが知られており、それらが由来したのと同じおよび異なる属および種のどちらで使用した場合も、多様な宿主中で満足に機能する。ターミネーターは、通常いかなる特性のためでもなく、便宜上選択される。ターミネーターはまた、好ましい宿主に天然の様々な遺伝子に由来してもよい。当業者は、入手できる情報を利用してターミネーターをデザインおよび合成し得るので、ターミネーターはまた合成もされ得る。ターミネーターは不要なこともあるが、高度に好ましい。
【0142】
遺伝子をクローニングベクターに単に挿入することは、所望の速度、濃度、量などでのその発現を保証しない。高レベルの発現に対する必要性に応えて、転写、RNA安定性、翻訳、タンパク質安定性および位置、酸素制限ならびに微生物宿主細胞または植物細胞からの分泌を制御する、特定の特性を調節することにより、多数の特殊発現ベクターが作り出されている。これらの特性としては、以下が挙げられる。関連する転写プロモーターおよびターミネーター配列の性質;クローン遺伝子コピー数(単一発現コンストラクト中で追加的コピーをクローンしてもよく、および/またはプラスミドコピー数を増大させることで、またはゲノム中へのクローン遺伝子の複数の組み込みにより、追加的コピーを宿主細胞中に導入してもよい);遺伝子がプラスミド上にあるか、または宿主細胞ゲノム中に組み込まれているかどうか;合成外来性タンパク質の最終的細胞内所在;宿主生物中のタンパク質の翻訳と正しい折りたたみの効率;宿主細胞中のクローン遺伝子のmRNAおよびタンパク質の固有の安定性;およびクローン遺伝子内のコドン使用頻度。これらのそれぞれを本明細書に記載される方法および宿主細胞中で使用して、本明細書に記載の変異Δ9エロンガーゼの発現をさらに最適化してもよい。
【0143】
適切な宿主細胞中における発現に適するDNAカセット(例えばプロモーター、ORF、およびターミネーターを含んでなるキメラ遺伝子を含んでなる)が得られると、それを宿主細胞中で自律複製できるプラスミドベクターに入れ、またはそれを宿主細胞のゲノムに直接組み込む。発現カセットの組み込みは、宿主ゲノム内で無作為に生じ得て、または宿主遺伝子座内で組換えを標的とするのに十分な、宿主ゲノムとの相同領域を含有するコンストラクトの使用を通じて、標的化し得る。転写および翻訳調節領域の全部または一部は内在性遺伝子座によって提供され得て、コンストラクトは内在性遺伝子座を標的とする。
【0144】
2つ以上の遺伝子が別個の自己複製ベクターから発現される場合、各ベクターが異なる選択手段を有することが望ましく、その他のコンストラクトとの相同性を欠いて、安定発現を維持し、コンストラクト間の要素の再集合を妨げるべきである。調節領域の賢明な選択、選択手段、および導入コンストラクトの増殖法は、導入遺伝子が所望の生成物の合成を提供するのに必要なレベルで発現されるように、実験的に判定し得る。
【0145】
対象の遺伝子を含んでなるコンストラクトは、あらゆる標準技術によって微生物宿主細胞または植物宿主細胞に導入されてもよい。これらの技術としては、(例えば酢酸リチウム形質転換[Methods in Enzymology,194:186−187(1991)]などの)形質転換、プロトプラスト形質転換、微粒子銃衝撃、電気穿孔、マイクロインジェクション、または対象の遺伝子を宿主細胞に導入するその他の任意の方法が挙げられる。
【0146】
便宜上、例えば発現カセット中にDNA配列を取り込むように、あらゆる方法によって操作されている宿主細胞を「形質転換された」または「形質転換体」または「組み換え」と本明細書で称する(本明細書においてこれらの用語は同義的に使用される)。形質転換宿主は、発現カセットがゲノムに組み込まれるのか、増幅されるのか、または複数のコピー数を有する染色体外要素上に存在するのかに応じて、発現コンストラクトの少なくとも1つのコピーを有し、2つ以上を有してもよい。
【0147】
形質転換された宿主細胞は、導入されたコンストラクト上に含有されるマーカーについて選択することで同定できる。代案としては、多くの形質転換技術は多くのDNA分子を宿主細胞中に導入するので、所望のコンストラクトと共に別個のマーカーコンストラクトを同時形質転換してもよい。
【0148】
典型的に形質転換された宿主は、選択的培地上で成長するそれらの能力について選択され、選択培地には抗生物質が組み込まれていてもよく、または非形質転換宿主の成長に必要な栄養素または成長因子などの要素が欠如していてもよい。導入されたマーカー遺伝子は、形質転換された宿主中で発現すると抗生物質耐性を与え、または必須成長因子または酵素をコードしてもよく、それによって選択培地上での成長を可能にしてもよい。発現したマーカーを直接または間接に検出し得る場合にもまた、形質転換された宿主を選択し得る。追加的な選択技術は、米国特許第7,238,482号明細書、米国特許第7,259,255号明細書、および米国特許第7,932,077号明細書に記載される。
【0149】
形質転換に続いて、当該変異Δ9エロンガーゼに適する基質(および任意選択的に、宿主細胞内で同時発現されるその他PUFA酵素)は、宿主によって自然にまたは遺伝子導入によって産生されてもよく、またはそれらは外部から提供されてもよい。
【0150】
当該遺伝子および核酸断片を発現するための微生物宿主細胞としては、広い温度とpH値の範囲にわたって、単純または複合糖質、脂肪酸、有機酸、油、グリセロールおよびアルコール、および/または炭化水素をはじめとする多様な原材料上で成長する宿主が挙げられる。出願人らの譲受人の要求に基づいて、本明細書に記載されるエロンガーゼは、油性酵母、および特にヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中で発現された。転写、翻訳、およびタンパク質生合成装置は高度に保存されているため、あらゆる細菌、酵母、藻類、ユーグレナ属、ストラメノパイル、卵菌綱および/または真菌が、本核酸断片を発現させる適切な微生物宿主であることが検討される。
【0151】
しかし好ましい微生物宿主は、油性酵母などの油性生物である。これらの生物は天然に油を合成および蓄積でき、油は、乾燥細胞重量[「DCW」]の約25%を超え、より好ましくはDCWの約30%を超え、より好ましくはDCWの約40%を超え、より好ましくはDCWの約50%を超え、最も好ましくはDCWの約60%を超えて構成し得る。典型的に油性酵母として同定される属としては、ヤロウィア属(Yarrowia)、カンジダ属(Candida)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、ロドスポリジウム属(Rhodosporidium)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、トリコスポロン属(Trichosporon)、およびリポマイセス属(Lipomyces)が挙げられるが、これに限定されるものではない。より具体的には、例示的な油合成酵母としては、ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)、リポマイセス・スターケイ(Lipomyces starkeyii)、L.リポフェラス(L.lipoferus)、カンジダ・レブカウフィ(Candida revkaufi)、C.プリケリーマ(C.pulcherrima)、C.トロピカリス(C.tropicalis)、C.ユチリス(C.utilis)、トリコスポロン・プランズ(Trichosporon pullans)、T.クタネウム(T.cutaneum)、ロドトルラ・グルチヌス(Rhodotorula glutinus)、R.グラミニス(R.graminis)、およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)(以前はカンジダ・リポリチカ(Candida lipolytica)に分類された)が挙げられる。代案の実施態様では、例えばサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)のような酵母などの非油性生物を遺伝子改変して、油性にし得る(国際公開第2006/102342号パンフレットを参照されたい)。
【0152】
したがって、本明細書の一実施形態では、a)少なくとも1つの制御配列と作動可能に結合して、変異Δ9デサチュラーゼポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含んでなる、第1の組換えDNAコンストラクト;およびb)少なくとも1つの制御配列と作動可能に結合する単離ポリヌクレオチドを含んでなり、Δ4デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ8デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、Δ9デサチュラーゼ、Δ12デサチュラーゼ、Δ15デサチュラーゼ、Δ17デサチュラーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/20エロンガーゼ、およびC20/22エロンガーゼからなる群から選択されるポリペプチドをコードする、少なくとも1つの追加的な組換えDNAコンストラクトを含んでなる油性酵母が提供される。
【0153】
最も好ましいのは、油性酵母ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)である。さらなる実施態様では、最も好ましいのはATCC#20362、ATCC#8862、ATCC#18944、ATCC#76982および/またはLGAMS(7)1と称されるY.リポリティカ(Y.lipolytica)株である(Papanikolaou S.,and Aggelis G.,Bioresour.Technol.,82(1):43−9(2002))。
【0154】
直線化DNA断片に基づく組み込み技術を通じた、油性酵母(すなわちヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))の形質転換に応用できる特定の教示としては、米国特許第4,880,741号明細書および米国特許第5,071,764号明細書、およびChen,D.C.et al.(Appl.Microbiol.Biotechnol.,48(2):232−235(1997))が挙げられる。Y.リポリティカ(Y.lipolytica)中におけるARA、EPAおよびDHA生成の遺伝子操作に応用できる特定の教示は、それぞれ米国特許第7,588,931号明細書、米国特許第7,932,077号明細書および米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書、および米国特許第7,550,286号明細書で提供される。
【0155】
その他の好ましい微生物宿主としては、油性細菌、藻類、ユーグレナ属、ストラメノパイル、卵菌綱、および/または真菌が挙げられる。この幅広い微生物宿主群の中で特に興味深いのは、ω−3/ω−6脂肪酸を合成する微生物、またはこの目的のために遺伝子改変し得るもの(例えばサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの別の酵母)である。したがって、例えば誘導性または調節性プロモーター制御下にある本Δ9エロンガーゼ遺伝子のいずれかによる、(ARA製造のために商業的に使用される)モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)の形質転換は、増大した量のEDAを合成できる形質転換体生物をもたらし得て;これはΔ8デサチュラーゼ遺伝子が同時発現されるならば、増大した量のDGLAに変換され得る。M.アルピナ(M.alpina)を形質転換する方法は、Mackenzie et al.(Appl.Environ.Microbiol.,66:4655(2000))によって記載される。同様にヤブレツボカビ目(Thraustochytriales)微生物(例えばスラウストキトリウム属(Thraustochytrium)、シゾキトリウム属(Schizochytrium))の形質転換法は、米国特許第7,001,772号明細書で開示される。
【0156】
本明細書に記載されるΔ9エロンガーゼ発現のために選択される宿主に関わりなく、所望の発現レベルおよびパターンを示す株を得るためには、複数形質転換体をスクリーニングしなくてはならない。このようなスクリーニングは、DNAブロットのサザン分析(Southern,J.Mol.Biol.,98:503(1975))、mRNA発現のノーザン分析(Kroczek,J.Chromatogr.Biomed.Appl.,618(1−2):133−145(1993))、タンパク質発現のウェスタンおよび/またはElisa分析、PUFA生成物の表現型分析またはGC分析によって達成されてもよい。
【0157】
キメラデサチュラーゼおよびエロンガーゼ遺伝子の発現を最適化して、所望のPUFAの最大かつ最も経済的な収率を生じさせる条件下において、形質転換微生物宿主細胞を培養する。一般に、炭素源のタイプと量、窒素源のタイプと量、炭素対窒素比、異なる無機イオンの量、酸素レベル、成長温度、pH、バイオマス生産段階の長さ、油蓄積相の長さ、および細胞収穫時期と方法を変更することで、培地条件を最適化してもよい。油性酵母(例えばヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))などの対象の微生物は、酵母抽出物−ペプトン−デキストロース液体培地[「YPD」]などの複合培地上で、または生育に必要な構成要素が欠如していることで所望の発現カセットの選択を強要する規定最少培地(例えば酵母菌窒素ベース(DIFCO Laboratories,Detroit,MI))上で、一般に培養される。
【0158】
本明細書に記載される方法および宿主細胞のための発酵培地は、米国特許第7,238,482号明細書および米国特許出願公開第2011−0059204−A1号明細書で開示されるような、適切な炭素源を含有しなくてはならない。本明細書に記載される方法および宿主細胞における適切な炭素源は、多種多様な原料を包含し、好ましいのは糖類(例えばグルコース、転化糖、果糖およびそれらの組み合わせ)、グリセロール、および/または脂肪酸である。
【0159】
窒素は、無機(例えば(NHSO)または有機(例えば尿素またはグルタミン酸)原料から供給されてもよい。適切な炭素および窒素源に加えて、発酵培地はまた、油性宿主の成長と、PUFA産生に必須の酵素経路の促進とに適することが当業者に知られている、適切なミネラル、塩、補助因子、緩衝液、ビタミン、およびその他の構成要素を含有しなくてはならない。脂質およびPUFAの合成を促進する、Fe+2、Cu+2、Mn+2、Co+2、Zn+2、およびMg+2などのいくつかの金属イオンが、特に注目された(Nakahara,T.et al.,Ind.Appl.Single Cell Oils,D.J.Kyle and R.Colin,eds.pp61−97(1992))。
【0160】
本明細書に記載される方法および宿主細胞に好ましい増殖培地は、酵母窒素原礎培地(DIFCO Laboratories,Detroit,MI)などの一般的な商業的に調製された培地である。その他の規定培地または合成増殖培地もまた使用してよく、形質転換宿主細胞の成長に適した培地は、微生物学または発酵化学当業者に知られている。発酵のための適切なpH範囲は典型的に約pH4.0〜pH8.0の間であり、初期成長条件範囲としてはpH5.5〜pH7.5が好ましい。発酵は好気性または嫌気性条件下で実行されてもよく、微好気条件が好ましい。
【0161】
典型的に、代謝状態は、成長と脂肪合成/貯蔵の間で「平衡状態」でなくてはならないので、油性酵母細胞中の高レベルのPUFA蓄積は、二段階過程を必要とする。したがって最も好ましくは、油性酵母(例えばヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))中でのPUFA生成のために、二段階発酵過程が必要である。このアプローチは米国特許第7,238,482号明細書に記載され、様々な適切な発酵過程デザイン(すなわちバッチ、流加、および連続)および成長中の配慮についても同様である。
【0162】
PUFAは、宿主微生物および植物中に、遊離脂肪酸として、またはアシルグリセロール、リン脂質、硫脂質または糖脂質などのエステル化形態で見られ、当該技術分野で周知の多様な手段を通じて、宿主細胞から抽出されてもよい。酵母脂質の抽出技術、品質分析、および許容基準に関する1つのレビューは、Z.Jacobs(Critical Reviews in Biotechnology,12(5/6):463−491(1992))である。A.Singh and O.Ward(Adv.Appl.Microbiol.,45:271−312(1997))による後処理過程の簡単なレビューもまた入手できる。
【0163】
一般にPUFA精製のための手段としては、有機溶剤による抽出(例えば米国特許第6,797,303号明細書、および米国特許第5,648,564号明細書)、超音波処理、超臨界流体抽出(例えば二酸化炭素を使用する)、鹸化、および圧搾、ビードビーターなどの物理的手段、またはそれらの組み合わせが挙げられる。追加的な詳細については、米国特許第7,238,482号明細書を参照されたい。
【0164】
目下、市場には、ω−3および/またはω−6脂肪酸(特に例えばALA、GLA、ARA、EPA、DPA、およびDHA)が組み込まれた多数の食品および飼料製品がある。本明細書に記載される方法および宿主細胞によって作られた、長鎖PUFAを含んでなる微生物または植物バイオマス、PUFAを含んでなる部分的精製バイオマス、PUFAを含んでなる精製油、および/または精製PUFAは、それらの添加によって改善された食品または飼料を摂取すれば、健康上の利点を与えることが検討される。より具体的には、ω−3および/またはω−6脂肪酸を含有する油は、数例を挙げれば、類似食品、肉製品、穀物製品、ベイクド食品、スナック食品、および乳製品に添加し得る。参照によって本明細書に援用する、米国特許公開第2009−0093543−A1号明細書を参照されたい。
【0165】
これらの組成物はまた、医療栄養物、健康補助食品、乳児用調製粉乳、および医薬品をはじめとするメディカルフードに添加することで、健康上の利点を与えてもよい。当業者は、食品、飼料、健康補助食品、栄養補給食品、医薬品、およびその他の摂取可能な製品に、健康上の利点を与えるために添加されるこれらの油の量を理解するであろう。これらの油の摂取からの健康上の利点は当該技術分野で記載され、当業者に知られており、継続的に調査されている。このような量は本明細書で「有効」量と称され、とりわけこれらの油を含有する、摂取される製品の性質、そしてそれらが対処することが意図される、生理的状態に左右される。
【実施例】
【0166】
本発明の具体化を例示するが、その可能なバリエーションの全てを完全に定義するものではない、以下の実施例において本発明についてさらに詳述する。
【0167】
一般方法
実施例で使用される標準組換えDNAおよび分子クローニング技術は当該技術分野で周知であり、1)Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1989)(Maniatis);2)T.J.Silhavy,M.L.Bennan,and L.W.Enquist,Experiments with Gene Fusions;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1984);および3)Ausubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,published by Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscience(1987)に記載される。
【0168】
微生物培養の維持および成長に適した材料と方法は、当該技術分野で周知である。以下の実施例で使用するのに適した技術は、Manual of Methods for General Bacteriology(P.Gerhardt,R.G.E.Murray,R.N.Costilow,E.W.Nester,W.A.Wood,N.R.Krieg and G.B.Phillips,Eds),American Society for Microbiology:Washington,D.C.(1994));またはThomas D.Brock in Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology,2nd ed.,Sinauer Associates:Sunderland,MA(1989)に記載される。微生物細胞の成長および維持のために使用される全ての試薬および材料は、特に断りのない限りAldrich Chemicals(Milwaukee,WI)、DIFCO Laboratories(Detroit,MI)、GIBCO/BRL(Gaithersburg,MD)、New England Biolabs(Ipswich,MA)、またはSigma Chemical Company(St.Louis,MO)から得られた。大腸菌(E.coli)株は、典型的に、ルリア・ベルターニ[「LB」]プレート上で、37℃で培養された。
【0169】
一般的分子クローニングは、標準法(Sambrook et al.、前出)に従って実施された。配列編集は、Sequencher(Gene Codes Corp.,Ann Arbor,MI)内で実施された。全ての配列は、両方向の少なくとも2回のカバレッジに相当する。遺伝子配列の比較は、DNASTARソフトウェア(DNASTAR Inc.,Madison,WI)または社内(E.I.du Pontde Nemours & Co.,Inc.,Wilmington,DE)で作成された類似ソフトウェアを使用して達成された。
【0170】
略称の意味は、次の通り。「sec」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「d」は日を意味し、「μl」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「μM」はマイクロモルを意味し、「mM」はミリモルを意味し、「M」はモルを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μmole」マイクロモルを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「U」は単位を意味し、「bp」は塩基対を意味し、「kB」はキロベースを意味する。
【0171】
発現カセット命名法:発現カセットの構造は簡易表記体系「X::Y::Z」で表され、Xはプロモーター断片を記載し、Yは遺伝子断片を記載し、Zはターミネーター断片を記載し、それらは全て互いに作動的に連結する。
【0172】
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の形質転換および培養:ATCC登録番号#20362、#76982、および#90812のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株は、American Type Culture Collection(Rockville,MD)から購入された。Y.リポリティカ(Y.lipolytica)株は、典型的に下に示すレシピに従った、いくつかの培地中で28〜30℃で培養した。寒天プレートは、標準手順に従って、各液体培地に20g/Lの寒天を添加して、必要に応じて調製した。
【0173】
YPD寒天培地(1Lあたり):10gの酵母抽出物[Difco]、20gのBactoペプトン[Difco]、および20gのグルコース。
【0174】
基礎最少培地(「MM」)(1Lあたり):20gのグルコース、1.7gのアミノ酸非含有酵母窒素ベース、1.0gのプロリン、およびpH6.1(調節の必要なし)。
【0175】
最少培地+5−フルオロオロト酸(「MM+5−FOA」)(1Lあたり):20gのグルコース、6.7gの酵母窒素ベース、75mgのウラシル、75mgのウリジン、および100mg/L〜1000mg/Lの様々な濃度範囲に対するFOA活性試験に基づく適量のFOA(Zymo Research Corp.,Orange,CA)(供給元から受領された各バッチには変動があるため)。
【0176】
高グルコース培地(「HGM」)(1リットルあたり):80グルコース、2.58gのKHPO、および5.36gのKHPO、pH7.5(調節不要)。
【0177】
発酵培地[「FM」](1リットルあたり):6.70g/Lの酵母窒素原礎培地、6.00gのKHPO、2.00gのKHPO、1.50gのMgSO7HO、20gのグルコース、および5.00gの酵母抽出物(BBL)。
【0178】
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)の形質転換は、参照によって本明細書に援用する、米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書に記載されるように実施した。
【0179】
実施例1
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中での発現のためにコドン最適化された、(ミドリムシ(Euglena gracilis)に由来する)合成Δ9エロンガーゼ遺伝子[「EgD9eS」]を含んでなる、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)発現ベクターpZuFmEgD9ESの構築
キメラFBAINm::EgD9eS::Pex20遺伝子を含んでなり、EgD9eSがヤロウィア属(Yarrowia)中での発現のためにコドン最適化された、ミドリムシ(E.gracilis)に由来する合成Δ9エロンガーゼである、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)ベクターpZuFmEgD9ES(図2;配列番号25)の構築は、参照によって本明細書に援用する、米国特許第7,645,604号明細書の実施例8に記載される。EgD9eS(配列番号9)のヌクレオチド配列は、翻訳開始部位の修正に加えて、777bpコード領域の内117bp(15.1%)が修飾され、106コドン(40.9%)が最適化されているので、野性型ミドリムシ(E.gracilis)Δ9エロンガーゼ(「EgD9e」;配列番号7)のヌクレオチド配列と異なる(それにもかかわらずコドン最適化遺伝子[すなわち配列番号10]によってコードされるタンパク質配列は、野生型タンパク質配列[すなわち配列番号8]と同一である)。
【0180】
実施例2
Δ9エロンガーゼ変換効率が増大した変異Δ9エロンガーゼを含んでなるヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)形質転換体を分析するための一般的な方法
本実施例は、非変異EgD9eS遺伝子(配列番号9(「対照」または「野生型」のいずれかと称される)と、誤りがちなポリメラーゼ連鎖反応[「ePCR」]ライブラリー(実施例3)、部位飽和ライブラリー(実施例5)、SlonoMax(登録商標)ライブラリー(実施例7)、またはコンビナトリアルライブラリー(実施例9)(後述)中で作成された、様々な変異EgD9eS遺伝子とのいずれかを発現する、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株(野生型ヤロウィア属(Yarrowia)ATCC#20362株のUra3遺伝子の自律突然変異からのFOA耐性変異体[単離は国際公開第2008/073367号パンフレットの実施例7に記載される])のpZUFmEgD9ES形質転換体生物内の脂質プロファイルを分析する、一般的手段を記載する。
【0181】
変異体ライブラリーの大腸菌(Escherichia coli)およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)への形質転換
電気穿孔によって、各変異体ライブラリーからのDNAを大腸菌(E.coli)Top 10エレクトロコンピテント細胞(カタログ番号C404052;Invitrogen,Carlsbad,CA)に形質転換した。形質転換細胞を100mg/Lのアンピシリン添加ルリア・ベルターニ[「LB」]寒天プレート上に伸ばして塗り、37℃のインキュベーター内で一晩培養した。製造業者のプロトコルに従って、QIAprep(登録商標)Spin Miniprepキット(QiagenInc.,Valencia,CA)を使用して、形質転換大腸菌(E.coli)細胞からプラスミドDNAを抽出した。
【0182】
次に一般方法に記載されるようにして、DNA分子をY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株に形質転換し、形質転換体をMMプレート上で選択した。30℃で2日間の培養後、MMプレート上で選択された形質転換体を拾って、新鮮なMMプレート上に再度画線塗抹した。
【0183】
迅速スクリーニングプレートアッセイ
各変異体ライブラリーの予備機能解析のために、迅速スクリーニング「プレートアッセイ」を使用した。このプレートアッセイのためには、上の再画線塗抹MMプレートからの形質転換体ヤロウィア属(Yarrowia)細胞を培地プレートから直接分析した。水酸化トリメチルスルホニウム[「TMSH」]を使用して、脂肪酸メチルエステル[「FAME」]を調製した。
【0184】
TMSHは、メタノール中における酸化銀との反応による水酸化物溶液への転換後に、ヨウ化トリメチルスルホニウム[「TMSI」]から調製された。具体的には、4.4gのTMSIを100mLのMeOHに混合し、50℃の水浴中で1時間インキュベートして;次に5gのAgOを溶液に添加し、室温で4時間撹拌した。最終溶液を使用前に濾過した。TMSHは、O−アシル脂質(すなわちTAG)の塩基触媒エステル交換と、遊離脂肪酸のエステル化を引き起こす(A.H.El−Hamdy & W.W.Christie,J.of Chromatography,630:438−441(1993))。
【0185】
1μlループを使用して、再画線塗抹MMプレートから細胞を直接採取して、0.35mLインサート付きガスクロマトグラム[「GC」]バイアル内の50μlのTMSHに懸濁した。次にヘプタン(150μl)をバイアルインサートに添加し、バイアルに蓋をして、次に室温で撹拌しながら20分間インキュベートした。引き続いてFAMEのGC分析のために、Omegawax 320溶融シリカキャピラリーカラム(Supelco Inc.,Bellefonte,PA)を装着したHewlett Packard 7890 GCに、ヘプタン層からの1μlを注入した。滞留時間を市販の標準物質(標準#461,Nu−Chek Prep,Inc.,Elysian,MN)からのメチルエステルと比較した。
【0186】
EgD9eS変異体を含んでなる細胞から得られたFAMEプロファイルを非変異EgD9eS対照と比較した。この一次スクリーニングの結果は、二次確認アッセイを実施する変異体の選択の基礎としての役割を果たした。確認アッセイのための変異体を選択するのに使用された基準は、脂質プロフィールに基づき、特に対応するFAMEのGCピーク面積から、全ての総合ピークの合計に対するパーセントとして計算されるEDAの濃度[「EDA%TFA」]、および/またはLAからEDAへの変換効率に基づいた。各形質転換体のLAからEDAへの変換効率[「%変換」]は、次式に従って計算された。([生成物]/[基質+生成物])100。式中、生成物はEDA%TFAであり、基質はTFAの面積パーセントとしてのLA濃度[「LA%TFA」]であった。
【0187】
「確認」アッセイ
迅速スクリーニング「プレートアッセイ」により、対照と比較してΔ9伸長活性の改善が実証された変異体を引き続く確認アッセイのために選択した。
【0188】
変異体で形質転換されたヤロウィア属(Yarrowia)を最初に新鮮再画線塗抹MMプレートから培養し、次に30℃で3mLの液体MMを含んでなる三連の培養物に各変異体を個々に接種して、250rpm/分で2日間振盪した。細胞を遠心分離によって収集して脂質を抽出し、ナトリウムメトキシドでの脂質抽出物のエステル交換によってFAMEを調製し(Roughan,G.,and Nishida I.,Arch.Biochem.Biophys.,276(1):38−46(1990))、引き続いてプレートアッセイ(前出)で記載されたようにして、GCによって分析した。
【0189】
Δ9伸長活性の改善の確認に続いて、製造会社が推奨する通りに、Zymoprep(商標)Yeast Plasmid Miniprep IIキット(カタログ番号D2004;Zymo Research,Orange,CA)を使用して、各変異pZUFmEgD9ESプラスミドをそれからそれが発現された形質転換Y.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株から回収した。
【0190】
レスキューされたプラスミドの配列を標準DNA配列決定方法を使用して、特性解析した。手短に述べると、DNA配列は、ダイターミネーター技術(米国特許第5,366,860号明細書;欧州特許第272,007号明細書)を使用し、ベクターおよび挿入特異的プライマーの組み合わせを使用して、ABI自動配列決定装置によって生成された。遺伝子配列の比較は、当該技術分野で周知の標準ツールを使用して達成した。
【0191】
実施例3
2つのEgD9eS誤りがちなPCRライブラリーの構築
本実施例は、2つのΔ9エロンガーゼ誤りがちなポリメラーゼ連鎖反応[「ePCR」]ライブラリーの合成を記載する。2つのePCRライブラリーは二段法で作成され、それは最初に、テンプレート内にランダム変異を含んでなる一連のメガプライマーの生成を要し、これらのメガプライマーを使用したpZuFmEgD9ES中の点変異の作成が、それに続いた。コンストラクトpZuFmEgD9ES(配列番号25)(実施例1)を第1のePCRライブラリーのためのDNAテンプレートとして使用した。第2のePCRライブラリーは、第1のePCRライブラリーからのヒットをDNAテンプレートとして使用した。
【0192】
ランダム変異誘発キットを使用したメガプライマーの作成
GeneMorph IIランダム変異誘発キット(カタログ番号200550;Stratagene,La Jolla,CA)を使用して、標的タンパク質中にランダムアミノ酸置換を作成した。それは、GおよびCとの対比でAおよびTにおいて同等の変異率がある、偏りのより少ない変異スペクトルを生じる、2種の異なるポリメラーゼの組み合わせを含んでなる、新しい誤りがちなPCR酵素混合組成を使用して、誤りがちなPCR中に、標的遺伝子に変異を導入することで機能する。生成物の高収率のために最適化された緩衝液条件の単一セットを使用して、1kBあたりの変異1〜16個の変異率が達成され得ると宣伝されている。所望の変異率は、単に、反応中の最初のテンプレートDNA量および/または実施される増幅サイクル数を変えることで制御し得る。
【0193】
製造会社が推奨するプロトコルを使用して、上のキットを利用し、EgD9eS「メガプライマー」を作成した。これらのメガプライマーは約930bpの長さであり、EgD9eS(配列番号9)をコードする777bpを含んでなる。反応混合物は、1μlの第1のePCRライブラリーあたり16ngのDNAテンプレート、または1μlの第2のライブラリーあたり2.0ngのDNAテンプレートのいずれかを含有する。それはまた、反応緩衝液、dNTP(0.8mM)、プライマーpZUFm_6980_012208f(配列番号26)(2μM)、プライマーpZUFm_210_012208r(配列番号27)(2μM)、およびMutazyme(登録商標)II DNAポリメラーゼ(0.25U/μl)も含んでなる。PCR反応は、Mastercycler勾配装置(Brinkmann Instruments,Inc.,Westbury,NY)内の薄壁200μl管内で実施した。以下の条件を使用して、PCR増幅を実施した。95℃で2分間、それに続く95℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、および72℃で90秒間の伸長を30サイクル。72℃で4分間の最終伸長サイクルを実施し、4℃での反応終結がそれに続いた。
【0194】
製造会社が推奨する通り、DNA Clean & Concentrator(商標)−5キット(カタログ番号D4003;Zymo Research,Orange,CA)を使用して、PCR産物を精製した。精製二本鎖PCR産物をそれぞれEgD9eS内に様々な変異を含有する「メガプライマー」として利用した。
【0195】
EgD9eSのPCR変異遺伝子を作成する標準クローニング法
第1のePCRライブラリーのために、「メガプライマー」をNcoIおよびNotI制限酵素で消化した。次に室温で5時間の連結反応によって、T4DNAリガーゼ(Promega,Madison,WI)を使用して、ゲル精製NcoI/NotI遺伝子断片をゲル精製NcoI/NotI pZUFmEgD9ESベクター(配列番号25)に直接ライゲートした。
【0196】
EgD9eSのePCR変異遺伝子を作成する部位特異的変異誘発
第2のePCRライブラリーを作成するために、pZuFmEgD9ES(図2;配列番号25)に、「メガプライマー」内のEgD9eS変異体を導入するようにデザインされた反応中で、上述の「メガプライマー」を利用し、それによって非変異EgD9eS遺伝子を様々な変異EgD9eS遺伝子で置換した。これは、QuikChange(登録商標)II XL部位特異的変異誘発キット(カタログ番号200524;Stratagene,La Jolla,CA)を使用して達成された。
【0197】
双方のプラスミド鎖の変異原性プライマー誘導複製のための高忠実度PfuUltra
DNAポリメラーゼを使用して、QuikChange(登録商標)II部位特異的変異誘発キットを使用して、二本鎖ベクター中の対象のインサート内において、点変異を生成し、アミノ酸を置換し、単一/複数の隣接するアミノ酸を消去または挿入した。キットは、特化ベクター、ユニークな制限酵素認識部位、または複数形質転換を必要とせず、実質的にあらゆる二本鎖プラスミド中における部位特異的変異を可能にする。基本的手順は、2つの合成オリゴヌクレオチドプライマーを利用し、それらはどちらも所望の変異を含有してベクターの逆ストランドに相補的であり、温度サイクル中にプライマーの転置なしに、高忠実度DNAポリメラーゼによって伸長される。オリゴヌクレオチドプライマーの伸長からは、互い違いに位置するニックを含有する変異プラスミドが生じ、次にそれをDpn Iエンドヌクレアーゼで処理する。この制限酵素はメチル化および半メチル化DNAに対して特異的であり、それによって親DNAテンプレートの消化と、変異含有合成DNAの選択を可能にする。次に所望の変異を含有する、ニックのあるベクターDNAを大腸菌(Escherichia coli)宿主に形質転換して増殖させる。
【0198】
しかし本手順では、従来の合成オリゴヌクレオチドプライマーの代わりに、様々な変異EgD9eS遺伝子を含んでなる二本鎖メガプライマーが使用される。具体的には、キットが提供する5.0μlの10×反応緩衝液、1.0μlの50ng/μl pZUFmEgD9ESテンプレート(配列番号25)、42μlのメガプライマー、キットが提供する1.0μlの40mM dNTPミックス、およびキットが提供する1.0μlのPfu−Ultra DNAポリメラーゼを含んでなる、50μlの反応を調製した。この反応混合物を薄壁200μl容量PCR管に入れ、以下の条件を使用してPCR増幅を実施した。95℃で30秒間、それに続く95℃で30秒間の変性、55℃で1分間のアニーリング、および68℃で6分間の伸長を25サイクル。68℃で8分間の最終伸長サイクルを実施し、4℃での反応終結がそれに続いた。
【0199】
完了した部位特異的変異誘発反応混合物に、キットが提供するDpnI制限酵素(1.0μl)を直接添加して、酵素消化を37℃で1時間実施してDNAテンプレートを除去した。DNA浄化キット(Zymo Research)を使用して消化生成物を精製して溶出し、pZUFmEgD9ESベクター主鎖内に含有される様々な変異EgD9eS遺伝子を含んでなる、10μlの精製DNAを得た。
【0200】
実施例4
Δ9エロンガーゼ変換効率が改善されたePCREgD9eSライブラリー変異体の同定
本実施例は、1)野生型タンパク質EgD9eS(配列番号10)と比較して、LAからEDAへのΔ9エロンガーゼ変換効率が改善されたEgD9eS ePCRライブラリー変異体の同定;および2)これらのEgD9eS ePCRライブラリー変異体の配列分析を記載する。
【0201】
EgD9eS ePCR変異体の同定
実施例2に記載されるようにして、実施例3で調製されたePCR遺伝子ライブラリー変異体を大腸菌(E.coli)Top 10エレクトロコンピテント細胞に形質転換して、精製し、引き続いてY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株に形質転換した。実施例2の迅速スクリーニング「プレートアッセイ」を使用して、1,724個のヤロウィア属(Yarrowia)形質転換体の脂肪酸プロファイルをスクリーニングした。これらの変異体のほとんどは、対照と比較して低下した活性を呈示した。しかし5つの形質転換体は、実施例2の確認アッセイに基づいて、対照と比較して改善されたΔ9伸長活性を呈示することが確認された。
【0202】
2つの独立した確認アッセイからのデータを表5および表6に提示し、個々のpZuFmEgD9ES対照形質転換体のFAMEプロファイルをePCR変異体と比較する。より具体的には、各株について、(実施例2に記載されるようにして判定される)対応するFAMEのGCピーク面積から全ての総合ピークの合計と比較したパーセントとして計算される各脂肪酸濃度[「%TFA」]、およびLAからEDAへの%変換を下の表5および表6に示し、平均値は灰色で強調され「平均」として示される。脂肪酸は、16:0(パルミチン酸)、16:1(パルミトレイン酸)、18:0(ステアリン酸)、18:1(オレイン酸)、LA、およびEDAとして同定される。EgD9eS対照と比較した各変異体の性能比較は、各変異体がその中で分析される特定の確認アッセイ内のみで実施すべきである(すなわちアッセイ#1とアッセイ#2の間では比較を実施し得ない)。
【0203】
【表9】
【0204】
【表10】
【0205】
上に示す確認アッセイ#1中のデータを要約すると、非変異コドン最適化EgD9eS遺伝子を含んでなるpZuFmEgD9ESで形質転換されたY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株のクローンは、平均で3.1 EDA%TFAを産生し、これらの5つのクローン中のLAからEDAへの平均変換効率[「%変換」]は、約15.5%と判定された。対照的に、変異株1.2ep−8のLAからEDAへの平均%変換は17.8%(または対照との比較で115%)であり;変異株1.9ep−63の平均%変換は16.3%(または対照との比較で105%)であり;変異株1.4ep−161の平均%変換は16.4%(または対照との比較で106%)であった。
【0206】
確認アッセイ#2では、pZuFmEgD9ESで形質転換されたY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株のクローンは、2.9 EDA%TFAを産生し、これらの4株中のLAからEDAへの%変換は約16.9%と判定された。変異株2.1ep−94のLAからEDAへの平均%変換は19.8%(または対照との比較で117%)であり;変異株2.1ep−95の平均%変換は18.8%(または対照との比較で111%)であった。
【0207】
したがってこれらの実験は、EgD9eS ePCR変異体1.2ep−8、1.9ep−63、1.4ep−161、2.1ep−94、および2.1ep−95によって呈示された、Δ9エロンガーゼ変換効率の改善を確認した。
【0208】
EgD9eS ePCR変異体の配列
変異体1.2ep−8、1.9ep−63、1.4ep−161、2.1ep−94、および2.1ep−95からレスキューされたプラスミドをDNA配列決定によって特性解析し、解析は、表7に示されるように、変異EgD9eS遺伝子内の様々なヌクレオチド置換、および発現されるアミノ酸の置換を明らかにした。各変異EgD9eS遺伝子に、そして変異EgD9eS遺伝子を含んでなる各変異pZuFmEgD9ESプラスミドに、アミノ酸置換を示唆する名称を与えた。列挙される各置換(すなわちL35G)について、最初の文字は非変異EgD9eS(すなわち配列番号10)中のアミノ酸に対応し、2番目の文字は変異体中の同じ位置に見られるアミノ酸に対応し、すなわちL35Gは、EgD9eS中の位置35のLeuからEgD9eS変異体中のGlyへの変化を示す)。
【0209】
【表11】
【0210】
したがって、例えば変異体1.2ep−8からレスキューされたプラスミドは、2つのヌクレオチド置換(すなわちC103TおよびA654G)を含んでなる。これらの2つのヌクレオチド置換は、1つの発現されるアミノ酸置換(すなわちL35F)、および1つのサイレントアミノ酸変異(すなわちG218G)に相当する(GGAおよびGGGはどちらもGlyをコードするため、A654Gヌクレオチド置換の結果として、このアミノ酸は変異タンパク質中で無変化である)。アミノ酸変化L35FをもたらすC103TおよびA654G変異を含んでなるプラスミドがpZuFmEgD9ES−L35F(配列番号30)と命名された一方、その中の変異Δ9エロンガーゼのヌクレオチド配列は「EgD9eS−L35F」(配列番号28)と命名され、配列番号29に記載のタンパク質配列を有する。
【0211】
実施例5
2部位飽和EgD9eS遺伝子ライブラリーの構築
本実施例は、EgD9eS(配列番号10)内のアミノ酸位置35および107の標的化によって作成された、部位飽和[「SS」]ライブラリーの合成を記載する。位置35を標的にする理論的根拠が実施例4の結果に基づいたのに対し、位置107を標的にする理論的根拠は後述される。SSライブラリーは二段法で作成され、それは最初に、テンプレート内に標的化変異を含んでなるメガプライマーの生成を要し、これらのメガプライマーを使用したpZuFmEgD9ES中の点変異の作成が、それに続いた。
【0212】
EgD9eSの位置107を標的にする理論的根拠
最初に、配列比較のClustal W法を使用して、下の表8に記載される17個の脂肪酸エロンガーゼのアミノ酸配列を比較した。
【0213】
【表12】
【0214】
デフォルトパラメータ(すなわちprotein weight matrix=Gonnet 250、gapo pening penalty=10、gap extension penalty=0.2および全長配列比較アルゴリズム)で、Clustal Wパッケージ(バージョン1.83)を使用して、Thompson et al.(Nucleic Acids Res.22:4673−4680(1994))によって記載されるClustal W配列比較法を実施した。配列比較結果を(図3A、3B、3C、3D、3E、3F、3G、および3Hを含んでなる)図3に示す。「Trace_1」、「Trace_2」、「Trace_3」、および「Trace_4」は、下で定義される機能性I群、II群、III群、およびIV群の各列のコンセンサスを表し、すなわちTrace 1は、Ci_elo、Om_elo、Mp_elo1、Pp_elo1、Mp_d5e、およびOt_elo1を含んでなるI群中のタンパク質配列のコンセンサスを表す。各列のコンセンサスは、以下のように定義される。具体的には、列が完全に保存されている場合、コンセンサスは、大文字で示される保存アミノ酸として表される。物理化学的特性の観点から列が保存されている場合、コンセンサスは小文字で表され、「k」はアミノ酸DおよびE(負の電荷)を表し、「q」はアミノ酸H、K、およびR(正の電荷)を表し、「p」はアミノ酸NおよびQ(極性)を表し、「a」はアミノ酸I、L、およびV(脂肪族)を表し、「d」はアミノ酸F、W、およびY(芳香族)を表し、「h」はアミノ酸AおよびG(小型)を表し、「s」はアミノ酸D、E、N、Q、H、K、R、S、およびT(親水性)を表し、「f」はアミノ酸I、L、V、F、W、Y、C、およびM(疎水性)を表す。列が保存されていない場合、コンセンサスは大文字「X」で表される。
【0215】
近隣結合系統樹をClustal W配列比較から作成した。系統樹トポロジーに基づいて、異なる基質特異性の官能基に相当する仮定された4群に、17個の配列を分割した。I群は、Ci_elo、Om_elo、Mp_elo1、Pp_elo1、Mp_d5e、およびOt_elo1を含んでなり;II群は、Pav_elo2、Ps_elo2、およびOt_elo2を含んでなり;III群は、Ea_d9e、Eg_d9e、E398_d9e、およびIg_d9eを含んでなり;IV群は、Tp_elo2、Tp_elo1、Ma_d6e、およびTh_elo2を含んでなる。
【0216】
図3の配列比較および近隣結合系統樹の分類を考慮して、以下の結論が導かれた。第1にいくつかの位置は、I、II、III、およびIV群内で、17配列の全てにわたり完璧に保存されている。これらの位置は、エロンガーゼの触媒活性に恐らく必須であると見なされ、したがって変異標的から排除された。いくつかの位置は、I、II、III、およびIV群内の配列のいくつかのみで保存された(すなわち完璧に保存されなかった)。これらの位置は、I、II、III、およびIV群の官能基内のエロンガーゼによって呈示される基質特異性に恐らく重要であると見なされた。いくつかの位置は、III群(4つの既知のΔ9エロンガーゼを全て含んでなる)内で比較的保存されが、バリエーションもまた呈示された;EgD9eの番号付けを基準とするアミノ酸位置22、47、54、101、107、111、115、161、182、192、および242を参照されたい。これらの位置は、Δ9エロンガーゼの活性に恐らく重要であると見なされ、Ea_d9e(配列番号12)、Eg_d9e(配列番号8)、E398_d9e(配列番号4)、およびIg_d9e(配列番号2)の基質特異性の相違を調節すると仮定された。
【0217】
TMHMMプログラム(「Prediction of transmembrane
helices in proteins」;TMHMM Server v.2.0,Center for Biological Sequence Analysis,BioCentrum−DTU,Technical University of Denmark,DK−2800 Lyngby,Denmark)を使用して、EgD9eS内の膜貫通ドメイン[「TM」]の分析を実施した。予測は、NおよびC末端の双方が細胞質側に位置する、6個の膜貫通らせん(アミノ酸残基32〜51、66〜88、114〜136、156〜175、188〜206、221〜243に相当する)を示唆した。TMHMMプログラムを使用して、Ot_elo2、Ig_elo1、Pav_elo2、およびTp_elo2を同様に分析すると、膜貫通らせん数は4〜8個で変動した。したがって、これらの変動する予測を統合するために、以下のいくつかの機能性情報を使用した。
【0218】
1.高度に保存されたヒスチジンに富むモチーフ[Q/H]xxHH(「His−box」)は、Ig_d9e(配列番号2)の最適酵素活性に必須であることが示されているが、基質特異性の直接原因ではない(Qi et al.,FEBS Letters,547:137−139(2003))。したがって、これはHis−box(EgD9eS中のアミノ酸残基134〜138に相当する)が活性部位に関与することを強力に示唆し;基質が活性部位にアクセスし得るように、それは折り畳みタンパク質の細胞質側またはその近くに位置しなくてはならない。
【0219】
2.荷電残基があるいくつかの高度に保存された位置が、EgD9eSのC末端に存在する。それらは恐らく活性と関係があり、したがってC末端は折り畳みタンパク質の細胞質側に位置する。
【0220】
His−boxは膜の外面に位置し得ないので、アミノ酸残基114〜136間、およびアミノ酸残基156〜175間の膜貫通らせんを予測するTMHMM結果とは対照的に、上の考察は、残基114〜136間の配列領域が膜を貫通しないことを示唆する。C末端が細胞質側に位置する場合、156〜175間の予測されたTMドメインもまた膜を貫通しない。エロンガーゼの基質は高度に疎水性であるので、それは恐らく脂質二重層中に分配される。(His−boxをはじめとする)活性部位は、膜表面またはその非常に近くにあってもよい。
【0221】
したがって本明細書では、これらの2つの疎水性領域(すなわちアミノ酸残基114〜136およびアミノ酸残基156〜175に相当する)は、内膜小葉中またはその近くに位置して、活性部位が膜に近いことを確実にすることが予測された。EgD9eSについて予測された、最終膜トポロジーモデルを図4Aに示す。具体的には、各垂直円柱が膜貫通断片を示す一方、各水平円柱は内膜小葉の中または近くに位置する疎水性ストレッチを示す。His−box(すなわちアミノ酸残基134〜138に相当する)内の保存されたグルタミン[Q]およびヒスチジン[H]は、小さな丸で示される。最後に、「中」が細胞質空間に対応するのに対し、「外」は細胞膜周辺腔に相当する。
【0222】
保存パターン解析が、III群Δ9脂肪酸エロンガーゼ内に、酵素活性に影響を及ぼすと予測された11個の異なるアミノ酸残基(すなわちEa_d9e[配列番号12]、Eg_d9e[配列番号8]、E398_d9e[配列番号4]、およびIg_d9e[配列番号2])を同定したのに対し、予測されたトポロジーモデルからの結果は、候補残基をさらに限定した。具体的には、酵素活性にとって重要な位置は、活性部位がある細胞質側またはその近くになくてはならないと、理由付けられた。アミノ酸残基47、54、および192は、この基準を満たさず、したがってそれらはΔ9エロンガーゼの活性を調節する上で重要であり得ないと推測された。
【0223】
上の理論的根拠に基づいて、EgD9eSの9エロンガーゼ活性に恐らく顕著に影響を及ぼす候補残基は、配列番号10の完全長タンパク質内の258残基から、位置22、101、107、111、115、161、182、および242に相当する、わずか8残基に減少した。これらの8つの位置は、EgD9eSの基質変換率を改善するための部位特異的変異誘発の標的として推奨された。下の実験データは、位置107を標的とした。
【0224】
部位飽和ライブラリー構築のためのメガプライマーの作成
オリゴヌクレオチドEgD9E_102_053008f(配列番号56)およびEgD9E_760_053008r(配列番号57)をデザインして、それぞれEgD9eS(配列番号10)のアミノ酸残基35および107を標的とした。これらのオリゴヌクレオチドの商業的合成に続いて、それらをPCR反応で利用して、SSライブラリー構築で使用するための適切なメガプライマーを作成した。具体的には、Pfu−Ultraポリメラーゼ(Stratagene)と共に提供される5.0μlの10×反応緩衝液、1.0μlの50ng/μl EgD9eS(配列番号10)、1.0μlの10pmol/μlプライマーEgD9E_102_053008f(配列番号56)、1.0μlの10pmol/μlプライマーEgD9E_760_053008r(配列番号57)、1.0μlの40mM dNTPミックス(Promega,Madison,WI)、1.0μlの高忠実度Pfu−Ultra DNAポリメラーゼ(Stratagene)、および40μlの水を含有する、50μlの反応混合物を調製した。Mastercycler勾配装置(Brinkmann Instruments,Inc.Westbury,NY)内でのPCR反応のために、混合物を薄壁200μl管に入れた。以下の条件を使用して、PCR増幅を実施した。95℃で30秒間、それに続く95℃で30秒間の変性、54℃で1分間のアニーリング、および72℃で2分間の伸長を30サイクル。72℃で4分間の最終伸長サイクルを実施し、4℃での反応終結がそれに続いた。
【0225】
製造会社が推奨する通り、DNA Clean & Concentrator(商標)−5キット(カタログ番号D4003;Zymo Research,Orange,CA)を使用して、PCR産物を精製した。精製二本鎖PCR産物は、それぞれEgD9eS内に様々な変異を含有する「メガプライマー」として利用した。
【0226】
EgD9eSの部位飽和変異遺伝子を作成する部位特異的変異誘発
次に、pZuFmEgD9ES(図2;配列番号25)に、「メガプライマー」内のEgD9eS変異体を導入するようにデザインされた反応中で、上述の「メガプライマー」を利用し、それによって非変異EgD9eS遺伝子を様々な変異EgD9eS遺伝子で置換した。これは、実施例3に記載されるように、QuikChange(登録商標)II XL部位特異的変異誘発キット(カタログ番号200524;Stratagene,La Jolla,CA)を使用して達成された。具体的には、部位特異的変異誘発反応組成物および増幅条件は、実施例3に記載されるのと同一であり、DpnI制限酵素およびDNA浄化方法についても同様であった。
【0227】
実施例6
Δ9エロンガーゼ変換効率が改善されたEgD9eS部位飽和ライブラリー変異体の同定
本実施例は、1)野生型タンパク質EgD9eS(配列番号10)と比較して、LAからEDAへのΔ9エロンガーゼ変換効率が改善されたEgD9eS変異体の同定;および2)これらのEgD9eS変異体の配列分析を記載する。
【0228】
EgD9eS部位飽和変異体の同定
実施例2に記載されるようにして、実施例5で調製されたSSライブラリー変異体を大腸菌(E.coli)Top 10エレクトロコンピテント細胞に形質転換して精製し、引き続いてY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株に形質転換した。実施例2の迅速スクリーニング「プレートアッセイ」を使用して、SSライブラリーからのコンストラクトによる510個のヤロウィア属(Yarrowia)形質転換体の脂肪酸プロファイルを分析した。3つの形質転換体が、実施例2の確認アッセイに基づいて、対照と比較して改善されたΔ9伸長活性を呈示することが確認された。
【0229】
確認アッセイからのデータを表9に提示し、個々のpZuFmEgD9ES対照形質転換体のFAMEプロファイルをSSライブラリー変異体と比較する。より具体的には、各株について、(実施例2に記載されるようにして判定される)TFAの面積パーセントとしての各脂肪酸濃度[「%TFA」]、およびLAからEDAへの%変換を下の表9に示し、平均値は灰色で強調され「平均」として示される。脂肪酸は、実施例4の略称に基づいて同定される。
【0230】
【表13】
【0231】
確認アッセイでは、非変異コドン最適化EgD9eS遺伝子を含んでなるpZuFmEgD9ESで形質転換されたY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株のクローンは、平均で3.5 EDA%TFAを産生し、これらの4株中のLAからEDAへの平均変換効率[「%変換」]は、約18.7%と判定された。比較すると、変異株2.4sd2−24のLAからEDAへの平均%は27.2%(または対照との比較で145%)であり;変異株2.4sd2−52の平均%変換は26.6%(または対照との比較で142%)であり;変異株2.4sd2−53の平均%変換は24.6%(または対照との比較で132%)であった。したがってこのアッセイは、部位飽和変異体2.4sd2−24、2.4sd2−52、および22.4sd2−53によって呈示された、Δ9エロンガーゼ変換効率の改善を確認した。
【0232】
EgD9eS部位飽和変異体の配列
変異体2.4sd−24、2.4sd−52、および2.4sd−53からレスキューされたプラスミドをDNA配列決定によって特性解析し、解析は、表10に示されるように、変異EgD9eS遺伝子内の様々なヌクレオチド置換、および発現されるアミノ酸の置換を明らかにした。各変異EgD9eS遺伝子に、そして変異EgD9eS遺伝子を含んでなる各変異pZuFmEgD9ESプラスミドに、アミノ酸置換を示唆する名称を与えた。
【0233】
【表14】
【0234】
当業者には明白であるように、出願人らは、遺伝コードの縮重に基づいて、多様なヌクレオチド配列が、例えばEgD9eS−L35Gに記載のタンパク質をコードし得ることを認識する。したがって、例えばアミノ酸残基位置35で配列番号59で記載される変異タンパク質中でコードされるGlyは、GGG(配列番号58に記載のΔ9エロンガーゼ読み取り枠[「ORF」])、GGA(配列番号95に記載のΔ9エロンガーゼORF)、GGC(配列番号96に記載のΔ9エロンガーゼORF)、およびGGT(配列番号97に記載のΔ9エロンガーゼORF)によってコードされ得る。コードされたタンパク質中にサイレント変異をもたらす多様なその他のヌクレオチド置換もまた検討され、したがってEgD9eS−L35G(配列番号59)をコードする本明細書で提供されるヌクレオチド配列は、本開示を制限するものと解釈すべきでない。本発明の変異タンパク質をコードして、Δ9エロンガーゼ活性を有する、本明細書に記載されるヌクレオチド配列のいずれかの中における同様のバリエーションが検討された。
【0235】
実施例7
EgD9eS−L35GSlonoMax(登録商標)ライブラリーの作成
本実施例は、親酵素と比べてLAからEDAへの変換効率の42〜45%の改善を実証する、EgD9eS−L35G変異体(配列番号59;実施例6)内の50個の異なったアミノ酸位置を標的にすることで作成された、SlonoMax(登録商標)ライブラリーの合成を記載する。したがって本実施例は、L35変異を含んでなるEgD9eS変異体中にスタックし得る、追加的な有益な変異を同定することを求めた。
【0236】
下でさらに詳細に記載する自動ロボットプラットフォームであるSlonomics(登録商標)は、SlonoMax(登録商標)ライブラリーを作成し、配列位置あたりの変異体数およびそれらの比率を非常に正確に制御し得る。したがって自動工程は、部位飽和ライブラリー(実施例5)作成時に考察された限定的残基とは対照的に、Δ9エロンガーゼ活性に対するそれらの影響を判定するために、実験的に検査し得る候補残基数を大幅に増大させ得る利点を提供する。
【0237】
機能部位評価のためにEgD9eS内の50個の異なった残基を標的にする理論的根拠
Δ9エロンガーゼ酵素は、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)[「IgD9e」](配列番号2;国際公開第2002/077213号パンフレット、国際公開第2005/083093号パンフレット、国際公開第2005/012316号パンフレット、および国際公開第2004/057001号パンフレット;GenBank受入番号AAL37626)、ユートレプチエラ属(Eutreptiella)CCMP389種[「E389D9e」](配列番号4;米国特許第7,645,604号明細書)、ミドリムシ(Euglena gracilis)[「EgD9e」](配列番号8;米国特許第7,645,604号明細書)、およびE.アナベナ(E.anabaena)[「EaD9e」](配列番号12;米国特許第7,794,701号明細書)から同定され、機能解析されている。これらの各エロンガーゼは、LAをEDAに変換できることが示されている。(デフォルトパラメータ(すなわちprotein weight matrix=Gonnet 250、gap opening penalty=10、gap extension penalty=0.2、および全長配列比較)を使用したClustal W(バージョン1.83)分析に基づいて、EgD9e、EaD9e、およびE389D9eが、互いに60%を超える配列類似性を共有するのに対し、IgD9Eは、EgD9e、EaD9e、およびE389D9eのいずれか1つと約35%のみの配列類似性を共有する。
【0238】
Δ9エロンガーゼ変換効率が改善されている変異体(例えばD98G[実施例4]およびL35G[実施例6])をもたらす位置は、中程度の配列保存性を有することが観察された。Vector NTI(登録商標)のAlignXプログラム(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)のデフォルトパラメータを使用して、IgD9e、EgD9e、EaD9e、およびE389D9eのアミノ酸配列アラインメントを作成して、その他の中程度に保存された残基を同定した。これらの中程度に保存された残基は、非変異EgD9eS対照と比較して改善された活性を有する、変異酵素の第2世代を潜在的にもたらすアミノ酸置換の標的の有望な候補かもしれないという仮説が立てられた。
【0239】
これらの4つの相同的な酵素配列の比較で、258個のアミノ酸位置の内58個は4つのエロンガーゼ酵素の全てで保存されていると判定され;したがってこれらの残基は、検討から除外された。さらに92個の位置は、EgD9e、EaD9e、およびE389D9eの間で保存されていると判定され;これらの位置もまた、検討から除外された。最後に、相同体間でランダムなアミノ酸変化を有する位置は、常態ではタンパク質機能に重要な役割を果たさないため、4つのエロンガーゼ酵素の全てで4つの異なるアミノ酸残基を有すると判定された追加的な22個の位置が、機能評価のための標的化位置としての検討から除外された。
【0240】
配列番号8内の残る86個の位置(すなわち位置1、3、4、5、9、12、21、22、27、28、29、32、35、37、41、42、45、47、48、51、52、53、54、57、58、60、62、63、66、67、70、71、73、74、80、83、84、85、89、94、98、101、104、105、107、108、111、115、127、131、132、143、149、152、153、155、156、161、168、169、179、181、182、192、196、204、207、209、210、211、216、218、222、223、225、229、236、239、242、244、245、247、250、254、257、および258)が、機能部位評価のための潜在的な標的と見なされた。EgD9e(配列番号8)、EaD9e(配列番号12)、およびE389E9e(配列番号4)中のこれらの各位置でコードされるアミノ酸残基の比較を下の表11に示す。
【0241】
【表15】
【0242】
上の表11で同定された86個の位置の内、図4Aの膜トポロジーモデルに基づいて、細胞膜周辺腔への最大近接を有する部位が、検討から除外された(すなわち位置45、47、48、51、52、53、54、57、58、60、62、63、66、67、70
、71、73、74、204、207、209、210、211、216、218、222、223、225、および229)。灰色の太字で強調表示された部位(すなわちEgD9eSの位置3、5、9、12、21、22、27、28、32、37、41、42、80、84、85、94、98、101、104、105、107、108、111、115、127、131、132、143、149、152、153、156、161、168、169、179、181、182、192、196、236、239、242、244、245、247、250、254、257、および258)をさらなる実験的評価のために選択した。
【0243】
EgD9eS−L35GのSlonoMax(登録商標)変異遺伝子を作成するSlonomics(登録商標)
Slonomics(登録商標)(米国特許第7,695,906号明細書)は、コンビナトリアルライブラリーを「コドン1つずつ」合成する普遍的構成単位として二本鎖DNAの三つ組みを使用する(Sloning Bio Technology,Puchheim,Germany)。ライブラリー生成のために、複数コドンをあらゆる所望の配列位置に並行して導入し得る。機能的バイアスの不在と、20個までのコドンを選択して、あらゆる比率で正確に制御送達する能力は、所望の変異体の完全なセットを含有する、ひときわ高品質のライブラリーをもたらす。
【0244】
SlonoMax(登録商標)遺伝子ライブラリー(全部で50個)は、このようにしてSloning Bio Technologyによって作成され、各遺伝子ライブラリーは、pZuFmEgD9ES−L35G(配列番号60)をテンプレートとして使用して、標的位置(すなわちEgD9eSの位置3、5、9、12、21、22、27、28、32、37、41、42、80、84、85、94、98、101、104、105、107、108、111、115、127、131、132、143、149、152、153、156、161、168、169、179、181、182、192、196、236、239、242、244、245、247、250、254、257または258)に、少なくとも16個の独立したユニークな配列変異を有する。
【0245】
実施例2に記載されるように、全てのEgD9eS−L35G変異体は、pZuFmEgD9ES−L35Gによって提供されるベクター主鎖にクローンし、引き続いてY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株に形質転換して培養した。形質転換細胞(凍結グリセロール貯蔵品として提供される)およびDNAは、Sloning Bio Technologyから得られた。形質転換細胞とDNAのごく一部を配列決定して確認した。
【0246】
実施例8
Δ9エロンガーゼ変換効率が改善されたEgD9eS−L35G SlonoMax(登録商標)ライブラリー変異体の同定
本実施例は、実施例6(配列番号59)で同定された変種タンパク質EgD9eS−L35Gと比較して、LAからEDAへのΔ9エロンガーゼ変換効率が改善されたEgD9eS−L35G SlonoMax(登録商標)変異体の同定を記載する。
【0247】
実施例2の「確認アッセイ」手順を使用し、新鮮な再画線塗抹MMプレート上の細胞培養を使用して、3mLの液体MMを含んでなる三連培養物を個々に接種して、SlonoMax(登録商標)ライブラリーからのコンストラクトによる807個のヤロウィア属(Yarrowia)形質転換体の脂肪酸プロファイルをスクリーニングした。807個の変異体に加えて、pZuFmEgD9ES−L35G(配列番号60)を含んでなるヤロウィア属(Yarrowia)Y2224株形質転換体を実験対照として三連で接種した。
【0248】
確認アッセイ中の選択された変異体からのデータを表12に提示し、3つの代表的EgD9eS−L35G対照のFAMEプロファイルをSlonoMax(登録商標)ライブラリー変異体を比較して、LAからEDAへの平均%変換の増大を実証する。より具体的には、各株について、(実施例2に記載されるようにして判定される)TFAの面積パーセント[「%TFA」]としての各脂肪酸濃度の平均(「平均」で示される)、およびLAからEDAへの平均%変換を下の表12に示す。脂肪酸は、実施例4の略称に基づいて同定される。各株の説明は、それぞれ変異EgD9eS遺伝子中に存在する特定のアミノ酸置換を示唆する。したがってEgD9eS−L35G/S9A株は、配列番号10に記載のEgD9eSの配列と比べてL35G変異およびS9A変異を有する変異EgD9eS遺伝子を含んでなる、変異pZuFmEgD9ESプラスミドを含んでなる。
【0249】
【表16】
【0250】
表12に提示される、複製EgD9eS−L35G対照の脂肪酸プロファイルおよびLAからEDAへの%変換が、先に提示されたEgD9eS−L35Gプロファイルとはいくぶん異なることは注目に値する。本実験セットでは、EgD9eS−L35G対照は、以前の分析と比較して「伸び悩んだ」(すなわちLAからEDAへの平均%変換が上で約18.1%と判定されたのに対し、LAからEDAへの%変換は、実施例6の表9では約26.6%および27.2%と判定された)。しかしEgD9eS−L35Gによる形質転換体は、4.3 EDA%TFA(平均、前出)を産生し、これはEgD9eSによる形質転換体中の生成を顕著に上回った(すなわち3.1 EDA%TFA[実施例4、表5]、2.9 EDA%TFA[実施例4、表6]、および3.5 EDA%TFA[実施例6、表9])。この理由から、表12で提示されるEgD9eS部位評価ライブラリーからの変異体比較のための基準として、本実験のEgD9eS−L35G性能に加えて、EgD9eS−L35Gの機能解析を反復した以前の実験からの性能(データ示さず)を使用した。
【0251】
表12に提示される26個の選択されたエロンガーゼ変種の内、11個は表12の対照データと比較して、同等のまたは改善されたΔ9エロンガーゼ変換活性を実証すると同定された(太字で強調表示される)。これらの変異体は、EgD9eS−L35G/S9D(141%)、EgD9eS−L35G/A21V(118%)、EgD9eS−L35G/V32F(104%)、EgD9eS−L35G/Y84C(144%)、EgD9eS−L35G/L108G(104%)、EgD9eS−L35G/W132T(100%)、EgD9eS−L35G/M143N(96%)、EgD9eS−L35G/L161T(131%)、EgD9eS−L35G/I179R(141%)、EgD9eS−L35G/C236N(102%)、およびEgD9eS−L35G/Q244N(134%)を含み、EgD9eSと比較したΔ9エロンガーゼ変換活性を括弧内に示す。したがってLAからEDAへの変換効率の44%までの改善が、実証された。
【0252】
実施例9
EgD9eS−L35G/S9D/A21V/V32F/Y84C/L108G/W132T/M143N/L161T/I179R/C236N/Q244Nコンビナトリアルライブラリーの作成
本実施例は、L35G変異を含んでなるEgD9eS変異体中に、上の実施例8で同定された有益な変異(すなわちS9D、A21V、V32F、Y84C、L108G、W132T、M143N、L161T、I179R、C236N、およびQ244N)の様々な組み合わせを共に「スタック」する、変異EgD9eSコンビナトリアルライブラリーの合成を記載する。
【0253】
コンビナトリアルライブラリー構築のための合成プライマーの作成
11対のプライマーは、配列番号64〜85に記載されるように商業的に合成された(下の表13参照)。各プライマー対は、EgD9eS−L35G遺伝子に、S9D、A21V、V32F、Y84C、L108G、W132T、M143N、L161T、I179R、C236N、およびQ244Nの変異の1つを導入するようにデザインされた。
【0254】
T4ポリヌクレオチドキナーゼ[「PNK」](カタログ番号70031Z;USB Corp.)を使用して、プライマーを37℃で60分間リン酸化し、次に65℃で20分間不活性化した。各20μlのリン酸化反応混合物は、2.0μlの10×T4 PNK緩衝液、15.0μlのプライマーDNA(約7μM)、0.6μlの100mM ATP、0.4μlのT4 PNK、および2.0μlの水を含有した。
【0255】
EgD9eS−L35Gのコンビナトリアル変異体遺伝子を作成するための複数変異部位変異誘発
Change−IT(商標)複数変異部位特異的変異誘発キット(カタログ番号78480、USB Corporation,Cleveland,OH)を使用して、各反応(最終反応を除く)が、プライマーセット「A」の順方向プライマーおよび逆方向プライマー、そしてプライマーセット「B」の順方向プライマーおよび逆方向プライマーの封入に基づいて、2つの新しい変異を導入する、一連の6つの反応中で、EgD9eS−L35GにS9D、A21V、V32F、Y84C、L108G、W132T、M143N、L161T、I179R、C236N、およびQ244N変異を導入した(表13)。一連の反応の最初のテンプレートがEgD9eS−L35Gであった一方、Change−IT(商標)反応1の生成物がChange−IT(商標)反応2のテンプレートの役割果たし、それが順次続いた。
【0256】
【表17】
【0257】
より具体的には、それぞれ2.5μlの10×Change−IT(商標)緩衝液、2.5μlのリン酸化順方向プライマー、2.5μlのリン酸化逆方向プライマー、1.0μlのテンプレート(50ng/μl)、15.5μlのヌクレアーゼ非含有水、および1.0μlのChange−IT(商標)FideliTaq酵素を含んでなる、2つの25μlのPCR反応混合物を調製した。第1の反応がプライマーセット「A」からのプライマーを利用した一方、第2の反応はプライマーセット「B」からのプライマーを利用した。以下の条件を使用して、PCR増幅を実施した。95℃で2分間、それに続く95℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、および68℃で25分間の伸長/ライゲーションを30サイクル。68℃で30分間の最終伸長/ライゲーションサイクルを実施し、4℃での反応終結がそれに続いた。
【0258】
増幅に続いて、DpnI酵素の添加によってテンプレートを除去し、消化を37℃で3時間実施した。PCR DNAを使用して、電気穿孔によって大腸菌(E.coli)Top 10エレクトロコンピテント細胞(カタログ番号C404052、Invitrogen,Carlsbad,CA)を形質転換した。形質転換細胞を100mg/Lアンピシリン添加LB寒天プレート上に伸ばして塗り、37℃のインキュベーター内で一晩培養した。製造業者のプロトコルに従って、QIAprep(登録商標)Spin Miniprepキット(QiagenInc.,Valencia,CA)を使用して、形質転換大腸菌(E.coli)細胞からプラスミドDNAを抽出した。次に精製DNAを次のChange−IT(商標)反応でテンプレートとして使用した。11個の変異の残りを最初のEgD9eS−L35Gテンプレートに導入する6つめの反応に続いて、上述したように形質転換体大腸菌(E.coli)細胞からDNAを精製した。次にDNAをY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株(前出、実施例2)に形質転換した。
【0259】
実施例10
Δ9エロンガーゼ変換効率が改善されたEgD9eS−L35G/S9D/A21V/V32F/Y84C/L108G/W132T/M143N/L161T/I179R/C236N/Q244Nコンビナトリアルライブラリー変異体の同定
本実施例は、1)野生型タンパク質EgD9eS(配列番号10)と比較して、LAからEDAへのΔ9エロンガーゼ変換効率が改善されたEgD9eS−L35G/S9D/A21V/V32F/Y84C/L108G/W132T/M143N/L161T/I179R/C236N/Q244Nコンビナトリアルライブラリー変異体の同定;2)これらのEgD9eS変異体の配列分析;および3)Δ9エロンガーゼ変換効率の改善を確認するための配列決定EgD9PeS変異体の再現を記載する。
【0260】
実施例2の迅速スクリーニング「プレートアッセイ」を使用して、コンビナトリアルライブラリー(実施例9)からのコンストラクトによる2,388個のヤロウィア属(Yarrowia)形質転換体の脂肪酸プロファイルをスクリーニングした。これらの変異体のほとんどは、野性型対照EgD9eS(配列番号10)と比較してLAからEDAへの変換の低下を呈示した。しかし5つの形質転換体は、実施例2の確認アッセイに基づいて、対照と比較して改善されたΔ9伸長活性を呈示することが確認された。
【0261】
コロニーPCRを使用して、変異EgD9eS遺伝子のDNA配列を判定した。手短に述べると、無菌ピペットチップを使用して、新鮮画線塗抹プレートから少量の酵母細胞を採取し、細胞を20μlの分子等級水に懸濁した。細胞懸濁液(2μl)を製造会社(Takara Biotechnology Co.,LTD.)の推奨事項に従って調製したTaKaRa Ex Taq PCRミックスに移した。コロニーPCRのために使用されたプライマーは、順方向プライマーFBAIN−F(配列番号98)および逆方向プライマーY1026(配列番号99)であった。サーマルサイクラープログラムは、94℃で5分間の最初のテンプレート変性と、それに続く40サイクルの94℃で30秒間の変性、56℃で30秒間のアニーリング、および72℃で3分間の伸長を含んだ。72℃で6分間の最終伸長を実施した。
【0262】
PCR産物をプライマーFBAIN−F(配列番号98)およびY1026(配列番号99)によって配列決定した。DNA配列データの解析は、変異EgD9eS遺伝子内のヌクレオチド置換と発現されたアミノ酸置換を明らかにした。表14に示すように、変異EgD9eS遺伝子に、そして変異EgD9eS遺伝子を含んでなる変異pZuFmEgD9ESプラスミドに、アミノ酸置換を示唆する名称を与えた。
【0263】
【表18】
【0264】
表14のアミノ酸置換に基づいて、部位特異的変異誘発のための新しいプライマーをデザインした。次にpZuFmEgD9ES(図2;配列番号25)に、「メガプライマー」内のEgD9eS変異体を導入するようにデザインされた反応中でこれらのプライマーを利用し、それによって非変異EgD9eS遺伝子を表14に列挙される様々な変異EgD9eS遺伝子で置換した。
【0265】
これは、実施例3に記載されるように、QuikChange(登録商標)II XL部位特異的変異誘発キット(カタログ番号200524;Stratagene,La Jolla,CA)を使用して達成された。実施例2に記載されるように、これらの変異遺伝子を大腸菌(E.coli)Top 10エレクトロコンピテント細胞に形質転換して、精製し、配列決定し、引き続いてY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株に形質転換した。このようにして、表14に示される変異EgD9eS遺伝子をプラスミド上に再現し、Y2224株に再導入して戻し、EgD9eSコンビナトリアル変異体によって呈示されるΔ9エロンガーゼ変換効率の改善が、同定されたアミノ酸置換の結果であると考えられることを確認した。
【0266】
これらの確認アッセイからのデータを表15に提示し、個々のpZuFmEgD9ES対照形質転換体のFAMEプロファイルをコンビナトリアルライブラリーの変異体と比較する。保守的比較のために、各株について示されるデータは、各株についてLAからEDAへの%変換が最も高い3分離株のFAMEプロファイルを表す。より具体的には、各株について、(実施例2に記載されるようにして判定される)TFAの面積パーセントとしての各脂肪酸濃度[「%TFA」]、およびLAからEDAへの%変換を下に示し、平均値は灰色で強調され「平均」として示される。脂肪酸は、実施例4の略称に基づいて同定される。
【0267】
【表19】
【0268】
配列番号10のコドン最適化EgD9eS遺伝子(非変異体)を含んでなる、pZuFmEgD9ESで形質転換されたY.リポリティカ(Y.lipolytica)Y2224株のクローンは、平均で2.5 EDA%TFAを産生し、これらの3つのクローンのLAからEDAへの平均変換効率[「%変換」]は約16.1%と判定された。対照的に、変異株EgD9EN−427のLAからEDAへの平均%変換は17.8%(または対照との比較で110%)であった。同様に、変異株EgD9EN−1043のLAからEDAへの平均%変換は17.5%(または対照との比較で108%)であった。変異株EgD9EN−1534のLAからEDAへの平均%は16.8%(または対照との比較で104%)であり;変異株EgD9EN−1635の平均%変換は18.0%(または対照との比較で111%)であり;変異株EgD9EN−1734の平均%変換は20.0(または対照との比較で123%)であった。
【0269】
したがってこれらの実験は、それによってEgD9eSコンビナトリアルライブラリー変異体EgD9EN−427、EgD9EN−1043、EgD9EN−1534、EgD9EN−1635、およびEgD9EN−1734によって呈示されたΔ9エロンガーゼ変換効率の改善を確認し、改善は4〜23%の範囲に及んだ。
【0270】
実施例11
総脂肪酸の約58.7%のEPAを産生するヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Z1978株の作成
本実施例は、Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路の発現を介して、38.3%の総脂質含量[「TFA%DCW」]で、総脂質に対して約58.7%のEPAを産生できる、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC#20362に由来する、Z1978株の構築を記載する。この株は、L35G変異(すなわちEgD9eS−L35G[配列番号58および59])を含んでなる、実施例5および6のΔ9エロンガーゼ部位飽和変異体を含む。
【0271】
Z1978株(図6)の開発には、Y2224、Y4001、Y4001U、Y4036、Y4036U、L135、L135U9、Y8002、Y8006U6、Y8069、Y8069U、Y8154、Y8154U、Y8269、Y8269U、Y8412U6、Y8647、Y8467U、Y9028、Y9028U、Y9502、およびY9502U株の構築が必要であった。
【0272】
株構築中のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の脂肪酸分析
脂肪酸[「FA」]分析のために、Bligh,E.G.& Dyer,W.J.(Can.J.Biochem.Physiol.,37:911−917(1959))に記載されるようにして、細胞を遠心分離によって収集し脂質を抽出した。ナトリウムメトキシドによる脂質抽出物のエステル交換によって脂肪酸メチルエステル[「FAME」]を調製し(Roughan,G.and Nishida I.,Arch Biochem Biophys.,276(1):38−46(1990))、引き続いて30m×0.25mm(i.d.)HP−INNOWAX(Hewlett−Packard)カラムを装着した、Hewlett−Packard 6890 GCで分析した。オーブン温度は、170℃(25分間の保持時間)から3.5℃/分で185℃にした。
【0273】
直接塩基エステル交換のために、ヤロウィア(Yarrowia)細胞(0.5mLの培養物)を収集して蒸留水で1回洗浄し、Speed−Vac内で5〜10分間真空乾燥させた。ナトリウムメトキシド(100μlの1%)および既知量のC15:0トリアシルグリセロール(C15:0 TAG;カタログ番号T−145、Nu−Check Prep,Elysian,MN)をサンプルに添加し、次にサンプルをボルテックスして30℃で50分間振盪した。3滴の1M NaClおよび400μLのヘキサンを添加した後、サンプルをボルテックスして遠沈した。上層を取り出して、GCによって分析した。
【0274】
代わりとして、発酵またはフラスコサンプルのいずれかからのブロスサンプルをルーチン分析するために、Lipid Analysis,William W.Christie,2003に記載される塩基触媒エステル交換法の変法を使用した。具体的には、ブロスサンプルを室温水中で迅速に解凍し、次に0.22μmのCorning(登録商標)Costar(登録商標)Spin−X(登録商標)遠心管フィルター(カタログ番号8161)と共に、風袋を測定した2mL微量遠心管内に量り入れた(0.1mg)。あらかじめ測定したDCWに応じて、サンプル(75〜800μl)を使用した。エッペンドルフ5430遠心分離機を使用して、サンプルを14,000rpmで5〜7分間、またはブロスを除去するのに必要な時間遠心分離した。フィルターを取り出して液体を排出し、約500μlの脱イオン水をフィルターに添加してサンプルを洗浄した。遠心分離して水を除去した後、フィルターを再度取り出して、液体を排出してフィルターを再度挿入した。遠心管を遠心分離機に今度は蓋を開けたまま、約3〜5分間再度挿入して乾燥させた。次にフィルターに遠心管の半ばまで切り込みを入れて、新鮮な2mL丸底エッペンドルフ管(カタログ番号2236335−2)に挿入した。
【0275】
切断されたフィルター容器の縁のみに接触し、サンプルまたはフィルター材料に接触しない適切な道具によって、フィルターを遠心管の底に押しつけた。既知量のトルエン中のC15:0 TAG(前出)、および500μlの新鮮に調整されたメタノール溶液中の1%ナトリウムメトキシドを添加した。サンプルペレットを適切な道具によってしっかりと砕き、遠心管を閉じて50℃ヒートブロックに30分間入れた(VWR カタログ番号12621−088)。次に遠心管を少なくとも5分間放冷した。次に400μlのヘキサンおよび500μlの1M NaCl水溶液を添加して、遠心管を2×6秒間ボルテックスして1分間遠心分離した。およそ150μlの上(有機)層をインサート付きGCバイアルに入れ、GCによって分析した。
【0276】
GC分析を通じて記録されたFAMEピークは、既知の脂肪酸との比較でそれらの滞留時間によって同定され、FAMEピーク面積を既知量の内部基準(C15:0 TAG)と比較することで定量化された。したがってあらゆる脂肪酸FAME[「μg FAME」]の近似量(μg)は、式、(特定脂肪酸のFAMEピーク面積/標準FAMEピーク面積)(標準C15:0 TAGのμg)に従って計算され、1μgのC15:0 TAGは0.9503μgの脂肪酸に等しいので、あらゆる脂肪酸の量(μg)[「μgFA」]は、式、(特定脂肪酸のFAMEピーク面積/標準FAMEピーク面積)(標準C15:0 TAGのμg)0.9503に従って計算される。換算係数0.9503は大部分の脂肪酸について測定された値の近似であり、それは0.95〜0.96の範囲にわたることに留意されたい。
【0277】
TFAの重量%として個々の各脂肪酸量を要約する脂質プロフィールは、個々のFAMEピーク面積を全てのFAMEピーク面積の和で除して100を乗じて判定される。
【0278】
フラスコアッセイによる株構築中のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の総脂質含量および組成の分析
Y.リポリティカ(Y.lipolytica)の特定株の総脂質含量および組成の詳細な分析のために、フラスコアッセイを次のように行った。具体的には、1ループ量の新鮮な画線塗抹細胞を3mLのFM培地に接種して、250rpmおよび30℃で培一晩養した。OD600nmを測定し、最終OD600nmが0.3になるように、125mLフラスコ内の25mLFM培地に細胞のアリコートを添加した。250rpmおよび30℃の振盪インキュベーターに2日間入れた後に、6mLの培養物を遠心分離によって収集し、125mLフラスコ内の25mLのHGMに再懸濁した。250rpmおよび30℃の振盪インキュベーターに5日間入れた後に、脂肪酸分析(前出)のために1mLのアリコートを使用し、乾燥細胞重量[「DCW」]測定のために10mLを乾燥させた。
【0279】
DCW測定のために、Beckman GS−6R遠心分離機内のBeckman GH−3.8回転子内において、4000rpmで5分間の遠心分離によって10mLの培養物を収集した。ペレットを25mLの水に再懸濁して、上のように再収集した。洗浄ペレットを20mLの水に再懸濁し、あらかじめ秤量したアルミニウムパンに移した。細胞懸濁液を80℃の真空オーブン内で一晩乾燥させた。細胞重量を測定した。
【0280】
細胞の総脂質含量[「TFA%DCW」]を計算し、各脂肪酸濃度をTFA[「%TFA」]の重量%として、EPA含量を乾燥細胞重量のパーセント[「EPA%DCW」]として表にするデータと併せて考察した。フラスコアッセイからのデータを細胞の全乾燥細胞重量[「DCW」]、細胞の総脂質含量[「TFA%DCW」]、TFAの重量%としての各脂肪酸濃度[「%TFA」]、および乾燥細胞重量のパーセントとしてのEPA含量[「EPA%DCW」]を要約する表として提示する。より具体的には、脂肪酸は、16:0(パルミチン酸)、16:1(パルミトレイン酸)、18:0(ステアリン酸)、18:1(オレイン酸)、18:2(LA)、ALA、EDA、DGLA、ARA、ETrA、ETA、EPA、その他として同定される。
【0281】
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y9502株の遺伝子型
Y9502株の作成は、米国特許出願公開第2010−0317072−A1号明細書に記載される。ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に由来するY9502株は、Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路の発現を通じて、総脂質に対して約57.0%のEPAを産生できた(図6)。
【0282】
野生型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362と比較したY9502株の最終遺伝子型は、次の通りであった。Ura+,Pex3−,unknown1−,unknown2−,unknown3−,unknown4−,unknown5−,unknown6−,unknown7−,unknown8−,unknown9−,unknown10−,YAT1::ME3S::Pex16,GPD::ME3S::Pex20,YAT1::ME3S::Lip1,FBAINm::EgD9eS::Lip2,EXP1::EgD9eS::Lip1,GPAT::EgD9e::Lip2,YAT1::EgD9eS::Lip2,FBAINm::EgD8M::Pex20,EXP1::EgD8M::Pex16,FBAIN::EgD8M::Lip1,GPD::EaD8S::Pex16(2copies),YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1,YAT1::EgD9eS/EgD8M::Aco,FBAINm::EaD9eS/EaD8S::Lip2,GPD::FmD12::Pex20,YAT1::FmD12::Oct,EXP1::FmD12S::Aco,GPDIN::FmD12::Pex16,EXP1::EgD5M::Pex16,FBAIN::EgD5SM::Pex20,GPDIN::EgD5SM::Aco,GPM::EgD5SM::Oct,EXP1::EgD5SM::Lip1,YAT1::EaD5SM::Oct,FBAINm::PaD17::Aco,EXP1::PaD17::Pex16,YAT1::PaD17S::Lip1,YAT1::YlCPT1::Aco,YAT1::MCS::Lip1,FBA::MCS::Lip1,YAT1::MaLPAAT1S::Pex16.略称は、次のとおり:FmD12は、フザリウム・モニリフォルメ(Fusarium moniliforme)Δ12デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,504,259号明細書]であり;FmD12Sは、F.モニリフォルメ(F.moniliforme)[米国特許第7,504,259号明細書]に由来するコドン最適化Δ12デサチュラーゼ遺伝子であり;ME3Sは、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)[米国特許第7,470,532号明細書]に由来するコドン最適化C16/18エロンガーゼ遺伝子であり;EgD9eは、ミドリムシ(Euglena gracilis)Δ9エロンガーゼ遺伝子[米国特許第7,645,604号明細書]であり;EgD9eSは、ミドリムシ(E.gracilis)[米国特許第7,645,604号明細書]に由来するコドン最適化Δ9エロンガーゼ遺伝子であり;EgD8Mは、ミドリムシ(E.gracilis)[米国特許第7,256,033号明細書]に由来する合成変異Δ8デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,709,239号明細書]であり;EaD8Sは、ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabaena)[米国特許第7,790,156号明細書]に由来するコドン最適化Δ8デサチュラーゼ遺伝子であり;E389D9eS/EgD8Mは、ユートレプチエラ属(Eutreptiella)CCMP389種Δ9エロンガーゼ(米国特許第7,645,604号明細書)に由来するコドン最適化Δ9エロンガーゼ遺伝子(「E389D9eS」)と、Δ8デサチュラーゼ「EgD8M」(前出)[米国特許出願公開第2008−0254191−A1号明細書]とを連結させて作成されたDGLAシンターゼであり;EgD9eS/EgD8Mは、Δ9エロンガーゼ「EgD9eS」(前出)とΔ8デサチュラーゼ「EgD8M」(前出)[米国特許出願公開第2008−0254191−A1号明細書]とを連結させて作成されたDGLAシンターゼであり;EaD9eS/EgD8Mは、E.アナベナ(E.anabaena)Δ9エロンガーゼ[米国特許第7,794,701号明細書]に由来するコドン最適化Δ9エロンガーゼ遺伝子(「EaD9eS」)と、Δ8デサチュラーゼ「EgD8M」(前出)[米国特許出願公開第2008−0254191−A1号明細書]とを連結させて作成されたDGLAシンターゼであり;EgD5MおよびEgD5SMは、ミドリムシ(E.gracilis)[米国特許第7,678,560号明細書]に由来する合成変異Δ5デサチュラーゼ遺伝子[米国特許出願公開第2010−0075386−A1号明細書]であり;EaD5SMは、E.アナベナ(E.anabaena)[米国特許第7,943,365号明細書]に由来する合成変異Δ5デサチュラーゼ遺伝子[米国特許出願公開第2010−0075386−A1号明細書]であり;PaD17は、ピシウム・アファニデルマタム(Pythium aphanidermatum)Δ17デサチュラーゼ遺伝子[米国特許第7,556,949号明細書]であり;PaD17Sは、P.アファニデルマタム(P.aphanidermatum)[米国特許第7,556,949号明細書]に由来するコドン最適化Δ17デサチュラーゼ遺伝子であり;YlCPT1は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ジアシルグリセロールコリンホスホトランスフェラーゼ遺伝子[米国特許第7,932,077号明細書]であり;MCSは、リゾビウム・レグミノサーラム(Rhizobium leguminosarum)次亜種ビシアエ(viciae)3841[米国特許出願公開第2010−0159558−A1号明細書]に由来するコドン最適化マロニルCoAシンセターゼ遺伝子であり、MaLPAAT1Sは、モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)[米国特許第7,879,591号明細書]に由来するコドン最適化リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素遺伝子である。
【0283】
Y9502株の総脂質含量および組成の詳細な分析のために、細胞を二段階で合計7日間培養するフラスコアッセイを実施した。分析に基づいて、Y9502株は、3.8g/L DCW、37.1 TFA%DCW、21.3 EPA%DCWを産生し、脂質プロフィールは、16:0(パルミチン酸)−2.5、16:1(パルミトレイン酸)−0.5、18:0(ステアリン酸)−2.9、18:1(オレイン酸)−5.0、18:2(LA)−12.7、ALA−0.9、EDA−3.5、DGLA−3.3、ARA−0.8、ETrA−0.7、ETA−2.4、EPA−57.0、その他−7.5であり、各脂肪酸濃度はTFAの重量%[「%TFA」]である。
【0284】
Y9502U(Ura3−)株の作成
Y9502株中でUra3遺伝子を中断するために、SalI/PacI消化されたコンストラクトpZKUM(図7A;配列番号89;参照によって本明細書に援用する、米国特許出願公開第2009−0093543−A1号明細書の表15に記載される)を使用して、一般方法に従って、Ura3変異遺伝子をY9502株のUra3遺伝子に組み込んだ。合計27個の形質転換体(第1群から選択された8個の形質転換体、第2群から選択された8個の形質転換体、および第3群から選択された11個の形質転換体を含んでなる)を最少培地+5−フルオロオロト酸[「MM+5−FOA」]選択プレート上で培養して、30℃に2〜5日間保った。さらなる実験は、形質転換体の第3群のみが、真のUra−表現型を有すると判定した。
【0285】
Ura−細胞をMM+5−FOAプレートから掻き取って、一般方法に従って脂肪酸分析を行った。このようにして、GC分析は、第3群のMM+5−FOAプレート上で培養されたpZKUM−形質転換体#1、#3、#6、#7、#8、#10、および#11中に、それぞれTFAの28.5%、28.5%、27.4%、28.6%、29.2%、30.3%、および29.6%のEPAがあったことを示した。これらの7株をそれぞれ、Y9502U12株、Y9502U14株、Y9502U17株、Y9502U18株、Y9502U19株、Y9502U21株、およびY9502U22株と命名した(集合的にY9502U)。
【0286】
Z1978の株作成
次に、コンストラクトpZKL3−9DP9N(図7B;配列番号90)が作成されて、1つのΔ9デサチュラーゼ遺伝子、1つのコリンリン酸シチジリルトランスフェラーゼ遺伝子、および1つのΔ9エロンガーゼ変異遺伝子をY9502U株のヤロウィア(Yarrowia)YALI0F32131p遺伝子座(GenBank受入番号XM_506121)に組み込んだ。pZKL3−9DP9Nプラスミドは、以下の構成要素を含有した。
【0287】
【表20】
【0288】
pZKL3−9DP9NプラスミドをAscI/SphIで消化し、次にY9502U17株の形質転換のために使用した。形質転換細胞を最少培地[「MM」]プレート上に播種して、30℃に3〜4日間保った。単一コロニーをMMプレート上に再度画線塗抹して、次に30℃の液体MMに接種し、250rpm/分で2日間振盪した。細胞を遠心分離によって収集して高グルコース培地[「HGM」]に再懸濁し、次に250rpm/分で5日間振盪した。細胞に、前出の脂肪酸分析を行った。
【0289】
GC分析は、pZKL3−9DP9NがあるY9502U17の選択された96株の大部分が、TFAの50〜56%のEPAを産生したことを示した。TFAの約59.0%、56.6%、58.9%、56.5%、および57.6%のEPAを産生した5株(すなわち、#31、#32、#35、#70、および#80)をそれぞれ株Z1977、Z1978、Z1979、Z1980、およびZ1981と命名した。
【0290】
野生型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362と比較したこれらのpZKL3−9DP9N形質転換株の最終遺伝子型は、次の通りであった。Ura+,Pex3−,unknown1−,unknown2−,unknown3−,unknown4−,unknown5−,unknown6−,unknown7−,unknown8−,unknown9−,unknown10−,unknown11−,YAT1::ME3S::Pex16,GPD::ME3S::Pex20,YAT1::ME3S::Lip1,FBAINm::EgD9eS::Lip2,EXP1::EgD9eS::Lip1,GPAT::EgD9e::Lip2,YAT1::EgD9eS::Lip2,YAT1::EgD9eS−L35G::Pex20,FBAINm::EgD8M::Pex20,EXP1::EgD8M::Pex16,FBAIN::EgD8M::Lip1,GPD::EaD8S::Pex16(2copies),YAT1::E389D9eS/EgD8M::Lip1,YAT1::EgD9eS/EgD8M::Aco,FBAINm::EaD9eS/EaD8S::Lip2,GPDIN::YlD9::Lip1,GPD::FmD12::Pex20,YAT1::FmD12::Oct,EXP1::FmD12S::Aco,GPDIN::FmD12::Pex16,EXP1::EgD5M::Pex16,FBAIN::EgD5SM::Pex20,GPDIN::EgD5SM::Aco,GPM::EgD5SM::Oct,EXP1::EgD5SM::Lip1,YAT1::EaD5SM::Oct,FBAINm::PaD17::Aco,EXP1::PaD17::Pex16,YAT1::PaD17S::Lip1,YAT1::YlCPT1::Aco,YAT1::MCS::Lip1,FBA::MCS::Lip1,YAT1::MaLPAAT1S::Pex16,EXP1::YlPCT::Pex16.Z1977、Z1978、Z1979、Z1980、およびZ1981株中のYALI0F32131p遺伝子座(GenBank受入番号XM_50612)のノックアウトは、pZKL3−9DP9Nでの形質転換によって生じたEPA株のいずれでも確認されなかった。Z1977、Z1978、Z1979、Z1980、およびZ1981株のYPDプレートからの細胞を培養し、総脂質含量と組成についてフラスコアッセイにより分析した。下の表17は、これらの各株の総脂質含量および組成を要約する。具体的には、表は、全DCW、TFA%DCW、TFAの重量%としての各脂肪酸濃度[「%TFA」]、およびEPA%DCWを要約する。
【0291】
【表21】
【0292】
Z1978株に、引き続いて部分的ゲノム配列決定を行った。この研究は、米国仮特許出願第61/428,277号明細書(E.I.duPont de Nemours & Co.,Inc.、代理人整理番号CL5267USPRV、2010年12月30日出願)に記載されるように、ヤロウィア(Yarrowia)ゲノムに組み込まれた6つのΔ5デサチュラーゼ遺伝子(すなわちキメラ遺伝子EXP1::EgD5M::Pex16、FBAIN::EgD5SM::Pex20、GPDIN::EgD5SM::Aco、GPM::EgD5SM::Oct、EXP1::EgD5SM::Lip1、YAT1::EaD5SM::Oct)の代わりに、遺伝子操作株は、実際には4つのΔ5デサチュラーゼ遺伝子(すなわちEXP1::EgD5M::Pex16、FBAIN::EgD5SM::Pex20、EXP1::EgD5SM::Lip1、およびYAT1::EaD5SM::Oct)のみを保有したと判定した。
【0293】
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowialipolytica)Y9502株およびZ1978株の比較
Z1978株中で発現される異種遺伝子は、1つのΔ9デサチュラーゼ遺伝子、1つのコリンリン酸シチジリルトランスフェラーゼ遺伝子、および1つのΔ9エロンガーゼ変異体の追加的な発現だけが、Y9502株中で発現されるものと異なる(すなわち配列番号58および59に記載のEgD9eS−L35G)。LAおよびALAからEPAへの全Δ9エロンガーゼ変換効率[「%変換」]は、表18でY9502株およびZ1978株について、次式に従って計算された。([生成物]/[基質+生成物])100。式中、生成物はEDA%TFA、ETrA%TFA、DGLA%TFA、ETA%TFA、ARA%TFA、およびEPA%TFAの合計であり、基質はLA%TFA、ALA%TFA、EDA%TFA、ETrA%TFA、DGLA%TFA、ETA%TFA、ARA%TFA、およびEPA%TFAの合計であった。
【0294】
【表22】
【0295】
上で示されるように、全Δ9エロンガーゼ変換効率がY9502株で83.3%と判定された一方、Z1978株では効率が改善された(すなわち85.3%)。このΔ9エロンガーゼ活性の改善に基づいて、EgD9eS−L35Gは、PUFAの生合成のための機能的Δ9エロンガーゼ/Δ8デサチュラーゼ経路で使用される有用な変異遺伝子と見なされる。
本実施例で実証されるように、本明細書の発明の変異Δ9エロンガーゼのいずれも、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の好ましい株の発現のために、適切なベクターに同様に導入し得る。
【0296】
以上、本発明を要約すると下記のとおりである。
1.(a)Δ9エロンガーゼ活性を有する変異ポリペプチドをコードし、
i)L35F変異;
ii)L35M変異;
iii)L35G変異;
iv)L35G変異と、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、Q107E、L108G、G127L、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、Q244N、A254W、およびA254Yからなる群から選択される、少なくとも1つのその他の変異;
v)L35G、A21V、L108G、およびI179R変異;
vi)L35G、W132T、およびI179変異;
vii)L35G、S9D、Y84C、およびI179R変異;
viii)L35G、Y84C、I179R、およびQ244N変異;
ix)L35G、A21V、W132T、I179R、およびQ244N変異;
x)K58RおよびI257T変異;
xi)D98G変異;
xii)L130MおよびV243A変異;および
i)K58R、L35F、L35G、L35M、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、D98G、Q107E、L108G、G127L、L130M、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、V243A、Q244N、A254W、A254Y、およびI257Tからなる群から選択される、少なくとも2つの変異を含んでなる任意の組み合わせ
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸変異によって配列番号10と異なる、配列番号22に記載のアミノ酸配列を有するヌクレオチド配列;
(b)(a)部分のヌクレオチド配列と同数のヌクレオチドからなり100%相補的である、(a)部分のヌクレオチド配列の相補体
を含んでなる、単離ポリヌクレオチド。
2.ヌクレオチド配列が、配列番号28、配列番号31、配列番号34、配列番号37、配列番号40、配列番号58、配列番号61、配列番号86、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号100、配列番号103、配列番号106、および配列番号109からなる群から選択される、上記1に記載の単離ポリヌクレオチド。
3.上記1に記載の単離ポリヌクレオチドによってコードされる、Δ9エロンガーゼ活性を有する変異ポリペプチド。
4.タンパク質配列が、配列番号29、配列番号32、配列番号35、配列番号38、配列番号41、配列番号59、配列番号62、配列番号87、配列番号101、配列番号104、配列番号107、および配列番号110からなる群から選択される、上記3に記載の変異ポリペプチド。
5.Δ9エロンガーゼ活性が、配列番号10に記載のポリペプチドのΔ9エロンガーゼ活性と少なくとも機能的にほぼ同等である、上記3または4に記載の変異ポリペプチド。
6.リノール酸からエイコサジエン酸への%基質変換が、配列番号10に記載のポリペプチドのリノール酸からエイコサジエン酸への%基質変換と比べて、少なくとも110%である、上記5に記載の変異ポリペプチド。
7.リノール酸からエイコサジエン酸への%基質変換が、配列番号10に記載のポリペプチドのリノール酸からエイコサジエン酸への%基質変換と比べて、少なくとも120%である、上記6に記載の変異ポリペプチド。
8.少なくとも1つの調節制御配列に作動可能に連結された、上記1に記載の単離ポリヌクレオチドを含んでなる組換えコンストラクト。
9.上記1に記載の単離ポリヌクレオチドを含んでなる、形質転換細胞。
10.前記細胞が、植物、細菌、酵母、藻類、ユーグレナ属、ストラメノパイル、卵菌綱、および真菌からなる群から選択される、上記9に記載の形質転換細胞。
11.細胞がその乾燥細胞質量の少なくとも約25%を油として産生する油性酵母である、上記10に記載の形質転換細胞。
12.油性酵母が、少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結された単離ポリヌクレオチドを含んでなる、少なくとも1つの組換えDNAコンストラクトをさらに含んでなり、組換えDNAコンストラクトが、Δ4デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ8デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、Δ9デサチュラーゼ、Δ12デサチュラーゼ、Δ15デサチュラーゼ、Δ17デサチュラーゼ、C14/16エロンガーゼ、C16/18エロンガーゼ、C18/20エロンガーゼ、およびC20/22エロンガーゼからなる群から選択されるポリペプチドをコードする、上記11に記載の形質転換細胞。
13.油性酵母によって産生される油が、アラキドン酸、エイコサジエン酸、エイコサペンタエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサトリエン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸からなる群から選択される長鎖多価不飽和脂肪酸を含んでなる、上記12に記載の形質転換細胞。
14.油性酵母が、ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロ
ドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、およびリポマイセス(Lipomyces)からなる群から選択される、上記10または11に記載の形質転換細胞。
15.細胞がヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)である、上記14に記載の形質転換細胞。
16.a)i)少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結され、Δ9エロンガーゼ活性を有する変異ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含んでなり、
(a)L35F変異;
(b)L35M変異;
(c)L35G変異;
(d)L35G変異と、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、Q107E、L108G、G127L、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、Q244N、A254W、およびA254Yからなる群から選択される、少なくとも1つのその他の変異;
(e)L35G、A21V、L108G、およびI179R変異;
(f)L35G、W132T、およびI179変異;
(g)L35G、S9D、Y84C、およびI179R変異;
(h)L35G、Y84C、I179R、およびQ244N変異;
(i)L35G、A21V、W132T、I179R、およびQ244N変異;
(j)K58RおよびI257T変異;
(k)D98G変異;
(l)L130MおよびV243A変異;および
(m)K58R、L35F、L35G、L35M、S9A、S9D、S9G、S9I、S9K、S9Q、Q12K、A21D、A21T、A21V、V32F、Y84C、D98G、Q107E、L108G、G127L、L130M、W132T、M143N、M143W、L161T、L161Y、W168G、I179M、I179R、C236N、V243A、Q244N、A254W、A254Y、およびI257Tからなる群から選択される少なくとも2つの変異を含んでなる任意の組み合わせ
からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸変異によって、配列番号10と異なる、配列番号22に記載のアミノ酸配列を有する組換えコンストラクト;および
ii)リノール酸およびα−リノレン酸からなる群から選択される基質脂肪酸源
を含んでなる、油性酵母を備えるステップと;
b)Δ9エロンガーゼ活性を有する変異ポリペプチドをコードする組換えコンストラクトが発現され、基質脂肪酸が生産物脂肪酸に変換される条件下で、ステップ(a)の酵母を培養するステップで、ここでリノール酸がエイコサジエン酸に変換され、α−リノレン酸がエイコサトリエン酸に変換される、該ステップと;
c)任意選択的に、ステップ(b)の生産物脂肪酸を回収するステップと
を含んでなる多価不飽和脂肪酸を生産する方法。
17.上記9に記載の油性酵母から得られる微生物油。
18.乾燥細胞質量の質量%として測定して少なくとも22.5質量%のエイコサペンタエン酸を含んでなる油を産生し、配列番号59に記載のアミノ酸配列を含んでなる少なくとも1つの変異Δ9エロンガーゼポリペプチドを含んでなる、組換え微生物宿主細胞。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
【配列表】
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