(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963761
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】調整装置を備えた摩擦クラッチ
(51)【国際特許分類】
F16D 13/75 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
F16D13/75 B
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-539135(P2013-539135)
(86)(22)【出願日】2011年11月7日
(65)【公表番号】特表2013-543094(P2013-543094A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】DE2011001939
(87)【国際公開番号】WO2012065590
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年11月4日
(31)【優先権主張番号】102010052021.7
(32)【優先日】2010年11月19日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102011081476.0
(32)【優先日】2011年8月24日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102011081475.2
(32)【優先日】2011年8月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ツィーフレ
【審査官】
増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102010025330(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102009049258(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102009042824(DE,A1)
【文献】
特開昭54−144541(JP,A)
【文献】
特開平9−112572(JP,A)
【文献】
特表2001−522444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 13/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦クラッチ(1)であって、該摩擦クラッチ(1)が、カウンタプレッシャプレート(3)と、プレッシャプレート(5)と、調整装置(11)と、センシング装置(16)とを備えており、カウンタプレッシャプレート(3)が、ケーシング(4)に相対回動不能に結合されており、プレッシャプレート(5)が、板ばねによって、カウンタプレッシャプレート(3)に対して相対回動不能であるものの、軸方向に移動可能に収容されており、さらに、プレッシャプレート(5)に皿ばね(6)によって、摩擦フェーシング(7)を挟み込んで、予め調整された作動点に対して予荷重が加えられており、調整装置(11)が、周方向にかつ全周にわたって分配された斜面(14)によってプレッシャプレート(5)の相補的な対応斜面(15)に接してプレッシャプレート(5)と皿ばね(6)との間に収容された、作動点の変化に関連してスピンドル駆動装置(12)により回動させられる斜面付きリング(13)によって作動点の変化に追従するようになっており、センシング装置(16)が、作動点の変化を検出してスピンドル駆動装置(12)を制御するようになっている摩擦クラッチにおいて、スピンドル駆動装置(12)が、ケーシング(4)に対して不動に取り付けられていて、互いに同心的に配置された、ケーシング(4)に対して制限されて互いに相対的に回動可能な3つの軸区分(20,21,22)を有しており、内側の軸区分(20)が、斜面付きリング(13)を駆動するスピンドル伝動装置を有していて、中間の軸区分(21)に対して、一方の回動方向には不動であり、他方の回動方向には第1のエネルギ蓄え部材(24)の作用に抗して制限されて回動可能であり、中間の軸区分(21)と、斜面付きリング(13)に対するセンシング装置(16)を有する外側の軸区分(22)とが、それぞれ互いに逆方向に操作された切換可能な2つの巻付けバンド(25,26,35,36)によってケーシング(4)に対して回動防止されて配置されていることを特徴とする、摩擦クラッチ。
【請求項2】
互いに逆方向に操作された第1の対の巻付けバンド(25,26)が、それぞれ一方の端部(27,29)によってケーシング(4)に固く結合されていて、他方の端部(28,30)によってエネルギ蓄え部材(31,32)の介在下でケーシング(4)に弾性的に結合されていて、中間の軸区分(21)の周りに巻回されている、請求項1記載の摩擦クラッチ。
【請求項3】
互いに逆方向に操作された第2の対の巻付けバンド(35,36)が、それぞれ一方の端部(37,39)によって外側の軸区分(22)に固く結合されていて、他方の端部(38,40)によってエネルギ蓄え部材(41,42)の介在下でケーシング(4)に弾性的に結合されていて、中間の軸区分(21)の周りに巻回されている、請求項2記載の摩擦クラッチ。
【請求項4】
エネルギ蓄え部材(31,32,41,42)が板ばね(33,34,43,44)である、請求項2または3記載の摩擦クラッチ。
【請求項5】
摩擦クラッチ(1)の接続状態で認識されたカウンタプレッシャプレート(3)の方向への作動点の変位量が、第1のエネルギ蓄え部材(24)に蓄えられ、摩擦クラッチ(1)の切断時に作動点が修正されるようになっている、請求項1から4までのいずれか1項記載の摩擦クラッチ。
【請求項6】
皿ばね(6)の方向への作動点の変位が、摩擦クラッチ(1)の切断時に一時的な蓄えなしに修正されるようになっている、請求項1から5までのいずれか1項記載の摩擦クラッチ。
【請求項7】
斜面付きリング(13)と外側の軸区分(22)との間において、変位する作動点の両方向に、クリアランスを伴ったストッパ(18,19)が設けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載の摩擦クラッチ。
【請求項8】
斜面付きリング(13)と外側の軸区分(22)とのストッパ(18,19)の間のクリアランスが、接続状態と切断状態との間の摩擦クラッチ(1)のストローク量に相当している、請求項7記載の摩擦クラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦クラッチであって、該摩擦クラッチが、カウンタプレッシャプレートと、プレッシャプレートと、調整装置と、センシング装置とを備えており、カウンタプレッシャプレートが、ケーシングに相対回動不能に結合されており、プレッシャプレートが、板ばねによって、カウンタプレッシャプレートに対して相対回動不能であるものの、軸方向に移動可能に収容されており、さらに、プレッシャプレートに皿ばねによって、摩擦フェーシングを挟み込んで、予め調整された作動点に対して予荷重が加えられており、調整装置が、周方向にかつ全周にわたって分配された斜面によってプレッシャプレートの相補的な対応斜面に接してプレッシャプレートと皿ばねとの間に収容された、作動点の変化に関連してスピンドル駆動装置により回動させられる斜面付きリングによって作動点の変化に追従するようになっており、センシング装置が、作動点の変化を検出してスピンドル駆動装置を制御するようになっている摩擦クラッチに関する。
【0002】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102008051100号明細書に基づき、摩擦クラッチが公知である。この公知の摩擦クラッチでは、摩擦フェーシングのフェーシング摩耗に基づき変化する作動点が自動的に調整される。公知の摩擦クラッチでは、プレッシャプレートにスピンドル駆動装置が設けられている。このスピンドル駆動装置は、摩耗の存在時に斜面付きリングを一方向に回動させる。このためには、ケーシングに爪が固定されて配置されている。この爪は、スピンドル駆動装置に設けられたピニオンを回動させ、これによって、設定された摩耗ストロークの超過に際して、摩擦クラッチの切断前には、ピニオンと爪との間に形状接続が形成され、摩擦クラッチの切断時には、爪によるピニオンの回動によって作動点が修正されるようになっている。公知の摩擦クラッチでは、摩擦フェーシング摩耗の不連続な補償しか提供されていない。
【0003】
さらに、まだ公開されていないドイツ連邦共和国特許出願第102010052021.7号明細書に基づき、調整装置を備えた摩擦クラッチが公知である。この公知の摩擦クラッチでは、爪とピニオンとから形成されたセンシング・操作装置の代わりに、ケーシングに結合された、スピンドル駆動装置のスピンドルの周りに巻回された巻付けロープ、たとえば巻付けバンドが使用されている。この巻付けロープは、スピンドル駆動装置のスピンドルをフェーシング摩耗に関連して回動させ、これによって、フェーシング摩耗に基づき変化した作動点が、連続的にかつ無段階に修正されるようになっている。公知の摩擦クラッチでは、両方向、たとえばフェーシング摩耗時には一方向に変化しかつ摩擦フェーシングの膨出および/またはプレッシャプレートのかつ/またはカウンタプレッシャプレートの温度差に起因した反り返りにより他方向に変化する作動点を完全に修正することができない。
【0004】
したがって、本発明の課題は、調整装置を備えた摩擦クラッチを改良して、変化した作動点を両方向に連続的にかつ無段階に修正することができるようにすることである。
【0005】
この課題を解決するために本発明に係る摩擦クラッチによれば、スピンドル駆動装置が、ケーシングに対して不動に取り付けられていて、互いに同心的に配置された、ケーシングに対して制限されて互いに相対的に回動可能な3つの軸区分を有しており、内側の軸区分が、斜面付きリングを駆動するスピンドル伝動装置を有していて、中間の軸区分に対して、一方の回動方向には不動であり、他方の回動方向には第1のエネルギ蓄え部材の作用に抗して制限されて回動可能であり、中間の軸区分と、斜面付きリングに対するセンシング装置を有する外側の軸区分とが、それぞれ互いに逆方向に操作された切換可能な2つの巻付けバンドによってケーシングに対して回動防止されて配置されている。
【0006】
本発明に係る摩擦クラッチの有利な態様によれば、互いに逆方向に操作された第1の対の巻付けバンドが、それぞれ一方の端部によってケーシングに固く結合されていて、他方の端部によってエネルギ蓄え部材の介在下でケーシングに弾性的に結合されていて、中間の軸区分の周りに巻回されている。
【0007】
本発明に係る摩擦クラッチの有利な態様によれば、互いに逆方向に操作された第2の対の巻付けバンドが、それぞれ一方の端部によって第3の軸区分に固く結合されていて、他方の端部によってエネルギ蓄え部材の介在下でケーシングに弾性的に結合されていて、中間の軸区分の周りに巻回されている。
【0008】
本発明に係る摩擦クラッチの有利な態様によれば、エネルギ蓄え部材が板ばねである。
【0009】
本発明に係る摩擦クラッチの有利な態様によれば、摩擦クラッチの接続状態で認識されたカウンタプレッシャプレートの方向への作動点の変位量が、第1のエネルギ蓄え部材に蓄えられ、摩擦クラッチの切断時に作動点が修正されるようになっている。
【0010】
本発明に係る摩擦クラッチの有利な態様によれば、皿ばねの方向への作動点の変位が、摩擦クラッチの切断時に一時的な蓄えなしに修正されるようになっている。
【0011】
本発明に係る摩擦クラッチの有利な態様によれば、斜面付きリングと第3の軸区分との間において、変位する作動点の両方向に、クリアランスを伴ったストッパが設けられている。
【0012】
本発明に係る摩擦クラッチの有利な態様によれば、斜面付きリングと第3の軸区分とのストッパの間のクリアランスが、接続状態と切断状態との間の摩擦クラッチのストローク量に相当している。
【0013】
前述した課題は、摩擦クラッチが、カウンタプレッシャプレートと、プレッシャプレートと、調整装置と、センシング装置とを備えており、カウンタプレッシャプレートが、ケーシングに相対回動不能に結合されており、プレッシャプレートが、板ばねによって、カウンタプレッシャプレートに対して相対回動不能であるものの、軸方向に移動可能に収容されており、さらに、プレッシャプレートに皿ばねによって、摩擦フェーシングを挟み込んで、予め調整された作動点に対して予荷重が加えられており、調整装置が、周方向にかつ全周にわたって分配された斜面でプレッシャプレートの相補的な対応斜面に接してプレッシャプレートに取り付けられた、作動点の変化に関連してスピンドル駆動装置により回動させられる斜面付きリングによって作動点の変化に追従するようになっており、センシング装置が、作動点の変化を検出してスピンドル駆動装置を制御するようになっている摩擦クラッチにおいて、スピンドル駆動装置が、ケーシングに対して不動に取り付けられていて、互いに同心的に配置された、ケーシングに対して制限されて互いに相対的に回動可能な3つの軸区分を有しており、内側の軸区分が、斜面付きリングを駆動するスピンドル伝動装置を有していて、中間の軸区分に対して、一方の回動方向には不動であり、他方の回動方向には第1のエネルギ蓄え部材の作用に抗して制限されて回動可能であり、中間の軸区分と、斜面付きリングに対するセンシング装置を有する外側の軸区分とが、それぞれ互いに逆方向に操作された切換可能な2つの巻付けバンドによってケーシングに対して回動防止されて配置されていることによって解決される。
【0014】
スピンドル駆動装置をケーシングに取り付けることによって、プレッシャプレートの振動に対するスピンドル駆動装置の絶縁が達成され、これによって、振動に起因した誤調整が少なくとも最小限に抑えられる。
【0015】
切換可能な巻付けバンドまたは巻付けロープが互いに逆方向に操作されていることによって、軸区分が回動防止されて保持され、これによって、設定された作動点もしくは調整後に修正された作動点が安定化させられる。スピンドルが、第2の軸区分に対して、一方の回動方向には回動防止されて配置されていて、他方の回動方向にはエネルギ蓄え部材、たとえば板ばねの作用に抗して回動可能に配置されていることにより、スピンドルそれ自体を回動防止された状態に形成することができる。第2の軸区分の相応の回動防止時には、スピンドル駆動装置のスピンドルを一方の回動方向に自動的に回動させることができる。この回動方向への回動は、摩擦クラッチの接続時には、皿ばねによる斜面付きリングとプレッシャプレートとの緊締によって排除されている。したがって、スピンドルの回動は第2の軸区分の回動可能性に関連している。この第2の軸区分には、この中間の軸区分の周りに巻回されて互いに逆方向に操作された第1の対の巻付けバンドが、それぞれ一方の端部によってケーシングに不動に配置されていて、他方の端部によってエネルギ蓄え部材の介在下でケーシングに弾性的に配置されていてよい。これによって、第2の軸区分の回動は、両巻付けバンドのうちの一方の遮断、つまり、弛緩によってしか可能とならない。第2の軸区分の回動の制御は、第3の軸区分によって、当該巻付けバンドのエネルギ蓄え部材の作用に抗して行われる。このためには、互いに逆方向に操作された第2の対の巻付けバンドが、それぞれ一方の端部によって第3の軸区分に不動に結合されていて、他方の端部によってエネルギ蓄え部材、たとえば板ばねの介在下でケーシングに弾性的に結合されていて、中間の軸区分の周りに巻回されていてよい。
【0016】
第3の軸区分による中間の軸区分の制御は、斜面付きリングと第3の軸区分との間に配置されたセンシング装置によって行われる。このセンシング装置は、プレッシャプレートが、所定のストロークの設定範囲を越えた場合に調整要求を検知する。この場合、調整要求は、摩擦クラッチの接続時に、たとえば摩擦フェーシングがフェーシング摩耗されて、作動点がカウンタプレッシャプレートの方向に移動している場合に確認され、エネルギ蓄え部材に蓄えられる。摩擦クラッチの切断時には、作動点が、第1の軸区分の相応の回動ひいては斜面付きリングに相応して回動するスピンドルの相応の回動によって修正される。たとえば摩擦フェーシングの膨潤時にかつ/またはクラッチ構成部材の温度差に起因した反り返り時に皿ばねの方向に変位させられた作動点は、摩擦クラッチの切断中にもしくは摩擦クラッチの切断後にセンシング装置によって確認され、これによって、斜面付きリングのロックの欠落に基づき、一時的な蓄えなしに、作動点を修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】調整装置を備えた摩擦クラッチの部分断面図である。
【
図4a】第1の軸区分と第2の軸区分との第1の機能状態を示す図である。
【
図4b】第1の軸区分と第2の軸区分との第2の機能状態を示す図である。
【
図4c】第1の軸区分と第2の軸区分との第3の機能状態を示す図である。
【0018】
調整装置を備えた本発明に係る摩擦クラッチの構造および機能を、
図1〜
図4に示した実施の形態につき詳しく説明する。
【0019】
図1には、回動軸線2を中心として配置された摩擦クラッチ1の部分断面図が示してある。この摩擦クラッチ1はカウンタプレッシャプレート3を備えている。このカウンタプレッシャプレート3はケーシング4に固く結合されている。このケーシング4内には、プレッシャプレート5が板ばね(図示せず)によってカウンタプレッシャプレート3に対して相対回動不能にかつ軸方向で収容されていて、ケーシング4に支持された皿ばね6によってプレッシャプレート5のカウンタプレッシャプレート3に対して緊締されている。カウンタプレッシャプレート3の摩擦面9とプレッシャプレート5の摩擦面10との間には、回動軸線2に対する摩擦面10の軸方向の位置として規定することができる作動点の形成下でクラッチディスク8の摩擦フェーシング7が緊締されていて、両摩擦面9,10と共に摩擦係合を形成している。皿ばね6に加えられた予荷重がレリーズシステム(図示せず)によって減少させられると、摩擦クラッチ1の接続状態で軸方向に予荷重が加えられている板ばねの作用に基づくプレッシャプレート5の移動によって、摩擦係合が解除される。
【0020】
摩擦クラッチ1は、作動点の変化時に自動調整する調整装置11を有している。この調整装置11は、ケーシング4に取り付けられたスピンドル駆動装置12と、皿ばね6とプレッシャプレート5との間に配置された斜面付きリング13とを有している。この斜面付きリング13は、全周にわたって上昇する、プレッシャプレート5に向けられた斜面14を有している。この斜面14は、プレッシャプレート5に設けられた対応斜面15に載置されており、これによって、斜面付きリング13の回動時に回動方向に応じて摩擦面10と皿ばね6との間の間隔が増減するので、この皿ばね6に対して作動点を変えることができ、ひいては、摩擦フェーシング7の摩耗または膨潤に際して、あるいは別の影響量、たとえばプレッシャプレート5の温度差に起因した反り返りに際して、皿ばね6が、斜面付きリング13に対する設定された当付け角ひいてはレリーズストロークにわたって設定された力発揮を維持することができるように、変化する作動点を変えることができる。
【0021】
変化した作動点を検知するために、斜面付きリング13とスピンドル駆動装置12との間にセンシング装置16が設けられている。このセンシング装置16は、図示の実施の形態では、スピンドル駆動装置12に設けられたフィーラ、つまり、センサ17と、このセンサ17に対してクリアランスを伴って斜面付きリング13に設けられた両ストッパ18,19とによって形成されている。センサ17は、作動点が変化していない場合には、摩擦クラッチ1の操作動作中、往復移動させられる両ストッパ18,19の間に位置している。作動点が変化すると、両ストッパ18,19のうちの一方が、摩擦クラッチ1の切断状態もしくは接続状態でセンサ17に当接し、このセンサ17を移動させて、変化した作動点が修正される。
【0022】
たとえば、フェーシング摩耗によって作動点がカウンタプレッシャプレート3の方向に変位させられると、閉鎖状態でセンサ17がストッパ19に当接し、調整要求が認識される。摩擦フェーシング7が膨潤しかつ/またはプレッシャプレート5が温度差に起因して反り返ると、作動点が皿ばね6の方向に変位させられ、摩擦クラッチ1の切断に際して、センサ17がストッパ18に衝突し、調整要求が認識される。当然ながら、摩擦クラッチ1のレリーズシステムは一定のストロークに設計されていて、相応に較正されていて、常時位置調整される。
【0023】
図2には、調整装置11の三次元機能モデルに基づき、調整要求の認識時のスピンドル駆動装置12の構造および機能が示してある。このスピンドル駆動装置12は、互いに同心的に取り付けられた3つの軸区分20,21,22を有している。内側の軸区分20はスピンドル(図示せず)を有している。このスピンドルは、これに相対回動不能に配置された、スピンドル回動時に軸方向に移動可能なスピンドルナットを有している。このスピンドルナットは斜面付きリング13に形状接続的に係合していて、この斜面付きリング13を、スピンドルの回動方向に応じて時計回り方向にまたは反時計回り方向に回動させる、すなわち、作動点を軸方向で両方向に修正することができる。内側の軸区分20は摩擦クラッチ1(
図1参照)のケーシング4内に回動可能に収容されている。中間の軸区分21は中空軸として、制限されて回動可能に軸区分20に取り付けられている。
【0024】
図2、詳細には、
図4a〜
図4cから明らかであるように、図示の実施の形態では、軸区分20,21が、一方の回動方向にはストッパ23によって非弾性的に、また、他方の回動方向にはエネルギ蓄え部材24、たとえば板ばねによって弾性的に、互いに回動連結されている。したがって、図示の形態において、軸区分20が軸区分21によって反時計回り方向に連行(駆動)される場合(
図4c参照)には、回動が回動剛性的に(つまり、両軸区分20,21が相対回動不能に)形成されていて、作動点を修正するための回動ストロークの一時的な蓄えなしに行われる。この場合には、たとえば軸方向に延長されて軸区分20に形成されたスピンドルがスピンドルナットを介して、摩擦クラッチ1の切断に際して、この場合に荷重が加えられていない斜面付きリング13を即座に回動させる。たとえば摩擦フェーシング厚さが減少している際の摩擦クラッチ1の接続時に軸区分21が回動させられると、軸区分20が、スピンドルと、スラスト荷重下にある斜面付きリング13(
図2参照)とを介してロックされており、これによって、軸区分20,21がエネルギ蓄え部材24の作用に抗して回動させられる。すなわち、回動ストロークが一時的に蓄えられ、その後、続く摩擦クラッチ1の切断時に斜面付きリング13が負荷軽減され、エネルギ蓄え部材24が、軸区分20に引き続き、スピンドルと、スピンドルナットと、斜面付きリング13とを駆動し、ひいては、作動点を修正する。
【0025】
図2からさらに明らかであるように、軸区分21は、作用において逆向きに配置された、つまり、互いに逆方向に作用するように配置された第1の対を成す巻付けバンド25,26によって回動防止されている。両巻付けバンド25,26は一方の端部27,29でケーシング4に固く結合されていて、他方の端部28,30でエネルギ蓄え部材31,32、本実施の形態では、ケーシング4に片側で結合された板ばね33,34によって弾性的に結合されている。軸区分21の周りに配置された巻付けバンド25,26は、それぞれ逆回動方向に引き締めて、軸区分21の回動運動をロックし、板ばね33,34の予荷重が解消されるやいなや、他方の回動方向に弛緩する。
【0026】
この回動力は、互いに逆方向に作用するように配置された巻付けバンド35,36によって、調整時に回動方向固有に軸区分22から軸区分21に伝達される。このためには、この軸区分21の周りに巻回された巻付けバンド35,36のそれぞれ一方の端部37,39が軸区分22に固く結合されていて、他方の端部38,40がエネルギ蓄え部材41,42、本実施の形態では、ケーシング4に片側で結合された板ばね43,44によって弾性的に結合されている。軸区分22は、ストッパ18,19を備えた開口45内に延びるセンサ17を有している。
【0027】
巻付けバンド25,26,35,36の予荷重の解消は、斜面付きリング13によって意図的に、軸区分20,21,22の回動軸線に対して横方向への斜面付きリング13の運動に関連して行われる。このためには、この斜面付きリング13にストッパ46,47が設けられている。このストッパ46,47は、それぞれ対を成して斜面付きリング13の運動方向に関連して板ばね33,34,43,44の予荷重を消去し、ひいては、巻付けバンド25,26,35,36の巻付け作用を消去する。
【0028】
調整なしの摩擦クラッチ1(
図1参照)の正常運転中には、センサ17が斜面付きリング13の両ストッパ18,19の間で運動させられるので、調整は行われない。両回動方向に緊締された軸区分21に基づき、軸区分20もストッパ23とエネルギ蓄え部材24とによって軸区分21に対して位置決めされ続け(
図4a参照)、スピンドルの回動ひいては斜面付きリング13の調整は行われない。
【0029】
摩擦フェーシング7(
図1参照)の摩耗ひいてはプレッシャプレート5(
図1参照)の変位に基づき、摩擦クラッチ1の接続状態でセンサ17が斜面付きリング13のストッパ19の方向に移動させられると、このストッパ19によってセンサ17が連行される。この場合、巻付けバンド35が引っ張られ、ストッパ47による巻付けバンド25,36の弛緩下で軸区分21を反時計回り方向に連行する。摩擦クラッチ1の接続状態で皿ばね6とプレッシャプレート5(
図1参照)の間にクランプされた斜面付きリング13ひいては軸区分20に設けられた回動防止されたスピンドルに基づき、軸区分21がスピンドルに対してエネルギ蓄え部材24の作用に抗して回動させられる(
図4b参照)。摩擦クラッチ1の切断後、斜面付きリング13が皿ばね6の予荷重から負荷軽減され、軸区分20が軸区分21に対してエネルギ蓄え部材24の予荷重の減少下で反時計回り方向に回動させられ(
図4c参照)、スピンドルが斜面付きリング13を、変化した作動点を修正するために周方向に回動させる。
【0030】
逆の場合、たとえばプレッシャプレート5が温度差に起因して反り返りかつ/または摩擦フェーシング7が膨潤する場合には、センサ17がストッパ18の方向に移動させられ、摩擦クラッチ1の切断時にストッパ18によって連行される。この場合には、ストッパ46によって巻付けバンド26,35が弛緩され、軸区分21が巻付けバンド25,36によって時計回り方向に連行される。摩擦クラッチ1の切断時には、斜面付きリング13が負荷軽減されているので、回動運動の一時的な蓄えを省略することができ、軸区分21による軸区分20の回動を、弾性の介在なしに、ストッパ23によって直接的に行うことができ、その際、斜面付きリング13をスピンドルによって駆動することができる。
【0031】
図3には、調整装置11を備えた摩擦クラッチ1の概略図が示してある。プレッシャプレート5と、ケーシング4に取り付けられた皿ばね6との間に、斜面付きリング13が収容されている。この斜面付きリング13は、1つには、その回動時に斜面14によって、プレッシャプレート5と皿ばね6との間の間隔の変化による作動点の変化を修正し、もう1つには、作動点の調整時の調整要求に対するセンシング装置16を形成している。このためには、斜面付きリング13が、スピンドル駆動装置12のセンサ17に対して運動させられるストッパ18,19を有している。
【0032】
図示の実施の形態では、ストッパ19がセンサ17に当接する。これは、作動点が、摩擦フェーシング厚さの減少に際してカウンタプレッシャプレート3(
図1参照)の方向にかつ皿ばね6と逆方向に変位し始めていることを意味している。これに基づき、斜面付きリング13のストッパ47によって巻付けバンド25,36が弛緩され始めるのに対して、切り換えられた巻付けバンド26,35は、軸区分22の、斜面付きリング13によりセンサ17を介して強制された回動運動を軸区分21に伝達する。摩擦クラッチ1の接続状態に基づき、斜面付きリング13にスピンドルとスピンドルナットとを介して運動学的に連結された軸区分20の回動運動はロックされており、これによって、フェーシング摩耗の増加時に両軸区分20,21の間の相対回動がエネルギ蓄え部材24を介して増加させられるようになっている。この相対回動は、摩擦クラッチ1の切断時の斜面付きリング13の負荷軽減に際して、ストッパ23が軸区分20,21の相対回動を制限するまで、斜面付きリング13の回動と作動点の修正とによって減少させられるようになっている。
【符号の説明】
【0033】
1 摩擦クラッチ
2 回動軸線
3 カウンタプレッシャプレート
4 ケーシング
5 プレッシャプレート
6 皿ばね
7 摩擦フェーシング
8 クラッチディスク
9 摩擦面
10 摩擦面
11 調整装置
12 スピンドル駆動装置
13 斜面付きリング
14 斜面
15 対応斜面
16 センシング装置
17 センサ
18 ストッパ
19 ストッパ
20 軸区分
21 軸区分
22 軸区分
23 ストッパ
24 エネルギ蓄え部材
25 巻付けバンド
26 巻付けバンド
27 端部
28 端部
29 端部
30 端部
31 エネルギ蓄え部材
32 エネルギ蓄え部材
33 板ばね
34 板ばね
35 巻付けバンド
36 巻付けバンド
37 端部
38 端部
39 端部
40 端部
41 エネルギ蓄え部材
42 エネルギ蓄え部材
43 板ばね
44 板ばね
45 開口
46 ストッパ
47 ストッパ