【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、独立請求項の特徴を有する本発明によって解決される。本発明の有利な発展は、従属請求項にて特徴付けられる。すべての請求項の文言は、本明細書の文脈に参考により組み込まれる。本発明はまた、独立および/または従属請求項のすべての実行可能な、特にすべての記述された組み合わせを包含する。
【0011】
こうした課題は、金属構造を製造するためのプロセスによって解決され、ここで開始剤組成物が基板に適用され、この組成物は開始剤として光触媒活性なナノロッドを含む。さらなる工程において、金属層のための少なくとも1つの前駆体化合物を含む前駆体組成物が基板に適用される。さらなる工程において、前駆体化合物は、開始剤に対する電磁放射線の作用下で金属に還元される。
【0012】
これは、典型的には、金属層を形成する。ここで金属性層は、金属の層を意味するように、本発明の文脈において理解される。かかる層は、十分な厚さがあれば、導電性であることもできる。かかる導電性層は、特に好ましい。「導電性」は、本質的にコンダクタトラックを構成する構造の製造を意味するとは必ずしも理解されない。導電性材料のドットの製造も、原理上導電性である構造を構成する。
【0013】
個々のプロセス工程は、以降で詳細に記載される。工程は、特定される順序で必ずしも行われる必要はなく、概要されるべきプロセスはまた、特定されていないさらなる工程を有していてもよい。
【0014】
記載されるプロセスは、使用されるナノロッドが、対応するナノ粒子または非晶質二酸化チタンよりも良好な光化学反応性を有するという利点を有する。結果として、前駆体化合物を直接金属に還元するだけでなく、十分な量で導電性構造を確実にすることも可能である。前駆体化合物自体は、あるとしても少しの程度でのみ感光性であるので、相当容易に取り扱われ得る。
【0015】
光触媒開始剤を用いてコーティングされるべき基板は、この目的に好適ないかなる材料であってもよい。好適な材料の例は、金属または金属合金、ガラス、セラミック(酸化物セラミック、ガラスセラミックまたはポリマーを含む)、ならびにさらに紙および他のセルロース系材料である。もちろん、上述の材料の表面層を有する基板を使用することも可能である。表面層は、例えば、金属化またはエナメル加工操作から生じさせてもよく、ガラスまたはセラミック層であってもよく、または塗装操作から生じさせてもよい。
【0016】
金属または金属合金の例は、スチール(ステンレススチールを含む)、クロム、銅、チタン、スズ、亜鉛、黄銅、およびアルミニウムである。ガラスの例は、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、鉛結晶およびシリカガラスである。ガラスは、例えばパネルガラス、中空ガラス、例えば容器ガラス、または実験設備ガラスであってもよい。セラミックは、例えば酸化物、SiO
2、Al
2O
3、ZrO
2またはMgO、または対応する混合酸化物に基づくセラミックであってもよい。金属でも同様にフィルムの形態で存在し得るポリマーの例は、ポリエチレン、例えばHDPEまたはLDPE、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルブチラール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロ−トリフルオロエチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、再生セルロース、セルロースニトレート、セルロースアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、またはゴム塩酸塩である。塗装された表面は、標準ベースコートまたはペイントから形成されてもよい。好ましい実施形態において、基板は、フィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリイミドフィルムである。
【0017】
開始剤は、光触媒活性ナノロッドを含む。光触媒活性材料は、それ自体はプロセス中に分解されることなく、金属錯体またはさらなる物質の酸化活性化を通して、金属錯体中の金属イオンの金属への直接的および/または間接的な還元をもたらす化合物を意味すると理解される。酸化過程で形成する生成物は、金属錯体の分解および錯体中の金属イオンの還元をもたらす。光触媒材料はZnOまたはTiO
2であってもよく、好ましくはTiO
2であってもよい。より好ましくは、TiO
2はアナターゼ形態である。
【0018】
開始剤組成物はナノロッドを含む。本発明の文脈において、これらは、一般に球体ナノ粒子とは対照的に、細長い物体を意味すると理解される。こうしたロッド形状物体は、例えば2つのパラメータに基づいて記載できる:第1にロッドの直径および第2にロッドの長さ。ナノロッドは、特に100nm未満、好ましくは50nm未満、好ましくは40nm未満、より好ましくは30nm未満の直径を有することが重要である。その長さは、500nm未満、好ましくは400nm未満、より好ましくは200nm未満である。寸法は、TEMによって決定できる。ナノロッドは、TEMでは通常は長い方を横にする。そのため、決定された直径は、異なる配向のナノロッドの直径の平均を構成する。組成物において、ナノロッドの凝集体も生じ得る。図は、常に1つのナノロッドに基づく。
【0019】
好ましい実施形態において、ナノロッドは、1000:1〜1.5:1、好ましくは500:1〜2:1、より好ましくは100:1〜5:1の直径対長さの比を有する。
【0020】
好ましい実施形態において、ナノロッドは、10:1〜3:1の長さ対直径の比と共に、30〜100nmの長さを有する。
【0021】
それらの伸長により、ナノロッドは、特に高い光触媒活性を有する。
【0022】
ナノロッドの製造に関して、当業者に既知のすべてのプロセスが有用である。これらは、例えば加水分解または非加水分解ゾル−ゲルプロセスである。かかるプロセスに関して、ナノロッドが得られる条件は公知である。
【0023】
ナノロッドは、非加水分解ゾル−ゲルプロセスによって好ましくは製造される。この目的で、加水分解性チタン化合物および/または亜鉛化合物は、アルコールまたはカルボン酸と、好ましくは保護ガス雰囲気下で反応させる。反応は、好ましくは10℃〜100℃、好ましくは15℃〜30℃の温度にて行われる。1つの実施形態において、反応は室温にて行われ得る。
【0024】
加水分解性チタン化合物は、特に式TiX
4の化合物であり、式中、加水分解性X基は、互いに異なり、または好ましくは同じであり、例えば水素、ハロゲン(F、Cl、BrまたはI、特にClおよびBr)、アルコキシ(好ましくはC
1〜6−アルコキシ、特にC
1〜4−アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、ブトキシ、i−ブトキシ、sec−ブトキシおよびtert−ブトキシ)、アリールオキシ(好ましくはC
6〜10−アリールオキシ、例えばフェノキシ)、アシルオキシ(好ましくはC
1〜6−アシルオキシ、例えばアセトキシまたはプロピオニルオキシ)またはアルキルカルボニル(好ましくはC
2〜7−アルキル−カルボニル、例えばアセチル)である。ハライドの1つの例は、TiCl
4である。さらに、加水分解性X基は、アルコキシ基、特にC
1〜4−アルコキシである。具体的なチタネートは、Ti(OCH
3)
4、Ti(OC
2H
5)
4およびTi(n−またはi−OC
3H
7)
4である。好ましくは、TiCl
4である。
【0025】
亜鉛化合物の場合、亜鉛のカルボン酸化合物、例えばZn(OAc)
2が選択肢である。
【0026】
アルコールおよびカルボン酸は、一般に低級アルコールおよびカルボン酸である。かかる化合物の例は、アルキルアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、ネオペンタノール、グリコール、1,3−プロパンジオールまたはベンジルアルコール、例えばベンジルアルコールであり、これはまた芳香族環において置換されていてもよい。カルボン酸の例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸が挙げられる。溶媒の混合物を使用することも可能である。好ましいのは、ベンジルアルコールの使用である。化合物はまた、好ましくは溶媒として、すなわち明らかな過剰量で使用される。
【0027】
結晶性ナノロッドを得るために、熱処理、好ましくは自生圧力下での熱処理を行うことも必要な場合がある。この目的で、反応混合物は、50℃〜300℃、好ましくは50℃〜100℃の温度において、2時間から48時間、閉じた容器において処理される。
【0028】
得られたナノロッドは、単純な遠心分離および溶媒の除去によって得られ得る。
【0029】
ナノロッドはまた、例えば、それらの吸収を他のスペクトル領域にシフトさせるために、ドープされてもよい。
【0030】
この目的で、ナノロッドの場合、それらの製造過程において、好適な金属化合物が、例えば酸化物、塩または錯体、例えばハライド、ニトレート、スルフェート、カルボキシレート(例えばアセテート)またはアセチルアセトネートをドープするために使用できる。化合物は、適切には、ナノロッドの製造のために使用される溶媒中に可溶性であるべきである。好適な金属は、いずれかの金属、特に元素周期表の5族から14族、ならびにランタノイドおよびアクチニドから選択される金属である。ここで族は、Roempp Chemie Lexikon,第9版に示されるように新しいIUPACシステムに従って記述される。金属は、化合物において、いずれかの好適な初期酸化状態にて生じ得る。
【0031】
金属化合物に好適な金属の例は、W、Mo、Zn、Cu、Ag、Au、Sn、In、Fe、Co、Ni、Mn、Ru、V、Nb、Ir、Rh、Os、PdおよびPtである。好ましくはW(VI)、Mo(VI)、Zn(II)、Cu(II)、Au(III)、Sn(IV)、In(III)、Fe(III)、Co(II)、V(V)およびPt(IV)の金属化合物が使用される。非常に良好な結果は、特にW(VI)、Mo(VI)、Zn(II)、Cu(II)、Sn(IV)、In(III)およびFe(III)に関して得られる。好ましい金属化合物の具体例は、WO
3、MoO
3、FeCl
3、酢酸銀、塩化亜鉛、塩化銅(II)、酸化インジウム(III)および酢酸スズ(IV)である。
【0032】
金属化合物とチタンまたは亜鉛化合物との比はまた、使用される金属およびそれらの酸化状態に依存する。一般に、例えば使用される比は、金属化合物中の金属と、チタンまたは亜鉛化合物中のチタン/亜鉛とのモル比(Me/Ti(Zn))が0.0005:1〜0.2:1、好ましくは0.001:1〜0.1:1、より好ましくは0.005:1〜0.1:1という結果になる比である。
【0033】
得られたナノロッドはまた、例えば、使用されるマトリックス材料との相溶性を付与するために、表面修飾されてもよい。例えばフッ素化基による表面修飾を通して、開始剤層内のナノロッドの濃度勾配を達成することも可能になる。ナノロッドは、適用後に露光された開始剤層の表面にて蓄積し、照射過程において基板を損傷し得ない。
【0034】
開始剤組成物は、一般に少なくとも1つの溶媒中のナノロッドの分散液を含む。ナノロッドの割合は、20重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満である。好ましい範囲は、0.5重量%〜3重量%である。例は、1重量%、1.5重量%、2重量%、および2.5重量%である。ここでの割合は、開始剤組成物に基づく。
【0035】
好適な溶媒は、ナノロッドに関する当業者に公知の溶媒である。150℃未満の沸点を有する溶媒が好ましい。それらの例は、脱イオンH
2O、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールまたはブタノールである。混合物を使用することも可能である。かかる混合物の例は、80:20重量%〜20:80重量%、好ましくは50:50重量%〜20:80重量%のH
2O:アルコールであり、好ましくは使用されるアルコールはエタノールである。
【0036】
開始剤組成物の適用に関して、標準プロセス、例えば浸漬、ローリング、ナイフコーティング、フローコーティング、ドローイング、噴霧、スピニングまたは塗装を使用することができる。適用された分散液は、場合により乾燥および熱処理され、例えば硬化または圧密される。この目的で使用される熱処理は、もちろん基板に依存する。ポリマー基板またはポリマー表面の場合、それは一般にバリア層(以下を参照)を有するが、もちろん非常に高温を使用することはできない。例えば、ポリカーボネート(PC)基板は、約130℃で1時間熱処理される。一般に、熱処理は、例えば100〜200℃の温度にて、ポリマーが存在しない場合には500℃までまたはそれ以上にて行われる。熱処理は、例えば2分から2時間行われる。
【0037】
異なる厚さを有する層を得ることができる。例えば、5nm〜200μmの厚さを有する層を得ることができる。好ましい層の厚さは、10nm〜1μm、好ましくは50nm〜700nmである。層の厚さはまた、20μm〜70μmであってもよい。
【0038】
次の工程において、金属層のための少なくとも1つの前駆体化合物を含む前駆体組成物が基板に適用される。前駆体組成物の適用に関して、慣用方法、例えば浸漬、ローリング、ナイフコーティング、フローコーティング、ドローイング、噴霧、スピニングまたは塗装を使用することができる。典型的には、前駆体組成物は、少なくとも1つの前駆体化合物の溶液または懸濁液である。この溶液はまた、複数の前駆体化合物の混合物を含んでいてもよい。還元剤または湿潤助剤などのさらなる補助剤を溶液に存在させることも可能である。
【0039】
前駆体化合物は、好ましくは金属錯体である。これは、少なくとも1つの金属イオンまたは金属原子、および少なくとも1種のリガンドを含む。金属は、例えば銅、銀、金、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、タングステン、白金またはパラジウムである。好ましい実施形態において、前駆体化合物は、銀、金または銅錯体、より好ましくは銀錯体である。前駆体化合物はまた、いくつかのタイプの金属または金属錯体混合物を含んでいてもよい。
【0040】
使用されるリガンドは、一般にキレートリガンドである。これらは、特に安定な錯体を形成することができる。これらは、複数のヒドロキシル基および/またはアミノ基を有する化合物である。200g/mol未満の分子量を有する化合物が好ましく、少なくとも1つのヒドロキシル基および少なくとも1つのアミノ基を有する化合物が特に好ましい。可能な化合物の例は、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、2−アミノ−1−ブタノール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、NH
3、ニコチンアミド、または6−アミノヘキサン酸である。これらのリガンドの混合物を使用することもできる。好ましい銀錯体の場合、TRISがリガンドとして好ましい。
【0041】
前駆体組成物は、好ましくは前駆体化合物の溶液である。有用な溶媒としては、すべての好適な溶媒が挙げられる。これらは、例えば水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノールまたはi−プロパノールである。溶媒の混合物、好ましくは水およびエタノールの混合物を使用することもできる。好適な混合比は、50:50重量%から20:80重量%までのH
2O:アルコール、好ましくはエタノール比である。
【0042】
前駆体組成物は、界面活性剤または促進還元剤などのさらなる補助剤を追加的に含んでいてもよい。
【0043】
前駆体組成物は、いずれかの所望の様式で基板に適用できる。前駆体組成物は、開始剤層の光触媒活性が、金属イオンの金属への還元を直接的または間接的に誘発することができるように適用される。これは、典型的には、開始剤層に前駆体組成物を直接適用することによって行われる。
【0044】
前駆体組成物の適用に関して、慣用方法、例えば浸漬、噴霧、ローリング、ナイフコーティング、フローコーティング、ドローイング、スピニングまたは塗装を使用することができる。
【0045】
例えば、前駆体組成物の適用は、基板上に置かれるフレームによって行われ得、前駆体組成物は、フレームによって境界が定められた空間に導入された後に形成される。フレームは、弾性材料からなってもよい。フレームは、いずれかの所望の形状を有していてもよい。長方形のフレームが慣用的である。フレームは、例えば基板上で1cm
2〜625cm
2の面積を包囲し、1cm〜25cmの辺長を有する。基板上のフレームの高さは、適用された前駆体組成物の厚さを決定する。フレームは、25μm〜5mm、好ましくは30μm〜2mmの高さを有していてもよい。
【0046】
次の工程において、前駆体化合物の金属イオンは、開始剤への電磁放射線の作用によって金属に還元される。これは、金属性層を形成する。電磁放射線は、開始剤の励起のための波長を有する放射線である。照射は、ランプなどの大面積放射線源の使用により、またはレーザーによって達成できる。電磁スペクトルの可視または紫外(UV)領域の波長、好ましくは<500nm、例えば200〜450nmまたは250nm〜410nmの波長を有する放射線を用いるのが好ましい。<400nmの波長を有する放射線が好ましい。
【0047】
光源は、いずれかの好適な光源であってもよい。光源の例は、水銀蒸気ランプまたはキセノンランプである。
【0048】
光源は、露光されるべき基板から好適な距離にて配置される。距離は、例えば2.5cm〜50cmであってもよい。放射線の強度は、30mW/cm
2〜70mW/cm
2であってもよく、スペクトルの範囲は250nm〜410nmである。
【0049】
照射は、可能であれば、露光されるべき表面に直角にて行われるべきである。
【0050】
照射は、金属性層の形成に十分な期間で行われる。期間は、コーティング、開始剤のタイプ、ランプのタイプ、使用される波長範囲および照射強度に依存する。導電性構造が製造されるべきである場合、より長い照射が必要とされる場合がある。5秒〜10分、好ましくは20秒〜4分の照射期間が好ましい。
【0051】
レーザーが照射に使用される場合、例えば10mWアルゴンイオンレーザー(351nm)を使用可能であり、その集光および平行レーザービームが基板に対して2mm/sの速度で照射されるように行われる。
【0052】
本発明のさらなる実施形態において、基板が、前駆体化合物の処理および還元後さらに処理される。例えば、還元されていない過剰の前駆体組成物は、例えば脱イオン水または別の好適な物質で表面をすすぐことによって除去できる。コーティングされた基板は、次いで、例えばオーブン中で加熱することにより、圧縮空気によりおよび/または室温での乾燥により、乾燥できる。
【0053】
また、例えばコーティングされた表面の酸化および水からの保護またはUV照射からの保護のためにさらなる層を適用できる。
【0054】
本発明の好ましい実施形態において、構造化は、前駆体組成物の適用過程および/または還元過程において行われる。本発明の文脈において、これは、金属構造の空間的に制限された製造の調製を意味することが理解される。これは、異なる方法において可能である。まず、基板は、特定領域においてのみ、開始剤組成物でコーティングできる。特定領域にのみ前駆体組成物を適用することも可能である。加えて、もちろん特定領域に、電磁放射線の作用を制限することも可能である。これらのプロセスは、もちろん組み合わせても使用できる。例えば、広域にわたって前駆体組成物を適用し、次いでマスクを通して露光することが可能である。もちろん同様に、前駆体組成物を選択的に適用し、次いで全域を露光することも可能である。
【0055】
得られた構造の質に関して重要な因子は、開始剤の光触媒活性だけでなく、質、例えば前駆体組成物に関して開始剤層の湿潤性または粗さである。具体的には、本発明の開始剤組成物は、前駆体組成物の制御された適用および/または前駆体化合物の非常に制御された還元がそこで可能であることが重要である。
【0056】
本発明の好ましい実施形態において、構造化は、500μm未満の最小横寸法を有する構造を含む。これは、基板上で製造される構造が、500μmの最小幅を有し、好ましくは100μm、50μm、20μm、より好ましくは10μm未満の寸法が好ましいことを意味する。
【0057】
達成される金属構造の解像度、すなわち金属層の形成に関して重要な因子は、形成された光触媒層の構造である。ナノロッドの使用に加えて、基板の前処理により達成される解像度を得ることも可能である。かかる前処理はまた、さらなる層の適用を意味し得る。
【0058】
本発明の好ましい発展において、前処理は、プラズマ処理、コロナ処理、フレーム処理ならびに/または有機−無機コーティングの適用および硬化を含む。プラズマ処理、コロナ処理および/またはフレーム処理は、特にフィルム基板の場合、とりわけポリマーフィルムの場合の1つの選択肢である。かかる処理は、得られる光触媒層の質を改善することがわかった。
【0059】
真空条件下でプラズマを維持することが可能な方法が文献にて頻繁に記載されている。電気エネルギーは、誘導性または容量性手段によって制約され得る。それは、直流または交流であってもよく、交流の周波数は、数kHzからMHz範囲にまでに及び得る。マイクロ波範囲(GHz)のエネルギー供給も可能である。
【0060】
使用される一次プラズマガスは、例えばHe、アルゴン、キセノン、N
2、O
2、H
2、スチームまたは空気、および同様にこれらの化合物の混合物であってもよい。酸素プラズマであるのが好ましい。
【0061】
典型的には、基板は前もって清浄される。これは、溶媒を用いた単純なすすぎにより達成できる。次いで基板は、場合により乾燥され、次いで5分未満の間プラズマで処理される。処理時間は、基板の感受性に依存してもよい。典型的には1〜4分である。
【0062】
光触媒層の質を改善するさらなる手段は、表面の先行火炎処理である。かかる処理は、当業者に公知である。選択されるべきパラメータは、処理されるべき特定基板によって規定される。例えば、火炎温度、火炎強度、滞留時間、基板とオーブンとの距離、燃焼ガスの性質、空気圧力、湿分が問題の基板に適合される。使用される火炎ガスは、例えばメタン、プロパン、ブタン、または70%ブタンおよび30%プロパンの混合物であってもよい。この処理は、非常に好ましくはフィルムの場合、より好ましくはポリマーフィルムの場合での使用が見出される。
【0063】
本発明のさらなる実施形態において、開始剤組成物は、少なくとも2つの極性基を有する化合物を含む。これらは、好ましくは有機化合物である。極性基は、O、NまたはSを含有する基を意味することが理解される。それらは、好ましくは、少なくとも2つのOH、NH
2、NHまたはSH基を含有する化合物である。かかる化合物は、得られる開始剤層における改善を導き得る。かかる化合物の例は、化合物、例えば1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミンのオリゴマーであり、それぞれが酸素、窒素または硫黄原子を介して接続される。この場合、オリゴマーは、2〜4個の上述の化合物からなる。例は、モノエチレングリコール(MEG)、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコールである。
【0064】
化合物は、好ましくは、懸濁液中のナノロッドの質量に基づいて10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは1〜4重量%の割合で使用される。
【0065】
好ましい実施形態において、開始剤組成物は、無機マトリックス形成材料または有機修飾無機マトリックス形成材料を含む。これは、特に、無機ゾルまたは有機修飾無機ハイブリッド材料またはナノコンポジットを含み得る。これらの例は、少なくとも1つのガラス形成またはセラミック形成元素M、特に元素周期表3〜5族および/または12〜15族からの元素M、好ましくはSi、Al、B、Ge、Pb、Sn、Ti、Zr、VおよびZnの元素M、特にSiおよびAlの元素M、最も好ましくはSi、またはこれらの混合物の場合により、有機修飾された酸化物、加水分解物および(重)縮合物である。周期表1族および2族の元素(例えば、Na、K、CaおよびMg)、および周期表5〜10族(例えばMn、Cr、FeおよびNi)またはランタノイドの一部が、酸化物、加水分解物または(重)縮合物としても存在できる。好ましい有機修飾無機ハイブリッド材料は、ポリオルガノシロキサンである。この目的で、ガラス形成またはセラミック形成元素、特にケイ素の加水分解物を用いることが、特に好ましい。
【0066】
無機マトリックス形成材料または有機修飾無機マトリックス形成材料は、好ましくは、ナノロッドとマトリックス形成材料との比が、組成物全体の重量%に基づいて、300:1〜1:300、好ましくは約30:1〜1:30、より好ましくは1:20〜1:2である量にて添加される。この添加により、接着が改善される。有機修飾無機マトリックス形成材料が使用される場合、存在するガラス形成元素またはセラミック形成元素Mのすべてまたは一部だけが、非加水分解性基として1つ以上の有機基を有していてもよい。
【0067】
無機マトリックス形成材料または有機修飾無機マトリックス形成材料は、公知のプロセス、例えば火炎熱分解、プラズマプロセス、気相縮合プロセス、コロイド技術、沈殿プロセス、ゾル−ゲルプロセス、制御式核形成・成長プロセス、MOCVDプロセスおよび(ミクロ)エマルションプロセスによって製造され得る。
【0068】
無機ゾルおよび特に有機修飾ハイブリッド材料は、好ましくはゾル−ゲルプロセスによって得られる。ゾル−ゲルプロセスにおいて、これはまた粒子の分離製造のために使用でき、通常の加水分解性化合物は、水、場合により酸性または塩基性触媒作用で加水分解され、場合により少なくとも部分的に縮合される。加水分解および/または縮合反応は、化合物の形成またはヒドロキシルもしくはオキソ基および/もしくはオキソ架橋を有する縮合物の形成を導き、これが前駆体として作用する。化学量論量の水を使用することができるだけでなく、少量または多量の水を使用することもできる。形成するゾルは、好適なパラメータ、例えば縮合度、溶媒またはpHによってコーティング組成物のために所望される粘度に調整できる。ゾル−ゲルプロセスのさらなる詳細は、例えばC.J.Brinker,G.W.Scherer:「Sol−Gel Science−The Physics and Chemistry of Sol−Gel−Processing」,Academic Press,Boston,San Diego,New York,Sydney(1990)に記載されている。
【0069】
好ましいゾル−ゲルプロセスは、上述のガラス形成材料またはセラミック形成元素の加水分解性化合物からの加水分解および/または縮合によって酸化物、加水分解物および/または(重)縮合物を付与し、これは場合により付加的に、有機修飾無機ハイブリッド材料の製造のために非加水分解性有機置換基を保持する。
【0070】
無機ゾルは、特に一般式MX
nの加水分解性化合物からのゾル−ゲルプロセスによって形成され、式中Mは、上記で定義されたガラス形成元素またはセラミック形成元素であり、Xは、以下の式(I)にて定義される通りであり、ここで2つのX基は、オキソ基によって交換されてもよく、nは、元素の価数に対応し、通常は3または4である。加水分解性Si化合物、特に以下の式(I)の化合物が好ましい。
【0071】
Si以外の元素Mの有用な加水分解性化合物の例は、Al(OCH
3)
3、Al(OC
2H
5)
3、Al(O−n−C
3H
7)
3、Al(O−i−C
3H
7)
3、Al(O−n−C
4H
9)
3、Al(O−sec−C
4H
9)
3、AlCl
3、AlCl(OH)
2、Al(OC
2H
4OC
4H
9)
3、TiCl
4、Ti(OC
2H
5)
4、Ti(O−n−C
3H
7)
4、Ti(O−i−C
3H
7)
4、Ti(OC
4H
9)
4、Ti(2−エチルヘキソキシ)
4、ZrCl
4、Zr(OC
2H
5)
4、Zr(O−n−C
3H
7)
4、Zr(O−i−C
3H
7)
4、Zr(OC
4H
9)
4、ZrOCl
2、Zr(2−エチルヘキソキシ)
4、および錯化ラジカルを有するZr化合物、例えばβ−ジケトンおよび(メタ)アクリロイルラジカル、ナトリウムメトキシド、酢酸カリウム、ホウ酸、BCl
3、B(OCH
3)
3、B(OC
2H
5)
3、SnCl
4、Sn(OCH
3)
4、Sn(OC
2H
5)
4、VOCl
3およびVO(OCH
3)
3である。
【0072】
好ましいケイ素に関する続いての見解も、他の元素Mについて準用する。より好ましくは、ゾルまたは有機修飾無機ハイブリッド材料は、1つ以上の加水分解性の縮合性シラン、場合により非加水分解性有機ラジカルを有する少なくとも1つのシランから得られる。以下の一般式(I)および/または(II)を有する1つ以上のシランを用いることが特に好ましい。
【0073】
SiX
4 (I)
式中、Xラジカルは、同一または異なっており、それぞれ加水分解性基またはヒドロキシル基である。
【0074】
R
aSiX
(4−a)(II)
式中、Rは、同一または異なっており、場合により官能基を有する非加水分解性ラジカルであり、Xは、上記で定義される通りであり、aは、1、2または3、好ましくは1または2の値を有する。
【0075】
上記式において、加水分解性X基は、例えば水素またはハロゲン(F、Cl、BrまたはI)、アルコキシ(好ましくはC
1〜6−アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、およびブトキシ)、アリールオキシ(好ましくはC
6〜10−アリールオキシ、例えばフェノキシ)、アシルオキシ(好ましくはC
1〜6−アシルオキシ、例えばアセトキシまたはプロピオニルオキシ)、アルキルカルボニル(好ましくはC
2〜7−アルキルカルボニル、例えばアセチル)、アミノ、モノアルキルアミノまたは好ましくは1〜12個、特に1〜6個の炭素原子をアルキル基に有するジアルキルアミノである。
【0076】
非加水分解性R基は、例えばアルキル(好ましくはC
1〜6−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチルおよびt−ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはシクロヘキシル)、アルケニル(好ましくはC
2〜6−アルケニル、例えばビニル、1−プロペニル、2−プロペニルおよびブテニル)、アルキニル(好ましくはC
2〜6−アルキニル、例えばアセチレニルおよびプロパルギル)、およびアリール(好ましくはC
6〜10アリール、例えばフェニルおよびナフチル)である。
【0077】
記述されたRおよびX基は、場合により、1つ以上の慣用置換基、例えばハロゲン、エーテル、リン酸、スルホ、シアノ、アミド−、メルカプト、チオエーテルまたはアルコキシ基を官能基として有していてもよい。
【0078】
R基は、架橋が可能である官能基を含有し得る。R基の官能基の具体例は、エポキシ、ヒドロキシル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、アリル、ビニル、アクリロイル、アクリロイルオキシ、メタクリロイル、メタクリロイルオキシ、シアノ、アルデヒドおよびアルキルカルボニル基である。これらの基は、好ましくは、酸素もしくは硫黄原子または−NH−基によって中断され得るアルキレン、アルケニレンまたはアリーレン架橋基を介して、ケイ素原子に結合する。記述された架橋基は、例えば上述のアルキル、アルケニルまたはアリール基に由来する。R基の架橋基は、好ましくは1〜18個、特に1〜8個の炭素原子を含有する。
【0079】
一般式(I)の特に好ましい加水分解性シランは、テトラアルコキシシラン、例えばテトラメトキシシラン、特にテトラエトキシシラン(TEOS)である。酸性触媒作用、例えばTEOS加水分解物によって得られる無機ゾルが特に好ましい。一般式(II)の特に好ましいオルガノシランは、エポキシシラン、例えば3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランおよびアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランであり、GPTS加水分解物が有利に使用可能である。
【0080】
有機修飾無機ハイブリッド材料が調製される場合、式(II)のシラン単独で、または式(I)および(II)のシランの混合物を使用することが可能である。無機ケイ素系ゾルにおいて、式(I)のシラン単独で使用され、場合により、上記式MX
nの加水分解性化合物の割合の添加を伴う。
【0081】
チタン系ゾルから調製される有機修飾無機ハイブリッド材料が特に好ましい。式(I)および/または(II)のシランを添加することも可能である。
【0082】
無機ゾルが溶媒中に分散した明確な酸化物粒子からなる場合、それらは層の硬度を改善できる。これらの粒子は、特にナノスケールの無機粒子である。粒子サイズ(X線撮影によって決定される体積平均)は、例えば、200nm未満、特に100nm未満、好ましくは50nm未満、例えば1nm〜20nmの範囲である。
【0083】
本発明によれば、例えばSiO
2、ZrO
2、GeO
2、CeO
2、ZnO、Ta
2O
5、SnO
2およびAl
2O
3(すべての多形において、特にベーマイトAlO(OH)形態)、好ましくはSiO
2、Al
2O
3、ZrO
2、GeO
2およびこれらの混合物の無機ゾルをナノスケール粒子として使用することができる。この種のいくつかのゾルはまた、例えばシリカゾル、例えばBayer AGからのLevasils(登録商標)として市販されている。
【0084】
使用される無機マトリックス形成材料または有機修飾無機マトリックス形成材料はまた、かかるナノスケール粒子と、加水分解物または(重)縮合物の形態で存在する有機修飾ハイブリッド材料または無機ゾルとの組み合わせであってもよく、これをここではナノコンポジットと称する。
【0085】
場合により、あらゆる種類の有機モノマー、オリゴマーまたはポリマーが、有機マトリックス形成材料として存在することもでき、これが軟化剤として作用し、これらは標準の有機結合剤であってもよい。これらは、コーティング性を改善するために使用できる。一般に、それらは、層の完了時に光触媒分解される。オリゴマーおよびポリマーは、架橋が可能な官能基を有していてもよい。この架橋可能性はまた、場合により、上記で詳述された有機修飾無機マトリックス形成材料の場合に可能である。無機、有機修飾無機および/または有機マトリックス形成材料の混合物も可能である。
【0086】
使用可能な有機マトリックス形成材料の例は、極性基、例えばヒドロキシル、一級、二級または三級アミノ、カルボキシルまたはカルボキシレート基を有するポリマーおよび/またはオリゴマーである。典型的な例は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピリジン、ポリアリルアミン、ポリアクリル酸、ポリビニルアセテート、ポリメタクリル酸、デンプン、アラビアガム、他のポリマー性アルコール、例えばポリエチレン−ポリビニルアルコールコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリ(4−ビニルフェノール)、またはそれらから誘導されるモノマーもしくはオリゴマーである。
【0087】
既に上述したように、感受性材料からなるまたはかかる感受性材料の表面層(例えばペイントまたはエナメル層)を有する基板の場合、直接適用は、そうであったとしても困難であり得る。バリア層は、基板(場合により表面コーティングを有する)と光触媒層との間に配置されてもよい。この目的で、無機マトリックス形成材料の無機層が使用されてもよい。この目的で、上述の無機ゾルが使用されてもよい。
【0088】
光触媒層中の光触媒活性ナノロッドの濃度勾配を形成することによって、「組み込まれた」バリア層を有する光触媒層を製造することもできる。これは、例えばフッ素化有機基を有するナノロッドの表面修飾によって達成できる。
【0089】
マトリックス形成材料はまた、二酸化チタンを、例えば非晶質TiO
2、TiO
2ナノ粒子またはTiO
2ナノロッドとして追加的に含んでいてもよい。これらの成分は、開始剤組成物の調製の際に、マトリックス形成材料の組成物に基づいて、10重量%〜80重量%、好ましくは25重量%〜65重量%の割合で存在してもよい。
【0090】
マトリックス形成成分として上述した化合物はまた、有機−無機コーティングの適用および硬化時に基板の前処理のために使用できる。ゾルを使用するか、または加水分解性金属化合物の溶液を提供することのいずれかが可能である。
【0091】
式IIのシランの溶液を適用することが好ましい。Rが架橋可能な官能基を含有する式IIのシランが特に好ましい。R基の官能基の具体例は、エポキシ、ヒドロキシル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、アリル、ビニル、アクリロイル、アクリロイルオキシ、メタクリロイル、メタクリロイルオキシ、シアノ、アルデヒドおよびアルキルカルボニル基である。これらの基は、好ましくは、酸素もしくは硫黄原子または−NH−基によって中断され得るアルキレン、アルケニレンまたはアリーレン架橋基を介して、ケイ素原子に結合する。記述された架橋基は、例えば上述のアルキル、アルケニルまたはアリールラジカルに由来する。R基の架橋基は、好ましくは1〜18個、特に1〜8個の炭素原子を含有する。
【0092】
特に好ましいオルガノシランは、エポキシシラン、例えば3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTS)およびアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランである。
【0093】
適用後、層は乾燥され、それらの官能基に従って架橋される。これは、架橋開始剤の添加を伴い得る。
【0094】
プロセスの後、さらなる層がまた、例えば基板のコーティングされた表面をUV放射線に対して保護するために、適用されてもよい。
【0095】
本発明に従うプロセスの特定の利点は、使用される組成物が単純な様式において基板に適用されることである。ナノロッドを有する開始剤層は、ほんの数工程だけで特に微細な構造の製造を可能にする。この目的で、すべて公知の印刷プロセス、例えばインクジェット印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷またはレリーフ印刷およびフレキソ印刷が使用される。多くの場合、電気機能性の印刷に関して、上述の印刷プロセスの組み合わせプリントも使用される。例えばそれらの表面エネルギーを適合させることによって、使用される印刷プレートまたはローラーまたはスタンプを組成物の特性に適合させることが必要な場合がある。
【0096】
構造化によって適用される構造において、実際には制限はない。例えば、コンダクタトラックなどの接続された構造を適用できる。加えて、ポイント構造も適用できる。良好な解像度のため、フィルムに対して目に見えない導電性ドットを適用することも、プロセスによって可能である。これは、タッチスクリーンのための表面の製造に非常に重要である。
【0097】
本発明はまた、本発明に従ったプロセスによって得られるコーティングされた基板に関する。かかる基板は、光触媒活性ナノロッドを含む開始剤層を特徴とする。この層は、50nm〜200μmの厚さを有する。好ましい層の厚さは、100nm〜1μm、好ましくは50nm〜700nmである。層の厚さはまた、20〜70μmであってもよい。層はまた、プロセスに関して既に記載されているように、マトリックス材料を含んでいてもよい。有機修飾無機マトリックス材料が好ましい。
【0098】
この層において、少なくとも開始剤層、金属層の表面の領域に適用される。この層は200nm以内に限る。好ましい層厚は、20〜100nm、好ましくは50nm〜100nmである。金属として、特に銅、銀、金、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、タングステン、白金またはパラジウムが好ましく、銀または金が好ましい。
【0099】
本発明の発展において、金属層は、50μm、好ましくは10μm未満の寸法を有する構造要素による構造化を、開始剤層上に有する。構造要素は、金属および/または非金属領域であってもよい。
【0100】
本発明の特に有利な発展において、コーティングされた基板は、少なくとも部分的に透明である金属構造を有する。これは、例えば20μm未満、好ましくは10μm未満の解像度を有する構造の透明基板への適用によって達成できる。
【0101】
本発明に従うプロセスによって得られるコーティングされた基板は、多くの用途に使用できる。まず、このプロセスは、反射性金属層の表面への適用に好適である。これらは、例えばホログラフ用途の反射層として使用できる。
【0102】
本発明の特定の利点は、導電性構造の製造にある。これらは、電子用途におけるコンダクタトラックとして、特にタッチスクリーンディスプレイにおいて、ソーラーコレクタにおいて、ディスプレイにおいて、REIDアンテナとして、またはトランジスタにおいて好適である。そのため、それらは、これまでITO(インジウムスズ酸化物)に基づいて製造されていた製品における、例えばTCOコーティング(TCO:透明導電性酸化物)における置換物として好適である。
【0103】
しかし、構造はまた、トランジスタセクタにおいても使用できる。
【0104】
さらなる詳細および特徴は、従属請求項に関連して続く好ましい実施例の説明から明らかである。ここでは、特定の特徴が、単独で実施できる、またはいくつかを互いに組み合わせて実施できる。問題を解決する手段は、実施例に制限されない。例えば、記述された範囲は、すべての特定されていない中間値およびすべての考えられ得る成分間隔を常に含む。