特許第5963779号(P5963779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5963779耐摩耗性表面を有する、グラファイト化されたカソードブロック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963779
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】耐摩耗性表面を有する、グラファイト化されたカソードブロック
(51)【国際特許分類】
   C25C 3/08 20060101AFI20160721BHJP
   C25C 3/06 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C25C3/08
   C25C3/06 A
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-552923(P2013-552923)
(86)(22)【出願日】2012年2月6日
(65)【公表番号】特表2014-505176(P2014-505176A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】EP2012051959
(87)【国際公開番号】WO2012107400
(87)【国際公開日】20120816
【審査請求日】2013年9月12日
(31)【優先権主張番号】102011004013.7
(32)【優先日】2011年2月11日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512298708
【氏名又は名称】エスゲーエル カーボン ソシエタス ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】SGL Carbon SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス エックシュトルフ
(72)【発明者】
【氏名】フランク ヒルトマン
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−044192(JP,A)
【文献】 米国特許第04333813(US,A)
【文献】 特表昭57−501377(JP,A)
【文献】 特表昭61−501456(JP,A)
【文献】 特表昭58−501172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム電解セルのためのカソードブロック(20、20’、20”)であって、
前記カソードブロック(20、20’、20”)は、基層(30、30’、30”)と被覆層(32、32’、32”)とを含み、
前記基層(30、30’、30”)は、グラファイトを含み、
前記被覆層(32、32’、32”)は、融点が1000℃以上の硬質材料を、1重量%以上50重量%未満含むグラファイト複合材料を含み、
前記被覆層(32、32’、32”)は、50mm以上400mm以下の厚みを有する、
ことを特徴とするカソードブロック(20、20’、20”)。
【請求項2】
前記被覆層(32、32’、32”)に含まれる前記硬質材料は、ドイツ工業規格DIN EN 843−4に基づき測定されたヌープ硬度で、1000N/mm以上の硬さを有する、
請求項1に記載のカソードブロック(20、20’、20”)。
【請求項3】
前記被覆層(32、32’、32”)に含まれる前記硬質材料は、60重量%を超える炭素含有材料である、
請求項1または2に記載のカソードブロック(20、20’、20”)。
【請求項4】
前記被覆層(32、32’、32”)に含まれる前記硬質材料は、炭素含有材料であって、該炭素含有材料は、メール(Maire)およびメーリング(Mehring)の方法によって、2800℃での熱処理後に、平均層間距離c/2から計算されたグラファイト化度が、最大で0.50となる、
請求項3に記載のカソードブロック(20、20’、20”)。
【請求項5】
前記被覆層(32、32’、32”)は、硬質材料として、1重量%以上25重量%以下の炭素含有材料を含む、
請求項3または4に記載のカソードブロック(20、20’、20”)。
【請求項6】
硬質材料として前記被覆層(32、32’、32”)に含まれている前記炭素含有材料は、X線回折干渉により決定された平均層間距離c/2が、0.339nm以上である、
請求項3から5までのいずれか1項に記載のカソードブロック(20、20’、20”)。
【請求項7】
前記被覆層(32、32’、32”)に含まれている前記硬質材料は、二ホウ化チタン、二ホウ化ジルコニウム、二ホウ化タンタル、炭化チタン、炭化ホウ素、炭窒化チタン、炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化バナジウム、窒化チタン、窒化ホウ素、窒化ケイ素、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、ならびに、これらの化合物の2以上の任意の化学的組み合わせおよび/または任意の混合物からなる群から選択される、
請求項1または2に記載のカソードブロック(20、20’、20”)。
【請求項8】
前記被覆層(32、32’、32”)に含まれている前記硬質材料は、単峰性の粒子径分布を有しており、ISO13320−1に基づく静的光散乱によって決定された体積加重平均粒径(d3,50)は、10μm以上20μm以下である、
請求項7に記載のカソードブロック(20、20’、20”)。
【請求項9】
前記被覆層(32、32’、32”)に含まれている前記硬質材料は、単峰性の粒子径分布を有しており、ISO13320−1に基づく静的光散乱によって決定された体積加重平均粒径(d3,50)は、3μm以上10μm以下である、
請求項7に記載のカソードブロック(20、20’、20”)。
【請求項10】
ISO13320−1に基づく静的光散乱によって決定された、前記硬質材料の粒径d3,90は、20μm以上40μm以下である、
請求項7から9までのいずれか1項に記載のカソードブロック(20、20’、20”)。
【請求項11】
ISO13320−1に基づく静的光散乱によって決定された、前記硬質材料の粒径d3,90は、10μm以上20μm以下である、
請求項7から9までのいずれか1項に記載のカソードブロック(20、20’、20”)。
【請求項12】
ISO13320−1に基づく静的光散乱によって決定された、前記硬質材料の粒径d3,10は、2μm以上7μm以下である、
請求項7から11までのいずれか1項に記載のカソードブロック(20、20’、20”)。
【請求項13】
ISO13320−1に基づく静的光散乱によって決定された、前記硬質材料の粒径d3,10は、1μm以上3μm以下である、
請求項7から11までのいずれか1項に記載のカソードブロック(20、20’、20”)。
【請求項14】
前記被覆層(32、32’、32”)は、融点が1000℃以上の硬質材料を、5重量%以上40重量%以下含む、
請求項7から13までのいずれか1項に記載のカソードブロック(20、20’、20”)。
【請求項15】
前記被覆層(32、32’、32”)の厚みは、カソードブロック(20、20’、20”)の全高の、1%以上50%以下である、
請求項1から14までのいずれか1項に記載のカソードブロック(20、20’、20”)。
【請求項16】
前記炭素含有材料は、コークスである、
請求項6に記載のカソードブロック(20、20’、20”)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム電解セル用のカソードブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
上記電解セルは、電解によるアルミニウム生産に用いられ、当該電解によるアルミニウム生産は、通常、工業的にはホール・エルー法により実施される。そのホール・エルー法では、酸化アルミニウムと氷晶石とからなる溶融物が電解される。ここで、上記氷晶石Na[AlF]は、融点を、純粋な酸化アルミニウムの融点である2045℃から、氷晶石、酸化アルミニウム、および添加物、例えば、フッ化アルミニウムおよびフッ化カルシウム、を含む混合物の融点である約950℃まで下げることに用いられる。
【0003】
当該方法に用いられる電解セルは底部を有し、当該底部は、カソードを形成する、複数の互いに接するカソードブロックから構成されている。セルの動作時の熱的および化学的条件に耐えるために、上記カソードブロックは、通常、炭素含有材料から構成されている。カソードブロックの下面には、それぞれ溝が設けられ、その溝の内部にそれぞれ少なくとも1つの導体レールが配置され、その導体レールを経由して、アノードを通って供給された電流が流される。ここで、溝との境界をなすカソードブロックの壁部と導体レールとの間のそれぞれの空隙にしばしば鋳鉄が流し込まれる。これは、これにより実現した、鋳鉄での導体レールの被覆により上記導体レールを電気的および機械的に上記カソードブロックに接続するためである。上記カソードブロックの上側にある、溶融液体アルミニウムからなる層から約3cmから5cm上方に、単独のアノードブロックから構成されているアノードが配置され、当該アノードとアルミニウムの表面との間に電解質、すなわち、酸化アルミニウムおよび氷晶石を含む溶融物がある。約1000℃で実施される電解の間に生成したアルミニウムは、電解質に比べてより大きい密度を有するため、電解質の層の下に、すなわち、上記カソードブロックの上側と電解質の層との間の中間層として沈殿する。電解では、氷晶石融液に溶解している酸化アルミニウムが電流流れによりアルミニウムと酸素とに分解される。電気化学的には、溶融液体アルミニウムの層は、その溶融液体アルミニウムの層の表面においてアルミニウムイオンが単体アルミニウムに還元されるので、本来のカソードである。それにもかかわらず、以下においては、カソードの概念は、電気化学的に見たカソード、すなわち溶融液体アルミニウムの層ではなく、しかし、電解セル底部を形成する、1つまたは複数のカソードブロックから構成されている部材として理解される。
【0004】
ホール・エルー法の主な欠点は、この方法が非常にエネルギー集約的であることである。1kgのアルミニウムを生産するために、約12kW/hから15kW/hまでの電力量が必要であり、その電力量は生産費の約40%までを占める。その生産費を下げることを可能とするために、この方法のエネルギー原単位をできるだけ減少させることが望まれる。
【0005】
このため、近年、グラファイトカソード、すなわち、主成分としてグラファイトを含むカソードブロックからなるグラファイトカソードが用いられることが多くなっている。かかるカソードブロックは、その生産において原料としてグラファイトが用いられるグラファイトカソードブロックと、その生産において原料として炭素を含むグラファイト前駆体を用い、当該グラファイト前駆体を2100℃以上3000℃以下で熱処理することによりグラファイトに変化させるグラファイト化したカソードブロックとに分類される。アモルファス炭素に比べてグラファイトは、かなり低い比電気抵抗と著しく高い熱伝導率とを特徴とするため、電解におけるグラファイトカソードの使用により、一方では、電解のエネルギー原単位を減少させることが可能になり、他方では、電解をより高い電流で実施することができ、そのことは、それぞれの電解セルの生産性の向上を可能にする。しかしながら、グラファイトからなるカソードまたはカソードブロック、および、特に、グラファイト化したカソードブロックは、電解時に、表面損失により激しく摩耗され、その摩耗の程度は、アモルファス炭素からなるカソードブロックの摩耗より著しく大きい。カソードブロック表面の損失は、そのカソードブロックの長手方向に亘って均一ではなく、カソードブロックの動作時に最も高い局所的な電流密度が生じる、カソードブロックの周辺領域において、より大きい規模で生じる。これは、上記周辺領域において、導体レールと電流供給部分とが接触するためであり、それにより、結果として生じる、電流供給部分からカソードブロックの表面までの電気抵抗は、カソードブロックの周辺領域を通って流れるときの方が、カソードブロックの中心を通って流れるときより小さい。この不均一な電流密度分布によりカソードブロックの表面は、増加する動作時間とともに、カソードブロックの長手方向におおよそW字型の外形に変化する。このとき、不均一な損失により、カソードブロックの耐用期間は、最も大きい損失のある箇所によって制限される。これ以外にも、機械的な影響が電解時にカソードブロックの摩耗を増大させる。溶融液体アルミニウム層が電解時における強い磁場および当該磁場の結果として生じる電磁相互作用により恒常的に運動するため、カソードブロック表面においてかなりの粒子摩耗が発生し、この粒子摩耗が、グラファイトカソードブロックの場合、アモルファス炭素からなるカソードブロックより著しく高い消耗を起こす。
【0006】
さらに、DE19714433C2より、80重量%以上の二ホウ化チタンを含む被覆を有するカソードブロックが知られており、その被覆は、二ホウ化チタンをカソードブロックの表面にプラズマ溶射することにより形成される。この被覆はカソードブロックの耐摩耗性を向上するためであるとされている。しかしながら、このような純粋な二ホウ化チタンからなるかまたは二ホウ化チタンを非常に高い含有率で含む被覆は、非常に脆弱であり、且つ、そのためにひび割れしやすい。さらに、この被覆の比熱膨張は炭素の比熱膨張の約2倍であり、よって、このようなカソードブロックの被覆は、融解電解における使用の場合、寿命が非常に短い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE19714433C2
【特許文献2】DE10 2010 029 538.8
【特許文献3】DE2947005A1
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Maire, J.Mehring, Proceedings of the 4th Conference on Carbon, Pergamon Press 1960, p.345〜350
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ、本発明の課題は、カソードブロック、すなわち、比電気抵抗が低く、好ましくは、溶融アルミニウムで十分に濡らされることが可能であり、溶融電解の動作時に生じる摩耗の化学的条件および熱的条件に対して、とりわけ高い耐摩耗性および耐消耗性を有する、カソードブロックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上記課題は、基層と被覆層とを含む、アルミニウム電解セルのためのカソードブロックにより解決される。上記基層は、グラファイトを含む。また、上記被覆層は、融点が1000℃以上の硬質材料を、1重量%以上50重量%未満含むグラファイト複合材料を含んで構成されている。
【0011】
この解決法は、融点が1000℃以上の硬質材料を、1重量%未満にならないように、しかし、最大で50重量%未満となるように含むグラファイト複合材料からなる被覆層を、グラファイトを含む基層の上に設けることにより、溶融電解のエネルギー効率のよい動作に必要な充分に低い比電気抵抗を有するカソードブロックが得られるという知見に基づいている。当該カソードブロックは、さらに、非常に高い耐摩耗性を有しており、従って、溶融電解で生じる摩耗の、化学的条件および熱的条件に対して耐消耗性がある。ここで、とりわけ驚くべきことには、上記カソードブロックによって、グラファイトからなる従来のカソードブロックの場合に、電解において不均一な摩耗によりカソードブロックの長手方向に生じるW字型の外形の発生が回避される。あるいは、少なくともかなり減少する。
【0012】
それゆえに、本発明に係るカソードブロックは、カソードブロックの基層および被覆層にグラファイトを用いることに結びつく有利な点、とりわけ、上記カソードブロックの電気抵抗が低いなどの有利な点によって、特徴付けられる。しかしながら、本発明に係る上記カソードブロックには、グラファイトの使用に起因する不利な点がない。不利な点とは、例えば、溶融アルミニウムで十分に濡らすことができないこと、および、特に、耐摩耗性または耐消耗性が低いことである。寧ろ、本発明のカソードブロックに設けた、硬質材料を含む被覆層により、カソードブロックの優れた耐摩耗性およびそれによる耐消耗性が達成される。一方、上記硬質材料は被覆層のみにあって基層には含まれないため、硬質材料により起りうる不利な点、例えば、カソードブロックの電気伝導率の減少は回避される。その上、驚くべきことに本発明のカソードブロックの表面は、硬質材料を含む被覆層を用いているにもかかわらず、ひび割れの傾向がなく、不利に高い脆弱性がとりわけ目立つわけでもない。全体として本発明のカソードブロックは、アルミニウムを生産するための、酸化アルミニウムおよび氷晶石を含む溶融物を用いた溶融電解の実施に関して、長期にわたって安定性があり、非常に低いエネルギー原単位によって上記溶融電解を実施することを可能にする。
【0013】
本発明の意図するところでは、硬質材料とは、その概念の当該分野における通常の定義と同様、とりわけ1000℃およびそれを超える高温下でも非常に高い硬度を示す材料として理解される。
【0014】
好ましくは、用いられる硬質材料の融点は、1000℃よりずっと高く、これに関して、特に、1500℃以上の融点、好ましくは2000℃以上の融点、特に好ましくは2500℃以上の融点を有する硬質材料がとりわけ好適であることが明らかになった。
【0015】
基本的に、本発明のカソードブロックの被覆層には、あらゆる硬質材料を用いることが可能である。しかし、良好な結果は、特に、ドイツ工業規格DIN EN 843−4に基づき測定されたヌープ硬度で、1000N/mm以上の硬さ、好ましくは1500N/mm以上の硬さ、特に好ましくは2000N/mm以上の硬さ、さらに特に好ましくは2500N/mm以上の硬さを有する硬質材料によってもたらされ得る。
【0016】
本発明の特に好ましい第1の実施形態では、本発明のカソードブロックの被覆層は硬質材料として硬い炭素材料を含み、その硬い炭素材料は、ドイツ工業規格DIN EN 843−4に基づき測定されたヌープ硬度で、1000N/mm以上の硬さ、好ましくは1500N/mm以上の硬さ、特に好ましくは2000N/mm以上の硬さ、さらに特に好ましくは2500N/mm以上の硬さを有する。ここで、炭素材料とは、特に、60重量%を超え、好ましくは70重量%を超え、特に好ましくは80重量%を超え、さらに特に好ましくは90重量%を超える炭素を含む材料であると理解される。
【0017】
上記炭素材料は、好ましくは、コークス、無煙炭、カーボンブラック、ガラス状炭素、および、これらの材料の2以上の混合物からなる群から選択された材料、特に好ましくはコークスである。上記の化合物の群は、以下に”難グラファイト化炭素”とも称され、それは、関連して引用されるドイツ特許出願DE10 2010 029 538.8による、グラファイト化が不可能な炭素、または少なくともグラファイト化が簡単ではない炭素を意味する。グラファイト化が簡単ではないコークスは、特に、硬質コークス、例えば、アセチレンコークスである。
【0018】
特にグラファイト化された炭素から構成された基層および被覆層からなるカソードブロックについて、本発明の思想のさらなる形態によれば、本発明のカソードブロックの被覆層は、硬質材料として、低いグラファイト化能を有する炭素材料を含み、その炭素材料は、好ましくはコークス、無煙炭、カーボンブラック、および、ガラス状炭素から選択され、特に好ましくはコークスである。グラファイト化されたカソードブロックは、炭素を含むグラファイト前駆体が結合剤と混合され、その混合物がカソードブロックの形に形成され、次に、炭化され、そして、最終的にグラファイト化されることにより生産される。ここで、グラファイト前駆体および結合剤を含む上記混合物に、より低いグラファイト化能を有する炭素材料が、硬質材料として添加されていることにより、その後のグラファイト化の間に、硬質材料添加物が破壊されたり、あるいは、硬質材料が比較的柔らかいグラファイトへ変化したりすることが回避される。または、少なくともかなり低減される。従って、グラファイト化後に上記硬質材料がその使命、つまり、上記カソードブロックの耐摩耗性を向上するという使命を果たし得る。本発明においては、グラファイト化能の低い炭素材料とは、メール(Maire)およびメーリング(Mehring)の方法(J.Maire, J.Mehring, Proceedings of the 4th Conference on Carbon, Pergamon Press 1960, p.345〜350)によって、2800℃での熱処理後に、平均層間距離c/2から計算されたグラファイト化度が、最大で0.50となる炭素材料と理解される。良好な結果は、特に、上記炭素材料が、好ましくは、コークス、無煙炭、カーボンブラック、およびガラス状炭素から選択され、且つ、最大で0.4、および特に好ましくは最大で0.3のグラファイト化度を有する場合に、もたらされる。
【0019】
上記カソードブロック、特に該カソードブロックの被覆層について十分に高い電気伝導性を達成するために、本発明のカソードブロックの被覆層は、硬質材料として、1重量%以上25重量%以下、特に好ましくは10重量%以上25重量%以下、さらに特に好ましくは10重量%以上20重量%以下の炭素材料を含むことが好ましい。これにより、被覆層における高い耐摩耗性と十分に高い電気伝導率とのとりわけ最適なバランスが実現される。
【0020】
そのうえ、好ましくは、硬質材料として本発明のカソードブロックの被覆層に用いられる炭素材料は、好ましくはコークス、無煙炭、カーボンブラック、およびガラス状炭素から選択され、および特に好ましくはコークスであり、その炭素材料の粒度は、3mm以下、好ましくは2mm以下である。
【0021】
さらなる一実施形態では、それぞれの上記粒子は、玉ねぎの皮状の構造を有しており、該玉ねぎの皮状の構造は、本発明では、多層構造として理解される。上記多層構造では、球体形から楕円体形までの粒子からなる内層が、全体的にまたは少なくとも部分的に、少なくとも1つの中間層および少なくとも1つの外層により覆われている。
【0022】
さらに、硬質材料として、好ましくはコークス、無煙炭、カーボンブラック、およびガラス状炭素から選択された炭素材料、特に好ましくはコークスである炭素材料が用いられ、その炭素材料の、2800℃での熱処理後の見かけの結晶子の大きさが、好ましくは20nm未満であって、他方では、当該炭素材料の粒子のBET比表面積が、好ましくは、10m/g以上40m/g以下、特に好ましくは20m/g以上30m/g以下であるときに有利であることが実証された。
【0023】
上述した低いグラファイト化度を有するコークスの好ましい例は、不飽和炭化水素、特にアセチレンの生産において副産物として生成するコークスである。当該コークスは、以下、その不飽和炭化水素の生産において生成するその不飽和炭化水素の種類のいかんにかかわらず、アセチレンコークスと称される。そのために特に好適なコークスは、原油留分または水蒸気分解の残渣から得られるアセチレンコークスであることが実証され、当該原油留分または水蒸気分解の残渣は、不飽和炭化水素、特にアセチレンの合成において反応ガスの冷却のために用いられている。当該コークスを生産するために、冷却オイル、または、カーボンブラック混合物は、約500℃に加熱されたコーカーに導入される。コーカー内で、冷却オイルの液状成分が蒸発し、コークスはコーカーの底部に溜まる。同様の方法は、例えば、DE2947005A1に説明されている。この方法で、微粒子の、玉ねぎの皮状のコークスが生産され、当該コークスは、好ましくは、炭素含有量が96重量%以上であり、灰分含有量が、最大で0.05重量%、好ましくは最大で0.01重量%である。
【0024】
上記アセチレンコークスは、好ましくは、c方向の結晶子の大きさLが、20nm未満であり、a方向の結晶子の大きさLが、好ましくは50nm未満であり、特に好ましくは40nm未満である。
【0025】
アセチレンコークスに加えて、または代替的に、硬質材料として用いられうるコークスのさらなる好ましい例は、例えば、エクソンモービル社によって開発された、流動床反応器を用いる熱的クラッキングプロセスであるフレキシコーキングプロセスのような、流動床プロセスにより生産されたコークスである。上記プロセスにより、コークスは玉ねぎの皮状に構成され、球形ないし楕円形の形状になる。
【0026】
上述したアセチレンコークス、および/またはフレキシコーキングプロセスにより生産されたコークスに加えて、または代替的に、硬質材料として用いられうるコークスのさらなる好ましい例は、遅らせたコークス発生(”ディレードコーキング”)によって生産されるショットコークス、すなわち「shot」コークスである。このコークスの粒子は球形の形状を有する。
【0027】
硬質材料としての、好ましくはコークス、無煙炭、カーボンブラック、およびガラス状炭素から選択された炭素材料、および特に好ましくはコークスである炭素材料以外に、本発明のカソードブロックの被覆層は、グラファイト、好ましくはグラファイト化された炭素、および、場合によって、炭化されたおよび/またはグラファイト化された結合剤を含む。当該結合剤は、例えば、ピッチ、特に石炭タールピッチおよび/または石油ピッチ、タール、ビチューメン、フェノール樹脂、またはフラン樹脂である。以下にピッチが挙げられている場合、そのピッチは、当該分野の専門家に公知のすべての種類のピッチを意味する。ここで、上記グラファイトまたは好ましくはグラファイト化された炭素は、炭化されたおよび/またはグラファイト化された結合剤とともに、上記硬質材料が埋め込まれたマトリックスを形成する。特に、上記被覆層が、50重量%以上99重量%以下、好ましくは75重量%以上99重量%以下、特に好ましくは75重量%以上90重量%以下、さらに特に好ましくは80重量%以上90重量%以下の炭素を含む時に、好結果が得られる。
【0028】
本発明の非常に好ましい第2の実施形態によれば、本発明のカソードブロックの上記被覆層は、非酸化物セラミックスを硬質材料として含み、当該酸化物セラミックスは、好ましくは、元素周期表のIVA族〜VIA族のうちの少なくとも1つの金属と、元素周期表のIIIB族またはIVB族のうちの少なくとも1つの元素とから構成されている。これには、特に、例えば、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、またはタングステンのようなIVA族〜VIA族の金属の、炭化金属、ホウ化金属、窒化金属、および炭窒化金属が含まれる。
【0029】
上記グループを代表する好適な具体例は、二ホウ化チタン、二ホウ化ジルコニウム、二ホウ化タンタル、炭化チタン、炭化ホウ素、炭窒化チタン、炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化バナジウム、窒化チタン、窒化ホウ素、窒化ケイ素、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、および、これらの化合物の2以上の任意の化学的組み合わせおよび/または任意の混合物からなる群から選択された化合物である。特に、二ホウ化チタン、炭化チタン、炭窒化チタン、および/または窒化チタンによって好結果が得られる。最も好ましくは、本発明のカソードブロックの被覆層は硬質材料として二ホウ化チタンを含む。上述した硬質材料のすべては単独で用いられていてもよく、または、上述した化合物の2以上の任意の化学的組み合わせおよび/または混合物が用いられてもよい。
【0030】
本発明の思想のさらなる形態においては、非常に好ましい上記第2の実施形態によるカソードブロックの被覆層に含まれている硬質材料は、単峰性の粒子径分布を有し、国際標準ISO13320−1に基づく静的光散乱によって決定された体積加重平均粒径(d3,50)は、10μm以上20μm以下である。
【0031】
本発明の枠内において、硬質材料として、上記のように定義された単峰性の粒子径分布を有する非酸化物セラミックス、特に非酸化物チタンセラミックスおよび特に二ホウ化チタンが、カソードブロックの表面の非常に好適な濡れ性を実現するだけではなく、特に、カソードブロックの優れた耐摩耗性、よって、耐消耗性をも実現することが確認された。好適な濡れ性は、カソードブロックの表面において沈積物の発生あるいは沈積物の沈殿が確実に回避されることにより実現される。さらに、本発明の枠内において、驚くべきことに、上記効果は特に、被覆層内のセラミックスの硬質材料、好ましくは二ホウ化チタンの量が、50重量%未満、特に好ましくはそれどころか10重量%以上20重量%以下と比較的小さい場合に実現できることがわかった。これにより、カソードブロック表面を脆弱にする、高濃度のセラミックスの硬質材料を被覆層内において用いなくてもよい。さらに、上記のように定義された単峰性の粒子径分布を有するセラミックスの硬質材料は、非常に優れた加工性をも有する。特に、このような硬質材料の、例えば当該硬質材料を混合用容器に注ぎ込む時、または当該硬質材料の粉末を搬送する時の粉塵化傾向は十分に低く、それにより、例えば混合時に凝集物が発生するとしても、その発生量は少ない。さらに、このような硬質材料の粉末は十分に高い流動性および落下流動性を有し、これにより当該硬質材料の粉末は、例えば従来のコンベヤー装置によって混合器に運搬されうる。その結果として、本発明のカソードブロックの容易且つ低コストでの生産が可能になるだけではなく、特に上記硬質材料の、カソードブロックの被覆層内での非常に均一な分布も可能になる。
【0032】
本発明のとりわけ好ましい第2の実施形態による上記カソードブロックの被覆層に含まれる硬質材料、好ましくは、二ホウ化チタンは、好ましくは単峰性の粒子径分布を有しており、上記のように決定された体積加重平均粒径(d3,50)が、12μm以上18μm以下、特に好ましくは14μm以上16μm以下である。
【0033】
上述した実施形態に代えて、上記カソードブロックの被覆層に含まれているセラミックスの硬質材料は、単峰性の粒子径分布を有し、ここで国際標準ISO13320−1に基づく静的光散乱によって決定された体積加重平均粒径(d3,50)は、3μm以上10μm以下、好ましくは、4μm以上6μm以下であってもよい。この実施形態においても、特に好ましくは、非酸化物チタンセラミックスおよび、最も好ましくは、上記のように定義された単峰性の粒子径分布を有する二ホウ化チタンが用いられる。
【0034】
本発明の思想のさらなる形態においては、上記セラミックスの硬質材料は、上記のように決定された体積加重d3,90粒径が、20μm以上40μm以下、好ましくは25μm以上30μm以下である。上記セラミックスの硬質材料は、好ましくは、このようなd3,90値を、上記のように定義されたd3,50値と組み合わせて有する。この実施形態においても、上記セラミックスの硬質材料は、好ましくは非酸化物チタンセラミックス、特に好ましくは二ホウ化チタンである。その結果、上述した実施形態に関して挙げられた有利な点および効果が、いっそう高い程度で達成される。
【0035】
上述した実施形態に代えて、上記カソードブロックの被覆層に含まれるセラミックスの硬質材料は、上記のように定義された体積加重d3,90粒径が、10μm以上20μm以下、好ましくは12μm以上18μm以下であってもよい。好ましくは、当該セラミックスの硬質材料は、このようなd3,90値を、上記のように定義されたd3,50値と組み合わせて有する。この実施形態においても、上記のように定義された単峰性の粒子径分布を有する、特に好ましくは非酸化物チタンセラミックスおよび、最も好ましくは二ホウ化チタンが用いられる。
【0036】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、上記セラミックスの硬質材料は、上記のように定義された体積加重d3,10粒径が、2μm以上7μm以下、好ましくは3μm以上5μm以下である。好ましくは、上記硬質材料は、このようなd3,10値を、上記のように定義されたd3,90値および/またはd3,50値と組み合わせて有する。この実施形態においても、上記硬質材料は、好ましくは非酸化物チタンセラミックスおよび、特に好ましくは二ホウ化チタンである。その結果、上述した実施形態に関して挙げられた有利な点および効果がいっそう高い程度で達成される。
【0037】
上述した実施形態に代えて、上記カソードブロックの被覆層に含まれているセラミックス硬質材料は、上記のように定義された体積加重d3,10粒径が、1μm以上3μm以下、好ましくは1μm以上2μm以下であってもよい。好ましくは、当該硬質材料は、このようなd3,10値を、上述して定義されたd3,90値および/またはd3,50値と組み合わせて有する。この実施形態においても、上記のように定義された単峰性の粒子径分布を有する、特に好ましくは非酸化物チタンセラミックスおよび、最も好ましくは二ホウ化チタンが用いられる。
【0038】
さらに好ましくは、硬質材料として、非酸化物セラミックスおよび、特に非酸化物チタンセラミックス、特に好ましくは、二ホウ化チタンは、以下の式;
スパン=(d3,90−d3,10)/d3,50
によって算出された、0.65以上3.80以下、特に好ましくは、1.00以上2.25以下のスパン値によって特徴付けられる粒子径分布を有する。好ましくは、当該硬質材料は、このようなスパン値を、上記のように定義されたd3,90値および/またはd3,50値および/またはd3,10値と組み合わせて有する。その結果、上述した実施形態に関して挙げられた有利な点および効果がいっそう高い程度で達成される。
【0039】
上述したように、本発明に係るカソードブロックの被覆層における非酸化物セラミックス硬質材料として、特に、非酸化物チタンセラミックス、好ましくは炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタンおよび最も好ましくは二ホウ化チタンが適する。このため、本発明の思想のさらなる形態において提案されるのは、上記硬質材料は、80重量%以上、好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上、さらに特に好ましくは99重量%以上、最も好ましくは、全部が非酸化物セラミックス、好ましくは非酸化物チタンセラミックスおよび特に好ましくは二ホウ化チタンからなるということである。
【0040】
本発明において、上記被覆層におけるセラミックスの硬質材料の全量は、1重量%以上で、しかし、最大で50重量%未満である。硬質材料の量が上記数値範囲にある場合、被覆層は、一方では、耐消耗性の向上のために被覆層に十分な硬度と耐摩耗性とを与え、他方では、沈積物の発生および沈積物の沈殿を回避するために、十分高い、液体アルミニウムに対する被覆層表面の濡れ性を与えるための十分な硬質材料を含み、それによって、カソードブロックの耐消耗性はさらに高まり、また、溶融電解中のエネルギー原単位がさらに低減される。しかし、同時に、被覆層に含まれる硬質材料の量は十分低いので、被覆層の表面は、硬質材料の添加による、十分高い長期安定性のためには高すぎる脆弱性を示さない。
【0041】
さらに、本発明の非常に好ましい第2の実施形態において、上記被覆層が、5重量%以上40重量%以下、特に好ましくは10重量%以上30重量%以下、さらに特に好ましくは10重量%以上20重量%以下の、非酸化物セラミックス、好ましくは非酸化物チタンセラミックスおよび特に好ましくは二ホウ化チタンを、1000℃以上の融点を有する硬質材料として含むときに、良い結果が得られる。
【0042】
硬質材料としての非酸化物セラミックスを除いて、本発明に係るカソードブロックの被覆層は、本発明の非常に好ましい第2の実施形態において、グラファイトのまたは好ましくはグラファイト化された炭素および場合によっては炭化されたおよび/またはグラファイト化された結合剤、例えばピッチ、特に石炭タールピッチおよび/または石油ピッチ、タール、ビチューメン、フェノール樹脂またはフラン樹脂を含む。ここで、グラファイトのまたは好ましくはグラファイト化された炭素は任意成分である結合剤とともに、上記セラミックスの硬質材料が埋め込まれたマトリックスを形成する。上記被覆層が、50重量%を超え99重量%以下、好ましくは60重量%以上95重量%以下、特に好ましくは70重量%以上90重量%以下、さらに特に好ましくは80重量%以上90重量%以下のグラファイトを含むときには、特に良い結果が得られる。
【0043】
グラファイトを含むカソードブロックの被覆層として、本発明の思想のさらなる形態において提案されるのは、当該被覆層は、950℃における垂直方向の比電気抵抗が、5Ωμm以上20Ωμm以下、好ましくは9Ωμm以上13Ωμm以下であることである。これは、室温における、5Ωμm以上25Ωμmまたは10Ωμm以上15Ωμm以下の垂直方向の比電気抵抗に相当する。この関係において、垂直方向の比電気抵抗とは、カソードブロックを取り付けた状態での垂直方向の比電気抵抗であると理解される。
【0044】
セラミックスの場合に高価な硬質材料のためのコストをできるだけ低減するためには基本的には被覆層の厚みはできるだけ小さくすべきであるが、被覆層が十分高い耐摩耗性と耐用期間とを有するために十分な厚みにすべきである。全ての硬質材料の場合において、できるだけ薄い被覆層によって、カソード底部本体の良好な特性の低下をできるだけ少なくすべきである。このため、被覆層の厚みが、カソードブロックの全高の、1%以上50%以下、好ましくは5%以上40%以下、特に好ましくは10%以上30%以下、さらに特に好ましくは15%以上25%以下、例えば約20%のときに特に良い結果が得られる。
【0045】
例えば、上記被覆層は、50mm以上400mm以下、好ましくは50mm以上200mm以下、特に好ましくは70mm以上180mm以下、さらに特に好ましくは100mm以上170mm以下、最も好ましくは約150mmの厚みまたは高さを有しうる。ここで、厚みまたは高さとは、被覆層の下面から被覆層の最も高い凸部の部位までの距離であると理解される。
【0046】
本発明のさらに特に好ましい実施形態に従えば、基層は、80重量%以上で、好ましくは90重量%以上で、特に好ましくは95重量%以上で、さらに特に好ましくは99重量%以上で、最も好ましくは、全部が、グラファイトと、結合剤、例えば炭化されたまたはグラファイト化されたピッチとからなる混合物から構成される。このような基層は、好適に低い比電気抵抗を示す。ここで、この混合物は、好ましくは、70重量%以上95重量%以下のグラファイトおよび5重量%以上30重量%以下の結合剤、特に好ましくは、80重量%以上90重量%以下のグラファイトおよび10重量%以上20重量%以下の結合剤、例えば85重量%のグラファイトおよび15重量%の炭化されたまたはグラファイト化されたピッチから、形成される。
【0047】
好ましくは、基層の上面も、被覆層の下面も、また、それに伴い、基層と被覆層との境界面も、実質的には平面状に形成されている。カソードブロックの両方の層は、振動プロセスまたは圧縮プロセスによって、圧紛体の状態で相互に結合されることができる。この関係において、「実質的には平面状」とは、基層が構造化されておらず、被覆層には構造が形成されていることであると理解される。
【0048】
また、これが好ましくないとしても、基層と被覆層との間に中間層を形成することができ、当該中間層は、例えば、中間層が被覆層より低い硬質材料濃度を有するということを除いては、被覆層のように形成される。
【0049】
本発明の思想のさらなる形態においては、基層は、950℃における垂直方向の比電気抵抗が、13Ωμm以上18Ωμm以下、好ましくは14Ωμm以上16Ωμm以下であることが提案される。これは、室温では、14Ωμm以上20Ωμm以下または16Ωμm以上18Ωμm以下の垂直方向の比電気抵抗に相当する。
【0050】
本発明のさらなる対象はカソードであり、当該カソードは、少なくとも1つの前述のカソードブロックを含み、ここで、このカソードブロックは、上記基層における、被覆層が配置されているのとは反対側の面に少なくとも1つの溝を有し、当該少なくとも1つの溝には、電解中にカソードに電流を供給するために、少なくとも1つの導体レールが設けられている。
【0051】
上記カソードブロックに少なくとも1つの導体レールを固く固定するために、および、上記導体レールとカソードブロックとの間の電気抵抗を増大させる空洞を回避するために、少なくとも1つの導体レールが、少なくとも一部に、また、特に好ましくは周囲平面全体に、鋳鉄からなる被覆を有することがさらに好ましい。この被覆は、少なくとも1つの導体レールがカソードブロックの溝にはめ込まれ、さらに、導体レールと、溝との境界をなす壁部との間の空隙に鋳鉄が注ぎ込まれることによって製造される。
【0052】
本発明のさらなる対象は、前述のカソードブロックまたは前述のカソードの、金属、特にアルミニウムの製造のための溶融電解を実施するための使用である。
【0053】
好ましくは、アルミニウムの製造のために、氷晶石と酸化アルミニウムとからなる溶融物を用いて溶融電解を実施するために、上記カソードブロックまたは上記カソードが用いられ、ここで、溶融電解は、特に好ましくは、ホール・エルー法により実施される。
【0054】
以下、本発明を、有利な実施形態に基づき、また、添付図面との関連付けのもとに、純粋に例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明の実施例に基づくカソードブロックを含むアルミニウム電解セルの一部分の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、カソード12を有するアルミニウム電解セル10の一部分の断面図を示す。カソード12は、同時に、電解セル10の動作中に製造された溶融アルミニウム14のための、および、溶融アルミニウム14の上方にある氷晶石−酸化アルミニウム溶融物16のための槽の底部を形成する。氷晶石−酸化アルミニウム溶融物16には、電解セル10のアノード18が接触している。側面では、アルミニウム−電解セル10の下部によって形成された槽が、図1に示されない炭素および/またはグラファイトからなる内張りと境をなしている。
【0057】
カソード12は、複数のカソードブロック20、20’、20”を含み、これらは、それぞれ、カソードブロック20、20’、20”の間に配置された突き固めた塊の継ぎ目22、22’にはめ込まれた突き固めた塊24、24’を介して互いに結合されている。同様に、アノード18は、複数のアノードブロック26、26’を含み、ここで、アノードブロック26、26’は、それぞれ、カソードブロック20、20’、20”の約2倍の幅と約半分の長さを有する。このとき、アノードブロック26、26’は、カソードブロック20、20’、20”の上に、それぞれ1つのアノードブロック26、26’が、幅方向に並んで配置された2つのカソードブロック20、20’、20”を覆うとともに、それぞれ1つのカソードブロック20、20’、20”が、長さ方向に並んで配置された2つのアノードブロック26、26’を覆うように、配置されている。
【0058】
各カソードブロック20、20’、20”は、下方の基層30、30’、30”と、当該基層の上に配置され、当該基層と固く結合された被覆層32、32’、32”とから構成されている。基層30、30’、30”と被覆層32、32’、32”との界面は平面である。カソードブロック20、20’、20”の基層30、30’、30”はそれぞれグラファイト材料構造を示し、これは、例えば、石油コークスおよび石炭タールピッチからなる混合物の成型とそれに続く3000℃以下の熱処理によって製造され、一方、被覆層32、32’、32”はそれぞれ、アセチレンコークスを含むグラファイト複合材料から構成され、当該グラファイト複合材料は、20重量%のアセチレンコークス、グラファイトおよび、結合剤としての炭化されたまたはグラファイト化されたピッチを含む。被覆層32、32’、32”に含まれるアセチレンコークスは、0.2mm以上1mm以下の粒度を有する。
【0059】
それぞれのカソードブロック20、20’、20”は、幅が650mmであり、高さは、合計して550mmである。この高さに関しては、それぞれの基層30、30’、30”は、高さが450mmであり、それぞれの被覆層32、32’、32”は、高さが、100mmである。上記アノードブロック26、26’と上記カソードブロック20、20’、20”との間隔は約200mm以上約350mm以下である。アノードブロック26、26’と上記カソードブロック20、20’、20”との間に配置される、氷晶石-酸化アルミニウム溶融物16からなる層は、厚さが約50mmであり、この氷晶石-酸化アルミニウム溶融物16からなる層の下方に位置する、溶融アルミニウム14からなる層は、厚さが約150mm以上約300mm以下である。
【0060】
最後に、カソードブロック20、20’、20”は、それぞれその下面において2つの溝38、38’を含み、当該2つの溝38、38’はそれぞれ直角の断面、すなわち基本的に長方形の断面を有する。ここで、それぞれの溝38、38’には、それぞれ1つの、鋼鉄からなる導体レール40、40’が収納され、当該導体レール40、40’も、直角のまたは基本的に長方形の断面を有する。ここで、上記導体レール40、40’と、上記溝38、38’との境界をなす壁部との間のそれぞれ空隙に鋳鉄(示されていない)が流し込まれている。これにより、上記導体レール40、40’は上記溝38、38’の境界をなす壁部と固く接続されている。好ましくは、上記溝38、38’と、上記被覆層32、32’、32”の上面にある上記凹部34、34’とは、成型プロセス時に設けられ、それは、例えば、振動機による形成、および/または突き固めにより設けられる。
【符号の説明】
【0061】
10 アルミニウム電解セル、 12 カソード、 14 溶融アルミニウム、 16 氷晶石−酸化アルミニウム溶融物、 18 アノード、 20、20’、20” カソードブロック、 22、22’ 突き固めた塊の継ぎ目、 24、24’ 突き固めた塊、 26、26’ アノードブロック、 30、30’、30” 基層、 32、32’、32” 被覆層、 38、38’ 溝、40、40’ 導体レール
図1