(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963794
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】複数のアジマス角からファイバ格子を刻み込むための方法及び装置並びにそのように刻み込まれるファイバ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/02 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
G02B6/02 416
G02B6/02 461
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-53098(P2014-53098)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2014-194544(P2014-194544A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2014年9月30日
(31)【優先権主張番号】61/786,847
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/211,996
(32)【優先日】2014年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509094034
【氏名又は名称】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】ケネス エス.フェダー
(72)【発明者】
【氏名】トリスタン クレンプ
(72)【発明者】
【氏名】ポール エス.ウェストブルック
【審査官】
吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−278904(JP,A)
【文献】
特表2000−515477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコア及び少なくとも1つのクラッドを有する光導波路内に、ブラッグ格子のような格子を刻み込む方法であって、
(a)前記導波路を第1のアジマス方向からの少なくとも第1の化学線放射のビームにさらすステップと、
(b)前記導波路を少なくとも第2のアジマス方向からの少なくとも第2の化学線放射のビームにさらすステップと
を具備し、
前記第2の化学線放射のビームは、前記第1の化学線放射のビームのシャドウイング及びレンズ効果によって影響を受ける前記コアの領域に照射される、方法。
【請求項2】
1つ又は複数の格子を刻み込む干渉パターンを形成するように、位相マスクなどの格子を介して、ステップ(a)及びステップ(b)の化学線放射の前記第1の化学線放射のビーム及び前記第2の化学線放射のビームを、波ベクトルの異なる縦方向成分を有する複数のビームに分割するステップ(c)をさらに具備する、請求項1に記載の光導波路内に格子を刻み込む方法。
【請求項3】
化学線放射である前記第1の化学線放射のビームと前記第2の化学線放射のビームとの干渉パターンの周期及び位相を一致させるステップ(d)をさらに具備する、請求項2に記載の光導波路内に格子を刻み込む方法。
【請求項4】
ステップ(d)は、
前記導波路にぶつからない制御ビームを提供するステップと、
化学線放射の前記第1及び第2の化学線放射のビームの前記干渉パターンのうちの少なくとも1つの位置又は向きのうちの少なくとも1つを、前記制御ビームに基づいて、制御する制御ループを設けるステップと
をさらに含む、請求項3に記載の光導波路内に格子を刻み込む方法。
【請求項5】
前記制御ループは、前記ビームの経路内の前記位相マスクの位置又は向きのうちの少なくとも1つを制御して、前記第1及び第2の干渉パターンのうちの少なくとも1つの前記位置又は向きを制御する、請求項4に記載の光導波路内に格子を刻み込む方法。
【請求項6】
複数のコア及び少なくとも1つのクラッドを有する光導波路内に、ブラッグ格子のような格子を刻み込む装置であって、
前記導波路に対する第1のアジマス方向における少なくとも第1の化学線放射のビームと、
前記導波路に対する少なくとも第2のアジマス方向における少なくとも第2の化学線放射のビームと
を備え、
前記第2の化学線放射のビームは、前記第1の化学線放射のビームのシャドウイング及びレンズ効果によって影響を受ける前記コアの領域に照射される、装置。
【請求項7】
格子を刻み込むことができる干渉パターンを形成するように、化学線放射の前記第1及び第2の化学線放射のビームを、それぞれ、異なる縦方向成分を有する複数のビームに分割するように適合されている、第1及び第2の格子又は位相マスクをさらに備える、請求項6に記載の光導波路内に格子を刻み込むための装置。
【請求項8】
化学線放射である前記第1の化学線放射のビームと前記第2の化学線放射のビームとの干渉パターンの周期及び位相は一致する、請求項7に記載の光導波路内に格子を刻み込むための装置。
【請求項9】
前記導波路にぶつからない制御ビームと、
化学線放射の前記第1及び第2の化学線放射のビームの前記干渉パターンのうちの少なくとも1つの、位置又は向きのうちの少なくとも1つを、前記制御ビームに基づいて、制御する制御ループと
をさらに備える、請求項8に記載の光導波路内に格子を刻み込むための装置。
【請求項10】
複数のコア及び格子を有する光導波路の製造方法において、
第1のアジマス方向からの化学線放射の少なくとも第1の化学線放射のビーム及び少なくとも第2のアジマス方向からの化学線放射である少なくとも第2の化学線放射のビームにさらすことによって、前記コアにブラッグ格子を刻み込む工程を有し、
前記第2の化学線放射のビームは、前記第1のビームのシャドウイング及びレンズ効果によって影響を受ける前記コアの領域に照射される、光導波路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
米国内の優先権は、「Inscription of fiber Bragg gratings from multiple azimuthal angles」と題する、2013年3月15日に出願された米国仮特許出願第61/786,847号から主張され、その教示は、本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、マルチコア光導波路又はファイバを対象とする。より詳細には、本発明は、異なるコア間で、コア内部のブラッグ格子などの格子の強度のばらつきを減少させるようにして、マルチコア光導波路又はファイバ内に格子を刻み込む(inscribing)方法などを対象とする。
【背景技術】
【0003】
従来、例えばブラッグ格子などの格子を刻み込むためのマルチコア・ファイバの露光は、1つのアジマス方向(azimuthal direction)から行われている。ファイバ軸(又は長手軸)は、横断面である図面に対して垂直である(
図8参照)。ファイバに入射する光線は、通常、例えばファイバに平行な、図示される位相マスクにより生成され、ファイバ軸の方向に異なる波ベクトル成分を有する、少なくとも2つのビームの重ね合わせであることに留意されたい。
【0004】
特に、アジマス角によって不変ではないファイバ(例えば、マルチコア・ファイバ又は微細構造ファイバ)では、ブラッグ格子を形成する屈折率変化の横方向の分布は、刻み込みのための化学線(actinic)(UV)放射のアジマス方向に依存する(
図1参照)。ファイバとファイバを取り囲むより低い屈折率の材料(通常は空気)との間の湾曲界面によりもたらされるレンズ効果によって、特定のコア内の格子は、このコアが(入来ビームに関して)ファイバの遠い側にある場合に、より強くなる。この効果は、
図2の、異なる位置すなわちファイバの遠い側への位置、及びファイバの遠い側からの位置へとオフセット・コアをツイストすることで生じる緩やかな正弦格子強度変化でやはり明らかである。同様に重要であるのは、入射化学線放射の経路を陰にし、又は入射化学線放射の経路を変え、
図2の鋭いスパイクを生じさせる、他のコアに起因するシャドウイング効果又は横方向不均等性である。格子強度のこれらの大きなばらつき(最大値及び最小値の両方)が、格子製造プロセスの歩留りを実質的に減少させるおそれがある。
【0005】
いくつかのタイプのファイバ、例えば六角形配列で配置されるコアを有するマルチコア・ファイバでは、シャドウイング及びレンズ効果に起因する格子強度のばらつきが、マルチコア・ファイバの異なるコアで最小になるような、少なくとも1つの最適なアジマス角を見いだすことが可能である。ツイストされたマルチコア・ファイバでは、この最適な角度は、ファイバに沿った位置zに依存するため、化学線放射源が単1つのアジマス角から来る場合、格子強度のばらつきを全体的に最小にすることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−86209号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも1つのコア及び少なくとも1つのクラッドを有する光導波路内に格子を刻み込む方法である。導波路は、第1のアジマス方向からの化学線放射の第1のビーム又は干渉パターン、及び少なくとも第2のアジマス方向からの化学線放射の少なくとも第2のビーム又は干渉パターンに露光される。2つの露光ステップは、同時に又は連続して実施することができる。各ビーム又は干渉パターンは、それ自体の発生源により生成することができ、又は共通の発生源を設けて、第1及び第2のアジマス方向からの、化学線放射の第1及び第2のビーム又は干渉パターンの両方を生成することができる。
【0008】
化学線放射の第1及び第2のビームは、例えば位相マスクなどの格子を介して、干渉パターン又は波ベクトルの異なる縦方向成分を有する複数のビームに分割することができる。
【0009】
化学線放射の干渉パターンの周期及び位相が一致することが好ましい。化学線放射の第1及び第2の干渉パターンのうちの一方の向き及び空間位相は、化学線放射の第1及び第2の干渉パターンの他方の向き及び空間位相と一致する。
【0010】
好ましくは、導波路にぶつからない制御ビームが提供される。好ましくは、化学線放射の第1及び第2のビーム又は干渉パターンのうちの少なくとも1つの、位置又は向きのうちの少なくとも1つを制御する、制御ループが設けられる。
【0011】
導波路で実施される刻み込みが、ブラッグ格子を含むことが好ましい。
【0012】
本発明は、少なくとも1つのコア及び少なくとも1つのクラッドを有する光導波路内に格子を刻み込むための装置も含む。装置は、導波路に関して第1のアジマス方向の、化学線放射の第1のビーム又は干渉パターン、及び導波路に関して少なくとも第2のアジマス方向の、化学線放射の少なくとも第2のビーム又は干渉パターンを含む。
【0013】
1つの実施形態では、第1の発生源が第1のアジマス方向から化学線放射の第1のビーム又は干渉パターンを生成し、第2の発生源が第2のアジマス方向から化学線放射の第2のビーム又は干渉パターンを生成する。任意選択で、共通の発生源が、第1及び第2のアジマス方向から、化学線放射の第1及び第2のビーム又は干渉パターンの両方を生成する。
【0014】
好ましくは、第1及び第2の格子が、化学線放射の第1及び第2のビームを、それぞれ異なる縦方向成分を有する波ベクトルを有する複数のビームに、分割するように適合される。
【0015】
好ましくは、化学線放射の第1及び第2の干渉パターンの周期及び位相が一致する。
【0016】
本発明の装置は、任意選択で、導波路に当たらない制御ビーム、並びに化学線放射の第1及び第2のビームのうちの少なくとも1つの、位置又は向きのうちの少なくとも1つを制御する制御ループを含む。
【0017】
ブラッグ格子を導波路(例えば、1つ又は複数のコアを有する、ツイストされた又はツイストされない光ファイバ)に書き込むとき、ブラッグ格子の強度の、例えばコア内又は異なるコア間で、横方向ばらつきを減少させるために、干渉縞(fringe)パターンの向き及び空間位相が、受動的又は能動的のいずれかで一致して、ファイバ軸に沿う干渉縞パターン間、並びに(例えば、複数のオフセット・コアでの)ファイバの横方向の次元にわたる干渉縞パターン間の、弱め合う干渉(destructive interference)を避ける又はなくす干渉パターンを使用して、少なくとも2つの異なるアジマス方向から導波路(例えば光ファイバ)を露光する。
【0018】
すなわち、本発明の実施形態は、少なくとも1つのコア、及び少なくとも1つのクラッドを有する導波路を設けることと、複数の干渉パターンを使用して少なくとも2つの異なるアジマス方向から導波路を露光することで導波路のコア又はクラッドのうちの1つ又は複数にブラッグ格子を書き込むことにより、ブラッグ格子の強度の横方向ばらつきを減少させる方法であって、各干渉パターンの干渉縞パターンの向き及び空間位相がそれぞれ他の干渉パターンに一致する方法を示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】従来知られているような、1つのアジマス方向からの放射を刻み込むための、マルチコア・ファイバの露光を示す側面図である。
【
図2】従来知られているような、ツイストされた7コア・ファイバの外側コア(「コアA」)内のブラッグ格子から反射されたパワーの入射化学線放射のアジマス角との依存関係を示すグラフ及び図である。
【
図3】本発明による、様々な(少なくとも2つの)アジマス方向からの、ファイバの露光を示す前面図である。
【
図4】本発明による、2つの反対方向(アジマス角差180°)からの、位相マスク・ベースの露光の前面図である。
【
図5】本発明による、2つの反対方向(アジマス角差180°)からの、ツイストされたマルチコア・ファイバの、位相マスク・ベースの露光の上面図である。
【
図6】本発明による、2つの反対方向(アジマス角差180°)からの露光での、制御ループを示す図である。
【
図7】
図6の設定での、位相マスク間の制御ビームの上面図である。
【
図8】アジマス角θ、縦方向座標z、及び径方向座標rを有する座標系を示すグラフであり、横断面は、x及びy方向に広がっている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、添付の
図1〜
図8を参照して、説明が行われる。これらの図は、本質的に例示的であり、本発明の範囲を制限するように働くことはないことを理解されたい。本発明の範囲は、以下に現れる請求項により規定される。
【0021】
レンズ効果、シャドウイングなどによりもたらされる格子の刻み込みの、上記の欠陥を打ち消すために、少なくとも2つのアジマス方向からの放射にファイバを露光する。
図3を参照されたい(3方向の例示の場合を示す)。該ファイバに入射する光線は、通常、
図1、
図4、及び
図5に示されるように、例えば該ファイバに平行な位相マスクにより生成される、ファイバ軸の方向に異なる波ベクトル成分を有する、少なくとも2つのビームの重ね合わせである。したがって、ファイバ形状の横方向不均等性からの屈折及び回折効果は、異なるアジマス角からの露光にわたって平均化される。これらの露光は、同時又は連続のいずれかで行うことができる。異なる入来ビームは、異なる発生源(例えば、レーザ)、又は適切な光学系を有する1つの共通の発生源のいずれかに由来することができる。
図6も参照されたい。結果として、屈折率変調が、(ファイバ軸に垂直な)各横断面でより均一となることができる。
【0022】
マルチコア・ファイバの場合に、各横断面内の異なるコアの格子の強度のばらつきは、この多方向露光により減少させることができる。グラフィカルに言えば、これは、
図2の曲線の少なくとも2つの変換されたコピーを加算することに対応する。最良の可能な平均化効果を実現するために、異なるコピーのスパイクが一致するべきではない。例えば、中心に1つのコアと60°のアジマス間隔を有する円上の6つのコアとを有する7コア・ファイバの場合(
図2参照)、入射角を、±30°、±60°、±90°等だけ異なるようにすべきでない。対照的に、±15°、±75°、±135°等の角度の違いにより、スパイクは一致しない。±180°の角度の違いでは(
図4及び
図5参照)、中心のコアでいくつかの影だけが一致することになるが、外側のコアでは一致しない。
【0023】
任意の(マルチコア、シングル・コア、微細構造などの、ツイストされる又はツイストされない)ファイバで、多方向露光によって、各コア内の屈折率変化の(横断面内の)横方向依存関係を減少させることもできる。このことによって、異なるモード間の結合を減少させることができ、したがってクラッド・モード・ロスを減少させることができる。
【0024】
図1、
図4、及び
図5では、入来する放射を、波ベクトルの異なる縦方向成分を有するいくつかのビームに分割するために格子(例えば、位相マスク)が使用されると仮定する(
図3の、2つ以上の異なるアジマス方向と混乱しないように)。長手方向、すなわちファイバ軸に平行では、これらのビームの干渉パターンは、ブラッグ格子を書き込むために必要とされるような、準周期的である。あるいは、そのような縦方向干渉パターンは、異なる縦方向成分を有する波ベクトルを既に有する、いつくかのビームを重ね合わせることにより、格子(又は位相マスク)なしに実現することもできる。したがって、
図1、
図4、及び
図5の格子(位相マスク)は、任意選択であり、入来する化学線放射が、その波ベクトルに、要求される異なる縦方向成分を既に有する場合には、必要ではない。さらに、
図4に示されるように、ファイバに当たらない安定化光線を、対照として設けることができる。安定化光線は、化学線であってよいが、必須ではない。
【0025】
ファイバの横方向の次元にわたる格子強度を劇的に損なうこととなる、弱め合う干渉を避けるために、縦方向干渉パターンの周期及び位相が、ファイバの横方向の次元を伝播するときに、異なるアジマス方向からの全ての入射化学線ビームで同じであることが重要である。オフセット・コアがあるので、このマッチングを、ファイバ径にわたって維持する必要がある。このことは、例えば圧電素子を使用して、1つ又はいくつかのビーム又は位相マスクの位置及び向きを制御する、例えば好適な制御ループにより実現することができる。例が
図6に示される。ファイバに当たらない制御ビームの対応する干渉パターンが、
図7に示される。
図6の制御ループは、この干渉パターンを安定化させるように作用する。位相マスクに取り付けられた圧電素子運動制御は、ファイバ軸に沿った位置並びに位相マスクの向きの両方を調整するように作用することができることに留意されたい。
図7には示されていないが、2つのマスクのブランク(溝なし)区域により形成されるファブリ・ペロー共振器を使用して、2つのマスクの向きの制御信号を提供することも可能である。この場合、2つのビームが、安定化のために必要となる。1つのビームが干渉縞安定化のため、1つのビームが向きの安定化のためである。ビームは、化学線ビームの部分、又は別個のビームであってよい。より多くの干渉パターンを用いるには、より多くの安定化サーボ・ループが必要となる。
【0026】
図7の右側の格子の右に示される干渉パターンを実現するために、両方のマスクが正確に同じ(準)周期的溝構造を有することが、非常に重要である。このことは、例えば、元々のマスクの溝が平行であった場合、幅広のマスクを2つのより狭いマスクに(溝に垂直に)切断することにより、自動的に正確に同じ溝構造を有することにより実現することができる。干渉パターンの(ファイバ軸に平行な)長さが比較的短い(典型的には、数ミリメートル未満)場合、能動的な安定化は必要でない可能性がある。
【0027】
アジマス角θは、
図8の座標系で規定される。図面の平面は、座標x及びyを有する横断面である。z軸は、図面の平面に垂直で、読者の方に向いており、通常、ファイバ軸と同一である。
【0028】
ブラッグ格子では、取り囲む導波路(例えば、光ファイバ内のコア)の特定の固有モード(例えば、基本モード)の有効指数
【数1】
は、平均格子周期Λを有する準周期的変調で、導波路軸に沿って乱される。波長λがブラッグ波長
【数2】
に十分に近い場合、ブラッグ格子の空間周波数
【数3】
が、順方向及び逆方向伝播固有モードの空間周波数
【数4】
と
【数5】
の間の差に等しいので、そのような格子は、その伝播期間にこの固有モードを反射する。
【0029】
ブラッグ格子は、例えば、異なる縦方向成分(すなわち、ファイバ軸の方向)を有する波ベクトルを有する2つの化学線ビームの、干渉パターンに導波路を露光することにより製造することができる。例が
図7に示される。左側の位相マスクが、入射ビームを2つの1次回折ビームに分割する(0次及びより高い回折次数は無視する、又はマスクが第1の回折次数への完全な変換効率を有すると仮定する)。これらの2つのビームのうちの一方が右上に伝播し、他方が右下に伝播する。ファイバ軸の縦方向は、図面の平面に平行であり、位相マスクに平行であるので、ビームの波ベクトルの縦方向成分は、異なる符号を有し、マスク間に見られる干渉パターンが生じる。干渉パターンの干渉縞間の距離は、2つの異なるビーム間の角度、したがってマスク(格子)の周期によって決定される。
【0030】
単一の入射ビーム及びビームを2つの方向に分割するための格子を使用する代わりに、干渉パターンは、各ビームの位相が、互いに対して十分に一定(同じ周波数及び十分な時間的かつ空間的コヒーレンス)である限り、異なる発生源からの2つのビームのうちの2つ又は任意の倍数を重ね合わせることにより生成することもできる。この場合、
図1、
図4、
図5に示される格子(例えば、位相マスク又は振幅マスク)は、干渉ビームを生成する他の(自由空間)光学系により置換される。
【0031】
ビームが化学線である場合、この干渉パターンに露光されるファイバは、局所的強度、照射時間、及びそれ自体がファイバの化学組成に依存するファイバ内部の局所的感光性に依存して、ファイバの屈折率分布の変調を受ける。我々の発明は、任意の感光性の分布を有する任意のファイバの幾何形状(例えば、シングル・コア・ファイバ、マルチコア・ファイバ、微細構造又は光結晶ファイバ、ラージモード面積ファイバ(large mode area fiber)、シングル・モード・ファイバ、マルチモード・ファイバ、高次モード・ファイバなど)、並びにコーティングが化学線放射に対し十分に透明である限り、ストリップ(コーティングが除去された)ファイバ及び非ストリップ(コーティングされた)ファイバの両方に適用することができる。特に、ブラッグ格子(屈折率変調)は、ファイバが1つのコア又はいくつかのコアであるかに制限される必要がない。代わりに、格子は、部分的又は排他的に、クラッド又はその部分に延在することもできる。というのは、我々の発明は、ファイバ自体の不均等性からの回折又は屈折効果によりもたらされる指数の変化の、通常は不要な横方向ばらつきを、一般的に低下させるからである。
【0032】
本発明の特定の実施形態を記載してきたが、本発明が上の記載又は添付される例示的な図面に制限されないと理解するべきである。むしろ、本発明の範囲は、添付の請求項によって規定され、当業者により了解されるような、請求項の任意の均等物を含む。