特許第5963814号(P5963814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963814
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】摩擦材
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20160721BHJP
   F16D 69/02 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C09K3/14 520C
   C09K3/14 520L
   C09K3/14 520F
   F16D69/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-157769(P2014-157769)
(22)【出願日】2014年8月1日
(65)【公開番号】特開2016-35005(P2016-35005A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2015年11月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309014573
【氏名又は名称】日清紡ブレーキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146927
【弁理士】
【氏名又は名称】船越 巧子
(74)【代理人】
【識別番号】100188640
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 圭次
(72)【発明者】
【氏名】山本 和秀
(72)【発明者】
【氏名】高田 利也
【審査官】 谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/115594(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/112440(WO,A1)
【文献】 特開2012−255052(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/024152(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101823856(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 69/02
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクブレーキパッドに使用される、銅成分を含まないNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、前記摩擦材組成物は、鉄、鉄合金、鉄化合物を原料として添加せず、チタン酸塩として、非ウィスカー状のチタン酸塩を摩擦材組成物全量に対し15〜25重量%と、無機摩擦調整材として、平均粒子径が1.0〜4.0μmの酸化ジルコニウムを摩擦材組成物全量に対し15〜25重量%と、無機摩擦調整材として劈開性鉱物粒子を摩擦材組成物全量に対し4〜6重量%含むことを特徴とする摩擦材。
【請求項2】
前記非ウィスカー状のチタン酸塩が不定形状のチタン酸カリウムであることを特徴とする請求項1に記載の摩擦材。
【請求項3】
前記摩擦材組成物は、炭素質系潤滑材として、薄片状黒鉛粒子を摩擦材組成物全量に対し2〜4重量%含むことを特徴する請求項1または請求項2に記載の摩擦材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキパッドに使用されるNAO(Non-Asbestos-Organic)材の摩擦材組成物を成型した摩擦材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車の制動装置としてディスクブレーキが使用されており、その摩擦部材として金属製のベース部材に摩擦材が貼り付けられたディスクブレーキパッドが使用されている。
【0003】
摩擦材は、繊維基材としてスチール繊維を摩擦材組成物全量に対して30重量%以上60重量%未満含有するセミメタリック摩擦材と、繊維基材の一部にスチール繊維を含み、且つ、スチール繊維を摩擦材組成物全量に対して30重量%未満含有するロースチール摩擦材と、繊維基材としてスチール繊維やステンレス繊維等のスチール系繊維を含まないNAO材に分類されている。
【0004】
ブレーキノイズの発生が少ない摩擦材が求められている近年においては、スチール系繊維を含まず、かつ、結合材、繊維基材、潤滑材、チタン酸金属塩、無機摩擦調整材、有機摩擦調整材、pH調整材、充填材等から成る、NAO材の摩擦材を使用したディスクブレーキパッドが広く使用されるようになってきている。
【0005】
ディスクブレーキパッドに使用されるNAO材の摩擦材には、高速高負荷制動時のブレーキの効きと耐摩耗性を確保するため、銅や銅合金の繊維又は粒子等の銅成分が必須成分として摩擦材組成物全量に対し、5〜20重量%程度添加されている。
【0006】
しかし近年、このような摩擦材は制動時に摩耗粉として銅を排出し、この排出された銅が河川、湖、海洋に流入することにより水域を汚染する可能性があることが示唆されている。
【0007】
このような背景から、アメリカのカリフォルニア州やワシントン州では、2021年以降、銅成分を5重量%以上含有する摩擦材を使用した摩擦部材の販売及び新車への組み付けを禁止し、2023年または2025年以降に、銅成分を0.5重量%以上含有する摩擦材を使用した摩擦部材の販売及び新車への組み付けを禁止する法案が可決している。
【0008】
そして、今後このような規制は世界中に波及するものと予想されることから、NAO材の摩擦材に含まれる銅成分を削減することが急務となっており、NAO材の摩擦材に含まれる銅成分を削減することにより低下する、高速高負荷制動時のブレーキの効きと耐摩耗性の改善が課題となっている。
【0009】
また、NAO材の摩擦材は「鳴き」と呼ばれる高周波振動のブレーキノイズは発生しにくいが、「低周波異音」と呼ばれる低周波振動のブレーキノイズが発生しやすいという問題がある。
【0010】
特許文献1には、繊維基材と、結合材と、充填材とを含む摩擦材組成物を成形、硬化してなる摩擦材において、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、四三酸化鉄、四三酸化マンガン、酸化錫、酸化チタンから選ばれる3種以上の金属酸化物を合計で12体積%以上含有する、低周波異音の発生を抑制し得、ローター、ディスクパッドの摩耗量を少なくすることができ、高速時に摩擦係数μが高く安定しているものでバランスのとれた摩擦材が記載されている。
【0011】
また、特許文献2には、少なくとも繊維基材、結合材及び摩擦調整材を含む摩擦材において、該摩擦調整材の一部として酸化鉄一次粒子と樹脂とを複合化してなる複合体粒子を含む、異音発生を緩和した摩擦材が記載されている。
【0012】
特許文献1や特許文献2に記載のように、酸化鉄は低周波異音の抑制効果があることが当業界における技術的常識となっている。
【0013】
しかし、低周波異音の抑制効果があるとされている酸化鉄を含有するNAO材の摩擦材から、環境負荷を低減するために銅や銅合金の繊維又は粒子等の銅成分を排除すると、逆に低周波異音、特に、軽負荷の制動を繰り返し、摩擦材と相手材の摺動面に水が浸入した後の車両が停止する間際の異音の発生が顕著となることが明らかとなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−008865号公報
【特許文献2】特開2009−298847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、ディスクブレーキパッドに使用される、NAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら、停止際異音の発生を抑制した摩擦材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この停止際異音は次のようなメカニズムで発生するものと推定される。
(a)銅成分が摩擦材に添加されていると、相手材表面に形成される銅の移着被膜と摩擦材表面との銅成分の凝着摩耗が支配的となるため相手材の摩耗粉は発生しにくいが、銅成分を排除すると、摩擦材に含まれる研削系の無機摩擦調整材によるアブレシブ摩耗が支配的となり、相手材の摩耗粉が発生しやすくなる。そして、相手材の摩耗粉により摩擦材の表面も研削されるため、摩擦材の摩耗粉の発生が促進される。
【0017】
(b)軽負荷の制動を繰り返すことにより、摩擦材と相手材の摺動面から排出されない摩耗粉がせん断力を受けて微細化する。
【0018】
(c)このような状態で摩擦材と相手材の摺動面に水分が入り込み、さらに軽負荷制動が繰り返されると、微細化した摩耗粉が水で練られ、摩耗粉凝集体が生成される。
【0019】
(d)この摩耗粉凝集体中に存在する相手材の摩耗粉や、摩擦材の摩耗粉に含まれる酸化鉄を起点として錆が発生し、摩耗粉凝集体の凝集力が強固となる。
【0020】
(e)そのような摩耗粉凝集体が摩擦材と相手材の摺動面に存在している状態で制動すると、せん断力により摩耗粉凝集体が崩れ、摩擦材と相手材の滑りが起こり、その振動により低周波異音が発生する。
【0021】
本発明者らは上記メカニズムに基づき、鋭意検討を行ったところ、摩擦組成物に錆の発生の原因となる原料を添加せず、相手材の摩耗を抑制するために特定のチタン酸塩及び特定の無機摩擦調整材を特定量添加し、かつ、摩耗粉凝集体の生成を抑制するために特定の無機摩擦調整材を特定量添加し、軽負荷制動において摩擦材と相手材の摺動面から摩耗粉が排出されやすくするために特定の炭素質系潤滑材を特定量添加することで停止際異音を抑制できることを知見し、発明を完成させた。
【0022】
本発明は、ディスクブレーキパッドに使用される、銅成分を含まないNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材であって、以下の技術を基礎とするものである。
【0023】
(1)ディスクブレーキパッドに使用される、銅成分を含まないNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、前記摩擦材組成物は、鉄、鉄合金、鉄化合物を原料として添加せず、チタン酸塩として、非ウィスカー状のチタン酸塩を摩擦材組成物全量に対し15〜25重量%と、無機摩擦調整材として、平均粒子径が1.0〜4.0μmの酸化ジルコニウムを摩擦材組成物全量に対し15〜25重量%と、無機摩擦調整材として劈開性鉱物粒子を摩擦材組成物全量に対し4〜6重量%含むことを特徴とする摩擦材。
【0024】
(2)前記非ウィスカー状のチタン酸塩が不定形状のチタン酸カリウムである(1)の摩擦材。
【0025】
(3)前記摩擦材組成物は、炭素質系潤滑材として薄片状黒鉛粒子を摩擦材組成物全量に対し2〜4重量%含む(1)または(2)の摩擦材。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ディスクブレーキパッドに使用される、NAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら、軽負荷の制動を繰り返し、摩擦材と相手材の摺動面に水が浸入した後の車両が停止する間際の異音の発生を抑制できる摩擦材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明では、相手材の摩耗を抑制するため、摩擦材組成物に、チタン酸塩として、非ウィスカー状のチタン酸塩を摩擦材組成物全量に対し15〜25重量%と、無機摩擦調整材として、平均粒子径が1.0〜4.0μmの酸化ジルコニウムを摩擦材組成物全量に対し15〜25重量%添加する。
【0028】
本発明において非ウィスカー状のチタン酸塩とはアスペクト比3以上の針状形状(ウィスカー状)ではないチタン酸塩を意味するものであり、具体的には多角形、円、楕円等の形状を呈する板状チタン酸塩や、国際公開第2008/123046号に記載されるようなアメーバ状の形状またはジグソーパズルのピースの形状を呈する不定形状のチタン酸塩を意味する。
【0029】
非ウィスカー状のチタン酸塩と、粒子径が小さな酸化ジルコニウムを摩擦材組成物に比較的多量に添加することにより、相手材の摺動面にチタン酸塩と酸化ジルコニウムとから成る被膜が形成される。
【0030】
この被膜により摩擦材に含まれる研削系の無機摩擦調整材が直接相手材の摺動面を研削することがなくなるため、相手材の摩耗粉の発生を抑制することができる。
【0031】
非ウィスカー状のチタン酸塩と酸化ジルコニウムの含有量が少なすぎると、十分な相手材の摩耗抑制効果が得られなくなるという問題が生じ、非ウィスカー状のチタン酸塩と酸化ジルコニウムの含有量が多すぎると、効きが不安定になるという問題が生じる。
【0032】
また、酸化ジルコニウムの平均粒子径が小さすぎると、成型性が悪くなり摩擦材にクラックが発生しやすくなるという問題が生じ、酸化ジルコニウムの平均粒子径が大きすぎると、効きが不安定になるという問題が生じる。
【0033】
本発明において平均粒子径は、レーザー回折粒度分布法により測定した50%粒径の数値を用いた。
【0034】
そして本発明では、摩耗粉凝集体の生成を抑制するため劈開性鉱物粒子を摩擦材組成物全量に対し4〜6重量%添加する。
【0035】
摩擦材から排出される劈開性鉱物粒子の摩耗粉は板状を呈する粒子であり、この板状粒子が摩耗粉の凝集体に取り込まれると、板状粒子の近傍で摩耗粉間に滑りが生じ、摩耗粉凝集体が崩壊しやすくなるためであると推定される。
【0036】
劈開性鉱物粒子の含有量が少ないと、摩耗粉凝集体の生成の抑制効果が十分に得らなくなるという問題が生じ、劈開性鉱物粒子の含有量が多いと、相手材の摩擦面が鏡面化され、吸湿時に摩擦係数が急激に上昇して鳴きが発生しやすくなるという問題が生じる。
【0037】
劈開性鉱物粒子としてはマイカ、バーミキュライトがあげられ、これらは1種を単独で又は2種を組み合わせて使用することができる。
【0038】
劈開性鉱物粒子の平均粒子径は50〜700μmの範囲のものを使用するのが好ましく、300〜600μmの範囲のものを使用するのがより好ましい。
【0039】
そして本発明の摩擦材組成物は鉄成分を実質的に含まないので、摩耗粉凝集体の凝集力を高める要因となる錆の発生を抑制できる。ここで鉄成分を実質的に含有しないとは、鉄、鉄合金、鉄化合物等の鉄を主成分とする原料を摩擦材組成物に添加しないことを意味するものである。
【0040】
非ウィスカー状のチタン酸塩としては、チタン酸カリウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸マグネシウムカリウム等が挙げられ、これらを単独もしくは2種以上を組み合わせて使用することができるが、不定形状のチタン酸カリウムを単独で使用するのが好ましい。
【0041】
不定形状のチタン酸カリウムを使用すると、チタン酸カリウムが複雑に重なり合った状態で、酸化ジルコニウムとの複合被膜が相手材の摩擦面に形成される。この被膜は、板状のチタン酸塩を使用した場合に形成される被膜よりも強度が高く、より良好な相手材の摩耗抑制効果を得ることができる。
【0042】
さらに本発明では、軽負荷制動において摩擦材と相手材の摺動面から摩耗粉が排出されやすくするために摩擦材組成物に、炭素質系潤滑材として、薄片状黒鉛粒子を摩擦材組成物全量に対し2〜4重量%添加する。
【0043】
薄片状黒鉛粒子は、天然鱗片状黒鉛、キッシュ黒鉛、熱分解黒鉛等の粒子を数十〜数百倍に発熱膨張させた膨張黒鉛粒子を微粉砕して得られる黒鉛粒子である。
【0044】
摩耗粉自体が潤滑性を持たないと、摩耗粉は摩擦材と相手材の摺動面から排出されないまま摩擦材や摺動面の微細な凹凸に溜まってゆき、異音の原因となる摩耗粉凝集体を生成しやすくなるが、薄片状黒鉛粒子を適量摩擦材組成物に添加することにより、発生した摩耗粉中にも薄片状黒鉛粒子が取り込まれ、摩耗粉自体に潤滑性が付与されるため、摩耗粉は前記凹凸に溜まることなく排出されやすくなる。
【0045】
本発明の摩擦材は、上記の非ウィスカー状のチタン酸塩、平均粒子径が1.0〜4.0μmの酸化ジルコニウム、劈開性鉱物粒子、薄片状黒鉛粒子の他に、通常摩擦材に使用される結合材、繊維基材、潤滑材、無機摩擦調整材、有機摩擦調整材、pH調整材、充填材等を含む摩擦材組成物から成る。
【0046】
結合材としては、ストレートフェノール樹脂や、フェノール樹脂をカシューオイルやシリコーンオイル、アクリルゴム等の各種エラストマーで変性した樹脂、フェノール類とアラルキルエーテル類とアルデヒド類とを反応させて得られるアラルキル変性フェノール樹脂、フェノール樹脂に各種エラストマー、フッ素ポリマー等を分散させた熱硬化性樹脂等の摩擦材に通常用いられる結合材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。結合材の含有量は摩擦材組成物全量に対して5〜8重量%とするのが好ましく、6〜7重量%とするのがより好ましい。
【0047】
繊維基材としては、アラミド繊維、セルロース繊維、ポリ-パラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、アクリル繊維等の摩擦材に通常使用される有機繊維が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。繊維基材の含有量は摩擦材組成物全量に対して1〜4重量%とするのが好ましく、2〜3重量%とするのがより好ましい。
【0048】
潤滑材としては、上記の薄片状黒鉛粒子の他に、石油コークス、人造黒鉛粒子、天然黒鉛粒子等の炭素質系潤滑材や、二硫化モリブデン、硫化亜鉛、硫化スズ、複合金属硫化物等の金属硫化物系潤滑材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。潤滑材は上記の薄片状黒鉛粒子と合わせて摩擦材組成物全量に対して4〜8重量%とするのが好ましく、5〜7重量%とするのがより好ましい。
【0049】
無機摩擦調整材としては、上記の平均粒子径が1.0〜4.0μmの酸化ジルコニウム、平均粒子径が300〜600μmの劈開性鉱物粒子の他に、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、γアルミナ、ケイ酸ジルコニウム等の粒子状無機摩擦調整材や、ウォラストナイト、セピオライト、バサルト繊維、ガラス繊維、生体溶解性人造鉱物繊維、ロックウール等の繊維状無機摩擦調整材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
無機摩擦調整材の含有量は、上記の平均粒子径が1.0〜4.0μmの酸化ジルコニウム、平均粒子径が300〜600μmの劈開性鉱物粒子と合わせて、摩擦材組成物全量に対して25〜40重量%とするのが好ましく、30〜35重量%とするのがより好ましい。
【0051】
有機摩擦調整材としては、カシューダスト、タイヤトレッドゴムの粉砕粉や、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム等の加硫ゴム粉末又は未加硫ゴム粉末等の摩擦材に通常使用される有機摩擦調整材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
有機摩擦調整材の含有量は摩擦材組成物全量に対して4〜8重量%とするのが好ましく、5〜7重量%とするのがより好ましい。
【0053】
pH調整材として水酸化カルシウム等の通常摩擦材に使用されるpH調整材を使用することができる。
pH調整材は、摩擦材組成物全量に対して1〜5重量%とするのが好ましく、2〜4重量%とするのがより好ましい。
【0054】
摩擦材組成物の残部としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の充填材を使用する。
【0055】
本発明のディスクブレーキに使用される摩擦材は、所定量配合した摩擦材組成物を、混合機を用いて均一に混合する混合工程、得られた摩擦材原料混合物と、別途、予め洗浄、表面処理し、接着材を塗布したバックプレートとを重ねて熱成形型に投入し、加熱加圧して成型する加熱加圧成型工程、得られた成型品を加熱して結合材の硬化反応を完了させる熱処理工程、塗料を塗装する塗装工程、塗料を焼き付ける塗装焼き付け工程、摩擦面を形成する研磨工程を経て製造される。
【0056】
必要に応じて、加熱加圧成型工程の前に、摩擦材原料混合物を造粒する造粒工程、摩擦材原料混合物を混練する混練工程、摩擦材原料混合物又は造粒工程で得られた造粒物、混練工程で得られた混練物を予備成型型に投入し、予備成型物を成型する予備成型工程が実施され、加熱加圧成型工程の後にスコーチ工程が実施される。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0058】
[実施例1〜20・比較例1〜8の摩擦材の製造方法]
表1、表2に示す組成の摩擦材組成物をレディゲミキサーにて5分間混合し、成型金型内で30MPaにて10秒間加圧して予備成型をした。この予備成型物を、予め洗浄、表面処理、接着材を塗布した鋼鉄製のバックプレート上に重ね、熱成型型内で成型温度150℃、成型圧力40MPaの条件下で10分間成型した後、200℃で5時間熱処理(後硬化)を行い、研磨して摩擦面を形成し、乗用車用ディスクブレーキパッドを作製した(実施例1〜20、比較例1〜8)。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
得られた摩擦材において、異音、効きの安定性、鳴き、製品外観を評価した。評価結果を表3、表4に、評価基準を表5、表6に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、ディスクブレーキパッドに使用される、NAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら、停止際異音の発生を抑制した摩擦材を提供することができ、きわめて実用的価値の高いものである。