(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963855
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】火花の伝搬を防ぐ装置
(51)【国際特許分類】
F16L 21/02 20060101AFI20160721BHJP
B64D 37/32 20060101ALI20160721BHJP
F16L 25/02 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
F16L21/02 F
B64D37/32
F16L25/02
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-516978(P2014-516978)
(86)(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公表番号】特表2014-525009(P2014-525009A)
(43)【公表日】2014年9月25日
(86)【国際出願番号】US2012039182
(87)【国際公開番号】WO2012177352
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年5月13日
(31)【優先権主張番号】13/167,809
(32)【優先日】2011年6月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ローラボー, マイケル イー.
(72)【発明者】
【氏名】アーウィン, ジェイムズ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, ベンジャミン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ダウエル, エリク ダブリュ.
【審査官】
吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−168798(JP,A)
【文献】
特開平05−180177(JP,A)
【文献】
特開平07−332551(JP,A)
【文献】
特開2010−144824(JP,A)
【文献】
特表平02−500123(JP,A)
【文献】
実開昭62−048122(JP,U)
【文献】
特開平05−247351(JP,A)
【文献】
特表2005−523406(JP,A)
【文献】
米国特許第06402205(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/00 − 21/08
F16L 23/00 − 25/02
F16L 29/00 − 35/00
F16L 37/00 − 39/06
B64B 1/00 − 1/70
B64C 1/00 − 99/00
B64D 1/00 − 47/08
B64F 1/00 − 5/00
B64G 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合具(112)と管(114、116)との間の火花発生が周囲の媒体へ伝搬するのを防止する装置であって、
管(114、116)と、
前記管(114、116)に取り付けられ、前記管(114、116)を受ける第1開端部を備える結合具(112)と、
前記開端部に隣接する前記結合具(112)に位置付けされ、前記結合具(112)と前記管(114、116)との間の機械的障壁を形成するチップシール(122)と
を備え、前記チップシールが前記結合具内の作動油が通って漏れることができる一又は複数の開口部を画定する、装置。
【請求項2】
前記チップシール(122)は、前記結合具(112)の外面周囲につけられ、前記管(114、116)に接着される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記チップシール(122)は、前記結合具(112)の内面周囲につけられる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記チップシール(122)は、一又は複数の不完全な円形でつけられる、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記チップシール(122)はらせん構造でつけられる、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
火花発生が周囲の媒体に伝搬するのを防止する方法であって、
管(114、116)を受ける開口部を有する第1端部を備える結合具(112)と管(114、116)を備える油圧継手部(110)を提供することと、
前記油圧継手部(110)と前記周囲の媒体との間にチップシール(122)であって、前記結合具(112)と前記管(114、116)との間の機械的障壁を形成するチップシールを、前記油圧継手部(110)と前記周囲の媒体との間につけることと
を含み、前記チップシールが前記結合具内の作動油が通って漏れることができる一又は複数の開口部を画定する、方法。
【請求項7】
前記チップシール(122)は、前記結合具(112)の前記第1端部に隣接してつけられる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記油圧継手部(110)周囲につけられる熱収縮ラップであって、前記結合具(112)と前記管(114、116)の一部を覆う熱収縮ラップを備える障壁を提供することをさらに含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記熱収縮ラップは誘電材料を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記熱収縮ラップは、静電荷を消散させるのに十分な導電性を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記障壁がさらに巻きテープを含む、請求項6から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記油圧継手部(110)周囲に前記テープを巻きつけるステップと、熱収縮ラップを前記油圧継手部(110)周囲に位置付けするステップと、前記熱収縮ラップを加熱して前記テープに接着させるステップとをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
チップシール(122)を、前記管(114、116)を受ける開口部を有する第1端部を有する前記結合具(112)につけるステップと、
前記結合具(112)を前記管(114、116)に結合させて油圧継手部(110)を形成するステップと、
熱収縮ラップを前記油圧継手部(110)周囲につけるステップと、
前記熱収縮ラップを加熱して、前記油圧継手部(110)周囲に前記熱収縮ラップを形成するステップと
をさらに含む、請求項6から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
テープは、前記油圧継手部(110)に直接つけられ、前記熱収縮ラップは前記テープの一部に直接つけられる、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧結合安全装置、特に飛行機又は他の航空機で使用する油圧結合安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在の民間飛行機では、燃料が伝統的に翼に貯蔵されている。任意の数の油圧ラインは燃料貯蔵エリアを通って、翼のフラップ等の油圧動力要素へ動力と制御を供給する。これらの油圧ラインでは、種々の長さの油圧管類を相互に、他の結合具に、また隔壁板に接続させて、作動油を導通させるために任意の数の結合具が必要である。航空機が稼働中に、油圧ラインと結合具との間で電気火花が生じて、燃料タンクへ伝搬することにより、潜在的な発火源が発生する可能性がある。このリスクは、任意の数の方法で抑制又は防止され、本発明では、結合具から燃料タンクへの火花の伝搬を阻止する改善された代替方法及び装置を説明する。
【0003】
連邦航空局(FAA)は、航空機の燃料タンクにおけるこの潜在的な発火源についての懸念を表明している。連邦航空規則(FAR) 25.981(a)(3) (14 CFR 25.981(a)(3)) では、すべての潜在的な発火源を、複数の火花発生予防対策によって十分に抑制することが要求されている。特殊言語は、「発火源が、各単一故障から、各単一故障とあまりかけ離れていないとみられる各単一潜在故障との結合から、及び、あまり起こりそうにないとみられるすべての故障との結合からは生じない」ことを要求する。この規則は概して、発火源が航空機の燃料タンクに生じないようにするために、システムが3重の冗長性を有する、又は個別に独立して故障する3つの安全装置を有することを要求する。火花発生予防対策が非常に信頼性が高いとみなされる場合の常設には、2重の冗長性で十分である。
【0004】
この要件を満たす現在の方法では、油圧ラインと結合具との間の火花の可能性を低減することに着目する。火花の一の潜在源は、油圧ラインに沿って流れる電流である。油圧ラインから電流が結合具へ飛び移って、火花が発生する。使用される一の方法は、電流が燃料タンクを通らないように、電流を油圧ラインから離れるように消散させる、又は方向付けすることである。例えば、インライン静電気消散器を使用して、電流の流れを防止する。このリスクを軽減するこのような方法は、多数のパーツを要し、コスト、複雑性が上がり、設置時間が長引く。
【0005】
ある既存の結合具の設計では、管と結合具の表面を摩耗から保護するために結合具内部にポリマーライナーが含まれる。電気の消散を利用しないと、落雷が原因で結合具に大量の電流が流れ、結合具のチップ近辺で誘電破壊が起こった場合、このライナーにより火花の問題が悪化する可能性がある。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製の翼の油圧管は、金属製の翼の飛行機の同じような結合具よりも電流レベルが潜在的に高い。したがって、安全性の確保及び連邦規則の順守のために、追加の安全機構が必要である。
【0006】
電流が油圧ラインを通るのを防ぎ、これによって電流が原因の火花発生を防ぐために、電流を妨害するインライン電気アイソレータが使用される。このようなインライン静電気消散器は一般に、油圧ラインに差し込まれる非導電管である。このような非導電管は電流に抵抗し、これにより電流が油圧ライン以外の構造体を通って流れることになる。このシステムにより重量が増し、電流を伝導する手段として油圧ラインを使用することができなくなるため、このシステムは好ましいとは言えない。
【0007】
別の火花発生源は、圧力下の結合具から押し出された高温材料である。この高温材料は、内部火花発生から結合具、溶融金属を保護するために使用される潤滑剤、又は圧力又は電流に対する抵抗が原因で加熱され、油圧結合具から押し出される他のすべての材料である。
【0008】
燃料タンク及び他の航空機の構造体に軽量複合材料、又はそうでなければ非導電(又は低導電性)材料を使用することが益々所望されるにしたがって、油圧ラインから燃料タンクへ電流を移動させて火花発生のリスクを取り除くことは望ましくない、又は可能でなくなる。加えて、複合又は非導電性の燃料タンクにより、航空機が空中を移動する時に降水空電が蓄積する。燃料タンクへの火花発生又は損傷を防ぐために、この降水空電を燃料タンクから消散させなければならない。燃料タンクから電流を移動させる、又は降水空電を消散させるために、導電油圧ラインが用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、当技術分野において、油圧ラインの導電特性を維持しつつも、油圧継手部から周囲の媒体への火花の伝搬を防止することによって、油圧継手部の安全性を高める方法及び装置の必要が認められる。
【0010】
さらに、当技術分野において、油圧ラインから周囲の媒体への火花の伝搬を防止しながら、複合燃料タンクの表面から降水空電を消散させるのに有用な、安全な材料の必要が認められる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、結合具と管との間に生じる火花が周囲の媒体へ伝搬するのを防止するのに有用な装置を記載する。この装置は、管と、管に取り付けられた油圧結合具と、管と結合具との間に機械的な障壁を形成する油圧結合具上のチップシールを備える。この機械的な障壁は、周囲の媒体に火花が伝搬するのを防ぐ物体となる。
【0012】
本願はまた、結合具と管との間のある位置に生じる火花が周囲の媒体に伝搬するのを防止する方法を記載する。この方法は、結合具と管とを含む油圧継手部を提供するステップと、油圧継手部と周囲の媒体との間に障壁を築くステップを含む。この障壁は、火花が油圧継手部から周囲の媒体へ伝搬することを防止する物体となる。
【0013】
記載された障壁は、結合具、又は油圧継手部を覆う又は他のやり方で油圧継手部に適用されるスリーブの内面又は外面周囲のチップシールである。この障壁により、望ましくない火花の伝搬に対して機械的な障壁の役割を果たす。
【0014】
本願に最後に記載されるのは、油圧結合具と管との間の火花発生が周囲の媒体へ伝搬するのを防止する新規の方法である。この方法は、油圧結合具にチップシールを適用し、結合具を管と結合させて継手部を形成し、油圧継手部周囲に熱収縮ラップを適用し、熱収縮ラップを加熱して、ラップを油圧継手部に接着するステップを含む。結果として得られた装置は、火花の伝搬に対する機械的な障壁を形成する。
【0015】
上述の方法はさらに、熱収縮ラップを適用する前に、油圧継手部周囲にテープを適用するステップを含む。このテープは追加の保護層となり、熱収縮ラップは、テープが周囲の媒体に露出することで巻き戻らないように保護する。
また、本発明は以下に記載する態様を含む。
(態様1)
結合具(112)と管(114、116)との間の火花発生が周囲の媒体へ伝搬するのを防止する装置であって、
管(114、116)と、
前記管(114、116)に取り付けられ、前記管(114、116)を受ける第1開端部を備える油圧結合具(112)と、
前記開端部に隣接する前記油圧結合具(112)に位置付けされ、前記結合具(112)と前記管(114、116)との間の機械的障壁を形成するチップシール(122)と
を備える装置。
(態様2)
前記チップシール(122)は、前記油圧結合具(112)の外面周囲に適用され、前記管(114、116)に接着される、態様1に記載の装置。
(態様3)
前記チップシール(122)は、前記油圧結合具(112)の内面周囲に適用される、態様1又は2に記載の装置。
(態様4)
前記チップシール(122)は、一又は複数の不完全な円形で適用される、態様1乃至3のいずれか1項に記載の装置。
(態様5)
前記チップシール(122)はらせん構造で適用される、態様3に記載の装置。
(態様6)
前記チップシール(122)は、一又は複数の完全な円形で適用される、態様3に記載の装置。
(態様7)
火花発生が周囲の媒体に伝搬するのを防止する方法であって、
前記管(114、116)を受ける開口部を有する第1端部を備える結合具(112)と管(114、116)を備える油圧継手部(110)を提供することと、
前記結合具(112)と前記管(114、116)との間の火花発生が前記周囲の媒体へ伝搬することを防止する障壁を、前記油圧継手部(110)と前記周囲の媒体との間に適用することと
を含む方法。
(態様8)
前記障壁は、前記結合具(112)の前記第1端部に隣接して適用されるチップシール(122)である、態様7に記載の方法。
(態様9)
前記障壁は、前記油圧継手部(110)周囲に適用され、前記結合具(112)と前記管(114、116)の一部を覆う熱収縮ラップを含む、態様7に記載の方法。
(態様10)
前記熱収縮ラップは誘電材料を含む、態様9に記載の方法。
(態様11)
前記熱収縮ラップは、静電荷を消散させるのに十分な導電性を有する、態様9に記載の方法。
(態様12)
前記障壁がさらに巻きテープを含む、態様9乃至11のいずれか1項に記載の方法。
(態様13)
前記油圧継手部(110)周囲に前記テープを巻きつけるステップと、前記熱収縮ラップを前記油圧継手部(110)周囲に位置付けするステップと、前記熱収縮ラップを加熱して前記テープに接着させるステップとをさらに含む、態様12に記載の方法。
(態様14)
態様1乃至6のいずれか1項に記載の装置と、態様7乃至13のいずれか1項に記載の方法にしたがって、航空機の燃料タンク内部の発火源のリスクを低減する装置。
(態様15)
態様1乃至6のいずれか1項に記載の装置と、態様7乃至13のいずれか1項に記載の方法にしたがって、結合具内部から燃料タンクへの火花の伝搬を不可にする機械的シールを提供する方法。
(態様16)
油圧結合具(112)と管(114、116)との間の火花発生が周囲の媒体に伝搬するのを防止する方法であって、
チップシール(122)を、前記管(114、116)を受ける開口部を有する第1端部を有する前記油圧結合具(112)に適用するステップと、
前記油圧結合具(112)を前記管(114、116)に結合させて油圧継手部(110)を形成するステップであって、
前記油圧管(114、116)は、前記油圧管(114、116)を受ける開口部を有する第1端部を有するステップと、
熱収縮ラップを前記油圧継手部(110)周囲に適用するステップと、
前記熱収縮ラップを加熱して、前記油圧継手部(110)周囲に前記熱収縮ラップを形成するステップと
を含む方法。
(態様17)
前記熱収縮ラップは、静電荷を消散させるのに十分な導電性を有する、態様16に記載の方法。
(態様18)
前記チップシール(122)は、前記油圧結合具(112)の内面に適用される、態様16又は17に記載の方法。
(態様19)
前記チップシール(122)は、前記油圧結合具(112)の前記内面の周囲に一又は複数の不完全な円形で適用される、態様18に記載の方法。
(態様20)
前記チップシール(122)は、前記油圧結合具(112)の前記内面の周囲にらせん状に適用される、態様18に記載の方法。
(態様21)
前記油圧継手部(110)の周囲にテープを巻きつけるステップをさらに含む、態様16乃至20のいずれか1項に記載の方法。
(態様22)
前記テープは、前記油圧継手部(110)に直接適用され、前記熱収縮ラップは前記テープの一部に直接適用される、態様21に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、民間航空機100はおおむね、油圧ライン106とフラップ108を含む、胴体102、翼104で構成される。フラップ108は翼104に位置づけされており、飛行中の航空機の制御を可能にする。
図2に示すように、油圧ライン106は航空機の翼104を通っており、一又は複数の油圧継手部110を含む。このような油圧ライン106は、航空機のフラップ108、又は他の制御構造体を制御する。
【0018】
図3は、改善された装置の一実施形態の切取図を示す。この図で示すように、油圧継手部110はおおむね油圧結合具112で構成されており、油圧結合具112は一般に油圧管114、116周辺に位置づけされる。この図では、油圧結合具112は、油圧ライン106の第1セクション114を第2セクション116に結合させるカプラである。油圧ライン106の第1セクション114及び第2セクション116は、加締めることによって、又は当業者に広く知られている他の任意の手段で固定される。この図でさらに示すように、油圧結合具112は、結合具112から作動油が漏れるのを防ぐ内部シール又は結合具(図示せず)を含む。
【0019】
航空機の燃料タンク内の発火源のリスクを低減する装置の一種を
図3にさらに示す。油圧管114、116と結合具112をおおまかに囲んでいるのはスリーブ118であって、このスリーブ118は、熱収縮によって油圧管114、116及び結合具112に固定されるラップテープ又は円筒形のシースである。このスリーブ118は、結合具112内部から燃料タンクに火花が伝搬するのを防ぐ機械的障壁となる。
【0020】
このスリーブ118は、結合具112及び管114、116の周囲に巻きついたテープで形成されている、又は組立中にライン上に形成された熱収縮材料で構成される。ラップテープは、管114、116への結合具112の組立中に設置し、熱収縮スリーブは、管114、116への結合具112の組立前に、結合具112の周囲に取り付ける又は配置することが好ましい。あるいは、スリーブ118は、ラップテープだけでなく、テープの巻き戻りを防止するラップテープ周囲の熱収縮材料の両方で構成される。この構成により、タンク内に貯蔵された燃料に露出したためにテープの層の接着性が失われることが防止される。テープの層の接着性が失われた結果、保護機構の安全性が危ぶまれる。
【0021】
スリーブ118の物理的特性は、スリーブ118の好ましい機能にしたがって変化する。スリーブ118のサイズは、予想される火花発生の強度によって調節されるため、被覆領域の厚さ及び範囲は変動する。一般に、スリーブ118の厚さは、0.005〜0.020インチであり、結合具の端部を超えて0.25〜1.5インチ延在する。この構成は、火花の伝搬に対して十分な抗力を発揮し、燃料の燃焼リスクが除去される。
【0022】
スリーブ118の材料は一般に、燃料及び作動油への露出による腐食に対して耐性を持つように選択され、中程度の導電率から非導電性までの範囲を有する。低度〜中程度の導電率により、静電荷がスリーブの表面から流出する。あるいは、スリーブ118の好ましい特徴にしたがって、導電率が非常に低いものから非導電性の誘電スリーブ118が選択される。
【0023】
スリーブ118の材料の一例は、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)である。この材料は誘電材料として機能するが、静電荷は油圧ラインまで流出することはできない。あるいは、スリーブ118は、導電性で燃料耐性のある炭素含浸プラスチック(又は他の導電材料)から構成される。この導電スリーブ118は、スリーブから蓄積された静電気を流出させるのに用いられる。
【0024】
スリーブ118の熱収縮材料のさらなる例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。この材料は高い溶融点、高い強靭性を持ち、化学的に不活性である。その他の例は、PTFEの特性と同様の必須特性を呈するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリエーテルケトンケトン(PEKK)である。これらの材料は、そうでなければ継手部から放出されてしまうすべての火花を捕獲する。収縮ラップ材料から逃げたすべての火花の発火能力は大幅に低下する。同様の化学耐性及び使用温度範囲を有する他の材料を装置に使用することができる。
【0025】
熱収縮スリーブ管類を設置する他の方法は、本発明によって考慮されている。例えば、複数のスリーブ管類を、金属管が結合具と接触する継手部の特定領域に適用することができる。これらの個々のスリーブは結合具及び金属管の一部を別々に覆うため、必要とされる熱収縮材料の量が削減される。複数の個別の熱収縮スリーブ管類は、2つを超えるパイプの結合を含む、例えば3つ又は4つのパイプが結合して単一の結合具となるT字形結合具又は十字形結合具等の結合具にも使用される。金属管と結合具が結合している継手部の特定境域からのみしか火花が放出されないため、個別の小さめの熱収縮スリーブ管類を使用して、使用すべき熱収縮スリーブ管類の材料の量を削減しつつ、火花を効果的に軽減する。
【0026】
油圧結合具112及び管114、116を機械的にシールする代替構成を概して、
図4A〜Bに示す。これらの切取図では、火花が燃料と相互作用しないように機械的に分離させるために結合具112にチップシール122又はシーリング材料124が位置付けされている。
【0027】
図4Aは、結合具112の縁部を覆うチップシール122の使用を示す。この構成では、誘電又は非導電材料が、結合具112が管114、116と結合する結合具112の外側周辺に位置付けされる。このチップシール122は、結合具112の露出した縁部を覆い、管114、116に接着する。この構成により、結合具112内部から燃料タンクへ火花が伝搬することが機械的にシールされる。
【0028】
この場合、チップシール122を結合具112の管114、116への組立て後に適用し、これにより結合具112と管114、116との間の密着したシールの形成を可能にする必要がある。
【0029】
あるいは、
図4B〜Dに示すように、結合具112の縁部周辺のチップシール122の代わりに、又はこれに加えて、結合具112の内部にシーリング材料124が位置付けされる。シーリング材料124は、一又は複数の不完全なリング状(
図4B)、らせん状(
図4C)、又は完全な円形(
図4D)の状態で適用される。不完全なリング又はらせん状は、作動油がシールの開口部を通って漏れた時に、油圧シールの漏れが確実に検出できるように使用される。これにより、作動油の漏れによって圧力がチップシールの後部に蓄積して、チップシールが外れることがさらに防止される。
図4Dに示す完全な円形の使用は、結合具112内部から火花が燃料タンクへ伝搬しないように保護するのに十分である。
【0030】
チップシール122又はシーリング材料124は、伝統的なシール又は油圧シーリングリング(例えばOリング)とは異なり、加圧流体が結合具112から逃散するのを防ぐものではなく、単に火花が生じやすい位置と燃料タンクとの間の機械的な障壁となるものである。
【0031】
内側のチップシールはさらに、既存の耐フレッチングコーティングに付加する又はその代わりとなる特徴を含む。このようなコーティングにより、振動等によって生じるわずかな相対運動によって起こる結合具と金属管との間の接触ポイントでの摩耗が低減する。チップシールはまた、誘電破壊を防止するために十分な厚みを持ち、設置中の損傷に耐えるくらい強度があることも好ましい。チップシールは、燃料と作動油、また航空宇宙用途での極端な温度に対する適合性によって選択される材料からできている。例えばFEP,PTFE,PEEK、及びシリコーンエラストマー等の材料は、内部チップシールに好適な材料の例である。
【0032】
装置の別の態様を
図5に示す。この装置は、火花の伝搬を抑制する複数のEME保護機構を備える。この図では、油圧継手部110は、管114及び116周囲の結合具112を含む。チップシール122は、結合具112と管114、116との間に適用され、火花の伝搬に対する障壁となる。スリーブ118は、上述したように結合具112と管114、116の一部の周囲に適用され、火花の伝搬に対する第2の追加の障壁となる。このような複数のEME保護機構は個々の故障モードを含むため、単一故障によって火花ゾーンから燃料タンクへの火花の伝搬は起こりえない。言うまでもなく、
図4B〜Dに示し、上述したシーリング材料124をチップシール122に加えて、または代えて使用することができる。好適な収縮ラップスリーブ材料は、FEP、PTFE、PEEK、又は適切な化学特性及び熱的特性を有し収縮ラップ管を形成することができる他の材料を含む。
【0033】
火花の伝搬を防止する第1の方法は、結合具112と管114、116との間の金属同士の接触面を介したものである。第2は、外部チップシール122又は内部シーリング材料124を用いたものである。チップシール122又はシーリング材料124は、すべての火花発生と燃料タンクとの間の物理的な障壁となる。火花の伝搬を防止する第3の方法は、油圧継手部110と周囲媒体との間に機械的障壁を形成するスリーブ118又はラップを使用するものである。このような火花の伝搬を防止する各方法では、個別の故障条件が要求されるため、これらの方法を組み合わせることでFAR 25.981の要件が満たされる。
【0034】
したがって、提案の改良システムは、特有の故障モードを伴う追加の保護機構を提供することによって上述した目的を少なくとも達成する。
【0035】
本明細書に提示する実施例は、半径方向に加締めた、又は低温の単一結合具である。当業者には明らかであるが、単一又は複数でのチップシールによるシーリング及びラップ又は管状スリーブ管類による覆いの原理は、複数の軸方向に加締めた結合具又は他の油圧結合具に適用される。
【0036】
図1〜5及び上の説明によると、結合具112と管114、116との間の火花発生が、管114、116と、管114、116に取り付けられた油圧結合具112とを含み、油圧結合部112は管114、116を受ける第1の開端部を有し、当該開端部に隣接して油圧結合具112に配置されるチップシール122を含み、チップシール122は結合具112と管114、116との間に機械的障壁を形成する、周囲の媒体へ伝搬することを防止する装置が開示されている。一変形例では、チップシール122は油圧結合具112の外面周囲に適用され、チップシール122は管114、116に接着される。一例において、チップシール122は、油圧結合具112の内面周囲に適用される。一代替例では、チップシール122は、一又は複数の不完全な円形で適用される。一変形例では、チップシール122はらせん構造で適用される。チップシール122は、一又は複数の完全な円形で適用される。
【0037】
本発明の一態様では、火花が周囲の媒体へ伝搬するのを防止する方法が開示されている。本方法は、管114、116を受ける開口部を有する第1端部を備える結合具112及び管114、116を含む油圧継手部110を提供することと、油圧継手部110と周囲の媒体との間に、結合具112と管114、116との間の火花発生が周囲の媒体に伝搬することを防止する障壁を適用することとを含む。一実施例において、障壁は、結合具112の第1端部に隣接して適用されるチップシール122である。一変形例において、障壁は、油圧継手部110周囲に適用される熱収縮ラップを含み、熱収縮ラップは結合具112と、管114、116の一部を覆う。一実施例において、熱収縮ラップは誘電材料を含む。一代替例において、熱収縮ラップは、静電荷を消散させるのに十分な導電性を有する。さらに別の変形例において、障壁はさらに巻きテープを含む。一変形例では、本方法は、油圧継手部110周囲にテープを巻きつけるステップと、熱収縮ラップを油圧継手部110周囲に位置付けするステップと、熱収縮ラップを加熱して熱収縮ラップをテープに接着させるステップとを含む。
【0038】
本発明の別の態様では、油圧結合具112と管114、116との間の火花発生が周囲の媒体へ伝搬することを防止する方法が開示されており、この方法は、チップシール122を、管114、116を受ける開口部を有する第1端部を有する油圧結合具112に適用するステップと、油圧結合具112を管114、116に結合させて油圧継手部を形成するステップであって、油圧管114、116は管114、116を受けるための開口部を有する第1端部を有するステップと、熱収縮ラップを油圧継手部110の周囲に適用するステップと、熱収縮ラップを加熱して、油圧継手部110の周囲に熱収縮ラップを形成するステップとを含む。一実施例において、熱収縮ラップは、静電荷を消散させるのに十分な導電性を有する。一変形例において、チップシール122は、油圧結合具112の内面に適用される。さらに別の変形例では、チップシール122は、油圧結合具112の内面周囲に、一又は複数の不完全な円形で適用される。別の実施例では、チップシール122は、油圧結合具112の内面周囲にらせん状に適用される。一実施例において、本方法は、油圧継手部110の周囲にテープを巻きつけるステップを含む。一代替例において、テープは油圧継手部110に直接適用され、熱収縮ラップはテープの一部に直接適用される。
【0039】
上述した様々な実施形態は説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明に対する許容されるすべての限定は、請求項に記載される。