特許第5963865号(P5963865)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963865
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】切替可能な機械的な冷却液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F16D 13/70 20060101AFI20160721BHJP
   F16D 27/108 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   F16D13/70 Z
   F16D27/108 Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-530183(P2014-530183)
(86)(22)【出願日】2012年9月11日
(65)【公表番号】特表2014-526660(P2014-526660A)
(43)【公表日】2014年10月6日
(86)【国際出願番号】EP2012067740
(87)【国際公開番号】WO2013037775
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2014年3月13日
(31)【優先権主張番号】11007433.3
(32)【優先日】2011年9月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】311013845
【氏名又は名称】ピールブルグ パンプ テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Pierburg Pump Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−クリストフ シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ローラン フィニドリ
(72)【発明者】
【氏名】アルベアト ゲンスター
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シュヴァンダー
【審査官】 村上 聡
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許発明第10057098(DE,C1)
【文献】 特開2010−127294(JP,A)
【文献】 特開平07−269592(JP,A)
【文献】 特開昭62−210287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 13/70
F16D 27/108
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切替可能な機械的な冷却液ポンプ(10)において、
回転可能なロータシャフト(16)と一緒に回転しかつ該ロータシャフト(16)によって支持されたプーリホイール(12)であって、燃焼機関によって直接に駆動可能なプーリホイール(12)と、
前記ロータシャフト(16)において回転可能に支持されたポンプホイール(18)と、
電気的に切り替えられる、くさび連結された湿式摩擦クラッチ(40)と、を備え、
該湿式摩擦クラッチ(40)は、
前記ロータシャフト(16)に固定されたクラッチ支持体(26)と、
前記ポンプホイール(18)の近位側におけるクラッチリング(30)と、
前記ロータシャフト(16)によって回転可能にかつシフト可能に支持された別個のクラッチディスク(20)であって、該クラッチディスク(20)は、強磁性エレメント(21)を有し、かつ軸方向でみて前記クラッチ支持体(26)と前記クラッチリング(30)との間に配置されている、クラッチディスク(20)と、
不動の電磁石(24)であって、通電されたときに前記クラッチディスク(20)を前記クラッチ支持体(26)へ解離位置に軸方向に引き付ける、電磁石(24)と、
前記クラッチディスク(20)の近位側と、前記クラッチ支持体(26)の遠位側とに形成されたくさび連結機構(22)と、を備え、
該くさび連結機構(22)は、
前記クラッチディスク(20)又は前記クラッチ支持体におけるくさびエレメント(36)と、
前記クラッチ支持体(26)又は前記クラッチディスクにおける対応くさびエレメント(38)と、を備え、
前記くさびエレメント(36)及び前記対応くさびエレメント(38)は、前記電磁石(24)が通電されずかつ前記ロータシャフト(16)が回転しているとき、前記クラッチディスク(20)を前記クラッチリング(30)に当接した係合位置へ軸方向に押し付ける軸方向くさび力を生じさせ、
前記クラッチディスク(20)を係合位置へ押し付ける予荷重ばね(64)が設けられていることを特徴とする、切替可能な機械的な冷却液ポンプ(10)。
【請求項2】
前記くさびエレメント(36)は、一体のくさび斜面である、請求項1記載の切替可能な機械的な冷却液ポンプ(10)。
【請求項3】
前記一体のくさび斜面(36)は、直線的ではない、請求項2記載の切替可能な機械的な冷却液ポンプ(10)。
【請求項4】
前記対応くさびエレメント(38)は、転動エレメントである、請求項1から3までのいずれか1項記載の切替可能な機械的な冷却液ポンプ(10)。
【請求項5】
前記くさびエレメント(50)は、回動可能なレバーであり、前記対応くさびエレメントは、前記レバーの自由端と係合するレバーキャッチ(52)である、請求項1から4までのいずれか1項記載の切替可能な機械的な冷却液ポンプ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁石によって作動させられる湿式摩擦クラッチを備えた切替可能な機械的な冷却液ポンプに関する。
【0002】
機械的な冷却液ポンプは、内燃機関によって駆動され、この内燃機関のために冷却液ポンプは冷却液流を発生する。冷却液ポンプにはプーリホイールが設けられており、このプーリホイールは駆動ベルトにより駆動される。切替可能な機械的な冷却液ポンプにはクラッチ配列が設けられており、このクラッチ配列は、エンジンの能動的な冷却が不要である場合、例えばエンジンのコールドスタート直後において冷却液ポンプを停止させることができる。
【0003】
摩擦クラッチは、環境に曝された乾式摩擦クラッチであってもよく、空気によってのみ冷却することができ、冷却液ポンプのドライ部分の軸方向寸法を増大させる。これに代えて、摩擦クラッチは湿式摩擦クラッチであってもよく、湿式摩擦クラッチは、湿式クラッチ環境における摩擦が乾式クラッチ環境におけるよりも大幅に低いという欠点を有する。したがって、湿式摩擦クラッチを係合させるためには、著しくより大きな作動力が必要とされる。好適には、湿式摩擦クラッチは電磁配列によって作動させられ、電磁配列は、一方の側における電磁コイルと、他方の側における強磁性エレメントとを含む。高い磁力を提供するためには、強磁性エレメントとして高価なレアアース若しくは希土類が必要である。
【0004】
本発明の課題は、湿式摩擦クラッチを備えた単純でかつ費用対効果の高い切替可能な機械的な冷却液ポンプを提供することである。
【0005】
本発明による切替可能な機械的な冷却液ポンプにはプーリホイールが設けられており、このプーリホイールは、回転可能なロータシャフトの一方の軸方向端部に固定されているので、プーリホイールはロータシャフトと一緒に回転する。プーリホイールは、燃焼機関によって、例えば駆動ベルト又は歯車配列を介して直接に駆動することができる。ポンプホイールは、ロータシャフトの他方の軸方向端部に回転可能に支持されており、ポンプホイールはロータシャフトに対して回転可能であるが、軸方向にはシフト不能である。
【0006】
冷却液ポンプには湿式摩擦クラッチが設けられており、この湿式摩擦クラッチは、くさび式連結されており、電磁アクチュエータによって電気的に切り替えられる。湿式摩擦クラッチには、湿式ポンプセクションにおいてロータシャフトに固定されたクラッチ支持体を有し、この場合、クラッチ支持体は、ロータシャフトと一緒に回転し、かつシフト不能になっている。クラッチ支持体は、くさび連結機構のための軸方向支持体として機能する。
【0007】
湿式クラッチリングは、ポンプホイールの近位側、つまり冷却液ポンプのドライ側に面したポンプホイールの側に設けられている。クラッチリングは、必ずしも横方向平面に位置していないが、ポンプホイールの遠位側からアクセス可能である。
【0008】
別個の湿式クラッチディスクは、回転可能に設けられており、ロータシャフトによってシフト可能に支持されている。クラッチディスクは、軸方向でみてクラッチ支持体とクラッチリングとの間に配置されている。クラッチディスクには、ポンプホイールのクラッチリングに面したクラッチ面が設けられており、クラッチディスクと、クラッチリングとが、湿式ポンプセクタにおいて湿式摩擦クラッチを形成している。クラッチディスクには、強磁性エレメントが設けられており、クラッチを電磁界によって引き付けることができるようになっている。強磁性エレメントは、クラッチディスクボディに設けられた別個のエレメントであってもよいし、クラッチディスクボディ自体を強磁性材料から形成してもよい。
【0009】
不動の電磁石が設けられており、この電磁石は、不動のポンプハウジング若しくはポンプフレームによって支持され、固定されている。電磁石は、軸方向でみて、クラッチディスクの強磁性エレメントのできるだけ近くに配置されている。電磁石が通電、すなわち作動させられると、電磁石はクラッチディスクを軸方向に引き付け、これにより、クラッチディスクがポンプホイールから引き離される。その結果、電磁石が作動させられると、ポンプホイールと、クラッチディスクとによって形成されたクラッチは、解離される。
【0010】
さらに、湿式摩擦クラッチは、クラッチディスクの遠位側と、クラッチ支持体の近位側とに形成されたくさび連結機構を有する。このポンプの近位側は、ポンプホイールに面した側であり、遠位側は、プーリホイールに面した側である。くさび連結機構は、クラッチディスク又はクラッチ支持体に設けられたくさびエレメントと、クラッチ支持体又はクラッチディスクに設けられた対応くさびエレメントとを有する。くさびエレメントと、対応くさびエレメントとは、軸方向で互いに向き合っており、これにより、電磁石が通電されずかつロータシャフトが回転しているときに、クラッチディスクをクラッチリングに対して係合位置へ軸方向に押し付ける軸方向くさび力を発生するように協働する。
【0011】
エンジンが運転しているとき、プーリホイールと、クラッチ支持体を含むロータシャフトとは、エンジンの回転速度に比例した回転速度で回転している。電磁石が通電されると、クラッチディスクの強磁性エレメントと、クラッチディスク自体とは、軸方向でクラッチ支持体に引き付けられる。クラッチディスクと、ポンプホイールのクラッチリングとは、係合させられていないので、関連するトルクは、クラッチディスクからポンプホイールへ伝達されない。
【0012】
電磁石が通電されていないとき、クラッチディスクの回転は、冷却液によって取り囲まされた回転するクラッチディスクによって発生される流体抵抗によって減速され、これにより、クラッチ支持体と、クラッチディスクとは、異なる回転速度で回転する。言い換えれば、クラッチディスクは、クラッチ支持体に関して異なる速度で回転する。速度差により、くさび連結機構は、クラッチディスクをクラッチ支持体から軸方向に押し離すような軸方向の押付力を発生し、これにより、クラッチディスクは最終的に、ポンプホイールのクラッチリングに押し付けられ、これによりクラッチリングと係合させられる。この時点で、ポンプホイールは、それ自体はくさび連結機構によって回転させられるクラッチディスクによって回転させられる。軸方向の連結力は、くさびエレメントの傾斜もしくはてこ作用と、冷却液によって生ぜしめられる、回転するポンプホイール及びクラッチディスクの流体抵抗とに依存する。ポンプホイールの回転速度が高まるほど、ポンプホイールを減速される流体抵抗も大きくなるので、くさび連結機構によって発生される軸方向の押付力は、回転速度が高まるにつれて増大する。
【0013】
連結力は電磁石配列によって発生されるのではないので、電磁石と、対応する強磁性部材とは、慣用の電磁石湿式連結配列と比較してより低い性能のために寸法決めすることができる。加えて、連結を湿式連結として実現することができるので、冷却液ポンプの乾燥部分の軸方向寸法を著しく減じることができる。
【0014】
通電された電磁石によって発生され、クラッチディスクの強磁性エレメントに作用する軸方向の磁力は、くさび連結機構によって発生される軸方向の力に打ち勝つように向けられる。電磁石配列が、発生される磁力が比較的小さくなるように極めてコンパクトな寸法を有するならば、低い回転速度においてのみ又は冷却ポンプが停止している場合にのみ、クラッチを解離させることができる。これは、必ずしも顕著な欠点ではない。なぜならば、摩擦クラッチは、特にエンジンのコールドスタートの後、すなわち冷却ポンプが停止していた直後又は極めて低い回転速度で回転しているときに、解離させる必要があるからである。電磁石が故障するか、又は電磁石によって発生される磁界が、クラッチディスクを切り離された位置へ引き付けるには弱すぎる場合、摩擦クラッチをもはや切り離すことはできず、係合したままとなる。その結果、冷却液ポンプはフェイルセーフである。
【0015】
発明の好適な実施の形態によれば、くさびエレメントは、クラッチディスク又はクラッチ支持体に設けられた、一体的なくさび斜面である。くさび斜面は、機械的に単純であり、極めて費用対効果高く実現することができる。対応くさびエレメントは、開口として、反対方向に向けられた第2のくさび斜面として、又は転動エレメントとして実現することができる。対応くさびエレメントとしての開口は、機械的に極めて単純であり、軸方向の連結力が高すぎなければ機械的に十分であることができる。対応くさびエレメントとしての第2のくさび斜面も、機械的に比較的単純であり、詰まりの危険性を低減する。対応くさびエレメントとしての転動するエレメントは、摩擦を著しく低減し、これにより、係合操作及び解離操作の確実な機能を長期間にわたり保証することができる。転動エレメントは、ホイール、ボール等であってよい。
【0016】
好適には、くさび斜面は、直線的ではなく曲線を成しており、この曲線は、特に、係合移動及び解離移動の初期段階及び最終段階において、その機能のために最適化されている。なぜならば、最終段階は詰まりに関して重要であるからである。したがって、くさび斜面の初期部分と最終部分とにおけるくさび斜面の傾斜は、特に初期解離段階及び初期係合段階における詰まりを回避するために、高い係合力及び解離力のためにそれぞれ適応させられているべきである。
【0017】
発明の第2の好適な実施の形態によれば、くさびエレメントは、ある種の斜面として実現されているのではなく、レバーとして実現されており、この場合、対応くさびエレメントは、レバーキャッチ又は第2のレバーヒンジである。レバーの回動は、レバーを、横方向平面へ完全に回動させることができず、かつ完全に軸方向の位置へ回動させることができない程度に制限されている。好適には、回動範囲は、横方向平面に対して10°〜80°の範囲に制限されている。係合段階が開始すると、レバーの自由端部は、対応する部分、例えばクラッチディスクのレバーキャッチと係合させられる。レバーは、より軸方向の位置へ回転させられ、これにより、クラッチディスクは、押し離され、ポンプホイールの後側に対して係合位置へ移動させられる。レバー配列は、詰まりのいかなる危険性をも回避し、したがって、極めて信頼性がある。
【0018】
発明の3つの実施の形態が、添付された図面に関して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一体的なくさび斜面と、対応くさびエレメントとしての転動エレメントとを含むくさび連結機構を備えた機械的な冷却液ポンプの第1の実施の形態を示す図である。
図2】一体的なくさび斜面と、対応くさびエレメントとしての対応する開口とを含むくさび連結機構を備えた冷却液ポンプの第2の実施の形態を示す図である。
図3】レバーと、レバーキャッチとを含むくさび連結機構を備えた冷却液ポンプの第3の実施の形態の詳細を示す図である。
【0020】
図1及び図2は、切替可能な機械的な冷却液ポンプ10,10’の2つの実施の形態を縦断面図で示している。冷却液ポンプ10,10’は、内燃機関に組み付けられ、プーリホイール12を駆動する駆動ベルトを介して内燃機関によって駆動されるのに適している。冷却液ポンプ10,10’は、内燃機関を冷却するための冷却液回路において冷却液をポンピングする。
【0021】
冷却液ポンプ10,10’には、軸受モジュール44を支持した金属製のハウジング14が設けられている。軸受モジュール44は、回転可能なロータシャフト16を支持しており、ロータシャフト16には、ロータシャフト16と一緒に回転するプーリホイール12が設けられている。プーリホイール12と、ロータシャフト16とは、常時、駆動エンジンの回転速度に比例した回転速度で回転する。プーリホイール12は、ロータシャフト16の遠位端部に設けられている。
【0022】
ロータシャフト16の反対側の近位端部には、ポンプホイール18が設けられており、このポンプホイール18は、ロータシャフト16に対して回転可能であるが軸方向でシフト可能ではない。ポンプホイール18は、基本的に、円形のベースプレート19と、ベースプレート19から近位方向に軸方向に突出したポンプブレード17とを有する。ポンプホイール18の遠位側には、ベースプレート19の外周に隣接して、クラッチリング30が設けられている。
【0023】
ロータシャフト16は、ロータシャフト16に固定されたクラッチ支持体26を支持しており、これにより、クラッチ支持体26はロータシャフト16と一緒に回転する。クラッチ支持体26は、ロータシャフト16から半径方向に延びており、くさび連結機構22,22’の一方の側のための軸方向支持体として機能する。最後に、ロータシャフト16は、クラッチディスク20を支持しており、クラッチディスク20は、ロータシャフト16に対して自由に回転可能かつシフト可能である。クラッチディスク20には、その近位側において摩擦面が設けられており、摩擦面は、ポンプホイール18のクラッチリング30と協働するように適応されており、これにより、摩擦面と、クラッチリング30とは、摩擦クラッチ面の対を形成している。クラッチディスク20のベースプレートは、強磁性の鋼から形成されている。
【0024】
ハウジング14と、シャフトシール42とは、冷却液ポンプ10,10’のウェットセクション15からドライセクション13を分離している。ウェットセクション15には冷却液が存在し、全ての間隙を満たしている。ハウジング14は、不動の電磁石24を支持しており、この電磁石24は、ウェットセクション15において円形のリングコイルとして実現されており、クラッチ支持体26を半径方向で包囲している。電磁石24は、電子冷却制御モジュール(図示せず)によって制御され、冷却制御モジュールによって電磁石24に電気エネルギが通電されると、クラッチディスク20を軸方向で引き付ける。
【0025】
冷却液ポンプ10,10’には、湿式摩擦クラッチ40,40’が設けられており、この湿式摩擦クラッチ40,40’は、摩擦クラッチ面の対と、電磁石24と、くさび連結機構22,22’とを有する。
【0026】
図1の第1の実施の形態のくさび連結機構22は、クラッチディスク20の遠位側21における3つの一体的なくさび斜面として実現された3つのくさびエレメント36を有し、かつ、半径方向に延びる回転軸線を中心に回転する円筒形の転動エレメントとして実現された、3つの対応する対応くさびエレメント38を有する。くさびエレメント36及び対応する対応くさびエレメント38は、互いに対して120°の角度間隔をおいて対称的に配置されている。くさびエレメント36は、クラッチディスク20の一体部分であり、横方向平面に対して、非線形の傾斜が提供されている。くさびエレメント36の局所的な傾斜は、第1のセクションにおいては比較的小さく、中間セクションにおいては比較的大きく、終端セクションにおいては再び比較的小さくなっていてよい。くさびエレメント36の有効軸方向高さは、クラッチディスク20とポンプホイール18との間の最大軸方向間隙よりも大きく、これにより、クラッチディスク20を、ポンプホイール18に対して120°の範囲でのみ回転させることができる。
【0027】
電磁石24が通電されず、かつプーリホイール12と、ロータシャフト16と、クラッチ支持体26とが、エンジン回転速度に比例した回転速度で回転していると、クラッチディスク20は、同じ回転速度でくさび連結機構22によって引っ張られ、これにより、クラッチディスク20の回転は、冷却液内で回転するクラッチディスク20の流体抵抗によって僅かに制動される。クラッチ支持体26に対するクラッチディスク20の僅かな制動により、対応くさびエレメント38はくさびエレメント36に係合し、これにより、クラッチディスク20の摩擦面と、ポンプホイール18とが接触し、これにより、クラッチディスク20を係合させるまで、クラッチディスク20は近位方向へポンプホイール18に向かって軸方向に押し付けられる。クラッチディスク20が係合させられるやいなや、ポンプホイール18はクラッチディスク20と一緒に回転し、この場合、冷却液において回転するポンプホイール18によって、流体抵抗の著しい増大が生ぜしめられる。流体抵抗が大きいほど、くさび連結機構22によって発生される軸方向連結力は大きくなる。
【0028】
摩擦クラッチ40が解離させられるべきであるならば、電磁石24が通電され、強磁性のクラッチディスク20は電磁石24によって軸方向で遠位方向に引き付けられる。クラッチディスク20に作用する軸方向の磁力は大きいので、少なくとも低い回転速度において、くさび連結機構22によって発生される軸方向で近位方向への力を克服することができる。しかしながら、電磁石24と、クラッチディスク20とによって発生される磁力は、少なくとも、ロータシャフト16の回転速度がゼロである場合に高い信頼度でクラッチディスク20を引き付けるのに十分に高く、これにより、エンジンが始動させられる前に摩擦クラッチ40を解離させることができる。低温のエンジンが始動させられる場合、冷却液が非作動温度を有する間、冷却液ポンプが停止させられると、暖めプロセスは著しく短縮される。したがって、ほとんどの用途のために、摩擦クラッチ40を、ロータシャフト16が停止しているときにのみ確実に解離させることができれば十分であり得る。
【0029】
図2に示された冷却液ポンプ10’の第2の実施の形態において、摩擦クラッチ40’、特にくさび連結機構22’は、単純に構成されており、転動エレメントを有さない。クラッチ支持体26’には、一体のくさび斜面として形成された3つの一体のくさびエレメント60が設けられている。対応くさびエレメント62は、クラッチディスク20’に設けられた3つの対応する円形の開口であり、これにより、くさびエレメント60と、対応する開口のそれぞれの縁部とは、くさび連結機構22’を形成している。開口の縁部は、摩擦を低減するように傾斜させられているか又は丸みを付けられていてよい。クラッチ支持体26’には、クラッチディスク20’を係合位置へ押し付ける軸方向予荷重ばね64が設けられている。予荷重ばね64は、特に低い回転速度におけるクラッチ係合の信頼性を高め、ロータシャフト16が停止しているときの摩擦クラッチの自動係合を提供する。
【0030】
図3には、くさび連結機構22''の別の代替的な実施の形態が示されており、この実施の形態では、クラッチ支持体54に3つの回動レバー50が設けられており、これらの回動レバー50は、それぞれのヒンジ56によってクラッチ支持部54に支持されたくさびエレメントを形成している。それぞれのレバー50の回動範囲は、クラッチ支持体54のそれぞれのレバーストップ57,58によって、横方向平面に対して50°〜85°の範囲に制限されている。レバー50の自由な近位のレバーヘッド51は、クラッチディスク20’’において周方向に向けられた長手方向当接部として形成された対応するレバーキャッチ52に係合する。電磁石が通電されず、ロータシャフトが回転しているとき、レバーヘッド51は、対応するレバーキャッチ52内へ滑り込み、より軸方向向きに回動させられ、これにより、クラッチディスク20''をポンプホイールに対して押し付ける。このくさび連結機構22''は、高い軸方向クラッチ係合力と、比較的小さい作動力とを提供し、したがって、高い、長期の機械的信頼性を提供する。
図1
図2
図3