【実施例1】
【0089】
図1は、本発明の試験装置をシミュレーション装置として適用した試験装置の上面図、
図2は、
図1の部分拡大図、
図3は、
図1のA方向から見た正面図、
図4は、
図1のB方向から見た側面図を90度右回転させた図、
図5は、
図1のベースプレート部分の上面図、
図6は、
図5においてベースプレート部分の運動連結機構の一部を省略した上面図、
図7は、
図6の背面図を180度右回転させた図、
図8は、
図6のC方向の側面図を90度右回転させた図、
図9は、
図7のエアベアリングと磁着装置の部分のエアベアリングのエア圧力が高い作動状態の拡大図、
図10は、
図7のエアベアリングと磁着装置の部分のエアベアリングのエア圧力が低い非作動状態の拡大図、
図11は、
図7のエアベアリングと磁着装置の部分の上面図、
図12〜
図16は、ベースプレートがすべり床の上をX−Y方向、Z軸の周りに回転移動する状態を説明する上面図である。
【0090】
図1において、符号10は、全体で本発明の試験装置をシミュレーション装置として適用した試験装置を示している。
【0091】
この実施例の試験装置10では、
図1に示したように、操作者の運転操作に応じて運転状態をシミュレーションするための試験装置に適用した実施例を示している。
【0092】
すなわち、例えば、自動車・バイク・電車・航空機・船舶などの運輸機器において、これらの運輸機器の研究開発や、運輸機器の運転者の運転能力の向上などを目的として、操作者の運転操作に応じた運転状態などをシミュレーションするためのものである。
【0093】
なお、この実施例では、車両機器の一例として、自動車の場合を図示している。また、図示しないが、本発明の試験装置10では、必要に応じて、試験装置10の周囲にスクリーンなどが設けられており、操作者Sの運転操作に応じて運転状態を視覚的にシミュレーションすることができるように構成されている。従って、例えば、加速度試験などの試験のみを実施する場合などにおいては、このようなスクリーンを設けないこともある。
【0094】
図1〜
図4に示したように、本発明の試験装置10では、すべり床12を備えており、このすべり床12の上面には、後述するように、X−Y方向に移動できるとともに、Z軸の周りに回転(Yaw運動)できるように自由に移動可能に、上面視で略三角形のベースプレート14が配置されている。
【0095】
このベースプレート14上には、
図5〜
図7に示したように、運動連結機構16を備えており、運動連結機構16によって、上面視で略三角形の可動部を構成するプラットフォーム18が連結されている。なお、
図5〜
図6に示したように、プラットフォーム18は、軽量化のために、いわゆるトラス構造のパイプによって構成されている。
【0096】
図5〜
図8に示したように、運動連結機構16は、この実施例では、いわゆる「スチュワート・プラットフォーム(ヘキサポッドとも呼ばれる)」と呼ばれる6自由度パラレルメカニズムを採用しており、並列に連結された6本の伸縮するリンク16a〜16fから構成されている。
【0097】
そして、これらの6本の伸縮するリンク16a〜16fが協調して動作することによって、図示しないが、プラットフォーム18が、X−Y−Z方向に移動できるとともに、X軸のまわり(Roll)、Y軸のまわり(Pitch)、Z軸の周りに(Yaw運動)回転できるように自由に移動可能となるように構成されている。
【0098】
すなわち、これらのリンク16a〜16fはそれぞれ、電気または油圧(図は電気の例を示す)駆動装置20a〜20fを作動することによって、ピストンシリンダー機構が作動して伸縮する構造となっている。また、これらのリンク16a〜16fの下端は、
図7に示したように、ピボット軸22a〜22fを介して、ベースプレート14の3か所の角部に形成されたブラケット24a〜24fに、それぞれ回動可能に連結されている。
【0099】
一方、これらのリンク16a〜16fの上端は、
図7に示したように、ピボット軸26a〜26fを介して、プラットフォーム18の3か所の角部に設けられた支持部28a〜28fに、それぞれ回動可能に連結されている。
【0100】
また、
図3〜
図4に示したように、プラットフォーム18上には、運輸機器を構成する、例えば、コックピット、ハーフカーモデルなどからなる被運転部、この実施例の場合には、自動車の車両30が設けられている。なお、
図3〜
図4を除いて、説明の便宜上、被運転部(車両)30を省略して示している。
【0101】
一方、
図5〜
図7に示したように、ベースプレート14の下面には、すべり床12の上面に対して対峙するように、複数のエアベアリングユニット32が設けられている、すなわち、この実施例では、
図5〜
図6に示したように、ベースプレート14の3か所の角部に形成されている。
【0102】
また、
図7、
図9〜
図11に示したように、エアベアリングユニット32は、すべり床12の上面に対して対峙するように、ベースプレート14の下面に、一定間隔離間して配置された2個のエアベアリング34を備えている。これらのエアベアリング34は、それぞれ、ベースプレート14の下面に固定された球面座36に、装着部38によって自由に回動できるように装着されている。すべり床12の面精度や、取付け部の平行度の誤差を吸収する。
【0103】
そして、これらの2個のエアベアリング34の間に、
図9〜10に示したように、すべり床に対する磁着力を変更可能な磁着装置40が、ベースプレート14の下面に、すべり床12の上面に対して対峙するように配置されている。
【0104】
この磁着装置40は、
図9〜
図11に示したように、ピストンシリンダー機構42を備えており、このピストンシリンダー機構42のピストン44の下端には、ベース板46が固定されている。このベース板46の下面には、例えば、永久磁石からなる磁石部材48が配置されている。
【0105】
なお、このように、磁石部材48が、永久磁石から構成されていれば、安価な永久磁石を磁着装置40の磁石部材48として用いることができ、コストを低減することができるとともに、動力を必要とせず、省エネ効果が期待できる。
【0106】
また、ベース板46とピストン44の周囲に設けられた4個のガイド部材41の基端部のフランジ41aとの間には、それぞれバネ部材45が介装されている。
【0107】
このように構成されるエアベアリングユニット32は、エアベアリング34のエア圧力が高い作動状態では、図示しないが、エアベアリング34の空気圧により、ベースプレート14が浮き、すべり床12の上面との間にエア層ができるようになっている。
【0108】
これにより、ベースプレート14上に運動連結機構16によって連結されたプラットフォーム18が、すべり床12の上面を最小の摩擦力で移動することができるようになっている。
【0109】
この場合、複数のエアベアリング34に対応して、複数の磁着装置40が設けられているので、磁着装置40による磁力(磁着力)とプラットフォーム18の重量が合わさったエアベアリング34の上下方向のプリーロード状態が、ベースプレート14全体において均一になり、上下方向の反力・モーメントを受け持ち、より安定したシミュレーション、試験が可能となる。
【0110】
また、エアベアリングユニット32は、エアベアリング34のエア圧力が高い作動状態では、磁着装置40のすべり床12に対する磁着力が強い状態となるように構成されている。
【0111】
すなわち、この実施例では、
図9に示したように、エアベアリング34のエア圧力が高い作動状態では、ピストンシリンダー機構42が作動して、バネ部材45の付勢力に抗して、ピストン44が下方に向かって伸張する。
【0112】
これにより、ピストン44の下端に固定されたベース板46が、すべり床12の上面に向かって下方に移動する。その結果、ベース板46下面に配置された磁石部材48と、すべり床12の上面との間の距離が近くなり、磁着装置40のすべり床12に対する磁着力が強い状態となる。
【0113】
従って、エアベアリング34と磁着装置40によるプリーロードで、プラットフォーム18の上下方向の負荷容量を増やすことができる。
【0114】
すなわち、磁着装置40による磁力(磁着力)とプラットフォーム18の重量が合わさって、エアベアリング34の上下方向のプリーロード状態となり、上下方向の反力・モーメントを受け持ち、安定したシミュレーションや試験が可能となる。
【0115】
その結果、プラットフォーム18の重量が軽く、剛性が高く、しかも、軽いベースで安定した運動を実現でき、小さい動力と少ないスペースで、高い周波数までのシミュレーションが可能である。
【0116】
この場合、複数のエアベアリング34に対応して、複数の磁着装置40が設けられているので、磁着装置40による磁力(磁着力)とプラットフォーム18の重量が合わさったエアベアリング34の上下方向のプリーロード状態が、ベースプレート14全体において均一になり、上下方向の反力・モーメントを受け持ち、より安定したシミュレーションや試験が可能となる。
【0117】
なお、この場合、エアベアリング34、磁着装置40の数、ベースプレート14での配置位置などは特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0118】
一方、エアベアリングユニット32は、エアベアリング34のエア圧力が低い非作動状態では、磁着装置40のすべり床12に対する磁着力が弱い状態となるように構成されている。
【0119】
すなわち、この実施例では、
図10に示したように、エアベアリング34のエア圧力が低い非作動状態では、ピストンシリンダー機構42の作動が停止して、バネ部材45の付勢力によって、ピストン44が上方に向かって後退する。
【0120】
これにより、ピストン44の下端に固定されたベース板46が、すべり床12の上面から離間する方向に上方に移動する。その結果、ベース板46下面に配置された磁石部材48と、すべり床12の上面との間の距離が大きくなり、磁着装置40のすべり床12に対する磁着力が弱い状態となる。
【0121】
従って、エアベアリング34のエア圧力が低い非作動状態では、圧力センサーでその状態が検出され、試験装置10が停止されるが、慣性の影響で、停止までベースプレート14が一定の距離移動することになる。
【0122】
この場合、磁着装置40のすべり床12に対する磁着力が弱い状態、すなわち、この実施例では、ベース板46の下面に配置された磁石部材48と、すべり床12の上面との間の距離が大きくなり、磁力が作用しなくなり、磁石部材48と、すべり床12の上面との間の摩擦力を低減でき、摩耗を減らし、試験装置10のメンテナンス周期を長くすることが可能となる。
【0123】
このように構成することによって、磁着装置40のすべり床12に対する距離を変更することによって、すべり床12に対する磁着力の強弱が切替えできるので、試験装置10に合った磁力の調整が可能である。
【0124】
なお、エアベアリング34のすべり床12に対峙する面、または、すべり床12の上面のうち少なくとも一方の表面に、摩擦低減処理が施されていても良い。
図7では、すべり床12の上面に摩擦低減処理11を施している状態を示している。
【0125】
このように、例えば、「ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、テトラフ
ルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン共重合体樹脂、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体樹脂、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体樹脂、ポリビニリデンフルオライド樹脂、ポリビニルフルオライド樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂」などのフッ素系樹脂や、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミド6樹脂(PA6)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、ピーク樹脂(PEEK)などからなるシートを貼着したり、これらの樹脂単体および混合体を焼付コーティングしたりすることによって、エアベアリング34のすべり床12に対峙する面、または、すべり床12の上面のうち少なくとも一方の表面に摩擦低減処理を施しても良い。
【0126】
これにより、非常停止などの場合、また、作動中に想定よりも大きい負荷がかかった場合において、エアベアリング34がすべり床12の上面と接触した際に、エアベアリング34が損傷するのを防止することができ、装置の寿命が長くなる。
【0127】
また、このような摩擦低減処理が施されているので、エアベアリング34とすべり床12の上面との間が、多少接触してもエアベアリング34が損傷するのを防止することができるので、すべり床12の上面の面の精度を多少下げることができるので、コストを低減することができる。
【0128】
さらに、磁着装置40のベース板46の下面に配置された磁石部材48は、
図12に示したように、磁石部材48が、複数の磁石部材48から構成され、これらの磁石部材48が、相互に極の向きが直角の位置となるように配置されていても良い。
【0129】
このように磁石部材48が、相互に極の向きが直角の位置となるように配置されているので、各運動方向(X−Y方向、Yaw回転)における渦電流による抵抗を同一にすることができ、正確な、シミュレーションや試験を実施することができる。
【0130】
一方、
図1〜
図4に示したように、ベースプレート14には、すべり床12の上面を、X−Y方向に移動できるとともに、Z軸の周りに回転(Yaw運動)できるように自由に移動可能とする移動機構50が連結されている。
【0131】
すなわち、移動機構50は、
図1に示したように、相互に中心角度αが120°の角度で離間するように配置された3個のピストンシリンダー機構から構成される移動駆動装置52a、52b、52cから構成されている。
【0132】
これらの移動駆動装置52a、52b、52cは、それぞれその基端部が、すべり床12の上面に相互に中心角度αが120°の角度で離間するように固定された3個の固定ブラケット54a、54b、54cに、ピボット56a、56b、56cによって回動可能に連結されている。
【0133】
また、これらの移動駆動装置52a、52b、52cは、それぞれそのピストン58a、58b、58cの先端が、
図1の点線で示したように、
図1の状態で、すなわち、上面視で、ベースプレート14がすべり床12の上面の略中心位置にある際(初期位置状態にある際)に、円形サークルCに沿って、相互に中心角度βが120°を形成するように、ベースプレート14上に設けられた3個の固定ブラケット60a、60b、60cに、ピボット62a、62b、62cによって回動可能に連結されている。
【0134】
また、これらのピストン58a、58b、58cの先端の延長線が、
図1の一点鎖線で示したように、
図1の状態で、すなわち、上面視で、ベースプレート14がすべり床12の上面の略中心位置にある際(初期位置状態にある際)に、ピストン58a、58b、58cが、円形サークルCに接するか、または、円形サークルCに接する状態に近い角度になるように設けられている。
【0135】
さらに、移動駆動装置52a、52b、52cは、それぞれその基端部には、ピストンシリンダー機構を作動するための電気または油圧(図は電気の例を示す)駆動装置64a、64b、64cが設けられている。
【0136】
このように構成される移動機構50は、操作者Sの運転操作に応じて、図示しない制御装置の制御によって、エアベアリング34のエア圧力が高い作動状態では、エアベアリング34の空気圧により、ベースプレート14が浮き、すべり床12の上面との間にエア層ができ、磁着装置40のすべり床12に対する磁着力が強い状態となり、プリーロード状態となる。
【0137】
この状態で、操作者Sの運転操作に応じて、電気または油圧(図は電気の例を示す)駆動装置64a、64b、64cの作動を制御することによって、移動駆動装置52a、52b、52cのピストンシリンダー機構のピストン58a、58b、58cの伸張度が調整される。
【0138】
これにより、
図1に示したベースプレート14がすべり床12の上面の略中心位置にある状態から、
図12〜
図16に示したように、ベースプレート14が、X−Y方向に移動できるとともに、Z軸の周りに回転(Yaw運動)できるように自由に移動可能となるように構成されている。
【0139】
なお、
図12〜
図16は、あくまでも、X−Y方向の移動、Z軸の周りに回転(Yaw運動)の一例を示したものであって、その他の位置の組み合わせも自由であることはもちろんである。
【0140】
このように構成することによって、
図1の状態で、すなわち、上面視で、ベースプレート14がすべり床12の上面の略中心位置にある際に、ピストン58a、58b、58cが、円形サークルCに接するか、または、円形サークルCに接する状態に近い角度になるように設けられているので、Z軸の周りに回転(Yaw運動)の際に、必要な加振機の速度、加速度を小さくすることができる。
【0141】
ピストン58a、58b、58cの先端の延長線が、
図2の一点鎖線で示したように、
図1の状態で、すなわち、上面視で、ベースプレート14がすべり床12の上面の略中心位置にある際(初期位置状態にある際)に、ピストン58a、58b、58cが、円形サークルCに接するか、または、円形サークルCに接する状態に近い角度になるように設けられ、ピストン58a、58b、58cの先端の延長線がベースプレート14の中心Oからずれた位置になっている。
【0142】
これにより、
図1の状態、すなわち、上面視で、ベースプレート14がすべり床12の上面の略中心位置にある状態(初期位置状態にある状態)から移動させる際に、必要なトルクで移動させることができる。
【0143】
また、円形サークルCの直径が比較的小さいため、Yaw運動の際に必要な、アクチュエータである移動駆動装置52a、52b、52cのピストンシリンダー機構のストロークと速度が小さくなり、よりハイパフォーマンスなシミュレータの提供が可能になる。
【0144】
さらに、アクチュエータである移動駆動装置52a、52b、52cのピストンシリンダー機構の加速度も小さくなるので、アクチュエータの等価質量に必要なトルクが減り、ベースプレート14へのYaw方向のトルクが増え、効率が良くなる。
【0145】
また、アクチュエータである移動駆動装置52a、52b、52cのピストンシリンダー機構の軸線と、回転中心の距離を大きく取れ、しかも、移動駆動装置52a、52b、52cの動作範囲が最大になるような角度で、アクチュエータである移動駆動装置52a、52b、52cを配置している。
【0146】
従って、アクチュエータである移動駆動装置52a、52b、52cを取り付けるのに必要なスペースが小さくなり、試験装置10を小型化することができる。
【0147】
さらに、X−Y方向の移動、Z軸の周りに回転(Yaw運動)による複合運動の可動範囲が大きくなる。
【0148】
なお、図示しないが、アクチュエータである移動駆動装置52a、52b、52cのピストンシリンダー機構を、ベースプレート14上に設置することにより、移動駆動装置52a、52b、52cにおいて発生する干渉をリミットスイッチで防止することもできる。