【文献】
金子 正治,色素増感太陽電池(DSC)用積層型対向電極の作製 Fabrication of Laminated Counter Electrode for Dye-sensitized Solar Cells,第55回応用物理学関係連合講演会講演予稿集 Vol.2,2008年
【文献】
村上 健司,スプレー熱分解法による色素増感太陽電池用省白金対向電極の作製 Fabrication of Pt-Saving Counter Electrode through Spray Pyrolysis Deposition for Dye-sensitized Solar Cells,2010年秋季第71回応用物理学会学術講演会講演予稿集,2010年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透明基板の表面に透明導電膜を形成する工程を、前記透明基板を載置するカートの向きを変えないで該カートの移動方向をかえて、透明導電膜材料の噴霧を前記透明基板の異なる向きから行い、かつ、該カートの移動がループを形成して噴霧後の前記カートが元の位置に戻るように行う請求項1記載の色素増感太陽電池の製法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、従来の噴霧器により薄膜材料を噴霧して薄膜を形成する場合、一々噴霧器が設けられた装置内に基板を挿入して取り出さなければならず、自動化が難しいと共に、自動化しても非常に効率が悪く、量産化に適しないという問題がある。また、間欠的に噴霧を行わないと、基板の温度が下がって均一な膜形成をすることができないが、噴霧を間欠的に行うと、噴霧のし始めと噴霧を終了する時は、噴霧状態が通常の連続噴霧をしている噴霧状態と異なり、基板上に噴霧口があり、基板上で噴霧と停止を繰り返すと、不規則噴霧による膜厚のバラツキがより一層大きくなる。そのため、均一な膜形成には好ましくない。さらに、架台と噴霧器との相対移動を行っても、移動方向は限られており、間欠噴霧と移動方向との関係を各基板で完全に一致させることができず、1つの基板内での均一性、および何枚も形成する場合の各基板での均一性という点でも、安定した品質の薄膜を形成することができないという問題がある。
【0006】
さらに、このような薄膜を使用する色素増感型太陽電池を量産する場合、このような薄膜を形成する方法が、前述のような噴霧器内に一々基板を設置して、基板と噴霧口とを対向させて噴霧し、膜形成後に一々取り出すという方法では、1枚の基板に薄膜を形成する時間もかかり、自動化を行いにくいという問題がある。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、スプレー法により薄膜を形成する場合に、均一な膜形成をすることができ、かつ、自動化することができる薄膜の形成方法およびその形成装置を色素増感太陽電池の製法および製造装置に応用することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、透明電極膜や光電変換層用の酸化物半導体膜などの薄膜を、均一な組成および均一な膜厚で形成することができ、かつ、薄膜形成から最終仕上がりまでをコンベヤ方式で自動化することができる色素増感太陽電池の製法およびその製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による色素増感太陽電池の製法は、(a)表面に載置される基板を加熱し得るカートに透明基板を載置し、該カートを間欠移動させながら透明導電膜の材料の噴霧と停止を繰り返して、
スプレー熱分解薄膜堆積法により前記透明基板の表面に透明導電膜を形成し、前記カートを間欠移動させながら
酸化物半導体層の材料の噴霧と停止を繰り返して、スプレー熱分解薄膜堆積法により前記透明基板の表面の所定領域に光電変換層とするための酸化物半導体層を形成し、該酸化物半導体層の間隙部に金属ペーストを塗布することにより集電線を形成し、該酸化物半導体層および集電線の熱処理後ベルトで搬送される前記透明基板を色素吸着槽に挿入して一定時間後に取り出すことにより前記酸化物半導体層に色素を吸着させ、前記集電線に沿ってシール剤を塗布することにより作用極を形成する工程、
(b)表面に載置される基板を加熱し得るカートに金属基板を載置し、該カートを間欠移動させながら耐食性および導電性を具備する材料の噴霧と停止を繰り返して、
スプレー熱分解薄膜堆積法により前記金属基板の表面に耐食・導電層を形成し、前記カートを間欠移動させながら
触媒性を有する金属層の材料の噴霧と停止を繰り返して、スプレー熱分解薄膜堆積法により前記金属基板の表面の所定領域に触媒性を有する金属層を形成することにより対向極を形成する工程、および
(c)前記作用極および前記対向極を貼り合せて前記シール剤を硬化させ、その後に電解質材料を注入するアセンブリ工程、を有し、
前記透明導電膜、前記酸化物半導体層、前記
耐食・導電層、前記触媒
性を有する金属層を形成するための間欠移動によるカートの移動のインターバル、前記金属ペースト塗布の1枚あたりの時間、前記色素吸着層への透明基板の出し入れの時間、前記シール剤の硬化処理の時間、および前記電解質材料の注入時間を同じ時間として、各工程を同期させて行うことを特徴とする。
【0010】
ここに「カート」とは、基板を載置しながら、レール上などを移動し得る箱状の基板載置台を意味する。また、「1ピッチ」とは、連続的に配置される2個のカートの同じ部分の距離、すなわち
図1にpで示されるように、スペーサなども含めた1個分のカートの長さを意味する。
【0011】
ここに「透明」とは、光を透過させる透光性の意味で、完全に透き通ることを意味するものではない。
【0012】
前記透明基板の表面に透明導電膜を形成する工程を、前記透明基板を載置するカートの向きを変えないで該カートの移動方向を変えて、透明導電膜材料の噴霧を前記透明基板の異なる向きから行い、かつ、該カートの移動がループを形成して噴霧後の前記カートが元の位置に戻るように行うことにより、透明導電膜の形成工程を狭い領域で行うことができ、かつ、透明基板が元の位置に戻るため、次の工程に自動的に移すことができる。
【0013】
本発明による色素増感太陽電池の製造装置は、表面に設けられる
透明基板を加熱し得るカートを周回移動させながら透明導電膜材料を噴霧して透明導電膜を形成する第1のスプレー部と、該第1のスプレー部と並置して設けられ、光電変換層用の酸化物半導体材料を噴霧する第2のスプレー部と、該第2のスプレー部の前記カートの出口と近接して設けられる集電線用材料塗布部と、前記透明基板をベルト移動しながら前記酸化物半導体材料および前記集電線用材料をシンタリングするベルト炉と、該ベルト炉の出口近傍に設けられ、色素を含有する液体が満たされ、かつ、前記透明基板ごとに区画されると共に、中心軸に関して回転し1回転することにより色素の吸着を完了するように形成された色素吸着槽と、シール剤を塗布するシール剤塗布部と、を有する作用極形成部と、
表面に設けられる金属基板を加熱し得るカートを周回移動させながら導電層材料を噴霧して前記金属基板の表面に導電層を形成する第3のスプレー部と、該第3のスプレー部と並置して設けられ、前記金属基板に金属材料を噴霧して金属層を形成する第4のスプレー部と、前記金属層が噴霧された金属基板を前記色素吸着槽側にベルト移動しながら前記金属層をシンタリングするベルト炉と、を有する対向極形成部と、
前記シール剤が塗布された透明基板と前記金属層が形成された金属基板とを重ね合せて前記シール剤を硬化させるシール剤硬化部、および該シール剤硬化部に近接して設けられる電解質材料の注入部と
を有し、
前記作用極形成部での前記透明基板の前記カート上へのローディングから前記シール剤硬化部までの前記透明基板の移動、および前記対向極形成部で前記金属基板のローディングから前記シール剤硬化部までの前記金属基板の移動を自動的に
行い、色素増感太陽電池を製造し得ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の色素増感太陽電池の製法に用いる薄膜形成方法によれば、基板を載置したカートを所定ピッチで移動して、一定時間停止する間欠移動を行いながら、停止時に隣接する2個のカートの間の上方に設けられた噴霧器により、カートが移動している際のみに噴霧を行っているため、噴霧器による噴霧を間欠的に行っても、その噴霧の開始と終了時の噴霧の不安定性を噴霧器の下に基板がない状態で行うことができ、噴霧による吹き付けの一様性を損なうことがない。しかも、カートにより常に基板を加熱しており、薄膜材料の噴霧(吹き付け)による温度の低下は、カートの停止時に復帰すると共に、停止時に吹き付けられた薄膜材料を熱分解して所望の薄膜を形成することができる。さらに、本発明では、カートの向きを変えないで移動方向だけを第2の方向に変えて同様の間欠移動をして同様に噴霧器による噴霧(吹き付け)を行うため、基板に対して異なる方向から吹き付けを行うことになり、より一層薄膜の均一性を確保することができる。
【0015】
たとえば四角形状の基板であれば、カートの移動を四角形状にすることにより、基板の全ての辺に沿った方向から吹き付けを行うことができ、非常に均一な薄膜を形成することができる。この一方向に進行させる場合に、2回以上の噴霧を行うようにすれば、濃度の低い溶液で薄い膜を何回も形成することができ、非常に安定した厚さや成分の薄膜を形成することができる。しかも、本発明によれば、噴霧を行って一定時間噴霧を停止して熱分解を行い、再度噴霧と停止を繰り返すという画一的な処理でよいため、自動的に薄膜の形成を行うことができながら、非常に膜厚の安定した薄膜を形成することができる。
【0016】
また、本発明の色素増感太陽電池の製造装置に用いる薄膜の形成装置によれば、たとえばプッシャ−のような簡単な押し出し機構からなる移動手段を動作させるだけで、一定速度でカートを一定距離だけ移動させることができる。そのため、ただカートを押して移動させるだけで、均一な膜を形成することができ、しかも、機構が簡単なため、簡単に自動化することができ、安価に一定の膜厚の薄膜を形成することができる。
【0017】
さらに、本発明の色素増感太陽電池の製法によれば、カートの間欠移動により噴霧器による噴霧(吹き付け)と、吹き付けを停止して熱分解をする工程を繰り返すことにより薄膜の形成を行っており、しかも、この間欠移動の1ピッチと集電線材料の塗布や色素吸着槽への出し入れ、封止剤の塗布、電解質材料の注入など、各基板で行う作業時間を同じ時間に設定して同期させているので、基板の載置(ローディング)から太陽電池モジュールの完成までの全ての工程を完全に自動化することができる。その結果、色素増感太陽電池のコストダウンに大きく寄与する。
【0018】
また、本発明の色素増感太陽電池の製造装置によれば、各スプレー部をカートが周回移動する構成としているため、非常に少ないスペースで効率的に均一な薄膜を形成することができる。しかも、作用極および対向極の各スプレー部が、それぞれ並置して設けられ、また、集電線材料の塗布場所もスプレー部の出口に設けられ、色素吸着槽までをシンタリング用のベルト炉で搬送しているため、ベルト炉の一方に纏めてスプレー部を設けることができ、作用極用のベルト炉と対向極用のベルト炉を並行して設けることができる。その結果、ベルト炉の多端部側で作用極用の透明基板と対向極用の金属基板とを合流させることができ、両基板の貼り合せ部をその合流位置に形成することにより、非常にコンパクトに製造ラインを形成することができる。その結果、全ての工程を簡単に自動化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図面を参照しながら、本発明の色素増感太陽電池の製法に用いられる薄膜の形成方法、薄膜の形成装置、および色素増感太陽電池の製法とその製造装置について、説明する。
【0021】
本発明の色素増感太陽電池の製法に用いられる薄膜の形成方法および形成装置は、その一実施形態の形成装置の概略構成が上面図で
図1に示されるように、表面に載置される基板31を加熱し得るカート41の表面に基板31を載置し、その基板31を加熱した状態で、第1の移動手段(たとえば第1のプッシャー)43により、複数個纏めて第1の方向X1に間欠的に移動させる。この際、カート41が停止時(
図1に図示されている状態)に隣接する2個のカート41の間の上方に噴霧器42が配置されており、カート41が移動する際(たとえば
図1で、カート41がAの状態からBの状態に移動するとき)に、噴霧器42により基板31の表面に薄膜材料を吹き付ける。そして、カート41が停止しているときは薄膜材料の噴霧を停止する。この噴霧器42による噴霧と停止を2回以上(
図1に示される例では6回:噴霧器42がX1方向に6個ある)繰り返す。その後、カート41の向きを変えないでカート41の移動方向を変えて第2の方向X2にカート41を間欠移動させる。すなわち、
図1の一番上の位置にカート41が来たら、第2の移動手段(第2のプッシャー)により、カート41を同様に移動させることにより、カート41をX2方向に移動させる。この第2の方向においても、第1の方向X1の場合と同様に、カート41の停止時に隣接する2個のカート41の間の上方に噴霧器42が配置され、その噴霧器42により、カート41が移動する際に基板31の表面に前述の薄膜材料と同じ薄膜材料を吹き付け、噴霧器42による噴霧と停止を2回以上繰り返す。
【0022】
詳細に説明すると、まず、ローディング・アンローディング手段47により、空いたカート41に基板31をローディングして、カート41の表面の溝内に基板31を載置する。各カート41には、その側面にスペーサ41aが設けられており、各カート41は、そのスペーサ41aを介して一定の間隔で接触しており、1つのカート41を押すことにより、その列の全てのカート41が移動するようになっている。
図1に示される例では、四角形状の作業台46上で、四角形の各辺に沿ってカート41の移動の向きが90°変るように第1〜第4の移動手段43〜46が設けられている。そのため、ローディング手段47により載置された基板31は、まず第1の方向X1に沿って移動し、カート41が移動しているときに噴霧器42から薄膜材料が基板31の表面に吹き付けられ、1ピッチ、すなわちカート41が1個分移動したら、噴霧器42による吹き付けが停止して、基板温度を所定温度に維持して熱分解などをするようになっている。この噴霧器42による吹き付け(噴霧)の開始および終了を、カート41が停止しているときに噴霧を始め、停止してから噴霧を終了するようにすることにより、噴霧の最初および終了時の噴霧量の不安定な吹き付けを基板表面に受けなくすることができる。なお、基板31をローディングした初期の移動方向では、噴霧器42を取り付けないで、移動時も停止時も噴霧を行わないで、予熱領域とすることが好ましい。
【0023】
このような噴霧器42による吹き付け(噴霧)と熱分解を繰り返し(
図1に示される例では、X1方向に6個の噴霧器42が設けられ、噴霧と熱分解を6回繰り返すことになる。たとえば吹き付けを行いながらの移動を150mm角基板で2秒程度、停止して行う熱分解を18秒程度で、合計20秒で1回の吹き付けと熱分解の1サイクルをすることができる。そして、第1の方向X1に沿った噴霧と停止が終了したら、カート41の向きは変えないで、その移動方向を第2の移動手段44を用いることにより第2の方向X2に変更する。この第2の方向X2でも、第1の方向と同様に、噴霧器42が6個取り付けられ、同様に噴霧と停止を6回繰り返す。そして、第2の方向X2に沿った吹き付けと熱分解を終了したら、第3の移動手段45により再度カート41の移動方向だけを第3の方向X3に変更する。そして、同様の吹き付けと熱分解とを交互に繰り返して、その後、第4の移動手段46により、再度カート41の移動方向だけを90°変更して、同様の吹き付けと熱分解とを繰り返す。ローディング手段47により載置された基板31の動きに関しては、このように第1の方向X1、第2の方向X2、の順でカート41が移動するが、実際に連続的に配置されたカート41を移動させる場合は、第1方向X1にカート41を1個分移動した後に、第4の移動手段46により、
図1の下側の行にあるカート41を第4の方向X4に沿って移動し、その後、
図1の右側の列に並ぶカート41を第3の移動手段45により第3の方向X3に沿って移動し、その後に
図1の上の行にあるカート41の列を第2の移動手段44により1個のカート分移動させることにより、全てのカート41を1個のカート41を移動させることができる。移動することにより空いたカート1個分のスペースを利用する必要があるからである。
【0024】
図1では、カート41の移動を分りやすくするため、カバーケースを省いた平面図で示されているが、
図2に噴霧器42の部分の断面説明図が、また
図3に後述するスプレー部の別の実施形態の斜視説明図が、それぞれ示されるように、カート41の周囲はカバーケース51で被覆され、内部で噴霧時に発生する熱分解ガスや有機溶媒ガスを除去できるように、ブロアなどで吸気された排気パイプ52に接続されている。なお、カート41の内部には図示しないヒータが内蔵されており、その上に載置される基板31の温度を所望の温度にキープできるようにされながら、作業台46に取り付けられたレール53上を移動できるようになっている。この基板31の加熱は、基板31に形成される薄膜や基板31の材料に応じて設定され、たとえばガラスなどの透明基板に透明導電膜を形成する場合には、500℃程度にキープされ、同じ基板31でTiO
2などからなる半導体層を形成する場合には、150℃程度に設定される。
【0025】
噴霧器42は、たとえば基板31の大きさが150mm角の基板の場合、75mm間隔で3個並べて設けられている。この間隔で、たとえば基板31の表面と噴霧器42の噴射口との高さを250mm程度にすることにより、噴霧器42が並ぶ方向ではほぼ均一に成膜することができ、第1の方向X1で、基板31を移動させることにより、一方向の6か所の噴霧器42により、ほぼ均一に薄膜を200nm程度の厚さに形成することができる。さらにカート41の噴霧器42の配列を隣接するカート41の噴霧器42の間隔を補間するように互いにずらして配列することにより、より均一な膜を形成することもできる。そして、4辺に沿って一周した場合に、0.8〜1μm程度の厚さに形成することができる。この厚さは、噴霧する薄膜材料の濃度や、噴霧する回数により所望の厚さに設定することができるが、溶液の濃度を濃くしすぎると膜の均一性が損なわれる。この薄膜の材料としては、たとえばフッ素ドープの酸化スズ(FTO)からなる透明導電膜を形成する場合には、ジブチルチンジアセテート(DVTDA)のエタノール溶液にフッ化アンチモンを溶解させたものを噴霧し、500℃程度で熱分解させることにより、形成することができる。また、TiO
2を形成する場合には、基板温度を150℃程度にして、たとえばチタンテトライソプロポキシドをエタノールで希釈して形成した酸化チタンのナノ粒子に酢酸を加えた酸化チタン粒子の分散溶液を噴霧し、その後450℃程度でシンタリングすることにより形成することができる。
【0026】
カート41の移動は、前述の
図1に示されるように、移動ルートとしてループを形成することにより、薄膜の形成工程の前後で基板31を同じ位置に戻すことができ、作業の自動化を行いやすいと共に、狭い空間で一連の作業を行うことができるため好ましい。とくに、四角形の基板31を4方向に移動させることにより、基板31の4辺に沿ったそれぞれの方向から吹き付けることができるため、薄膜の厚さや成分の均一性という観点からも好ましい。この観点からは、たとえば基板31の形状が5角形とか6角形、または3角形の場合には、それぞれ5方向、6方向、3方向などに移動方向を変えてループを形成することにより、基板31の各辺に沿って吹き付けをすることができ、均一性という観点からは好ましい。
【0027】
しかし、基板の辺数に合せた方向の数だけ移動方向を変える必要は必ずしもなく、規則的に吹き付けの方向を変えることにより、薄膜の均一性を確保することができる。換言すると、単に噴霧器42と基板31とを相対的に移動するというのではなく、基板31に対して少なくとも2方向から完全に吹き付けすることに本発明の特徴がある。その観点からは、たとえば
図3に示されるように、四角形の基板31でも、S字型の移動方向の変化でもよい。
図3では、一部破断してあるが、カバーケース51が設けられ、作業台46およびカート41を移動するレール53も示してある。
【0028】
前述の例では、透明導電膜や酸化物半導体層の成膜を行う例であったが、これらに限らず、吹き付けにより成膜することができる薄膜であれば、これらに限定されない。たとえばIII-V族化合物のn型層とp型層とを積層するような場合でも、同様の方法で形成することができる。吹き付け法によれば、単結晶層を形成することはできないが、真空にしないで大気圧で形成することができるため、非常に簡単で、安価に成膜することができる。
【0029】
次に、この薄膜形成装置を利用し、基板の大きさが150mm角の色素増感太陽電池の製法およびその製造装置について
図4〜7を参照しながら説明をする。
【0030】
色素増感太陽電池は、その一例の構造図が
図7に対向極(対向電極基板)2を除去して作用極(光電極基板)1を上から見た平面説明図および対向極2を設けた状態のB−B断面説明図が示されるように、作用極1および対向極2が一定間隙を介して対向するようにシール剤14により貼着され、その作用極1と対向極2との間隙部に電解質材料16が封入される構造になっており、太陽光により光電変換層15の色素内で励起された電子が光電変換層15内の半導体である酸化チタンなどの多孔質金属酸化物薄膜に注入され、薄膜内を移動して透明導電膜12に伝達され、さらに、作用極電極17を経て負荷を含む外部回路を介して対向極2の対向極電極25に到達することにより電流が流れて電池として作用する。
【0031】
まず、作用極1を形成するため、たとえばソーダライムガラス、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、ネオセラムなどからなる透明基板11(
図7参照)のストックホルダから2次元移動可能なロボット61により、真空吸着などの方法により、透明基板11を吸着して移動カート41上にローディングする。このローディングは、たとえば
図5に示されるように、2次元移動が可能なロボットにより真空吸着して、カート41のホットプレートの溝内に透明基板11をセッティングする。この透明基板11をカート41にローディングするタイミングは、次に述べる透明導電膜12の材料を吹き付ける際のカート41の1ピッチの移動のタイミングと同期させている。
【0032】
そして、FTO用のSPD室62内に移送し、前述の薄膜形成方法により、たとえばフッ素ドープの酸化スズ(FTO)膜からなる透明導電膜12(
図7参照)を、ジブチル錫ジアセテートをイソプロピルアルコールに溶かし、これに所定量のフッ化アンモニウム水溶液を添加した溶液を吹き付けることにより形成する。このとき、噴霧器42のノズルは固定したままで、基板温度を500℃±20℃になるように制御し、前述のように、吹き付け方向は透明基板11の4方向からになるように、カート41の向きを4方向に変えて吹き付けを行う。この透明導電膜12としては可視光透過率が高く、シート抵抗の低いフッ素ドープ酸化スズ(FTO)膜が好ましいが、この例に限らず、酸化インジウム・スズ(ITO)膜あるいはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)膜のうちの少なくとも一つを含む膜から選ぶことができ、その膜に応じて、吹き付ける噴霧液を変えることができる。
【0033】
次に、マスキング・アンマスキングのステージ64で透明導電膜12の上に図示しないメタルマスクを被せて、光電変換層15(
図7参照)の形成場所のみを露出させ、たとえばTiO
2膜からなる酸化物半導体層を、TiO
2用SPD室63内で前述の薄膜形成法と同様に形成する。すなわち、基板温度を150±10℃に設定し、たとえばチタンテトライソプロポキシドをエタノールで希釈し、これに所定量の水を加えて加熱煮沸することにより平均粒径7nmの酸化チタンのナノ粒子を得たものに酢酸を加えた酸化チタン粒子の分散溶液を、前述の噴霧器42により吹き付けた。この場合も、各方向で6回、4方向からの吹き付けにより、厚さが10±1μm厚に形成した。TiO
2膜は、n型酸化物半導体層で、色素を吸収し、DSCの活性層として作用する。多孔質半導体(酸化物半導体)膜としては酸化チタン(TiO
2)の他に、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)あるいは酸化ニオブ(Nb
2O
5)などを使用することもできる。また、このメタルマスクを被せ、または後述する取り外しの場合も、基板のローディングと同様に、
図5に示されるようなロボットにより行うことができる。このマスキングや次のアンマスキングのタイミングも前述の透明基板11のローディングのタイミングと合せている。
【0034】
次に、マスキング・アンマスキングのステージ64でマスクを除去し、SPD室63の近傍に設けられた金属ペースト塗布ステージ65に透明基板11を移動して、集電線13(13a、13b:
図7参照)とする銀グリッド線を、光電変換層15の周囲および透明基板11の周囲に0.5±0.1mmの幅で形成する。この銀グリッド線の形成は、たとえば
図6に示されるように、複数のディスペンサ54を並べたマルチ・ノズル・ディスペンサ・マシンを用いて、所定の場所に、たとえば銀ペーストを±0.1mmの精度で塗布する。この銀グリッド船の塗布も、透明導電膜11の形成のためのカート41の1ピッチ移動のタイミングと同期するように、同じ時間、たとえば30秒で行う。この集電線13は、透明導電膜(FTO)12の抵抗損を減じて、光で発生したキャリアをより効率的に集めるのに寄与する。
【0035】
次に、カート41から、TiO
2膜および銀グリッド線を形成した基板を取り出しベルト炉66内に移動し、TiO
2膜および銀ペーストのシンタリング(焼結)を行う。このベルト炉66は、入口が100℃程度で、出口が520℃程度にリニアに温度が上昇する炉で、たとえば約13m程度の長さで、30分程度の時間をかけてシンタリングを行う。シンタリング後の集電線13の厚さは20μm以下で、比抵抗が0.03Ω・cm以下に、また、TiO
2膜は、この熱処理により、TiO
2−TiO
2およびTiO
2−FTOを形成し、10±1μmの厚さになる。
【0036】
ベルト炉66を終了した透明基板11は、カート41からベルトに移送され、ベルトで搬送されながら冷却領域67を進行させることにより、100℃以下に自然冷却され、円形状色素吸着槽68に達する。ここで、図示しないロボットにより、前述の
図5に示されるローディング装置と同様の装置により、透明基板11をベルトから色素吸着槽68に移す。この色素吸着槽68は、内部が透明基板11を1枚づつ立て掛けられる小部屋に仕切られており、順次回転するように形成されている。この小部屋は、たとえば540個、円周方向に沿って形成されており、3時間で1周するように形成されている。すなわち、色素吸着は、基板1枚当り3時間行われるが、1分間に3枚の透明基板11の色素吸着が完了し、スプレー(SPD)室で間欠移動する1枚の基板の移動時間と符合させてある。換言すると、色素吸着槽68からの透明基板11の取り出しおよび次の透明基板11の色素吸着槽68への装着は、20秒ごとに行われる。色素としては可視光および赤外光領域に吸収スペクトルを有するルテニウム系色素、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クマリン系色素などを使用することができ、これらの色素をアセトニトリルとt-ブチルアルコールの50:50混合溶液などの溶媒に分散させた液が色素吸着槽68内に充填されている。この色素吸着は、DSCの光感知活性層で、励起電子を発生させ、TiO
2膜に移送する働きをする。このTiO
2などの酸化物半導体層へのこの色素吸着により、光電変換層15(
図7参照)になる。
【0037】
色素吸着が行われた透明基板11は、再度ベルトコンベヤで搬送されて表面洗浄ステージ69で洗浄を行う。これらの作業も、前述のカート41を1ピッチ移動させるタイミング(前述の例では20秒)と合せられている。この洗浄は、ロボットによりワイピングパッドを回転しながら行い、貼着領域は清浄にされ、乾燥した色素、TiO
2、その他の不純物が除去されている。
【0038】
その後、シール剤14(
図7参照)のシール剤塗布ステージ70で、たとえば紫外線硬化樹脂を塗付する。このシール剤14としては、紫外線硬化樹脂の他にもエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、またはアイオノマー樹脂などを使用することができる。このシール剤14は、両者の接着のみではなく、集電線13を電解質材料16から保護する機能も有しているため、集電線13の上面だけではなく、その側面にも完全に被覆するように集電線13に沿って塗布されている。このシール剤14は、電解質材料16の蒸発、および水分や大気中の不純物や電解質材料16が集電線13と接触するのも防止している。この紫外線硬化樹脂の塗布は、たとえば
図6に示されるような多ノズルディスペンサでノズルを3本にしたものを使用することができる。この作業も、前述のタイミングに合せられる。
【0039】
以上の各工程で作用極(光電極)1(
図7参照)の形成が終了する。この作用極1の形成と並行して行われるが、対向極2の製造について、次に説明をする。
【0040】
まず、たとえば
図5に示されるようなローディング・アンローディング装置71を用いて、金属基板21(
図7参照)をカート41のホットプレート上にローディングする。そして、金属基板21に電解質材料16の注入用の注入孔23(
図7参照)をホールドリリング装置74で穿孔する。この注入口23は、前述の集電線13で仕切られた空間ごとに形成する必要があるが、
図7に示されるように、集電線13で仕切られる空間が1つに繋がっている場合、すなわち光電変換層15が1つに連続するように集電線13が形成されていれば、注入口23は1個でも電解質材料16を全体に注入することができる。このローディングや、ホールドリリングのタイミングも、前述のカート41の1ピッチP(
図1参照)の移動のタイミング(20秒)と合せられる。
【0041】
その後、カート41を移動してFTOスプレー室72に移動させる。FTOスプレー室72では、前述の透明導電膜11の形成方法で説明したように、カート41の間欠移動によるFTO材料の吹き付けと加熱分解とを交互に一方向で繰り返し、その後、カート41の向きを変えないで移動方向のみを変えて同様に繰り返すことにより形成される。
図4に示される例では、4方向で噴霧と熱分解とを繰り返して、元の位置に戻る構成になっている。このFTO室での導電層22の形成は、作用極側の透明導電膜12と全く同様に形成することができるが、ピンホールやクラックがなくシート抵抗を10Ω/□以下に形成される。この導電層22は、金属基板21を用いる場合には、導電層としての意味合いは小さくなるが、電解質材料16に対する腐食を防止することができ、金属基板21の材料が限定されなく、安価なものを使用することができる。この金属基板21としては、たとえばクロム、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステン、モリブデン、チタンあるいは亜鉛などの高導電性の基板を用いることができる。また、導電層22としては、FTO膜の他に、チタン、タングステン、バナジウム、ジルコニウムなどの高耐食性膜などを使用することができる。
【0042】
次に、マスキング75を行う。このマスキングは、貼着領域に白金などが付着しないで、清浄な状態を維持するようにするもので、メタルマスクを被せることにより行う。すなわち、光電極側のTiO
2膜を形成する前と同様に、2次元ロボットを用いて、
図5に示されるのと同様の装置でメタルマスクを吸引して、金属基板21上に被せることにより行う。このメタルマスクの配置の精度は、±0.1mmの精度で行う。
【0043】
そして、白金スプレー室73で前述の薄膜の形成方法と同様の方法で金属膜の例として、白金膜をスプレーにより形成する。この白金膜は、触媒として利用するもので、対向極電極25から効率的に電子が移動するのを助ける。そのため、厚くする必要はなく、40〜100nm程度の厚さで、むしろ途切れて粒状になった方が、表面積が大きくなって好ましい。この白金膜の形成は、150±10℃の温度で行う。その後、マスキング室75でマスクを除去して、ベルト炉74でシンタリングを行う。このマスキングやマスク除去も、前述のタイミングに合せられる。このベルト炉76は、450℃程度に設定されており、ベルトで移動しながら30分ぐらいの熱処理を行う。この熱処理により、導電層22上に、アイランドが形成され、触媒硬化を助長する。そして、ベルト炉76を終了したらベルト移動により冷却領域77を進行してほぼ室温まで冷却する。
【0044】
以上の工程で対向極2(
図7参照)を形成することができる。そして、組立ステージ81で、2次元位置決めロボットにより、シール剤14が塗布された作用極1と対向極2(
図7参照)とを重ね合せる。この両者の重ね合わせの精度も±0.2mmの精度で行う。そして、紫外線硬化樹脂の硬化ステージ82で、紫外線を照射して硬化させることにより、紫外線の照射時間は、ランプの紫外線エネルギーをモニターする実時間により調整される。ついで、電解質材料注入ステージ83の2次元の位置決めロボットで電解質材料16の注入を行う。電解質材料注入口23が複数個ある場合には、マルチノズルを有する注入装置を用いて、複数の注入口から同時に電解質材料(電解液)16の注入を行う。この電解質材料16は、対向極電極25からの電子を作用極1のTiO
2膜上の色素分子に移動させる重要な機能を有している。そして、注入口23をカバーガラス24などにより封止することにより、DSCモジュールが完成(DSCモジュール完成ステージ84)し、ベルトコンベヤから降ろして製造作業が完了する。電解質材料16は、たとえばアセトニトリル、γ−ブチロラクトン、メトキシプロピオニトリルあるいはプロピレンカーボネートなどの溶媒にヨウ化リチウム、t−ブチルピリジン、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウムまたはヨウ化メチルプロピルイミダゾリウムなどを溶解したものを使用することができる。
【0045】
以上のように、本発明の色素増感太陽電池の製造装置は、作用極1用の透明導電膜(FTO)12用のスプレー室62と、光電変換層(TiO
2膜)15用スプレー室63を並置して設け、また、対向極2用の導電層(FTO)22用スプレー室72と白金(Pt)用スプレー室73とをそれぞれ隣接させて配置すると共に、ベルト炉66、76で搬送しながらシンタリングを行う構成としているため、製造構造の全ての広さは、
図4の横方向の長さL1が約11m、
図4で縦方向の長さL2が約17mというコンパクトな配置でレイアウトすることができた。さらに、基板1枚ごとの作業時間、たとえば各スプレー室での基板の間欠移動の1サイクル(1回の移動と停止の時間)、マスキング、アンマスキング、色素吸着槽からの取り出しと挿入などの、1枚あたりの作業時間を、たとえば20秒などのように、全て統一させることにより、光電極の進行と対向電極2の進行を完全に同期させることができ、基板のローディングから電解質材料の注入およびその封止の最終工程までを完全に自動化することができる。