特許第5963937号(P5963937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5963937架橋されたポリ乳酸を用いたボード及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963937
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】架橋されたポリ乳酸を用いたボード及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20160721BHJP
   C08L 97/02 20060101ALI20160721BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20160721BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20160721BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20160721BHJP
   B27N 3/00 20060101ALI20160721BHJP
   E04F 15/10 20060101ALI20160721BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20160721BHJP
【FI】
   C08L67/04ZBP
   C08L97/02
   C08K5/14
   C08J3/24 Z
   C08K5/3492
   B27N3/00 D
   E04F15/10 104A
   !C08L101/16
【請求項の数】14
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-501557(P2015-501557)
(86)(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公表番号】特表2015-514139(P2015-514139A)
(43)【公表日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】KR2012010913
(87)【国際公開番号】WO2013147392
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年9月22日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0032395
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509286787
【氏名又は名称】エルジー・ハウシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100152261
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】ファン・チョンジェ
(72)【発明者】
【氏名】カン・チャンウォン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・チヒャン
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−200470(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/001625(WO,A1)
【文献】 特開2005−076025(JP,A)
【文献】 特開2003−119391(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101020781(CN,A)
【文献】 特開2009−018442(JP,A)
【文献】 特開2005−262559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L67/00−67/08
C08L97/00−97/02
C08L101/16
C08K5/00−13/08
C08J3/24
B27N3/00−3/28
E04F15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋されたポリ乳酸樹脂および木繊維を含み、
前記木繊維は、前記の架橋されたポリ乳酸樹脂100重量部に対して50重量部〜150重量部含まれ、
前記の架橋されたポリ乳酸樹脂は、結晶ポリ乳酸樹脂と非晶質ポリ乳酸樹脂を混合したポリ乳酸樹脂と架橋助剤のポリ乳酸樹脂混合物を熱開始架橋反応または放射線照射を通じて架橋し、前記木繊維は、見かけ比重が100kg/m〜500kg/m、水分含量が3%以下であることを特徴とするボード。
【請求項2】
前記ポリ乳酸樹脂は、L―ポリラクチド、D―ポリラクチド、L,D―ポリラクチドから選ばれた1以上を含むことを特徴とする請求項1に記載のボード。
【請求項3】
ポリ乳酸樹脂、架橋剤、架橋助剤を混合してポリ乳酸樹脂混合物を作るステップ;
前記ポリ乳酸樹脂混合物に対して熱開始架橋反応を起こして架橋させるステップ;
前記の架橋されたポリ乳酸樹脂と、前記の架橋されたポリ乳酸樹脂100重量部に対して50重量部〜150重量部の木繊維を含むボード形成用組成物を製造するステップ;および
前記ボード形成用組成物を熱成形した後、後処理してボードを形成するステップ;
を含むことを特徴とするボードの製造方法。
【請求項4】
ポリ乳酸樹脂、架橋助剤を混合してポリ乳酸樹脂混合物を作るステップ;
前記ポリ乳酸樹脂混合物に対して電磁線照射架橋反応を起こして架橋させるステップ;
前記の架橋されたポリ乳酸樹脂と、前記の架橋されたポリ乳酸樹脂100重量部に対して50重量部〜150重量部の木繊維を含むボード形成用組成物を製造するステップ;および
前記ボード形成用組成物を熱成形した後、後処理してボードを形成するステップ;
を含むことを特徴とするボードの製造方法。
【請求項5】
前記ポリ乳酸樹脂は、L―ポリラクチド、D―ポリラクチド、L,D―ポリラクチドから選ばれた1以上を含むことを特徴とする請求項又はに記載のボードの製造方法。
【請求項6】
前記木繊維は、見かけ比重が100kg/m〜500kg/m、水分含量が3%以下であることを特徴とする請求項又はに記載のボードの製造方法。
【請求項7】
前記架橋剤は、ポリ乳酸100重量部に対して0.01重量部〜10.0重量部含まれ、
t―アミルパーオキシ―2―エチルヘキサノエート、1,1―ジ(t―ブチルパーオキシ)―3,3,5―トリメチルシクロヘキサン、ジクミルパーオキサイド(DCP)、2,5―ジメチル―2,5―ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、t―ブチル―(2―エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネートから選ばれる1以上であることを特徴とする請求項に記載のボードの製造方法。
【請求項8】
前記架橋助剤は、ポリ乳酸100重量部に対して0.01重量部〜10.0重量部含まれ、トリアリルイソシアヌレートであることを特徴とする請求項又はに記載のボードの製造方法。
【請求項9】
前記ポリ乳酸樹脂混合物は、加工助剤をさらに含むことを特徴とする請求項又はに記載のボードの製造方法。
【請求項10】
前記加工助剤は、アクリル系共重合体であることを特徴とする請求項に記載のボードの製造方法。
【請求項11】
前記熱開始架橋反応時の温度は、120℃〜200℃であることを特徴とする請求項に記載のボードの製造方法。
【請求項12】
前記電磁線照射時のエネルギー量は、10kGy〜100kGyであることを特徴とする請求項に記載のボードの製造方法。
【請求項13】
請求項1又は2に記載のボードを含む多層床材。
【請求項14】
請求項またはに記載の製造方法を含む多層床材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋されたポリ乳酸を用いたボード及びその製造方法に関するものであり、より詳しくは、架橋されたポリ乳酸と木繊維を含むことにより、製造過程で加工性に優れるだけでなく、加工後の耐水性に優れたボード及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル(PVC)等の石油系樹脂を使用したボードは、住宅、マンション、アパート、オフィス、又は店舗等の建築物で広く使われている。
【0003】
前記のようなボードは、ポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂を使用して押出またはカレンダリング方式等で製造される。ところが、原料が限定されている資源である原油等から全量得られるため、石油資源の枯渇等によって今後原材料の需給困難等の問題が発生すると予想されている。
【0004】
また、近年高くなってきている環境問題に対する関心を考慮しても、ポリ塩化ビニル(PVC)系ボードは、有害物質を排出し易く、廃棄時にも環境に負担を与えるという問題点がある。
【0005】
一方、既存のボードとしては、HDF(High Density Fiberboard)を用いて製造された強化床材があるが、これらは木質材料を高温で解繊して得られる木繊維に接着剤を塗布して成形、熱圧を通じて製造される木質板状製品であり、複雑な機械加工等が可能なため室内建築の仕上げ用や家具の全分野に亘って広く使用されている。
【0006】
しかし、前記接着剤は、主に尿素―ホルムアルデヒド樹脂またはメラミン―尿素―ホルムアルデヒド樹脂であって接着力に優れ、安価であるが、硬化後にも、目、鼻、皮膚を刺激するだけでなく、アトピー、気管支喘息を誘発し得、長期間吸い込み続けると癌を誘発し得るホルムアルデヒドを徐々に放出する。それ以外にも、メラミンは過量摂取すると、腎臓結石による死亡にまで至り得る。また、化石資源を原料に製造されたメラミン、尿素、ホルムアルデヒド等は、化石資源の枯渇によって持続的な価格上昇をもたらすだけでなく、製造過程で多くのエネルギーを消耗すると同時に、大量の温室ガスを放出し、焼却方式で廃棄すると、環境ホルモン、有毒ガス等、人体に有害な物質を多く放出する。
【0007】
このような問題点により、近年では植物資源から抽出、合成されたポリ乳酸(Polylactic Acid or Polylactide)樹脂が前記の石油系樹脂を代替できる手段として脚光を浴びている。ポリ乳酸は、再生可能な植物資源(トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ等)から抽出したでん粉を発酵させて得た乳酸を重合させて製造した樹脂であり、COが低減されるだけでなく、非再生エネルギーを節減できる環境にやさしい樹脂である。韓国特許公開公報第10―2008―0067424号を始めとする多数の先行文献には、このようなポリ乳酸樹脂を使用したボードが開示されている。
【0008】
しかし、このようなポリ乳酸は、一定の湿度および温度条件で簡単に加水分解されるため、ポリ乳酸樹脂で製造されたボードは、既存のPVC樹脂で製造されたボードに比べて、熱合板加工時に加工設備にくっ付いたり、高温加工時に粘弾性が不足して多層に積層する加工作業が容易でないという短所があった。よって、耐水性および加工性の向上が非常に重要な課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第10―2008―0067424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、架橋されたポリ乳酸と木繊維を含むことにより、製造過程で加工性に優れるだけでなく、加工後の耐水性に優れたボード及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための本発明の一実施例にかかるボードは、架橋されたポリ乳酸樹脂および木繊維を含み、前記木繊維は、前記の架橋されたポリ乳酸樹脂100重量部に対して50重量部〜150重量部含まれ、前記の架橋されたポリ乳酸樹脂は熱開始架橋反応または放射線照射を通じて架橋されたことを特徴とする。
【0012】
また、前記目的を達成するための本発明の一実施例にかかるボードの製造方法は、ポリ乳酸樹脂、架橋剤、架橋助剤を混合してポリ乳酸樹脂混合物を作るステップ;前記ポリ乳酸樹脂混合物に対して熱開始架橋反応を起こして架橋させるステップ;前記の架橋されたポリ乳酸樹脂と、前記の架橋されたポリ乳酸樹脂100重量部に対して50重量部〜150重量部の木繊維を含むボード形成用組成物を製造するステップ;および前記ボード形成用組成物を熱成形した後、後処理してボードを形成するステップを含むことを特徴とする。
【0013】
また、前記目的を達成するための本発明のまた別の一実施例にかかるボードの製造方法は、ポリ乳酸樹脂、架橋助剤を混合してポリ乳酸樹脂混合物を作るステップ;前記ポリ乳酸樹脂混合物に対して電磁線照射架橋反応を起こして架橋させるステップ;前記の架橋されたポリ乳酸樹脂と、前記の架橋されたポリ乳酸樹脂100重量部に対して、50重量部〜150重量部の木繊維を含むボード形成用組成物を製造するステップ;および前記ボード形成用組成物を熱成形した後、後処理してボードを形成するステップを含むことを特徴とする。
【0014】
一方、前記目的を達成するために、本発明の一実施例にかかる多層床材は、前記の本発明のボードを含むことを特徴とする。
【0015】
また、前記目的を達成するために、本発明の一実施例にかかる多層床材の製造方法は、前記の本発明のボードの製造方法を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるボードは、架橋を通じて改質されたポリ乳酸樹脂を使用することにより、溶融強度が増加して熱加工が容易で、加工後の製品において、耐水性、引張強度、伸率等の物理的性質が向上する。
【0017】
本発明にかかる架橋されたポリ乳酸樹脂を使用したボードは、バインダーとして一般的に使用する石油資源基盤のPVCの代わりに、植物資源基盤のポリ乳酸樹脂を使用することにより、石油資源の枯渇による原材料需給問題を解決することができる。
【0018】
また、本発明にかかる架橋されたポリ乳酸樹脂を使用したボードは、製造時にHCl等の環境有害物質の排出が少なく、廃棄が容易で環境にやさしいという長所がある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付の図面と併せて詳しく後述してある実施例を参照すると明確になると考える。しかし、本発明は以下で開示する実施例に限定されるのではなく、相違する多様な形態で具現でき、単に本実施例は本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供するものであり、本発明は請求項の範疇によって定義されるだけである。明細書全体に亘って同一参照符号は同一構成要素を指す。
【0020】
以下、本発明にかかるポリ乳酸樹脂を使用したボード形成用組成物、これを用いて形成したボード、その製造方法について詳しく説明する。
【0021】
[ボード]
本発明の一実施例にかかるボードは、架橋されたポリ乳酸樹脂および木繊維を含み、前記木繊維は前記の架橋されたポリ乳酸樹脂100重量部に対して50重量部〜150重量部含まれ、前記の架橋されたポリ乳酸樹脂は、熱開始架橋反応または放射線照射を通じて架橋されたことを特徴とする。
【0022】
先ず、本発明のボードの主材料として、前記の架橋されたポリ乳酸樹脂は、ラクチド又は乳酸の熱可塑性ポリエステルが架橋されたものであり、製造例を挙げると、トウモロコシ、ジャガイモ等から抽出したでん粉を発酵させて製造される乳酸を重合させて製造することができる。前記のトウモロコシ、ジャガイモ等は、いくらでも再生できる植物資源のため、これらから確保できるポリ乳酸樹脂は、石油資源の枯渇による問題に効果的に対処することができる。
【0023】
また、ポリ乳酸樹脂は、使用または廃棄過程でHCl等の環境有害物質の排出量がポリ塩化ビニル(PVC)等の石油基盤素材に比べて遥かに少なく、廃棄時にも自然環境の下で容易に分解できるという環境にやさしい特性を持つ。
【0024】
前記ポリ乳酸樹脂は、結晶質ポリ乳酸(c―ポリ乳酸)樹脂と非晶質ポリ乳酸(a―ポリ乳酸)樹脂に分けることができる。このとき、結晶質ポリ乳酸樹脂の場合は可塑剤がボードの表面に上がってくるブリーディング(bleeding)現象が発生し得るのに対し、非晶質ポリ乳酸樹脂を使用する場合は、ブリーディング現象は防げるが、寸法安定性および熱安定性が弱いという短所があるため、前記結晶質および非晶質樹脂を混合して使用することが最も好ましい。
【0025】
ここで、前記ポリ乳酸樹脂は、L―ポリラクチド、D―ポリラクチド、L,D-ポリラクチドから選ばれた1以上を含むことが好ましい。
【0026】
一方、本発明のボードに含まれる材料として、木繊維の見かけ比重は100kg/m〜500kg/mであることが好ましく、これに制限されるのではなく、水分含量は3.0%未満であることが好ましい。見かけ比重が100kg/m未満だと投入が難しいという問題があり、500kg/m以上だと混合が難しいという問題がある。水分含量が3.0%以上だと加工過程で水蒸気が発生し不都合があるだけでなく、PLAの加水分解が起こる可能性が高い。
【0027】
一方、本発明はボードを含む多層構造の床材を含むが、ここでボードは前記で説明した通り、架橋されたポリ乳酸および木繊維を含むことにより、溶融強度が増加して熱加工が容易で、加工後の製品において、耐水性、引張強度、伸率等の物理的性質が向上する。
【0028】
[ボードの製造方法]
【0029】
本発明の一実施例にかかるボードの製造方法は、ポリ乳酸樹脂、架橋剤、架橋助剤を混合してポリ乳酸樹脂混合物を作るステップ;前記ポリ乳酸樹脂混合物に対して、熱開始架橋反応を起こして架橋させるステップ;前記の架橋されたポリ乳酸樹脂と、前記の架橋されたポリ乳酸樹脂100重量部に対して50重量部〜150重量部の木繊維を含むボード形成用組成物を製造するステップ;および前記ボード形成用組成物を熱成形した後、後処理してボードを形成するステップを含むことを特徴とする。
【0030】
本発明のまた別の一実施例にかかるボードの製造方法は、ポリ乳酸樹脂、架橋助剤を混合してポリ乳酸樹脂混合物を作るステップ;前記ポリ乳酸樹脂混合物に対して、電磁線照射架橋反応を起こして架橋させるステップ;前記の架橋されたポリ乳酸樹脂と、前記の架橋されたポリ乳酸樹脂100重量部に対して50重量部〜150重量部の木繊維を含むボード形成用組成物を製造するステップ;および前記ボード形成用組成物を熱成形した後、後処理してボードを形成するステップを含むことを特徴とする。
【0031】
先ず、架橋されたポリ乳酸を得るために、ポリ乳酸100重量部に対して、架橋剤または架橋助剤0.01重量部〜10.0重量部を含むことが好ましい。架橋剤または架橋助剤の含量が0.01重量部未満だと架橋反応が開始されないという問題があり、架橋剤の含量が10.0重量部以上だと架橋度が高すぎるため熱硬化性が表れて加工が難しいという問題がある。
【0032】
前記熱開始による架橋剤としては、有機過酸化物が好ましいが、具体的には、t―アミルパーオキシ―2―エチルヘキサノエート、1,1―ジ(t―ブチルパーオキシ)―3,3,5―トリメチルシクロヘキサン、ジクミルパーオキサイド(DCP)、2,5―ジメチル―2,5―ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、t―ブチル―(2―エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート等を挙げることができるが、これに制限されるのではない。そして、前記架橋剤にはトリアリルイソシアヌレート(TAIC)等の架橋助剤も含まれ得る。
【0033】
前記電磁線照射による架橋助剤としては、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等を挙げることができるが、これに制限されるのではない。
【0034】
次に、本発明のボード形成用組成物に含まれる主要材料として木繊維は、前記組成物中ポリ乳酸100重量部に対して50重量部〜150重量部含まれることが好ましい。木繊維の含量が50重量部未満だと裁断等の加工が困難なだけでなく、価格が上昇して商業化が難しいという問題があり、150重量部以上だと熱成形が困難なだけでなく、反り強度等が弱くボードとしての使用が困難だという問題がある。
【0035】
ここで、前記木繊維は、見かけ比重は100kg/m〜500kg/mであることが好ましく、これに制限されるのではなく、水分含量は3.0%未満であることが好ましい。見かけ比重が100kg/m未満だと投入が困難だという問題があり、500kg/m以上だと混合が困難だという問題がある。水分含量が3.0%以上だと加工過程で水蒸気が発生するため不都合があるだけでなく、PLAの加水分解が起こる可能性が高い。
【0036】
一方、本発明のボード形成用組成物は、加工助剤をさらに含むことができる。
【0037】
前記加工助剤として用いられるアクリル系共重合体は、PLA樹脂の溶融強度を補強して、カレンダリング、プレス加工を可能にした。本発明に適用できるアクリル系共重合体は、商業的に、PA828(LG化学製造)、BiostrengthTM700(Arkema製造)、BPMS―255,265(Rohm and Haas製造)、Biomax(R)Strong100,120(Dupont製造)等を提示できる。
【0038】
前記加工助剤の含量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.1重量部〜50重量部であることが好ましい。含量が0.1重量部未満だと溶融強度補強効果が十分ではなく、50重量部以上だと溶融強度補強幅が小さいだけでなく、製造単価が上昇するという問題がある。
【0039】
ポリ乳酸を架橋するために、バンバリー(banbury)、ニーダー(kneader)、または押出器(extruder)でポリ乳酸100重量部に架橋剤または架橋助剤0.01重量部〜10.0重量部を添加した後、120℃〜200℃で熱開始架橋反応または10kGy〜100kGy電磁線照射を用いる。
【0040】
上で説明した本発明の架橋されたポリ乳酸樹脂および木繊維を含むボード形成用組成物の各原料を混合および混錬することにより、ボード形成用組成物を製造する。前記において、原料の混合および混錬工程は、例えば、液状または粉末状の原料を、スーパーミキサー、押出器、混錬器(kneader)、2本または3本ロール等を使用して行うことができる。また、原料の混合および混錬工程では、より効率的な混合のために、配合された原料をバンバリーミキサー(banbury mixer)等を使用して120℃〜200℃程度の温度で混錬し、混錬された原料を120℃〜200℃程度の温度で2本ロール等を使用して、1次および2次ミキシングする方式のように、前記混合および混錬工程を多段階で繰り返し行うこともできる。このとき、各原料に対する説明は前記の通りのため、ここでは省略する。
【0041】
次に、前記ボード形成用組成物を120℃〜200℃でボード形態に熱成形する。このとき、熱成形時の温度は120℃〜200℃であることが好ましいが、熱成形温度が120℃未満だと熱成形が困難だという問題があり、200℃以上だと樹脂が炭化するという問題があるためである。
【0042】
熱成形は、通常の当業者に一般的な方法であって特に制限されなく、例えば、逆L字型4本ロールカレンダー等の通常の装置を使用することもできる。
【0043】
一方、本発明は、多層構造の床材の製造方法を含むが、ここで、多層構造の床材の製造方法は、前記のボードの製造方法を含むものであり、前記の架橋されたポリ乳酸樹脂100重量部に対して、木繊維50重量部〜150重量部を含む組成物でボードを熱成形するステップ;サンディング(sanding)、表面処理、熟成および裁断するステップ;を含むことを特徴とする。
【0044】
また、本発明の多層構造の床材の製造方法は、前記の架橋されたポリ乳酸を含む組成物でボードの透明層、印刷層、裏地層を製造するステップ;前記の架橋されたポリ乳酸100重量部に対して、木繊維50重量部〜150重量部を混合して得た組成物でベース(base)層を製造するステップ;前記ベース層上部と下部にそれぞれ印刷層および裏地層を熱合板するステップ;前記印刷層上に印刷するステップ;前記の印刷された印刷層に透明層を合板するステップ;前記透明層上に表面処理剤をコーティングするステップ;熟成、裁断および包装するステップ;を含み得る。
【0045】
前記のような本発明のボードの製造方法によると、加工性に優れるため、作業が非常に容易だという効果があり、それによる製品が耐水性に優れるという効果がある。
【0046】
[実施例および比較例によるボードの製造]
【0047】
以下では、本発明の好ましい実施例によるボードの製造例、及び比較例による製造例を提示する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示するものであり、如何なる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈してはならない。
【0048】
ここに記載していない内容は、本技術分野における熟練者であれば十分に技術的に類推できるもののため、その説明は省略する。
【0049】
[実施例]
【0050】
ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、熱開始架橋剤2,5―ジメチル―2,5―ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン1.0重量部、及び架橋助剤TAIC0.5重量部を添加した後、160℃〜200℃の2軸押出器(twin extruder)を用いて架橋されたポリ乳酸を製造した。
【0051】
ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、架橋助剤TAIC1.0重量部を添加した後、160℃〜200℃の2軸押出器を用いて架橋助剤をポリ乳酸に十分に分散させた。前記架橋助剤を含有したポリ乳酸を10kGy〜100kGy電磁線を照射して、架橋されたポリ乳酸を製造した。
【0052】
前記の熱開始または電磁線照射方法で架橋されたポリ乳酸を含む熱成形組成物で120℃〜200℃で押出またはカレンダー(calender)方式によって多層ボードの透明層、印刷層および裏地層を製造し、100重量部に木繊維80重量部を混合したものを含む組成物で120℃〜200℃でカレンダー方式によって多層ボードのベース層またはチップスルーボードを製造した。
【0053】
[比較例]
【0054】
架橋されたポリ乳酸の代わりに、架橋されていないポリ乳酸を使用したという点を除いては、実施例と同様の条件でボードを製造した。
【0055】
[評価]
【0056】
実施例と比較例の積層加工性および物性(引張強度)に対する評価結果は、下記表1に示した通りである。
【0057】
【表1】
耐水性評価基準:60℃、90%湿度で96時間放置前後の引張強度の低下率
【0058】
前記評価結果の通り、本発明によるボードは、ポリ乳酸を架橋させることにより、溶融強度が増大して比較的高い加工温度で加工が可能で、製品の耐水性も優れることが分かる。
【0059】
以上では、本発明の実施例を中心に説明したが、これは例示的なものに過ぎなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する技術者であれば、これにより多様な変形および均等な他実施例が可能だという点を理解すると考える。よって、本発明の真正な技術的保護範囲は、以下に記載する特許請求の範囲によって判断しなければならない。