特許第5963953号(P5963953)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5963953-皮膚透過性ペプチド 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963953
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】皮膚透過性ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20160721BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 47/42 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 47/48 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C07K7/08ZNA
   C12N15/00 A
   A61K47/42
   A61K45/00
   A61K47/48
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-514923(P2015-514923)
(86)(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公表番号】特表2015-519064(P2015-519064A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】KR2013004849
(87)【国際公開番号】WO2013180537
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2014年12月1日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0058752
(32)【優先日】2012年5月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リ,ソル フン
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/064429(WO,A2)
【文献】 Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2011年,vol.108, no.38,pp.15816-15821
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/00−7/66
C12N 15/00−15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜10からなる群から選択されるアミノ酸配列からなり、皮膚残留性を示すペプチド。
【請求項2】
皮膚透過性を示すものである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
カーゴ(cargo)を経皮伝達するためのものである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
C末端がアミド化されたものである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
請求項1に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド
【請求項6】
配列番号11〜20からなる群から選択されるヌクレオチド配列からなる請求項5に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のペプチドを含む、経皮伝達用組成物。
【請求項8】
カーゴをさらに含むものである、請求項7に記載の経皮伝達用組成物。
【請求項9】
前記カーゴが、前記ペプチドに共有結合によって結合しているか、又は前記ペプチドに共有結合以外の相互作用によって結合している請求項8に記載の経皮伝達用組成物。
【請求項10】
皮膚外用剤の形態を有する、請求項7に記載の経皮伝達用組成物。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれかに記載のペプチド、及びカーゴを含む、ペプチド-カーゴ複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚透過性ペプチドに関し、より具体的には、皮膚を透過して薬物を伝達することのできる分離されたペプチド、前記ペプチドをコードする分離されたポリヌクレオチド、前記ペプチドを含む経皮伝達用組成物、並びに前記ペプチド及びカーゴを含むペプチド−カーゴ複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚を介して薬物を提供するものは、その使用利便性により、鎮痛パッチ、禁煙パッチ、又は妊娠調節剤など、様々な分野において多様な形態で使用されてきた。これらの皮膚を通過する薬物は、主に皮膚を介して体循環系に伝達するためのものであるが、それ以外にもアトピー治療剤、美白又はしわ改善用化粧品などの薬物は、皮膚自体の器官に伝達させる目的でも使用される。このような利便性及び機能性にもかかわらず、薬物を皮膚を通過させて薬物を伝達することは、皮膚の構造上非常に困難であり、皮膚を通過する薬物の開発は容易ではない。皮膚の外側には、約10μm〜45μmの厚みを持つ約10層〜15層の角質細胞からなる角質層が存在し、これらの角質層はブリック・アンド・モルタル(brick&mortar)構造と呼ばれる形態で構成されている。前記角質層は、ケラチンが豊富な角質細胞からなるブリックの構造と、これらの角質細胞間がセラミド、脂肪酸又はワックスなどのような脂質で満たされたモルタル構造となっている。このような構造により、皮膚の外側は皮膚内部の水分の損失を防ぎつつ、外部からの侵入を防ぐ構造を有するようになる。しかし、このような構造は、物質透過性が非常に低いという特性を持つようになる。500Da以下の低分子構造の成分のみが拡散方式によって皮膚内に伝達され、主にモルタル構造の細胞内脂質層や、脂質層間の水溶性の構造を介して伝達がされる。これらの薬物の皮膚内への伝達は、薬物の性質によっても大きく左右される。また、皮膚内への薬物伝達は、皮膚の表面を直接通過する方法以外にも、皮膚の汗腺、毛穴、皮脂腺などの構造を利用して伝達される 。
【0003】
このような背景の下で、分子の大きさや性質に関係なく、皮膚を透過することができ、皮膚全体にむらなくに伝達することができる薬物及び薬物伝達方法を開発しようとする研究が盛んに行われてきた。例えば、特許文献1には、天然型ヒト成長ホルモンに比べ安定性及び皮膚透過性に優れたヒト成長ホルモン由来のペプチド及びそれを含む組成物が開示されており、特許文献2には、ヒトインターロイキン-10(IL-10)と同じ機能を持ち、天然型IL-10に比べ安定性及び皮膚透過性に優れたIL-10由来のペプチド及びこれを含む組成物が開示されているが、これらのペプチドは、それ自体が機能性を示すため、他の薬物伝達用担体として使用することができないという欠点があった。よって、皮膚疾患の治療及び薬学的活性製剤の皮膚透過促進のために使用することができる皮膚透過性ペプチドが開発されている(特許文献3)。前記ペプチドは、優れた皮膚透過性を示すだけでなく、他の薬物の経皮伝達用担体としても使用できるという長所があるが、皮膚を透過した後は、体内の循環システムを介して消耗するため、皮膚を標的とする薬物の場合には、特別な効果を発揮し得ないという欠点がある。
【0004】
このような背景から、本発明者らは、薬物の経皮伝達用担体として使用できると共に、皮膚に残留可能な特性を持つ皮膚透過性ペプチドを開発するために鋭意努力を重ねた結果、配列番号1〜10のいずれかのアミノ酸配列を有する分離されたペプチドを開発することによって、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国登録特許第1054519号
【特許文献2】韓国登録特許第1104223号
【特許文献3】米国特許第7,659,252号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、配列番号1〜10からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列で構成される分離されたペプチドを提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、前記ペプチドをコードする分離されたポリヌクレオチドを提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、前記分離されたペプチド及びカーゴを含むペプチド−カーゴ複合体を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、前記分離されたペプチドを含む経皮伝達用組成物を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、前記ペプチドを使用してカーゴを経皮伝達する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施態様は、配列番号1〜10からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列で構成された分離されたペプチドを提供する。
【0012】
本発明で用いられるアミノ酸配列は、IUPAC-IUB命名法に従って、次のように略号で記載した。
アラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、リジン(K)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、スレオニン(T)、トリプトファン(W)、
チロシン(Y)、バリン(V)
【0013】
本発明では、皮膚透過性を示し、さらに皮膚残留性を示すことができ、ペプチド又はタンパク質などの薬物の経皮送達システムに適用することができる新規なペプチドを開発した。
【0014】
このような本発明のペプチドは、下記配列番号1〜10のいずれかのアミノ酸配列で構成することができる:
NQTDHLFSTFIS(配列番号1)
NGSLNTHLAPIL(配列番号2)
GGSIAASELEYY(配列番号3)
ELKQVVISDINH(配列番号4)
MVRDHPGLSGWT(配列番号5)
TSGISINKLPHT (配列番号6)
IFAALDYNLGRH(配列番号7)
DMKWTLKEWMTH(配列番号8)
QIEKHVYFNASQ(配列番号9)
TNIPSLSGILMK(配列番号10)
【0015】
また、本発明において、前記分離されたペプチドは、前記配列番号1〜10のいずれかの配列で構成されたものだけではなく、皮膚透過性又は/及び皮膚残留性を示すものであれば、前記配列の末端部位の一つ以上のアミノ酸が除去又は置換されるか、又は80%以上の相同性を示すペプチドも本発明の範疇に含まれる。
【0016】
本発明の配列番号1〜10のいずれかのアミノ酸配列で構成される、分離されたペプチドは、皮膚透過性を示すことを特徴としており、さらに尚且つ残留を示すことができる。
【0017】
本発明における用語「皮膚透過性」とは、ペプチドが皮膚を透過して皮膚内部に浸透することができる能力を意味し、前記「皮膚残留性」とは、皮膚を透過したペプチドが皮膚組織を通過して循環系に伝達されず、皮膚内の組織に結合されて皮膚内に残留する能力を意味する。標的組織を皮膚組織とする医薬製剤又は化粧料の場合には、前記ペプチドと結合した成分が皮膚組織又は皮膚細胞に作用することができるように、皮膚組織に残留する特性に優れていることが好ましい。したがって、本発明のペプチドは皮膚透過性だけでなく、皮膚残留性に優れているので、標的組織を皮膚組織とする医薬製剤又は化粧料の担体としても有用である。
【0018】
これらの皮膚透過性を示すペプチドは、これと結合する他のペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、siRNA、又は商業的に販売されている薬物などの様々な種類のカーゴの経皮伝達のために用いることができる。
【0019】
本発明における用語「カーゴ(cargo)」とは、皮膚を透過して皮膚内への伝達がなされる物質を意味する。本発明の目的上、前記カーゴは、本発明の分離されたペプチドに連結されて皮膚内に伝達される物質であれば、特にその種類は限定されるものではなく、その例として、ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、リボザイム、siRNA、ベクトル又はウイルスなどの遺伝子治療のための物質、又は商業的に販売されている薬物などがある。本発明の一実施例では、ファージディスプレイ法によって本発明のペプチドに提示されたファージがブタの皮膚を透過することができることを確認した(実施例1〜5)。
【0020】
前記カーゴは、本発明の分離されたペプチドに連結した複合体の形で皮膚内に伝達することができる。ここで、前記複合体とは、カーゴが共有結合でペプチドに連結した形態;及びカーゴとペプチドが非共有的相互作用で結合した形態のいずれをも含む。また、カーゴがペプチド又はタンパク質である場合、融合タンパク質の形態であってもよいが、これらに限定されない。
【0021】
前記カーゴが共有結合でペプチドに連結された場合には、リンカーを介して連結されるか、直接連結することができる。
【0022】
本発明における用語「リンカー」とは、基本的には、互いに異なる二つの融合パートナー(例えば、生物学的高分子など)を共有結合によって連結することが可能な連結体を意味する。前記リンカーは、ペプチドリンカー又は非ペプチドリンカーであってもよく、ペプチドリンカーの場合、少なくとも1つのアミノ酸で構成されてもよい。
【0023】
本発明の配列番号1〜10からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドは、生体内のタンパク質切断酵素から保護し、安定性を増加させるためにそのN末端及び/又はC末端などが化学的に修飾されるか、有機化合物で保護されるか、又はペプチド末端などにアミノ酸が付加されて改変ペプチドの形態であってもよい。特に、化学的に合成したペプチドの場合、N及びC末端が電荷を帯びているため、これらの電荷を除去するためにN末端をアセチル化、又は/及びC末端をアミド化することができるが、特にこれに限定されない。また、前記ペプチドは、さらにC末端にダンシル基が結合されたものであってもよいが、これらに限定されない。
【0024】
本発明のペプチドは、その長さに応じて、当分野でよく知られている方法、例えば、自動ペプチド合成器によって合成することができ、遺伝子操作技術によっても生産することもできる。例えば、遺伝子操作によって、融合パートナー及び本発明のペプチドを含む、融合タンパク質をコードする融合遺伝子を製造し、これを宿主細胞に形質転換させた後、融合タンパク質の形態で発現し、タンパク質分解酵素又は化合物を用いて融合タンパク質から本発明のペプチドを切断、分離して、所望のペプチドを生産することができる。このためには、例えば、活性化第X因子(Factor Xa)又はエンテロキナーゼのようなタンパク質分解酵素、CNBr又はヒドロキシルアミンのような化合物によって切断することのできるアミノ酸残基をコードするDNA配列を、融合パートナーと本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドの間に挿入することができる。
【0025】
本発明の一実施態様によれば、ファージディスプレイ法を用いて皮膚透過性ペプチド10種(配列番号1〜10)を選別し、選別された皮膚透過性ペプチドを含むファージの皮膚透過性を確認した結果、対照群に比べて優れた皮膚透過性を示すことを確認した(表1)。また、前記ペプチドのC末端にダンシル基が結合された形態のペプチド誘導体をそれぞれ合成し、その吸光度を測定してこれらのペプチドの皮膚浸透性を確認したところ、前記のペプチドもまた優れた皮膚透過性を示すことを確認さした(表2)。さらに、前記の皮膚透過性ペプチドを含むファージの皮膚残留性を確認した結果、対照群に比べて顕著に優れた皮膚残留性を示すことを確認した(表3)。また、前記ペプチドのC末端にダンシル基が結合された誘導体を用いてペプチドの皮膚残留性を調べた結果、前記ペプチドが優れた皮膚残留性を示すことを確認した( 表4)。
【0026】
本発明のさらに他の実施態様は、前記ペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。このとき、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドは、とくにこれに限定されないが、コドンの縮退現象により下記の配列番号11〜20のいずれかのヌクレオチド配列で構成することが好ましい。
皮膚透過性ペプチドをコードするポリヌクレオチド:
【0027】
AATCAGACTGATCATCTTTTTTCGACGTTTATTTCT(配列番号11)、
AATGGTTCTCTTAATACTCATCTTGCGCCGATTCTG(配列番号12)、
GGTGGTAGTATTGCTGCTTCGGAGCTGGAGTATTAT(配列番号13)、
GAGCTGAAGCAGGTTGTGATTTCTGATATTAATCAT(配列番号14)、
ATGGTTCGGGATCATCCTGGTCTTTCTGGTTGGACG(配列番号15)、
ACTTCGGGGATTTCTATTAATAAGTTGCCGCATACT(配列番号16)、
ATTTTTGCTGCGTTGGATTATAATCTGGGTCGTCAT(配列番号17)、
GATATGAAGTGGACGCTGAAGGAGTGGATGACTCAT(配列番号18)、
CAGATTGAGAAGCATGTTTATTTTAATGCTAGTCAG(配列番号19)、
ACGAATATTCCTTCGTTGTCGGGGATTCTTATGAAG(配列番号20)、
【0028】
本発明のさらに他の実施態様は、前記分離されたペプチド及びカーゴを含むペプチド−カーゴ複合体を提供する。
【0029】
前記分離されたペプチド、カーゴ及び複合体については、前述の通りである。
【0030】
本発明のさらに他の実施態様は、前記分離されたペプチドを含む経皮伝達用組成物を提供する。
【0031】
前記組成物は、さらにカーゴを含むことができるが、カーゴを含む場合、前記ペプチドとカーゴはペプチド−カーゴ複合体の形態で存在することができる。
【0032】
前記ペプチドは皮膚透過性を示すため、これをペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、リボザイム、siRNA、又は商業的に販売されている薬物などの様々なカーゴの経皮は、皮膚伝達用の組成物として用いることができ、前記カーゴの担体として機能することができる。前記担体とは、物質をある特定の部位に伝達する物質であり、本発明のペプチドは皮膚透過性を示すので、このペプチドを含む組成物を皮膚内にカーゴを伝達する担体として用いることができる。
【0033】
特に、前記担体又は組成物は、身体の表面を介して薬物を伝達させるために、(a)身体に損傷を与えずして、身体の表面を介して薬物を伝達しうる量の本発明のペプチド、及び(b)有効量のカーゴを含むことができるが、これらに限定されない。
【0034】
前記ペプチドを含む本発明の経皮伝達用組成物は、その目的に鑑みて、皮膚内に容易に伝達される形態、例えば、皮膚外用剤の形態であることが好ましく、さらに前記組成物はリポソーム、ミセル、及びマイクロスフィアと共に製造することができる。
【0035】
本発明における用語「皮膚外用剤」とは、皮膚の外用として提供される製剤を意味する。その例として、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、ペースト、パッチなどの剤形などがあるが、皮膚の外用に適用して皮膚内に目的とする物質を伝達しようとする目的を有するものであれば、特にその種類は限定されない。
【0036】
また、前記組成物は、当業界に公知の少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体又は添加剤を含むことができる。ここで、担体は経皮伝達又は局所伝達に適した物質であることが好ましい。また、本発明において有用な担体又は添加剤は、皮膚に毒性を示さず、且つ組成物に含まれている他の成分と逆に相互作用するものでないものが好ましい。
【0037】
さらに、本発明の組成物は、それ自体では皮膚内に伝達が容易でない薬物の伝達のために使用することができるので、本発明のペプチド以外にも皮膚透過を促進させることができる物質をさらに含むことができる。これらの皮膚透過を促進させる物質は、皮膚損傷の可能性、刺激及び全身症状を最小限に抑えられるものが好ましい。本発明の組成物にさらに含むことができ、これらの皮膚透過を促進させることのできる物質の例としては、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸;脂肪族アルコール;胆汁酸;非イオン性界面活性剤、アミン、アミド、炭化水素溶媒、テルペン、低級アルキルエステル、シクロデキストリン強化剤、窒素を含有する複素環、スルホキシド及び尿素;及びこれらの誘導体があるが、これらに限定されない。
【0038】
また、本発明のペプチドを含む組成物は、伝達しようとする物質が治療的物質である場合、医薬組成物の形態であってもよい。
【0039】
本発明のペプチドを医薬組成物に製剤化する際、通常、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を使用して製造することができる。無菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤を含んでもよい。また、非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどを使用することができる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0040】
また、本発明のペプチドは、安定性や吸収性を増強させるためにグルコース、スクロース又はデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸又はグルタチオンなどの抗酸化剤、キルレート剤、低分子タンパク質又はその他の安定化剤を含むことができる。
【0041】
また、前記組成物は化粧料組成物の形態であってもよい。
【0042】
前記ペプチドは優れた皮膚透過性を示し、皮膚残留性も示すことができるので、これを化粧料組成物に含ませて、化粧料組成物に含まれる有効成分、例えば、美白成分などの様々な成分の皮膚内への伝達を容易にすることができる。
【0043】
本発明の化粧料組成物は、化粧品分野における通常の補助剤、例えば、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤、ゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型又は非イオン型の乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、ブロッカー、湿潤化剤、エッセンシャルオイル、染料、顔料、親水性又は親油性活性剤、脂質小胞だけでなく、化粧品に通常使用される任意の他の成分などの化粧品学又は皮膚科学の分野で通常に使用される補助剤と共に一般の化粧品又は機能性化粧品の構成要素として使用することができる。
【0044】
本発明における用語「機能性化粧品」(cosmedical,cosmeceutical)とは、化粧品に医薬品の専門的な治療機能が導入されることにより、一般の化粧品とは異なり生理活性的な効能、効果が強調された専門的な機能性を有する製品を意味する。その例として、前記の機能性化粧品は肌の美白に役立つ製品、肌のしわの改善に役立つ製品、肌をきれいに焼いたり、紫外線から肌を保護するのに役立つ化粧品を意味する。
【0045】
本発明の化粧料組成物を含む化粧品は、当業界で通常製造されるいかなる形態にも製造することができ、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、パウダーファンデーション、エマルジョンファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーなどに剤形化することができるが、これに限定されない。より詳しくは、柔軟化粧水、収斂化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、ローション、ジェル、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、軟膏、スティック、パッチ、スプレー又はパウダーの形態に製造することができる。
【0046】
本発明の他の実施態様は、前記ペプチドを用いてカーゴを経皮伝達する方法を提供する。
【0047】
前記ペプチドとカーゴについては、前述の通りである。
【0048】
具体的には、本発明のカーゴを経皮伝達する方法は、前記ペプチド−薬物結合体又はこれを含む組成物を有効量で個体の皮膚に適用する段階を含むことができる。本発明のペプチドは、皮膚透過性に優れているので、前記方法を用いると、ペプチドに連結されたカーゴを皮膚内に効果的に伝達することができる。前記個体は、カーゴの皮膚内伝達が要求される個体であれば、制限なく含まれ、その例としては、ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、イヌやヒトなどを含む哺乳動物、又は鳥類などがあるが、これに限定されない。
【発明の効果】
【0049】
本発明のペプチドは、優れた皮膚浸透効果のみならず、皮膚残留効果を示すので、皮膚組織に適用しようとする様々な経皮伝達製剤の開発に広く活用されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】陰性対照群、対照群及びS3-2を発現させるファージがそれぞれブタの皮膚に結合する量を示す写真及びグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0052】
実施例1:皮膚透過性ペプチドの選別
皮膚透過性ペプチドを選別するために、経皮製剤の溶出試験の方法を応用した。この際、ガラス製フランツセル(franz glass cell、standard直径9mm、receiver5ml、Permgear)を使用した。ガラスセルの上段と下段の間にブタの皮膚(厚さ0.7mm、Med kinetics)を装着し、その上段にファージを処理した後、ブタの皮膚を透過して、下段の収容部(receiver)に残留するファージを増幅した。このプロセスを1回行うことを1ラウンド選別したものと定義した。1ラウンドで増幅されたファージを使用して再び2ラウンドを行う方法であり、皮膚透過力の優れたファージを競争方式で選別し、合計3ラウンドを行った。
【0053】
また、皮膚とファージのコートタンパク質との間に生じうる非特異的な結合を減らすために、ガラスセルの上段と下段にそれぞれ、1% BSA(Sigma)を500μlと5mlのTBS(50mM トリス pH7.5、150mM 塩化ナトリウム)溶液に溶解したものを使用した。
【0054】
さらに、ランダムなペプチド配列を有するファージを使用して開始するために、Ph.D-12ファージライブラリキット(New England Biolab)を使用した。500μlのTBS(1%BSA)に10個のファージを処理した。その後、16時間培養し、前記収容部のTBS5mlをすべて使用して、ファージを増幅した。
【0055】
ファージを増幅するための宿主細胞として、E.coil ER2738(New England Biolab)を使用した。25mlのLB培地に振とう培養したER2738を接種し、O.D.(550nm)0.5で透過したファージのあるTBS5mlをすべて処理し、4時間培養した。その後、8000Gで遠心分離して、E.coil とファージを相互に分離した。次いで、ファージのある上澄み液に6mlの沈殿液(20%PEG6000、2.5M 塩化ナトリウム)を処理してファージを沈殿させた。8000Gで遠心分離後、沈殿したファージのTBS溶液を処理してファージを分離し、保管した。
【0056】
最後に、皮膚透過性ファージが有するペプチドを確認するために、ファージをシングルコロニーから増幅させた。ファージを持つ E.coil ER2738はLB/X-gal/IPTGプレートから、青色を帯びた性質を利用して選別した。具体的には、ER2738培養液300μlに、TBSで適当量希釈したファージ2μlを処理した後、これをトップアガー4mlに混ぜて、その後LB/X-gal/IPTGプレートの上段に処理して16時間さらに培養してから青色のコロニーを選別した。それぞれのコロニーを5mlのER2738培養液に6時間さらに培養して、Ph.D-13ファージのスピンキット(Qiagen)を使用してDNAを分離した後、それらのヌクレオチド配列を分析することにより、10種の皮膚透過性ペプチド(S3-1ファージ(配列番号1)、S3-2ファージ(配列番号2)、S3-3ファージ(配列番号3)、S3-7ファージ(配列番号4)、S3-8ファージ(配列番号5)、S3-9ファージ(配列番号6)、S4-4ファージ(配列番号7)、S4-7ファージ(配列番号8)、S4-9ファージ(配列番号9)、及びS4-10ファージ(配列番号10)を選別した。
【0057】
実施例2:皮膚透過性ペプチドを含むファージの皮膚透過性の確認
前記実施例1で選別された配列番号1〜10のアミノ酸配列を有するそれぞれのペプチドを発現させることのできるファージの皮膚透過性を確認した。
【0058】
具体的には、ガラス製フランツセルの上段と下段の間にブタの皮膚を装着して、皮膚とファージのコートタンパク質との間に生じうる非特異的な結合を減らすために、上段と下段のそれぞれには、500μlと5mlのTBS溶液に1%BSAを溶解したものを使用した。処理するファージの数を1010個に一定に揃えて、前記ガラス製フランツセルの上段に処理した。この時、対照群としては、「TDMNKTEIRFVR(配列番号21)」のアミノ酸配列を有するペプチドを発現することができるファージを使用した。これをブタの皮膚と16時間反応させた後、これを透過して収容部にあるファージの数を測定した。このために、ER2738培養液300μlとファージを含む収容部のTBS10μlを混合し、これをトップアガー4mlに混ぜた後、LB/X-gal/ IPTGプレートの上段に処理し、さらに16時間培養した後、青色コロニーの数を計数した(表1)。
【0059】
【表1】
【0060】
前記表1に示すように、前記選抜された10種のペプチドを有するファージは、すべて対照群に比べて優れた皮膚透過性を示した。特に、S3-1、S3-2、S3-3及びS3-7は前記の10種のペプチドを有するファージのうち、より優れた皮膚透過性を示すことを確認し、その中でもS3-2が最も優れた皮膚透過性を示すことを確認した。
【0061】
このような結果は、本発明の10種の分離されたペプチドが、優れた皮膚透過性を有することを示す結果である。
【0062】
実施例3:皮膚透過性ペプチド誘導体の皮膚透過性の確認
前記実施例1で選別された配列番号1〜10のいずれかのアミノ酸配列を有するそれぞれのペプチドのC末端にダンシル基が結合された形態の誘導体をそれぞれ合成し、これらの誘導体の皮膚透過性に対する確認を試みた。
【0063】
具体的には、それぞれの前記ペプチドを化学的に合成し、その後ペプチドのC末端にダンシル基を付加した誘導体をそれぞれ合成し、対照群としてはC末端にダンシル基を付加した「TDMNKTEIRFVR(配列番号21)」のアミノ酸配列で構成されたペプチドを使用した。
【0064】
また、ガラス製フランツセルの上段と下段の間にブタの皮膚を装着して、前記セルの上段と下段にそれぞれ、500μlと5mlのTBS溶液を加えた後、セルの上段に各誘導体を同じ濃度で加えながら、16時間培養した。培養が終了した後、下段の収容部に存在する各誘導体の量をビクター蛍光メーター(victor fluorescence meter、340/520)で測定して透過度を比較した(表2)。
【0065】
【表2】
【0066】
前記表2に示すように、前記合成された10種のペプチド誘導体はすべて、対照群に比べて非常に優れた皮膚透過性を示すことを確認することができた。特に、S3-1ペプチド、S3-2ペプチド、S3-3ペプチド、S3-7ペプチド、S3-8ペプチド、S3-9ペプチド及びS4-9ペプチドは前記10種のペプチドうち比較的優れている皮膚透過性を示し、その中でもS3-2ペプチドが最も優れた皮膚透過性を示した。
【0067】
実施例4:皮膚透過性ペプチドを含むファージの皮膚残留性の確認
物質が皮膚を透過するに至る主要メカニズムは、皮膚の成分に物質が溶解して最上層から下層に拡散する方法で行われ、これにより皮膚全体に有効物質が効果的に伝達される。皮膚の表面は角質と角質間隙物質などからなっており、選別されたペプチドが皮膚を効果的に透過するためには皮膚表面を構成する成分に対して溶解性が優れていなければならない。このような物質の皮膚成分に対する溶解性は短時間(10分)物質を皮膚に反応させた後、それに結合した量を測定することによって分析できる。また、ウオッシュオフ製品を使用する場合、特に皮膚との結合力がよくなければならない。この場合、先ず皮膚との結合後に内部に拡散する。従って、選別されたファージの皮膚結合性を測定し、前記ペプチドが優れているか否かを調べた。
【0068】
先ず、ブタの皮膚を10mm×10mmの大きさに切断し、前記実施例1で選別されたそれぞれのペプチドを発現させることのできるファージを加えた後、前記ブタの皮膚に対する結合の程度を測定した。この時、対照群としては、「TDMNKTEIRFVR(配列番号21)」のアミノ酸配列を有するペプチドを発現させるファージを使用した。
【0069】
前記ブタの皮膚に結合したファージの量を測定するために、抗−M13抗体HRP(Hourseradish peroxidase)コンジュゲートを使用した。抗体自体と皮膚との結合によってシグナルを除去するためにファージの存在しない対照群を陰性対照群として設定した。切断したブタの皮膚を1.5mlのチューブにいれて500μlのTBS(1%BSA)を加えた後、前記陰性対照群にはファージを入れず、対照群と測定しようとするファージには1010個のファージを加えて10分間培養した。次いで、1%BSAを含むTBS溶液を使用して12,000RPMで1分間の洗浄を10回行った。次に、抗-M13抗体HRPコンジュゲートを含むTBS溶液500μlを加え、5分間さらに培養した。前記培養物に1%BSAを含むTBSを加え、12,000RPMで1分間の洗浄を10回行った後、残留している緩衝液をすべて除去し、TMB溶液(Tetramethylbenzidie solution, Amersham)をさらに加えた。この時、前記TMBは抗体に結合したHRPによって分解されて青色を発色させる。最終的に、0.2N硫酸を処理して反応を中止し、青色を黄色に変化させた後、吸光度(450nm)を測定し、ファージ-皮膚間の結合の程度を測定した。次に、各吸光度から陰性対照群の吸光度を除いて算出した吸光度に基づいてそれぞれの吸光度を比較し、その結果を表3及び図1に示した。図1は陰性対照群、対照群及びS3−2を発現させるファージがそれぞれのブタの皮膚に結合する量を示した写真及びグラフである。
【0070】
【表3】
【0071】
前記表3及び図1に示すように、皮膚に残留する各ペプチドはすべて対照群に比べて高い皮膚残留性を示すことを確認することができた。特に、S3-1、S3-2、S3-3及びS3-7は、前記10種のペプチドのうち比較的高いレベルで皮膚に結合することを確認し、その中でもS3-2が最も高いレベルで皮膚に結合することを確認した。
【0072】
実施例5:皮膚透過性ペプチド誘導体の皮膚残留性の確認
前記実施例3で合成された各誘導体の皮膚結合性を確認するために、ブタの皮膚と前記誘導体を反応させて、表面に溶解されたペプチドの量を測定した。具体的には、切り取ったブタの皮膚を1.5mlチューブに入れ、500μlのTBS(1%BSA)を入れた。これに対照群と測定しようとする各誘導体を追加して、皮膚と共に10分間培養した。対照群には「TDMNKTEIRFVR(配列番号21)」のアミノ酸配列で構成されているペプチドを使用した。培養後、TBS(1%BSA)を使用して、12,000 RPMで1分間の洗浄を10回行い、前記反応が終了したブタの皮膚を24ウェルプレートに移した後、表面に残留するペプチドの量をビクター蛍光メートル(victor fluorescence meter、340/520)で測定して比較した(表4)
【0073】
【表4】
【0074】
前記表4に示すように、皮膚に残留する各ペプチド誘導体のレベルは、すべてのペプチド誘導体が対照群よりも高いレベルを示すことを確認することができた。特に、S3-1ペプチド、S3-2ペプチド、S3-7ペプチド及びS3-8ペプチドは、前記10種のペプチドのうち比較的高いレベルで皮膚に残留することを確認し、その中でも、S3-2ペプチドが最も高いレベルで皮膚に残留することを確認した。
【0075】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せずとも、他の具体的な形態で実施することができることを理解するであろう。したがって、以上で記述した実施形態等は全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないものと理解するべきである。本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは特許請求の範囲により表され、特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導き出される全ての変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]