【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施態様は、配列番号1〜10からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列で構成された分離されたペプチドを提供する。
【0012】
本発明で用いられるアミノ酸配列は、IUPAC-IUB命名法に従って、次のように略号で記載した。
アラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、リジン(K)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、スレオニン(T)、トリプトファン(W)、
チロシン(Y)、バリン(V)
【0013】
本発明では、皮膚透過性を示し、さらに皮膚残留性を示すことができ、ペプチド又はタンパク質などの薬物の経皮送達システムに適用することができる新規なペプチドを開発した。
【0014】
このような本発明のペプチドは、下記配列番号1〜10のいずれかのアミノ酸配列で構成することができる:
NQTDHLFSTFIS(配列番号1)
NGSLNTHLAPIL(配列番号2)
GGSIAASELEYY(配列番号3)
ELKQVVISDINH(配列番号4)
MVRDHPGLSGWT(配列番号5)
TSGISINKLPHT (配列番号6)
IFAALDYNLGRH(配列番号7)
DMKWTLKEWMTH(配列番号8)
QIEKHVYFNASQ(配列番号9)
TNIPSLSGILMK(配列番号10)
【0015】
また、本発明において、前記分離されたペプチドは、前記配列番号1〜10のいずれかの配列で構成されたものだけではなく、皮膚透過性又は/及び皮膚残留性を示すものであれば、前記配列の末端部位の一つ以上のアミノ酸が除去又は置換されるか、又は80%以上の相同性を示すペプチドも本発明の範疇に含まれる。
【0016】
本発明の配列番号1〜10のいずれかのアミノ酸配列で構成される、分離されたペプチドは、皮膚透過性を示すことを特徴としており、さらに尚且つ残留を示すことができる。
【0017】
本発明における用語「皮膚透過性」とは、ペプチドが皮膚を透過して皮膚内部に浸透することができる能力を意味し、前記「皮膚残留性」とは、皮膚を透過したペプチドが皮膚組織を通過して循環系に伝達されず、皮膚内の組織に結合されて皮膚内に残留する能力を意味する。標的組織を皮膚組織とする医薬製剤又は化粧料の場合には、前記ペプチドと結合した成分が皮膚組織又は皮膚細胞に作用することができるように、皮膚組織に残留する特性に優れていることが好ましい。したがって、本発明のペプチドは皮膚透過性だけでなく、皮膚残留性に優れているので、標的組織を皮膚組織とする医薬製剤又は化粧料の担体としても有用である。
【0018】
これらの皮膚透過性を示すペプチドは、これと結合する他のペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、siRNA、又は商業的に販売されている薬物などの様々な種類のカーゴの経皮伝達のために用いることができる。
【0019】
本発明における用語「カーゴ(cargo)」とは、皮膚を透過して皮膚内への伝達がなされる物質を意味する。本発明の目的上、前記カーゴは、本発明の分離されたペプチドに連結されて皮膚内に伝達される物質であれば、特にその種類は限定されるものではなく、その例として、ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、リボザイム、siRNA、ベクトル又はウイルスなどの遺伝子治療のための物質、又は商業的に販売されている薬物などがある。本発明の一実施例では、ファージディスプレイ法によって本発明のペプチドに提示されたファージがブタの皮膚を透過することができることを確認した(実施例1〜5)。
【0020】
前記カーゴは、本発明の分離されたペプチドに連結した複合体の形で皮膚内に伝達することができる。ここで、前記複合体とは、カーゴが共有結合でペプチドに連結した形態;及びカーゴとペプチドが非共有的相互作用で結合した形態のいずれをも含む。また、カーゴがペプチド又はタンパク質である場合、融合タンパク質の形態であってもよいが、これらに限定されない。
【0021】
前記カーゴが共有結合でペプチドに連結された場合には、リンカーを介して連結されるか、直接連結することができる。
【0022】
本発明における用語「リンカー」とは、基本的には、互いに異なる二つの融合パートナー(例えば、生物学的高分子など)を共有結合によって連結することが可能な連結体を意味する。前記リンカーは、ペプチドリンカー又は非ペプチドリンカーであってもよく、ペプチドリンカーの場合、少なくとも1つのアミノ酸で構成されてもよい。
【0023】
本発明の配列番号1〜10からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドは、生体内のタンパク質切断酵素から保護し、安定性を増加させるためにそのN末端及び/又はC末端などが化学的に修飾されるか、有機化合物で保護されるか、又はペプチド末端などにアミノ酸が付加されて改変ペプチドの形態であってもよい。特に、化学的に合成したペプチドの場合、N及びC末端が電荷を帯びているため、これらの電荷を除去するためにN末端をアセチル化、又は/及びC末端をアミド化することができるが、特にこれに限定されない。また、前記ペプチドは、さらにC末端にダンシル基が結合されたものであってもよいが、これらに限定されない。
【0024】
本発明のペプチドは、その長さに応じて、当分野でよく知られている方法、例えば、自動ペプチド合成器によって合成することができ、遺伝子操作技術によっても生産することもできる。例えば、遺伝子操作によって、融合パートナー及び本発明のペプチドを含む、融合タンパク質をコードする融合遺伝子を製造し、これを宿主細胞に形質転換させた後、融合タンパク質の形態で発現し、タンパク質分解酵素又は化合物を用いて融合タンパク質から本発明のペプチドを切断、分離して、所望のペプチドを生産することができる。このためには、例えば、活性化第X因子(Factor Xa)又はエンテロキナーゼのようなタンパク質分解酵素、CNBr又はヒドロキシルアミンのような化合物によって切断することのできるアミノ酸残基をコードするDNA配列を、融合パートナーと本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドの間に挿入することができる。
【0025】
本発明の一実施態様によれば、ファージディスプレイ法を用いて皮膚透過性ペプチド10種(配列番号1〜10)を選別し、選別された皮膚透過性ペプチドを含むファージの皮膚透過性を確認した結果、対照群に比べて優れた皮膚透過性を示すことを確認した(表1)。また、前記ペプチドのC末端にダンシル基が結合された形態のペプチド誘導体をそれぞれ合成し、その吸光度を測定してこれらのペプチドの皮膚浸透性を確認したところ、前記のペプチドもまた優れた皮膚透過性を示すことを確認さした(表2)。さらに、前記の皮膚透過性ペプチドを含むファージの皮膚残留性を確認した結果、対照群に比べて顕著に優れた皮膚残留性を示すことを確認した(表3)。また、前記ペプチドのC末端にダンシル基が結合された誘導体を用いてペプチドの皮膚残留性を調べた結果、前記ペプチドが優れた皮膚残留性を示すことを確認した( 表4)。
【0026】
本発明のさらに他の実施態様は、前記ペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。このとき、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドは、とくにこれに限定されないが、コドンの縮退現象により下記の配列番号11〜20のいずれかのヌクレオチド配列で構成することが好ましい。
皮膚透過性ペプチドをコードするポリヌクレオチド:
【0027】
AATCAGACTGATCATCTTTTTTCGACGTTTATTTCT(配列番号11)、
AATGGTTCTCTTAATACTCATCTTGCGCCGATTCTG(配列番号12)、
GGTGGTAGTATTGCTGCTTCGGAGCTGGAGTATTAT(配列番号13)、
GAGCTGAAGCAGGTTGTGATTTCTGATATTAATCAT(配列番号14)、
ATGGTTCGGGATCATCCTGGTCTTTCTGGTTGGACG(配列番号15)、
ACTTCGGGGATTTCTATTAATAAGTTGCCGCATACT(配列番号16)、
ATTTTTGCTGCGTTGGATTATAATCTGGGTCGTCAT(配列番号17)、
GATATGAAGTGGACGCTGAAGGAGTGGATGACTCAT(配列番号18)、
CAGATTGAGAAGCATGTTTATTTTAATGCTAGTCAG(配列番号19)、
ACGAATATTCCTTCGTTGTCGGGGATTCTTATGAAG(配列番号20)、
【0028】
本発明のさらに他の実施態様は、前記分離されたペプチド及びカーゴを含むペプチド−カーゴ複合体を提供する。
【0029】
前記分離されたペプチド、カーゴ及び複合体については、前述の通りである。
【0030】
本発明のさらに他の実施態様は、前記分離されたペプチドを含む経皮伝達用組成物を提供する。
【0031】
前記組成物は、さらにカーゴを含むことができるが、カーゴを含む場合、前記ペプチドとカーゴはペプチド−カーゴ複合体の形態で存在することができる。
【0032】
前記ペプチドは皮膚透過性を示すため、これをペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、リボザイム、siRNA、又は商業的に販売されている薬物などの様々なカーゴの経皮は、皮膚伝達用の組成物として用いることができ、前記カーゴの担体として機能することができる。前記担体とは、物質をある特定の部位に伝達する物質であり、本発明のペプチドは皮膚透過性を示すので、このペプチドを含む組成物を皮膚内にカーゴを伝達する担体として用いることができる。
【0033】
特に、前記担体又は組成物は、身体の表面を介して薬物を伝達させるために、(a)身体に損傷を与えずして、身体の表面を介して薬物を伝達しうる量の本発明のペプチド、及び(b)有効量のカーゴを含むことができるが、これらに限定されない。
【0034】
前記ペプチドを含む本発明の経皮伝達用組成物は、その目的に鑑みて、皮膚内に容易に伝達される形態、例えば、皮膚外用剤の形態であることが好ましく、さらに前記組成物はリポソーム、ミセル、及びマイクロスフィアと共に製造することができる。
【0035】
本発明における用語「皮膚外用剤」とは、皮膚の外用として提供される製剤を意味する。その例として、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、ペースト、パッチなどの剤形などがあるが、皮膚の外用に適用して皮膚内に目的とする物質を伝達しようとする目的を有するものであれば、特にその種類は限定されない。
【0036】
また、前記組成物は、当業界に公知の少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体又は添加剤を含むことができる。ここで、担体は経皮伝達又は局所伝達に適した物質であることが好ましい。また、本発明において有用な担体又は添加剤は、皮膚に毒性を示さず、且つ組成物に含まれている他の成分と逆に相互作用するものでないものが好ましい。
【0037】
さらに、本発明の組成物は、それ自体では皮膚内に伝達が容易でない薬物の伝達のために使用することができるので、本発明のペプチド以外にも皮膚透過を促進させることができる物質をさらに含むことができる。これらの皮膚透過を促進させる物質は、皮膚損傷の可能性、刺激及び全身症状を最小限に抑えられるものが好ましい。本発明の組成物にさらに含むことができ、これらの皮膚透過を促進させることのできる物質の例としては、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸;脂肪族アルコール;胆汁酸;非イオン性界面活性剤、アミン、アミド、炭化水素溶媒、テルペン、低級アルキルエステル、シクロデキストリン強化剤、窒素を含有する複素環、スルホキシド及び尿素;及びこれらの誘導体があるが、これらに限定されない。
【0038】
また、本発明のペプチドを含む組成物は、伝達しようとする物質が治療的物質である場合、医薬組成物の形態であってもよい。
【0039】
本発明のペプチドを医薬組成物に製剤化する際、通常、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を使用して製造することができる。無菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤を含んでもよい。また、非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどを使用することができる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0040】
また、本発明のペプチドは、安定性や吸収性を増強させるためにグルコース、スクロース又はデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸又はグルタチオンなどの抗酸化剤、キルレート剤、低分子タンパク質又はその他の安定化剤を含むことができる。
【0041】
また、前記組成物は化粧料組成物の形態であってもよい。
【0042】
前記ペプチドは優れた皮膚透過性を示し、皮膚残留性も示すことができるので、これを化粧料組成物に含ませて、化粧料組成物に含まれる有効成分、例えば、美白成分などの様々な成分の皮膚内への伝達を容易にすることができる。
【0043】
本発明の化粧料組成物は、化粧品分野における通常の補助剤、例えば、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤、ゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型又は非イオン型の乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、ブロッカー、湿潤化剤、エッセンシャルオイル、染料、顔料、親水性又は親油性活性剤、脂質小胞だけでなく、化粧品に通常使用される任意の他の成分などの化粧品学又は皮膚科学の分野で通常に使用される補助剤と共に一般の化粧品又は機能性化粧品の構成要素として使用することができる。
【0044】
本発明における用語「機能性化粧品」(cosmedical,cosmeceutical)とは、化粧品に医薬品の専門的な治療機能が導入されることにより、一般の化粧品とは異なり生理活性的な効能、効果が強調された専門的な機能性を有する製品を意味する。その例として、前記の機能性化粧品は肌の美白に役立つ製品、肌のしわの改善に役立つ製品、肌をきれいに焼いたり、紫外線から肌を保護するのに役立つ化粧品を意味する。
【0045】
本発明の化粧料組成物を含む化粧品は、当業界で通常製造されるいかなる形態にも製造することができ、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、パウダーファンデーション、エマルジョンファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーなどに剤形化することができるが、これに限定されない。より詳しくは、柔軟化粧水、収斂化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、ローション、ジェル、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、軟膏、スティック、パッチ、スプレー又はパウダーの形態に製造することができる。
【0046】
本発明の他の実施態様は、前記ペプチドを用いてカーゴを経皮伝達する方法を提供する。
【0047】
前記ペプチドとカーゴについては、前述の通りである。
【0048】
具体的には、本発明のカーゴを経皮伝達する方法は、前記ペプチド−薬物結合体又はこれを含む組成物を有効量で個体の皮膚に適用する段階を含むことができる。本発明のペプチドは、皮膚透過性に優れているので、前記方法を用いると、ペプチドに連結されたカーゴを皮膚内に効果的に伝達することができる。前記個体は、カーゴの皮膚内伝達が要求される個体であれば、制限なく含まれ、その例としては、ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、イヌやヒトなどを含む哺乳動物、又は鳥類などがあるが、これに限定されない。