(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、失禁パッド、生理用ナプキン、パンティライナー、使い捨て紙おむつ等の吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
かかる吸収性物品の中でも、水分吸収量の設定値が100ccを超えるような多量用の失禁パッドの場合、一度に大量の尿を股間部の小さな面積で受け止めなければならないため、吸収体の表面に尿の一時貯留や拡散の促進を目的として凹部を設けたものが開発されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、透液性表面シートと不透液性裏面シートとこれら両シート間に介在する吸液性コアとを有し、前記コアが吸収拡散性シートで被覆されたものであって、該コアの前記表面シート側には前記表面シートから裏面シートへ向かう方向へくぼむ少なくとも1条の溝が形成され、前記溝の底部と側壁部とが前記表面シートで覆われている使い捨ておむつにおいて、前記コアが吸水性繊維と高吸水性樹脂粒子とを含み、これら吸水性繊維と高吸水性樹脂粒子とが前記溝の底部において前記表面シートと裏面シートとの間に介在している使い捨ておむつが開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、前胴周り域から股下域を経て後胴周り域方向へ延びる仮想線に沿って、コアの少なくとも一部が分割されている使い捨ておむつにおいて、前記コアが、粉砕パルプを主体とする少なくとも一層の繊維層と高吸水性樹脂粒子を主体とする少なくとも一層の粒子層とからなり、前記粒子層の上に前記繊維層が位置している実質的な積層品であって、分割されている部位における前記コアの側面に前記粒子層がのぞいている使い捨ておむつが開示されている。
【0006】
更に、下記特許文献3では、透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸液性コアが介在し、前後方向が前身頃と後身頃とそれら両身頃の間に位置する股下域とからなり、前記コアの前記股下域に大便を収容可能な凹部を有する使い捨ておむつが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1記載の使い捨ておむつでは、体液が流入する溝の底部に高吸水性樹脂粒子が介在しているため、吸水時に膨潤したポリマー粒子間の空隙が極端に低下する、所謂「ゲルブロッキング」が発生し、前記溝において所要の吸水力を発現出来なくなるおそれがあった。また、ゲルブロッキングを生じることによって溝から周囲の吸収体への拡散が妨げられ、吸収スピードが低下することも懸念される。一方、上記特許文献2記載の使い捨ておむつの場合、分割部位における吸液性コアの側面に粒子層がのぞいているため、分割部位に大量の尿が浸入した場合には粒子層が膨潤して分割部位を塞ぎ吸収スピードが低下するおそれがあった。更に、上記特許文献3記載の使い捨ておむつの場合、吸液性コアに凹部を設けることによって、その分だけ吸液性コアの体液吸収容量が減少するが、それを補う手段が設けられていないため、吸液性コアの吸収量低下が懸念される。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、吸収体に凹溝状の吸収体流入部を設けても体液の吸収スピードを損なわず、吸収量を維持できる吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在され
、肌側両側部にそれぞれ長手方向に沿ってサイド不織布が配設された吸収性物品において、
前記吸収体は、吸収性物品の長手方向に沿うとともに体液排出部位を含む長手方向範囲に亘って凹溝状の体液流入部を備え、少なくとも前記吸収体の側縁部であって前記体液流入部を含む長手方向範囲に亘って粉粒状の高吸水性樹脂を配置してある
とともに、左右のサイド不織布間のサイド不織布が介在しない幅方向中央の吸収体の肌側面には高吸水性樹脂を配置せず、前記サイド不織布と重なる前記吸収体の肌側の面であって前記体液流入部を含む長手方向範囲に亘って前記高吸水性樹脂を配置してあることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、前記吸収体は、吸収性物品の長手方向に沿うとともに体液排出部を含む長手方向範囲に亘って凹溝状の体液流入部を備えている。この体液流入部は、一度に大量の尿などの体液が排出された場合に、この体液を一時的に貯留し、吸収体内部に拡散させるためのものであり、これによって吸収体の面積が小さくても一度に大量に排出された体液を受け止めることができるようになる。また、体液流入部に流入した体液は体液流入部の側面からも吸収体に吸収されるため、平面状に形成された吸収体の表面から吸収するときより吸収スピードが早くなる。
【0012】
前記吸収体に体液流入部を設けることによって、その分だけ吸収体の容積が減少し吸収体の吸収容量が低下するが、本吸収性物品では、少なくとも前記吸収体の側縁部であって前記体液流入部を含む長手方向範囲に亘って粉粒状の高吸水性樹脂を配設してあるため、前記体液流入部に流入した体液が吸収体内部を拡散し、吸収体側縁部の前記高吸水性樹脂に吸収保持される結果、体液流入部を設けることによって減少した吸収体の吸収量を補うことができ、吸収体の吸収量が維持できるようになる。また、前記高吸水性樹脂は、吸収体の側縁部に集中的に配設されているので、高吸水性樹脂が吸水して膨潤しても体液流入部を閉塞しないため、吸収スピードを損なうことがない。
【0013】
また本発明では、前記高吸水性樹脂を吸収体の側縁部に配置するのに加えて、前記サイド不織布と重なる前記吸収体の肌側の面であって前記体液流入部を含む長手方向範囲に亘って配置している。すなわち、左右のサイド不織布間のサイド不織布が介在しない幅方向中央部(有効吸収体幅)の吸収体の肌側面には高吸水性樹脂を配置せず、サイド不織布と重なる吸収体の肌側面に高吸水性樹脂を配置している。これによって、吸収体全体の吸水量を更に高めることができる一方で、吸収体の肌側面に配置された高吸水性樹脂が吸水して膨潤したときでも、表面側にサイド不織布が介在するため、肌面に対するざらつき感などの肌ざわり感の悪化が防止できるようになる。
【0014】
請求項
2に係る本発明として、前記吸収体の非肌側の面であって前記体液流入部を含む長手方向範囲に亘って前記高吸水性樹脂を配置してある請求項
1記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項
2記載の発明では、前記吸収体の非肌側の面であって前記体液流入部を含む長手方向範囲に亘って前記高吸水性樹脂を配置してあるため、吸収体の吸収容量をより一層高めることができる。
【0016】
請求項
3に係る本発明として、前記吸収体は被包シートによって囲繞され、
前記高吸水性樹脂は、前記吸収体及び/又は前記被包シートに固着されている請求項1〜
2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項
3記載の発明では、前記高吸水性樹脂を前記吸収体及び/又は前記被包シートに固着することによって、高吸水性樹脂の偏りが防止できるとともに、高吸水性樹脂を吸収体に沿わせて配置できるため、吸収体から高吸水性樹脂への体液の移行がスムーズにできるようになる。
【0018】
請求項
4に係る本発明として、前記体液流入部は、前記吸収体を肌側から非肌側に貫通させた開口によって形成されるか、肌側から非肌側に窪んだ有底の凹部によって形成されている請求項1〜
3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項
4記載の発明では、前記体液流入部の形成手段について規定してあり、前記吸収体を肌側から非肌側に貫通させた開口によって形成してもよいし、凹部を備えた積繊構造、吸収体の積層構造、エンボス付加などにより、肌側から非肌側に窪んだ有底の凹部によって形成してもよい。
【発明の効果】
【0020】
以上詳説のとおり本発明によれば、吸収体に凹溝状の吸収体流入部を設けても体液の吸収スピードが損なわれず、吸収量が維持できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0023】
〔軽失禁パッド1の基本構成〕
本発明に係る軽失禁パッド1は、
図1〜
図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、尿などを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2、3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞する被包シート5と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部位を含むように長手方向に所定の区間内において肌側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSを形成するサイド不織布7、7とから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その長手方向端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合されている。
【0024】
以下、さらに前記軽失禁パッド1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他に防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には、防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが好適に用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。
【0025】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。
【0026】
前記吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプ等の吸収性繊維と高吸水性ポリマー8とにより構成され、図示例では平面形状がパッド長手方向に長い縦長の略小判形とされている。前記高吸水性ポリマー8は例えば粒状粉とされ、吸収体4を構成するパルプ中に分散混入されている。この吸収体4の構成については、後段で詳細に説明する。
【0027】
前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。図示例のように、吸収体4を被包シート5で囲繞する場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間に被包シート5が介在することになり、吸収性に優れる前記被包シート5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら尿等の逆戻りを防止するようになる。
【0028】
前記高吸水性ポリマー8としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性ポリマーは製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力(吸収倍率)と吸水速度の調整が可能である。
【0029】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0030】
前記吸収体4は、被包シート5によって囲繞されている。前記被包シート5は、ティシュー等の紙材あるいは不織布等の透液性のシート材を用いることができるが、吸収体4に含有される前記パルプや高吸水性樹脂が抜け出さない程度の繊維密度を有するものを用いることが好ましい。
【0031】
本軽失禁パッド1の表面側両側部にはそれぞれ長手方向に沿って、かつ軽失禁パッド1の全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の外側部分が側方に延在されるとともに、前記不透液性裏面シート2が側方に延在され、これら側方に延在されたサイド不織布7部分と不透液性裏面シート2部分とをホットメルト接着剤等により接合して側部フラップが形成されている。
【0032】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、尿等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングしたSSMSやSMS、SMMSなどの撥水処理不織布を用いるのが望ましく、体液の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるのが望ましい。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができる。
【0033】
前記サイド不織布7、7は、適宜に折り畳まれて、前記吸収体4の略側縁近傍位置を起立基端として肌側に起立する左右一対の内側立体ギャザー10、10と、相対的に前記内側立体ギャザー10より外側に位置するとともに、前記吸収体4よりも側方に延出する不透液性裏面シート2及びサイド不織布7によって形成された肌側に起立する左右一対の外側立体ギャザー11、11とからなる2重ギャザー構造の立体ギャザーBSを構成している。このような2重ギャザー構造とすることによって、漏れ防止効果が高まるとともに、後段で詳述するように吸収体4の側部に配設された高吸水性樹脂9が吸水して膨潤した状態でも肌面に対するざらつき感などの肌ざわり感の悪化を抑えることができるようになる。なお、前記立体ギャザーBSは、内側立体ギャザー10または外側立体ギャザー11のいずれかのみからなる1重ギャザー構造であっても良いし、サイド不織布7を配設するだけで肌側に起立した立体ギャザー状に形成されなくてもよい。
【0034】
前記内側立体ギャザー10および外側立体ギャザー11の構造についてさらに詳しく説明すると、前記サイド不織布7は、
図2に示されるように、幅方向両側端をそれぞれパッド裏面側に折り返して幅方向内側及び幅方向外側にそれぞれ二重シート部分7a、7bを形成するとともに、前記幅方向内側の二重シート部分7a内部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1本または複数本の、図示例では1本の糸状弾性伸縮部材12が配設されるとともに、前記幅方向外側の二重シート部分7b内部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1本または複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材13、13が配設され、前記幅方向内側の二重シート部分7aの基端部が吸収体4の側部に配設される透液性表面シート3の上面にホットメルト接着剤等により接着されるとともに、幅方向外側の二重シート部分7bの基端部が前記吸収体4よりも側方に延出する不透液性裏面シート2の側端部にホットメルト接着剤等により接着されることにより、前記幅方向内側の二重シート部分7aによって肌側に起立する内側立体ギャザー10が形成されるとともに、前記幅方向外側の二重シート部分7bによって肌側に起立する外側立体ギャザー11が形成されている。なお、前記サイド不織布7は、パッド長手方向の両端部では、
図3に示されるように、前記糸状弾性伸縮部材12、13が配設されないとともに、前記幅方向内側の二重シート部分7aがホットメルト接着剤等によって吸収体4側に接合されている。
【0035】
本軽失禁パッド1においては、
図1に示されるように、透液性表面シート3の表面側からパッド長手方向に長く連続的に全体として周方向に閉合する中央部エンボス14と、この中央部エンボス14の前側に間を開けて略傘形状の前側エンボス15と、前記中央部エンボス14の後側に間を開けて略傘形状の後側エンボス16とが形成されている。前記中央部エンボス14は、前方部分が着用者の排尿口部位に対応する領域を囲むとともに、後方部分が着用者の臀部溝に対応する領域を囲むように設けられている。
【0036】
〔吸収体4の構成〕
次に、前記吸収体4の構成について詳しく説明する。前記吸収体4は、
図1及び
図2に示されるように、パッド長手方向に沿うとともに着用者の排尿口部位を含む長手方向範囲に亘って凹溝状の体液流入部17を備え、少なくとも吸収体4の側縁部であって前記体液流入部17を含む長手方向範囲に亘って粉粒状の高吸水性樹脂18を配置してある。前記体液流入部17は、一度に大量の尿が排出された場合に、この尿を前記体液流入部17に一時的に貯留し、吸収体4内部に拡散させるためのものであり、これによって、吸収体4の面積が小さくても一度に大量に排出された尿を受け止めることができるようになる。また、前記体液流入部17を設けることにより、体液流入部17に流入した尿は、体液流入部17の側面(吸収体4の断面)からも吸収体4に吸収されるため、平面状に形成された吸収体より吸収スピードが早くなるという利点もある。
【0037】
前記吸収体4に体液流入部17を設けることによって、その分だけ吸収体4の容積が減少するため吸収体4の吸収容量が低下するが、本軽失禁パッド1では、少なくとも吸収体4の側縁部であって前記体液流入部17を含む長手方向範囲に亘って粉粒状の高吸水性樹脂18を配置してあるため、体液流入部17に流入した体液が吸収体4内部を拡散し、前記高吸水性樹脂18に吸収保持されることによって、体液流入部17の分だけ減少した吸収体4の吸収量を補うことができ、吸収体4の吸収量が維持できるようにしている。このとき、前記高吸水性樹脂18は、吸収体4の側縁部に集中的に配設されているため、高吸水性樹脂が吸水して膨潤しても体液流入部17を閉塞することがなく、吸収スピードを損なうのが防止できるようになる。また、前記高吸水性樹脂18は、吸収体4の側縁部に集中的に配設され、その肌面側を前記サイド不織布7が覆うとともに、前記立体ギャザーBSが形成されているため、該高吸水性樹脂18が肌面に直接的に接触することがなく、ざらつき感などの装着感の悪化が防止できるようになる。特に、本軽失禁パッド1においては、
図2に示されるように、前記立体ギャザーBSが内側立体ギャザー10と外側立体ギャザー11とからなる2重ギャザーによって構成されるとともに、これらギャザー8、9の幅方向中間部に高吸水性樹脂18の配設領域が設けられているため、この立体ギャザーBSのクッション性によって高吸水性樹脂18の配設領域が直接的に肌面に接触する機会が著しく低下し、より一層装着感の悪化の防止が図られている。
【0038】
前記体液流入部17は、少なくとも着用者の体液排出部位に対応する長手方向中心線上に設けられ、着用者の体液排出部位に相当する長手方向長さ以上の長さで形成されている。
図1に示される例では、着用者の体液排出部位から臀部溝に対応する部位までパッド長手方向に連続して設けられ、全体として周方向に閉合する前記中央部エンボス14の内側に形成されている。
【0039】
前記吸収体4の側縁部に配置される高吸水性樹脂18は、
図4に示されるように、長手方向に対し連続的に散布され、少なくとも排尿口部位に相当する長手方向長さを有し、前記体液流入部17の長手方向長さと同じ長さ以上とすることが好ましい。これにより、体液流入部17に流入し、幅方向に拡散した尿を確実に吸収できるようになる。ただし、前記高吸水性樹脂18は、軽失禁パッド1の裁断時における製品カッターの劣化を防止するため、軽失禁パッド1の前後端部には配置しないようにしている。
【0040】
前記高吸水性樹脂18は、
図5に示されるように、前記サイド不織布7と重なる吸収体4の肌側の面であって、体液流入部17を含む長手方向範囲(
図5中の符号19の範囲)に亘って配置することも可能である。すなわち、左右に配設されたサイド不織布7、7間であってサイド不織布7が介在しない幅方向中央部(直接的に吸収体が尿を吸収できる幅:有効吸収体幅)の吸収体4の肌側面には高吸水性樹脂18を配置していない。これによって、吸収体4の吸水量を高めることができるとともに、この範囲19では吸収体4の肌側にサイド不織布7が介在するため、この範囲19に配置された高吸水性樹脂18が吸水して膨潤したときでも、肌面に対するざらつき感など肌ざわり感の悪化が防止できるようになる。吸収体4の肌側面(範囲19)に配置される高吸水性樹脂18は、吸収体4の側縁部に配置される高吸水性樹脂18の長手方向範囲と同じ範囲とすることが好ましいが、排尿口部位の周辺など局所的に吸水量を増加させたいときには排尿口部位に対応する長手方向範囲のみに配置するなど異なる範囲で配置してもよい。
【0041】
更に、前記高吸水性樹脂18は、
図6に示されるように、前記吸収体4の非肌側の面であって前記体液流入部17を含む長手方向範囲に亘って配置してもよい。吸収体4の非肌側の面では高吸水性樹脂18が吸水して膨潤してもざらつき感が肌側まで感じられないため、装着感を損なうことなく吸収体4の吸収容量を更に高めることができるようになる。ただし、高吸水性樹脂18によって不透液性裏面シート2を傷つける可能性があるため、吸収体4の側縁部に配置した高吸水性樹脂18よりも少ない目付で配置することが好ましい。
【0042】
ここで、各部に散布する高吸水性樹脂18の範囲については、
図6に示されるように、吸収体4の側縁部に配置される高吸水性樹脂18の範囲(高さ)Aは、吸収体4の厚みとほぼ同等で、1〜25mm、好ましくは3〜20mm、より好ましくは7〜15mmとするのがよい。また、吸収体4の肌側面に配置される高吸水性樹脂18の幅Bは、サイド不織布7が吸収体4と重なる幅とほぼ同等で、5〜35mm、好ましくは10〜30mmとするのがよい。更に、吸収体4の非肌側面に配置される高吸水性樹脂18の幅Cは、吸収体4の幅とほぼ同等で、60〜200mm、好ましくは70〜180mmとするのがよい。
【0043】
前記体液流入部17は、
図1に示されるように、少なくとも軽失禁パッド1の略長手方向中心線上であって排尿口部位を含む範囲に、パッド長手方向に沿って1本設けられている。また、
図7(A)に示されるように、パッド長手方向中心線上に設けられた体液流入部17aの両側にそれぞれ1本又は複数本の、図示例では1本ずつの体液流入部17bを配置することによって、全体として複数本の、図示例では3本の体液流入部17からなるようにしてもよい。また、同
図7(B)に示されるように、幅方向両側に配設される体液流入部17bは、大量に排出される尿を受け止めるため着用者の排尿口部位を含むパッド前側領域にのみ配置し、パッド後側領域では体液流入部17を設けることによる吸収容量の低下を抑えるようにしてもよい。
【0044】
前記体液流入部17は、
図2に示されるように、吸収体4を肌側から非肌側に貫通させた無底の開口によって形成してもよいし、
図8に示されるように、吸収体4を肌側から非肌側に窪ませた有底の凹部によって形成してもよい。有底の凹部によって形成する場合、
図8(A)に示されるように、積繊の際に凹部を備えた構造にしたり、同
図8(B)に示されるように、底部となる下層吸収体4aに開口17cを有する上層吸収体4bを積層した多層構造にしたり、同
図8(C)に示されるように、エンボスを付加して圧搾したりするなどの手段を用いることができる。
【0045】
前記吸収体4の肌側面に配設される被包シート5及び透液性表面シート3は、
図2に示されるように、体液流入部17の凹溝内に入り込ませることなく、体液流入部17の肌面側に張設してある。これにより、透液性表面シート3及び被包シート5を透過した体液が体液流入部17に流入しやすくなる。
【0046】
前記体液流入部17の寸法は、深さについては吸収体4の厚みの50%以上、好ましくは80%以上とし、長さ(パッド長手方向長さ)については吸収体4の長手方向長さの20〜90%、好ましくは50〜80%とするのがよい。また、幅については5〜50mm、好ましくは10〜30mmとするのがよい。体液流入部17の幅は、パッド長手方向に対してほぼ均等の幅寸法で形成してもよいし、排尿口部位のみを相対的に幅広にするなど、パッド長手方向に対して異なる幅寸法で形成してもよい。
【0047】
前記吸収体4の周縁に配設される高吸水性樹脂18は、吸収体4に混入される高吸水性樹脂8と同じものを用いてもよいし、異なる物性からなるのものを用いてもよい。異なるものを用いる場合、高吸水性樹脂の吸収スピードについては、吸収体4内を拡散する体液の拡散速度を低下させないため、吸収体4に混入される高吸水性樹脂8の方が吸収体4の周縁に配設される高吸水性樹脂18よりも速いものを用いるのがよい。また、高吸水性樹脂の常圧吸収量については、吸収体4の側縁部で体液をブロックするため、吸収体周縁に配置される高吸水性樹脂18の方が吸収体4に混入される高吸水性樹脂8よりも高いものを用いるのがよい。
【0048】
前記パルプ、高吸水性樹脂8並びに高吸水性樹脂18の目付については、パルプの目付は100〜600g/m
2、好ましくは200〜500g/m
2とするのがよく、吸収体4に混入される高吸水性樹脂8の目付は150〜500g/m
2、好ましくは200〜450g/m
2がよく、前記高吸水性樹脂18を含めた全体のポリマー量の質量比で30〜80%、好ましくは40〜70%とするのがよい。また、吸収体4の周縁に配置される高吸水性樹脂18の目付は150〜450g/m
2、好ましくは200〜400g/m
2がよく、高吸水性樹脂8を含めた全体のポリマー量の質量比で20〜70%、好ましくは30〜60%とするのがよい。
【0049】
また、前記吸収体4の厚みは、全体として均一の厚みとしても良いが、体液流入部17より前後端部については、装着感を良くするため、中間部より薄くしても良い。
【0050】
本軽失禁パッド1においては、吸収体4の側縁部に配置される高吸水性樹脂18によるざらつき感などの装着感の悪化を防止するため、次の構造のいずれか又は組み合わせを採用することが可能である。第1に、立体ギャザーBSを前述の2重ギャザー構造としたり、ループ状の中空構造とすることによって、吸収体4の側縁部が直接肌に触れないような構造とすることができる。第2に、被包シート5として高目付の不織布を使用し、吸収体4の側縁部が肌に当たっても違和感を与えないように肌当たりを和らげるようにする。具体的には、15〜25g/m
2程度のものを用いることが好ましい。第3に、
図2に示されるように、透液性表面シート3の側端を吸収体4の側端より外側に延在させ、高吸水性樹脂18を覆うように配置する。第4に、サイド不織布7を2重シート状にしたり、高目付(20〜35g/m
2程度のもの)のものを使用したりする。
【0051】
次に、吸収体4の側縁部に高吸水性樹脂18を配置する手順について、
図9に基づいて説明する。
図9(A)は、被包シート5に高吸水性樹脂18を固着させる場合である。この場合、被包シート5の上面側に吸収体4の幅より幅広にホットメルト接着剤20を塗布しておき、その上面側に幅方向中央部に吸収体4を積層した後、所定量の高吸水性樹脂18を吸収体4の両側のホットメルト接着剤20が塗布された部分に散布し被包シート5に固着させる。その後、被包シート5の両側端を吸収体4の側縁を巻き込むようにして折り畳む(
図4参照)。
【0052】
一方、
図9(B)は、吸収体4に高吸水性樹脂18を固着させる場合である。この場合、吸収体4の下面をホットメルト接着剤によって展開した被包シート5のほぼ中央部に固着した後、吸収体4の側縁部にホットメルト接着剤20を塗布する。所定の範囲に所定量の高吸水性樹脂18を散布し、被包シートの両側端を吸収体4の側縁を巻き込むようにして折り畳む。
【0053】
前記高吸水性樹脂18は、被包シート5及び吸収体4の側縁部の両方に固着させることも可能で、その場合には、被包シート5及び吸収体4の側縁部の両方にホットメルト接着剤20を塗布する。
【0054】
なお、吸収体4の非肌側の面に配置する場合には、被包シート5に吸収体2を積層する前に、被包シート5に対し高吸水性樹脂18を散布しておくようにする。
〔他の形態例〕
前記透液性表面シート3の下面側(吸収体側)には、体液の吸収速度を速めるとともに、体液の逆戻りを防止するため、透液性表面シート3と吸収体4との間に、親水性不織布からなるセカンドシートを配置してもよい。このセカンドシートは、予め透液性表面シート3の裏面に一体的に親水性不織布を積層させたものであってもよい。