特許第5963969号(P5963969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963969
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20160721BHJP
   F25B 7/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   F25B1/00 396U
   F25B7/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-538901(P2015-538901)
(86)(22)【出願日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】JP2014004849
(87)【国際公開番号】WO2015045354
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2016年1月19日
(31)【優先権主張番号】特願2013-201818(P2013-201818)
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】パナソニックヘルスケアホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 峻
(72)【発明者】
【氏名】湯澤 治郎
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−062471(JP,A)
【文献】 特開2004−125199(JP,A)
【文献】 特表2013−510286(JP,A)
【文献】 特表2012−515251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00,7/00,40/00
F28D 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、減圧器及び蒸発器がこの順で環状に接続されてなる冷媒回路を備え、該冷媒回路中の冷媒として、
沸点が−89.0℃以上、−78.1℃以下の極低温域の冷媒である第1冷媒と、
二酸化炭素(R744)と、
該二酸化炭素(R744)の沸点より低い温度において該二酸化炭素(R744)との溶解性を有する第2冷媒と、
を含む冷媒組成物を使用し、
前記第1冷媒を前記蒸発器にて蒸発させることにより−80℃以下の冷凍能力を実現すると共に、
前記第2冷媒と前記二酸化炭素(R744)とが溶解することにより、又は固化した前記二酸化炭素(R744)を前記第2冷媒が溶かすことにより、前記蒸発器から前記圧縮機に帰還する冷媒が通過する吸込配管中において、前記二酸化炭素(R744)を液相又は気相に維持させることを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
前記第1冷媒は、
ジフルオロエチレン(R1132a)、又は、
ジフルオロエチレン(R1132a)とヘキサフルオロエタン(R116)との混合冷媒、又は、
ジフルオロエチレン(R1132a)とエタン(R170)との混合冷媒、又は、
エタン(R170)、又は、
エタン(R170)とヘキサフルオロエタン(R116)の混合冷媒、又は、
トリフルオロメタン(R23)を39質量%、ヘキサフルオロエタン(R116)を61質量%混合した共沸混合物(R508A、沸点−85.7℃)、又は、
トリフルオロメタン(R23)を46質量%、ヘキサフルオロエタン(R116)を54質量%混合した共沸混合物(R508B、沸点−86.9℃)、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記第2冷媒は、
ジフロロメタン(R32)、又は、
1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)、又は、
n−ペンタン(R600)、又は、
イソブタン(R600a)、又は、
1,1,1,2,3−ペンタフロロペンテン(HFO−1234ze)、又は、
1,1,1,2−テトラフロロペンテン(HFO−1234yf)
を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記二酸化炭素(R744)を、前記冷媒組成物の総質量に対して20%より多く加えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記第2冷媒を、前記二酸化炭素(R744)のドライアイス化を防止可能な割合で加えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載の冷凍装置。
【請求項6】
前記冷媒回路は、それぞれ圧縮機から吐出された冷媒を凝縮した後、キャピラリチューブで減圧し、蒸発器にて蒸発させて冷却作用を発揮する独立した冷媒閉回路を構成する高温側冷媒回路と低温側冷媒回路とを備え、前記高温側冷媒回路の蒸発器と前記低温側冷媒回路の凝縮器とでカスケード熱交換器が構成され、前記低温側冷媒回路の蒸発器にて最終的な冷却作用を発揮する前記低温側冷媒回路中の冷媒として、前記冷媒組成物を使用したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかに記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、−80℃等の極低温を達成する冷凍装置、特に、二酸化炭素(R744)を含む冷媒組成物使用する冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より庫内を−80℃等の極低温に冷却可能な冷凍装置では、例えば、沸点が−88.8℃のエタン(R170)や、沸点が−85.7℃のR508A(トリフルオロメタン(R23)を39質量%、ヘキサフルオロエタン(R116)を61質量%混合した共沸混合物)や、沸点が−86.9℃のR508B(トリフルオロメタン(R23)を46質量%、ヘキサフルオロエタン(R116)を54質量%混合した共沸混合物)等の沸点の低い冷媒が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、地球温暖化係数(Global−warming potential:以下、GWPと称する)や可燃性を低くする目的で、上述の主冷媒に二酸化炭素(R744、GWP=1)を混合することも提案されている。更に、係る二酸化炭素(R744)は熱伝導率が高く、また、二酸化炭素(R744)を混合することで圧縮機に吸い込まれる冷媒の密度が上昇し、循環量が増加する等の作用から、上述した主冷媒との混合により、冷凍能力の向上も期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3244296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、二酸化炭素(R744)の沸点は−78.4℃であり、主冷媒であるエタン(R170)等と比較して高く、最終の蒸発器内でも蒸発しにくい。そのため、蒸発器を出る冷媒は二酸化炭素(R744)の比率が非常に高いものとなり、且つ、−80℃等の極低温であるため、二酸化炭素(R744)が固化してしまい、ドライアイスとなって冷媒回路の配管中に詰まる状態が発生する。
【0006】
そして、このドライアイスにより冷媒回路内の冷媒循環が阻害され、庫内温度が急激に上昇してしまうという問題が生じていた。
【0007】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、二酸化炭素(R744)のドライアイス化による不都合の発生を効果的に解消することができる冷媒組成物を使用した冷凍装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の冷凍装置は、圧縮機、凝縮器、減圧器及び蒸発器がこの順で環状に接続されてなる冷媒回路を備え、この冷媒回路中の冷媒として、沸点が−89.0℃以上、−78.1℃以下の極低温域の冷媒を第1冷媒と、二酸化炭素(R744)と、この二酸化炭素(R744)の沸点より低い温度において二酸化炭素(R744)との溶解性を有する第2冷媒と、を含む冷媒組成物を使用したことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明の冷凍装置は、上記発明において第1冷媒は、ジフルオロエチレン(R1132a)、又は、ジフルオロエチレン(R1132a)とヘキサフルオロエタン(R116)との混合冷媒、又は、ジフルオロエチレン(R1132a)とエタン(R170)との混合冷媒、又は、エタン(R170)、又は、エタン(R170)とヘキサフルオロエタン(R116)の混合冷媒、又は、トリフルオロメタン(R23)を39質量%、ヘキサフルオロエタン(R116)を61質量%混合した共沸混合物(R508A、沸点−85.7℃)、又は、トリフルオロメタン(R23)を46質量%、ヘキサフルオロエタン(R116)を54質量%混合した共沸混合物(R508B、沸点−86.9℃)、を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明の冷凍装置は、上記各発明において第2冷媒は、ジフロロメタン(R32)、又は、1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)、又は、n−ペンタン(R600)、又は、イソブタン(R600a)、1,1,1,2,3−ペンタフロロペンテン(HFO−1234ze)、又は、1,1,1,2−テトラフロロペンテン(HFO−1234yf)を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明の冷凍装置は、上記各発明において二酸化炭素(R744)を、冷媒組成物の総質量に対して20%より多く加えたことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明の冷凍装置は、上記各発明において第2冷媒を、二酸化炭素(R744)のドライアイス化を防止可能な割合で加えたことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明の冷凍装置は、上記各発明において冷媒回路は、それぞれ圧縮機から吐出された冷媒を凝縮した後、キャピラリチューブで減圧し、蒸発器にて蒸発させて冷却作用を発揮する独立した冷媒閉回路を構成する高温側冷媒回路と低温側冷媒回路とを備え、高温側冷媒回路の蒸発器と低温側冷媒回路の凝縮器とでカスケード熱交換器が構成され、低温側冷媒回路の蒸発器にて最終的な冷却作用を発揮する低温側冷媒回路中の冷媒として、冷媒組成物を使用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の冷凍装置は、圧縮機、凝縮器、減圧器及び蒸発器がこの順で環状に接続されてなる冷媒回路を備え、この冷媒回路中の冷媒として、請求項2に例示する如き沸点が−89.0℃以上、−78.1℃以下の極低温域の冷媒を第1冷媒とし、この第1冷媒と、二酸化炭素(R744)と、この二酸化炭素(R744)の沸点より低い温度において二酸化炭素(R744)との溶解性を有する第2冷媒と、を含む冷媒組成物を使用した。この二酸化炭素(R744)を混合したことで、GWPを低下させることができると共に、熱伝導率が向上することにより、請求項6の如き所謂二元冷凍装置の低温側冷媒回路中の冷媒として、上記冷媒組成物を使用することで、二元冷凍装置の冷凍能力を向上させることが可能となる。また、圧縮機に吸い込まれる冷媒の密度が高くなることにより循環量が増加するので、尚一層の冷凍能力の改善を図ることができるようになる。また、主冷媒が可燃性の場合、不燃化への効果も期待できる。
【0015】
特に、請求項3に例示する如き第2冷媒を混合したことで、例えば請求項5の如く二酸化炭素のドライアイス化を防止可能な割合で第2冷媒を加えることにより、請求項4の如く二酸化炭素を冷媒組成物の総質量に対して20%より多く加えた場合にも、冷媒回路中におけるドライアイスの発生を解消し、安定した冷凍効果を発揮させることが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を適用した一実施例の冷凍装置の冷媒回路図である。
図2図1の冷凍装置の二重管構造体部分の外観図である。
図3】実施例で使用する冷媒の特性を説明する図である。
図4】エタン(R170)と二酸化炭素(R744)とジフロロメタン(R32)を含む冷媒組成物における各冷媒組成に対する庫内温度と図1の低温側冷媒回路の蒸発器入口温度の変化を示す図である。
図5図4の冷媒組成物における二酸化炭素(R744)のドライアイス化とそれを解消するジフロロメタン(R32)の作用を説明する図である。
図6】エタン(R170)と二酸化炭素(R744)と1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)を含む冷媒組成物における各冷媒組成に対する庫内温度と図1の低温側冷媒回路の蒸発器入口温度の変化を示す図である。
図7】ジフルオロエチレン(R1132a)と二酸化炭素(R744)とジフロロメタン(R32)を含む冷媒組成物における各冷媒組成に対する庫内温度と図1の低温側冷媒回路の蒸発器入口温度の変化を示す図である。
図8図1の冷凍装置の他の実施例の二重管構造体部分の外観図である。
図9】本発明を適用した一実施例の超低温貯蔵庫の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
(1)冷凍装置R
図1は、図9に例示する実施例の超低温貯蔵庫DFの貯蔵室CB内を−80℃以下の温度(庫内温度)、例えば−85℃乃至−86℃の極低温に冷却する実施例の冷凍装置Rの冷媒回路図である。尚、冷凍装置Rの冷媒回路を構成する圧縮機1、2等は超低温貯蔵庫DFの断熱箱体IBの下部に位置する機械室MCに設置されており、蒸発器(冷媒配管)3は、断熱箱体IBの内箱ILの断熱材I側の周面に交熱的に取り付けられているものとする。
【0019】
(1−1)高温側冷媒回路4
本実施例の冷凍装置Rの冷媒回路は、多元(二元)単段の冷媒回路として、それぞれ独立した冷媒閉回路を構成する高温側冷媒回路4と低温側冷媒回路6により構成されている。高温側冷媒回路4を構成する圧縮機1は、一相若しくは三相交流電源を用いる電動圧縮機である。この圧縮機1で圧縮された冷媒は、圧縮機1の吐出側に接続された冷媒吐出管7に吐出される。この冷媒吐出管7は、補助凝縮器(プレコンデンサ)8に接続される。この補助凝縮器8は前記貯蔵室CBの開口縁を加熱して露付きを防止するためのフレームパイプ9に接続される。
【0020】
フレームパイプ9を出た冷媒配管は、一旦、圧縮機1のオイルクーラ11に接続された後、次に低温側冷媒回路6を構成する圧縮機2のオイルクーラ12に接続された後、凝縮器(コンデンサ)13に接続される。そして、凝縮器13を出た冷媒配管は、高温側デハイドレータ(ドライコア)14及びキャピラリチューブ16(減圧器)に接続される。デハイドレータ14は、高温側冷媒回路4内の水分を除去するための水分除去手段である。また、キャピラリーチューブ16は、カスケード熱交換器17の高温側蒸発器19から出て圧縮機1に戻る吸込配管18の一部(18A)内に挿通されている。
【0021】
具体的には、蒸発器19の出口側の吸込配管18の一部である配管18A内に、キャピラリチューブ16を挿通して二重管構造を構成している。係る二重管構造により、当該二重管21(以下、二重管構造体と称する)の内側となるキャピラリチューブ16を流れる冷媒と、その外側となる配管18Aを流れる蒸発器19からの冷媒とが熱交換可能に構成されている。
【0022】
このように、キャピラリチューブ16を吸込配管18(配管18A)内に挿通して二重管構造体21とすることで、キャピラリチューブ16内を通過する冷媒と吸込配管18(配管18A)内を通過する冷媒とは、キャピラリチューブ16の全周の壁面を伝達する熱伝導によって熱交換することとなる。これにより、従来の吸込配管の外周面にキャピラリチューブを添設した構造から比して、熱交換性能を格段に向上させることができるようになる。
【0023】
更に、二重管構造体21の配管18Aの外周全体は図示しない断熱材により囲繞される。これにより、外部からの熱の影響を受け難くなり、配管18A内の冷媒とキャピラリチューブ16内の冷媒との熱交換能力をより一層向上させることができるようになる。更にまた、二重管構造体21の内側となるキャピラリーチューブ16内と、当該キャピラリチューブ16の外側の吸込配管18(配管18A)内において、冷媒の流れが対向流となるように冷媒を流す。これにより、当該二重管構造体21における熱交換能力をより一層改善することができるようになる。
【0024】
また、キャピラリチューブ16を出た冷媒配管は、低温側冷媒回路6の凝縮器22と交熱的に設けられた高温側蒸発器19に接続される。当該高温側蒸発器19は、低温側冷媒回路6の凝縮器22と共にカスケード熱交換器17を構成している。そして、高温側蒸発器19から出た吸込配管18は、高温側ヘッダー23、上記二重管構造体21を順次経て圧縮機1の吸込側に接続される。即ち、高温側冷媒回路4は、圧縮機1、凝縮器13、キャピラリチューブ16及び蒸発器19等がこの順で環状に接続された構成とされている。
【0025】
(1−2)高温側冷媒回路4の冷媒
当該高温側冷媒回路4内には、ジフロロメタン(R32)/ペンタフロロエタン(R125)/1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)共沸混合物(R407D)、或いは、ペンタフロロエタン(R125)/1,1,1−トリフロロエタン(R143a)/1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)共沸混合物(R404A)、或いは、GWPが1500以下である冷媒組成物として、ジフロロメタン(R32)、ペンタフロロエタン(R125)、1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)、1,1,1−トリフロロエタン(R143a)の冷媒群に、1,1,1,2,3−ペンタフロロペンテン(HFO−1234ze、GWP6、沸点−19℃)を含むフッ化炭化水素混合冷媒を含む混合冷媒、或いは、同様にGWPが1500以下である冷媒組成物として、ジフロロメタン(R32)、ペンタフロロエタン(R125)、1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)、1,1,1−トリフロロエタン(R143a)の冷媒群に、1,1,1,2−テトラフロロペンテン(HFO−1234yf、GWP4、沸点−29.4℃)を含むフッ化炭化水素混合冷媒を含む混合冷媒が封入される。
【0026】
沸点は大気圧で約−40℃であり、この混合冷媒が補助凝縮器8、フレームパイプ9、及び、凝縮器13にて凝縮し、キャピラリチューブ16にて減圧されてカスケード熱交換器17を構成する高温側蒸発器19に流入して蒸発する。これにより、カスケード熱交換器17は−36℃程となる。
【0027】
(1−3)高温側冷媒回路4の冷媒の流れ
図1において、破線矢印は高温側冷媒回路4を循環する冷媒の流れを示している。即ち、圧縮機1から吐出された高温ガス状冷媒は、冷媒吐出管7を介して密閉容器から吐出され、補助凝縮器8、フレームパイプ9にて放熱した後、再度密閉容器内に戻りオイルクーラ11を通過する。これにより、密閉容器内を温度低下した冷媒により冷却することができる。そして、係る高温ガス状冷媒は、低温側冷媒回路6の圧縮機2のオイルクーラ12、凝縮器13にて凝縮されて放熱液化した後、デハイドレータ14で含有する水分が除去され、二重管構造体21のキャピラリチューブ16に流入する。
【0028】
ここで、キャピラリチューブ16において、冷媒は当該キャピラリチューブ16の全周に設けられた吸込配管18(配管18A)内を通過する冷媒と、キャピラリチューブ16の全周の壁面を伝達する熱伝導によって熱交換して、更に温度低下しながら減圧されて、蒸発器19に流入する。そして、蒸発器19において前記冷媒がカスケード熱交換器17の凝縮器22内を流れる冷媒から吸熱することにより蒸発する。これにより、凝縮器22内を流れる冷媒が冷却される。
【0029】
そして、蒸発器19にて蒸発した冷媒は、その後、吸込配管18を介して当該高温側蒸発器19から出て、高温側ヘッダー23を経て二重管構造体21内に流入し、前述したキャピラリチューブ16内を流れる冷媒と熱交換した後、圧縮機1に帰還する。
【0030】
(1−4)低温側冷媒回路6
他方、低温側冷媒回路6を構成する圧縮機2は、高温側冷媒回路4の圧縮機1と同様に一相若しくは三相交流電源を用いる電動圧縮機である。この圧縮機2の冷媒吐出管26は、内部熱交換器27に至る。この内部熱交換器27は、圧縮機2で圧縮され、キャピラリチューブ28(減圧器)に向かう途中の高圧側冷媒と蒸発器3にて蒸発し、圧縮機2に戻る途中の低圧側冷媒とを熱交換するための熱交換器である。
【0031】
内部熱交換器27を経た高圧側の冷媒配管は、凝縮器22に接続される。当該凝縮器22は、前述したように高温側冷媒回路4の高温側蒸発器19と共にカスケード熱交換器17を構成している。凝縮器22から出た冷媒配管は、低温側デハイドレータ(ドライコア)31及びキャピラリチューブ28に接続される。デハイドレータ31は、低温側冷媒回路6内の水分を除去するための水分除去手段である。また、キャピラリチューブ28は、蒸発器3から出て圧縮機2に戻る吸込配管32の一部である後述する二重管構造体33の主管34内に挿通されている。
【0032】
(1−5)二重管構造体33の構造
具体的な構造が図2に示されている。即ち、蒸発器3の出口側であって、且つ、内部熱交換器27の上流側に位置する吸込配管32の一部(蒸発器3の直後)である主管34内に、キャピラリチューブ28を挿通して図2に示すように二重管構造体33を構成している。係る二重管構造により、二重管構造体33の内側となるキャピラリチューブ28を流れる冷媒と、その外側となる主管34を流れる蒸発器3からの冷媒とが熱交換可能に構成されている。
【0033】
次に、この二重管構造体33の製造手順の実施例を説明する(尚、前述した二重管構造体21も同様である)。先ず、キャピラリチューブ28に比較して大径となる直管状の主管34内に直管状のキャピラリチューブ28を挿通して二重管とする。次に、係る二重管を螺旋状に複数段巻回する。このとき、主管34の軸の中心と、キャピラリチューブ28の軸の中心とがなるべく一致するように巻回して、螺旋状の二重管を形成する。これにより、主管34の内壁面とキャピラリチューブ28の外壁面との間に、できるだけ一貫して均一な隙間を構成する。このように、二重管を複数段螺旋状に巻回して、螺旋状の二重管構造とすることで、キャピラリーチューブ28の長さを十分に確保し、且つ、係る二重管構造体33の熱交換部分を十分に確保しながら、小型化を図ることが可能となる。
【0034】
次に、主管34の両端に、実施例ではT字管の一方の側端36Aに端管37の一端を溶接して成る接続配管36の他方の側端36Bを溶接して取り付け、接続配管36の端管37の他端の開口からキャピラリチューブ28の端部をそれぞれ引き出した後、当該端管37の他端を溶接してシールする。更に、一方の接続配管36のT字管の下端36Cに蒸発器3の出口側に接続された吸込配管32を接続して、この接続部を溶接する。同様に、主管34の他端に取り付けられた接続配管36のT字管の下端36Cに内部熱交換器27に至る吸込配管32を接続して、この接続部を溶接する。そして、係る二重管構造体33の外周を図示しない断熱材により囲繞する。
【0035】
このように、キャピラリチューブ28を吸込配管32(主管34及び接続配管36)内に挿通して二重管構造体33とすることで、キャピラリチューブ28内を通過する冷媒と吸込配管32(主管34)内を通過する冷媒とは、キャピラリチューブ28の全周の壁面を伝達する熱伝導によって熱交換することとなる。これにより、吸込配管の外周面にキャピラリチューブを添設した構造から比して、熱交換性能を格段に向上させることができるようになる。
【0036】
更に、二重管構造体33の外周全体を断熱材により囲繞することで、外部からの熱の影響を受け難くなり、主管34内の冷媒とキャピラリチューブ28内の冷媒との熱交換能力をより一層向上させることができるようになる。更にまた、二重管構造体33の内側となるキャピラリーチューブ28内と、当該キャピラリチューブ28の外側の吸込配管32(主管34)内において、冷媒の流れが対向流となるように冷媒を流す。これにより、当該二重管構造体33における熱交換能力をより一層改善することができるようになる。
【0037】
係る二重管構造体33は、図9に示す如く超低温貯蔵庫DFの内箱ILの背面側となる断熱材I内に収納される。尚、図9では二重管構造体33を囲繞する断熱材は示していない。また、図9に示すISは、前述したカスケード熱交換器17等を断熱材で囲繞して成る断熱構造体であり、二重管構造体33に隣接して内箱ILの背面側の断熱材I内に収納される。一方、当該二重管構造体33を出た吸込配管32は、内部熱交換器27を経て圧縮機2の吸込側に接続される。即ち、低温側冷媒回路6も圧縮機2、凝縮器22、キャピラリチューブ28、蒸発器3等がこの順で環状に接続された構成とされている。
【0038】
(1−6)低温側冷媒回路6の冷媒組成物
当該低温側冷媒回路6内には、実施例では第1冷媒としてのエタン(R170)と、これに混合される冷媒としての二酸化炭素(R744)、及び、ジフロロメタン(R32)を含む混合冷媒を封入する。各冷媒の沸点及びGWPは図3に示されている。エタン(R170)の沸点は−88.8℃、GWPは3、二酸化炭素(R744)の沸点は−78.4℃、GWPは1、ジフロロメタン(R32)の沸点は−51.7℃、GWPは650であり、これらを混合した冷媒組成物の沸点は、二酸化炭素(R744)による冷凍能力向上も寄与して−86℃以下となる。
【0039】
二酸化炭素(R744)の沸点は−78.4℃であるため、−85℃〜−86℃の蒸発温度を目的とする蒸発器3での冷却作用には直接には寄与しないが、GWPが1であるため、この二酸化炭素(R744)を混合することにより、低温側冷媒回路6に封入される冷媒のGWPを低下させることができる。また、熱伝導率が向上することにより、冷凍能力を向上させることが可能となると共に、圧縮機2に吸い込まれる冷媒の密度が高くなると共に、第1冷媒であるエタン(R170)との共沸効果も期待できることから、尚一層の冷凍能力の改善を図ることができるようになる。また、第1冷媒が可燃性の場合、不燃化への効果も期待できる。また、ジフロロメタン(R32)は二酸化炭素(R744)の沸点より低い温度においてこの二酸化炭素(R744)との溶解性を有し、しかもその溶解性が高い第2冷媒である。
【0040】
(1−7)低温側冷媒回路6の冷媒の流れ
図1において、実線矢印は低温側冷媒回路6を循環する冷媒の流れを示している。具体的に当該低温側冷媒回路6における冷媒の流れを説明すると、圧縮機2から吐出された高温ガス状冷媒は、冷媒吐出管26を介して密閉容器から吐出され、内部熱交換器27、凝縮器22にて凝縮されて放熱液化した後、低温側デハイドレータ31で含有する水分が除去され、キャピラリチューブ28に流入する。
【0041】
ここで、キャピラリチューブ28において、冷媒は当該キャピラリチューブ28の全周に設けられた吸込配管32(主管34)内を通過する冷媒と、キャピラリチューブ28の全周の壁面を伝達する熱伝導によって熱交換して、更に温度低下しながら減圧されて蒸発器3に流入する。そして、蒸発器3において第1冷媒であるエタン(R170)が周囲から熱を奪って蒸発する。このとき、第1冷媒のエタン(R170)が蒸発器3で蒸発することにより、冷却作用を発揮して、この蒸発器3の周囲を−88℃〜−90℃という極低温に冷却する。前述したように蒸発器(冷媒配管)3は断熱箱体IBの内箱ILの断熱材I側に沿って交熱的に巻回して構成されているので、係る蒸発器3の冷却により、超低温貯蔵庫DFの貯蔵室CB内を、−80℃以下の庫内温度とすることが可能となる。そして、蒸発器3にて蒸発した冷媒は、その後、吸込配管32を介して蒸発器3から出て、前述した二重管構造体33、内部熱交換器27を経て圧縮機2に帰還する。
【0042】
このように、蒸発器3から圧縮機2に帰還する冷媒が通過する吸込配管32(主管34)内に、キャピラリチューブ28を挿通して二重管構造体33とすることで、主管34内の冷媒とキャピラリチューブ28内の冷媒との熱交換効率を向上させて、性能の改善を図ることができる。特に、キャピラリチューブ28を蒸発器3から出た直後の吸込配管32の主管34内に挿通して二重管構造体33とし、キャピラリチューブ28の全周の壁面を伝達する熱伝導によって熱交換可能に構成することで、蒸発器3からの帰還冷媒によって、最も沸点の低いエタン(R170)が効率的に冷却されることとなり、性能の著しい向上を図ることができる。従って、本実施例のような超低温貯蔵庫DFでは、特に有効である。
【0043】
更に、キャピラリチューブ28が挿通されて二重管構造体33を断熱材にて囲繞することで、熱交換効率をより一層改善することができるようになる。更にまた、キャピラリチューブ28内の冷媒の流れと、当該キャピラリチューブ28の外側の主管34内を通過する冷媒の流れを対向流とすることで、更なる熱交換能力の改善を図ることができる。
【0044】
更にまた、実施例では高温側冷媒回路4の減圧手段としてのキャピラリチューブ16も低温側冷媒回路6のキャピラリチューブ28と同様に二重管構造体21とされ、係る二重管構造体21が断熱材にて囲繞されている。更に、二重管構造体21の内側となるキャピラリーチューブ16内と、当該キャピラリチューブ16の外側の吸込配管18(配管18A)内において、冷媒の流れが対向流となる。これにより、蒸発器19からの帰還冷媒によって、キャピラリチューブ16内の冷媒を効率的に冷却することができる。これにより、熱交換効率をより一層向上させて、更なる性能の改善を図ることができる。総じて、効率的に超低温貯蔵庫DFの庫内(貯蔵室CB内)を所望の極低温に冷却可能な冷凍装置Rを実現することができる。
【0045】
(2)低温側冷媒回路6での二酸化炭素のドライアイス化を解消する冷媒組成
ここで、前述した低温側冷媒回路6の二重管構造体33では、T字管で構成される各接続配管36の部分で、その形状に沿って冷媒の流通方向が略直角に変更されるかたちとなる(図1図2にX1、X2で示す)。そのため、この接続配管36を冷媒が通過する際、どうしても圧力損失が生じ易い。
【0046】
他方、前述した如く二酸化炭素(R744)の沸点は−78.4℃であり、第1冷媒であるエタン(R170)と比較して高く、最終の蒸発器3内でも蒸発せずに液体、或いは、湿り蒸気として吸込配管32に出てくることになる。そのため、蒸発器3を出た冷媒は二酸化炭素(R744)の比率が非常に高く、且つ、−85℃以下の極低温のものとなるため、二酸化炭素の特性上、ドライアイス化する可能性がある。
【0047】
このような状態の冷媒が低温側冷媒回路6の二重管構造体33に至り、前述した圧力損失が生じ易い箇所X1、X2において、二酸化炭素(R744)が固化し、ドライアイスとなった場合、X1やX2で示す接続配管36中に詰まり、冷媒循環が阻害される状態に至る。
【0048】
(2−1)エタン(R170)+二酸化炭素(R744)
図4は低温側冷媒回路6に封入される冷媒組成物の総重量に対する二酸化炭素(R744)の割合(wt%)を段階的に変化させた場合の庫内温度(高さ方向の庫内中央の温度)1/2Hと蒸発器3の入口の温度(蒸発器入口温度)Eva−Inの変化を示している(外気温度+30℃)。エタン(R170)が100(wt%)のときに蒸発器入口温度Eva−Inは−91.2℃、庫内温度1/2Hは−86.0℃であった。そこに二酸化炭素(R744)を4.6(wt%)混合すると、蒸発器入口温度Eva−Inは−92.2℃、庫内温度1/2Hは−86.1℃に下がり、更に、混合する二酸化炭素(R744)を8.8(wt%)に増やすと、蒸発器入口温度Eva−Inは−93.9℃、庫内温度1/2Hは−86.3℃に下がった。
【0049】
更に、混合する二酸化炭素(R744)を11.9(wt%)に増やすと、蒸発器入口温度Eva−Inは−93.0℃に上昇するものの、庫内温度1/2Hは−86.6℃に下がった。但し、蒸発器入口温度Eva−Inが上昇し始めていることから、前記接続配管36で圧力損失が生じ易い箇所X1、X2にドライアイスが生成され始めているものと考えられる。
【0050】
そして、混合する二酸化炭素(R744)を15.4(wt%)まで増やしたとき、蒸発器入口温度Eva−Inと庫内温度1/2Hが極めて不安定となって計測不可能となってしまった。即ち、二酸化炭素(R744)がドライアイス化して前記箇所X1、X2に詰まってしまい、冷媒が流れなくなり、或いは、流れが著しく阻害されていることを示している。この状態では庫内温度も急激に上昇することになる。
【0051】
(2−2)ジフロロメタン(R32)の添加
次に、係る組成、即ち、エタン(R170)が84.6(wt%)、二酸化炭素(R744)が15.4(wt%)の組成に対して、ジフロロメタン(R32)を3.1(wt%)混合した場合、各温度は安定して蒸発器入口温度Eva−Inは−91.2℃、庫内温度1/2Hは−86.8℃となった。これは接続配管36の箇所X1、X2部分に詰まったドライアイスを、二酸化炭素(R744)の沸点より低い温度において二酸化炭素(R744)と溶解性を有し、且つ、その溶解性が高いジフロロメタン(R32)が溶かして除去したことを表している。このときの組成は、エタン(R170)が81.9(wt%)、二酸化炭素(R744)が15.0(wt%)、ジフロロメタン(R32)が3.1(wt%)である。総重量に対するエタン(R170)と二酸化炭素(R744)の割合が減少しているのは、ジフロロメタン(R32)が入ったためである。
【0052】
その後、ジフロロメタン(R32)を6.1(wt%)に増やしたとき、蒸発器入口温度Eva−Inは−91.9℃に下がり、庫内温度1/2Hも−87.0℃に下がった。更に、ジフロロメタン(R32)を8.9(wt%)に増やしたとき、蒸発器入口温度Eva−Inは−93.2℃、庫内温度1/2Hも−86.8℃となり、安定したことが分かる。
【0053】
図5は上記エタン(R170)と二酸化炭素(R744)とジフロロメタン(R32)を含む冷媒組成物の割合に対する二酸化炭素(R744)のドライアイス化とその解消の状況を纏めたものである。図5の横軸は総重量に対する二酸化炭素(R744)の割合(wt%)、縦軸は蒸発器入口温度Eva−Inである。尚、図5の上段と下段は、外気温度、及び/又は、キャピラリチューブの条件を変えて得られた二つの実験結果をそれぞれプロットしたものである。図中に星印プロット(14)、(15)、(16)で示す条件において、ジフロロメタン(R32)を含まないエタン(R170)と二酸化炭素(R744)の混合冷媒を使用した場合、ドライアイスの発生が実験で確認された。
【0054】
また、図5中の各プロット(1)〜(6)は実施例の冷凍装置Rにエタン(R170)のみ、エタン(R170)と二酸化炭素(R744)にジフロロメタン(R32)を0(wt%)、3.1(wt%)、6.1(wt%)、8.9(wt%)、23.6(wt%)添加した場合をそれぞれ示し、(7)〜(13)は上記の如く条件を変えて冷凍装置Rにエタン(R170)のみ、エタン(R170)と二酸化炭素(R744)にジフロロメタン(R32)を0(wt%)、4.0(wt%)、15.8(wt%)、11.3(wt%)、18.5(wt%)、27.5(wt%)添加した場合をそれぞれ示している。
【0055】
そして、図5中の実線L1がエタン(R170)に二酸化炭素(R744)を混合したときのドライアイスが発生しない限界を示しており、例えば、蒸発器入口温度Eva−Inが−91℃の場合、二酸化炭素(R744)を14(wt%)まで混合してもドライアイスが生じないことを意味している。この実線L1〜破線L2の範囲がドライアイスが発生する領域を示しており、上記蒸発器入口温度Eva−Inが−91℃の場合には、例えば二酸化炭素(R744)を19wt%まで入れるとドライアイスが発生してしまうことを意味している。
【0056】
また、実線L3がジフロロメタン(R32)を8.9(wt%)添加してドライアイス化を解消し、庫内温度1/2H及び蒸発器入口温度Eva−Inが安定した場合を示している。尚、ジフロロメタン(R32)が入った分、上記蒸発器入口温度Eva−Inが−91℃の場合には、二酸化炭素(R744)の割合は16.4(wt%)程に低下する。
【0057】
図4のジフロロメタン(R32)を3.1(wt%)添加した場合が図5のプロット(3)、6.1(wt%)の場合が図5のプロット(4)、8.9(wt%)の場合が図5のプロット(5)である。ジフロロメタン(R32)を添加しないとき、星印プロット(14)であったものが、プロット(5)となって実線L3に移行し、ドライアイス化が防げたことを意味している。
【0058】
図5の実線L4はジフロロメタン(R32)を23.6(wt%)まで入れてドライアイス化を解消し、庫内温度1/2H及び蒸発器入口温度Eva−Inが安定した場合を示しており、この場合には、例えば蒸発器入口温度Eva−Inが−90.5℃のとき、二酸化炭素(R744)を20(wt%)より多い25(wt%)にまで混合可能(ドライアイス化しない)となる。即ち、ジフロロメタン(R32)を添加しないとき、星印プロット(15)であったものが、プロット(6)となって実線L4に移行し、ドライアイス化が防げたことを意味している。
【0059】
参考までに別の実験結果として、下段の実線L5は、ジフロロメタン(R32)を4.0(wt%)まで入れてドライアイス化を解消し、庫内温度1/2H及び蒸発器入口温度Eva−Inが安定した場合を示し、L6は18.5(wt%)、L7は27.5(wt%)まで増やしてドライアイス化を解消し、庫内温度1/2H及び蒸発器入口温度Eva−Inが安定した場合を示している。
【0060】
即ち、ジフロロメタン(R32)を添加しないとき、星印プロット(16)であったものが、ジフロロメタン(R32)を4.0(wt%)添加するとプロット(9)となって実線L5に移行し、ドライアイス化が防げたことを意味している。
【0061】
このように、実施例ではエタン(R170)を第1冷媒とし、このエタン(R170)と、二酸化炭素(R744)と、この二酸化炭素(R744)の沸点より低い温度において二酸化炭素(R744)との溶解性を有するジフロロメタン(R32)を含む冷媒組成としたので、このジフロロメタン(R32)を上記のように二酸化炭素(R744)のドライアイス化を防止可能な割合で添加することにより、例えば二酸化炭素(R744)を総質量に対して20%より多く加えた場合にも、低温側冷媒回路6の二重管構造体33の圧力損失が生じ易い箇所X1やX2におけるドライアイスの発生を解消し、安定した冷凍効果を発揮させることが可能となる。
【実施例2】
【0062】
(3)エタン(R170)+二酸化炭素(R744)+1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)
次に、上記低温側冷媒回路6にエタン(R170)と二酸化炭素(R744)に加えて、1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)を混合してドライアイス化を解消した場合を説明する。前述の実施例では二酸化炭素(R744)の沸点より低い温度において二酸化炭素(R744)との溶解性を有する第2冷媒としてジフロロメタン(R32)を用いたが、この実施例の1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)も二酸化炭素(R744)の沸点より低い温度において二酸化炭素(R744)との溶解性を有する第2冷媒である。尚、1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)の沸点は−26.1℃、GWPは1300である。また、不燃性でもあり、混合冷媒の不燃化の効果も期待できる。
【0063】
図6は前述の図4の場合と同様に低温側冷媒回路6に封入される冷媒組成物の総重量に対する二酸化炭素(R744)の割合(wt%)を変化させた場合の庫内温度1/2Hと蒸発器入口温度Eva−Inの変化を示している(同様に外気温度+30℃)。この実験ではエタン(R170)が100(wt%)のときに蒸発器入口温度Eva−Inは−91.8℃、庫内温度1/2Hは−86.0℃であった。そこに二酸化炭素(R744)を4.6(wt%)混合すると、蒸発器入口温度Eva−Inは−93.1℃、庫内温度1/2Hは−86.3℃に下がり、更に、混合する二酸化炭素(R744)を10.3(wt%)に増やすと、蒸発器入口温度Eva−Inは−94.0℃、庫内温度1/2Hは−86.8℃に下がった。
【0064】
そして、混合する二酸化炭素(R744)を14.8(wt%)まで増やしたとき、蒸発器入口温度Eva−Inと庫内温度1/2Hが極めて不安定となって計測不可能となってしまった。即ち、二酸化炭素(R744)がドライアイス化して接続配管36の前記箇所X1、X2に詰まってしまい、冷媒が流れなくなり、或いは、流れが著しく阻害されていることを示している。
【0065】
(3−1)1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)の添加
次に、係る組成、即ち、エタン(R170)が85.2(wt%)、二酸化炭素(R744)が14.8(wt%)の組成に対して、1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)を4.6(wt%)混合した場合、各温度は安定して蒸発器入口温度Eva−Inは−92.9℃、庫内温度1/2Hは−86.5℃となった。これは接続配管36の箇所X1、X2部分に詰まったドライアイスを、二酸化炭素(R744)と溶解性を有する1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)が溶かして除去したことを表している。このときの組成は、エタン(R170)が81.3(wt%)、二酸化炭素(R744)が14.1(wt%)、1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)が4.6(wt%)である。総重量に対するエタン(R170)と二酸化炭素(R744)の割合が減少しているのは、1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)が4.6(wt%)が入ったためである。
【0066】
その後、1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)を8.3(wt%)に増やしたとき、蒸発器入口温度Eva−Inは−93.0℃に下がり、庫内温度1/2Hも−86.4℃に下がった。更に、1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)を11.5(wt%)に増やしたとき、蒸発器入口温度Eva−Inは−93.3℃、庫内温度1/2Hも−86.4℃となり、安定したことが分かる。
【0067】
このように、ジフロロメタン(R32)の代わりに1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)を添加した場合にも、二酸化炭素(R744)のドライアイス化を極めて効果的に解消することができる。
【実施例3】
【0068】
(4)ジフルオロエチレン(R1132a)+二酸化炭素(R744)+ジフロロメタン(R32)
次に、上記低温側冷媒回路6にエタン(R170)の代わりに第1冷媒としてジフルオロエチレン(R1132a)を封入した場合について説明する。この場合の冷媒組成物は、ジフルオロエチレン(R1132a)と二酸化炭素(R744)とジフロロメタン(R32)となり、この組成によって二酸化炭素のドライアイス化を解消した場合である。尚、ジフルオロエチレン(R1132a)の沸点は−83.5℃、GWPは10である。
【0069】
図7は前述の図4図6の場合と同様に低温側冷媒回路6に封入される冷媒組成物の総重量に対する二酸化炭素(R744)の割合(wt%)を変化させた場合の庫内温度(高さ方向の中央の温度)1/2Hと蒸発器3の入口の温度(蒸発器入口温度)Eva−Inの変化を示している。但し、これは外気温度、及び/又は、キャピラリチューブの条件を変えて得られたもう一つの実験結果であるが、同様の傾向を示している。
【0070】
ジフルオロエチレン(R1132a)が100(wt%)のときに蒸発器入口温度Eva−Inは−95.2℃、蒸発器3の出口温度(蒸発器出口温度)Eva−Outは−90.3℃、庫内温度1/2Hは−88.0℃であった。そこに二酸化炭素(R744)を3.8(wt%)混合すると、蒸発器入口温度Eva−Inは−97.0℃、蒸発器出口温度Eva−Outは−91℃、庫内温度1/2Hは−88.7℃に下がり、更に、混合する二酸化炭素(R744)を7.9(wt%)に増やすと、蒸発器入口温度Eva−Inは−98.3℃、蒸発器出口温度Eva−Outは−91.6℃、庫内温度1/2Hは−89.3℃に下がった。
【0071】
更に、混合する二酸化炭素(R744)を10.7(wt%)に増やすと、蒸発器入口温度Eva−Inは−99.3℃、蒸発器出口温度Eva−Outは−91.8℃、庫内温度1/2Hは−89.6℃に下がり、更に、混合する二酸化炭素(R744)を13.4(wt%)に増やすと、蒸発器入口温度Eva−Inは−99.5℃、蒸発器出口温度Eva−Outは−92.1℃、庫内温度1/2Hは−89.8℃に下がった。
【0072】
更に、混合する二酸化炭素(R744)を16.3(wt%)に増やすと、蒸発器出口温度Eva−Outは−92.2℃、庫内温度1/2Hは−90.0℃に下がるものの、蒸発器入口温度Eva−Inは−97.0℃に上昇した。この蒸発器入口温度Eva−Inが上昇し始めていることから、前記接続配管36で圧力損失が生じ易い箇所X1、X2にドライアイスが生成され始めていることが分かる。
【0073】
そして、混合する二酸化炭素(R744)を18.8(wt%)や20.8(wt%)まで増やしたとき、蒸発器入口温度Eva−Inと庫内温度1/2Hが極めて不安定となって計測不可能となってしまった。即ち、二酸化炭素(R744)がドライアイス化して前記箇所X1、X2に詰まってしまい、冷媒が流れなくなり、或いは、流れが著しく阻害されていることを示している。この状態では庫内温度も急激に上昇することになる。
【0074】
(4−1)ジフロロメタン(R32)の添加
次に、係る組成、即ち、ジフルオロエチレン(R1132a)が79.2(wt%)、二酸化炭素(R744)が20.8(wt%)の組成に対して、ジフロロメタン(R32)を1.1(wt%)混合した場合、各温度は安定して蒸発器入口温度Eva−Inは−91.6℃、蒸発器出口温度Eva−Outは−91.4℃、庫内温度1/2Hは−89.3℃となった。これは接続配管36の箇所X1、X2部分に詰まったドライアイスを、二酸化炭素(R744)と溶解性が高いジフロロメタン(R32)が溶かして除去したことを表している。このときの組成は、ジフルオロエチレン(R1132a)が78.3(wt%)、二酸化炭素(R744)が20.6(wt%)、ジフロロメタン(R32)が1.1(wt%)である。総重量に対するジフルオロエチレン(R1132a)と二酸化炭素(R744)の割合が減少しているのは、ジフロロメタン(R32)が入ったためである。
【0075】
このように、第1冷媒としてエタン(R170)の代わりに、ジフルオロエチレン(R1132a)を使用した場合にも、ジフロロメタン(R32)の添加により、二酸化炭素(R744)のドライアイス化を極めて効果的に解消することができるものである。
【0076】
尚、上記各実施例では沸点が−89.0℃以上、−78.1℃以下の第1冷媒として、エタン(R170)とジフルオロエチレン(R1132a)を例に説明したが、それに限らず、ジフルオロエチレン(R1132a)とヘキサフルオロエタン(R116)との混合冷媒や、ジフルオロエチレン(R1132a)とエタン(R170)との混合冷媒でも有効である。
【0077】
また、第1冷媒としてエタン(R170)とヘキサフルオロエタン(R116)の混合冷媒や、トリフルオロメタン(R23)を39質量%、ヘキサフルオロエタン(R116)を61質量%混合した共沸混合物(R508A、沸点−85.7℃)や、トリフルオロメタン(R23)を46質量%、ヘキサフルオロエタン(R116)を54質量%混合した共沸混合物(R508B、沸点−86.9℃)を使用した場合にも本発明は効果的である。
【0078】
また、上記各実施例では二酸化炭素(R744)の沸点より低い温度において二酸化炭素(R744)との溶解性を有する第2冷媒として、ジフロロメタン(R32)と1,1,1,2−テトラフロロエタン(R134a)を例に説明したが、それに限らず、n−ペンタン(R600)やイソブタン(R600a)、1,1,1,2,3−ペンタフロロペンテン(HFO−1234ze)や、1,1,1,2−テトラフロロペンテン(HFO−1234yf)も二酸化炭素(R744)の沸点より低い温度において二酸化炭素(R744)との溶解性を有するので、第2冷媒として採用可能である。上記各冷媒の沸点及びGWPは図3に示されている。
【実施例4】
【0079】
次に、図8を用いて前記低温側冷媒回路6の二重管構造体33の他の実施例について説明する。尚、この図において、図2中と同一符号で示すものは同一のものとする。この場合の実施例では、二酸化炭素(R744)のドライアイス化が発生する二重管構造体33に電気ヒータ41が取り付けられている。この電気ヒータ41は、前述した圧力損失が生じ易い接続配管36の箇所X1、X2に対応して巻装されている。
【0080】
図中42は超低温貯蔵庫DFの運転制御を司る制御手段としてのコントローラであり、電気ヒータ41はこのコントローラ42の出力に接続されている。また、コントローラ42の入力には、貯蔵室CB内(蒸発器3による冷凍効果で冷却される対象領域)の庫内温度を検出する庫内温度センサ43と、二重管構造体33の温度を検出する二重管構造体温度センサ44の出力が接続されている。
【0081】
そして、コントローラ42は例えば二重管構造体温度センサ44が検出する二重管構造体33の温度が所定値以下に低下した場合、前記電気ヒータ41に通電して二重管構造体33の箇所X1、X2を加熱し、所定値と所定のディファレンシャルを存した上限値まで上昇した場合、電気ヒータ41の通電を停止する。この所定値は、接続配管36の箇所X1、X2の部分で二酸化炭素(R744)のドライアイス化が発生する温度とされる。
【0082】
このように、コントローラ42により二重管構造体33の温度がドライアイスが発生する所定値まで低下した場合、接続配管36の箇所X1、X2を電気ヒータ41で加熱するので、箇所X1、X2における二酸化炭素(R744)のドライアイス化を未然に回避し、或いは、発生したドライアイスを融解させることができるようになる。これにより、前述したジフロロメタン(R32)の効果と相まって、二酸化炭素(R744)のドライアイス化に伴う不都合を極めて効果的に解消することが可能となる。
【0083】
逆に、この実施例では前述したジフロロメタン(R32)等の二酸化炭素(R744)と溶解性を有する第2冷媒を添加しなくとも、二酸化炭素(R744)のドライアイス化を解消することが可能となる効果がある。
【0084】
尚、上記実施例のように二重管構造体33の温度のみならず、それに加えて、庫内温度センサ43が検出する貯蔵室CBの庫内温度が設定値に対して上昇(所定値)した場合に、電気ヒータ41に通電するようにしてもよい(その後、庫内温度が設定値に低下した場合、若しくは、二重管構造体33の温度が前記上限値まで上昇した場合には、通電を停止する)。それによって一層的確に二酸化炭素(R744)のドライアイス化を認識して、電気ヒータ41への通電を的確に制御することができるようになる。
【0085】
また、各実施例ではT字管により接続配管36を構成したが、それに限らず、Y字状やL字状等、圧力損失が生じ易い他の形状の接続配管の場合にも本発明は有効である。更に、以上の各実施例で示した数値は、実験測定した超低温貯蔵庫DFの場合の例示であり、その容量等に応じて適宜設定するとよい。
【0086】
更に、実施例では所謂二元冷凍装置にて本発明を説明したが、それに限らず、圧縮機と、凝縮器と減圧器及び蒸発器をこの順で環状に接続した一元の冷凍装置や、二元より多い多元冷凍装置にも本発明は有効である。
【符号の説明】
【0087】
1、2 圧縮機
3、19 蒸発器
4 高温側冷媒回路
6 低温側冷媒回路
13、22 凝縮器
16、28 キャピラリチューブ(減圧器)
17 カスケード熱交換器
32 吸込配管
33 二重管構造体
34 主管
36 接続配管
DF 超低温貯蔵庫
R 冷凍装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9