特許第5963980号(P5963980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5963980-内燃機関のための排気セクション 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5963980
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】内燃機関のための排気セクション
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/02 20060101AFI20160721BHJP
   F02M 26/14 20160101ALI20160721BHJP
【FI】
   F02B37/02 F
   F02B37/02 C
   F02M26/14
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-558367(P2015-558367)
(86)(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公表番号】特表2016-507697(P2016-507697A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】EP2014000346
(87)【国際公開番号】WO2014127889
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2015年8月20日
(31)【優先権主張番号】102013003031.5
(32)【優先日】2013年2月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】ケンツェル,シュテファン
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02295769(EP,A1)
【文献】 特表2009−535547(JP,A)
【文献】 特表2009−541631(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0159948(US,A1)
【文献】 特表2015−508142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/02
F02M 26/00−74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスターボチャージャーのタービンの第1タービン流路に割り当てられ、内燃機関の排気ガスによって貫流可能な第1排気流路(14)と、少なくとも部分的に前記第1排気流路(14)から流体工学的に分離され、前記内燃機関の排気ガスによって貫流可能で、前記タービンの第2タービン流路に割り当てられている第2排気流路(16)と、前記第1排気流路(14)から分岐している排気ガス再循環ライン(22)とを有すると共に、少なくとも、前記第1排気流路(14)から前記排気ガス再循環ライン(22)への排気ガスの流れを妨げる第1閉鎖ポジション(1)と、少なくとも、前記第1排気流路(14)から前記排気ガス再循環ライン(22)への排気ガスの流れを可能にする第1開放ポジション(2)との間で調節可能な閉鎖エレメント(26)を有する内燃機関のための排気セクション(10)であって、
排気ガスの流れを前記第1排気流路(14)から分岐可能で、前記第2排気流路(16)に導くことが可能な、前記排気流路(14、16)の間の流体接続開口部(30)が、前記閉鎖エレメント(26)によって前記第1閉鎖ポジション(1)で開放され、また前記閉鎖エレメント(26)によって前記第1開放ポジション(2)で閉鎖され
前記第1排気流路(14)が、前記第1閉鎖ポジション(1)において、前記閉鎖エレメント(26)によって、少なくとも前記流体接続開口部(30)より下流に向かって流体工学的に閉鎖され、
前記閉鎖エレメント(26)が、第2閉鎖ポジション(4)に調節されることができ、前記第2閉鎖ポジションでは、前記第1排気流路(14)から前記排気ガス再循環ライン(22)への排気ガスの流れが妨げられ、前記2つの排気流路(14、16)の間の前記接続開口部(30)と前記第1排気流路(14)とが開放されることを特徴とする、内燃機関のための排気セクション。
【請求項2】
前記第1排気流路(14)が、前記第1開放ポジション(2)において、前記閉鎖エレメント(26)によって、少なくとも前記第1排気流路(14)からの排気ガスが前記排気ガス再循環ライン(22)へと分岐可能な分岐点(24)より下流に向かって流体工学的に閉鎖されることを特徴とする、請求項記載の排気セクション(10)。
【請求項3】
前記閉鎖エレメント(26)が、第2開放ポジション(3)に調節されることができ、前記第2開放ポジションでは、前記排気ガス再循環ライン(22)、前記第1排気流路(14)および前記接続開口部(30)の各々が、流体工学的に開放されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の排気セクション(10)。
【請求項4】
前記第2排気流路(16)が、前記第1排気流路(14)より大きい、排気ガスが流れる横断面を有することを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の排気セクション(10)。
【請求項5】
前記排気流路(14、16)の夫々の横断面が同じ大きさであることを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の排気セクション(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の、内燃機関のための排気セクションに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような内燃機関用の、特に自動車の内燃機関用の排気セクションは、特許文献1から公知である。
前記排気セクションは、第1排気流路と、少なくとも部分的に前記第1排気流路から流体工学的に分離された第2排気流路を含んでいる。前記2つの排気流路は、それぞれ前記内燃機関の排気ガスを流すことができる。さらに前記第1排気流路は、排気ガスターボチャージャーのタービンの第1タービン流路に割り当てられている。前記第2排気流路は、少なくとも部分的に前記タービンの前記第1タービン流路から流体工学的に分離されている第2タービン流路に割り当てられている。このことは、前記第1タービン流路には排気ガスが前記第1排気流路を通って導かれる、ないしは導かれることが可能である一方で、前記第2タービン流路には前記内燃機関の排気ガスが前記第2排気流路を通って導かれる、ないしは導かれることが可能であることを意味する。
【0003】
前記排気セクションはさらに、前記第1排気流路から分岐する排気ガス再循環ラインを備えている。これは、前記排気ガス再循環ラインが、前記第1排気流路に設けられた分岐点において前記第1排気流路と流体工学的に結合しており、それにより前記分岐点において排気ガスが、前記第1排気流路から前記排気ガス再循環ラインへと分岐されることができるようになっていることを意味する。前記排気ガス再循環ラインは、前記内燃機関の低エミッション運転を実現するために、前記内燃機関の排気ガスの、前記内燃機関の吸気側への再循環に用いられる。
【0004】
最後に、前記排気セクションは1つの閉鎖エレメントを備えている。前記閉鎖エレメントは、前記第1排気流路から前記排気ガス再循環ラインへの排気ガスの流れ込みを妨げる少なくとも1つの閉鎖ポジションと、前記第1排気流路から前記排気ガス再循環ラインの中への排気ガスの流れ込みを可能にする少なくとも1つの開放ポジションとの間で調整可能である。換言すると、前記排気ガス再循環ラインは、前記少なくとも1つの閉鎖ポジションでは流体工学的に閉鎖されており、このため前記排気ガス再循環ラインには排気ガスが流れない。前記開放ポジションにおいては、前記排気ガス再循環ラインは流体工学的に開放されており、このため前記排気ガス再循環ラインには排気ガスが流れる。
【0005】
特許文献2からも、1つの内燃機関用の排気セクションが公知である。前記内燃機関の定義された数のシリンダからの排気ガスは、第1排気流路を通って流れる。前記内燃機関の残りのシリンダの排気ガスは、第2排気流路を通って流れる。前記第1排気流路と前記第2排気流路との間には、1つのバイパスラインが設けられている。前記バイパスラインを通じて、前記2つの排気流路は流体工学的に相互接続可能である。前記バイパスラインには、第1閉鎖エレメントが配置されており、前記第1閉鎖エレメントを用いて、前記バイパスラインは流体工学的に開放可能かつ閉鎖可能である。さらに前記排気セクションは1つの排気ガス再循環ラインを有し、前記排気ガス再循環ラインは、前記第1排気流路から分岐しており、かつ第2閉鎖エレメントを有している。前記第2閉鎖エレメントを用いて、前記排気ガス再循環ラインは流体工学的に開放可能かつ閉鎖可能である。最後に、前記第1排気流路は、前記排気ガス再循環ラインの下流に第3閉鎖エレメントを有している。前記第3閉鎖エレメントを用いて、前記第1排気流路は流体工学的に開放可能かつ閉鎖可能である。この排気セクションは、比較的高い複雑性を有する。さらに、従来の排気セクションでは、内燃機関の高いエンジンブレーキ制動力を実現できるようにすることは困難であり、かつ特に費用と手間がかかることがわかっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2008 064 264号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2005 021 172号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このため本発明の課題は、前記排気セクションを用いて高いエンジンブレーキ制動力を特に簡単な方法で実現させるように、冒頭にあげた様態の排気セクションを発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を有する排気セクションによって解決される。本発明の、便利で非自明な発展に伴う有利な形態は、その他の請求項にあげられている。
【0009】
請求項1の前段で述べた様態の排気セクションを造り出し、前記排気セクションを用いて内燃機関の特に高いエンジンブレーキ制動力を特に複雑でなく、したがって単純な方法で実現させるために、本発明では、前記2つの排気流路の間の1つの接続開口部が、前記閉鎖エレメントの第1閉鎖ポジションにおいては開放されており、また前記閉鎖エレメントの第2開放ポジションにおいては、前記閉鎖エレメントによって閉鎖されていることが企図されている。ここで、前記接続開口部を通じて、前記第1排気流路からの排気ガスは分岐可能であり、前記第2排気流路に導かれることが可能である。換言すれば、前記閉鎖エレメントは、前記排気ガス再循環ラインにも、また前記接続開口部にも帰属させられており、前記排気ガス再循環ラインと前記接続開口部とに共通の前記閉鎖エレメントによって、前記閉鎖エレメントの前記閉鎖ポジションにおいては前記排気ガス再循環ラインが流体工学的に閉鎖されており、前記閉鎖エレメントの前記開放ポジションにおいては前記接続開口部が流体工学的に閉鎖されている。有利には、前記内燃機関のエンジンブレーキ稼働時には、前記第1排気流路からの排気ガスが前記第2排気流路へと流れ込み、これにより前記第2排気流路と、それに伴い前記第2タービン流路とが、増加した排気ガス流の流れ込みを受け、それにより、より高いエンジンブレーキ制動力が達成可能である。
【0010】
前記閉鎖エレメントは、例えば弁体として、特にフラップとして形成され、その際、例えば前記フラップは、旋回軸を中心として前記閉鎖ポジションと前記開放ポジションとの間を旋回できるようになっている。1つの前記閉鎖エレメントを前記排気ガス再循環ラインの流体工学的閉鎖にも前記接続開口部の流体工学的閉鎖にも使用することによって、前記排気セクションの部品の数と重量と費用とを、特に低く抑えることができる。さらに、前記排気セクションの非常に高い機能実現確実性を保証することができる。
【0011】
本発明の特に有利な実施形態では、前記第1排気流路が、前記第1閉鎖ポジションにおける前記閉鎖エレメントによって、少なくとも前記接続開口部より下流に向かっては、流体工学的に閉鎖されている。このことは、排気ガスが、前記第1排気流路を通って前記接続開口部まで流れることができるが、それより先へ前記第1排気流路を通って流れ続けることができないことを意味する。前記排気ガス再循環ラインも前記少なくとも1つの閉鎖ポジションにおける前記閉鎖エレメントによって閉鎖されているため、排気ガスは、前記排気ガス再循環ラインを通って流れることもできない。これにより排気ガスは、前記接続開口部の領域において、前記接続開口部を通って、前記第1排気流路から前記第2排気流路へと流れ込み、こうして全排気ガスが前記接続開口部の下流では前記第2排気流路を通って流れ、それにより前記第2タービン流路へと導かれる一方、前記第1タービン流路には排気ガスが導かれない。これにより、内燃機関のエンジンブレーキ稼働時に、特に高いエンジンブレーキ制動力が実現される。しかも、この高いエンジンブレーキ制動力は、追加的な閉鎖エレメントを使用することなく起こり得る。
【0012】
さらに前記排気セクションは、前記2つのタービン流路どうし、および/または前記2つの排気流路どうしの非対称性を軽度に抑えること、また場合によってはむしろ前記2つのタービン流路どうし、および/または前記2つの排気流路どうしを相互に対称的に構成すること、そしてそれにもかかわらず非常に高いエンジンブレーキ制動力を実現できることを可能にする。
【0013】
本発明の別の実施形態では、前記第1排気流路が、第1開放ポジションの状態にある前記閉鎖エレメントによって、前記第1排気流路からの排気ガスが前記排気ガス再循環ラインへと分岐可能となる分岐点より少なくとも下流に向かっては、流体工学的に閉鎖されている。有利には、前記第1開放ポジションでは、前記接続開口部も流体工学的に閉鎖されており、このため、前記内燃機関の吸気側への排気ガスの特に高い排気ガス再循環率または可能な限り最大の排気ガス再循環率が達成され、それにより前記内燃機関の実動作において、特に窒素酸化物の排出量を大幅に低減することができる。
【0014】
本発明のさらなる実施形態では、前記閉鎖エレメントが第2開放ポジションに調節可能であり、前記第2開放ポジションでは、前記排気ガス再循環ラインも前記第1排気流路も、また前記接続開口部も、流体工学的に開放されている。有利には、前記内燃機関の実動作または前記内燃機関の主要運転領域において、前記第2開放ポジションを用いて、排気ガス再循環率と、タービンへの強い流れ込みとを調節することができ、したがって最小限の排気ガス再循環率も設定することができて、それにより特に効率的な内燃機関運転が低い排気ガス排出で可能にされる。
【0015】
本発明のさらなる実施形態では、前記閉鎖エレメントが第2閉鎖ポジションへと調節可能であり、前記第2閉鎖ポジションでは、前記第1排気流路から前記排気ガス再循環ラインへの排気ガスの流れ込みが妨げられて、前記2つの排気流路の間の前記接続開口部が開放されている。有利には、この場合、前記2つの排気流路内にある内燃機関全体の排気ガスのすべてが前記ターボチャージャーの前記タービンへと流れ込み、これにより内燃機関の吸気側で前記ターボチャージャーの圧縮機による燃焼用空気のより高い圧縮が達成され、これにより特に内燃機関への負荷要求の際または急激な負荷上昇の際に、増加したトルクが非常に迅速に利用できる。
【0016】
本発明のさらなる実施形態では、前記第2排気流路が、前記第1排気流路よりも大きな、排気ガスが流れる横断面積を有している。有利には、より小さな横断面積により、前記第1排気流路内の排気圧力は高められており、このため過給比率が高い場合でも、排気ガスを再循環することができ、これにより特に効率的なエミッション削減、特に窒素酸化物の排出量削減を達成することができる。
【0017】
本発明の別の実施形態では、前記2つの排気流路の横断面積が同じ大きさに形成されている。有利には、本発明による前記排気流路により、前記閉鎖エレメントを用いて前記第1排気流路の横断面積の縮小が調節可能であり、このため前記第1排気流路内と前記排気ガス再循環ライン内の圧力上昇が可能であり、これにより、吸気側に対応して圧力が低下し、排気ガス再循環が可能になる。
【0018】
本発明のこのほかの利点と特徴と詳細は、以下に続く好ましい実施形態の説明から、そして図面によって、明らかである。上述の特徴と特徴の組み合わせ、ならびに以下の図の説明および/または単一の図に示される特徴と特徴の組み合わせは、各々の指定された組み合わせのみならず、他の組み合わせにおいても、または単独でも、本発明の範囲を逸脱することなく、利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】特に自動車の内燃機関用の、排気セクション10の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面は、単一の図の中で、内燃機関用の、特に自動車の内燃機関用の、排気セクション10の概略断面図を詳細に示しており、前記排気セクション10は、少なくとも部分的に流体工学的に相互に分離している2つの排気流路14、16と、前記2つの排気流路のうち1つの前記排気流路14から分岐している排気ガス再循環ライン22と、閉鎖エレメント26とを備え、前記閉鎖エレメント26を用いて、前記2つの排気流路14、16の間の接続開口部30と、前記排気ガス再循環ライン22と、前記2つの排気流路14、16のうちの1つとの各々が、流体工学的に閉鎖および開放可能である。
【0021】
図は、図示しない内燃機関用の排気セクション10の概略断面図を示す。ここで前記内燃機関は往復動内燃機関として形成され、複数のシリンダを備えている。前記内燃機関はさらに、燃焼用空気を前記シリンダに導くための吸気側と、前記シリンダからの排気ガスを排出するための排気側とを備えている。前記排気セクション10を用いて、前記排気側からの排気ガスは、排気ガスターボチャージャーのタービンへと、および/または排気ガス再循環システムへと、導かれることができる。排気ガス再循環システムによって、排気ガスは前記吸気側へ流れ込むことができる。前記排気ガスターボチャージャーの圧縮機が、前記吸気側において燃焼用空気を圧縮する。
【0022】
前記排気セクション10は、第1排気流路14と第2排気流路16とをもつ排気配管12を含んでいる。図中、矢印18によって示すように、前記2つの排気流路14、16は、前記内燃機関の排気ガスが流れることができる。前記排気流路14、16は、前記排気配管12の少なくとも1つの隔壁20によって、流体工学的に相互に分離されている。前記排気流路14、16を前記排気側と適切に流体工学的に連結することによって、前記第1排気流路14には第1の定義された数の前記シリンダと、それに伴いこれらのシリンダからの排気ガスとが割り当てられ、他方、前記第2排気流路16には、第2の残りの数の前記シリンダと、それに伴いこれらのシリンダからの排気ガスとが割り当てられることができる。
【0023】
前記排気セクション10は、排気ガス再循環システムの前記排気ガス再循環ライン22を含んでおり、前記排気ガス再循環ライン22は、前記第1排気流路14の分岐点24において前記第1排気流路14から分岐して、前記吸気側に合流する。前記排気ガス再循環ライン22によって、前記第1排気流路14を流れる排気ガスは前記分岐点24で分岐可能であり、こうして前記第1排気流路14を流れる排気ガスは、前記排気ガス再循環ライン22へと流出する。前記排気ガス再循環ライン22は、前記排気セクション10からの排気ガスを前記内燃機関の前記給気側へと戻すために役立ち、戻された排気ガスは、前記吸気側を通って、少なくとも一部の前記シリンダに再び導かれる。これにより前記内燃機関の排出量、特に窒素酸化物の排出量を低く抑えることができ、例えば法定排出基準を満たすことができる。
【0024】
前記排気配管12を通る排気ガスの流れ方向18において、前記分岐点24の下流には、図示しない排気ガスターボチャージャーのタービンが少なくとも配置されている。前記タービンは、タービンハウジングを含んでおり、前記タービンハウジングの中に1つのタービンホイールが、1つの回転軸を中心にしてタービンハウジングに対して相対的に回転可能に収容されている。前記タービンハウジングは、少なくとも部分的には流体工学的に相互に分離されている2つのタービン流路を包含しており、前記2つのタービン流路を通って前記タービンホイールに排気ガスが導かれるようになっている。こうして排気ガスは前記タービンホイール上を流れることができ、それによって前記タービンホイールを駆動することができる。
【0025】
前記2つのタービン流路は、例えばどちらもスパイラルチャネルとして形成されており、前記スパイラルチャネルは、前記タービンホイールの円周方向に、前記タービンホイールの円周を超えて、少なくともおおむね渦巻形に延びている。前記2つのタービン流路は、その横断面に関して相互に非対称または対称に形成されている。
【0026】
ここで、前記第1排気流路14は、前記2つのタービン流路のうち第1のタービン流路に割り当てられている。このことは、前記排気流路14が前記第1タービン流路と流体工学的に連結されていることを意味する。したがって前記分岐点24の下流で前記第1排気流路14を流れる排気ガスは、これにより、前記第1タービン流路へと導かれることができる。
【0027】
前記第2排気流路16は、前記第2タービン流路に割り当てられている。このことは、前記第2排気流路16が前記第2タービン流路と流体工学的に連結されており、それにより前記第2排気流路16を流れる排気ガスは前記第2タービン流路へと流入できることを意味する。
【0028】
前記排気セクション10は、1つのフラップ26として存在している前記閉鎖エレメントをさらに含み、前記フラップ26は前記ポジション1、2、3、4の間で、1つの旋回軸28を中心として、前記排気配管12に対して相対的に、旋回可能である。ここでは、前記ポジション2、3、4が点線によって示されているのに対し、前記第1ポジション1は、実線によって示されている。前記フラップ26の旋回は、図中に矢印29で示されている。
【0029】
前記ポジション1は、前記フラップ26の第1閉鎖ポジションであり、ここにおいて、前記第1排気流路14から前記排気ガス再循環ライン22への排気ガスの流れが、前記フラップ26によって妨げられている。前記排気ガス再循環ライン22は、前記第1閉鎖ポジション1で流体工学的に閉鎖され、このため、前記排気ガス再循環ライン22は排気ガスが流れることができない。さらに、前記第1閉鎖ポジション1で、前記排気流路14、16間の接続開口部30が開放されている。前記隔壁20の通過開口部38として形成された前記接続開口部30を通り、−流体工学的に開放されている場合−、前記第1排気流路14と前記第2排気流路16との間での排気ガスの交換は可能である。前記通過開口部38は前記隔壁20の壁面40によって区切られている。
【0030】
その上さらに、前記第1排気流路14は、前記第1閉鎖ポジション1における前記フラップ26によって、前記接続開口部30より下流に向かって流体工学的に閉鎖されている。これは、前記第1排気流路14は、前記接続開口部30より下流に向かって、もはや排気ガスを流さないことを意味する。したがって、前記接続開口部30の上流の前記第1排気流路14を流れる排気ガスは、第1閉鎖ポジション1で開放された前記接続開口部30を通り、前記第2排気流路16の中へ流れ、このため、全シリンダからの全部の排気ガスが、前記第1排気流路16を接続開口部30より下流に向かって流れる。前記第1排気流路14から前記第2排気流路16への、このような排気ガスの流れの移行は、図中矢印32によって示されている。前記フラップ26の前記第1閉鎖ポジション1で、前記排気ガス再循環22と前記第1排気流路14とは閉鎖され、そして第1排気流路14から第2排気流路16への接続開口部30が開放されているので、前記排気ガスターボチャージャーによって前記内燃機関に強い過給が生じるが、これは高いエンジンブレーキ制動力によってもたらされる。エンジンブレーキ稼働においては、燃料は前記シリンダに噴出されず、これにより前記内燃機関はターボエンジンとして稼働させられる。通常、エンジンブレーキ稼働において稼働させられる内燃機関は、エンジンブレーキ制動力を上げるためのそれ自体既知の装備を有している。その際、たとえば、それ自体既知の減圧ブレーキが重要になることがある。前記全シリンダからの排気ガスを前記第2排気流路16に合流させることによって、タービンへの最善の流入により、前記内燃機関の特に効果的な過給がエンジンブレーキ稼働において達成されることができる。
【0031】
前記1つのフラップ26が、前記接続開口部30より下流に向かって、前記第1排気流路14の流体工学的な閉鎖および前記排気ガス再循環ライン22の流体工学的な閉鎖のために使用されるので、付加的に、前記排気セクション10の部品の数を特に少なく抑えることができる。このため、前記フラップ26は、その第1閉鎖ポジションにおいて、第1部分域34を前記第1排気流路14の中へ、そして第1排気流路1に接続している第2部分域36を前記排気ガス再循環ライン22の中へ突き出している。その際、前記第1部分域34は、前記接続開口部30より下流に向かって流体工学的な閉鎖のために用いられる一方、前記第2部分域36は、前記排気ガス再循環ライン22の流体工学的閉鎖のために使用される。前記フラップ26の両方の部分域34、36は、それぞれ旋回軸28を中心に旋回する。
【0032】
前記ポジション2は、前記閉鎖エレメントまたはフラップ26の第1開放ポジションであり、前記第1開放ポジションでは前記排気ガス再循環ライン22が流体工学的に開放されている。前記第1開放ポジション2において、前記接続開口部30が流体工学的に閉鎖され、それにより、前記接続開口部30を排気ガスが流れることはできない。さらに、前記第2開放ポジションでは、前記第1排気流路14も前記分岐点24より下流に向かって流体工学的に閉鎖され、それにより、前記第排気流路14を排気ガスが流れることはできない。これは、前記分岐点24の上流に前記第1排気流路14を流れる全ての排気ガスが、前記第1排気流路14から分岐され、そして前記排気ガス再循環ライン22へ導かれることを意味する。これによって、最大に調節することが可能な排気ガス再循環率(EGR率)が調節されている。
【0033】
前記ポジション3は、第2開放ポジションまたは前記フラップ26の中間ポジションであって、前記フラップ26は内燃機関の主要運転領域の中で調節される。前記第2開放ポジション3において、前記排気ガス再循環ライン22および前記第1排気流路14とともに、前記接続開口部30が開放され、それにより、排気ガスが流れることができる。前記第2開放ポジション3の中間位置を変えることによって、排気ガスが前記内燃機関に対応して、前記排気ガス再循環ライン22および前記第1排気流路14の中へ、そして前記接続開口部30を通って配分されることができる。
【0034】
前記フラップ26の前記ポジション4は、第2閉鎖ポジションであって、前記ポジション4で前記排気ガス再循環ライン22が流体工学的に閉鎖され、また前記接続開口部30が開放されている。前記第2閉鎖ポジション4において、前記第1排気流路14も開放されている。これは、第2閉鎖ポジションにおいて両方の前記排気流路14、16を、それぞれ排気ガスが流れることができることを意味する。これによって、例えば、前記内燃機関の実動作における急激な負荷上昇の改善が示され、その間、相応の負荷要求の際、全ての排気ガスがもっぱら両方の前記排気流路14、16を通って排気ガスターボチャージャーのタービンに作用することができ、これにより、排気ガスターボチャージャーの圧縮機によって、相応に高められた積載圧を実現させることができ、このことによって前記内燃機関は、相応に迅速に、より高いトルクを提供することができる。
【0035】
図から分かるように、両方の前記排気流路14、16は非対称に形成されている。その際、前記第1排気流路14の方が、前記第2排気流路16よりも、排気ガスが貫流可能な流路断面積が小さい。前記排気ガス再循環ライン22が前記第1排気流路14から分岐しているので、前記第1排気流路14は排気ガス再循環流路としても示される。こうして前記第1排気流路14は、特に排気ガス再循環のための高圧の排気ガスを提供することに役立つ。前記第1排気流路14の横断面は、特に吸気側の圧力を上回った排気ガスの圧力に合わせて設計されている。前記内燃機関の吸気側における燃焼用空気の圧力は、前記排気ガスターボチャージャーの圧縮機によって高められ、そして排気ガス再循環のため、前記第1排気流路14から前記排気ガス再循環ライン22の中へ流入する排気ガスの圧力より上回らなければならない。
【0036】
本発明の前記排気セクション10によって、両方の前記排気流路14、16を、それぞれの横断面に関し、対称的に製作することも考えられる。特に、前記第2開放ポジション3の対応する変化によって、前記第1排気流路14の横断面積は、前記第1排気流路14内および特に前記排気ガス再循環ライン22内の排気ガスの圧力が吸気側の圧力を上回る場合にのみ縮小される。有利なことに、前記第1排気流路14の、対称的に作られたより大きな横断面積によって、前記第1排気流路14内の排気ガスの圧力が低下し、このため、内燃機関が前記第1排気流路14に割り当てられたシリンダによって、シリンダから排気側に排気ガスを押し出すために、必要な出力はより少なく、これによって内燃機関の効率が上昇し、同時に燃費と排気ガス排出量は低下する。
【0037】
図から分かるように、前記フラップ26は前記排気ガス再循環ライン22だけではなく前記第1排気流路14や前記接続開口部30にも割り当てられており、前記フラップ26の流体工学的な閉鎖と開放に役立っている。したがって前記排気セクション10の部品点数および複雑性が、特に低く抑えられることができる。
【0038】
前記フラップ26は非常に大きい調節範囲を有しているので、前記エンジンブレーキ制動力および前記排気ガス再循環が非常に良好に制御され、そして特に調整される。
【0039】
高いエンジンブレーキ制動力を有する内燃機関によって低エミッション稼働の実現のため、それぞれ前記排気流路14、16に同数のシリンダを割り当てることが可能である。もちろん、シリンダが不均等に前記排気流路14、16に配備されることも考えられうる。
【0040】
前記排気セクション10において流れ損失を特に少なく抑えるため、有利には、前記フラップ26が、主要運転領域において、前記排気配管12または前記第1排気流路14を通る排気ガスの流れの方向に、少なくとも実質的に平行に延びることが、企図されることができる。
図1