(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964019
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/22 20060101AFI20160721BHJP
B60C 9/08 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
B60C9/22 D
B60C9/08 L
B60C9/22 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-154835(P2011-154835)
(22)【出願日】2011年7月13日
(65)【公開番号】特開2013-18428(P2013-18428A)
(43)【公開日】2013年1月31日
【審査請求日】2014年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 明大
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 健介
【審査官】
岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−004505(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00571204(EP,A1)
【文献】
特表2002−503576(JP,A)
【文献】
特開2004−299659(JP,A)
【文献】
特開2008−087608(JP,A)
【文献】
実開平07−011402(JP,U)
【文献】
特開2008−273454(JP,A)
【文献】
特開2009−056938(JP,A)
【文献】
特開2007−008250(JP,A)
【文献】
特開2001−138708(JP,A)
【文献】
特開平11−034610(JP,A)
【文献】
特開2006−168595(JP,A)
【文献】
特開2001−310604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/22
B60C 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部のカーカス層の外周側に、複数のベルトプライからなるベルト層が配設された空気入りタイヤにおいて、
タイヤ周方向に沿ったコードを含む補強層が、最も幅広のベルトプライのベルト端からタイヤ幅方向外側へ向かって延び、前記ベルト端からタイヤ最大幅位置までのタイヤ内面に沿ったペリフェリ長の30〜60%の範囲内に達するように配置され、
前記コードの本数は、前記ベルト端側が前記タイヤ最大幅位置側よりも多くなっており、
前記補強層は、タイヤ周方向に沿ってらせん状に配置されたリボン材で構成され、前記リボン材は、複数本の並列された前記コードを含み、隣り合うリボン材同士は、リボン幅方向の一部が重ねられた状態であり、
前記リボン材の重なり幅は、前記ベルト端側が前記タイヤ最大幅位置側よりも大きいことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記リボン材の重なり幅は、前記ベルト端側にてリボン材幅の70〜80%であり、前記タイヤ最大幅位置側へ移るにつれて10〜20%ずつ縮小することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
トレッド部のカーカス層の外周側に、複数のベルトプライからなるベルト層が配設された空気入りタイヤにおいて、
タイヤ周方向に沿ったコードを含む補強層が、最も幅広のベルトプライのベルト端からタイヤ幅方向外側へ向かって延び、前記ベルト端からタイヤ最大幅位置までのタイヤ内面に沿ったペリフェリ長の30〜60%の範囲内に達するように配置され、
前記コードの本数は、前記ベルト端側が前記タイヤ最大幅位置側よりも多くなっており、
前記補強層は、第1補強層と、前記第1補強層の内側又は外側に配置される前記第1補強層よりも幅狭の第2補強層とで構成され、前記第1補強層と前記第2補強層は、複数本の並列された前記コードを含み、前記ベルト端からタイヤ幅方向外側へ向かって延在することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記カーカス層は、前記第1補強層と前記第2補強層とで挟み込まれていることを特徴とする請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第2補強層の幅は前記第1補強層の幅の30〜60%であり、かつ前記第2補強層の幅方向中心は、前記第1補強層の幅方向中心から前記第1補強層の幅の15〜20%ベルト端側へずれていることを特徴とする請求項3又は4に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部のカーカス層の外周側に、複数のベルトプライからなるベルト層が配設された空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車が路面を走行する際、路面の凹凸により加振されたタイヤの振動が、ホイールやサスペンションを介して車体に伝達され、車体各部が共振することでロードノイズが発生する。すなわち、ロードノイズの低減のためには、車体、サスペンション、タイヤ等の共振を低減させることが必要となる。
【0003】
タイヤの持つ各固有振動モードは、車両の前後、左右、上下方向への力の伝達に寄与する。さらに、サスペンションにも各固有振動モードは存在し、それらの連成により車室内への振動が伝わるため、各方向の振動の伝わり方は周波数特性を持つ。非特許文献1では、サスペンションの周波数特性と対応したタイヤの各振動モードの固有値をコントロールすることでロードノイズを低減する試みがなされている。例えば、タイヤの横曲げ3次モードでは固有値を上げることが望ましく、上下1次モードでは固有値を下げることが望ましい。
【0004】
しかしながら、補強等により部分的に剛性を向上させて固有値を操作すると、一般に目的の振動モードだけではなく他の振動モードにまで影響を及ぼしてしまう。そのため、2つ以上の固有値の操作ではその操作手法を工夫する必要がある。さらに、剛性の変化は、接地長の変化をもたらし、偏摩耗を引き起こす場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】三山栄仁ら「ロードノイズスペクトル適正化のためのタイヤ固有値コントロール技術開発」社団法人自動車技術会、学術講演会前刷集、2009年5月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、偏摩耗を抑制しつつ、ロードノイズを低減することができる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部のカーカス層の外周側に、複数のベルトプライからなるベルト層が配設された空気入りタイヤにおいて、タイヤ周方向に沿ったコードを含む補強層が、最も幅広のベルトプライのベルト端からタイヤ幅方向外側へ向かって延び、前記ベルト端からタイヤ最大幅位置までのタイヤ内面に沿ったペリフェリ長の30〜60%の範囲内に達するように配置され、前記コードの本数は、前記ベルト端側が前記タイヤ最大幅位置側よりも多いことを特徴とする。
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、横曲げ3次モードでは、サイドウォール部のタイヤ径方向外側に位置するバットレス部、より具体的にはベルト端からタイヤ幅方向外側へ向かって、ベルト端からタイヤ最大幅位置までのタイヤ内面に沿ったペリフェリ長の30〜60%までの範囲にモード振動時の歪エネルギーが集中していることを見出した。そのため、この歪エネルギーが集中する部分に、タイヤ周方向に沿ったコードを含む補強層を配置することで、タイヤ周方向の剛性を上げ、横曲げ3次モードの固有値を上げることができる。これにより、タイヤと車体、サスペンション等との共振を低減させることができるため、ロードノイズを低減できる。さらに検討を進めたところ、本発明者らは、歪エネルギーはベルト端側がタイヤ最大幅位置側よりも高くなっていることを見出し、補強層に含まれるコードの本数をベルト端側がタイヤ最大幅位置側よりも多くすることで、歪エネルギーをより分散し、効果的に横曲げ3次モードの固有値を上げることができるとの知見を得た。また、本発明によれば、通常接地しないバットレス部を補強するので、ショルダー部の剛性変化が少なく接地長の変化も少ないため、偏摩耗を抑制できる。
【0009】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記補強層は、複数本の並列した前記コードをゴム被覆してなるリボン材が、リボン幅方向の一部を重ねた状態でタイヤ周方向にらせん状に巻き付けられて形成されており、前記リボン材の重なり幅は、前記ベルト端側が前記タイヤ最大幅位置側よりも大きいことが好ましい。この構成によれば、コードの本数をベルト端側がタイヤ最大幅位置側よりも多くした補強層を適切に形成することができるため、偏摩耗を抑制しつつ、ロードノイズを低減することができる。
【0010】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記リボン材の重なり幅は、前記ベルト端側にてリボン材幅の70〜80%であり、前記タイヤ最大幅位置側へ移るにつれて10~20%ずつ縮小することが好ましい。この構成によれば、補強層に含まれるコードの本数をベルト端側からタイヤ最大幅位置側へ向かって徐々に減らすことができるため、補強層の幅内での急激な剛性変化が抑えられる。
【0011】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記補強層は、第1補強層と、前記第1補強層の内側又は外側に配置される前記第1補強層よりも幅狭の第2補強層とで構成され、前記第1補強層と前記第2補強層は、複数本の並列された前記コードを含み、前記ベルト端からタイヤ幅方向外側へ向かって延在することが好ましい。この構成によれば、コードの本数をベルト端側がタイヤ最大幅位置側よりも多くした補強層を適切に形成することができるため、偏摩耗を抑制しつつ、ロードノイズを低減することができる。
【0012】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層は、前記第1補強層と前記第2補強層とで挟み込まれていることが好ましい。本発明者らは、カーカス層周辺の歪エネルギーが特に高いことを見出した。そのため、カーカス層を第1補強層と第2補強層とで挟み込むことで、カーカス層周辺を効果的に補強することができるため、偏摩耗を抑制しつつ、ロードノイズをさらに低減することができる。
【0013】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記第2補強層の幅は前記第1補強層の幅の30〜60%であり、かつ前記第2補強層の幅方向中心は、前記第1補強層の幅方向中心から前記第1補強層の幅の15〜20%ベルト端側へずれていることが好ましい。この構成によれば、コードの本数をベルト端側がタイヤ最大幅位置側よりも多くした補強層を適切に形成することができるため、偏摩耗を抑制しつつ、ロードノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線半断面図
【
図4】他の実施形態に係る空気入りタイヤの要部を示すタイヤ子午線断面図
【
図5】他の実施形態に係る空気入りタイヤの要部を示すタイヤ子午線断面図
【
図6A】比較例1に係る空気入りタイヤの要部を示すタイヤ子午線断面図
【
図6B】比較例2に係る空気入りタイヤの要部を示すタイヤ子午線断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線半断面図である。
図2は、その要部を示す拡大図である。
【0016】
この空気入りタイヤは、一対の環状のビード部1と、ビード部1からタイヤ径方向外側へ延びるサイドウォール部2と、そのサイドウォール部2の外周側端に連なるトレッド部3と、その一対のビード部1の間を補強するカーカス層4とを備えたラジアルタイヤである。カーカス層4は、トロイダル形状をなすカーカスプライからなり、その端部はビードコア1aとビードフィラー1bを挟み込むようにして折り返されている。カーカス層4の内側には、空気圧を保持するためのインナーライナーゴム9が配設されている。
【0017】
トレッド部3のカーカス層4の外周側には、たが効果によりカーカス層4を補強するベルト層5が配設されている。ベルト層5は、タイヤ周方向に対して20〜30°の角度で傾斜したコードを有する2枚のベルトプライ5a,5bを有し、各プライはコードが互いに逆向きに交差するように積層されている。本実施形態では、2枚のベルトプライ5a,5bの幅は互いに異なり、ベルトプライ5aがベルトプライ5bよりも幅広となっており、ベルトプライ5aの上にベルトプライ5bが積層されている。
【0018】
ベルト層5の外周側にはトレッドゴム6が設けられ、その外周面であるトレッド面には、使用する用途や条件に応じて適宜にトレッドパターンが設けられる。
【0019】
サイドウォール部2のタイヤ径方向外側に位置するバットレス部Bには、補強層7が埋設されている。より具体的には、補強層7は、最も幅広のベルトプライ(本実施形態ではベルトプライ5a)のベルト端50からタイヤ幅方向外側へ向かって延び、ベルト端50からタイヤ最大幅位置8までのタイヤ内面に沿ったペリフェリ長Lの30〜60%の範囲内に達するように配置され、好ましくは40〜50%の範囲内に達するように配置される。ここで、ペリフェリ長Lは、JATMA等に規定された空気圧における、タイヤ内面に沿ったタイヤ子午線方向の長さをいうものとする。本実施形態では、補強層7の全幅aがペリフェリ長Lの30〜60%となっている。
【0020】
補強層7は、タイヤ周方向に沿ったコードCを含む。コードCは、タイヤ周方向に対して0〜15°の角度で傾斜している。コードCの素材としては、ナイロンやアラミド、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維が例示される。コードCの本数は、ベルト端50側がタイヤ最大幅位置8側よりも多くなっている。
【0021】
本実施形態の補強層7は、複数本の並列したコードCをゴム被覆してなるリボン材70が、リボン幅方向の一部を重ねた状態でタイヤ周方向にらせん状に巻き付けられて形成されている。隣り合うリボン材70の重なり幅70aは、ベルト端50側がタイヤ最大幅位置8側よりも大きくなっており、これにより、コードCの本数を、ベルト端50側がタイヤ最大幅位置8側よりも多くすることができる。なお、重なり幅70aは、ベルト端50側からタイヤ最大幅位置8側へ向かって徐々に小さくするのが好ましい。具体的には、リボン材70の重なり幅70aは、ベルト端50側にてリボン材幅の70〜80%であり、タイヤ最大幅位置8側へ移るにつれて10〜20%ずつ縮小するのがより好ましい。これにより、補強層7の幅内での急激な剛性変化が抑えられる。
【0022】
本実施形態の補強層7の端部は、ベルト端50と重なっていないが、ベルト端50と重なるようにしてもよい。ただし、補強層7の端部がベルト端50と重なる場合、その重なり幅は補強層7の全幅aの30%以下とするのが好ましい。重なり幅が全幅aの30%よりも大きいと、ショルダー部の接地長が大きく変化して、ショルダー部に偏摩耗が生じる傾向がある。
【0023】
トレッド部3には、ゴム部材からなるテープを埋設するのが好ましい。上下1次モードにおいて腹となるタイヤセンター部の質量をテープにより上げることで、振動を抑制することができ、上下1次モードの固有値を下げることが可能である。横曲げ3次モードの固有値を上げるとともに、上下1次モードの固有値を下げることで、両者の固有値の差が大きくなり、タイヤと車両側との共振が抑えられ、ロードノイズをより一層低減できる。センター部の接地長への影響を抑えるため、
図3に示すように、カーカス層4の内周側にテープ10aを配置し、外周側にテープ10bを配置し、テープ10a,10bの端部は、トレッド溝を基点としてなだらかに厚みが減少するのが好ましい。テープ10a,10bのタイヤ赤道線CLでの厚みは、トレッドゴム6のタイヤ赤道線CLでの厚みに対して20%程度とし、テープ10a,10bの幅はセンター部のブロック幅よりも広くするのが好ましい。
【0024】
本発明の空気入りタイヤは、バットレス部Bに上記の如き補強層7を設けること以外は、通常の空気入りタイヤと同等であり、従来公知の材料、形状、構造、製法などが何れも本発明に採用することができる。
【0025】
[他の実施形態]
(1)補強層7の構成は前述の実施形態に限られない。補強層7は、第1補強層71と、第1補強層71の内側又は外側に配置される第1補強層71よりも幅狭の第2補強層72とで構成され、第1補強層71と第2補強層72は、複数本の並列されたコードCを含み、ベルト端50からタイヤ幅方向外側へ向かって延在する構成でもよい。
図4は、カーカス層4の外側に第1補強層71を配置し、第1補強層71の外側に第2補強層72を配置した例を示す。ただし、カーカス層4の外側に第2補強層72を配置し、第2補強層72の外側に第1補強層71を配置しても構わない。第1補強層71の幅a1は、ベルト端50からタイヤ最大幅位置8までのタイヤ内面長さLの30〜60%とする。また、第2補強層72の幅a2は、第1補強層71の幅a1の30〜60%とする。また、第2補強層72は、第2補強層72の幅方向中心が第1補強層71の幅方向中心から幅a1の15〜20%ベルト端50側にずれるように配置することが好ましい。
【0026】
(2)補強層7を構成する第1補強層71と第2補強層72は、必ずしも隣接させる必要はない。
図5のように、第1補強層71と第2補強層72との間にカーカス層4を配置してもよく、カーカス層4が第1補強層71と第2補強層72とで挟み込まれている。第1補強層71と第2補強層72の幅a1,a2は、
図4に示す実施形態と同様とする。この例では、第1補強層71をカーカス層4の内側、第2補強層72をカーカス層4の外側に配置しているが、第2補強層72をカーカス層4の内側、第1補強層71をカーカス層4の外側に配置しても構わない。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0028】
(1)音圧エネルギー
タイヤサイズ225/50R18の試験タイヤをリムサイズ18×7.5JJのホイールに組み付けて、排気量3000ccの後輪駆動のセダン車に装着して、空気圧230kPaとして、時速60kmで試験路面を走行し、運転席の耳位置に取り付けたマイクロフォンにより、音圧を測定した。音圧計測結果は、1/3オクターブバンド解析を行い、160Hz帯のパワースペクトルを評価した。評価は、測定値の逆数を用い、従来例の結果を100として指数化し、数値が大きいほど音圧エネルギーが低いことを示す。
【0029】
(2)耐偏摩耗性能
タイヤサイズ225/50R18の試験タイヤをリムサイズ18×7.5JJのホイールに組み付けて、排気量3000ccの後輪駆動のセダン車に装着し、空気圧を230kPaとして、乾燥路面を10,000km走行させて偏摩耗比を調べた。偏摩耗比としては、センター領域の摩耗量(溝深さの減少量)と、ショルダー領域の摩耗量(溝深さの減少量)につき、従来品を100として指数評価とした。評価は従来品を100としたときの指数で示し、数値が大きいほど耐偏摩耗性能に優れていることを示す。
【0030】
実施例1
図2に示す補強層を配置した空気入りタイヤを製造した。コードの素材はアラミド繊維とした。評価結果を表1に示す。
【0031】
実施例2
図4に示す補強層を配置した空気入りタイヤを製造した。コードの素材はアラミド繊維とした。評価結果を表1に示す。
【0032】
実施例3
図5に示す補強層を配置した空気入りタイヤを製造した。コードの素材はアラミド繊維とした。評価結果を表1に示す。
【0033】
比較例1
図6Aに示すようなベルト端を覆うベルト端部補強層11a(エッジプライと称されることもある)を配置した空気入りタイヤを製造した。ベルト端部補強層11aの幅は、実施例1の補強層と同じとした。評価結果を表1に示す。
【0034】
比較例2
図6Bに示すような2層のベルト端部補強層11a,11bを配置した空気入りタイヤを製造した。ベルト端部補強層11aは比較例1のベルト端部補強層と同じであり、ベルト端部補強層11bはベルト端部補強層11bよりも幅狭となっている。評価結果を表1に示す。
【0035】
従来例
比較例1,2のようなベルト端部補強層、及び実施例1〜3のような補強層のいずれも設けない空気入りタイヤを製造した。評価結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
比較例1,2は、従来例に比べて、ベルト端を補強することで音圧エネルギーが小さくなっているが、耐偏摩耗性能は悪化している。これは、ベルト端部補強層を設けることで、バットレス部の剛性もある程度上がって横曲げ3次モードの固有値が上がったが、ショルダー部の剛性が大きくなって接地長が短くなり、ショルダー部に偏摩耗が生じたためである。実施例1〜3では、従来例及び比較例1〜3に比べて音圧エネルギーが小さくなっており、ロードノイズを低減できていることが分かる。また、実施例1〜3の耐偏摩耗性能は、従来例と同程度に維持できている。
【符号の説明】
【0038】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4 カーカス層
5 ベルト層
5a ベルトプライ
6 トレッドゴム
7 補強層
8 タイヤ最大幅位置
50 ベルト端
70 リボン材
70a 重なり幅
B バットレス部
C コード
L ペリフェリ長