(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964047
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】冷感増強剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20160721BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20160721BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20160721BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/41
A61K8/42
A61Q19/00
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-287846(P2011-287846)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-136532(P2013-136532A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年10月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】外村 学
【審査官】
松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−239142(JP,A)
【文献】
特開2002−114649(JP,A)
【文献】
特開昭58−113113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/34
A61K 8/41
A61K 8/42
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)冷感剤、(B)カチオン界面活性剤及び(C)25℃におけるlogPが−2〜−1の多価アルコールを10〜50質量%含有し、
一価のアルコールの含有量が0質量%以上10質量%未満であり、かつ
成分(B)の含有量と成分(C)の含有量との質量比((C)/(B))が、3〜50である冷感増強剤。
【請求項2】
成分(C)の含有量が、25〜50質量%である請求項1に記載の冷感増強剤。
【請求項3】
カチオン界面活性剤(B)の含有量と冷感剤(A)の含有量との質量比((B)/(A))が、0.1〜10である請求項1又は2に記載の冷感増強剤。
【請求項4】
成分(B)が、末端でエステル基及び/又はアミド基に結合していてもよい炭素数18〜22の長鎖アルキル基を、1つ又は2つ有する第4級アンモニウム塩である請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷感増強剤。
【請求項5】
成分(B)が、炭素数18〜22の長鎖アルキル基を有する、ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩、モノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩及びモノ長鎖アルキルアミドトリメチルアンモニウム塩から選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷感増強剤。
【請求項6】
成分(B)の含有量が、0.5〜10質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の冷感増強剤。
【請求項7】
成分(A)が、メントールを含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の冷感増強剤。
【請求項8】
更に、温感剤(D)を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の冷感増強剤。
【請求項9】
温感剤(D)の含有量と冷感剤(A)の含有量との質量比((D)/(A))が、0.01〜0.25である請求項8に記載の冷感増強剤。
【請求項10】
さらに、水(E)を含有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の冷感増強剤。
【請求項11】
皮膚外用剤である請求項1〜10のいずれか1項に記載の冷感増強剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚上で強い冷感を持続してもたらす冷感増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における気候の変動等に伴い、身体に適用するものとして、夏場のような季節に限らず、一年を通じて運動や入浴等、数多くの場面で冷涼感や清涼感(以下、冷感ともいう)をもたらす製剤が好まれる傾向にある。こうした製剤の多くには、冷感剤が配合されているが、かかる冷感剤の冷感を持続的に発揮させるには、さらなる研究や開発を要する。
【0003】
こうしたなか、例えば特許文献1には、冷感剤とともに、テアニンを含有することにより、冷感剤の効果の持続性を高める化粧料が開示されている。また、特許文献2には、冷感剤とカチオン界面活性剤とを含有する組成物が開示されており、かかる冷感剤として、L−メントールと、L−イソプレゴールや3−(1−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール等のメントール以外の冷感剤とを組み合わせることによって、冷感を高め得ることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−256319号公報
【特許文献2】特開2002−114649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献では、冷感剤やカチオン界面活性剤以外の成分については詳細な検討がなされておらず、有効に高められた冷感を長時間に亘って充分に持続させるには、依然として改善の余地がある。
【0006】
従って、本発明の課題は、冷感剤によりもたらされる冷感効果を充分に高め、かつこれを長時間に亘り有効に発揮する剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、冷感剤やカチオン界面活性剤のみならず、その他の成分についても種々検討してきたところ、冷感剤及びカチオン界面活性剤に特定のlogP値を有する多価アルコールを併用することで、強い冷感を長時間に亘り持続して発揮できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)冷感剤、(B)カチオン界面活性剤及び(C)25℃におけるlogPが−2〜−1の多価アルコールを10〜50質量%含有する冷感増強剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の冷感増強剤を用いれば、冷感剤によりもたらされる冷感効果を充分に高められ、長時間持続して強い冷感を感じ取ることができる。また、本発明の冷感増強剤によれば、冷感効果の持続性を良好に保持しつつl−メントールの含有量を低減することも可能であり、皮膚刺激性を低減する上でも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】温感及び冷感の評価試験を行った結果を示す図である。
図1(a)は実施例1、
図1(b)は実施例2、
図1(c)は実施例3、及び
図1(d)は実施例4の結果である。
【
図2】温感及び冷感の評価試験を行った結果を示す図である。
図2(e)は比較例1、及び
図2(f)は比較例2の結果である。
【
図3】温感及び冷感の評価試験を行った結果を示す図である。
図3(g)は実施例5、
図3(h)は実施例6、
図3(i)は実施例7、及び
図3(j)は比較例3の結果である。
【
図4】温感及び冷感の評価試験を行った結果を示す図である。
図4(k)は実施例8、
図4(l)は実施例9、
図4(m)は実施例10、及び
図4(n)は比較例4の結果である。
【
図5】温感及び冷感の評価試験を行った結果を示す図である。
図5(o)は実施例11、
図5(p)は実施例12の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の冷感増強剤は、成分(A)の冷感剤を含有する。本発明に用いられる成分(A)の冷感剤としては、化粧品用又は医薬用に用いられるものであればよく、例えば、l−メントールや、メンチルアセテート、乳酸メンチル、l−メンチルグリセリルエーテル、メンチルピロリドンカルボン酸等のメントール誘導体のほか、N−エチル−p−メンタンカルボキシアミド等のメントール類縁体、dl−カンファー、イソプレゴール、シネオール、ボルネオール、チモール及びこれらの誘導体が挙げられる。また、3−l−メトキシプロパンジオールや、ハッカ油、ペパーミント油等のメントールを含有した精油等も使用できる。これらは1種単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、冷感作用向上の点から、l−メントール、メンチルピロリドンカルボン酸、乳酸メンチル、N−エチル−p−メンタンカルボキシアミドが好ましく、冷感効果を充分に、且つ長時間持続して高めることができる観点や、即時効果の観点から、l−メントールを含むこれら2種以上を組み合わせて用いるのがより好ましい。また、刺激性の低減を図る観点から、成分(A)100質量%中におけるメントール含有率は30質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0012】
すなわち、本発明の冷感増強剤は、後述する成分(B)のカチオン界面活性剤と成分(C)の多価アルコールの相まった作用により冷感が長時間持続して増強されるため、冷感効果が高いとされる反面、刺激性を増大しかねないl−メントールの含有量を低減しても、l−メントール以外の刺激性の低い、N−エチル−p−メンタン−カルボキシアミドや乳酸メンチル等のその他の冷感剤を組み合わせて用いることで、充分な冷感効果をもたらすことができるとともに、刺激性をも低減することができる。
【0013】
冷感剤(A)の含有量は、長時間に亘り充分な冷感効果を確保する点から、本発明の冷感増強剤中に、好ましくは0.02〜4質量%であり、より好ましくは0.03〜3質量%であり、さらに好ましくは0.2〜2質量%である。また、冷感剤(A)としてl−メントールを含む場合、かかるl−メントールの含有量は、刺激性の低減を図る点から、本発明の冷感増強剤中に、好ましくは0.02〜1質量%であり、より好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0014】
本発明の冷感増強剤は、成分(B)のカチオン界面活性剤を含有する。カチオン界面活性剤(B)を含有することにより、かかるカチオン界面活性剤(B)が冷感剤(A)を取り込みつつもマイナスに荷電した皮膚に吸着しやすく、吸着後に皮膚上で有効に冷感剤(A)を放出することができるため、長時間持続して冷感増強効果を高める効果をもたらすものと推測される。或いは、カチオン界面活性剤(B)が有する良好な皮膚透過性により、カチオン界面活性剤(B)に取り込まれた冷感剤(A)が容易に皮膚に浸透し、皮膚内部で徐々に冷感効果を発揮することができるためとも考えられる。
【0015】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤(B)としては、末端でエステル基及び/又はアミド基に結合していてもよい炭素数18〜22の長鎖アルキル基を、1つ又は2つ有する第4級アンモニウム塩が挙げられる。かかるカチオン界面活性剤としては、長時間持続して冷感増強効果を充分に発揮する点、及びベシクルを形成しやすく安定した分散性を確保し得る点から、ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩、モノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、モノ長鎖アルキルアミドトリメチルアンモニウム塩が好ましく、ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩、モノ長鎖アルキルアミドトリメチルアンモニウム塩がより好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0016】
ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩としては、炭素数18〜20の長鎖アルキル基を有しているものが好ましく、具体的には、例えば、炭素数18の長鎖アルキル基を2つ有するジステアリルジメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0017】
モノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩としては、炭素数18〜20の長鎖アルキル基を有しているものが好ましく、具体的には、例えば、炭素数18の長鎖アルキル基を1つ有するステアリルトリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0018】
モノ長鎖アルキルアミドトリメチルアンモニウム塩としては、炭素数20〜22の長鎖アルキル基を有しているものが好ましく、具体的には、例えば、炭素数22の長鎖アルキル基を1つ有するN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]ドコサンアミドクロリドが挙げられる。
【0019】
カチオン界面活性剤(B)の含有量は、冷感剤によりもたらされる冷感効果を充分に高める点や冷感を長時間持続させる点、及び冷感剤(A)の剤中における分離や固化を回避する点から、本発明の冷感増強剤中に、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは1〜8質量%であり、さらに好ましくは3〜6質量%である。
【0020】
カチオン界面活性剤(B)の含有量と冷感剤(A)の含有量との質量比((B)/(A))は、冷感剤によりもたらされる冷感効果を充分に高め、長時間持続して強い冷感を感じ取ることができる点から、好ましくは0.1〜10であり、より好ましくは1〜9であり、さらに好ましくは1.5〜8である。
【0021】
本発明の冷感増強剤は、成分(C)の多価アルコールを含有する。かかる多価アルコール(C)は、25℃におけるlogPが−2〜−1である。多価アルコール(C)を含有することにより、上記成分(B)のカチオン界面活性剤と相まって、成分(A)の冷感剤を良好に溶解することができ、剤中における成分(A)の分散性を高く保持することもでき、冷感増強効果や冷感持続効果を十分に高めることが可能である。
【0022】
ここでlogPとは、25℃におけるオクタノール−水−分配係数であり、オクタノール相と水相の間での物質の分配のための尺度であって下式で定義されるものをいい、A.レオ,C.ハンシュ,D.エルキンス,ケミカルレビューズ,71巻,6号(1971)にその計算値の例が記載されている。なお、本発明では、25℃において、化審法化学物質改定第4版「化学物質の分配係数(1-オクタノール/水)測定法について<その1>」(化学工業日報社刊)記載の方法で測定した値を意味する。
【0023】
logP=log([物質]
Octanol/[物質]
Water)
〔式中、[物質]
Octanolはオクタノール相中の物質のモル濃度を、[物質]
Waterは水相中の物質のモル濃度を示す。〕
【0024】
成分(C)のlogPは、冷感剤(A)やカチオン界面活性剤(B)の溶解性の点から好ましくは−1.8〜−0.5、より好ましくは−1.5〜−1.0である。このような多価アルコール(C)としては、分子内に水酸基を2つ以上有するものであって上記logPを有するものであればいずれでもよく、分子内に水酸基を2つ有するものがより好ましい。例えば、エチレングリコール(25℃におけるlogP=−1.4;以下同様)、ジエチレングリコール(−1.3)、1,3−ブチレングリコール(−1.4)、ジプロピレングリコール(−1.1)、プロピレングリコール(−1.1)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、長時間に亘り冷感増強効果を充分に発揮する点から、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールが好ましく、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコールがより好ましい。
【0025】
多価アルコール(C)の含有量は、冷感剤(A)の沈殿を回避する点及び冷感増強効果を長時間に亘って充分に発揮する点から、本発明の冷感増強剤中に、好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは15〜40質量%であり、さらに好ましくは20〜30質量%である。
【0026】
カチオン界面活性剤(B)の含有量と多価アルコール(C)の含有量との質量比((C)/(B))は、冷感剤によりもたらされる冷感効果を充分に高め、長時間持続して強い冷感を感じ取ることができる点から、好ましくは1〜50であり、より好ましくは2〜20であり、さらに好ましくは3〜8である。
【0027】
本発明の冷感増強剤は、皮膚をより過敏な状態にしつつ冷感増強効果を補強的に高める点から、さらに温感剤(D)を含有するのが好ましい。かかる温感剤(D)としては、化粧品用又は医薬用に用いられるものであれば特に制限されず、例えば、炭素数1〜6のアルキル基を有するバニリルアルキルエーテル、ノナン酸バニリルエーテル、バニリルノナンアミド、カプサイシン、トウガラシチンキ等が挙げられる。なかでも、有効に冷感増強効果を補強する点から、バニリルアルキルエーテルが好ましく、バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテルがより好ましい。
【0028】
温感剤(D)の含有量は、本来温感剤により奏される温感が冷感を損なうことのない点から、好ましくは0.001〜0.4質量%であり、より好ましくは0.01〜0.1質量%である。
【0029】
温感剤(D)の含有量と冷感剤(A)の含有量との質量比((D)/(A))は、本来温感剤により奏される温感が冷感を損なうことのない点から、好ましくは0.01〜0.25であり、より好ましくは0.02〜0.10である。
【0030】
さらに、本発明の冷感増強剤は、水(E)を含有するのが好ましい。水(E)を含有することで、その気化熱をも利用して皮膚上から熱を奪うことができ、冷感増強効果をさらに高めることが可能である。冷感剤(A)は、本来水に溶解しにくい性質を有するものであるが、本発明の冷感増強剤は、成分(B)及び成分(C)を含有することで成分(A)を良好に溶解させることができ、さらに水(E)を配合しても、剤中で成分(A)を安定的に分散させることが可能である。
【0031】
本発明の冷感増強剤は、一価のアルコール、例えば、エタノールを含有してもよいが、その冷感増強剤中の含有量は、一価のアルコール由来の熱感によって冷感を損なうことのない点から、冷感増強剤中の多価アルコール(C)の含有量より少ないことが好ましく、より好ましくは10質量%未満であり、さらに好ましくは1質量%未満であり、またさらに好ましくは一価のアルコールを含まないことである。
【0032】
水(E)の含有量は、優れた冷感増強効果及び安定性の高い分散状態を確保する点から、本発明の冷感増強剤中に、好ましくは20〜85質量%であり、より好ましくは35〜75質量%であり、さらに好ましくは45〜70質量%である。
【0033】
本発明の冷感増強剤は、必要に応じ、その他の成分として、香料、防臭剤、保湿剤、収斂剤、pH調整剤、抗菌剤、酸化防止剤等を適宜含有させてもよい。なお、本発明の冷感増強剤は、常法により、上記各成分を適宜混合することにより製造することができるが、水(E)を含有する場合には、溶解性や分散性の点から、予め成分(A)〜(C)を混合した後、水を配合するのが好ましい。
【0034】
本発明の冷感増強剤は、長時間に亘る冷感増強効果を有効に発揮する点から、皮膚外用剤として用いることが好ましく、なかでも皮膚に適用した後に洗い流さず用いることが好ましい。本発明の冷感増強剤の形態としては、液状、ゲル状、ペースト状、クリーム状、ワックス状等が挙げられる。なかでも長時間に亘る冷感増強効果を有効に発揮する点から、液状であるのが好ましい。また、本発明の冷感増強剤の剤型は、ポンプスプレー、エアゾールスプレー、ポンプフォーム、エアゾールフォーム、ローション、ジェル等が挙げられ、また本発明の冷感増強剤を含浸させてなるシートであってもよく、適用部位に応じて適宜選択することができる。なかでも適用時の操作性の点から、ポンプスプレーやエアゾールスプレー等のスプレー、ローション、シートが好ましい。本発明の冷感増強剤は、手、首及び足等、顔以外の部位であれば身体のいずれの部位にも適用可能であり、日常の動作中や運動時、入浴時やその後等、多種多様の場面において使用することができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0036】
[実施例1〜12、比較例1〜4]
表1〜2に示す処方にしたがって、各製剤を作製した。得られた製剤を用い、以下の評価方法にしたがって冷感の強度及びその持続性、並びに刺激性を評価した。得られた結果を表1〜2及び
図1〜5に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
[評価方法]
温かいと感じる温度(30.5℃及び31.0℃)と、冷たいと感じる温度(28.0℃及び28.5℃)とを各々別個のクールプレート(SPC−125、アズワン(株)製)に設定し、一定温度に保持された面に専門パネラーの指先を接触させて瞬時に感覚評価した。
【0040】
具体的には、得られた製剤1種に親指以外のいずれかの指先1本を20秒間浸漬した後、すぐにクールプレートの面上に接触させ、この時点を0分として、その指先に感じられる温感又は冷感の度合いを以下の基準にしたがって評価した。次いで、最初の評価時から3分経過、5分経過、及び10分経過した時点でクールプレートの面上に各々の指先を接触させ、同様にして指先に感じられる温感又は冷感の度合いを評価し、図中にプロットした。
【0041】
なお、刺激性については、得られた製剤1種に親指以外のいずれかの指先1本を20秒間浸漬した直後の刺激について評価し、結果を表1に示した。
《評価》 《評価内容》
◎: 刺激が低く良好。
○: 刺激が強い。
【0042】
なお、3〜4種の製剤を選択し、各々の製剤によって浸漬する指先を固定して用い、複数の製剤の試験を同時に行った。各試験は2回以上行い、その平均値を図中にプロットした。結果を
図1〜5に示す。
《図中の表示》 《評価内容》
冷up: それまでにない強い冷感を感じた。
冷感: 冷感を感じた。
無感: 冷感も温感も感じない。
温感: 温感を感じた。
【0043】
図1〜
図5の結果より、成分(C)の多価アルコールを用いた実施例1〜4は、成分(C)の代わりにエタノールやセタノールを用いた比較例1〜2に比べ、28.0℃及び28.5℃の冷感に対して経時的にさらに冷感が増強され、30.5℃及び31.0℃の温感に対して経時的に冷感が感じ取られるようになり、優れた冷感増強効果を発揮することがわかる。なかでも、成分(B)のカチオン活性剤として、末端でエステル基及び/又はアミド基に結合していてもよい炭素数18〜22の長鎖アルキル基を、1つ又は2つ有する第4級アンモニウム塩を用いた実施例1〜3は、実施例4よりも経時的に冷感が強められる傾向にあった。また、実施例7と、成分(C)の代わりにエタノールを用いた比較例3とを比べても同様のことがわかる。
さらに、成分(B)のカチオン界面活性剤のかわりに非イオン界面活性剤を用いた比較例4では、実施例10のみならずその他いずれの実施例と比べても、冷感を増強しないばかりか、冷感を発揮させない傾向にあった。