(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
シート状成形複合材(SMC:Sheet Moulding Composite)用途では、分散体またはペーストを作製することにより充填剤、通常炭酸カルシウムまたはアルミナ三水和物(ATH:alumina trihydrate)をポリエステル樹脂に混ぜる。このペーストはコンベヤーベルト上のキャリアフィルム上に注入、塗布または噴霧し、その上に細断されたガラス繊維を添加する。こうした繊維は最終複合材に強度を与えることになる。上記混合体には、過酸化物および他の添加物と共に酸化マグネシウムの粉末またはペーストを添加した後、第2のキャリアフィルムを加え、得られた混合体をローラーで加圧して添加成分を合体させる。酸化マグネシウムの機能は、複合材内に網状組織を作ることにより混合体全体が半固体となる点まで粘度を著しくかつ迅速に増大させることにある。こうして形成されたシート状複合材は、次いで、ローラーで延ばし(巻いたラグまたはカーペット状にし)、冷蔵条件で貯蔵および輸送する。こうして形成されたSMCのエンドユーザーは、上記ローラーから必要な大きさの部分を切り出してその断片を一対の金型に入れ、その金型により付与される熱および圧によってこのシートをこの一対組合せの金型の形状となるように加圧し、この複合材を架橋させて硬い融合部品または物品を形成させる。
【0003】
酸化マグネシウムを添加すると、その増粘機構が速やか、かつ高程度に(例えば、数日間かけて8,000ミリポアズから500,000ミリポアズへ)起こり、その結果、SMC形成からローラーにかけてそのシートを貯蔵するまでの時間間隔が最小化される。酸性分散剤は、最初の充填ペースト形成時に粘度の良好な低下と良好な湿潤能をもたらすが、酸性が強すぎると、その後のMgO添加で始まる増粘または成熟段階に悪影響を及ぼし得る。酸性が強い分散剤は酸化マグネシウム粒子の表面に固定されるため、これらの粒子が不飽和ポリエステル中の酸性度の低い基と結合を形成することが妨げられると考えられている。従って、最適なレベルの酸性度を有する分散剤はより酸性が強い分散剤に対して明白な利点を示すことが分かる。
【0004】
そのような最適化された酸性度の分散剤の同様なプロセスおよび利点はバルク成形複合材(BMC:Bulk Moulding Composite)においても認めることができ、この場合、冷蔵材料および貯蔵材料はシートまたはロールではなく、ボールまたは練り粉の塊などの塊状材料の形をとる。
【0005】
特許文献の多くの刊行物には、ポリエステル鎖が結合しているポリエチレンイミンなどのポリ(C
2〜4−アルキレンイミン)から誘導されたポリエステルアミン分散剤が開示されている。このポリエステル鎖は、米国特許第4,224,212号に開示されているように、12−ヒドロキシステアリン酸から誘導することができ、または米国特許第5,700,395号および同6,197,877号に開示されているように、2種以上の異なるヒドロキシカルボン酸もしくはそれらのラクトンから誘導することができる。これらの分散剤は、一般的な工業用塗膜、特にコイルコーティング用塗料調合物における無機顔料および充填剤に効果的である。しかしながら、これらは最終塗料塗膜を黄ばませる傾向があり、最終塗膜の光沢/ヘイズ値を劣化させる。ホスフェート基が結合している、米国特許第5,300,255号に開示されているような同様なポリエステル鎖を含有するポリエステルホスフェート分散剤は、最終塗料塗膜を黄ばませにくいが、塗料塗膜の光沢およびヘイズ値は、ポリエステル鎖の塗料調合物に対する不適合のために劣化し得る。ポリエステルアミンおよびリン酸ポリエステル分散剤の他の欠点は、これらが室温で種々の極性溶媒中でシーディングおよび結晶化を受け得ることである。従って、極性有機液体などの有機媒体に無機顔料または充填剤を分散させることができ、上記の欠点をこうむらない酸性分散剤が求められている。
【0006】
ホスフェートなどの酸性末端基を含有する分散剤は公知であり、一般に、ヒドロキシ末端ポリマー鎖を五酸化リン、オキシ塩化リン、三塩化および五塩化リンまたはポリリン酸と反応させることで作製される。このポリマー鎖は、通常、末端ヒドロキシル基を含有するポリエステルまたはポリアルコキシレート鎖である。
【0007】
米国特許第5,151,218号および同5,130,463号には、分散剤リン酸エステルおよびその塩であって、そのエステル基が、少なくとも1個のエーテル酸素原子(−O−)および少なくとも1個のカルボン酸エステル基(−COO−)および/またはウレタン基(−NCOO−)を含有する、ツェレビチノフ(Zerewitinoff)水素を有しない脂肪族、脂環式および/または芳香族部分であるリン酸エステルおよびその塩が開示されている。この分散剤は多くのコーティングまたは熱硬化性複合材用途に用いることができる。また、米国特許第5,130,463号には、ポリリン酸と反応させたε−カプロラクトン由来のポリエーテル/ポリエステルを含有する分散剤が開示されている。こうした分散剤は、ケトン、およびエステルなどの極性媒体において有用である。米国特許第6,562,897号には、ポリリン酸と反応させたε−カプロラクトンおよびδ−バレロラクトン由来のポリエーテル/ポリエステルを含有する分散剤が開示されている。これら3つの特許全ての分散剤はケトン、およびエステルなどの極性媒体において有用である。
【0008】
米国特許第5,464,895号および同5,412,139号には、熱硬化性組成物に適したポリアリールオルガノホスフェート分散剤が開示されている。
【0009】
米国特許第6,051,627号には、ポリリン酸と反応させたエチレンオキサイドおよびプロピレンオキシド由来のポリエーテルを含む分散剤が開示されている。こうした分散剤は、ケトン、エステルおよび水などの極性媒体において有用である。
【0010】
米国特許第2,213,477号、同2,454,542号、同3,004,056号、同3,004,057号、同3,010,903号、同3,033,889号、同3,099,676号、同3,235,627号、同4,456,485号、同4,720,514号、同4,872,916号および同5,914,072号の全てにおいて、種々のリン酸化剤と反応させた末端ヒドロキシル基を含有するポリアルコキシレートが開示されている。
【0011】
米国特許第3,462,520号には、直鎖C8〜20ポリアルコキシレートのリン酸エステルの調製について開示されている。そこに示されている関連文献には、アルキル化フェノールのエトキシレート、分枝鎖脂肪族アルコールのエトキシレートおよび炭素原子数C10〜15の直鎖1級アルコールのエトキシレートのリン酸エステルの調製について開示されている。これらの組成物の全ては、水性用途において乳化剤、湿潤剤、分散剤、および洗浄剤などとして用いられる。
【0012】
特許文献1には、メトキシポリエチレングリコールホスフェートの調製および水溶液における酸化鉄などの磁気粒子の分散剤としての使用について開示されている。
【0013】
特許文献2には、メトキシポリエチレングリコールホスフェートの、対応するジアリールまたはジアラルキルリン酸エステルからの調製について開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の発明者らは、有機媒体を含む組成物において有用である分散剤を得ることは有益と考えられることを見出した。この有機媒体としては、塗料および(熱硬化性材(thermoset)などの)可塑材(plastic)を挙げることができる。
【0016】
本発明の発明者らは、以下のこと、即ち、(i)末端酸性基を含有する化合物の分散剤としての特性を利用すること、(ii)受容可能な分散性を得ること、(iii)受容可能な剪断安定性を得ること、(iv)受容可能な貯蔵安定性を得ること、および(v)受容可能な粘度制御(増粘性能)を得ること、のうちの少なくとも1つのことをもたらすことができる化合物を含有する熱硬化性組成物((i)熱硬化性樹脂または(ii)架橋もしくは融合熱硬化性可塑材を含む)を得ることは有益と考えられることを見出した。
【0017】
一実施態様において、本発明は、式(1)の化合物(通常、モノ−エステル)およびその塩:
[RO−(CH
2CH
2O)
m]
n−P(=O)(OH)
3−n
式(1)
であって、
式中、
RはC
1〜6(またはC
1〜4)ヒドロカルビルまたはヒドロカルボニル基とすることができ(通常、Rはメチルまたはエチルとすることができ)、
mは4〜40または4〜30とすることができ、
nは1または2とすることができる(通常、nは1とすることができる)
、化合物およびその塩を提供する。
【0018】
一実施態様において、本発明は、粒子状固体、有機または水性媒体ならびに式(1)の化合物およびその塩から誘導される頭基を有する化合物を含む組成物を提供する。この組成物は分散体とすることができる。この分散体は塗料などの塗膜および可塑材に用いるのに特に適し得る。この可塑材は熱硬化性樹脂または架橋もしくは融合熱硬化性可塑材とすることができる。
【0019】
一実施態様において、本発明は、粒子状固体、(i)熱硬化性樹脂または(ii)架橋もしくは融合熱硬化性可塑材のいずれか、ならびに式(1)の化合物(通常、モノ−エステル)およびその塩:
[RO−(CH
2CH
2O)
m]
n−P(=O)(OH)
3−n
式(1)
であって、
式中、
RはC
1〜6(またはC
1〜4)ヒドロカルビルまたはヒドロカルボニル基とすることができ(通常、Rはメチルまたはエチルとすることができ)、
mは4〜40または4〜30とすることができ、
nは1または2とすることができる(通常、nは1とすることができる)
、化合物およびその塩を含む組成物を提供する。
【0020】
[ ]
n内の基「RO−(CH
2CH
2O)
m」の数平均分子量は350〜1700または350〜1350または350〜1100とすることができる。
【0021】
一実施態様において、本発明は、熱硬化性樹脂に剪断安定性もしくは貯蔵安定性のいずれか、またはその両方を付与するための本明細書に開示した化合物の使用を提供する。
【0022】
一実施態様において、本発明は、熱硬化性組成物中おける分散剤としての化合物の使用であって、この化合物が式(1)の化合物およびその塩:
[RO−(CH
2CH
2O)
m]
n−P(=O)(OH)
3−n
式(1)
で表され、
式中、
RはC
1〜6ヒドロカルビルまたはヒドロカルボニル基であり、
mは4〜40であり、
nは1または2である
、化合物の使用を提供する。
【0023】
一実施態様において、本発明は、塗料中における分散剤としての化合物の使用であって、この化合物が式(1)の化合物およびその塩:
[RO−(CH
2CH
2O)
m]
n−P(=O)(OH)
3−n
式(1)
で表され、
式中、
RはC
1〜6ヒドロカルビルまたはヒドロカルボニル基であり、
mは4〜40であり、
nは1または2である
、化合物の使用を提供する。
【0024】
一実施態様において、本発明は、粒子状固体(通常、顔料または充填剤)、有機液体、式(1)の化合物から誘導される頭基を有する化合物を含む組成物を提供する。本発明の組成物が塗料である場合、塗料組成物が塗膜形成樹脂または樹脂結合剤をも含むことは、当業者なら共通一般知識から理解するであろう。そのような樹脂の例としては、Versamid
TM、Wolfamid
TMなどのポリアミド、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエステル、ニトロセルロースおよびセルロースアセテートブチレート樹脂ならびにこれらの混合物が挙げられる。塗料用樹脂の例としては、短油アルキド/メラミン−ホルムアルデヒド、ポリエステル/メラミン−ホルムアルデヒド、熱硬化性アクリル/メラミン−ホルムアルデヒド、長油アルキド、ポリエーテルポリオールならびにアクリルおよび尿素/アルデヒドなどの多媒体樹脂が挙げられる。これは、いわゆる2パック系において周囲温度で反応性硬化剤により架橋する樹脂を含むことになり、例としてはヒドロキシアクリル類、ポリオール類、ウレタン類およびエポキシド類がある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
一実施態様において、本発明は、本明細書に開示した組成物中における分散剤としての式(1)の化合物の使用を提供する。
【0026】
本発明は上記の明細書に開示したような組成物を提供する。
【0027】
Rはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、アセチル、プロピオニル、イソプロピル、イソブチルまたはこれらの混合物とすることができる。
【0028】
式(1)の化合物は、リン酸化剤とポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルとを、任意選択的に不活性溶媒および/または不活性雰囲気の存在下に、反応させることを含む方法によって調製することができる。
【0029】
リン酸化剤のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルに対するモル比は3:1〜1:3または1:1とすることができる。
【0030】
この反応は40℃〜150℃または60℃〜130℃の温度で実施することができる。式(1)の化合物の変色を極力抑えるために、温度は125℃未満とすることができる。
【0031】
リン酸化剤には、POCl
3、P
2O
5、P
4O
10、ポリリン酸またはこれらの混合物を含めることができる。
【0032】
ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルには、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、またはこれらの混合物を含めることができる。
【0033】
適切な不活性溶媒の例としては、オクタン、石油エーテル、リグロイン、ミネラルスピリット、およびケロシンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、およびキシレンなどの芳香族炭化水素;トリクロロエタン、テトラクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素;ならびにジ−クロロベンゼンおよびトリ−クロロベンゼンなどの芳香族塩素化炭化水素が挙げられる。一実施態様において、式(1)の化合物は不活性溶媒の非存在下に調製することができる。
【0034】
通常、この反応は不活性雰囲気中で実施することができる。この不活性雰囲気は、周期律表の不活性ガス類のうちのいずれか1種によって形成することができる。一実施態様において、この不活性ガスは窒素とすることができる。
【0035】
産業用途
一実施態様において、式(1)の化合物は分散剤とすることができる。
【0036】
種々の実施態様における式(1)の化合物は、0.1〜50重量%または0.25〜35重量%および0.5〜30重量%から選ばれる範囲で本発明の組成物中に存在させることができる。
【0037】
この組成物中に存在させる粒子状固体は、該当する温度で有機媒体に実質的に不溶性であり、その中で微粒子化された形態で安定化させることが望まれる任意の無機固体物質とすることができる。こうした粒子状固体は粒状体、繊維、プレートリットの形態または粉末、多くの場合吹き付けられた(blown)粉末の形態をとることができる。一実施態様において、この粒子状固体は顔料とすることができる。
【0038】
適切な固体の例としては、塗料および可塑材用の顔料、増量剤、充填剤、発泡剤および難燃剤;油性および逆性エマルジョンの掘削泥水用の固体;ドライクリーニング液における汚れおよび固体の微粒子;金属;セラミック、圧電セラミック印刷、研磨剤、コンデンサ、燃料電池、磁性流体、導電性インク、磁気記録媒体、浄水処理および炭化水素汚染土壌修復用の粒子状セラミック材料および磁性材料;無機ナノ分散固体;複合材料用の木材、紙、ガラス、鋼、炭素およびホウ素などの繊維;ならびに有機媒体中の分散体として適用される殺生物剤、農薬および医薬が挙げられる。一実施態様において、この粒子状固体は顔料または充填剤とすることができる。
【0039】
一実施態様において、この固体は有機顔料とすることができる。有機顔料の例としては、アゾレーキ、金属錯体顔料、酸性、塩基性および媒染染料のレーキ、ならびに、厳密には無機であるがその分散特性においてより有機顔料のような挙動を示すカーボンブラックが挙げられる。
【0040】
無機顔料の例としては、二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、および表面被覆二酸化チタンなどの金属酸化物、黄色、および黒色などの各種色の酸化チタン、黄色、赤色、褐色、および黒色などの各種色の酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、オキシ金属化合物(バナジウム酸ビスマス、アルミン酸コバルト、スズ酸コバルト、亜鉛酸コバルト、クロム酸亜鉛、およびマンガン、ニッケル、チタン、クロム、アンチモン、マグネシウム、コバルト、鉄またはアルミニウムのうちの2種以上の混合金属酸化物など)、プルシアンブルー、辰砂、群青、リン酸亜鉛、硫化亜鉛、カルシウムおよび亜鉛のモリブデン酸塩およびクロム酸塩、アルミニウムフレーク、銅、および銅/亜鉛合金などの金属効果顔料、炭酸鉛、およびオキシ塩化ビスマスなどの真珠光沢フレークが挙げられる。
【0041】
無機固体としては、粉末状および沈降(ground and precipitated)炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化カルシウム、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、ホスホン酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、天然水酸化マグネシウム、もしくは水滑石、沈降水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、三水酸化アルミニウム、アルミニウムヒドロペルオキシドまたはベーマイト、ケイ酸カルシウムおよびケイ酸マグネシウム、ナノクレイおよびカオリンを含むアルミノケイ酸塩、ベントナイト、ヘクトライトおよびサポナイトを含むモントモリロナイト、雲母、白雲母、金雲母、リシア雲母および緑泥石を含むタルク、チョーク、合成および沈降シリカ、ヒュームドシリカ、金属繊維および粉末、亜鉛、アルミニウム、ガラス繊維、耐火物繊維、単層および多層カーボンナノチューブ、強化用および非強化用カーボンブラックなどのカーボンブラック、グラファイト、バックミンスターフラーレン、ダイヤモンド、アルミナ、石英、シリカゲル、木粉、粉末化された紙/繊維、麻、サイザル麻、亜麻、綿、黄麻、もみ殻、ココナツ繊維、バナナの葉、ヘネケ麻の葉、マニラアサ、および麦わらなどのセルロース系繊維、バーミキュライト、ゼオライト、ハイドロタルサイト、発電所からのフライアッシュ、焼却下水汚泥灰、ポゾラン、高炉スラグ、アスベスト、クリソタイル、アンソフィライト、クロシドライト、ウォラストナイト、およびアタパルガイトなど、アルミナ、ジルコニア、チタニア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、混合シリコン−アルミニウム窒化物およびチタン酸金属などの粒子状セラミック材料;遷移金属、多くの場合、鉄およびクロム、の磁性酸化物、例えば、ガンマ−Fe
2O
3、Fe
3O
4およびコバルト添加酸化鉄、フェライト、例えば、バリウムフェライト、などの粒子状磁性材料;ならびに金属粒子、例えば、金属アルミニウム、鉄、ニッケル、コバルト、銅、銀、金、パラジウムおよび白金ならびにこれらの合金などの、増量剤および充填剤が挙げられる。
【0042】
一実施態様において本発明の組成物に存在する有機媒体は可塑材とすることができ、別の実施態様では有機液体とすることができる。有機液体は非極性または極性有機液体とすることができる。この有機液体との関連で「極性」という用語は、有機液体が、Journal of Paint Technology、38巻、1966年の269頁におけるCrowleyらの「A Three Dimensional Approach to Solubility」と題する論文に記載されているような中程度から強度の結合を形成することができることを意味する。そのような有機液体は一般に、上記論文で定義されているように水素結合数が5以上である。
【0043】
好適な極性有機液体の例としては、アミン類、エーテル類、特に低級アルキルエーテル類、有機酸類、エステル類、ケトン類、グリコール類、グリコールエーテル類、グリコールエステル類、アルコール類およびアミド類が挙げられる。そのような中程度から強度の水素結合液体の多くの具体例が、(Noyes Development Corporationにより1968年に出版された)Ibert Mellanによる「Compatibility and Solubility」と題した書籍中の39〜40頁の表2.14に示されており、これらの液体は全て本明細書に用いられている極性有機液体という用語の範囲内に包含される。
【0044】
一実施態様では、極性有機液体としてジアルキルケトン、アルカンカルボン酸のアルキルエステルおよびアルカノール、特に、合計炭素原子数が6以下のそのような液体が挙げられる。極性有機液体の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルn−アミルケトンおよびシクロヘキサノンなどのジアルキルケトンおよびシクロアルキルケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ギ酸エチル、プロピオン酸メチル、メトキシプロピルアセテートおよび酪酸エチルなどのアルキルエステル;エチレングリコール、2−エトキシエタノール、3−メトキシプロピルプロパノール、3−エトキシプロピルプロパノール、2−ブトキシエチルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、3−エトキシプロピルアセテートおよび2−エトキシエチルアセテートなどのグリコールならびにグリコールエステルおよびエーテル;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールおよびイソブタノール(2−メチルプロパン−1−オールとも呼ばれる)などのアルカノール、テルピネオールならびにジエチルエーテルおよびテトラヒドロフランなどのジアルキルエーテルおよび環状エーテルが挙げられる。一実施態様では、溶媒として、アルカノール、アルカンカルボン酸およびアルカンカルボン酸のエステルが挙げられる。一実施態様では、本発明は、水性媒体に実質的に不溶性であり得る有機液体に好適であり得る。さらに、有機液体全体が水性媒体に実質的に不溶性である条件で、この有機液体に少量の(グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステルおよびアルコールなどの)極性媒体を存在させることができることは、当業者であれば理解されよう。
【0045】
上記有機液体は、ポリオール、即ち、ヒドロキシ基を2個以上有する有機液体、とすることができる。一実施態様では、ポリオールとして、アルファ−オメガジオールまたはアルファ−オメガジオールエトキシレートが挙げられる。
【0046】
一実施態様では、非極性有機液体としては、脂肪族基、芳香族基またはこれらの混合を含有する化合物が挙げられる。非極性有機液体として、非ハロゲン化芳香族炭化水素(例えば、トルエンおよびキシレン)、ハロゲン化芳香族炭化水素(例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン)、非ハロゲン化脂肪族炭化水素(例えば、完全または部分飽和で炭素原子数6以上の直鎖および分枝脂肪族炭化水素)、ハロゲン化脂肪族炭化水素(例えば、ジクロロメタン、四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエタン)ならびに天然非極性有機物(例えば、植物油、ヒマワリ油、菜種油、アマニ油、テルペンおよびグリセリド)が挙げられる。
【0047】
一実施態様では、この有機液体は全有機液体に対して少なくとも0.1重量%または1重量%以上の極性有機液体を含む。さらに、この有機液体は任意選択的に水を含む。一実施態様では、この有機液体は水を含まないものとすることができる。
【0048】
上記熱硬化性樹脂には、加熱され、触媒され、または紫外線、レーザー光、赤外線、カチオン、電子ビームもしくはマイクロ波放射線が当てられると化学反応して相対的に不溶解性になる樹脂を含めることができる。熱硬化性樹脂における代表的な反応としては、不飽和二重結合の酸化、エポキシ/アミン、エポキシ/カルボニル、エポキシ/ヒドロキシルに関する反応、エポキシのルイス酸もしくはルイス塩基、ポリイソシアネート/ヒドロキシ、アミノ樹脂/ヒドロキシ部分との反応、ポリアクリレートのフリーラジカル反応、エポキシ樹脂とビニルエーテルとのカチオン重合ならびにシラノールの縮合が挙げられる。不飽和樹脂の例としては、1種以上の二酸もしくは酸無水物と1種以上のジオールとの反応により作られるポリエステル樹脂が挙げられる。そのような樹脂は一般に、スチレンもしくはビニルトルエンなどの反応性モノマーとの混合物として供給され、オルトフタル酸系樹脂またはイソフタル酸系樹脂と呼ばれることが多い。別の例としては、ポリエステル鎖中に共反応物質としてジシクロペンタジエン(DCPD:dicyclopentadiene)を用いる樹脂が挙げられる。また、別の例として、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとメタクリル酸などの不飽和カルボン酸との反応生成物が挙げられ、これはその後スチレン溶液として供給され、一般にビニルエステル樹脂と呼ばれている。
【0049】
ヒドロキシ官能性を有するポリマー(多くの場合、ポリオール)は、アミノ樹脂またはポリイソシアネートと架橋させるために熱硬化系で広く用いられている。このポリオールとしては、アクリルポリオール、アルキドポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリウレタンポリオールが挙げられる。代表的なアミノ樹脂としては、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂およびグリコールウリルホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。ポリイソシアネートは、単量体の脂肪族ジイソシアネート、単量体の芳香族ジイソシアネートおよびこれらのポリマーを含む、2種以上のイソシアネート基を有する樹脂である。代表的な脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび水素化ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。代表的な芳香族イソシアネートとして、トルエンジイソシアネートおよびビフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0050】
一実施態様では、熱硬化性複合材または架橋もしくは融合熱硬化性可塑材は、ポリエステル樹脂、スチレン中のポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニルを有するポリエステル樹脂混合物またはポリスチレンポリマーを有するポリエステル樹脂混合物とすることができる。
【0051】
所望される場合、本発明の組成物は、他の成分、例えば、本発明の化合物以外の分散剤、防曇剤、核形成剤(nucleator)、発泡剤、難燃剤、加工助剤、界面活性剤、可塑剤、熱安定剤、相容化剤、UV吸収剤、抗酸化剤、香料、離型助剤、静電気防止剤、抗微生物剤、殺生物剤、カップリング剤、(外部および内部)潤滑剤、衝撃改質剤、滑剤、脱泡剤(air release agent)ならびに粘度降下剤を含有することができる。
【0052】
こうした組成物は通常、1〜95重量%の粒子状固体を含有し、その正確な量はこの固体の性質によって決まり、この量はこの固体の性質ならびにこの固体および上記極性有機液体の比重によって決まる。例えば、一実施態様におけるこの固体が有機顔料などの有機物であり得る場合の組成物は、組成物の全量に対して、この固体を15〜60重量%含有するのに対して、一実施態様におけるこの固体が無機顔料、充填剤もしくは増量剤などの無機物であり得る場合の組成物は、この固体を40〜90重量%含有する。
【0053】
本発明の組成物は、分散体を調製するための従来からの公知の方法のいずれかによって調製することができる。従って、上記の粒子状固体、熱硬化性複合材または架橋もしくは融合熱硬化性可塑材および式(1)の化合物は、任意の順序で混合し、次いで、この混合物を機械的処理にかけて上記固体の粒径を、例えば、高速混合、ボールミリング、バスケットミリング、ビーズミリング、砂利ミリング、砂粉砕(sand grinding)、摩擦粉砕(attritor grinding)、二本または三本ロールミリング、プラスチックミリング(plastic milling)によって分散体が形成されるまで適切な大きさに減少させることができる。あるいは、上記粒子状固体を処理してその粒径を単独で、または(i)熱硬化性複合材または架橋もしくは融合熱硬化性可塑材のいずれかか、(ii)式(1)の化合物と混合して、減少させ、次いで、その他の成分(単数または複数)を添加し、得られる混合物を攪拌して上記組成物を得ることができる。また、この組成物は、上記乾燥粒子状固体を式(1)の化合物と共に粉砕またはミリングし、次いで上記液体媒体を加えることでも作製することができる。あるいは、この組成物は、顔料フラッシングプロセスにおいて液体媒体中で上記固体と式(1)の化合物とを混合することで作製することができる。
【0054】
一実施態様では、本発明の組成物は、液体分散体に適したものとすることができる。一実施態様では、そのような分散体組成物は、(a)0.5〜40部の粒子状固体、(b)0.5〜30部の式(1)の化合物および(c)30〜99部の有機または水性媒体を含み、この場合、相対的な部はすべて重量によるものであり、量(a)+(b)+(c)=100である。
【0055】
粒子状固体および式(1)の化合物を乾燥形態で含む組成物が必要とされる場合、上記有機液体は、蒸発などの単純な分離手段によりこの粒子状固体から容易に除去され得るように、通常、揮発性である。一実施態様では、この組成物は有機液体を含む。
【0056】
上記乾燥組成物が本質的に式(1)の化合物および上記粒子状固体からなる場合、これは通常、この粒子状固体の重量に対して少なくとも0.2%、少なくとも0.5%または少なくとも1.0%の式(1)の化合物を含有する。一実施態様では、この乾燥組成物は上記粒子状固体の重量に対して100%以下、50%以下、20%以下または10%以下の式(1)の化合物を含有する。
【0057】
前記に開示したように、本発明の組成物は、式(1)の化合物およびその塩の存在下に有機液体中上記粒子状固体をミリングすることができる分散体を調製するのに適したものとすることができる。
【0058】
一実施態様において、本発明は、粒子状固体、上記熱硬化性複合材または架橋もしくは融合熱硬化性可塑材および式(1)の化合物およびその塩を含む分散体を提供する。
【0059】
通常、この分散体は、分散体の全重量に対して20〜90重量%の粒子状固体を含有する。一実施態様では、この粒子状固体は上記分散体の10重量%以上または20重量%以上とすることができる。
【0060】
上記分散体中の式(1)の化合物の量は、粒子状固体の量によって決まり得るが、通常はこの分散体の0.5〜5重量%である。
【0061】
本発明の組成物から作製された分散体は、エネルギー硬化系(紫外線、レーザー光線、赤外線、カチオン、電子線、マイクロ波)をモノマー、オリゴマーなどと共に用いる、水性、非水性および無溶媒調合物またはこうした調合物に存在する組合せにおいて用いるのに適し得る。これらは、特に、塗料などの塗膜および可塑材に用いるのに適している。好適な例としては、低、中および高固形分塗料、(コイルおよび缶塗膜などの)焼き付け、2成分および金属塗膜塗料を含む一般的工業用塗料、粉末塗膜、UV硬化性塗膜、木材用ワニス;ポリオールおよびプラスチゾル分散体;セラミック加工物(process)、特に、テープ成形、ゲルキャスティング、ドクターブレード、押出および射出成形型加工物(process)におけるこれらの使用が挙げられ、別の例が、静水圧プレス成形用乾燥セラミック粉末;シート成形およびバルク成形コンパウンドなどの複合材、樹脂トランスファ成形、引き抜き成形、ハンドレイアップおよびスプレーレイアップ加工物、マッチドダイ成形物;キャスティング用樹脂などの建設資材、爪用塗膜、日焼け止め剤のような身の回り品、接着剤、可塑材ならびにOLEDデバイス、液晶ディスプレーおよび電気泳動ディスプレーを含むディスプレーの色フィルターシステム用塗料調合物、光ファイバー用塗膜を含むガラス用塗膜、反射用塗膜または反射防止用塗膜、導電および磁性塗膜などの電子材料の調製にみられる。これらは、上記用途に用いられる乾燥粉末の分散性の改善のための顔料および充填剤の表面改質に有用であり得る。コーティング材料の更なる例については、Bodo Muller、Ulrich Poth、Lackformulierung und Lackrezeptur, Lehrbuch fr Ausbildung und Praxis、Vincentz Verlag、Hanover (2003年)およびP.G. Garrat、Strahlenhartung、Vincentz Verlag、Hanover(1996年)に示されている。
【0062】
一実施態様では、本発明の組成物は1種以上の別の公知の分散剤をさらに含む。
【0063】
以下の実施例により本発明を説明する。これらの実施例は網羅的なものではなく、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0064】
比較例A(COMPA):米国特許第6,562,897号に開示されているリン酸化分散剤に類似の分散剤であって、ポリエーテル−ポリエステル鎖がカプロラクトンおよびバレロラクトンと分子量350のメトキシポリエチレングリコールとから調製された分散剤。
【0065】
比較例B(COMPB):分子量550のメトキシポリエチレングリコールおよび数平均分子量が175のポリエチレングリコールから調製した以外は米国特許第6,051,627号の実施例19に開示されているリン酸化分散剤に類似の分散剤。
【0066】
比較分散剤C(COMPC)は欧州特許第164 817号の実施例4である。
【0067】
比較分散剤D(COMPD)は米国特許第5,700,395号の実施例12である。
【0068】
実施例1(EX1):ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(Mn350、Flukaから、100部)およびポリリン酸(Flukaから、22.7部)を、流し込み可能となるまでオーブン中70℃に加温した後、150mlフラスコに充填する。この混合物を窒素雰囲気下に激しく攪拌するように設定した後、このフラスコを120℃に加熱した油浴につける。攪拌をこの温度で6時間続け、黄色粘性の液体を得る。
【0069】
実施例2(EX2):ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(Mn550、Flukaから、100部)およびポリリン酸(Flukaから、14.5部)を、流し込み可能となるまでオーブン中70℃に加温した後、150mlフラスコに充填する。この混合物を窒素雰囲気下に激しく攪拌するように設定した後、このフラスコを120℃に加熱した油浴につける。攪拌をこの温度で6時間続け、黄色粘性の液体を得る。
【0070】
実施例3(EX3):ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(Mn750、Flukaから、100部)およびポリリン酸(Flukaから、10.6部)を、流し込み可能となるまでオーブン中70℃に加温した後、150mlフラスコに充填する。この混合物を窒素雰囲気下に激しく攪拌するように設定した後、このフラスコを120℃に加熱した油浴につける。攪拌をこの温度で6時間続け、黄色粘性の液体を得る。
【0071】
実施例4(EX4):ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(Mn1100、Flukaから、100部)およびポリリン酸(Flukaから、7.23部)を、流し込み可能となるまでオーブン中70℃に加温した後、150mlフラスコに充填する。この混合物を窒素雰囲気下に激しく攪拌するように設定した後、このフラスコを120℃に加熱した油浴につける。攪拌をこの温度で6時間続け、白色ろう質の固体を得る。
【0072】
分散体の調製(DEX1〜DEX4およびDCOMPA〜DCOMPB):下表(引用された量の単位は部である)に示した組成に基づいて熱硬化性複合材を調製することで一連の分散体を調製する。分散体DEX1〜DEX4は、それぞれEX1〜EX4の生成物を含有する。同様に、DCOMPAおよびDCOMPBは、それぞれCOMPAおよびCOMPBを含有する。調製された分散体は以下の通り。
【0073】
【表1】
【0074】
脚注:
A −Palapreg
TM Hは、Palapreg
TM H880−01はDSM樹脂によって供給された、改変ポリ酢酸ビニル低プロファイル(low profile)添加剤である。
【0075】
B −Palapreg
TM Pは、Palapreg
TM P18−03はDSM樹脂によって供給された、スチレン中の不飽和ポリエステル樹脂である。
【0076】
C −Millicarb
TM OGは、Omyaによって供給された、粒径中央値が2.7ミクロンの石灰石由来の炭酸カルシウム充填剤である。
【0077】
D −Luvatol
TM MK25は、LehmannおよびVossにより供給された酸化マグネシウム増粘剤である。
【0078】
分散体の調製:上記の分散体は以下の手順により調製する。上記2種のPalapreg
TM 樹脂をステンレススチールのジャケット付きミリング容器中に秤量する。各試験例をこの樹脂混合物に添加し、これら3成分をDispermat
TM F1高性能剪断型混合機で30秒間1,500rpmで混合した。混合速度を3,000rpmに増加させ、上記Millicarb
TM OGを1分間かけて添加する。混合をさらに15分間3,000rpmで継続した後、混合機を止める。得られる分散体の試料を少量取りだし、最初の粘度測定を行う。ミリング容器にLuvatol
TM MK25を添加し、混合を2分間2,000rpmで再び開始した。混合機を止め、分散体を貯蔵容器に移す。貯蔵分散体の粘度を15分、1時間、1日、2日および5日後に測定する。
【0079】
各ペースト試料について、40mmクロスハッチステンレススチールプレートを用い、流量測定モードでTA Instruments
TM AR500制御応力レオメーターにより測定する。測定は25℃で行った。各試料は0.1s
−1〜126.5s
−1の速度で剪断する。得られた粘度データ(Pa s)は以下の通りである。
【0080】
【表2】
【0081】
本発明の試料は通常、DCOMPAおよびDCOMPBよりも低い粘度を有する。このことは、加工がより容易であることを意味し、より多くの充填剤の負荷が可能となる。
【0082】
酸化マグネシウム増粘剤の添加後の貯蔵粘度をBrookfield RV粘度計で7番スピンドルおよび5rpmの速度を用いて測定する。通常、500,000ミリポアズの粘度に達しない試料はこの試験に落ちる。得られた粘度データ(mP)は以下の通りである。
【0083】
【表3】
【0084】
これらの試験から得られるデータから、本発明の組成物は開示されている比較可能な分散剤よりも低い剪断を示し、同時に十分な増粘を示すことが分かる。
【0085】
上記で調製した分散剤をポリエステルコイルコーティング用塗料系に調合する。以下に列挙した調合物および成分を用いて以下の白色の最終塗料を調製する。
【0086】
白色塗料の製造
上記の各分散剤をポリエステルコイルコーティング用塗料系に調合した。以下に列挙した調合物および成分を用いて以下の白色の最終塗料を調製する。
【0087】
【表4】
【0088】
Solvesso 100およびDBEを125gガラスジャーに添加する。次いで、分散剤をUralacポリエステル樹脂およびModaflow IIIと共に添加する。次に、3mmガラスビーズ120gを添加した後、Tipure R960顔料を加える。ジャーを密封し、混合物をSkandex lauで90分間ミリングする。この白色の塗料を400ミクロンメッシュで篩にかけてガラスビーズを除去し、室温まで冷却させた。これらミルベースの粘度はBohlin V88粘度計を用い、20℃で測定する(Pa sの単位)。追加量(5部)のSolvesso 100をこのミルベースに添加する。次いで、上記表のレットダウン(letdown)セクションに開示した材料をよく混合することで最終塗料を調製する。この最終塗料を自動Kコーティング機(Sheen)およびNo.6 K−Bar(Sheen)を用いてLeneta黒および白ドローダウン金属パネルに塗布し、厚さ60μの膜を得る。コーティング型を230℃で45秒間硬化させた後、冷却させる。
【0089】
ドローダウン試験
硬化期間後、Byk−Gardner光沢およびヘイズ計測器を用いて光沢およびヘイズ測定値を測定した。色値およびBerger白色度はMacbeth Colour Eyeで測定した。得られた結果は以下の通り:
【0090】
【表5】
【0091】
高い白色度値および不透明度を有する高光沢低ヘイズ塗料を作製するために低粘度ミルベースを得ることが望まれている。このことは、分散に優れ、上記有機媒体との相溶性が良好であることを意味する。本発明に従って使用される分散剤が、従来技術の比較可能な通常の分散剤例Bと比較して、より高い光沢、より低いヘイズおよび同等の白色度および粘度を示すことは明らかである。従来技術の通常の比較可能な分散剤Cと比較して、本発明の分散剤はより低い粘度、より高い光沢、より低いヘイズならびにより高い白色度および不透明度の結果を示す。従来技術の通常の比較可能な分散剤例Dと比較して、本発明の分散剤はより高い光沢、より低いヘイズ、ずっと高い白色度およびより高い不透明度を示す。
【0092】
上述した文献はいずれも引用により本明細書に組み込まれている。上記実施例の場合または特に明示的に示されている場合を除き、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子数などを特定するこの記載におけるすべての数量は「約」という語によって修飾されると理解されるべきである。特に示さない限り、本明細書中に言及された各化学物質または組成物は、異性体、副生成物、誘導体、および市販等級に通常存在すると理解される他のそのような物質を含み得る市販等級の物質であると理解されるべきである。しかし、各化学成分の量は、特に示さない限り、市販の物質に慣習的に存在し得るすべての溶媒または希釈油を除いて提示されている。本明細書に記載されている量、範囲、および比率の上下限は、独立して組み合わせてよいことが理解されるべきである。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、任意の他の要素の範囲または量と一緒に使用してもよい。
【0093】
本発明をその好ましい実施態様に関して説明したが、本明細書を読めば当業者には種々の変更形態が明らかになるであろうことが理解されるべきである。従って、本明細書に開示の発明は、添付の特許請求の範囲内に入るそのような変更形態も網羅するものであることは理解されるべきである。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
粒子状固体、有機または水性媒体ならびに式(1)の化合物およびその塩:
[RO−(CH2CH2O)m]n−P(=O)(OH)3−n
式(1)
であって、
式中、
RはC1〜6ヒドロカルビルまたはヒドロカルボニル基であり;
mは4〜40であり、そして
nは1または2である
、化合物およびその塩に由来する頭基を有する化合物を含む組成物。
(項目2)
[ ]n内の基RO−(CH2CH2O)mの数平均分子量が350〜1700または350〜1350または350〜1100である項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記化合物が前記組成物の0.25〜35重量%および0.5〜30重量%から選ばれる範囲で存在する前記項目1〜2のいずれかに記載の組成物。
(項目4)
前記式(1)の化合物がモノ−エステルである前記項目1〜3のいずれかに記載の組成物。
(項目5)
Rがメチルまたはエチルである前記項目1〜4のいずれかに記載の組成物。
(項目6)
前記粒子状固体が顔料または充填剤である前記項目1〜5のいずれかに記載の組成物。
(項目7)
前記組成物が分散体である前記項目1〜5のいずれかに記載の組成物。
(項目8)
前記分散体が塗料などの塗膜および可塑材に用いるためのものである項目7に記載の組成物。
(項目9)
前記可塑材が熱硬化性樹脂または架橋もしくは融合熱硬化性可塑材である項目8に記載の組成物。
(項目10)
前記組成物が粒子状固体、(i)熱硬化性樹脂または(ii)架橋もしくは融合熱硬化性可塑材のいずれか、ならびに式(1)の化合物およびその塩:
[RO−(CH2CH2O)m]n−P(=O)(OH)3−n
式(1)
であって、
式中、
RはC1〜6ヒドロカルビルまたはヒドロカルボニル基であり;
mは4〜40であり、そして
nは1または2である
、化合物およびその塩を含む項目9に記載の組成物。
(項目11)
前記熱硬化性複合材または前記架橋もしくは融合熱硬化性可塑材がポリエステル樹脂、スチレン中のポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニルを有するポリエステル樹脂混合物またはポリスチレンポリマーを有するポリエステル樹脂混合物である前記項目9〜10のいずれかに記載の組成物。
(項目12)
熱硬化性組成物における分散剤としての化合物の使用であって、該化合物が式(1)の化合物およびその塩:
[RO−(CH2CH2O)m]n−P(=O)(OH)3−n
式(1)
によって表され、
式中、
RはC1〜6ヒドロカルビルまたはヒドロカルボニル基であり;
mは4〜40であり、そして
nは1または2である
、化合物の使用。
(項目13)
塗料における分散剤としての化合物の使用であって、該化合物が式(1)の化合物およびその塩:
[RO−(CH2CH2O)m]n−P(=O)(OH)3−n
式(1)
によって表され、
式中、
RはC1〜6ヒドロカルビルまたはヒドロカルボニル基であり;
mは4〜40であり、そして
nは1または2である
、化合物の使用。