【実施例】
【0019】
以下に、本発明に係る蓄光輝度測定装置の実施例を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る蓄光輝度測定装置の概要を示す回路ブロック図である。
その
図1において、1は残光輝度検出用受光ケース、2は励起強度検出用受光ケース、3は測定器本体ケースである。
【0020】
残光輝度検出用受光ケース1は、蓄光標識4の蓄光材料から放射される可視光を受光して光電変換信号Spを出力する残光輝度検出用受光部5と、識別信号Shを出力する識別信号出力部6とを有する。
【0021】
励起強度検出用受光ケース2は、蓄光材料を励起する励起光源からの励起光を受光して光電変換信号Spを出力する励起強度検出用受光部7と、識別信号Sh’を出力する識別信号出力部8とを有する。
【0022】
残光輝度検出用受光ケース1と励起強度検出用受光ケース2とは同一の測定器本体ケース3に着脱可能とされて、後述するコネクタ部により電気的に接続される。その残光輝度検出用受光部5、励起強度検出用受光部7、識別信号出力部6、8には、例えば、後述する電源部から電源電力が供給される。
【0023】
識別信号Shは、例えば、(H、H)信号から構成され、識別信号Sh’は、例えば、(H、L)信号から構成され、これにより、残光輝度検出用受光ケース1が測定器本体ケース3に接続されたか、励起強度検出用受光ケース2が測定器本体ケース3に接続されたかが区別される。
【0024】
測定器本体ケース3は、測定部9と、識別部10と、表示部11と、電源部12とを有する。電源部12の電源には、例えば、電池が用いられる。その電源部12は、測定部9、識別部10、表示部11、残光輝度検出用受光ケース1、励起強度検出用受光ケース2に電力を供給する。
【0025】
識別部10は、識別信号Sh、Sh’が入力されて、測定器本体ケース3に残光輝度検出用受光ケース1と励起強度検出用受光ケース2とのいずれが接続されたか否かを認識する機能を果たす。
【0026】
測定部9は、残光輝度検出用受光部5からの光電変換信号Spが入力されると残光輝度演算プログラムに従って演算を行って残光輝度を求める残光輝度測定部と、励起強度検出用受光部7から光電変換信号Spが入力されると励起強度演算プログラムに従って演算を行って励起強度を求める励起強度測定部とを備えている。
【0027】
識別部10は、残光輝度検出用受光ケース1が測定器本体ケース3に装着されたときには、測定部9を残光輝度演算プログラムに従って演算する状態に切り替え、励起強度検出用受光ケース2が測定器本体ケース3に装着されたときには、測定部9を励起強度演算プログラムに従って演算する状態に切り替える。
【0028】
励起強度検出用受光ケース2は、
図2(a)に示すように、照度検出用受光ケース2Aであっても良いし、
図2(b)に示すように、紫外線強度検出用受光ケース2Bであっても良い。
【0029】
照度検出用受光ケース2Aは、励起光としての照明光を受光して光電変換信号Spを出力する照度検出用受光部7Aと、識別信号出力部8Aとを有する。
紫外線強度検出用受光ケース2Bは、励起光としての紫外線を受光して光電変換信号Spを出力する紫外線強度検出用受光部7Bと、識別信号出力部8Bとを有する。
【0030】
識別信号出力部8Aは識別信号Sh’1を出力し、識別信号出力部8Bは識別信号Sh’2を出力し、識別信号Sh’1は、例えば、(L、H)信号、識別信号Sh’2は、例えば、(L、L)信号から構成され、これらのハイレベルと、ローレベルの信号の組み合わせによって、残光輝度検出用受光ケース1と照度検出用受光ケース2Aと紫外線強度検出用受光ケース2Bとのいずれが測定器本体ケース3に接続されたか否かが区別される。
【0031】
識別部10は、照度検出用受光ケース2Aが測定器本体ケース3に装着されたときには、測定部9を照度演算プログラムに従って演算する状態に切り替え、紫外線強度検出用受光ケース2Bが測定器本体ケース3に装着されたときには、測定部9を紫外線強度演算プログラムに従って演算する状態に切り替える。
【0032】
(残光輝度検出用受光ケース1と照度検出用受光ケース2Aと紫外線強度検出用受光ケース2Bと測定器本体ケース3の外観構成)
図3は蓄光輝度測定器の分解斜視図を示している。
【0033】
残光輝度検出用受光ケース1、照度検出用受光ケース2A、紫外線強度検出用受光ケース2Bは、同一形状の一対の位置決めピン13と、同一形状のコネクタ部14とを有する。コネクタ部14には挿入方向に延びる案内突起14’(
図4参照)と図示を略す電力供給端子、入出力信号端子とが形成されている。
【0034】
残光輝度検出用受光部5は、
図4に示すように、残光輝度検出用受光ケース1の外面から突出されて可視光としてのりん光が入射する円柱形状の入射開口部15を有する。この入射開口部15の詳細については後述する。
【0035】
照度検出用受光部7Aは、
図3に示すように、照度検出用受光ケース2Aの外面から突出されて可視光としての照明光が入射する輪環状入射開口部16を有する。紫外線強度検出用受光部7Bは、紫外線強度検出用受光ケース2Bの外面から突出されて、紫外線が入射する輪環状入射開口部17を有する。その
図3において、符合16a、17aは入射面を示している。
【0036】
測定器本体ケース3には、コネクタ部14に対応するコネクタ部18が設けられ、このコネクタ部18には案内突起14’に対応する案内溝18’が形成され、コネクタ部18を挟んでその両側に一対の位置決めピン13が嵌合する嵌合穴19が形成されている。その測定器本体ケース3の側面には、
図3、
図4に示すように、電源スイッチ20と、予測スイッチ21とが設けられている。
【0037】
電源スイッチ20をオンすると、測定部9と、識別部10と、表示部11とに電力が供給されて、測定器本体ケース3が測定可能状態となると共に、測定器本体ケース3に装着された検出用受光ケースに電力が供給される。予測スイッチ21は、残光輝度測定の際に用いられるものであるが、この発明に直接的に関連しないので、その説明は省略する。
【0038】
図5は測定器本体ケース3に残光輝度検出用受光ケース1が装着された状態が示されている。その測定器本体ケース3には、この測定器本体ケース3に残光輝度検出用受光ケース1を装着したときに、
図6に示すように、入射開口部15が蓄光標識4に臨む側の外面と同一側の外面3aにこの外面3aから突出する一対の脚部22が形成されていると共に、電池蓋23が設けられている。
【0039】
その一対の脚部22の外面3aからの突出高さHは、
図7に示すように、入射開口部15の外面からの突出高さと略同じ高さとされている。これにより、蓄光輝度測定器を蓄光標識4に置いて、残光輝度を測定するときに、蓄光標識4に対する蓄光輝度測定器の平行性が保たれる。なお、その測定器本体ケース3の電源スイッチ20が設置されている側面と反対側の側面にはAC電源供給用アダプタ端子24が設けられている。
【0040】
その測定器本体ケース3の外面3aと反対側の外面3bには、
図3ないし
図5に示すように、表示部11の一部を構成しかつ測定部9の測定結果を表示する表示面3cが設けられている。
【0041】
測定器本体ケース3に励起強度検出用受光ケース2(照度検出用受光ケース2A、紫外線強度検出用受光ケース2B)を装着したときの測定器本体ケース3の外面からの輪環状入射開口部16、17の突出方向は、測定器本体ケース3に残光輝度検出用受光ケース1を装着したときの測定器本体ケース3の外面からの入射開口部15の突出方向に対して逆向きにされている。
【0042】
表示面3cは、測定器本体ケース3に励起強度検出用受光ケース2(照度検出用受光ケース2A、紫外線強度検出用受光ケース2B)を装着したときに測定器本体ケース3から突出する側の外面3bに設けられているので、照度測定中には、照度の測定結果を目視確認でき、紫外線強度を測定中には、紫外線強度を目視確認できる。
【0043】
また、表示面3cは、測定器本体ケース3に残光輝度検出用受光ケース1を装着したときには、入射開口部15が突出する側の外面3aに対して反対側になっているので、残光輝度測定中もその測定結果を目視確認できる。
【0044】
照度検出用受光部7A、紫外線強度検出用受光部7Bの構造には、小型化を図るのみで公知のものを用いることができるので、その詳細な説明は省略することとし、以下、残光輝度検出用受光部5の詳細構成について説明する。
【0045】
(残光輝度検出用受光部5、入射開口部15の構造)
入射開口部15は、黒色の環状のクッション部材26と、黒色の蓋板27とを有する。蓋板27はネジ部材27aにより入射開口部15に固定されている。その蓋板27には、
図8に示すように、円形開口28、29が形成されている。クッション部材26、蓋板27を黒色にしたのは、反射を極力防止するためである。クッション部材26はその縮み分を考慮して蓋板27よりも若干外側に向かって突出されている。これにより、残光輝度測定の際に、残光輝度検出用受光部5に散乱光が入射するのを防止できる。
【0046】
その入射開口部15の内部には、
図6、
図7に示すように、その奥部から円形開口28に向かって、受光素子としてのシリコンフォトダイオード30、第1フィルタ31、第2フィルタ32が配設されている。
【0047】
シリコンフォトダイオード30は、光の波長に対して
図10(a)に示す感度曲線Q1を有している。フィルタ31は、
図10(b)に示す透過率曲線Q2を有し、フィルタ32は
図10(c)示す透過率曲線Q3を有し、フィルタ31とフィルタ32とにより
図10(d)に示す人間の標準比視感度曲線Q4に近似した波長分布の光がシリコンフォトダイオード30に入射する構成とされている。なお、フィルタ32は、シリコンフォトダイオード30の長波長側の光電変換信号Spの出力を抑制するのにも用いられる。
【0048】
その入射開口部15の内部には、
図11に拡大して示すように、機械式測定開始スイッチ部材33と、マイクロスイッチ部材34とが設けられている。機械式測定開始スイッチ部材33は、板バネ33Aと板バネ33Bとから構成されている。
【0049】
板バネ33Aは、
図12に示すように、マイクロスイッチ部材34の頂部に固定されて、
傾斜片部33A’と半円柱状係合凸部33A”とを有し、その傾斜片部33A’が撓むようにされている。板バネ33Bは半円状湾曲部33B’を有する。この半円状湾曲部33B’は、
図8、
図9に示すように、円形開口29から外部に突出している。
【0050】
その傾斜片部33A’は、マイクロスイッチ部材34のアクチュエータ35に当接されており、その傾斜片部33A’はマイクロスイッチ部材34のアクチュエータ35の進出ストロークを確保するのに用いられる。
【0051】
そのマイクロスイッチ部材34は、半円状湾曲部33B’が蓄光標識4としての例えば安全標識(
図13参照)に接触されて、入射開口部15の内部に押し込まれると、オンされる。
【0052】
残光輝度検出用受光部5は、電源スイッチ20がオンされると、一定時間間隔で光電変換信号Spを測定部9に向けて出力する。そのマイクロスイッチ部材34がオンされると、測定部9は、この測定部9に入力された光電変換信号Spを用いて残光輝度の測定を開始する。
ここで、残光輝度の測定開始を機械式にした理由は、後述することとし、先にこの蓄光輝度測定器の使用方法を説明する。
【0053】
蓄光標識(安全標識)4には、通常、蛍光灯や太陽光により、
図14(a)に示すように、励起光としての紫外光や可視光が照射されている。停電等により、暗闇になると、蓄光材料4’が塗布された部分から放射される可視光としてりん光が放射される。
【0054】
そこで、紫外光や可視光等の励起光の励起強度を測定するときには、
図14(b)に示すように、測定器本体ケース3に照度検出用受光ケース2A又は紫外線強度検出用受光ケース2Bを装着して蓄光標識4にセットする。この場合、蓄光標識4に対して蓄光輝度測定器が平行となるように、一対の脚部22を二組設けるのが望ましい。一対の脚部22を二組設けると、光に曝される蓄光輝度測定器の姿勢を蓄光標識4の姿勢と同じに保つことができるので、励起強度の測定を実際の環境条件により近い条件のもとで行うことができる。
【0055】
このように一対の脚部22を二組設けると、輪環状入射開口部16、17に垂直方向から入射する紫外光や可視光を均一に受光部に取り込むことができることとなって便利だからである。
【0056】
残光輝度を測定するときには、
図14(c)に示すように、測定器本体ケース3に残光輝度検出用受光ケース1を装着して、蓄光標識4にセットする。
すると、半円状湾曲部33B’が蓄光標識4に接触して、マイクロスイッチ部材34がオンされ、これにより、測定部9は光電変換信号Spを用いて残光輝度の測定を開始する。
【0057】
残光輝度測定器は、蓄光標識4に平行であるので、円形開口28には、受光素子の入射面に対して略垂直方向からりん光が入射する。測定部9は、その光電変換信号Spに基づいて残光輝度を演算し、その演算結果が表示部11に表示される。残光輝度は時間の経過と共に減少するが、測定部9は、その時々刻々とその残光輝度の測定値を表示する。
【0058】
(機械式測定開始スイッチ部材33を用いて残光輝度の測定を開始させることとした理由)
機械式測定開始スイッチ部材33を用いる代わりに、光スイッチを用いることとすると、蓄光標識4の基材がガラスや反射率の高いものであると、反射光を受光するおそれが高まり、残光輝度の測定開始タイミングにばらつきが生じるからである。
【0059】
また、この実施例では、蓄光標識4への接触と同時に自動的にマイクロスイッチ部材34をオンさせて残光輝度の測定開始を実行させているので、人為的操作ミスによるタイムラグを防止できる。
【0060】
また、蓄光標識4に接触しなければ、マイクロスイッチ部材34がオンしないので、残光輝度の測定精度の確実性を高めることができる。