(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記押し付け部材は、回転可能に設けられるとともに前記回転部材の軸方向に沿って配置され、且つ、当該軸方向における位置が互いに異なり且つ外径が互いに異なる第1の部位および第2の部位を有する請求項2記載の筒状体製造装置。
前記押し付け部材は、前記回転部材による巻き取りに伴い移動する前記板材に接触しながら予め定められた回転軸を中心に回転するとともに、軸方向における一端および他端のいずれか一方が他方よりも当該板材の移動方向における上流側に位置するように配置されている請求項2記載の筒状体製造装置。
印刷版の元となる板材を介して回転部材の外周面に押し付けられる押し付け部材を当該外周面に押し付けながら且つ当該回転部材の軸方向に当該板材を付勢し当該板材を当該回転部材の予め定められた部位に突き当てながら当該回転部材を回転させ筒状体を製造する筒状体の製造方法であって、
前記押し付け部材が用いられ、当該押し付け部材が前記軸方向に向けて付勢されることで、前記予め定められた部位への前記板材の突き当てが行われる筒状体の製造方法。
印刷版の元となる板材を介して回転部材の外周面に押し付けられる押し付け部材を当該外周面に押し付けながら且つ当該回転部材の軸方向に当該板材を付勢し当該板材を当該回転部材の予め定められた部位に突き当てながら当該回転部材を回転させ筒状体を製造する筒状体の製造方法であって、
前記押し付け部材が用いられ、前記予め定められた部位への前記板材の突き当てが行われ、
前記押し付け部材は、前記回転部材により巻き取られている前記板材に接触しながら当該板材の移動方向下流側に向かって移動するとともに当該移動を行うに従い前記予め定められた部位に近づく部位を有し、
前記押し付け部材の前記部位が前記予め定められた部位に近づくことで、当該予め定められた部位への前記板材の前記突き当てが行われ、
前記押し付け部材の前記部位は、複数設けられているとともに、前記回転部材の軸方向にて、互いに異なる箇所に配置され、
複数設けられた前記部位のうちの一の部位は、前記予め定められた部位側に設けられ、複数設けられた当該部位のうちの他の部位は、当該一の部位よりも当該予め定められた部位から離れた側に設けられ、
前記一の部位が前記移動方向下流側に向かって予め定められた距離移動した際の前記予め定められた部位側への当該一の部位の近づき量の方が、前記他の部位が当該移動方向下流側に向かって当該予め定められた距離移動した際の当該予め定められた部位側への当該他の部位の近づき量よりも大きいことを特徴とする筒状体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、缶体の外周面に画像を形成する画像形成装置500を示した図である。
同図に示す画像形成装置500は、飲料缶に用いられる缶体10に対していわゆるオフセット印刷により画像を形成する画像形成装置である。この画像形成装置500には、円盤状のブランケットシリンダ510、図柄に対応した印刷版を各々備えブランケットシリンダ510上に画像を形成する複数の画像形成ユニット520、缶体10を支持するマンドレルホイル530、缶体10の表面に塗料を塗布し缶体10の外周面に保護層を形成する保護層形成装置540を備える。
【0011】
ブランケットシリンダ510は、円柱状に形成されるとともに一方向(図中矢印に示す方向)に回転する。また、ブランケットシリンダ510は、外周面に複数のブランケット(被転写部)511を有している。ここで、ブランケットシリンダ510は、画像形成ユニット520の各々に設けられた印刷版からブランケット511上に転写されたインクを、転写部Tにて缶体10に対し転写する。
【0012】
画像形成ユニット520は、ブランケットシリンダ510の周方向に沿って色毎に複数設けられている。画像形成ユニット520の各々は、ブランケット511に接触しブランケット511に対してインクにより形成された画像を転写する転写部材522と、この転写部材522の外周面にインクを供給するインク供給装置521とを備えている。ここで、転写部材522は、円柱状に形成されるとともに不図示のモータにより回転駆動されるシリンダ522Aと、図柄(画像)に対応した凹凸が外周面に形成されるとともに筒状に形成されシリンダ522Aに対して取り付けられた印刷版522Bとから構成されている。
【0013】
ここで、本実施形態では、印刷版522Bの外周面に対してインク供給装置521からインクが供給され、次いで、このインクがブランケット511に転写される。これにより、各ブランケット511の表面に、インクにより形成された画像が形成される。詳細には、各ブランケット511の表面であって画像形成ユニット520毎に割り当てられた各領域に、画像形成ユニット520(印刷版522B)の各々からインクが順次転写される。この結果、各ブランケット511の表面には図柄に対応した画像が形成される。そして、この画像は、ブランケットシリンダ510の回転に伴い、転写部Tまで移動し、周方向に回転している缶体10の外周面に転写される。これにより、缶体10の外周面に画像が形成される。
【0014】
なお、マンドレルホイル530は、ブランケットシリンダ510の対向位置に配置されるとともに一方向に回転し、不図示のウォッシャー工程から移動してきた缶体10を上記転写部Tまで搬送する。なお、缶体10が転写部Tに達する際、缶体10は周方向に回転されており、本実施形態では、ブランケット511からのインクが、缶体10の全周に亘って転写される。保護層形成装置540は、画像が転写された缶体10の外周面に対して塗料を塗布する。これにより、インク層(缶体10の外周面に形成された画像)の上に保護層が形成される。
【0015】
なお、本実施形態では、缶体10に形成される図柄(画像)を変更する際、印刷版522Bのみを交換するようになっている。付言すると、円筒状に形成された印刷版522Bをシリンダ522Aの軸方向に沿って移動させることで、シリンダ522Aからの印刷版522Bの取り外しができるようになっている。また、円筒状に形成された印刷版522Bの内部にシリンダ522Aが挿入されるように印刷版522Bを移動させることで、シリンダ522Aに対する印刷版522Bの取り付けができるようになっている。
【0016】
なお、印刷版522Bのシリンダ522Aへの取り付けは次のように行うこともできる。例えば、シリンダ522Aに対し、円筒状ではなくシート状の印刷版522Bを巻き付けることで、シリンダ522Aへの印刷版522Bの取り付けを行うことができる。ところで、この場合、印刷版522Bの取り付け作業が煩雑化するとともにシリンダ522Aに対して印刷版522Bを精度よく取り付けることが難しくなる。また、他の方法として、例えば、シリンダ522Aを画像形成装置500から一旦取り外し、画像形成装置500の機外でシリンダ522Aに対し印刷版522Bを取り付けることもできる。ところでこの場合、シリンダ522Aは重量物であり、作業者への負担が増してしまう。
【0017】
また、例えば、シリンダ522Aを省略するとともに印刷版522B自体に剛性を付与し、印刷版522B自体を画像形成装置500に取り付ける手法もある。この場合、シリンダ522Aに対し印刷版522Bを取り付ける必要がなくなるため、作業の簡略化が可能となる。ところで、この場合、印刷版522Bの一つ一つが高額となってしまう。
一方で本実施形態の構成では、シート状の基材を丸めて印刷版522Bを形成するため(詳細は後述)、比較的容易に印刷版522Bを形成可能となる。また、画像形成装置500からのシリンダ522Aの取り外しなどを行わないでよいため、印刷版522Bの交換作業を簡易なものとすることができる。さらに、シート状の基材は広く普及し価格が安価であり、本実施形態の構成では印刷版522Bを安価に製造できる。
【0018】
図2は、印刷版522Bの製造に用いられる製造装置100を示した図である。なお、同図(A)は、製造装置100を上方から眺めた場合の図であり、同図(B)は同図(A)の矢印IIB方向から製造装置100を眺めた場合の図である。
【0019】
ここで、本実施形態の印刷版522Bの製造に際しては、
図2(A)に示すように、矩形状(長方形状)且つ板状(シート状)の基材150を用意する。また、本実施形態における製造装置100は、同図(A)に示すように、基材150を支持する基材支持部200と、回転駆動し基材支持部200により支持されている基材150を巻き取る基材巻き取り部300とから構成されている。
【0020】
ここで、基材支持部200は、同図(A)に示すように、基材150を下方から支持する支持板210を有している。また、基材支持部200には、基材150の第1側辺150A(基材150の移動方向に沿う側辺)の脇に配置され、基材150の幅方向(短手方向)に基材150を押圧する押圧装置220が設けられている。また、基材150の移動方向(基材150の長手方向)に沿って配置され、押圧装置220により押圧された基材150の第2側辺150B(第1側辺150Aとは反対側に位置する側辺)が押し当てられる押し当て部材230が設けられている。
【0021】
ここで、押圧装置220は二つ設けられているとともに、この二つの押圧装置220は、基材150の移動方向において互いにずらされた状態で配置されている。押圧装置220の各々は、基材150の第1側辺150Aに接触し基材150を押圧する押圧部材221と、例えばエアシリンダにより構成されこの押圧部材221を基材150の上記第1側辺150Aに向けて付勢する付勢部材222とから構成されている。
【0022】
ここで、本実施形態では、押圧部材221が円盤状に形成されるとともに回転可能に設けられており、押圧部材221から基材150に付与される抗力が小さくなっている。なお、付勢部材222は、エアシリンダにより構成することもできるし、例えば、コイルスプリングなどの弾性部材により構成することもできる。
【0023】
次に、基材巻き取り部300について説明する。
本実施形態の基材巻き取り部300には、同図(B)に示すように、円柱状に形成され不図示のモータにより図中時計回り方向に回転する回転部材の一例としての回転駆動部341が設けられている。また、基材巻き取り部300には、同図(A)に示すように、回転駆動部341の軸方向における一端部に設けられるとともに、回転駆動部341の外周面から突出するように設けられ、且つ、円盤状に形成され、回転駆動部341により巻き取られている最中の基材150の第2側辺150Bが押し当てられる押し当て部材342が設けられている。付言すると、回転駆動部341の軸方向に向けて付勢された基材150が突き当てられる板材突き当て部として機能する押し当て部材342が設けられている。
【0024】
さらに、回転駆動部341の外周面には、同図(A)に示すように、回転駆動部341の軸方向に沿った溝343が形成されている。なお、本実施形態では、押し当て部材342のうち基材150が実際に押し当てられる面、および、基材支持部200に設けられた押し当て部材230のうち基材150が実際に押し当てられる面が、同一の面(上下方向に沿った面であって基材150の移動方向に沿うように配置された面(
図2(A)において符号2Aで示す面))の上に載るように配置されている。
【0025】
また、基材巻き取り部300には、
図2(B)に示すように、基材150を回転駆動部341の外周面に向けて押圧する押圧部材310が設けられている。さらに、基材150の巻き取りが終了した後に基材150を介して回転駆動部341の外周面に押し当てられ、基材150の巻き取りが終了した後における回転駆動部341の回転を規制する回転規制部材320が設けられている。さらに、基材150の巻き取りが終了した後に、基材150の一端と基材150の他端との接合部に対して押し当てられる押し当て部材330が設けられている。
【0026】
ここで、押圧部材310は、回転可能に設けられ回転駆動部341により巻き取られている基材150を介して回転駆動部341の外周面に押し付けられる押し付け部材の一例としてのロール状部材311と、エアシリンダにより構成されロール状部材311を基材150(回転駆動部341の外周面)に対して進退させる進退機構312とから構成されている。また、回転規制部材320は、基材150(回転駆動部341の外周面)に対して進退可能に設けられた進退部材321と、エアシリンダにより構成されこの進退部材321を基材150に対して進退させる進退機構322とから構成されている。なお、以下では、基材150の移動に従動してロール状部材311が回転する場合を説明するが、駆動源を別途設け、この駆動源を用いてロール状部材311を回転駆動させるようにしてもよい。
【0027】
また、押し当て部材330も、基材150(回転駆動部341の外周面)に対して進退可能に設けられた進退部材331と、エアシリンダにより構成されこの進退部材331を基材150に対して進退させる進退機構332とから構成されている。
なお、本実施形態では、進退機構312、進退機構322、および、進退機構332がエアシリンダにより構成された場合を説明したが、エアシリンダに替えてソレノイドやコイルスプリングを用いることもできる。
【0028】
ここで、製造装置100による印刷版522Bの製造にあたっては、まず、
図3(製造装置100へ基材150をセットする際の状態を示した図)に示すように、オペレータによって、回転駆動部341に対する基材150の取り付けが行われる。具体的に説明すると、回転駆動部341への基材150の取り付けにあたっては、同図に示すように、まず、基材150の長手方向における一方の端部に対して曲げ加工を施し、基材150の端部に、基材150の厚み方向に向かって突出する突出部152を形成する。次いで、支持板210(
図2(A)参照)の上に基材150を載せるとともに、
図3に示すように、回転駆動部341の軸方向に沿って形成された溝343に対して突出部152を挿入する。これにより、回転駆動部341の回転駆動に付随して基材150が移動するようになる。
【0029】
なお、回転駆動部341の回転駆動が行われる際には、回転駆動部341の外周面と溝343との間に位置するくさび状の領域341A(
図3参照)が、基材150の本体部151と突出部152との間に形成されるくさび状の空間153に入りこむようになる。このため、本実施形態の構成では、回転駆動部341の回転中に溝343から突出部152が外れることが生じにくくなっている。なお、上記では、溝343に対してオペレータが突出部152を挿入する場合を説明したが、回転駆動部341の上に基材150を載せた状態で回転駆動部341を図中時計回り方向に回転させることでも、溝343に対して突出部152が自然に入り込むようになり、溝343に対する突出部152の挿入を行うことができる。
【0030】
次に、製造装置100の動作を説明する。
図4〜
図5は、製造装置100の動作を説明するための図である。
基材150を上記のようにセットした後、本実施形態では、
図4(A)、(B)に示すように、図中時計回り方向への回転駆動部341の回転が開始され、基材150の巻き取りが開始される。なお、この際、基材150に対して押圧装置220(
図2(A)参照)の押圧部材221が押し付けられ、押し当て部材230(
図2(A)参照)に対し基材150が押し当てられた状態となっている。
【0031】
なお、上記では説明を省略したが、本実施形態では、
図4(A)に示すように、支持板210に貫通孔211が形成され、この貫通孔211を介して、基材150が吸引されるようになっている(
図4(A)の矢印4A参照)。この状態で、回転駆動部341を時計回りに回転させると、基材150は、支持板210上を、回転駆動部341に巻き取られながら移動を始める。しかし、基材150は支持板210に形成された貫通孔211からの吸引により、基材150が支持板210に押し付けられることにより、前記基材150の移動を妨げられるようになる。これにより、基材150は、搬送方向における上流側に基材150が引っ張られる形となり、基材150に弛みが生じにくくなっている。なお、本実施形態では、基材150を吸引することで基材150の弛みを生じにくくしたが、磁性を有した基材150を用いる場合には、磁石を支持板210に設けることで、基材150の弛みを生じにくくすることができる。
【0032】
また、本実施形態では、基材150の巻き取りが行われている際、ロール状部材311により基材150が回転駆動部341に押し付けられるようになっており、回転駆動部341の表面に基材150が密着し、基材150に弛みがさらに生じにくくなっている。
【0033】
また、本実施形態では、
図4(C)に示すように、回転駆動部341が約90°回転した後、オペレータによって、回転駆動部341の回転が一旦停止される。そして、オペレータによって、基材150の一方の端部(回転駆動部341の回転方向における下流側に位置する端部)に対して接着剤が塗布される。その後、回転駆動部341の回転が再開され、
図5(A)に示すように、基材150の巻き取りがさらに行われる。
【0034】
その後、回転駆動部341の回転が更に行われるとともに、基材150の一方の端部(回転駆動部341の回転方向下流側に位置する端部)と他方の端部(回転駆動部341の回転方向上流側に位置する端部)とが重なった状態となった後に、回転駆動部341の回転が停止される。これにより、製造装置100は
図5(B)に示す状態となる。
【0035】
その後、回転規制部材320の進退部材321が基材150を介して回転駆動部341に押し付けられることで、回転駆動部341が固定される。また、基材150の上記一方の端部(下流側に位置する端部)と上記他方の端部(上流側に位置する端部)とが重なっている部分(以下、「接合部」と称することがある)に対して、押し当て部材330の進退部材331が進出し、進退部材331がこの接合部に押し当てられる。
【0036】
その後、オペレータによって、上記接合部に対しスポット溶接がなされ、基材150の一方の端部と他方の端部とが固定される。なお、上記のとおり、この一方の端部に対しては接着剤が塗布されており、本実施形態では、溶接のみならず接着によっても、基材150の一方の端部と他方の端部とが固定される。その後、ロール状部材311、進退部材321、および、進退部材331が基材150から離れる方向に移動され、ロール状部材311、進退部材321、および、進退部材331が基材150から離間する。その後、筒状となった基材150が回転駆動部341から外される。
【0037】
なお、印刷版522Bの外周面に形成される図柄(凹凸)は、例えば、基材150の表面に樹脂層を形成し、この樹脂層に対してレーザを照射することで形成することができる。なお、樹脂層の形成およびレーザの照射は、円筒状の印刷版522とされる前の板状の基材150に対して行うこともできるし、上記製造装置100によって基材150を円筒状にした後に、円筒状のこの基材150に対して行うこともできる。また、板状の基材150に対して樹脂層を形成した後に、この基材150を円筒状とし、その後、円筒状の基材150に対しレーザを照射することもできる。
【0038】
ところで、本実施形態では、基材150の搬送経路の全域に亘って押圧装置220(
図2(A)参照)が設けられていない。このため、本実施形態では、二つ目の押圧装置220(基材150の移動方向における下流側に位置する押圧装置220)を基材150の後端が通過すると、押し当て部材230(
図2(A)参照)および押し当て部材342に対して基材150を押し当てようとする力が低下する。そして、このような力の低下が起きると、基材150の幅方向における基材150の変位が生じやすくなる。
【0039】
そしてこの場合、印刷版522Bの外周面に形成される図柄(凹凸)に歪みなどが生じやすくなる。付言すると、印刷版522Bの形状が一定となりにくくなり、安定した形状の印刷版522Bを形成しづらくなる。そこで本実施形態では、押圧部材310に設けられたロール状部材311も利用することで、基材150の幅方向における基材150の変位を生じにくくしている。
【0040】
図6は、ロール状部材311を説明するための図である。なお、
図6(A)は、
図2(B)における矢印VIA方向からロール状部材311および回転駆動部341を眺めた場合の図であり、
図6(B)は、
図6(A)における矢印VIB方向からロール状部材311等を眺めた場合の図である。
【0041】
図6(A)に示すように、ロール状部材311は、回転駆動部341の軸方向に沿うように配置されている。また、ロール状部材311は、同図(A)、(B)に示すように、柱状に形成された基体311Aと、基体311Aの外周面から突出するように設けられるとともに螺旋状に形成された突出部311Bとを備えている。
【0042】
ここで、基体311Aは、押し当て部材342側に一端311Cを有し、押し当て部材342側とは反対側に他端311Dを有している。また、本実施形態では、基体311Aの他端311D側が手前となるように基体311Aの一端311C側が奥側となるように基体311Aを配置した状態でこの基体311Aを他端311D側から眺めた場合に、突出部311Bが、反時計回り方向に進行するに従って基体311Aの一端311Cに接近するようになっている。
【0043】
ここで、本実施形態では、基材150の移動に従動してロール状部材311が回転するようになっているが、この回転に際し、突出部311Bのうちの基材150に接触している部位(
図6(A)の符号6Eで示す部位)が、同図の矢印6Fに示すように、基材150の移動方向における下流側に向かうに従い押し当て部材342側に接近する。付言すると、本実施形態では、突出部311Bのうちの基材150に接触している部位が基材150に接触しながら基材150の移動方向下流側に向かって移動するとともにこの移動を行うに従い押し当て部材342側に近づく。
【0044】
これにより、基材150を押し当て部材342に押し当てようとする力が、基材150に作用するようになり、基材150の第2側辺150B(
図2(A)参照)が、押し当て部材342に押し当てられるようになる。そしてこの場合、上記二つ目の押圧装置220(下流側に位置する押圧装置220)を基材150が通過した後も、基材150が押し当て部材342に押し当てられるようになり、形成される印刷版522Bの形状が安定するようになる。
なお、図示は省略するが、突出部311Bの形成される間隔を示す、ピッチの形成を、押し当て部材342側に比べ、他端側のほうを、短くすることができる。付言すると、
図6(A)では、互いに隣接する突出部311B間の距離が等しい場合を例示したが、例えば、突出部311Bの形成ピッチを、基体311Aの他端311D側から基体311Aの一端311C側に向かうに従い次第に拡げることで、一端311C側に位置し且つ互いに隣接する二つの突出部311B間の距離の方を、他端311D側に位置し且つ互いに隣接する二つの突出部311B間の距離よりも大きくすることができる。
さらに説明すると、例えば、突出部311Bの形成ピッチを、他端311D側にて狭め一端311C側にて拡げることで、ある単位距離だけ基材150の移動方向下流側に向かって突出部311Bが移動した際の押し当て部材342側への突出部311Bの近づき量を、一端311C側と他端311D側とで異ならせることができるようになる。より具体的には、突出部311Bのうち一端311C側にて基材150に接触する一の部位の近づき量の方を、他端311D側にて基材150に接触する他の部位の近づき量よりも大きくすることができる。
さらに説明すると、上記ピッチは、ロール状部材311が、基材150を巻き付け方向に送るとき、押し当て部材342側に送る送り量に関係している。つまり、ピッチが大きければ、押し当て部材342側に送る送り量は大きくなり、ピッチが小さければ、押し当て部材342側に送る送り量は小さくなる。本実施例でいえば、基材150は、押し当て部材342側に移動するように送られるが、基材150には、巻き取り方向と直角方向に、送り量が異なることにより張力が発生する。これにより、巻き取り方向に発生する張力のほかに、それと直角方向にも張力を発生させることにより、基材150の四方に張力を付与することにより、皺や弛みの発生を抑制しながら、基材150の巻き付けができるようになる。また、これは、後述する
図7における形状でも同様の対応が可能である。
【0045】
なお、突出部311Bは、
図6(B)に示すように、外周面311D、この外周面311Dと基体311Aの外周面とを結ぶ側面311Eを有するとともに、外周面311Dと側面311Eとの接続部に角部311F(
図6(A)参照)を有した形状となっているが、
図7(ロール状部材311の他の構成例を示した図)に示すように、この角部311Fに面取りを施した形状とすることもできる。付言すると、突出部311Bの外周面311Dと突出部311Bの側面311Eとが交わる箇所を曲面とすることができる。このような構成とした場合、基材150のうち上記角部311Fと接する箇所とこの角部311Fとの接触圧が他の部分における接触圧よりも高くなることを抑制でき、基材150の表面に線状のキズが付くなどの不具合が生じにくくなり、また角部311Fのエッジが摩耗するなどの不具合も生じにくくなる。
【0046】
また、ロール状部材311は、
図8(ロール状部材311の他の構成例を示した図)のように構成することもできる。なお、同図(A)は、ロール状部材311および回転駆動部341を上方から眺めた場合の図であり、同図(B)は、同図(A)における矢印VIIIB方向からロール状部材311および回転駆動部341を眺めた場合の図であり、同図(C)は、同図(A)における矢印VIIIC方向からロール状部材311および回転駆動部341を眺めた場合の図である。
【0047】
ここで、本構成例では、同図(C)に示すように、ロール状部材311の軸心が回転駆動部341の軸心に対して傾斜した状態で、ロール状部材311および回転駆動部341が配置されている。また、同図(A)に示すように、円錐台状にロール状部材311が形成され、ロール状部材311の一方の端部から他方の端部に向かうに従いロール状部材311の外径が次第に大きくなるようになっている。より具体的には、ロール状部材311のうちの押し当て部材342側に位置する一方の端部から、この一方の端部とは反対側の端部に向かうに従い、ロール状部材311の外径が次第に大きくなるようにロール状部材311が形成されている。
【0048】
ここで、この構成例では、ロール状部材311のうちの大径側に位置する第1の部位の周速の方が、小径側に位置する第2の部位の周速よりも大きくなる。そしてこの場合、基材150の移動速度も部位によって異なるようになり、基材150のうち押し当て部材342側に位置する部位とは反対側に位置する部位の移動速度の方が、押し当て部材342側に位置する部位の移動速度よりも大きくなる。そしてこの場合、基材150は、移動するに従い押し当て部材342側に接近するようになる。これにより、上記と同様、基材150の第2側辺150Bが押し当て部材342に押し当てられるようになる。
【0049】
なお、
図8では、無垢のロール状部材311を例示したが、
図9(ロール状部材311の他の構成例を示した図)に示すように、ロール状部材311に対し、ロール状部材311の周方向に沿った溝311Gを複数設けることもできる。この場合、
図8にて示した構成に比べ、溝311Gを設けたことにより、ロール状部材311の剛性を下げるようにしている。そして、この場合、例えば、剛性の低い基材150が無理に搬送され基材150が損傷するなどの不具合が生じにくくなる。
【0050】
また、
図10(ロール状部材311の他の構成例を示した図)に示すように、ロール状部材311に対し、ロール状部材311の周方向に沿った溝311Gを複数設けるとともに、溝311Gの形成に伴い形成される突出部311Hの角部に対して面取りを施した形状とすることもできる。より詳細には、突出部311Hの外周面311Jと突出部311Hの側面311Kとが交わる箇所に形成される角部に対して面取りを施し、この角部に曲率を付与することもできる。この場合、上記と同様、基材150の表面に線状のキズが付くなどの不具合が生じにくくなり、また角部311Fのエッジが摩耗するなどの不具合も生じにくくなる。
【0051】
図11は、ロール状部材311および回転駆動部341の他の構成例を示した図である。なお、上記と同様、同図(A)は、ロール状部材311および回転駆動部341を上方から眺めた場合の図であり、同図(B)は、同図(A)における矢印XIB方向からロール状部材311および回転駆動部341を眺めた場合の図であり、同図(C)は、同図(A)における矢印XIC方向からロール状部材311および回転駆動部341を眺めた場合の図である。
【0052】
本実施形態では、ロール状部材311の一方の端部の外径と、ロール状部材311の他方の端部の外径とが等しくなっている。詳細には、押し当て部材342側の一端311Cの外径と、押し当て部材342側とは反対側に位置する他端311Dの外径とが等しくなっている。また、本実施形態では、同図(A)に示すように、上方から眺めた場合に、ロール状部材311の軸心と回転駆動部341の軸心とが平行ではなく一定の角度を有した状態となっている。さらに説明すると、本実施形態では、ロール状部材311の軸心と回転駆動部341の軸心とが捩れた状態で、ロール状部材311および回転駆動部341は配置されている。
【0053】
また、本実施形態では、同図(A)に示すように、基材150の搬送方向(移動方向)において、ロール状部材311の一端311Cの方がロール状部材311の他端311Dよりも上流側に配置されている。付言すると、ロール状部材311の一端311Cとロール状部材311の他端311Dとが基材150の移動方向においてずれて配置されている。さらに説明すると、ロール状部材311の軸心と直交する仮想線であって基材150の搬送方向における下流側に向かう仮想線11Aが押し当て部材342側に向かうように、ロール状部材311が傾斜した状態で配置されている。
【0054】
ここで、このような構成となっている結果、本構成例でも、ロール状部材311と回転駆動部341との間を基材150が通過する際に、基材150に対し、押し当て部材342に向かう力が作用するようになる。これにより上記と同様、基材150の第2側辺150Bが、押し当て部材342に押し当てられるようになる。
【0055】
なお、本構成例のように、ロール状部材311と回転駆動部341とが捩れた状態で配置されていると、ロール状部材311の端部が回転駆動部341の外周面から浮いた状態となりやすくなる。そしてこの場合、ロール状部材311と基材150との間で滑りが発生しやすくなり、押し当て部材342に対する基材150の押し当てが不十分となるおそれがある。
【0056】
このため、本実施形態では、ロール状部材311の硬度を小さくしロール状部材311を凹みやくしている。この場合、ロール状部材311の端部が回転駆動部341の外周面に接触しやすくなり、ロール状部材311の端部と基材150との接触圧が確保されやすくなる。そしてこの場合、ロール状部材311と基材150との滑りが抑制され、押し当て部材342に対する基材150の押し当てがより確実になされるようになる。
【0057】
ここで、上記にて説明した構成例では、ロール状部材311に溝などを形成したり、ロール状部材311の外径を一端と他端とで異ならせたりすることで、基材150を押し当て部材342に押し当てるようにしたが、この場合、ロール状部材311の製造にコストを要するようになる。そしてこの場合、製造装置100の製造コストも上昇する。一方で、
図11にて示した構成例では、溝などの形成加工が不要であり、また、ロール状部材311の一端と他端とで外径が等しくなっており、より安価にロール状部材311を製造できるようになる。そしてこの場合、製造装置100の製造コストを抑えることができるようになる。
【0058】
なお、
図6〜
図11にて示した構成を組み合わせることもできる。例えば、
図8におけるロール状部材311に対して、
図6にて説明した螺旋状の突出部311Bを設けるようにしてもよい。また、例えば、
図11におけるロール状部材311に対して、
図6にて説明した螺旋状の突出部311Bを設けることができる。また、例えば、
図11におけるロール状部材311の外径を、
図8にて説明したように、一端部と他端部とで異ならせることもできる。
【0059】
また、上記では、ロール状部材311の形状または配置を工夫することで、基材150を押し当て部材342に押し当てたが、ロール状部材311が押し当て部材342に向かうように押圧部材310を付勢し、基材150を押し当て部材342に押し当てることもできる。
【0060】
具体的には、例えば、
図12(製造装置100の他の構成例を示した図)に示すように、エアシリンダなど、押圧部材310を押し当て部材342に向けて(回転駆動部341の軸方向に向けて)付勢する付勢機構400を設けた構成とすることができる。なお、この構成例では、例えば、基材150の先端がロール状部材311(押圧部材310)に達した後に、付勢機構400をオンする。これにより、上記と同様、基材150の第2側辺150Bが押し当て部材342に押し当てられながら基材150が下流側へ向かって移動するようになる。
【0061】
なお、上記付勢機構400には、
図13(製造装置100の他の構成例を示した図)に示すように、例えば、コイルスプリングなどの弾性部材を用いることができる。なお、コイルスプリングなどの弾性部材を用いる場合は、基材150の先端がロール状部材311(押圧部材310)に達するまでは、例えばストッパ410を用い、弾性部材からの荷重がロール状部材311(押圧部材310)に伝達されないようにしておく。そして、基材150の先端がロール状部材311に達した後に、上記ストッパ410を例えば除去する。これにより、上記と同様、基材150の第2側辺150Bが押し当て部材342に押し当てられながら基材150が下流側へ移動するようになる。
また、前記ストッパを使用しない場合として、コイルスプリングの基材150に離れる方向の面に、エアシリンダなどの基材150に対して進退させる進退機構を有することにより、上記付勢機構400とすることもできる。このような場合、コイルスプリングを省略することができる。