(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
鉄道車両では、車両重量は各車輪を通じてレールに作用するが、車輪一輪にかかる垂直方向の荷重は、「輪重」と呼ばれる。また、各車輪間での輪重のバランスが変動し、ある車輪における輪重が極端に小さくなる状態を「輪重抜け」と呼ぶ。
【0003】
一方、車体と台車との間には乗り心地向上のために空気ばねが設けられているが、経年変化等により、この空気ばねのゴム膜がパンク(以下、単に「空気ばねがパンク」と記すこともある)することがある。パンク時には、エアークッションが無くなることから、空気ばね自体のばね定数が増加してしまう。このようなパンク状態では、車両の乗り心地が悪くなるのは当然であるが、問題となるのは、
図11に示すように、車両が曲線軌道のカント逓減区間、つまり軌道がねじれている区間を走行するときには、パンクに起因して輪重変動が増大し車輪が軌道のねじれに追従困難となってしまう場合がある。即ち、空気ばね1b、1cに対応する車輪で、上述した輪重抜けが発生する可能性がある。
【0004】
空気ばねがパンクしたような異常発生状態においても、引き続き車両を走行させなければならない場合もあり、走行安全性を確保する必要がある。
【0005】
そこで、上述のような輪重抜けを抑制する技術として、例えば特許文献1及び特許文献2が提案されている。
特許文献1の技術では、空気ばねがパンクしたときであってもばね定数を柔らかく維持するため、空気ばね内に、空気ばねの上面板と当接しこれを支持するストッパ構造が開示されている。
また特許文献2は、空気ばねがパンクしたときに対応するために、車両の左右、及び中央部にそれぞれストッパを配置した構造を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1の従来技術では、輪重抜けを抑制するためには前記ストッパ構造は、かなり柔軟に作製する必要がある。その結果、パンク時における車両の上下方向の変位量が大きくなってしまい、車両床下機器と軌道とが接触する可能性がある。したがって結局のところ、前記ストッパ構造は十分な柔軟性を確保することができず、特許文献1の発明では、輪重抜けを十分に抑制することができない。
【0008】
一方、上述の特許文献2の従来技術では、車両左右には剛性の低いストッパを設け、中央部には剛性の高いストッパを設けて、車両の下降は車両中央部に設けたストッパで防止し、空気ばねパンク時における輪重変動を抑制できるとしている。
しかしながら、特許文献2の技術においても、車両左右における空気ばね内に剛性の低いストッパを設けていることから、上下方向の変位量が大きくなるため、特許文献1と同じ問題が発生する。
【0009】
本発明は、上述したような問題点を解決するためになされたものであり、かつ、空気ばねのパンク等の場合においても、輪重の変動を十分に抑制可能な輪重変動抑制装置、及びこの輪重変動抑制装置を備えた鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の第1態様における輪重変動抑制装置は、鉄道車両の車体と台車との間に設けられ、前記鉄道車両の車輪に加わる荷重の変動を抑制する輪重変動抑制装置であって、前記台車の車両幅方向の両側に設けられる2つの空気ばねと、車両幅方向の略中央部に位置し、ローリング方向に揺動可能な状態で台車又は車体に支持される揺動部材と、車両上下方向において前記揺動部材と隙間を介して対向して配置され、前記空気ばねのうち少なくとも1つが規定高さ以下となったときに前記揺動部材に当接するストッパと、一端が前記揺動部材に支持され、他端が台車又は車体に支持され、前記空気ばねのうち少なくとも1つが規定高さ以下となったときに、前記台車と前記車体とのねじり剛性を低下させる揺動支持部材と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、前記揺動部材は、車両幅方向に延在する梁部材と、この梁部材を貫通して梁部材をローリング方向に揺動可能な状態で台車又は車体に支持する回転軸とを有し、前記揺動支持部材は、前記揺動部材と前記台車又は前記車体との間に設置される弾性部材で構成してもよい。
【0012】
本発明の第1態様における輪重変動抑制装置及び第2態様における鉄道車両によれば、揺動部材、揺動支持部材、及びストッパを備えたことで、揺動支持部材によって揺動部材の揺動の程度、つまり車体と台車との間のねじり剛性を決めることができる。よって、従来技術のように空気ばねに内蔵した空気ばねストッパ構造とは関係なく、車体と台車との間のねじり剛性を従来に比べて柔らかく、つまり低く設定できる。したがって、軌道のカント逓減区間での輪重変動を抑制することができる。
【0013】
さらに、1車両に備わる少なくとも一つの空気ばねが規定高さ以下になり車体が下降したときには、ストッパと揺動部材とが当接することから、車体が規定値を超えて下降することは禁止される。よって、上述のように車体と台車との間のねじり剛性を低く設定した場合であっても、車体の下降により床下機器が軌道に干渉することがない。
【0014】
また、前記揺動部材は、車両幅方向に延在する梁部材と、この梁部材をローリング方向に揺動可能な状態で台車又は車体に支持する台座部材とを有し、前記揺動支持部材は、前記揺動部材と前記台車又は前記車体との間に設置されるゴム材で構成してもよい。
【0015】
また、車両幅方向の両側に設けられ、ローリング方向における車体の規定値以上の変位にて前記空気ばねを支持する空気ばねストッパ構造をさらに備え、前記揺動支持部材は、前記規定値未満の変位では前記空気ばねストッパ構造が前記車体を支持しないように前記揺動部材を介して前記車体にローリング方向における反力を生じさせるように構成してもよい。
【0016】
この構成により、例えば空気ばねがパンクすることで、車体に過大な左右力が作用して揺動部材に過大なローリング方向の力が発生した場合でも、空気ばねストッパ構造を設けておくことで、上述の揺動部材、揺動支持部材及びストッパの構成、並びに空気ばねストッパ構造が作用して、過大な車体のローリング変位を防止することができる。よって、軌道のカント逓減区間に対しては,揺動部材の柔らかいローリング支持剛性で輪重変動を抑制し、過大な左右力に対しては、さらに空気ばねストッパ構造で変位を防止できるという効果がある。
【0017】
また、本発明の第2態様における鉄道車両は、上述の第1態様における輪重変動抑制装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、輪重の変動を十分に抑制した装置およびそれを備えた鉄道車両を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態である輪重変動抑制装置、及びこの輪重変動抑制装置を備えた鉄道車両について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
【0021】
実施形態1.
図1には、鉄道車両10に備わる、本実施形態1における輪重変動抑制装置101を示す。当該輪重変動抑制装置101は、当該車両10における
図10に示すローリング11(ローリング方向11と記す場合もある)を抑制して輪重変動を抑制する装置である。また、
図1は、車両10の台車20周りを断面にて図示しており、
図2はその平面図である。ここで台車20は、ボルスタ付き台車である。また、車両幅方向81における左右両側にて台車20と車体30との間には、既存の空気ばね40が設けられている。また、「21」はボルスタを、「22」は台車枠を、「23」は車輪を、「24」は中心ピンを、それぞれ示している。
【0022】
上述の輪重変動抑制装置101は、基本的構成部分として、空気ばね40と、イコライザ梁110と、支持ばね120と、ストッパ130とを備える。ここで、イコライザ梁110は、揺動部材の一例に相当し、支持ばね120は、揺動支持部材の一例に相当する。
本実施形態では、イコライザ梁110は、車両幅方向81における台車20の略中央部に配置され、本例ではボルスタ21に設置される。このようなイコライザ梁110は、
図3及び
図4に拡大して図示するように、車両幅方向81に延在する、例えば金属製の梁部材111と、梁部材111の中央部を貫通し台車20の前後方向82に延在する回転軸112とを有する。尚、一実施例として、梁部材111は、車両幅方向81において500mm程度、前後方向82において100mm程度の大きさを有する。
【0023】
回転軸112は、
図4に示すように、その両端部が軸受113を介して台車20に、本例ではボルスタ21に支持される。よって、梁部材111は、回転軸112を中心としてローリング方向11に揺動可能な状態でボルスタ21に支持される。つまりイコライザ梁110は、回転軸112を中心にしてローリング方向11への揺動が可能である。
【0024】
また、本実施形態において梁部材111は、その断面が大略T字形であり、車両幅方向81に延在する腕部111aと、腕部111aから回転軸112の下側へ突出し、支持ばね120が取り付けられる部分に相当する取付部111bとが一体的に構成されている。
【0025】
支持ばね120は、その一端がイコライザ梁110の梁部材111に支持され、他端が本実施形態では台車20のボルスタ21に支持される。支持ばね120は、イコライザ梁110におけるローリング方向11の揺動を抑える。本実施形態では、支持ばね120は、図示するようにコイルばね121で構成され、イコライザ梁110における取付部111bを、車両幅方向81における両側から付勢する。この構成によって、イコライザ梁110は、定常状態を維持しようとし、イコライザ梁110におけるローリング方向11の揺動が抑えられる。尚、前記定常状態とは、車両幅方向81におけるボルスタ21の傾きと同じ傾きを有するイコライザ梁110の状態を言い、例えば、ボルスタ21が水平に位置するとき、イコライザ梁110も水平に位置する状態が定常状態である。
【0026】
左右両側のコイルばね121は、同一のばね定数を有する。また、このばね定数に応じて、イコライザ梁110におけるローリング方向11の揺動力をコントロールすることができる。換言すると、軌道状態の内、最も厳しいカント逓減区間における輪重抜けが抑制可能となるように、支持ばね120の選定を行えばよい。さらにまた、イコライザ梁110の前記揺動力のコントロールは、取付部111bの長さ、つまり上下方向83における回転軸112と支持ばね120の支持箇所との距離によっても行うことができる。
【0027】
尚、支持ばね120は、上述のコイルばね121に限定するものではなく、弾性部材、例えば伸縮可能なゴム材等を用いることもできる。
【0028】
ストッパ130は、車両10の上下方向83においてイコライザ梁110と、隙間131(
図3)を介して対向してかつ当接可能に配置される部材である。本実施形態では、イコライザ梁110が台車20に設置されていることから、ストッパ130は、車体30に固定され、また、イコライザ梁110の車両幅方向81における両端部に対応して2箇所に設けられている。このようなストッパ130は、一車両10に備わる4つの空気ばね40の内、少なくとも一つが、上下方向83において規定高さ以下になったときに、イコライザ梁110に当接する部材であり、以下で説明するように、車体30の荷重をほとんど変形することなく支持する必要から、例えば硬質ゴム材等で作製される。また、隙間131は、上述のように少なくとも一つの空気ばね40が前記規定高さ以下になったことで車体30が下降したときにストッパ130がイコライザ梁110に接触するような距離である。本実施形態では、隙間131の上下方向83における大きさは、空気ばね40における正常高さと前記規定高さとの間の距離に等しく設定しているが、これに限定するものではない。
【0029】
尚、
図2及び
図4では、ストッパ130は、その平面形状が円形の例を図示しているが、その形状は問わない。また、イコライザ梁110の両端部に対応して2つ設ける必要はなく、
図9に示すように一つでもよい。
また、上述のような構成を有する輪重変動抑制装置101は、1台車あたり一つ設けられれば良い。
【0030】
以上のように構成される輪重変動抑制装置101における動作について説明する。
空気ばね40がパンクしていない正常状態では、ローリング方向11を含めて各方向への車体30の揺れは、空気ばね40によってクッション性が確保され、輪重抜けは防止される。
【0031】
一方、一車両10に備わる4つの空気ばね40の内、少なくとも一つがパンク等して上下方向83において規定高さ以下になったときには、車体30が下降するに伴いストッパ130がイコライザ梁110に接触する。よって、台車20と車体30とはイコライザ梁110とストッパ130とを介して連結された状態になる。したがって、軌道状態に対応した、台車20と車体30との間のローリング方向11における捻り剛性は、輪重変動抑制装置101におけるイコライザ梁110が上述の定常状態を維持しようとする力、つまり、イコライザ梁110との間に設けられた支持ばね120つまりコイルばね121の付勢力によって決定される。
【0032】
尚、実際には、車両幅方向81に位置する2つの空気ばね40同士は連通し、その間には差圧弁が設けられていることから、一方の空気ばね40がパンクすると他方の空気ばね40の内圧も低下し、車両積載状態では、結果的に両側の空気ばね40は共にパンク状態になる。
【0033】
このようにして、空気ばね40がパンクしたときには、軌道状態に追従しようとする台車20の動きに対して輪重変動抑制装置101が作動し、コイルばね121の伸縮によって、車体30に反力が発生しローリング方向11への車体30の揺れは抑制され、車輪23の輪重抜けが抑制される。それによって、車両10がたとえ曲線軌道のカント逓減区間を走行したときでも、輪重変動を抑制でき、輪重抜けを防止又は抑制することが可能となる。
【0034】
また、少なくとも一つの空気ばね40が、例えばパンクして、上下方向83において規定高さ以下になり、車体30が下降したときには、上述のようにストッパ130とイコライザ梁110とが当接し、また、ストッパ130が変形量の少ない材料で作製されることから、車体30が規定値を超えて下降することは禁止される。よって、上述のように車体30と台車20との間のねじり剛性を、輪重変動抑制装置101によって柔らかく設定した場合であっても、車体30の下降により床下機器が車両限界を超えて軌道に干渉することを防止することができる。
【0035】
また、既存の従来の空気ばね40には、通常、パンク時等における、ローリング方向11における車体30の規定値以上の変位を抑制可能なように、ストッパ構造(以下、「空気ばねストッパ構造」と記す)が設けられており、この空気ばねストッパ構造41(
図1)も輪重抜け抑制に寄与する。ここで、空気ばねストッパ構造41は、空気ばね40に内蔵されている構成、及び、空気ばね40とは別設されている構成の両方を含む。
しかしながら、たとえ空気ばねストッパ構造41が備わっていない構成であっても、本実施形態の輪重変動抑制装置101を設けることで、上述のように輪重抜けを抑制することが可能となる。
一方、本実施形態の輪重変動抑制装置101を設置した鉄道車両10では、イコライザ梁110とストッパ130とが当接した後、さらに、輪重変動抑制装置101における負担荷重を超える、ローリング方向11の力が車体30に作用したとき、空気ばねストッパ構造41が設けられている場合には、空気ばねストッパ構造41が作用を開始することができ、車体30のローリングが抑えられる。
【0036】
ここで、空気ばねストッパ構造41のばね定数は、支持ばね120のばね定数よりも大きい。
具体的には、空気ばねストッパ構造41の上下ばね定数をK2とし、車両幅方向81の両側に配置された空気ばね40間の距離の半分をb2としたとき、空気ばねストッパ構造41のローリングに対するばね定数は、2×K2×b2
2となる。
一方、支持ばね120の水平方向に対する変位に対するばね定数をK3とし、イコライザ梁110の回転軸112の中心から支持ばね120の中心までの距離をb3としたとき、支持ばね120のローリングに対するばね定数は、K3×b3
2となる。各ばね定数K2、K3は、2×K2×b2
2>K3×b3
2の関係となるように設定される。
この構成、及び空気ばねストッパ構造41が作用する前に、まず輪重変動抑制装置101が作用する構成を採ることにより、空気ばね40がパンクした際、イコライザ梁110は、空気ばねストッパ構造41に接触しない状態で、車体30からの荷重を台車20に伝達することができるので、車体30と台車20とのねじり剛性を低下させ、輪重抜けを抑制することができる。
【0037】
図3に示すように、輪重変動抑制装置101では、台車20にイコライザ梁110及び支持ばね120を設置し、ストッパ130を車体30に設けた構成であるが、この逆、つまり車体30にイコライザ梁110及び支持ばね120を設置し、ストッパ130を台車20に設ける構成を採っても良い。
【0038】
以下では、上述した輪重変動抑制装置101の変形例について説明を行う。
実施形態2.
図5には、変形例として実施形態2の輪重変動抑制装置102が示されており、この輪重変動抑制装置102も、輪重変動抑制装置101と同様に、空気ばね40、イコライザ梁110、支持ばね120、及びストッパ130を備える。
輪重変動抑制装置101では、イコライザ梁110は、回転軸112にて台車20に揺動可能に支持される構成を採るが、本実施形態2の輪重変動抑制装置102では、イコライザ梁110は、台車20ここではボルスタ21に固定された台座部材114に、ローリング方向11に揺動可能に支持される。台座部材114に対してイコライザ梁110を揺動可能に支持するための具体的な構成例として、台座部材114の頂上面を凹面状の半円形状とし、イコライザ梁110の下面中央を凸状の半円形状とし、それぞれの円状面間で摺動可能とする構成がある。ここで、台座部材114の頂上面に回転方向に弾性変形可能なゴム部材を装備し、イコライザ梁110の下面中央と、例えばボルト結合すると、上下、左右には殆ど変形しないが、回転方向には比較的容易に変位可能な構成となる。
【0039】
さらにまた、輪重変動抑制装置101では、支持ばね120は、弾性部材の一例としてコイルばね121を例に採った構成を採るが、輪重変動抑制装置102では、支持ばね120は、弾性部材の他の例として防振ゴム122を用いた構成を採る。ここで防振ゴム122は、複数のゴム材を積層して形成される。
【0040】
ここで防振ゴム122は、ボルスタ21と、イコライザ梁110においてボルスタ21に対向する対向面110aとの間に設置される。また防振ゴム122は、車両幅方向81において台座部材114の両側の2箇所に設けられる。尚、イコライザ梁110は、本実施形態では船底形の断面を有するが、これに限定するものではなく、既に説明したイコライザ梁110の作用を行うものであれば、その形状は問わない。
尚、輪重変動抑制装置102におけるその他の構成及び作用は、輪重変動抑制装置101における構成及び作用に同じである。
【0041】
このように構成した輪重変動抑制装置102においても、上述した輪重変動抑制装置101と同様の作用を行うことができる。
簡単に説明すると、空気ばね40が例えばパンクしたときには、ストッパ130がイコライザ梁110に接触し、軌道状態に対応した台車20と車体30との間のローリング方向11における捻り剛性は、支持ばね120つまり防振ゴム122の弾性力によって決定される。
【0042】
このようにして、軌道状態に追従しようとする台車20の動きに対して輪重変動抑制装置102が作動し、防振ゴム122の弾性力によって、ローリング方向11への車体30の揺れは抑制され、車輪23の輪重抜けが抑制される。それによって、車両10がたとえ曲線軌道のカント逓減区間を走行したときでも、輪重変動が抑制され、輪重抜けを防止又は抑制することが可能となる。
【0043】
尚、台車20と車体30との間のローリング方向11における捻り剛性は、防振ゴム122の弾性力を選定することで変更できることは言うまでもない。
また、輪重変動抑制装置102における支持ばね120として、防振ゴム122に代えてコイルばねを用いることもできる。
【0044】
また、輪重変動抑制装置102においても、
図5に示すように、イコライザ梁110及び支持ばね120を台車20に、ストッパ130を車体30に、それぞれ設置した構成を例示するが、この逆の構成、つまり車体30にイコライザ梁110及び支持ばね120を設置し、ストッパ130を台車20に設ける構成を採っても良い。
【0045】
実施形態3.
次の変形例について説明する。
図1から
図5では、台車20としてボルスタ付き台車を例に採っているが、上述した輪重変動抑制装置101、102は、ボルスタレス台車の車両10に適用することも勿論可能である。
図6及び
図7には、本実施形態3の輪重変動抑制装置103が示され、この輪重変動抑制装置103は、上述した輪重変動抑制装置101をボルスタレス台車26の車両10に適用した構成の一例に相当する。
【0046】
図6に示すように、輪重変動抑制装置103は、車体30側にイコライザ梁110及び支持ばね120を設置し、台車26にストッパ130を設けている。尚、車体30側にイコライザ梁110及び支持ばね120を設置するために、車体30の台枠下面31には、回転軸112、及び支持ばね120としてのコイルばね121を支持するための、設置用台座140が取り付けられている。設置用台座140には、台車26の前後方向82に延在する回転軸112の両端部を軸受を介して回転可能に支持する2つの回転軸用支持脚141が突設され、また、車両幅方向81における2箇所には、コイルばね121の他端を支持するばね用支持脚142が突設されている。イコライザ梁110は、2つの回転軸用支持脚141の間に配置される。
また、ストッパ130は、イコライザ梁110に対向した位置で、ボルスタレス台車26における台車枠22を構成する横梁に固定される。
【0047】
このようにボルスタレス台車26を備えた車両10に輪重変動抑制装置103を設けた場合においても、輪重変動抑制装置101と同様の作用及び効果を得ることができることは、既に述べた説明から明らかである。
【0048】
実施形態4.
次に、
図8には、同じくボルスタレス台車26の車両10に対して、車体30側にイコライザ梁110及び支持ばね120を設け、台車26にストッパ130を設置した輪重変動抑制装置104が図示されている。
輪重変動抑制装置104においても、空気ばね40、イコライザ梁110、支持ばね120、及びストッパ130を備える。尚、本例では、支持ばね120としてコイルばね121が用いられるが、例えば防振ゴム122のような弾性部材を用いることもできる。
【0049】
輪重変動抑制装置104では、車体30側にイコライザ梁110及び支持ばね120を設けために、車体30の台枠下面31には、台車26の前後方向82に延在する回転軸112の両端部を軸受を介して回転可能に支持する2つの回転軸用支持脚141が上下方向83に台枠下面31から突設されている。また、コイルばね121は、台枠下面31と、イコライザ梁110において台枠下面31に対向する対向面110aとの間に設置される。またコイルばね121は、車両幅方向81において回転軸112の両側の2箇所に設けられる。尚、イコライザ梁110は、本実施形態では船底形の断面を有するが、これに限定するものではなく、既に説明したイコライザ梁110の作用を行うものであれば、その形状は問わない。
ストッパ130は、イコライザ梁110に対向した位置で、ボルスタレス台車26における台車枠22を構成する横梁に固定されている。
【0050】
以上のように構成したことで、イコライザ梁110は、コイルばね121にて回動が抑制されながら、回転軸112を中心としてローリング方向11に揺動可能である。
尚、コイルばね121の設置場所は、上述の場所に限定されるものではなく、イコライザ梁110と支持ばね120とによって既に説明したローリング抑制作用が可能となる形態に応じた場所を選定することができる。例えば
図6に示す輪重変動抑制装置103における構成等を採ることができる。
【0051】
このように構成した輪重変動抑制装置104も、上述した輪重変動抑制装置101と同様の作用を行う。
簡単に説明すると、少なくとも一つの空気ばね40が、例えばパンクして、上下方向83において規定高さ以下になり、車体30が下降したときには、ストッパ130がイコライザ梁110に接触する。よって、軌道状態に対応した、ボルスタレス台車26と車体30との間のローリング方向11における捻り剛性は、支持ばね120の弾性力つまりばね定数によって決定される。
このようにして、軌道状態に追従しようとする台車26の動きに対して輪重変動抑制装置104が作動し、コイルばね121のばね定数によって、ローリング方向11への車体30の揺れは抑制され、車輪23の輪重抜けが抑制される。それによって、車両10がたとえ曲線軌道のカント逓減区間を走行したときでも、輪重変動が抑制され、輪重抜けを防止又は抑制することが可能となる。
【0052】
以上説明した各実施形態1〜4では、イコライザ梁110が設けられた台車20,26又は車体30側と同じ構成側に支持ばね120も配置する構成を示しているが、支持ばね120は、イコライザ梁110の設置側とは異なる構成側に支持されてもよい。例えば、イコライザ梁110を台車20側に設置し、支持ばね120の一端をイコライザ梁110に支持させ、他端は、台車20側ではなく車体30側に支持させる構成、又は、逆に、車体30側に設置されたイコライザ梁110に対して、支持ばね120の他端は、台車20側に支持させる構成を採ってもよい。
【0053】
また、上述した各実施形態1〜4では、空気ばね40を備えた構成を示したが、空気ばね40に代えて、流体ばね、あるいは磁気浮上ばねを用いてもよい。
【実施例1】
【0054】
以下には、空気ばね40、イコライザ梁110、支持ばね120、ストッパ130に関する一実施例について説明する。尚、以下の各値は、軌間が1067mm、最大カントが105mm、最大カント逓減率1/400、及び台車間距離13.8mの条件下で、輪重減少率の目安値が60%未満とした場合の値である。
【0055】
空気ばね40の上下方向83における最大変位量は、41mmに設定している。また、空気ばねストッパ構造41は、上下方向83において空気ばね40が41mmを超えて下降したときに空気ばね40の上面板と当接し作用を開始する。また、イコライザ梁110とストッパ130との間の隙間131は、上下方向83において25mmである。
よって、上下方向83において空気ばね40が25mm下降した後、前記41mmまでの間で、本実施形態における輪重変動抑制装置が作用し、さらに過大なローリング力が働いて空気ばね40が41mmを超えて下降すれば、空気ばねストッパ構造41が作用して過大な車体30のロール変位を防止することができる。
【0056】
支持ばね120のばね定数K3について、イコライザ梁110の回動中心から支持ばね120の作用中心までの距離を0.3mとした場合、前記ばね定数K3は、33000N/mmである。
また、空気ばね一つあたりの空気ばねストッパ構造41のばね定数K2は、10000〜20000N/mmである。
【0057】
イコライザ梁110とストッパ130とが当接し、台車20,26と車体30とが支持ばね120にてローリングが抑制される場合の台車−車体間のねじり剛性は、2970000Nm/radとなるのに対し、各実施形態の輪重変動抑制装置が存在しない従来の空気ばねストッパ構造41のみによる台車−車体間のねじり剛性は、27900000Nm/radであり、支持ばね120の場合に比べて約9.4倍剛性が高くなる。このように、本実施形態における輪重変動抑制装置101〜104では車体30のローリングを柔軟に受け止めることができ、本実施形態の輪重変動抑制装置101〜104は、輪重変動を効果的に抑制可能なことがわかる。